(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048884
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】印刷システム、複製物の生産方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240402BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H04N1/00 F
H04N1/00 127A
G06F3/12 342
G06F3/12 303
G06F3/12 378
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155023
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐司
(72)【発明者】
【氏名】坂井 俊文
【テーマコード(参考)】
5C062
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AA13
5C062AB20
5C062AB22
5C062AB23
5C062AB41
5C062AB43
5C062AB44
5C062AC02
5C062AC22
5C062AC65
5C062AE03
5C062AF14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面に模様のある立体物を複製する場合のユーザーの使い勝手を向上させる印刷システム及び複製物の生産方法を提供する。
【解決手段】印刷システム1は、立体物の表面の模様をスキャンするスキャナー40、スキャンデータに基づいて前記立体物に対応する立体の印刷媒体を選択する選択部と、スキャンデータに基づいて印刷データを生成する生成部と、選択された前記印刷媒体の表面に前記印刷データに基づいた模様を形成させ、前記立体物の複製をする印刷部と、して機能するプロセッサ―を備えるサーバー10及び立体の印刷媒体の表面に画像を形成するプリンター30を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物の表面の模様をスキャンするスキャナーと、
スキャンデータに基づいて前記立体物に対応する立体の印刷媒体を選択する選択部と、
前記スキャンデータに基づいて印刷データを生成する生成部と、
選択された前記印刷媒体の表面に前記印刷データに基づいた模様を形成させ前記立体物の複製をする印刷部と、
を備える印刷システム。
【請求項2】
前記選択部は、在庫が有る前記印刷媒体の中から前記立体物に対応する立体の前記印刷媒体を選択する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記選択部は、前記立体物の形状と一致度が最も高い形状の前記印刷媒体を選択する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記選択部は、前記立体物の地色と一致度が最も高い地色の前記印刷媒体を選択する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記選択部は、在庫が有り、且つ、前記立体物の形状との一致度が最も高い形状且つ前記立体物の地色との一致度が最も高い地色の前記印刷媒体がない場合、在庫が有る前記印刷媒体のうち前記立体物の形状との一致度が最も高い前記印刷媒体を前記立体物の地色との一致度が最も高い前記印刷媒体よりも優先して選択する、
請求項2に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記選択部は、前記スキャンデータに基づいて前記立体物に対応する立体の前記印刷媒体を選択した後、ユーザーから前記印刷媒体の変更指示を受け付け、変更された前記印刷媒体を改めて選択する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項7】
立体物の表面の模様をスキャンし、
スキャンデータに基づいて前記立体物に対応する立体の印刷媒体を選択し、
前記スキャンデータに基づいて印刷データを生成し、
選択された前記印刷媒体の表面に前記印刷データに基づいた模様を形成して前記立体物の複製物を生産する、
ことを含む複製物の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、複製物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多関節ロボットを用いて立体物の表面に印刷を行う技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面に模様のある立体物を複製する場合のユーザーの使い勝手を向上させる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための印刷システムは、立体物の表面の模様をスキャンするスキャナーと、スキャンデータに基づいて立体物に対応する立体の印刷媒体を選択する選択部と、スキャンデータに基づいて印刷データを生成する生成部と、選択された印刷媒体の表面に印刷データに基づいた模様を形成させ立体物の複製をする印刷部と、を備える。
