(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048865
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20240402BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240402BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240402BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240402BHJP
【FI】
G09G5/00 510X
G02B27/01
G09G5/00 510Z
G09G5/00 530H
G09G5/00 550C
B60R11/02 C
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154999
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮部 博之
(72)【発明者】
【氏名】小林 貢
【テーマコード(参考)】
2H199
3D020
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA14
2H199DA30
2H199DA36
2H199DA44
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD05
3D020BE03
3D344AA21
3D344AA30
3D344AB01
3D344AC25
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA05
5C182AA26
5C182AB14
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB31
5C182AC46
5C182BA01
5C182BA14
5C182BA23
5C182BA56
5C182BB12
5C182CB11
5C182CC24
5C182DA52
(57)【要約】
【課題】画像を主たる視認者と従たる視認者が視認できる場合に、簡易な構成でありながら視認時の歪みが低減されたと感じやすい表示制御装置及び表示装置を提供する。
【解決手段】制御部160は、画像属性情報に基づいて、画像が示す内容の属性が、第1の乗員向け、第2の乗員向け、第1、第2の各乗員向け、のいずれであるかを判定し、画像が第1の乗員向けの内容である場合は、補正パラメータとして、第1の乗員に適した補正パラメータを使用し、画像が第2の乗員向けの内容である場合は、補正パラメータとして、第2の乗員に適した補正パラメータを使用し、画像が、第1、第2の各乗員向けの内容である場合は、補正パラメータとして、第1、第2の各乗員に適した補正パラメータを使用する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、画像を、前記車両の乗員に視認させる表示装置の画像表示を制御する表示制御装置であって、
前記画像が示す内容の属性を表す画像属性情報を取得する情報取得部と、
前記画像属性情報に基づいて、前記乗員から見た前記画像の歪を抑制するように、前記画像の画像データを補正する際に使用する補正パラメータを変更する機能を有する制御部と、
を有し、
前記車両の運転を行う運転者としての乗員を第1の乗員とし、前記運転者の他に前記車両に同乗する同乗者としての乗員を第2の乗員とする場合に、
前記制御部は、
前記画像属性情報に基づいて、前記属性が、第1の乗員向け、第2の乗員向け、第1、第2の各乗員向け、のいずれであるかを判定し、
前記画像が前記第1の乗員向けの内容である場合は、前記補正パラメータとして、前記第1の乗員に適した補正パラメータを使用し、
前記画像が前記第2の乗員向けの内容である場合は、前記補正パラメータとして、前記第2の乗員に適した補正パラメータを使用し、
前記画像が、前記第1、第2の各乗員向けの内容である場合は、補正パラメータとして、前記第1、第2の各乗員に適した補正パラメータを使用する
表示制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記画像が示す内容が運転情報または交通情報に関係する内容である場合、前記第1の乗員向けの内容または前記第1、第2の各乗員向けの内容であると判定し、
前記画像が示す内容の属性が娯楽情報である場合、前記第2の乗員向けの内容であると判定する
