IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

特開2024-48878ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置
<>
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図1
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図2
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図3
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図4
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図5
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図6
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図7
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図8
  • 特開-ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048878
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155014
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】松原 崇史
(72)【発明者】
【氏名】大橋 孝
(72)【発明者】
【氏名】石原 拓真
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 日菜
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB12
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB19
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB36
2H033BB37
2H033BB38
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベルトにその移動方向と交差する方向に沿った端部への移動が発生した場合でも、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給を可能とする。
【解決手段】無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架手段と、前記複数の張架手段のうち1つの張架手段を変位させて前記ベルトの軸方向に沿った端部への移動を補正する補正手段と、前記ベルトが軸方向に沿った端部に移動したとき、前記ベルトの軸方向に沿った端部の内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架手段と、
前記複数の張架手段のうち1つの張架手段を変位させて前記ベルトの軸方向に沿った端部への移動を補正する補正手段と、
前記ベルトが軸方向に沿った端部に移動したとき、前記ベルトの軸方向に沿った端部の内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段と、
を備えるベルト搬送装置。
【請求項2】
前記潤滑剤塗布手段は、前記ベルトが軸方向に沿った端部に移動したときのみ、前記ベルトの軸方向に沿った端部の内面に接触する請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項3】
前記潤滑剤塗布手段は、装置本体側に固定した状態で設けられる請求項2に記載のベルト搬送装置。
【請求項4】
前記潤滑剤塗布手段は、前記ベルトの軸方向に沿った端部への移動に伴って前記ベルトの軸方向に沿った端部に移動する請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項5】
前記潤滑剤塗布手段は、前記補正手段に固定した状態で設けられる請求項4に記載のベルト搬送装置。
【請求項6】
無端状のベルトを搬送するベルト搬送手段と、
前記ベルト搬送手段によって搬送される無端状のベルトを用いて記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記ベルト搬送手段として請求項1乃至5の何れかに記載のベルト搬送装置を用いた定着装置。
【請求項7】
前記記録媒体の表面に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体の表面に形成された画像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として請求項6に記載の定着装置を用いた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト搬送装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置に関する技術としては、例えば、特許文献1等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、無端状ベルト部材の内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部と、潤滑剤塗布部の無端状ベルト部材の移動方向と交差する方向に沿った両端部に配置され且つ無端状ベルト部材の内面から潤滑剤を回収する潤滑剤回収部とに分割され、無端状ベルト部材の内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部材を備えるよう構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-221516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、ベルトにその移動方向と交差する方向に沿った端部への移動が発生した場合でも、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架手段と、
前記複数の張架手段のうち1つの張架手段を変位させて前記ベルトの軸方向に沿った端部への移動を補正する補正手段と、
前記ベルトが軸方向に沿った端部に移動したとき、前記ベルトの軸方向に沿った端部の内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段と、
を備えるベルト搬送装置である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、前記潤滑剤塗布手段は、前記ベルトが軸方向に沿った端部に移動したときのみ、前記ベルトの軸方向に沿った端部の内面に接触する請求項1に記載のベルト搬送装置である。