【0006】
上記の課題を解決するための副生物の生産方法は、立体物の表面の模様をスキャンし、スキャンデータに基づいて立体物に対応する立体の印刷媒体を選択し、スキャンデータに基づいて印刷データを生成し、選択された印刷媒体の表面に印刷データに基づいた模様を形成して立体物の複製物を生産する、ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1) 印刷システムの構成:
(1-1)サーバーの構成:
(1-2)端末の構成:
(1-3)スキャナーの構成:
(1-4)プリンターの構成:
(2)複製処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)印刷システムの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる印刷システムの一例を模式的に示す図である。印刷システム1は、サーバー10、端末20、プリンター30、スキャナー40を備える。図示された装置の数は一例であり、数は限定されない。例えば、複数台表記された端末20は
図1に図示された数に限定されないし、1台表記されたサーバー10やスキャナー40やプリンター30は複数であっても良い。これらの装置は、ネットワークを介して互いに通信することができる。ネットワークの態様は種々の態様であって良く、ローカルネットワークであっても良いし、インターネット等を介して物理的に離れた位置に存在する装置同士が通信しても良い。
【0010】
本実施形態において、端末20とプリンター30とスキャナー40は、一例として写真店や雑貨店等の店舗内に設置されている。端末20は、店舗のスタッフが使用する端末(スタッフ端末22)と、各プリンター30のプリンタードライバーがインストールされた端末(印刷制御端末23)を含んでいる。なお、もちろんこれらが同じ装置で実現されてもよい。当該店舗では、既に模様が形成された立体物の媒体(マグカップやスマートフォンケース等)の複製物を製作するサービスを提供する。具体的には、模様が形成された立体物がスキャナー40によってスキャンされ、当該立体物の態様(形状、色)と一致度の高い印刷媒体が店舗の在庫データの中から選択され、選択された印刷媒体に当該立体物の表面の模様が形成される。既に模様が形成された立体物とは、例えば、店舗のカスタマーによって店舗に持ち込まれた物であることを想定してよい。
【0011】
本実施形態においては、プリンター30は昇華転写式のプリンターであり、プリンター30が昇華転写紙に印刷した画像を昇華転写するためのプレス機(例えば、マグカップ等の円筒形の物体の表面に転写するためのマグプレス機、スマートフォンカバーに転写するためのプレス機等)も店舗に設置される。
【0012】
以下、上述の複製サービスを実現するための印刷システム1の各装置の構成を説明する。
(1-1)サーバーの構成:
図2は、サーバー10の構成を示すブロック図である。サーバー10は、プロセッサー10aと、通信部10bと、不揮発性メモリー10cとを備える。プロセッサー10aは、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー10cに記録された種々のプログラムを実行しサーバー10の各部やネットワークに接続された各装置を制御することができる。なお、プロセッサー10aは、単一のチップで構成されても良いし、複数のチップで構成されても良いし、プリンターを動作させる様々な機能ブロックとともにSoCとして構成されていても良い。また、例えばCPUに替えてASICが採用されても良いし、CPUとASICとが協働する構成であっても良い。本実施形態における各装置がプロセッサーを備える場合、そのプロセッサーは、プロセッサー10aと同様に種々の態様で実現可能である。
【0013】
通信部10bは、外部機器と有線または無線の各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。サーバー10は、当該通信部10bを介して他の装置と通信することが可能である。なお、通信部10bは、サーバー10に装着された各種のリムーバブルメモリーと通信するためのインターフェースを含んでいてもよい。
【0014】
サーバー10の不揮発性メモリー10cには、各種の情報が蓄積される。例えば、在庫データ10c3が記録されている。在庫データ10c3は、店舗で扱う印刷媒体の種類毎の在庫数を示すデータである。
図3は、在庫データ10c3の一例を示す図である。本実施形態においては、
図3に示すように、印刷媒体は品番で識別され、印刷媒体毎に印刷媒体の各部の寸法や色と、店舗における在庫数が記録されている。