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記画像が前記第2の乗員向けの内容である場合であっても、前記車両が自動運転を行っている場合、または前記画像が前記第1の乗員の操作に応じて表示された場合は、補正パラメータとして、前記第1、第2の各乗員に適した補正パラメータを使用する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示制御装置と、
前記第1の乗員、及び前記第2の乗員の少なくとも一方から見た前記画像の歪を抑制するように、前記補正パラメータを用いて前記画像の画像データを補正する画像データ補正部と、
補正された画像データに基く画像を表示する表示部と、
を有する表示装置。
【請求項5】
前記表示装置は、
前記表示部に表示される画像の表示光を、前記車両に設けられる被投影部材に投影する光学系をさらに有し、前記第1の乗員、及び前記第2の乗員に虚像を視認させる機能をもつヘッドアップディスプレイ装置である、
又は、
表示パネルとしての前記表示部に実像の画像を表示し、前記第1の乗員、及び前記第2の乗員に、その実像の画像を視認させる機能をもつ表示器装置である、
請求項4に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される表示装置(車両用表示装置)が表示する画像を、運転者以外の乗員が視認する場合も想定され得る。
【0003】
この点に関して、例えば、特許文献1には、「・・・運転者の他に同乗者が助手席に同乗(着座)しており、助手席に着座している同乗者にも車両情報等からなる前記表示像を視認させたい場合には、前述したヘッドアップディスプレイ装置(つまり運転席用のヘッドアップディスプレイ装置)の他に、助手席に着座する同乗者の前方となるインストルメントパネル内部に助手席用の他のヘッドアップディスプレイ装置を別途、配設することが考えられる」旨が記載されている(段落番号[0004]参照)。
【0004】
また、表示する画像の歪を補正する処理の一例として、例えば、特許文献2には、HUD装置におけるワーピング処理(光学系等による歪みとは逆特性の歪を事前に画像データに付与する補正処理)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-108470号公報
【特許文献2】特開2015-87619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示装置が表示する画像を、主たる視認者(その画像に正対する乗員)のみならず、従たる視認者(その画像を斜めから見る乗員)も視認できる場合が想定され得る。
【0007】
従来は、主たる視認者のみを想定して、表示される画像の歪み補正を実施している。このため、その画像が、従たる視認者にとっては歪みの大きな画像となる場合があり得る。
【0008】
例えば、従たる視認者である乗員が情報を得るために、表示されている画像を斜めから見た場合、その画像は、主たる視認者である乗員が正面から見た場合を想定した画像となっているため、従たる視認者である乗員にとっては、比較的歪みが大きい画像であると感じられ、違和感や煩わしさが生じたり、あるいは、必要な情報の確認に困難が生じたりする場合があり得る。
【0009】
上記特許文献1、2には、この課題については言及がなく、その対策についても記載がない。
【0010】
本発明の目的の1つは、画像を主たる視認者と従たる視認者が視認できる場合に、簡易な構成でありながら視認時の歪みが低減されたと感じやすい表示制御装置及び表示装置を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0013】
第1の態様において、表示制御装置は、
車両に搭載され、画像を、前記車両の乗員に視認させる表示装置の画像表示を制御する表示制御装置であって、
前記画像が示す内容の属性を表す画像属性情報を取得する情報取得部と、
前記画像属性情報に基づいて、前記乗員から見た前記画像の歪を抑制するように、前記画像の画像データを補正する際に使用する補正パラメータを変更する機能を有する制御部と、
を有し、
前記車両の運転を行う運転者としての乗員を第1の乗員とし、前記運転者の他に前記車両に同乗する同乗者としての乗員を第2の乗員とする場合に、
前記制御部は、
前記画像属性情報に基づいて、前記属性が、第1の乗員向け、第2の乗員向け、第1、第2の各乗員向け、のいずれであるかを判定し、
前記画像が前記第1の乗員向けの内容である場合は、前記補正パラメータとして、前記第1の乗員に適した補正パラメータを使用し、
前記画像が前記第2の乗員向けの内容である場合は、前記補正パラメータとして、前記第2の乗員に適した補正パラメータを使用し、
前記画像が、前記第1、第2の各乗員向けの内容である場合は、補正パラメータとして、前記第1、第2の各乗員に適した補正パラメータを使用する。
