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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048888
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240402BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240402BHJP
【FI】
A01B69/00 303G
A01B69/00 303D
A01B69/00 303U
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155027
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠治
(72)【発明者】
【氏名】西野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 鷹人
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和之
(72)【発明者】
【氏名】米田 彩美
(72)【発明者】
【氏名】石黒 皓幹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大翔
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA03
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB04
2B043EA23
2B043EA25
2B043EA33
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB18
2B043EB23
2B043EC03
2B043EC13
2B043EC16
2B043ED12
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC08
5H301CC10
5H301HH03
5H301HH10
(57)【要約】
【課題】衛星測位システム、慣性計測装置、撮像手段、圃場のマップデータを利用することで、車体の傾斜を正確に測定し、植物を植え付けた後の生育の促進作業や欠株の補植作業を自動運転で行うことを課題とする。
【解決手段】
衛星測位システムの受信装置と、慣性計測装置より算出された自車位置の地上に対する3方向の座標系が算出する車両の位置と傾斜度合いと、車両に装備する撮像手段により、算出された車両の位置と傾斜度合いを算出し、座標系と撮像系の両者より作業車両の傾斜度合いのずれの修正を行い、作業機の地上高を自動変更しながら走行することで対応する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位システムの受信装置と、慣性計測装置より算出された自車位置の地上に対する3方向の座標系で算出する車両の位置と傾斜度合いと、車両に装備する撮像手段により、算出された車両の位置と傾斜度合いを算出し、座標系と撮像系の両者より作業車両の傾斜度合いのずれの修正を行い、作業機の地上高を自動変更しながら走行する機能を有した作業車両。
【請求項2】
作業機の地上高は、あらかじめ設定された基準高さで走行するが、作業車両に装備する撮像手段より、圃場の植物の高さを算出し、前記、作業機の設定された基準高さを補正し、作業機の地上高、及び、傾斜を自動変更しながら走行する機能を有した請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
圃場ごとのマップデータを有しており、このマップデータに、作業機の高さ制御を行った情報をデータを得た時刻とともに登録し、後の走行時に過去登録されたデータを読み出し初期設定すると共に、作業機の地上高の自動変更により高さ方向で増加した量を生育データとしてマップデータに登録する請求項1及び2に記載の作業車両。
【請求項4】