【0015】
また、不揮発性メモリー10cには、スキャナー40の読取結果を示すスキャンデータ10c2が記録される。スキャンデータ10c2は、スキャンされた立体物の輪郭の形状(各部の寸法)を示すデータと、当該立体物の表面の模様を示すデータとを含む。表面の模様を示すデータには、図柄が形成されていない地色部分も含まれる。さらに、不揮発性メモリー10cには、スキャンデータ10c2に基づいて生成された印刷データ10c1が記録される。本実施形態において、印刷データ10c1は、立体物の表面の模様を同一平面上に配置した画像であって、昇華転写紙に印刷する対象の画像である。
【0016】
本実施形態において、プロセッサー10aは、スキャンデータ10c2に基づいて立体物に対応する立体の印刷媒体を選択する選択部10a1として機能する。また、プロセッサー10aは、スキャンデータ10c2に基づいて印刷データ10c1を生成する生成部10a2として機能する。また、プロセッサー10aは、選択された印刷媒体の表面に印刷データに基づいた模様を形成させ立体物の複製をする印刷部10a3として機能する。詳細は後述する。
【0017】
(1-2)端末の構成:
図4は、端末20構成を示すブロック図である。端末20は、プロセッサー20aと、通信部20bと、不揮発性メモリー20cと、ディスプレイ20dと、入力部20eとを備える。プロセッサー20aは、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー20cに記録された種々のプログラムを実行し端末20の各部を制御することができる。
【0018】
通信部20bは、外部機器と有線または無線の各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。端末20は、当該通信部20bを介して他の装置と通信することが可能である。また、通信部20bは、端末20に装着された各種のリムーバブルメモリーと通信するためのインターフェースを含む。
【0019】
ディスプレイ20dは、任意の画像を表示する表示装置である。入力部20eは、ユーザーが入力操作を行う装置であり、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される。いずれにしても、ユーザー(カスタマーまたはスタッフ)は、ディスプレイ20dに表示される画像や文字を視認しながら、入力部20eを操作してユーザーの意図を入力することができる。
【0020】
スタッフは、立体物をスキャナー40にスキャンさせる。スキャンデータはスキャナー40からサーバー10に送信され、不揮発性メモリー10cに記録される。スタッフは、スタッフ端末22を操作して、サーバー10に保存されたスキャンデータ10c2をサーバー10が提供するWebサイトを介して選択し、スキャンした立体物に対応する立体の印刷媒体の選択を指示することができる。サーバー10は、スキャンデータ10c2に基づいて選択した印刷媒体の品番を、Webサイトを介して表示することでスタッフに提案する。この提案により、スタッフは立体物の複製のために用いる印刷媒体の品番を認識することができる。スタッフは、サーバー10に保存されたスキャンデータ10c2に基づく印刷の部数を、Webサイトを介して指定し、印刷を指示する。サーバー10はスキャンデータ10c2に基づいて印刷データ10c1を生成し、印刷制御端末23に印刷指示を送信する。印刷指示には、プリンター30の識別情報、部数、印刷データ(印刷対象の画像)、印刷設定等が含まれる。
【0021】
印刷制御端末23は、通信部20bを介して、サーバー10から印刷指示を受信すると、プリンタードライバーを実行して、指定された印刷設定に基づいて印刷データの画像を指定されたプリンター30での印刷形式に変換し、変換したデータを部数の情報とともにプリンター30に出力する。
【0022】
(1-3)スキャナーの構成:
図5は、スキャナー40の構成を示すブロック図である。スキャナー40は、プロセッサー40aと、通信部40bと、不揮発性メモリー40cと、読取部40dと、UI部40eを備える。プロセッサー40aは、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー40cに記録された種々のプログラムを実行しスキャナー40の各部を制御することができる。
【0023】
通信部40bは、外部機器と有線または無線の各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。スキャナー40は、当該通信部40bを介して他の装置と通信することが可能である。なお、通信部40bは、スキャナー40に装着された各種のリムーバブルメモリーと通信するためのインターフェースを含んでいてもよい。
【0024】