【0014】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、前列2人掛けの車両に2台の表示装置(HUD装置)を配置した表示システムで、2人の乗員の視線交差が生じた状態を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、ワーピング補正機能を備えるHUD装置の構成例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、ワーピング補正処理の効果を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、視線交差が生じた場合におけるワーピングパラメータの設定例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、表示制御装置を含む表示装置の主要な構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0017】
(第1の実施形態)
図1を参照する。
図1Aは、前列2人掛けの車両に2台の表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)を配置した表示システムで、2人の乗員の視線交差が生じた状態を示す図、
図1Bは、視線集中が生じた状態を示す図である。
【0018】
図1において、X方向は車両1の幅方向(あるいは左右方向)、Y方向は車両1の高さ方向、Z方向は車両1の前方(前後方向)を示す。
【0019】
車両1は、ステアリングホイール8が右側にある、前列2人掛けの乗用車である。車両1内において、運転者(乗員)3aが運転席6に着座しており、また、助手席9に同乗者(乗員)3bが着座している。
【0020】
運転者3a、同乗者3bは、共に「乗員」である。また、以下の説明では、「第1の乗員、第2の乗員」という記載をする場合がある。例えば、運転者3aである乗員を「第1の乗員」と称し、運転者3aの他で車両1に同乗する乗員を「第2の乗員」と称してもよい。また、「乗員」は、画像を視認する「視認者」と称することもできる。
【0021】
図1Aにおいて、運転者3aと、同乗者3bは、左右方向に隣り合って着座している。また、同乗者(乗員)3bは、運転者(乗員)3aに対して左側に位置している。後部座席11には、乗員は不在である。
【0022】
車両1のウインドシールド2側の部分である前方部分において、2台の表示装置(ここではHUD装置)100a、100bが、車両1の幅方向(左右方向:X方向)に沿って配置されている。運転席6の前方の、ダッシュボードやインストルメントパネル(共に不図示)の内部にHUD装置100aが設置(配置)されている。また、助手席9の前方の、ダッシュボードやインストルメントパネル(共に不図示)の内部にHUD装置100bが設置(配置)されている。
【0023】
なお、表示装置は、HUD装置に限定されるものではなく、液晶装置(例えばTFT液晶装置)や、自発光の表示装置である、マイクロLED表示装置等の表示器装置を使用してもよい。
【0024】
また、
図1Aにおいて、車内における乗員の配置を検出する乗員配置検出カメラ200が設けられている。このカメラ200の撮像画像を、乗員配置検出部で画像解析することによって、車内における乗員の配置が検出される。
【0025】
HUD装置100a、100bは、ウインドシールド2に画像の表示光を投影し、運転者3a、同乗者3bに画像(虚像)を視認させる。
【0026】
HUD装置100a、100bは、歪み補正用の補正パラメータ(ワーピングパラメータ)の変更機能を有する表示制御装置(不図示)を内蔵する。
【0027】
画像の歪み補正として、例えば、画像の表示に際して生じる歪みとは逆の特性の歪を画像データに対して事前に与える、「事前歪み補正処理(ワーピング補正処理)」を採用することができる。以下の説明では、単に、「ワーピング処理」と称する場合がある。
【0028】
補正パラメータとしてのワーピングパラメータを、適宜、切り替えることで、ワーピング処理による歪み補正の内容を変更することができる。表示制御装置における表示制御の具体例については、後述する。
【0029】
また、車両1内には、目又は顔の向き検出カメラ300a、300bが設けられている。カメラ300aは、運転者3aの目(瞳)又は顔を撮像する。その撮像画像に基づいて、例えば視線方向検出部(
図1では不図示、
図8の符号130)が画像処理を行い、例えばアイボックスにおける視点の位置の変化や、左右方向における顔の向きの変化を検出することで、視線の向き(視線方向)を検出することができる。
【0030】
自動運転技術の進展に伴い、運転者3aは、視線の移動を比較的自由にできるようになる。言い換えれば、視線の向きの自由度が増大する。
【0031】
よって、運転者3は、例えば、左斜め前方に表示されている、同乗者10に正対する画像(虚像)V2を見ることも可能である(この状況での視線の向きを、