作業機に装備する撮像手段より、圃場の植物が生育されていない欠株位置を検出し、欠株の数字に合わせて、植え付け作業機の植え付け用の電動モータの回転回数を設定し、欠株位置の補植をおこなう機能を有した請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業作業において、自動作業を行うロボット作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転において、車体の傾きと沈下量を作業機に備える障害物センサによって検出するシステムがある。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-166534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車両の沈下量を測定し、圃場に対する作業車両の傾きや高さを算出するのであるが、圃場に水が張っている場合や圃場に畝建てがある場合は、障害物センサは誤作動する可能性がある。
【0005】
本発明においては、衛星測位システム、慣性計測装置、撮像手段、圃場のマップデータを利用することで、車体の傾斜を正確に測定し、植物を植え付けた後の生育の促進作業や欠株の補植作業を自動運転で行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、次の技術手段により解決される。
【0007】
衛星測位システムの受信装置と、慣性計測装置より算出された自車位置の地上に対する3方向の座標系で算出する車両の位置と傾斜度合いと、車両に装備する撮像手段により、算出された車両の位置と傾斜度合いを算出し、座標系と撮像系の両者より作業車両の傾斜度合いのずれの修正を行い、作業機の地上高を自動変更しながら走行する。
【0008】
第二の発明は、次の技術手段により解決される。
【0009】
作業機の地上高は、あらかじめ設定された基準高さで走行するが、作業車両に装備する撮像手段より、圃場の植物の高さを算出し、前記、作業機の設定された基準高さを補正し、作業機の地上高、傾斜を自動変更しながら走行する。
【0010】
第三の発明は、次の技術手段により解決される。
【0011】
圃場ごとのマップデータを有しており、このマップデータに、作業機の高さ制御を行った情報をデータを得た時刻とともに登録し、後の走行時に過去登録されたデータを読み出し初期設定するが、作業機の地上高の自動変更により高さ方向で増加した量を生育データとしてマップデータに登録する。
【0012】
第四の発明は、次の技術手段により解決される。
【0013】
作業機に装備する撮像手段より、圃場の植物が生育されていない欠株位置を検出し、欠株の数字に合わせて、植え付け作業機の植え付け用の電動モータの回転回数を設定し、欠株位置の補植をおこなう機能を有する。
【発明の効果】
【0014】
第一の発明で、作業車両の圃場での沈下の度合いや、圃場の状態にかかわらず、車両の傾き度合いを正確に算出することが可能となる。
【0015】
第二の発明で、作業機の高さを正確に検出し、位置を適切に自動変更できる。
【0016】
第三の発明で、マップデータに登録することで、作物の生育状態や圃場の状態を管理することが容易となる。
【0017】
第四の発明で、欠株の対応を自動運転にて行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態における、作業車両の外装を外した斜視図
図2】本発明の実施形態における、作業車両の外装を外した拡大斜視図
図3】本発明のエンジン搭載図
図4】本発明の作業機取り付けした斜視図
図5】本発明の作業機取り付けした側面図
図6】本発明で衛星測位システム、慣性計測装置、撮像手段により、座標系と撮像系の傾斜ずれを照合し、作業機の高さと傾斜を自動調整する内容のフロー図
図7】本発明の作業車両が傾斜した場合における検出不具合を示す図
図8】本発明の撮像手段により、植物高さを算出し、作業機高さを補正するフロー図
図9】本発明の植物生育を検出する構成を示す図
図10】衛星測位システム位置座標を座標補正するフロー図
図11】本発明のステアリング周辺図
図12】本発明の操舵アクチュエータの作動図
図13】本発明の欠株対応用の作業機を装着した斜視図
図14】作業機400と植物450の関係を示した図
図15図4の別形態の作業車両の形状図
図16図13の別形態の作業車両の形状図
図17】ドローンを利用した協調作業形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明を説明する。
【0020】
図1図13に示す作業車両は、本実施形態の作業車両の一例を示すものである。
【0021】