読取部40dは、立体物の輪郭の形状および表面の模様を読み取る部位であり、据え置き式、ハンディ式等、各種の方式が採用されてよい。本実施形態において読取部40dは、例えば、スキャン対象の立体物を載置して回転する台と、台を回転させるためのアクチュエーターや機械部品、台上に載置された立体物に光(例えばレーザー、LED等)を照射する照射部、反射光を読み取るセンサー等を備えている。プロセッサー30aは、読取部40dで生成されたデータに基づいて、立体物の3D形状を示すデータと、表面の模様を示すデータを含むスキャンデータを生成する。
【0025】
UI部40eは、タッチパネルディスプレイや各種のキーやスイッチ等を含む。タッチパネルディスプレイは、各種の情報、例えば、スキャナー40のステータス等を表示する表示パネルと、当該表示パネルに重ねられたタッチ検出パネルとを備え、タッチ操作を検出する。プロセッサー40aは、UI部40eを介してスタッフの操作内容を取得することができる。また、プロセッサー40aは、UI部40eのディスプレイに各種の情報を表示しスタッフに通知することができる。
【0026】
本実施形態においてスキャナー40は、写真店や雑貨店等の店舗内に設置され、スタッフの操作に応じてマグカップやスマートフォンケース等の立体物をスキャンする。スキャナー40のプロセッサー40aは、通信部40bを介して、スキャン結果であるスキャンデータをサーバー10に送信する。サーバー10には、スキャンデータ10c2が蓄積される。
【0027】
(1-4)プリンターの構成:
図6は、プリンター30の構成を示すブロック図である。プリンター30は、プロセッサー30aと、通信部30bと、不揮発性メモリー30cと、印刷部30dと、UI部30eと、を備える。プロセッサー30aは、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー30cに記録された種々のプログラムを実行しプリンター30の各部を制御することができる。
【0028】
通信部30bは、外部機器と有線または無線の各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。プリンター30は、当該通信部30bを介して他の装置と通信することが可能である。なお、通信部30bは、プリンター30に装着された各種のリムーバブルメモリーと通信するためのインターフェースを含んでいてもよい。
【0029】
印刷部30dは、立体の印刷媒体の表面に直接的または間接的に印刷を施す部位であり、様々な方式が採用されてよい。本実施形態においては、昇華転写方式を想定している。すなわち、印刷部30dが昇華転写用のインクを昇華転写紙に吐出して画像を形成する。スタッフが、画像が形成された昇華転写紙をプレス機(不図示)でマグカップやスマートフォンケース等の立体の印刷媒体の表面に圧着し、立体の印刷媒体の表面に画像を転写する。印刷部30dは、各種のメディアに印刷を実行するためのアクチュエーターや各種装置、センサー、駆動回路、機械部品等を備えている。センサーは、プリンター30において変化し得る各種の検出対象を検出するセンサーを含む。検出対象は限定されず、例えば、メディアの残量を検出するセンサーや印刷に使用される色毎のインクの残量を検出するセンサー等が挙げられる。
【0030】
UI部30eは、タッチパネルディスプレイや各種のキーやスイッチ等を含む。タッチパネルディスプレイは、各種の情報、例えば、プリンター30のステータスやインクの残量等を表示する表示パネルと、当該表示パネルに重ねられたタッチ検出パネルとを備え、タッチ操作を検出する。プロセッサー30aは、UI部30eを介してスタッフの操作内容を取得することができる。また、プロセッサー30aは、UI部30eのディスプレイに各種の情報を表示しスタッフに通知することができる。
【0031】
本実施形態においてプリンター30は、写真店や雑貨店等の店舗内に設置され、カスタマーからの注文およびスタッフの印刷指示に応じて印刷が実施される。プリンター30のプロセッサー30aは、通信部30bを介して、プリンター30の印刷形式に変換されたデータを取得し、当該データに基づいて印刷部30dを制御し、印刷を実施する。印刷が終了すると、プロセッサー30aは、通信部30bを介して印刷が終了したことを示す情報を出力する。サーバー10が、通信部10bを介して当該情報を取得すると、サーバー10のプロセッサー10aは、印刷が終了した印刷データ10c1の進捗情報を「終了」に更新する。また、サーバー10は印刷が終了した印刷媒体の部数を在庫数から減算することにより当該印刷媒体の在庫数も更新する。
【0032】
(2)複製処理:
図7は、複製処理のシーケンス図である。はじめに、スタッフのスキャン指示に応じてスキャナー40が立体物をスキャンする(ステップS100)。すなわち、スタッフがスキャナー40の台に対象の立体物を載置しスキャン開始を指示すると、スキャナー40のプロセッサー40aは読取部40dを制御して立体物をスキャンし、スキャンデータ10c2を生成する。プロセッサー40aは、通信部40bを介して、スキャンデータ10c2をスキャナー40からサーバー10に送信する。