図1Aでは破線の矢印で示している)。
【0032】
また、同乗者3bも、右斜め前方に表示されている、運転者3aに正対する画像(虚像)V1を見ることも可能である(この状況での視線の向きを、
図1Aでは破線の矢印で示している)。
【0033】
図1Aでは、斜め前方の画像(虚像)を見る2人の乗員(運転者3a、同乗者3b)の視線が交差する状況が生じている。以下の説明では、これを「視線交差」と称する場合がある。
【0034】
なお、
図1Aで、運転者3a及び同乗者3bに関して、実線の矢印も記載されているが、これは、運転者3a及び同乗者3bの各々が、各人に正対する画像(虚像)V1、V2を見ている場合の視線を示している。
【0035】
次に、
図1Bを参照する。
図1Bにおける表示装置の配置(言い換えれば表示システムの構成)は、
図1Aと同じである。
【0036】
但し、
図1Bでは、運転者3a及び同乗者3bは、共に、画像(虚像)V1を見ている。なお、運転者3aの視線方向は、実線の矢印で示されており、同乗者3bの視線方向は、破線の矢印で示されている。
【0037】
共通の画像について、複数人が同時に視認する状況を、以下の説明では、「視線集中(あるいは、視線重複)」と称する場合がある。
【0038】
次に、
図2を参照する。
図2Aは、ワーピング補正機能を備えるHUD装置の構成例を示す図、
図2Bは、ワーピング補正処理の効果を示す図である。
【0039】
HUD装置100は、車両(広義に解釈可能とする)1に搭載される。HUD装置100は、表示部(例えば、光透過型のスクリーンや液晶表示装置等)101と、反射鏡(平面鏡)103と、表示光を投影する光学部材としての曲面ミラー(例えば凹面鏡であり、反射面は自由曲面である場合もある)105と、画像生成部150と、制御部160と、補正パラメータとしてのワーピングパラメータWPが格納されている画像変換テーブル212を有するROM(記憶装置)210と、を有する。
【0040】
なお、制御部160は、表示制御装置(プロセッサ:
図12の符号159)に含まれる機能ブロックとして構築することができる。制御部160は、ROM210からワーピングパラメータWPを選択的に取り出すことができる。言い換えれば、制御部160は、例えば、車両1内における乗員の有無の情報、乗員の配置の情報、及び画像属性情報の少なくとも1つに基づいて、使用するワーピングパラメータWPを、適宜、変更する機能を有する。
【0041】
また、制御部160は、画像生成部150を制御して画像を生成する際に、生成される画像が示す内容の属性を表す画像属性情報を取得可能な情報取得部としても構成される。具体的には、画像が車両関連情報(車両1の装備の作動状態等を表す)や運行関連情報(外部の交通情報等を表す)等の運転情報を表示する場合、この画像の属性は運転者向けである。また、画像が娯楽情報(映像・画像・音楽作品等の鑑賞用コンテンツ等の実物及びそれらの関連情報を含む)を表示する場合、この画像の属性は同乗者向けである。
【0042】
表示部101に表示された画像は、反射鏡103、曲面ミラー105を経て、被投影部材としてのウインドシールド2の投影可能領域5に投影される。なお、符号4は、画像の投影領域を示す。
【0043】
なお、HUD装置100では、曲面ミラーを複数設けてもよい。また、本実施形態のミラー(反射光学素子)に加えて、又は本実施形態のミラー(反射光学素子)の一部(又は全部)に代えて、レンズなどの屈折光学素子、回折光学素子などの機能性光学素子を含む構成を採用してもよい。
【0044】
画像の表示光の一部は、ウインドシールド2で反射されて、予め設定されたアイボックス(実際は立体であるが、説明の便宜上、
図2Aでは所定面積の矩形として描いている)EBの内部に(あるいはEB上に)位置する運転者等の視点(眼)Aに入射され、車両1の前方に結像することで、表示部101の表示面102に対応する仮想的な虚像表示面PS上に虚像Vが表示される。
【0045】
表示部101の画像は、曲面ミラー105の形状やウインドシールド2の形状等の影響を受けて歪む。言い換えれば、HUD装置100の光学系やウインドシールド2を含む光学部材によって歪みが生じる。その歪みを抑制するために、その歪みとは逆特性の歪みが事前に画像に与えられる(ワーピング処理、あるいはワーピング画像補正処理)。
【0046】
図2Bには、ウインドシールド2を介して、乗員が視認する虚像Vの一例が示されている。
図2Bでは、矩形の外形を有する虚像Vには、例えば縦に5個、横に5個、合計で25個の基準点(基準となる画素点あるいは座標点)GD(i,j)(ここで、i、jは共に1~5の値をとり得る変数)が設けられる。画像(原画像)における各基準点(各座標点)に対して、ワーピング処理による、虚像Vに生じる歪みとは逆特性の歪みが事前に与えられる。したがって、その事前に与えられる歪みと、現実に生じる歪みと、が相殺されて、理想的には、