本発明の動力の伝達の流れについて説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、本機の前方部分のフード110の中には、機体の前方に左右方向で低電圧バッテリー120と、その後方に前後方向で高圧用のメインバッテリー130と、このメインバッテリー130の電力を利用して機体本体、作業機を作動させるための動力源となる電動モータ140をメインバッテリー130の横に前後方向で備えている。
【0023】
低電圧バッテリー120は、運転席ディスプレー330や作業車両のコントローラ331の電源となっている。走行、作業の制御や外部通信、また各運転状態のデータの登録を行うコントローラであり補機バッテリーで、12V系等の低電圧バッテリーである。低圧バッテリー120は、HST150の余剰動力より回生モータ550によって回生電気として低圧バッテリー120に充電されるものである。また高圧用のメインバッテリー130は、MDU131によって電圧管理され、電動モータ140を制御している。
【0024】
電動モータ140は、モータの後端に外扇141を備えており、モータ軸と連動しており、モータが作動中は外扇141により発生する風でモータ、低電圧バッテリー120、メインバッテリー130が空冷される。熱を持った風はフード110の前方のグリルの網部や、フード前方下方から外部に排出される。またフード110は電動モータ140、低電圧バッテリー120、メインバッテリー130を完全に覆うことで雨や洗車における防滴対応を行う構成であり、適度な防塵対応も施されている。
【0025】
電動モータ140は、図2のごとく出力軸を車体の前後方向の後方側とし、その後方に備えるHST150に電動している。伝達方法は、ベルトにより各軸に備えられたプーリーを繋ぐことであっても良いし、電動モータ140とHST軸を直結するも良い。電動モータ140の軸と、HST150の入力と出力軸は、ベルト駆動の場合では軸心は並行方向であり、動力機構としては直列的で曲がる事無く動力を伝えるためロスが少なく、コンパクトな配置を形成できる。
【0026】
図3は、電動モータ140の出力軸を車体の後方にしてHST150に繋ぐ構成をとることで、エンジン650構成とも互換性が容易にとれやすくなっている。重量のあるメインバッテリー130と電動モータ140をフード110に配備し、エンジン650に近しい重量とすることで、電動モータ140仕様とエンジン仕様のバランス差が出ないように構成される。BMSとインバーター160をフード110から外し、座席170後方に配備することで、メンテナンス性と熱ごもりに対応することが可能となる。この構成においても、低圧バッテリー120は、HST150の余剰動力より回生モータ550によって回生電気として低圧バッテリー120に充電されるものである。
【0027】
ロボット作業車両100の基本的な位置ずれ対応、自動操舵について説明する。
【0028】
衛星測位システムの受信装置310と、測位方式である測位ユニットは、測位衛星と既知の位置に設けられた基地局とに設けられた移動局で構成されている。これにより測位衛星から移動局に送信されてくる位置情報と基地局から移動局に送信されてくる補正用の位置情報から移動局の位置、すなわち作業車両の位置を正確に得ることができる。
【0029】
基地局は、固定用通信機と測位衛星からの位置情報を受信する衛星測位システムの受信装置310と、移動局に補正用の位置情報を送信する固定用データ送信アンテナで構成されている。
【0030】
移動局は、移動用通信機と、測位衛星からの位置情報を受信する移動用衛星測位システムの受信装置と、基地局からの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナで構成されている。作業車両の制御部180は、CPU等からなる処理部と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部と、外部とのデータ通信用の通信部から形成されている。
【0031】
衛星測位システムの受信装置310は、単独測位方式、GNSS方式、RTK(干渉測位)方式等のうち、作業をする地域に適したものを用いるとよい。しかしながら、機体の傾斜や振動の影響により衛星測位システムの受信装置310の地上高が変動すると、実際の機体位置と異なる座標位置が測定され、受信精度が低下すると共に、直進からずれた方向に機体が走行してしまう問題が生じる。これを防止すべく、衛星測位システムの受信装置310に加えて、慣性計測装置IMU320を設ける。慣性計測装置IMU320は、ロボット作業車両100が傾斜姿勢になるときの地表から衛星測位システムの受信装置310までの高さと、傾斜していないときの地表から衛星測位システムの受信装置310までの高さの差に基づき、衛星測位システムの受信装置310が取得した位置座標を制御部180に修正させるものである。