【0033】
サーバー10がスキャナー40からスキャンデータ10c2を受信すると、不揮発性メモリー10cに記録する。プロセッサー10aは、選択部10a1の機能により、新たに不揮発性メモリー10cに記録されたスキャンデータ10c2を取得し(ステップS105)、スキャンデータ10c2を分析する(ステップS110)。具体的には、プロセッサー10aは、立体物の形状を示すデータに基づいて、立体物の種別(
図3を参照)を判別する。プロセッサー10aは、スキャンデータ10c2が示す立体物の各部の寸法と、在庫データ10c3における各印刷媒体の各部の寸法とを照合する。また、立体物の表面の模様を示すデータに基づいて、立体物の表面の地色を取得する。立体物の種別によって、画像が形成されていない部位が予め決められており、プロセッサー10aは当該部位の色を立体物の地色と見なす。例えば、マグカップの場合はカップの内側や底面等、スマートフォンケースの場合はスマートフォン本体と接触する面等が、地色を取得するためのスキャン部位として予め決められている。プロセッサー10aは当該部位の色を地色として取得し、在庫データ10c3の各媒体の色と照合する。そして、プロセッサー10aは、形状および色の一致度が最も高い印刷媒体の品番を特定する。
【0034】
なお、プロセッサー10aは、立体物と印刷媒体とにおいて、各部の寸法の差が小さいほど、形状の一致度が高いと見なす。形状の一致度が高い印刷媒体を選択することで、形状の観点での立体物の複製の精度を高めることができ、また、取り扱っている印刷媒体の中から形状の一致度が高い印刷媒体をスタッフが選出する手間を軽減することができる。また、プロセッサー10aは、立体物と印刷媒体において2者の地色の差(色の距離)が小さいほど、色の一致度が高いと見なす。色の一致度が高い印刷媒体を選択することで、色の観点における立体物の複製の精度を高めることができ、また、取り扱っている印刷媒体の中から地色の一致度が高い印刷媒体をスタッフが選出する手間を軽減することができる。
【0035】
スタッフがスタッフ端末22を操作し、Webサイト上に表示されているスキャンデータ10c2の中から印刷媒体の選択を指示したいスキャンデータ10c2を選択する(ステップS115)と、サーバー10のプロセッサー10aは、選択部10a1の機能により、選択されたスキャンデータ10c2が示す形状および色と最も一致度が高い印刷媒体に在庫が有るか否かを判定する(ステップS120)。すなわちプロセッサー10aは、ステップS110で特定した品番の印刷媒体に在庫が有るか否かを、在庫データ10c3を参照して判定する。プロセッサー10aは、在庫数が1以上である場合に在庫有りと判断してもよいし、複製物の注文数分の在庫が有る場合に在庫有りと判断してもよい。在庫が有る印刷媒体の中から立体物に対応する立体の印刷媒体を選択することにより、立体物の複製物をカスタマーに速やかに提供できる可能性を高めることができる。
【0036】
ステップS120において、在庫有りと判定した場合、プロセッサー10aは、選択部の10a1の機能により、最も一致度が高い印刷媒体の使用を提案するGUIを表示させる(ステップS125)。すなわち、プロセッサー10aは、最も一致度が高い印刷媒体の品番を案内する表示データを、通信部10bを介してスタッフ端末22に送信し、スタッフ端末22のディスプレイに表示させる。
【0037】
ステップS120において、在庫有りと判定しなかった場合、プロセッサー10aは、選択部10a1の機能により、在庫が有る印刷媒体のうち、形状の一致度が高い媒体、または、色の一致度が高い媒体の使用を提案するGUIを表示させる(ステップS130)。プロセッサー10aは、在庫が有る印刷媒体のうち、形状の一致度が既定の基準を満たす程度に高い印刷媒体が存在する場合、そのうち最も一致度が高い印刷媒体の品番を案内する表示データをスタッフ端末22に送信する。ここで、形状の一致度に関する既定の基準は、例えば、各部の寸法差が所定値以下であることである。所定値は、印刷媒体の種別に応じて予め決められた値である。例えばスマートフォンケースにおける所定値は、マグカップにおける所定値よりも小さく、想定される測定誤差程度の値であってよい。形状の一致度が既定の基準を満たす程度に高く且つ在庫が有る印刷媒体が存在しない場合、プロセッサー10aは、在庫が有る印刷媒体のうち、色の一致度が最も高く、形状の一致度も最も高い印刷媒体を特定し、当該印刷媒体の品番を案内する表示データをスタッフ端末22に送信する。すなわちプロセッサー10aは、立体物の形状との一致度が最も高い形状且つ立体物の地色との一致度が最も高い地色の印刷媒体の在庫がない場合、在庫が有る印刷媒体のうち、立体物の形状との一致度が最も高い印刷媒体を、立体物の地色との一致度が最も高い印刷媒体よりも優先して選択する。
【0038】