【0008】
請求項3に記載された発明は、前記潤滑剤塗布手段は、装置本体側に固定した状態で設けられる請求項2に記載のベルト搬送装置である。
【0009】
請求項4に記載された発明は、前記潤滑剤塗布手段は、前記ベルトの軸方向に沿った端部への移動に伴って前記ベルトの軸方向に沿った端部に移動する請求項1に記載のベルト搬送装置である。
【0010】
請求項5に記載された発明は、前記潤滑剤塗布手段は、前記補正手段に固定した状態で設けられる請求項4に記載のベルト搬送装置である。
【0011】
請求項6に記載された発明は、無端状のベルトを搬送するベルト搬送手段と、
前記ベルト搬送手段によって搬送される無端状のベルトを用いて記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記ベルト搬送手段として請求項1乃至5の何れかに記載のベルト搬送装置を用いた定着装置である。
【0012】
請求項7に記載された発明は、前記記録媒体の表面に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体の表面に形成された画像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として請求項6に記載の定着装置を用いた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、ベルトにその移動方向と交差する方向に沿った端部への移動が発生した場合でも、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給が可能となる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、潤滑剤塗布手段は、ベルトが軸方向に沿った端部に移動したときを含め、常時、ベルトの軸方向に沿った端部の内面に接触する場合に比べて、潤滑剤がベルトの表面側に転移する虞を抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、潤滑剤塗布手段は、装置本体側以外に固定した場合に比べて、潤滑剤塗布手段の位置決めが容易となる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、潤滑剤塗布手段は、装置本体側に固定して設けられた場合に比べて、ベルトの軸方向に沿った端部に潤滑剤を確実に塗布することができる。
【0017】
請求項5に記載された発明によれば、潤滑剤塗布手段は、補正手段以外に固定した場合に比べて、潤滑剤塗布手段を容易に設けることができる。
【0018】
請求項6に記載された発明によれば、ベルト搬送手段として請求項1乃至5の何れかに記載のベルト搬送装置を用いない場合に比べて、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給が可能となり、ベルトの移動を円滑に行うことができる。
【0019】
請求項7に記載された発明によれば、定着手段として請求項6に記載の定着装置を用いない場合に比べて、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給が可能となり、ベルトを用いた定着装置の長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す構成図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す斜視構成図である。
図5】従来の定着装置を示す模式図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る定着装置の作用を示す構成図である。
図7】この発明の実施の形態2に係る定着装置を示す構成図である。
図8】この発明の実施の形態2に係る定着装置の要部を示す斜視構成図である。
図9】この発明の実施の形態2に係る定着装置の作用を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
[実施の形態1]
図1はこの発明の実施の形態1に係るベルト搬送装置及び定着装置を適用した画像形成装置の全体の概要を示す構成図である。
【0023】
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。画像形成装置1は、図1に示されるように、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置20と、各作像装置20で形成されたトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体(シート)の一例としての記録用紙6に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置30と、中間転写装置30の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙6を収容して搬送する給紙装置60と、中間転写装置30で二次転写された記録用紙6上のトナー像を定着させる定着手段の一例としての定着装置50等を備えている。符号1aは、支持構造部材や外装カバー等で形成される装置本体を示している。
【0024】
この実施の形態1では、複数の作像装置20と中間転写装置30が、記録用紙6にトナー像を形成する画像形成手段を構成している。なお、画像形成手段は、単一の作像装置を備え、中間転写装置を介さず作像装置から記録媒体にトナー像を直接形成するように構成したものであっても勿論良い。
【0025】
画像形成装置1は、図1に示されるように、装置本体1aの内部空間において水平方向に沿って1列に並べた状態で配置される4つの作像装置20を備えている。4つの作像装置20は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応したカラートナー像をそれぞれ専用に形成する作像装置20Y,20M,20C,20Kからなる。
【0026】
各作像装置20(Y,M,C,K)は、基本的に同様に構成されている。各作像装置20(Y,M,C,K)は、矢印Aで示す方向に沿って回転する像保持手段の一例としての感光体ドラム21と、感光体ドラム21の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置22と、感光体ドラム21の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光LBを照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光手段の一例としての露光装置23と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像手段の一例としての現像装置24(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置30に転写する一次転写手段の一例としての一次転写装置25と、一次転写後における感光体ドラム21の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置26等を備えている。なお、図中の破線は、装置本体1aの内部において記録用紙6が搬送される主な搬送経路を示す。
