(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048891
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】回転型流量制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
F16K31/04 K
F16K31/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155036
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】315014671
【氏名又は名称】東京ロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】篠嶋 透
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA03
3H062BB30
3H062BB31
3H062DD01
3H062GG01
3H062HH03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メカニカルなバックドライブ機能を備えた回転型流量制御弁を提供すること。
【解決手段】アクチュエータ向けの外部ポートと圧力流体供給源向けの外部ポート又は圧力流体排気系向けの外部ポートとの間を結ぶ内部流路に介在された弁機構の弁開度が、弁体としての機能を有しかつ回転駆動源により駆動される回転体の回転角度に応じて変化するようにした流量制御機構と、前記アクチュエータ向け外部ポートの流体圧を、前記回転体の回転軸に伝達されるべき回転トルクへと変換して、前記回転体の回転を機構的に制御するメカニカルなバックドライブ機構とを具備する、回転型流量制御弁。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ向け外部ポートと圧力流体供給源向け外部ポート又は圧力流体排気系向け外部ポートとの間を結ぶ内部流路に介在された弁機構の弁開度が、弁体としての機能を有しかつ回転駆動源により駆動される回転体の回転角度に応じて変化するようにした流量制御機構と、
前記アクチュエータ向け外部ポートの流体圧を、前記回転体の回転軸に伝達されるべき回転トルクへと変換して、前記回転体の回転を制御するメカニカルなバックドライブ機構と、を具備する、回転型流量制御弁。
【請求項2】
前記アクチュエータ向け外部ポートは、アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートからなり、
前記回転トルクに変換されるべき流体圧が、前記アクチュエータ向け第1の外部ポートの流体圧と前記アクチュエータ向けの第2の外部ポートの流体圧との圧力差である、請求項1に記載の回転型流量制御弁。
【請求項3】
前記バックドライブ機構が、
前記回転型流量制御弁の筐体内に設けられた第1の閉空間と、
前記第1の閉空間を、前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートへと連通する第1の室と前記アクチュエータ向けの第2の外部ポートへと連通する第2の室とに仕切ると共に、その仕切った状態を維持したまま、所定の回転軸部と一体に所定の回転ストロークを有して回転するように構成されたベーン部とからなる、請求項2に記載の回転型流量制御弁。
【請求項4】
前記ベーン部が、
前記所定の回転軸部の周りの1箇所から半径方向外方へと突出する1つのベーン部からなる、請求項3に記載の回転型流量制御弁。
【請求項5】
前記ベーン部が、
前記所定の回転軸部の周りの2箇所のそれぞれから半径方向外方へと突出する長さの異なる2つのベーン部からなる、請求項3に記載の回転型流量制御弁。
【請求項6】
前記ベーン部が、
前記所定の回転軸部の周りの2箇所のそれぞれから半径方向外方へと突出する長さが同一な2つのベーン部からなり、
それら2つのベーン部の一方又は双方の受圧面には、それらのベーン部が、前記圧力差に応じた方向へと回転するように、受圧分散加工が施されている、請求項3に記載の回転型流量制御弁。
【請求項7】
前記流量制御機構が、
前記回転型流量制御弁の筐体内に設けられた第2の閉空間と、
前記回転体を構成する回転軸部の周りの2箇所のそれぞれから半径方向外方へと突出する第1、第2の弁体部とを備え、
前記第1、第2の弁体部は、前記第2の閉空間を、第1、第2の室に仕切ると共に、その仕切った状態を維持したまま、前記回転体の回転軸部と共に、所定の回転ストローク範囲内を回転するようになされ、
前記第1、第2の弁体部が、前記回転ストローク範囲の中立位置にあるとき、前記第1、第2の弁体部の一部にて、それぞれ、完全に塞がれる位置に、前記排気系に接続されるべき外部ポート、加圧流体供給源に接続されるべき外部ポートに、それぞれ、連通する第1、第2の弁座開口が配置されており、
前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートから選ばれた、互いに異なる1の外部ポートへと連通するものであり、
前記第1の弁体部の一部と前記第1の弁座開口、前記第2の弁体部の一部と前記第2の弁座開口とにより、第1の弁機構、第2の弁機構がそれぞれ構成されている、請求項2に記載の回転型流量制御弁。
【請求項8】