ステップS125で提案された品番の印刷媒体またはステップS130で提案された品番の印刷媒体を使用することを承認する場合、スタッフは、スタッフ端末22を操作してプリンター30を指定し印刷指示する。その結果、スタッフ端末22のプロセッサー20aは、印刷指示をサーバー10に送信する(ステップS135)。なお、もし、スタッフがステップS125で提案された品番の印刷媒体またはステップS130で提案された品番の印刷媒体を使用せず、別の印刷媒体に印刷を行うようにしたい場合は、スタッフは、スタッフ端末22を操作して印刷を行う印刷媒体を希望の印刷媒体に変更したうえで、プリンター30を指定し印刷指示する。
【0039】
スタッフ端末22から印刷指示を受信すると、サーバー10のプロセッサー10aは、生成部10a2の機能により、印刷データを生成し、印刷指示を送信する(ステップS140)。すなわち、スタッフ端末22からの印刷指示を受けて、プロセッサー10aは、スキャンデータ10c2に基づいて、印刷データを生成する。より具体的には、プロセッサー10aは、スキャンデータ10c2における表面の模様を示すデータを同一平面上の画像に変換し、選択された印刷媒体の表面の印刷対象領域のサイズで印刷されるように解像度変換するとともに、印刷媒体の地色に印刷した結果がスキャンデータ10c2における表面の模様の色と一致するように色変換をすることで、印刷データを生成する。なお、スタッフ端末22を介して、スタッフまたはカスタマーが印刷データの微調整を行えるように構成されてもよい。印刷データを生成後、プロセッサー10aは、印刷制御端末23に対し、選択されたプリンター30における印刷指示を送信する。サーバー10から印刷制御端末23には、出力先のプリンターの識別情報や、印刷データ(印刷対象の画像)、部数、印刷設定が受け渡される。
【0040】
印刷制御端末23は、サーバー10からの印刷指示を受けて、指定されたプリンター30に印刷指示を送信する(ステップS145)。すなわち印刷制御端末23は、プリンタードライバーにより、印刷データ(印刷対象の画像)を、印刷設定に基づいて、指定のプリンター30における印刷に適した形式のデータに変換し、プリンター30に送信する。プリンター30は、印刷制御端末23から送信されたデータに基づいて印刷を実行する(ステップS150)。プリンター30は、印刷の進捗情報を、印刷制御端末23を介してサーバー10に送信する。印刷が終了すると、プリンター30は、印刷完了を示す進捗情報を、印刷制御端末23を介してサーバー10に送信する。サーバー10のプロセッサー10aは、印刷データ10c1の進捗情報と在庫データ10c3を更新する。
【0041】
本実施形態においては、サーバー10は、昇華転写用のプリンター30に、昇華転写紙への印刷を行わせる。スタッフは、サーバー10に提案され承諾した品番の印刷媒体を、当該印刷媒体に対応するプレス機(不図示)に載置し、印刷済みの昇華転写紙を当該印刷媒体の表面に圧着させることで、当該印刷媒体の表面に印刷データに基づいた模様を形成させる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、表面に模様のある立体物を複製する場合のユーザーの使い勝手を向上させることができる。すなわち、スタッフに、形状や色の一致度が高い印刷媒体を選択させる手間を低減することができる。その結果、印刷ミスによる印刷媒体の浪費を防止できる可能性を高めることができる。
【0043】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上記実施形態で示したプリンターの種類は、一例に過ぎず、他にも立体の印刷媒体の表面に画像を形成するためのプリンターが採用されてもよい。立体の印刷媒体の表面への画像の形成には、昇華転写方式の他に、ロボットアーム等で立体物に直接印刷するプリンターが採用されてもよい。立体の印刷媒体の表面に直接画像を印刷する場合、選択した媒体をプリンターが印刷可能な位置にセットするように案内する案内部を備えてもよい。また、印刷媒体の種類毎に異なるプリンターを使用するようにしてもよい。
【0044】
印刷制御端末23は省略され、プリンター30とサーバー10とが印刷制御端末23を介さずにデータの授受をするように構成されてもよい。スキャナー40とサーバー10とはPC等の端末を介してデータの授受をするように構成されてもよい。端末やプリンターはカスタマーが来店する店舗に設置されない構成も想定してよい。端末は店舗に設置され、プリンターは印刷業者の印刷施設に設置され、複製物は印刷施設から依頼者の元へ配達されてもよい。また、端末は店舗に設置されなくてもよく、可搬型の端末で様々な場所から、注文や、印刷データの編集や、最終的な印刷指示をユーザーが行うことができるように構成されてもよい。
【0045】