【0027】
各作像装置20(Y,M,C,K)の下方の位置には、中間転写装置30が配置される。中間転写装置30は、各作像装置20(Y,M,C,K)の感光体ドラム21の下方に位置する一次転写位置T1を通過しながら矢印Bで示す方向に循環移動する中間転写ベルト31を備えている。一次転写位置T1においては、一次転写装置25(一次転写ロール)が中間転写ベルト31を介して感光体ドラム21の周面に接触している。一次転写装置25には、感光体ドラム21上のトナー像と逆極性の一次転写バイアス電圧が図示しない高圧電源により印加される。中間転写ベルト31は、複数のベルト支持ロール32~37によってその内周から所望の状態に保持して循環移動可能に支持されている。複数のベルト支持ロール32~37は、駆動ロールとしてのベルト支持ロール32と、中間転写ベルト31の走行位置などを保持する従動ロールとしてのベルト支持ロール33,35と、張力付与ロールとしてのベルト支持ロール34と、二次転写のバックアップロールとしてのベルト支持ロール36と、ベルト清掃装置38の支持ロールとしてのベルト支持ロール37から構成されている。
【0028】
ベルト支持ロール36に支持されている中間転写ベルト31の外周面(像保持面)には、中間転写ベルト31上のトナー像を記録用紙6に二次転写させる二次転写装置40が配置されている。二次転写装置40は、二次転写位置T2において中間転写ベルト31を支持するベルト支持ロール36と、当該ベルト支持ロール36に支持されている中間転写ベルト31の外周面部分に接触して回転するよう配置される二次転写ロール41とを備えた接触型の転写装置が採用される。この実施の形態1では、二次転写ロール41が接地処理されている。また、ベルト支持ロール36には、トナーの帯電極性と同極性であるマイナス極性の所要の二次転写バイアス電圧が、バイアス印加ロール39を介して図示しない高圧電源から供給される。中間転写ベルト31の二次転写装置40を通過した下流側には、その表面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置38が配置されている。なお、この実施の形態1では、二次転写ロール41を接地処理し、ベルト支持ロール36にトナーの帯電極性と同極性であるマイナス極性の所要の二次転写バイアス電圧を印加するように構成したが、これに限定されるものではなく、ベルト支持ロール36を接地処理し、二次転写ロール41にトナーの帯電極性と逆極性であるプラス極性の所要の二次転写バイアス電圧を印加するように構成しても良い。
【0029】
定着装置50は、表面温度が予め定められた温度に保持されるよう加熱手段(熱源)によって加熱される加熱ベルト51と、この加熱ベルト51に所要の圧力で接触して回転する加圧ロール52などを配置して構成されたものである。この定着装置50では、加熱ベルト51と加圧ロール52が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着ニップ部となる。なお、定着装置については、後に詳述する。
【0030】
給紙装置60は、中間転写装置30の下方の位置に存在するよう配置される。この給紙装置60は、所望のサイズ、種類等の記録用紙6を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体61と、用紙収容体61から記録用紙6を1枚ずつ送り出す送出装置62とで主に構成されている。用紙収容体61は、例えば、装置本体1aの正面(使用者が操作時に向き合う側面)側に引き出すことができるように取り付けられている。
【0031】
記録用紙6としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙やトレーシングペーパー等の薄紙、あるいは合成樹脂(PETなど)製の透明なフィルム状の媒体からなるOHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録用紙6の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表裏両面又は表面を樹脂等でコーティングしたコート紙なども好適に使用することができる。
【0032】
給紙装置60と二次転写装置40との間には、給紙装置60から送り出される記録用紙6を二次転写位置T2まで搬送する単数(又は複数)の用紙搬送ロール対63~66や図示しない搬送ガイド材で構成される給紙搬送路67が設けられている。給紙搬送路67において二次転写位置T2の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対66は、例えば記録用紙6の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。
【0033】
また、二次転写装置40と定着装置50との間には、二次転写装置40から送り出される記録用紙6を定着装置50まで搬送する複数(又は単数)の用紙搬送ベルト68,69,70で構成される用紙搬送路71が設けられている。
【0034】
定着装置50の下流側には、定着装置50によりトナー像が定着された記録用紙6を、装置本体1aの側面に配置された用紙排出部72に排出するための用紙排出ロール73を備えた排出搬送路74が設けられている。
【0035】
排出搬送路74の途中には、記録用紙6の表裏を反転させる反転搬送路75が下方へ向けて分岐されている。排出搬送路74の分岐位置には、記録用紙6の搬送方向を切り替える図示しない切替部材が設けられている。反転搬送路75には、回転方向が正転方向と逆転方向に切り替え可能な反転ロール対76が配置されている。反転搬送路75には、反転ロール対76の上部から左方に分岐した両面搬送路77が接続されている。両面搬送路77には、表裏が反転された記録用紙6を給紙搬送路67へと搬送する複数の両面搬送ロール対78~81や図示しない搬送ガイド材等が配置されている。
【0036】
図1中、符号100は、画像形成装置1の動作を統括的に制御する制御手段の一例としての制御装置を、符号14は、画像形成装置1を操作する操作装置をそれぞれ示している。操作装置14は、記録用紙6の種類や記録枚数等を入力する操作パネル14aと、入力された記録用紙6の種類や記録枚数等を表示する表示パネル14bを備えている。
【0037】
<画像形成装置の動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0038】
ここでは、前記4つの作像装置20(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するときの画像形成動作について説明する。
【0039】
画像形成装置1は、操作装置14を介して画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、制御装置100の制御によって、4つの作像装置20(Y,M,C,K)、中間転写装置30、二次転写装置40、定着装置50、給紙装置60等が始動する。