【0032】
なお、地表から衛星測位システムの受信装置310までの高さは、ロボット作業車両100の傾斜等の挙動を、慣性計測装置IMU320に内蔵される三軸の加速度センサと角速度センサで計測して割り出すものとする。これに加えて、自動直進システムによる機体の走行方向が正しいかどうかをより確実に制御部180に判定させるべく、方位センサ311を設ける。このときの位置座標の補正については、図10のSS1からSS5に示すとおりである。これにより、機体の進路を計測される方位により定めることができるので、直進走行の精度がいっそう向上する。
【0033】
衛星測位システムの受信装置310が取得する位置情報は、慣性計測装置IMU320と方位センサ311が検出する情報に基づき、制御部180により補正される。そして、制御部180は、現在の位置情報と先に取得されている位置情報を比較し、位置情報の相違が許容範囲を超えていると、機体を直進走行位置に戻すべく、前輪左560と前輪右570を左右方向に操舵させる。
【0034】
前輪左560と前輪右570の操舵を自動化すべく、図11に示すステアリング171を操舵アクチュエータ173で回動させる自動操舵装置172を設ける。自動操舵装置172は、図12のSS6~SS9に示すとおり制御部180が算出した現在の位置情報のX座標と、先に取得されている基準となる位置情報のX座標の差異に基づき、操舵アクチュエータ173の作動量が変動されることで、機体を直進走行位置に向かわせるべく、ステアリング171を左右に切ると共に、直進走行位置に来ると操舵アクチュエータ173を停止させてステアリング171の自動操舵172を停止させるものである。
【0035】
操舵アクチュエータ173は、電動や油圧式のモータ、あるいはシリンダで構成する。上記構成により、算出された位置情報のX座標の差異に合わせてステアリング171が自動的に操舵され、機体を直進走行位置に自動的に合わせることができるので、作業装置による作業位置が左右方向にずれることが防止され、圃場内に作業が行われない箇所が発生しにくくなる。これにより、作業が行われなかった箇所に、後から人手で作業を行う必要が無くなり、作業者の労力が軽減される。
【0036】
衛星測位システムの受信装置と慣性計測装置より算出された自車位置、慣性座標について説明する。
【0037】
ロボット作業車両100において、自車の座標位置として、東西をX軸とし南北をY軸として、衛星測位システムの受信装置310の座標を重ね合わせる制御を行う。またロボット作業車両100の自動直進の開始点である圃場の一側と自動直進の終了点である圃場の他側の座標を取得させる。
【0038】
第1基準点A601を取得した状態で、第2基準点B602を取得し、この直線ラインが進行方向600となる。進行方向600に向かう走行ラインに対して、自車の前後の車軸610、いわゆる方向ラインが傾いている場合は、図6の如く、方向変更を行う。
【0039】
圃場の一端と他端の所定位置、例えば、直進走行を終えて作業車両が旋回を開始する位置と、旋回終了後に直進走行を開始する位置に第1基準点A601と第2基準点B602を移設設定し、直進走行する。
【0040】
上記のとおり、新規に第1基準点A601と第2基準点B602を取得していると、該第1基準点A601と第2基準点B602の各Y座標を結んだ基準線が、移設設定した自動直進の目安となる線となり、走行中の機体の位置座標のX座標が、自動直進の目安となる線のX座標と合致しているか否かを判定し、合致していなければ自動操舵装置172により合致する方向にステアリング171を自動操舵させることで、自動直進走行を実現することができる。制御部180は、衛星測位システムの受信装置310が取得する位置座標のY座標と基準線のY座標を比較し、操舵アクチュエータ173を作動させてステアリング171を左右方向に回転させ、ロボット作業車両100を直進走行すべき位置に移動させる制御を開始する。この自動操舵は、ステアリング171が所定の時間内に走行車体を旋回させる角度まで操作されるか、自動直進設定部材207が第2の方向に操作されると終了する。前記ステアリング171の操舵角度は、ハンドルポテンショメータ172によって検知するものとする。第1基準点Aまたは第2基準点BのY座標と一致する場所に走行車体2が到達すると、自動直進制御が終了され、旋回制御に入る構成としてもよい。