選択部は、スキャンデータに基づいて立体物に対応する立体の印刷媒体をプロセッサーが自動で選択することができればよい。形状や地色の一致度が最も高い印刷媒体を選択して提案するように構成されてもよい。あるいは、形状や地色の一致度が高い印刷媒体から順に複数種類の印刷媒体がプロセッサーによって自動で選択されて提案されてもよく、その中からユーザーが選択可能であるように構成されてもよい。最も一致度が高い1つを選択して提案する場合も、複数選択して提案する場合も、形状の一致度が既定の基準を満たす程度に高い印刷媒体や、地色の一致度が既定の基準を満たす程度に高い印刷媒体の中から選択するように構成されてもよい。地色の一致度に関する既定の基準は、例えば、立体物の地色と印刷媒体の地色の2色間の距離が所定値以下であることである。一旦最も一致度が高い印刷媒体を選択して提案した後、ユーザーから印刷媒体の変更指示を受け付け、変更された印刷媒体を改めて選択するように構成されてもよい。そうすることで、ユーザー(例えばスタッフまたはカスタマー)の希望を反映させて複製物を生産することが可能である。スキャンデータで読み取った立体物そのままの形状や色との一致度で立体物に対応する印刷媒体を選択するのではなく、スキャンデータで読み取った立体物に対して希望の処理を行った後の形状や色との一致度に基づいて、立体物に対応する印刷媒体を選択し、希望の処理を行った後の形状や色で印刷を行う機能を設けてもよい。希望の処理とは、例えば、退色復元処理や変倍処理であり、予めどのような処理を希望するかを入力させておくことで、希望の処理を行った複製を容易に行うことができる。また、形状や地色や在庫数以外の要素も考慮してスキャンデータに基づいて立体物に対応する立体の印刷媒体をプロセッサーが自動で選択してもよい。具体的には、材質や価格なども考慮して選択してもよい。
在庫データは、在庫数と寸法や色などの印刷媒体の情報をともに有する例を説明したが、どのように情報を記憶しておくかは限定されない。各データを別の記憶媒体や別のコンピューターに記憶させておき、それぞれからデータを集めて印刷媒体を選択するようにしてもよい。また、寸法や色を直接記憶しておかずに、印刷媒体を3次元でスキャンしたスキャンデータで記憶しておいてもよい。この場合、立体物をスキャンして生成するスキャンデータと同じ条件で生成したうえで、印刷媒体のスキャンデータと立体物のスキャンデータとで比較をして、形状や地色の一致度を比較してもよい。
【0046】
在庫が有る印刷媒体の中から立体物に対応する立体の印刷媒体を選択するように構成されてもよいし、あるいは、在庫の有無に関わらず、取り扱っている印刷媒体のうち最も一致度が高い媒体を選択して、注文を受け付けてもよい。最も一致度が高い媒体が、在庫無しの場合は、媒体を発注し媒体を入手後に印刷や転写を行うように構成されてもよい。カスタマーの要望に応じてスタッフがいずれかを選択できるように構成されてもよい。
【0047】
生成部は、スキャンデータに基づいて印刷データを生成することができればよい。例えば、スキャン対象の立体物の形状が第1形状であり地色が第1色であるが、形状が第1形状でかつ地色が第1色である印刷媒体の在庫が存在しない場合、地色が第2色の印刷媒体が選択されてもよい。さらに、当該立体物に、第1色の地色の表面上に直接図柄が形成されている場合、生成部は、第1色の背景の上に図柄が配置された画像を印刷データとして生成するように構成されてもよい。そうすることで、地色が立体物と異なる印刷媒体も当該立体物の地色を利用した図柄を再現することが可能である。なおもちろん、立体物の地色の背景は印刷データに含めず、図柄のみを印刷データに含めるように構成されてもよい。いずれかをユーザーに選択可能に提案するように構成されてもよい。
【0048】
本発明は、立体物の複製物を生産する方法の発明としても成立する。すなわち、立体物の表面の模様をスキャンし、スキャンデータに基づいて前記立体物に対応する立体の印刷媒体を選択し、前記スキャンデータに基づいて印刷データを生成し、選択された前記印刷媒体の表面に前記印刷データに基づいた模様を形成して前記立体物の複製物を生産する、ことを含む複製物の生産方法の発明としても成立する。
【0049】
さらに、本発明は、コンピューターが実行するプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置が備える部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリーであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…印刷システム、10…サーバー、10a…プロセッサー、10a1…選択部、10a2…生成部、10a3…印刷部、10b…通信部、10c…不揮発性メモリー、10c1…印刷データ、10c2…スキャンデータ、10c3…在庫データ、20…端末、20a…プロセッサー、20b…通信部、20c…不揮発性メモリー、20d…ディスプレイ、20e…入力部、22…スタッフ端末、23…印刷制御端末、30…プリンター、30a…プロセッサー、30b…通信部、30c…不揮発性メモリー、30d…印刷部、30e…UI部、40…スキャナー、40a…プロセッサー、40b…通信部、40c…不揮発性メモリー、40d…読取部、40e…UI部