【0040】
そして、各作像装置20(Y,M,C,K)においては、まず各感光体ドラム21が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置22が各感光体ドラム21の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位に帯電させる。続いて、露光装置23が、帯電後の感光体ドラム21の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて発光される光LBを照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0041】
続いて、各現像装置24(Y,M,C,K)が、感光体ドラム21に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーをそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム21に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
【0042】
続いて、各作像装置20(Y,M,C,K)の感光体ドラム21上に形成された各色のトナー像が一次転写位置T1まで搬送されると、一次転写装置25が、その各色のトナー像を中間転写装置30の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト31に対して順番に重ね合わせるような状態で一次転写させる。
【0043】
また、一次転写が終了した各作像装置20では、ドラム清掃装置26が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム21の表面を清掃する。これにより、各作像装置20は次の作像動作が可能な状態にされる。
【0044】
続いて、中間転写装置30では、中間転写ベルト31の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置T2まで搬送する。一方、給紙装置60では、作像動作に合わせて所要の記録用紙6を給紙搬送路67に送り出す。給紙搬送路67では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対66が記録用紙6を転写時期に合わせて二次転写位置T2に送り出して供給する。
【0045】
二次転写位置T2においては、二次転写ロール41が、中間転写ベルト31上のトナー像を記録用紙6に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した後の中間転写装置30では、ベルト清掃装置38が、二次転写後の中間転写ベルト31の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0046】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙6は、中間転写ベルト31と二次転写ロール41から剥離された後に3連の用紙搬送ベルト68,69,70によって定着装置50まで搬送される。定着装置50では、回転する加熱ベルト51と加圧ロール52との間の定着ニップ部に二次転写後の記録用紙6を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙6に定着させる。
【0047】
定着処理が終了した後の記録用紙6は、排出搬送路74を介して用紙排出ロール73により、画像形成装置1の側面に設けられた用紙排出部72に排出される。
【0048】
また、画像形成装置1において、記録用紙6の両面に画像を形成する場合は、片面に画像が形成された記録用紙6を用紙排出ロール73によって用紙排出部72へ排出せずに、図示しない切替部材によって記録用紙6の搬送路が排出搬送路74から反転搬送路75へと切り替えられる。反転搬送路75へ導かれた記録用紙6は、反転ロール対76が記録用紙6の後端を挟持したままの状態で、当該反転ロール対76の回転方向が正転方向から逆転方向に切り替えられ、表裏が反転された状態で両面搬送路77へと搬送される。両面搬送路77へ搬送された記録用紙6は、複数の両面搬送ロール対78~81によって給紙搬送路67へ搬送され、中間転写ベルト31から裏面にトナー像が転写される。その後、記録用紙6は、定着装置50まで搬送されて、裏面に転写されたトナー像に対して定着装置50により定着処理(加熱及び加圧)が施され、排出搬送路74を経由して用紙排出ロール73により用紙排出部72へ排出される。
【0049】
以上の動作が行われることにより、4色のトナー(Y,M,C,K)からなるトナー像を組み合わせて形成されるフルカラー画像が記録用紙6の片面又は両面に形成される。また、複数枚の画像形成動作の要求指令を受けた場合は、その枚数分だけ上記画像形成動作が同様に繰り返して行われる。なお、上述したように、フルカラー画像以外に、1乃至3つの作像装置においてトナー像を形成することにより、モノクロ画像を含む1乃至3色のトナー像を適宜組み合わせた画像も、同様の画像形成動作によって記録用紙6上に形成される。
【0050】
<定着装置の構成>
上記の如く構成される画像形成装置1は、記録媒体の表面に形成された画像を定着する定着手段の一例としての定着装置50を備えている。
【0051】
この実施の形態1に係る定着装置50は、図2に示されるように、大別して、無端状のベルトの一例としての加熱ベルト51と、加熱ベルト51に圧接する加圧手段の一例としての加圧ロール52を備えている。加熱ベルト51は、当該加熱ベルト51の内周に配置される複数の張架手段の一例としての内部加熱ロール53(第1張架ロール)と、補正手段の一例としてのステアリングロール54(第2張架ロール)と、加圧パッド55(押圧部材)の外周に回転(循環移動)可能に所要の張力で張架されている。複数の張架手段は、内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55の3つに限定されるものではなく、内部加熱ロール53とステアリングロール54の2つのみであっても、或いは他の内部加熱ロールや外部加熱ロール、及び張架ロールなどからなる4つ以上の張架手段から構成しても良い。なお、ステアリングロール54は、複数の張架手段のうち、変位させることで加熱ベルト51の片寄を補正する1つの張架手段に相当する。加熱ベルト51、内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55は、ベルト搬送装置の一例としての加熱ベルトモジュール56を構成している。張架手段としては、加圧パッド55の代わりに回転可能なロールを用いても良い。
【0052】