本実施の形態では、基準ラインの位置情報を作業工程ごとに取得し、そのたびに作業工程の次の工程における目標ラインの位置情報を決定する。これにより、基準ラインのズレを最小限に抑えることが出来て、次の作業工程における目標ラインもズレを少なく出来ると共に、自動旋回工程における条合わせも実施出来る。
【0041】
時間の経過とともに基準ラインにズレが生じたり、雲等の影響で基準ラインのズレが生じる場合もあるので、上記の様に作業工程ごとに基準ラインを新たに取得することにより、基準ラインのズレを最小限に抑えることが出来て、次の植付け作業工程における目標ラインもズレを少なく出来ると共に、自動旋回工程における条合わせも実施出来る。
【0042】
本発明の座標系と撮像系の両者より作業車両の傾斜度合いのずれの修正を行う制御について、図6にて説明する。
【0043】
作業車両には、前述に記載したGNSS(global navigation satellite system)衛星測位システムの受信機による情報SS1で位置確認ができる。衛星測位システムの受信機から入力されるデータは、座標位置SS3、座標系の傾斜SS4等であり、衛星からの速度等の情報と作業車両の速度データを用い自動運転走行を可能とするものである。
【0044】
慣性計測装置IMU320がついており、車体の傾きを検出することSS2が可能である。完成計測装置IMU320は、三軸のジャイロスコープと三方向の加速度センサから構成され、三次元空間における角速度と加速度の測定を行うことで、車両の傾きや車両のヨーレイトを算出することが可能であり、姿勢角(ロール角、ピッチ角)と方位角を算出することができる。この慣性計測装置からのデータを利用し、座標系の位置、傾斜の補正SS5を行い、より精度の高い、座標系の位置SS6、座標系の傾斜SS7を算出する。
【0045】
さらに作業車両には撮像手段が備えられており、撮像データSS8を得る。撮像手段は図4に記載の410、411、412、413であり、撮像手段(植物位置用)410では特に植物の位置関係を計測することを主体に配備される。撮像手段(植物高さ用)411は前方に見える植物の高さを撮像によって算出する役目を主体としている。撮像手段(車両傾斜用右)412と、撮像手段(車両傾斜用左)413は前方の左右を撮影しており、411の画像に対して412と413の画像バランスによって、作業車両の傾きを算出することを可能としている。また411から413の撮像手段を障害物センサとして利用することも可能である。撮像手段は、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)やCCDカメラでも良く、物体の形状、大きさと物体までの距離をつかむことのできる装置であり、各映像位置や撮影された物体間の距離から車両の傾斜を算出できるものである。
【0046】
作業車両には、基準となる撮像データがあらかじめ登録されておりSS9、この画像と新たに撮影された画像を比較することで作業車両の位置確認SS10を可能とする。位置確認では、東西、南北方向の画像による位置調整の元、車両の高さ方向の位置を主に算出するものであるが、撮像系の位置SS11と撮像系の傾斜SS12として衛星測位システムの補正に利用するものである。
【0047】
座標系の位置算出SS6は撮像系の位置算出SS11と照合をかけるSS13ことで、作業車両の傾きの補正基準とする。
【0048】
座標系の傾斜算出SS7は撮像系の傾斜算出SS12と照合をかけ、傾斜ずれ算出SS14を行うことで、作業車両の傾きを決定する。
【0049】
前述の制御にて傾斜ずれの初期対応は終わり、暫時、作業を行いながらの傾斜ずれ照合対応SS15を行う。作業車両の傾き算出SS16より、作業機が水平になるように作業機の傾斜算出SS17を行う。
【0050】
作業車両は、作業機傾斜制御SS18、車両傾斜制御SS19、走行速度制御SS20を行いながら作業を行う。
【0051】
本発明における作業機は後述で記載するが、植物の葉の上をしごきながら回転するものであり、走行速度と植物の葉の摩擦抵抗によるものである。したがって回転帯の回転数を検出と走行速度より、スリップ率を算出することで、作業機の負荷を算出し、この負荷状態が適切な範囲SS21であるかどうかを判断するものである。負荷が大きい場合は、作業車両の傾きSS16が正しく算出されていない場合が多く、再度作業機位置や傾きを制御することで対応する。