図1Bに示されるような湾曲のない虚像Vが表示される。なお、基準点GD(i,j)の数は、補間処理等によって適宜、増やすことができる。
【0047】
次に、
図3を参照する。
図3Aでは、車両1内に、運転者3aと同乗者3bがいるものとする。また、表示画像としては、運転者3aに正対する画像G100a、及び同乗者3bに正対する画像G100bがあるものとする。なお、画像G100a、G100bは、HUD装置が表示する虚像であってもよく、表示器装置が表示する実像であってもよい。
【0048】
同乗者3bは、正対する画像G100bの他にも右斜め前方の画像(虚像であってもよい)G100aを視認可能であり、運転者3aは正対する画像G110aの他にも左斜め前方の画像(虚像であってもよい)G100bを視認可能である。なお、符号EBa、EBbは、運転者3aと同乗者3bとのそれぞれの視点が位置し得る空間(アイボックス)を示している。
【0049】
アイボックスは、本来、仮想の立体であり、アイボックス内に人の目(視点)が位置する場合には表示画像を見ることができる、という前提で表示装置(表示システム)が設計される。本実施形態では、表示画像としては、運転者が正面から見る第1の画像と、運転者が斜めから見る第2の画像とがある。アイボックス内に乗員の目が位置するときは、原則として、その乗員は第1、第2の各画像を見ることが可能である。
【0050】
但し、画像を斜めから見る場合の歪みの程度は、何らの対策を採らなければ、画像を正面から見る場合の歪みの程度よりも大きくなり、見づらい画像となることが想定される。歪みが増大した場合には、必要な情報を十分に得ることが難しい場合も想定され得る。
【0051】
そこで、
図3Aでは、画像の内容が示す内容の属性に応じて、主たる視認者としての乗員に配慮し、画像の表示制御における補正処理に際しては、その主たる視認者としての乗員に適した補正パラメータ(ワーピングパラメータ)を適用する。
【0052】
図3Aでは、例えば画像G100aとして、運転情報の一例である車速や行き先案内が表示されているとする。この場合、主たる視認者は車両1を運転する運転者3aであることが想定される。よって、画像G100aの表示制御における歪み補正処理(ワーピング処理)に際しては、運転者3aに適したワーピングパラメータWP-aが使用される。この構成によれば、画像の主たる視認者にとって適したワーピング処理が行われるので、視認者にとって感じる歪みを軽減できる。なお、運転情報が表示される画像は、運転者3a及び同乗者3bの各乗員向けとして判定されてもよい。
【0053】
その一方、例えば画像G100aとして、娯楽情報の一例である映画等が表示されているとする。この場合、主たる視認者は車両1に同乗する同乗者3bであることが想定される。よって、画像G100aの表示制御における歪み補正処理(ワーピング処理)に際しては、同乗者3bに適したワーピングパラメータWP-bが使用される。この構成によっても、画像の主たる視認者にとって適したワーピング処理が行われるので、視認者にとって感じる歪みを軽減できる。
【0054】
また、画像G100bとして、娯楽情報の一例である、映画等が表示されているとする。この場合、通常であれば、主たる視認者は車両1に同乗する同乗者3bであることが想定される。よって、画像G100bの表示制御におけるワーピング処理に際しては、同乗者3bに適したワーピングパラメータWP-aが使用される。この構成によっても、画像の主たる視認者にとって適したワーピング処理が行われるので、視認者にとって感じる歪みを軽減できる。
【0055】
なお、これらのとき、例えば以下の条件に応じて、本来の属性とは異なり、別途設定される対象乗員情報に基づいて、異なるワーピングパラメータが使用されてもよい。
【0056】
たとえば、対象乗員情報は、予め乗員の操作時や製造上のソフトウェアの書き込み時に、表示コンテンツに対して別途対象乗員情報が設定されていても良い。この場合、制御部160は、娯楽情報であっても、特定のコンテンツにおいては、同乗者3b向けではなく、同乗者3b及び運転者3a向けのコンテンツであると判定してもよい。その後、画像の表示制御における歪み補正処理に際しては、運転者3a及び同乗者3bの両者に適したワーピングパラメータが使用される。この構成によっても、画像の主たる視認者にとって適したワーピング処理が行われるので、視認者にとって感じる歪みを軽減できる。
【0057】
また、例えば本来同乗者3b向けのコンテンツである画像が運転者3aの操作に応じて表示された場合、制御部160は、この画像を運転者3a及び同乗者3b向けとして判定してもよい。その後、画像の表示制御における歪み補正処理に際しては、運転者3a及び同乗者3bの両者に適したワーピングパラメータが使用される。この構成によっても、画像の主たる視認者にとって適したワーピング処理が行われるので、視認者にとって感じる歪みを軽減できる。