加熱ベルトモジュール56は、内部加熱ロール53とステアリングロール54の間において、加熱ベルト51の内周面に接触して清掃するとともに潤滑剤を供給するウィック等からなる接触部材57を備えている。潤滑剤としては、シリコンオイル等が用いられる。接触部材57は、図3に示されるように、加熱ベルト51の移動方向と交差する方向である幅方向(ステアリングロール54の軸方向)に沿った長さが、加熱ベルト51の全幅よりも所要の長さだけ短く設定されている。
【0053】
接触部材57の全幅が加熱ベルト51の幅方向に沿った長さと等しいか僅かに短い場合は、加熱ベルト51が幅方向に沿った端部に移動する所謂ウォーク現象が発生すると、接触部材57の端部が加熱ベルト51の端部から露出するか又は近接し、加熱ベルト51の表面側に潤滑剤が移動して記録用紙6を汚損する虞があり、これを回避するためである。
【0054】
加熱ベルト51は、可撓性を有する無端状ベルトとして構成されている。加熱ベルト51は、基材層と、基材層の表面に被覆された弾性体層と、弾性体層の表面に被覆された表面層を備える。
【0055】
基材層は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の耐熱性を有する合成樹脂や、ステンレス、ニッケル、銅等の金属によって形成される。基材層の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることがより好ましい。
【0056】
弾性体層は、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性を有する弾性体からなる。弾性体層の厚みは、30μm以上600μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0057】
表面層は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等によって形成される。表面層の厚みは、100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましく、10μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
【0058】
なお、基材層と弾性体層の間には、必要に応じて図示しない接着層が介在される。
【0059】
加熱ベルト51は、加圧パッド55の外周面に巻き付けられた領域において加圧ロール52と圧接されている。加熱ベルト51と加圧パッド55が圧接する圧接部が未定着トナー像Tを保持した記録用紙6が通過する定着ニップ部Nを構成している。
【0060】
定着ニップ部Nの記録用紙6の搬送方向に沿った入口側には、未定着トナー像Tを保持した記録用紙6を定着ニップ部Nへと案内する平板状の第1の案内部材611が配置されている。また、定着ニップ部Nの記録用紙6の搬送方向に沿った出口側には、未定着トナー像Tが定着された記録用紙6を定着装置50の外部へと案内する平板状の第2の案内部材612が配置されている。
【0061】
定着ニップ部Nの出口は、加熱ベルト51と加圧パッド55が圧接する定着ニップ部Nによって定着された記録用紙6を、加熱ベルト51の曲率によって記録用紙6の“腰”(剛性)を利用して加熱ベルト51の表面から剥離するため、加熱ベルト51の圧接力が急激に変化するよう加圧ロール52の表面に対して凹形成に形成されている。
【0062】
なお、定着ニップ部Nの出口には、加熱ベルト51の表面から記録用紙6を強制的に剥離する図示しない剥離爪等の剥離補助部材を設けても良い。
【0063】
内部加熱ロール53は、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円筒形状の芯金531と、芯金531の外周に一様な厚さに被覆された耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体や耐熱性を有する合成樹脂等からなる被覆層532を有している。内部加熱ロール53は、その外周面の形状が円筒形状に形成されている。なお、内部加熱ロール53の被覆層532の表面には、必要に応じて、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層を設けても良い。内部加熱ロール53の内部には、加熱部(加熱源)の一例として複数(図示例では3本)のハロゲンランプ533a,533b,533cが配置されている。3本のハロゲンランプ533a,533b,533cは、例えば、記録用紙6の搬送方向と交差する方向に沿ったサイズに応じて加熱領域が適宜設定される。
【0064】
内部加熱ロール53は、第1付勢手段としての第1のコイルスプリング534によって加熱ベルト51を内側から半径方向の外側へ向けて押圧されており、加熱ベルト51に所要の張力を付与している。
【0065】
ステアリングロール54は、内部加熱ロール53と同様、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円筒形状の芯金541aと、芯金541aの外周に一様な厚さに被覆された耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる弾性体や耐熱性を有する合成樹脂等からなる被覆層542aを有している。ステアリングロール54は、その外周面の形状が円筒形状に形成されている。ステアリングロール54の被覆層542aの表面には、必要に応じて、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層を設けても良い。ステアリングロール54の内部には、加熱部(加熱源)の一例として複数(図示例では2本)のハロゲンランプ543a,543bが配置されている。2本のハロゲンランプ543a,543bは、例えば、記録用紙6の搬送方向と交差する方向に沿ったサイズに応じて適宜加熱領域が設定される。ステアリングロール54の外径は、内部加熱ロール53より小さく設定されている。なお、ステアリングロール54は、内部に加熱部(加熱源)を備えないものであっても勿論良い。
【0066】
加圧パッド55は、図2に示されるように、例えば、アルミニウムやステンレス、鉄あるいは合成樹脂等の剛性を有する材料からなり、断面形状が略角筒状や略角柱状に形成された部材である。加圧パッド55は、例えば、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等からなる金属によって一体的に形成される。但し、加圧パッド55としては、これに限定されるものではなく、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等からなる金属と金属との組合せや、アルミニウムやステンレスあるいは鉄等からなる金属と合成樹脂との組合せなど、2以上(複数)の部材を組み合わせて構成しても良い。なお、この実施の形態では、加圧パッド55をアルミニウムやステンレスあるいは鉄等の金属からなる略断面角筒形状のパッド本体551と、パッド本体551の加圧ロール52側に配置された加圧部材552とから構成している。
【0067】
加圧部材552は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性及び剛性を有する合成樹脂、あるいは鉄やアルミニウム、ステンレス等の金属を材料として形成することができる。