【0052】
本発明の作業機の使用実施例を図4で説明する。
【0053】
通常の耕運用の作業車両や、防除用の作業車両であれば、車体の傾きに合わせて作業機400の部位の位置を変更したり、作業機の傾きを変更したりすることで対応できる。しかし、本発明の作業車両の使用条件は異なり、植物450が生育した段階において、この植物の地上からの高さ420を基準に対応するものである。植物450の生育の状態は一律ではないため、一定の高さではない。また作業車両の作業機部位は、一定の幅430で作業するため平均的な植物の高さ位置や傾きに合わせた作業機の配置が必要となる。
【0054】
この場合、作業機全体の傾きを制御する場合では、車両の位置関係が重要となる特に、平面上のXとYという2次元方向だけでなく、高さ方向のZ軸上の動きが440重視される。
【0055】
作業車両のみの位置制御では、不十分な点について示す。作業機の高さ方向の制御として、作業機の所定部から対象物までの距離を計測する距離センサ方式があるが、対象物が植物であったり、土壌であったり、水面であったりで、正確に測定することが困難である。また、ぬかるんだ土壌は、表面が大きく凹凸するため、超音波、赤外線、レーザー等による方式では検出することさえ困難な場合がある。
【0056】
図7は、この内容を示している。機体のフロアから圃場までの距離Aを、超音波、赤外線、レーザー等で計測する。作業機と圃場との距離Cが、重要とされる寸法であるが、回転する作業機下端位置にはセンサを配備することができないため、制御基準はBの寸法となる。しかし、この場合はA寸法の検出が十分であれば、C寸法は間違え無く制御できるが、A寸法の精度が正しくない場合は、C寸法が適切な制御とはならない。
【0057】
図7の右図は、D度、作業車両が傾いた状態を示しているが、機体のフロアから圃場までの距離はA´となり同じB寸法制御を取ると、C寸法であったものがC´寸法となり、適切に制御できないことを示している。
【0058】
そこで本発明のように、作業車両の衛星測位システム上の位置検出を行うことで、圃場条件や作物に影響されない作業機の高さを検出することが有効とされる。
【0059】
圃場の作物の葉の位置を、衛星測位システムの受信装置310からの位置検出と、慣性計測装置IMU320による車両の傾きで計測するだけではなく、車両に搭載される撮像手段410、411、412、413によっても検出し、補正するシステムとなっている。あらかじめデータ登録された画像により、水平位置と車体水平位置が所定の範囲内に収まっていることを確認する。また水平地上の水平位置と作物の葉の先端部の平均位置を画像算出することで、前述の補正を行いながら、対応するものである。この制御については前述の図6のSS8からSS10に該当するものである。
【0060】
この発明により、圃場に水が張っている場合で、A寸法が検出出来難くい等の問題も対応することが可能となった。
【0061】
本発明の、植物への生育促進を行う作業機について説明する。
【0062】
植物は、ストレス無く生育するよりも、外部からの刺激を与えることで生育状態がより良くなる場合がある。本発明では、図4のように植物450の平均高さを撮像手段410、411、412、413によって算出する。その算出された高さからローラ400の位置を決定し、ローラ400が植物450の先端を押し付けるように移動し、植物450をしごくことでストレスを与えて生育を促す。
【0063】
このような試みは、無農薬栽培を推進するためである。植物にストレスを与える作業によって、植物の活性化をはかり、生育増進を行うことで肥料や薬剤にできるだけ頼らない栽培方法でもある。
【0064】
車体の中央下部に配備するローラ400は、植物450でも、特に苗を中心に対応することが考えられる。苗の上をローラ400が通過する際に苗に刺激を与える構成であり、車体の走行する力でローラ400が作動するようになる。
【0065】
ローラ400の形状は、円柱でもよいが、本説明の図14で示すように球体が望ましい。(a)のように球体で踏みつけると植物が球面の曲がり表面を利用して逃げることが可能であり、植物を必要以上に傷めない。(b)では、球体が植物の間を抜けていくパターンであるが、(b1)では植物の表面をこすりながら刺激を与え、(b2)では、やや踏まれている状態になり、球体をとることで異なる刺激方法を与えることが可能であることがわかる。
【0066】