前記第1、第2の弁座開口が、それぞれ、半径方向の内方へ向けられた開口であり、かつ、前記第1、第2の弁体部の一部が、それぞれの弁体部の先端面である、請求項7に記載の回転型流量制御弁。
【請求項9】
前記第1、第2の弁座開口の開口輪郭が矩形状である、請求項8に記載の回転型流量制御弁。
【請求項10】
前記第1、第2の弁座開口が、それぞれ、前記第1、第2の弁体部に対面するように、軸方向へ向けられた開口であり、かつ、前記第1、第2の弁体部の一部が、それぞれの弁座開口に対面するように、軸方向へ向けられた面の一部である、請求項7に記載の回転型流量制御弁。
【請求項11】
前記流量制御機構に含まれる回転軸部と前記バックドライブ機構に含まれる回転軸部とは、同一の回転軸部の軸方向へと変位した異なる部分により構成される、請求項7に記載の回転型流量制御弁。
【請求項12】
前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートの流体圧よりも第2の外部ポートの流体圧が大きいときに、前記第1の弁体部が、前記第1の室側から前記第2の室側へと、また前記第2の弁体部が、前記第2の室側から前記第1の室側へと回転するときには、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートへとそれぞれ連通するように構成される、請求項7に記載の回転型流量制御弁。
【請求項13】
前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートの流体圧よりも第2の外部ポートの流体圧が大きいときに、前記第1の弁体部が、前記第1の室側から前記第2の室側へと、また前記第2の弁体部が、前記第2の室側から前記第1の室側へと回転するときには、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第2、第1の外部ポートへとそれぞれ連通するように構成される、請求項7に記載の回転型流量制御弁。
【請求項14】
アクチュエータ向け外部ポートと圧力流体供給源向け外部ポート又は圧力流体排気系向け外部ポートとの間を結ぶ内部流路に介在された弁機構の弁開度が、弁体としての機能を有しかつ回転駆動源により駆動される回転体の回転角度に応じて変化するようにした流量制御機構を有し、
前記流量制御機構は、
筐体内に設けられた閉空間と、
前記回転体を構成する回転軸部の周りの互いに所定角度だけ離れた2箇所のそれぞれから半径方向外方へと突出する長さが同一な第1、第2の弁体部とを備え、
前記第1、第2の弁体部は、前記閉空間を、第1、第2の室に仕切ると共に、その仕切った状態を維持したまま、前記回転体の回転軸部と共に、所定の回転ストローク範囲内を回転するようになされ、
前記第1、第2の弁体部が、前記回転ストローク範囲の中立位置にあるとき、前記第1、第2の弁体部の一部にて、それぞれ、完全に塞がれる位置に、前記排気系に接続されるべき外部ポート、加圧流体供給源に接続されるべき外部ポートに、それぞれ、連通する第1、第2の弁座開口が配置されており、
前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートから選ばれた、互いに異なる1の外部ポートへと連通するものであり、
前記第1の弁体部の一部と前記第1の弁座開口、前記第2の弁体部の一部と前記第2の弁座開口とにより、第1の弁機構、第2の弁機構がそれぞれ構成されており、さらに
前記第1、第2の弁体部は、前記第1の室の流体圧と前記第2の室の流体圧との圧力差に応じて決められた方向へと回転するように構成されている、回転型流量制御弁。
【請求項15】
前記圧力差に応じて決められた方向へと回転するように、前記第1、第2の弁体部は互いに長さが異なるように設定され、或いは一方又は双方の受圧面には受圧分散加工が施されている、請求項14に記載の回転型流量制御弁。
【請求項16】
前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートの流体圧よりも第2の外部ポートの流体圧が大きいときに、前記第1の弁体部が、前記第1の室側から前記第2の室側へと、また前記第2の弁体部が、前記第2の室側から前記第1の室側へとそれぞれ回転するときには、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートへとそれぞれ連通するように構成される、請求項14に記載の回転型流量制御弁。
【請求項17】
前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートの流体圧よりも第2の外部ポートの流体圧が大きいときに、前記第1の弁体部が、前記第1の室側から前記第2の室側へと、また前記第2の弁体部が、前記第2の室側から前記第1の室側へとそれぞれ回転するときには、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第2、第1の外部ポートへとそれぞれ連通するように構成される、請求項14に記載の回転型流量制御弁。
【請求項18】
前記回転体の回転態様に対応する電気信号を出力する回転検出器を有する、請求項1~17のいずれか1つに記載の回転型流量制御弁。
【請求項19】
前記回転検出器から出力される電気信号、及び/又は、前記回転駆動源を構成する回転電動機の負荷電流に基づいて、前記回転電動機の動作を制御する制御部を有する、請求項18に記載の回転型流量制御弁。
【請求項20】