【0068】
加圧パッド55の内部には、加熱部(加熱源)の一例として複数(図示例では2本)のハロゲンランプ553a,553bが配置されている。2本のハロゲンランプ553a,553bは、例えば、記録用紙6の搬送方向と交差する方向に沿ったサイズに応じて適宜加熱領域が設定される。
【0069】
加圧パッド55は、第2の付勢手段としての第2のコイルスプリング554によって加熱ベルト51を内側から加圧ロール52の外周面へ向けて所要の押圧力で圧接されている。
【0070】
内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55は、各々の表面温度が温度検出手段の一例としての図示しない複数の温度センサによってそれぞれ検知される。内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55は、温度センサの検知結果に基づいてハロゲンランプ533a,533b,533c、ハロゲンランプ543a,543b及びハロゲンランプ553a,553bへの通電を図示しないトライアック等を用いた温度制御回路によって制御することにより、加熱ベルト51の表面が所要の定着温度(例えば、170℃~190℃)となるよう加熱される。
【0071】
加圧ロール52は、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円筒形状又は円柱形状の芯金521と、芯金521の外周に被覆された耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる弾性体層522と、弾性体層の外周に被覆されたパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層523とを備えている。
【0072】
加圧ロール52は、定着装置50の図示しないフレームに軸受部材を介して回転可能に支持されている。加圧ロール52は、図示しない駆動手段によって矢印方向Cに沿って回転駆動される。また、加圧ロール52は、図示しない接離手段によって加熱ベルトモジュール56の加圧パッド55に対して接触及び離間する方向に移動可能に構成されている。
【0073】
なお、加熱ベルト51は、加圧ロール52の外周面に圧接された状態で加圧ロール52の回転に伴い矢印方向Dに沿って同一の速度で従動回転する。
【0074】
このように構成される定着装置50では、加熱ベルト51の層厚のバラツキや、当該加熱ベルト51を張架する内部加熱ロール53、ステアリングロール54及び加圧パッド55の位置精度の初期的なバラツキ、あるいは温度変化に伴う位置変動等の種々の要因によって、加熱ベルト51が移動方向と交差する方向に沿った端部へと移動する所謂ウォーク現象が発生することが知られている。
【0075】
この実施の形態1に係る定着装置50では、図3に示されるように、加熱ベルト51にウォーク現象が発生すると、加熱ベルト51の幅方向に沿った端部が規制部材に当接して当該加熱ベルト51の端部が損傷するのを抑制するため、ステアリングロール54を加熱ベルト51の移動方向と交差する方向に沿って傾斜させることにより、加熱ベルト51のウォーク現象を補正する補正手段を有している。
【0076】
補正手段は、図2及び図3に示されるように、当該補正手段の一部を構成するステアリングロール54を備えている。ステアリングロール54は、その軸方向に沿った両端部が加熱ベルト51の移動方向と交差する方向に沿って移動可能に支持されている。
【0077】
ステアリングロール54は、図3及び図4に示されるように、加熱ベルト51を張架する円筒形状又は円柱形状の張架部541と、張架部541を貫通するか又は長手方向に沿った両端部にそれぞれ回り止め状態で設けられた回転軸542,543と、張架部541の両端部に別体としてそれぞれ設けられたプーリ部544,545とを備えている。左右のプーリ部544,545は、内側の端面間の距離Lが加熱ベルト51の移動方向と交差する方向の長さ(幅)と等しいか又は当該幅より大きく設定されている。加熱ベルト51は、通常、その幅方向に沿った端面がプーリ部544,545の端面に接触するか又は離間した状態で張架されている。プーリ部544,545は、ステアリングロール54の回転軸542,543に対してフリーな状態、つまり回転軸542,543と共に回転せずに図示された状態を維持するよう装着されている。
【0078】
プーリ部544,545は、図4に示されるように、金属又は硬質の合成樹脂により所要の厚さを有する円板状に形成されている。プーリ部544,545には、円板状に形成された円板部544a,545aと、円板部544a,545aの軸方向に沿った内側に設けられた円筒部544b,545bと、円板部544a,545aの外周面に半径方向に沿った外方へ向けて突出するよう側面略三角柱形状に形成された傾斜面部544c,545cと、傾斜面部544c,545cの軸方向に沿った内側の両端部にステアリングロール54の回転軸542,543と直交するようにそれぞれ形成された相対的に直径が大きい端面544d,545dとを有している。プーリ部544,545の端面544d,545dは、その外径がステアリングロール54の張架部541の外径より大きく設定されており、加熱ベルト51の端面が当接するフランジ部を構成している。加熱ベルト51は、ステアリングロール54の軸方向に沿って移動した際に、その端面がプーリ部544,545の端面544d,545dに突き当たりプーリ部544,545を押動する。プーリ部544,545の傾斜面544d,545dは、回転軸542,543に対する傾斜角度が例えば60度程度に設定されるが、その傾斜角度はこれより小さい30~45度程度であっても良く、又、これより大きな70~80度程度に設定しても良い。
【0079】
定着装置50の板金等からなる本体フレーム501には、図4に示されるように、プーリ部544,545の傾斜面部544d,545dに当接するローラ544e,545eが回転可能に配置されている。ローラ544e,545eは、定着装置50の本体フレーム501に固定された支持部材544f,545fに回転可能に設けられている。
【0080】
ステアリングロール54は、定着装置50の本体フレーム501に設けられた長孔502を介して加熱ベルト51の移動方向と交差する方向に沿って移動可能に装着されている。ステアリングロール54の回転軸542,543の端部は、本体フレーム501の外側に配置された軸受部材503によって回転可能に支持されている。軸受部材503は、当該軸受部材503に一端が連結されたコイルスプリング504によってプーリ部544,545の傾斜面544d,545dがローラ544e,545eに常時当接するよう図中上方へ向けて付勢されている。なお、コイルスプリング504の他端部は、本体フレーム501に係止されている。
【0081】