作業幅となるローラの幅は、(c)のように半円状になる球体の間をつなぐボルト480の長さで調整することが可能となる。ボルト480にスペーサ490を挟み込む構成をとることで、調整する寸法も決まりやすいが、なによりスペーサ490が円筒状の筒形状であれば、ボルトのネジ山と比較しても植物に与える障害は小さく、植物の葉を傷めることなく、刺激のみを与えることができる。この半球の幅を変更することで、植物への刺激の度合いも変更することが可能である。スペーサを入れて、半球幅を広げるほど刺激が大きくなる。また回転するローラ部は、硬度の高い樹脂が望ましい。
【0067】
作業車両の作業機400は、図5で示す460の油圧シリンダの伸縮と、470の稼働ステーが傾くことによって、高さ方向と傾斜を調整することができる。なお作業機の位置は、作業車両の前方でも後方にあっても良いが、撮像手段と作業機位置、車速によって、撮像されたタイミングを生かして作業機が稼働するように車速による補正は、作業機の配備する位置によって決定される。
【0068】
本発明の作業機の地上高さを自動変更する内容を説明する。
【0069】
作業車両に配備されている撮像手段410、411、412、413により植物450の葉の高さを検出する。CCDカメラのシステムではあらかじめ撮像手段によって撮影される植物の葉の位置と高さの基準が登録されている。この登録されたデータと今回撮像された画像を比較することで、作物の葉の高さを算出するものである。またLIDARを利用する場合は、植物の葉の先端部と圃場との撮像による距離間隔で植物高さを算出することが可能である。
【0070】
葉は複数ある場合があるため、画像はドットによる分析とし、画像エリアによって判断する。例えば緑のドットを基準に検出し、画面の上方から緑のドット数を数え、所定ドット数を超えた位置を植物の葉の平均的な先端位置とする演算を行う。このように撮像手段により、食物の葉の高さを検出できるわけである。
【0071】
図8にしたがって、作業機の地上高さを自動変更について説明を行う。まず作業機の基本位置は、あらかじめ設定された基準高さで走行するSS30、作業車両に装備する撮像手段より、撮像データSS31を取得する。このデータは、植物の画像分析SS32と作業車両の位置確認SS35に利用する。作業車両には、撮像の登録データSS34があり、この登録データと比較演算することで、位置検出できるものである。制御として、撮像系の位置算出SS36~作業機の傾斜算出SS39を行い、植物の高さ演算SS33より、作業機位置、作業機傾斜の演算SS40を行う。なお作業機位置、傾斜の補正を適切に行うためにSS41、植物の画像分析SS32からの制御ルーチンを繰り返し対応する。
【0072】
本発明のマップデータの利用について説明する。
【0073】
圃場において、あらかじめいくつかのエリアを決めておき、その区間を区割りしたマップデータで説明する。
【0074】
図9は、圃場の内でマップαのエリアである。このエリアにおいて植物の植え付け列をA、B、C列と区分けされる。作業車両は、衛星測位システムの受信装置と慣性計測装置、撮像手段、作業機の負荷SS21により植物450の高さを検出し、作業機400の高さを決定する。この場合、マップαのA列においては、植物の高さは200mmであると測定される。この測定値はマップデータとして登録される。
【0075】
圃場の区割りは大きいが、その内部における小さなエリアは、マップ上ではドット扱いとなり、前述の計測データは、このドット情報のデータとして登録する。これによって拡広範囲のマップでは、ディスプレー上をタッチすると登録されたデータが読みだされるマップデータである。
【0076】
実施例では、生育対応後においては、前述のマップαのA列の植物の高さは320mmになっている。マップデータにこれらのデータが時系列的に登録される。こうした時間ごとに植物の高さデータを登録することで、高さの差分が成長の度合いとして算出可能である。実施例では、320mmと200mmの差分、120mmが生育データとなる。データは測定された時刻が同時に記入されるため、時間ごとの植物の伸びがわかるようになる。
【0077】
マップデータとしては、撒いた肥料の量を登録する施肥マップやドローンを利用して色合いによる生育データマップがあるが、本発明は、作業機による実計測を行い、時系列的にデータを登録し、差分を生育データとする点が異なる。利用としてはドット情報の上に時系列的に情報が重ねられるため、植物高さ基準の詳細な分散図や、生育基準の分散図も時系列的に作成は可能である。ドローンを利用した色合いによる生育データマップでは、色の違いを数値化することは困難であるが、本発明は植物高さという数値であり、容易にしかも確実に評価することができ、生育という点では効果の差は大きいと考えられる。