【0058】
また、例えば本来同乗者3b向けのコンテンツである画像が車両1の自動運転実行中に表示された場合、制御部160は、この画像を運転者3a及び同乗者3b向けとして判定してもよい。自動運転には、例えば種々のクルーズコントロール機能が含まれる。この場合、運転者3aも本来同乗者3b向けであるコンテンツを視聴する可能性が比較的高い。その後、画像の表示制御における歪み補正処理に際しては、運転者3a及び同乗者3bの両者に適したワーピングパラメータが使用される。この構成によっても、画像の主たる視認者にとって適したワーピング処理が行われるので、視認者にとって感じる歪みを軽減できる。
【0059】
ここで、「乗員に適したパラメータ」について説明する。先に
図2Bで説明した複数の基準点に対応するように、アイボックス(アイボックスを簡略化して平面的に描く場合は、乗員の前方に配置されている仮想的な平面と言い換えることができる)は、複数の領域(単位領域:不図示)に分割されている。
【0060】
乗員の視点(右目、左目の何れか)が、ある単位領域に位置しているとすると、その単位領域に対応する補正パラメータ(ワーピングパラメータ)が選択される(視点位置追従ワーピング処理)。この単位領域に対応して選択されるワーピングパラメータを、上記の「乗員に適したパラメータ」とすることができる。
【0061】
但し、一例であり、これに限定されるものではない。アイボックスの単位領域毎にワーピングパラメータを設定しない場合もあり得るため、このような場合は、乗員のアイボックスに対応した所定のワーピングパラメータ(アイボックスに対して一義的に定まるパラメータ)を、「乗員に適したパラメータ」としてもよい。
【0062】
次に、
図3Bを参照する。
図3Bに示される表示装置の構成は、先に示した
図2の右下に示される構成と同様(基本的には同じ)である。
図3Bにおいて、
図2と共通する箇所には同じ参照符号を付している。
【0063】
但し、
図3Bでは、制御部160が、表示制御装置159の構成要素であることが明確に示されている。また、
図3Bでは、表示制御装置159には、画像属性情報を取得する情報取得部135が含まれる点も明確化されている。制御部160は、取得された画像属性情報に基づいて、
図3Aに示されるような表示制御を、適宜、実施する。
【0064】
以上説明したように、本発明によれば、画像を、主たる視認者と従たる視認者が視認できる場合に、主たる視認者のみならず、従たる視認者に対しても歪みが低減された表示を提供することができる。
【0065】
本発明は、左右の各眼に同じ画像の表示光を入射させる単眼式、左右の各眼に、視差をもつ画像を入射させる視差式のいずれのHUD装置においても使用可能である。
【0066】
また、表示器装置としては、液晶表示装置やマイクロLED装置、その他の種々のディスプレイ装置を使用することができる。
【0067】
また、本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物としても解釈し得るものである。また、ナビゲーションに関する用語(例えば標識等)についても、例えば、車両の運行に役立つ広義のナビゲーション情報という観点等も考慮し、広義に解釈するものとする。また、HUD装置には、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータやゲーム装置としてのシミュレータ等)として使用されるものも含まれるものとする。
【0068】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0069】
1・・・車両(自車両)、2・・・被投影部材(反射透光部材、ウインドシールド等)、3a・・・乗員(運転者)、3b・・・同乗者(乗員)、4・・・画像の投影領域、6・・・運転席、8・・・ステアリングホイール、9・・・助手席、11・・・後部座席、100・・・HUD装置(広義には表示装置)、110・・・HUD装置(広義には表示装置)、101・・・表示部(液晶パネル等)、102・・・表示部の画像表示面、112・・・通信部、120・・・ECU(電子制御ユニット)、130・・・視線方向検出部、135・・・情報取得部、145・・・表示制御部、150・・・画像生成部、155・・・画像データ補正部、159・・・プロセッサ(表示制御装置)、160・・・制御部、163・・・ワーピング補正制御部、170・・・データベース、200・・・乗員配置検出カメラ、202・・・乗員配置検出部、210・・・記憶装置(ROM)、212・・・画像変換テーブル、300、310・・・目又は顔の向き検出カメラ、WP・・・ワーピングパラメータ、G100a、G100b・・・画像(虚像又は実像)、EB(EBa、EBb)・・・アイボックス、V・・・虚像。