加熱ベルト51がステアリングロール54の軸方向に沿った端部移動するウォーク現象が発生した場合には、図3に示されるように、加熱ベルト51が幅方向に沿った端部に移動し、加熱ベルト51の端部がプーリ部544,545の端面544d,545dに当接する。そして、加熱ベルト51が幅方向に沿った端部に向けて更に移動すると、加熱ベルト51の端部がプーリ部544,545を軸方向に沿った外側へ向けて押動することになる。
【0082】
すると、プーリ部544,545は、その傾斜面部544c,545cが本体フレーム501側に設けられたローラ544e,545eによって押し下げられ、ステアリングロール54は、図5に示されるように、軸方向に沿った中央部を中心として加熱ベルト51の端部が当接した側が図中下方へ移動するよう傾斜する。その際、ステアリングロール54の他方の端部は、軸方向に沿った中央部を中心として反対方向である図中上方へ移動する。
【0083】
その結果は、加熱ベルト51は、図中下方へ移動するよう傾斜したステアリングロール54によって張架された端部の張力が中央部に比較して大きくなり、幅方向に沿った端部と反対側へ移動する力が作用する。そして、加熱ベルト51は、幅方向に沿った端部へ移動しようとする力と、ステアリングロール54が傾斜することによって幅方向に沿った端部と反対側へ移動する力が釣り合った位置で停止し、加熱ベルト51に発生したウォーク現象が防止乃至抑制される。
【0084】
なお、加熱ベルト51のウォーク現象が防止乃至抑制された位置は、加熱ベルト51が幅方向に沿った中央部へ復帰した位置である場合もあれば、加熱ベルト51の端部がプーリ部544,545の端面544d,545dに接触したままの状態である場合もある。
【0085】
ところで、上記の如く構成される定着装置50では、図2に示されるように、加熱ベルト51の内面に潤滑剤を塗布する接触部材57が設けられている。接触部材57は、加熱ベルト51にウォーク現象が発生した際、当該接触部材57によって供給される潤滑剤が加熱ベルト51の端部に付着するのを防止するため、加熱ベルト51の幅方向に沿った長さが大幅に短く設定されている。そのため、加熱ベルト51にウォーク現象が発生した場合には、図5に示されるように、接触部材57によって加熱ベルト51の端部に潤滑剤が供給されず、潤滑剤の供給不足に起因して加熱ベルト51の端部内面の摩耗や摩耗によって発生した摩耗粉の回収が不十分となるという技術的課題を有していた。
【0086】
そこで、この実施の形態1に係る定着装置は、ベルトが軸方向に沿った端部に移動したとき、ベルトの軸方向に沿った端部の内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を備えるよう構成されている。
【0087】
また、この実施の形態1に係る定着装置は、潤滑剤塗布手段は、装置本体側に固定した状態で設けられるよう構成されている。
【0088】
すなわち、この実施の形態1に係る定着装置50は、図3及び図4に示されるように、ステアリングロール54の近傍において、加熱ベルト51の移動方向に沿った上流側又は下流側に、加熱ベルト51の軸方向に沿った端部の内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段の一例としての左右の端部ウィック92,93がそれぞれ配置されている。端部ウィック92,93は、シリコンオイル等からなる潤滑剤が含浸された不織布等から構成されている。
【0089】
左右の端部ウィック92,93は、図4に示されるように、定着装置50の装置本体側の部材の一例としての本体フレーム501に固定された状態で取り付けられた板金94に接着等の手段により設けられている。板金94は、その基端部側がクランク状に折り曲げられており、当該基端部が支持部材544f,545fにネジ止めや接着等の手段によって固定されている。
【0090】
左右の端部ウィック92,93は、図3に示されるように、通常、加熱ベルト51の内面から離間しており、加熱ベルト51の内面と非接触状態に配置されている。
【0091】
一方、左右の端部ウィック92,93は、図4に示されるように、加熱ベルト51が幅方向の端部に移動するウォーク現象が発生すると、ウォーク現象が発生した側の加熱ベルト51の端部がステアリングロール54のプーリ部544,545の端面544d,545dに当接して当該ステアリングロール54の端部を押し下げる結果、ステアリングロール54に張架された加熱ベルト51も下方へ移動して、当該加熱ベルト51の端部近傍の内面に接触する接触状態となる位置に配置されている。ただし、左右の端部ウィック92,93が接触状態となる位置は、加熱ベルト51が幅方向の端部に移動するウォーク現象が発生した際に接触する位置ではあるが、加熱ベルト51の端部がステアリングロール54のプーリ部544,545の端面544d,545dに当接した際においても、当該加熱ベルト51の端部に対して所要のマージンを有する位置に設定されている。したがって、左右の端部ウィック92,93は、加熱ベルト51にウォーク現象が発生した状態においても、当該左右の端部ウィック92,93によって供給される潤滑剤が加熱ベルト51の表面側に回り込む虞はない。
【0092】
以上の構成において、この実施の形態1に係る定着装置では、次のようにして、ベルトにその移動方向と交差する方向に沿った端部への移動が発生した場合でも、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給を可能となっている。
【0093】
すなわち、この実施の形態1に係る定着装置50では、図3に示されるように、通常、加熱ベルト51の内面には、主潤滑剤供給手段としての接触部材57のみが接触して潤滑剤を供給するようになっている。
【0094】
一方、この実施の形態1に係る定着装置50では、図6に示されるように、加熱ベルト51が幅方向に沿った端部に移動するウォーク現象が発生すると、加熱ベルト51の端部がステアリングロール54のプーリ部544,545の端面544d,545dに当接して押動することにより、ステアリングロール54の回転軸542,543が傾斜して、加熱ベルト51のウォーク現象が発生した側の端部の内面に左右いずれかの端部ウィック92,93によって潤滑剤が供給される。
【0095】
加熱ベルト51の内面には、ウォーク現象が発生した場合でも、接触部材57と共に左右いずれかの端部ウィック92,93によって潤滑剤が供給されるため、潤滑剤の供給不足や加熱ベルト51の内面が摩耗することによって発生する摩耗粉の回収不足が発生するのを防止乃至抑制することができる。
【0096】
実施の形態2
図7及び図8はこの発明の実施の形態2に係る定着装置を示すものであり、この実施の形態2は、潤滑剤塗布手段は、ベルトの軸方向に沿った端部への移動に伴ってベルトの軸方向に沿った端部に移動するよう構成されている。
【0097】
また、この実施の形態2は、潤滑剤塗布手段は、補正手段に固定した状態で設けられるよう構成されている。
【0098】
すなわち、この発明の実施の形態2に係る定着装置50では、図7及び図8に示されるように、潤滑剤供給手段としての接触部材が接触部材57と端部ウィック92,93に分割されているのではなく、潤滑剤供給手段としての接触部材95が1つのみ設けられている。