【0078】
さらにエリアごとのマップデータを組み合わせ、時間ごとのマップを重ね合わすことで、生育データの圃場マップが作成されるしくみである。
【0079】
本発明の欠株に対応する自動移植機において図13で説明する。
【0080】
撮像手段410、411、412、413で、植物450が欠株になっている部位を検出する。所定の間隔ごとに植物450は生育していなければならないが、植え付けられなかった場合や、植え付け後に生育不良で枯れたものも考えられる。
【0081】
撮像手段で検出した位置と、後方に備える植え付け作業機490の位置、車速より欠株位置での植え付けタイミングを算出し、規定の位置が来ると植え付け作業機490の先端部にある植え付け杆491で植え付け作業を行う。
【0082】
通常は一株の欠株であり、一株分だけ植え付け杆491のモータを駆動する制御である。しかし、二株分連続の場合では、二株分に相当するモータを回転させることで、対応することが可能である。また間欠的に欠株になっている場合も都合は良く、植え付け部は電動モータであるため、間欠運転することで、容易に対応する。
【0083】
植え付け杆491が独立モータでなく、いずれかの動力の連動であった場合は、規定回転回数を設定して植え付けすることは難しく、独立モータを配備することで得られる効果である。
【0084】
本発明の別形態について説明する。
【0085】
図15は、図4の作業車両の小型形状である。無人運転走行により、座席の配備は無い小型車両である。後輪に球体の作業機400を備える。作業機の構成は図4と同様であるが、図15では完全に圃場か、植物に接地している。したがって作業機400の高さ方向の調整は行われない。前輪の二輪の左右の回転方向と回転差によって、左右の操舵や後進も可能とする。
【0086】
作業機はバッテリと電動モータが重量の大半となるため、後輪への荷重は小さく、そのままの荷重で、植物を踏み付けても損傷のない大きさである。
【0087】
欠株部のみを植え付ける無人走行型の小型一条田植機の構成では、図16のような形態がある。無人運転走行により、座席の配備は無い小型車両である。植付部は車体中央下方に配しており、車体中央部にマット苗一枚分の苗タンクを有している。また車体の前方と後方に、圃場をモニタリングできる撮像手段410、414を搭載している。
【0088】
中央に植え付け作業機490と、植え付け杆491を配備しているため、植付前と植付後の結果の両方を記録でき、その記録画像は携帯端末で確認することがでる。
【0089】
また小型一条田植機では、田植えの最後の一工程前に残った苗量と圃場長さを入力することで、苗を使い切る株間を算出し、設定した株間になるようにモータ動作させる制御も可能であるため、欠株対応だけでなく、圃場の畔際等の田植えにも利用できる。
【0090】
ドローンを利用した欠株対応の協調作業について図17で説明する。
【0091】
ドローン510で圃場の欠株となっている領域を調査する。(a)ではA、B、Cが欠株部と判断され、(b)のように携帯端末にデータ転送され、携帯端末から欠株部である地点ごとの作業条件を設定できるものである。(b)ではA地点の画面の設定を示す。携帯端末等で欠株部を指示すると情報が作業車両に送られ、指定された欠株部の植え付け作業を行うものである。
【0092】
この方法では、作業車両は指示された位置に移動すると、撮像手段の精度を上げ、重点的に欠株について調査を行う。撮像手段の解像度を標準から精度を上昇させる場合や、作業車両の速度を低下させて撮像の精度を上げる等の対応を行う対応をすることで協調作業を行う。
【符号の説明】
【0093】
100 作業車両
310 衛星測位システムの受信装置
320 慣性計測装置 IMU
400 作業機
410 撮像手段(植物位置用)
411 撮像手段(植物高さ用)
412 撮像手段(車両傾斜用右)
413 撮像手段(車両傾斜用左)
420 植物の地上からの高さ
440 高さ方向の位置(Z軸)
450 植物
SS14 座標系と撮像系の傾斜ずれ算出
SS40 作業機位置、傾斜の演算
490 植え付け作業機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17