【0099】
この接触部材95は、図7及び図8に示されるように、板金96に接着等の手段により設けられている。板金96の両端部は、ステアリングロール54のプーリ部544,545における傾斜面部544c,545cの内側面に固定された状態で取り付けられている。板金96の両端部は、例えば、プーリ部544,545の傾斜面部544c,545cの内側面に設けられた図示しない凹溝に挿入された状態でプーリ部544,545の傾斜に応じて屈曲可能に固定されている。
【0100】
接触部材95の加熱ベルト51の幅方向に沿った長さは、当該加熱ベルト51の幅方向に沿った長さよりも短く、且つ加熱ベルト51が幅方向に沿った端部に移動するウォーク現象が発生した場合でも、当該接触部材95の端部が加熱ベルト51の端部に達しない所要のマージンを有する長さに設定されている。接触部材95は、常時、加熱ベルト51の内面に接触している。
【0101】
この実施の形態2に係る定着装置50では、図9に示されるように、加熱ベルト51が幅方向に沿った端部に移動するウォーク現象が発生すると、加熱ベルト51の端部がステアリングロール54のプーリ部544,545に当接し、ステアリングロール54が傾斜した状態となる。
【0102】
このとき、接触部材95は、プーリ部544,545の傾斜面部544c,545cの内側面に固定した状態で設けられているため、ステアリングロール54が傾斜すると、傾斜したステアリングロール54と共に傾斜する。そして、加熱ベルト51もステアリングロール54と共に傾斜した状態で移動することになるが、ステアリングロール54に張架された加熱ベルト51は、ステアリングロール54と略一定の位置関係を保持して移動するため、ステアリングロール54と略一定の位置関係にある接触部材95は、ウォーク現象が発生した加熱ベルト51の内面に接触した状態を維持する。
【0103】
その結果、この実施の形態2に係る定着装置50では、図9に示されるように、ウォーク現象が発生した加熱ベルト51の内面に接触した状態を維持する接触部材95によって、加熱ベルト51の幅方向に沿った端部の内面にわたり潤滑剤を供給することが可能となっている。なお、図9では、接触部材95が加熱ベルト51の幅方向に沿った右側の端部へと移動して内面に接触している状態を示しているものである。
【0104】
したがって、加熱ベルト51の内面には、ウォーク現象が発生した場合でも、接触部材95によって潤滑剤が供給されるため、潤滑剤の供給不足や加熱ベルト51の内面が摩耗することによって発生する摩耗粉の回収不足が発生するのを防止乃至抑制することができる。
【0105】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0106】
なお、前記実施の形態では、記録用紙上に未定着トナー像を定着する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、未定着トナー像以外の定着に使用するものであっても良いことは勿論である。
【0107】
(付記)
(((1)))
無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架手段と、
前記複数の張架手段のうち1つの張架手段を変位させて前記ベルトの軸方向に沿った端部への移動を補正する補正手段と、
前記ベルトが軸方向に沿った端部に移動したとき、前記ベルトの軸方向に沿った端部の内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段と、
を備えるベルト搬送装置。
【0108】
(((2)))
前記潤滑剤塗布手段は、前記ベルトが軸方向に沿った端部に移動したときのみ、前記ベルトの軸方向に沿った端部の内面に接触する(((1)))に記載のベルト搬送装置。
【0109】
(((3)))
前記潤滑剤塗布手段は、装置本体側に固定した状態で設けられる(((1)))又は(((2)))に記載のベルト搬送装置。
【0110】
(((4)))
前記潤滑剤塗布手段は、前記ベルトの軸方向に沿った端部への移動に伴って前記ベルトの軸方向に沿った端部に移動する(((1)))に記載のベルト搬送装置。
【0111】
(((5)))
前記潤滑剤塗布手段は、前記補正手段に固定した状態で設けられる(((4)))に記載のベルト搬送装置。
【0112】
(((6)))
無端状のベルトを搬送するベルト搬送手段と、
前記ベルト搬送手段によって搬送される無端状のベルトを用いて記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記ベルト搬送手段として(((1)))乃至(((5)))の何れかに記載のベルト搬送装置を用いた定着装置。
【0113】
(((7)))
前記記録媒体の表面に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体の表面に形成された画像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として(((6)))に記載の定着装置を用いた画像形成装置。
【0114】
(((1)))に係るベルト搬送装置によれば、ベルトにその移動方向と交差する方向に沿った端部への移動が発生した場合でも、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給が可能となる。
【0115】
(((2)))に係るベルト搬送装置によれば、潤滑剤塗布手段は、ベルトが軸方向に沿った端部に移動したときを含め、常時、ベルトの軸方向に沿った端部の内面に接触する場合に比べて、潤滑剤がベルトの表面側に転移する虞を抑制することができる。
【0116】
(((3)))に係るベルト搬送装置によれば、潤滑剤塗布手段は、装置本体側以外に固定した場合に比べて、潤滑剤塗布手段の位置決めが容易となる。
【0117】
(((4)))に係るベルト搬送装置によれば、潤滑剤塗布手段は、装置本体側に固定して設けられた場合に比べて、ベルトの軸方向に沿った端部に潤滑剤を確実に塗布することができる。
【0118】
(((5)))に係るベルト搬送装置によれば、潤滑剤塗布手段は、補正手段以外に固定した場合に比べて、潤滑剤塗布手段を容易に設けることができる。
【0119】
(((6)))に係る定着装置によれば、ベルト搬送手段として(((1)))乃至(((5)))の何れかに記載のベルト搬送装置を用いない場合に比べて、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給が可能となり、ベルトの移動を円滑に行うことができる。
【0120】
(((7)))に係る画像形成装置によれば、定着手段として(((6)))に記載の定着装置を用いない場合に比べて、ベルトが移動した端部内面への潤滑剤の供給が可能となり、ベルトを用いた定着装置の長寿命化が可能となる。
【符号の説明】
【0121】
1…画像形成装置
50…定着装置
51…加熱ベルト
54…ステアリングロール
92,93…端部ウィック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9