前記圧力流体としは、加圧油又は加圧空気を含む、請求項1~17のいずれか1つに記載の回転型流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転型流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧流体供給源又は排出系に通ずる外部ポートと流体駆動アクチュエータ(例えば、圧油又は圧気にて駆動される往復直動シリンダ機構、双方向回動モータ等々)に通ずる外部ポートとを結ぶ内部流路途中に介在された弁機構の弁開度が、弁体として機能する回転体の回転角度に応じて連続的に変化するように構成された回転型流量制御弁が、従来より、知られている(例えば、特許文献1、2参照)。弁体として機能する回転体の回転動力源としては、一般に、精密制御が可能な回転電動機が使用される。
【0003】
斯かる回転型流量制御弁によれば、弁体として機能するスプールの進退動により弁部の開度が変化する直動型流量制御弁(例えば、特許文献3参照)に比べて、構造が簡単でコンパクトに構成できる。また、回転体の回転駆動のためには回転電動機を使用できるため、スプールの進退駆動のためにソレノイドコイルとスプリングを使用する直動型流量制御弁(例えば、技術文献3参照)に比べて、弁部の開度を高精度に制御できる等の利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-013709号公報
【特許文献2】特開2001-141093号公報
【特許文献3】特開2020-041687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の回転型流量制御弁にあっては、それ自身でアクチュエータの動作状態を推定し、推定される動作状態に応じて弁開度をメカニカルにフィードバック制御する機能(以下、『メカニカルなバックドライブ機能』と称する)が存在しないため、例えば、アクチュエータをサーボ制御するためには、アクチュエータの動作状態の推定のために、別途、アクチュエータごとに圧力センサや力センサ等を設けて電気的なセンサ信号を得ることが必要となる。
【0006】
特に、多数のアクチュエータにより複雑な動きを実現する機械システム(例えば、ロボットシステム等)にあっては、センサの個数や配線の手間により、システム全体のコストアップに繋がるほか、各アクチュエータ周りの配線スペースも必要となることから、システムのコンパクト化の障害ともなり得ると言った問題がある。
【0007】
この発明は、従来の回転型流量制御弁における上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、メカニカルなバックドライブ機能を備えた回転型流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する回転型流量制御弁により解決することができる。
【0009】
すなわち、本発明に係る回転型流量制御弁は、アクチュエータ向け外部ポートと圧力流体供給源向け外部ポート又は圧力流体排気系向け外部ポートとの間を結ぶ内部流路に介在された弁機構の弁開度が、弁体としての機能を有しかつ回転駆動源により駆動される回転体の回転角度に応じて変化するようにした流量制御機構と、前記アクチュエータ向け外部ポートの流体圧を、前記回転体の回転軸に伝達されるべき回転トルクへと変換して、前記回転体の回転を制御するメカニカルなバックドライブ機構と、を具備する、ものである。
【0010】
このような構成によれば、メカニカルなバックドライブ機能を備えた回転型流量制御弁を提供することができる。
【0011】
好ましい実施の態様にあっては、前記アクチュエータ向け外部ポートは、アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートからなり、前記回転トルクに変換されるべき流体圧が、前記アクチュエータ向け第1の外部ポートの流体圧と前記アクチュエータ向けの第2の外部ポートの流体圧との圧力差であってもよい。
【0012】
このような構成によれば、直動式シリンダ機構や回動式モータ等の2ポート式の流体駆動アクチュエータへの適用が可能となる。
【0013】
好ましい実施の態様にあっては、前記バックドライブ機構が、前記回転型流量制御弁の筐体内に設けられた第1の閉空間と、前記第1の閉空間を、前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートへと連通する第1の室と前記アクチュエータ向けの第2の外部ポートへと連通する第2の室とに仕切ると共に、その仕切った状態を維持したまま、所定の回転軸部と一体に所定の回転ストロークを有して回転するように構成されたベーン部とからなる、ものであってもよい。
【0014】
このような構成によれば、簡単な構造で、第1の外部ポートの流体圧と前記アクチュエータ向けの第2の外部ポートの流体圧との圧力差に対応する回転トルクを生成することができる。
【0015】
好ましい実施の態様にあっては、前記ベーン部が、前記所定の回転軸部の周りの1箇所から半径方向外方へと突出する1つのベーン部からなる、ものであってもよい。
【0016】
このような構成によれば、上述の圧力差と回転トルクとの変換効率が高いという利点がある。
【0017】
好ましい実施の態様にあっては、前記ベーン部が、前記所定の回転軸部の周りの2箇所のそれぞれから半径方向外方へと突出する長さの異なる2つのベーン部からなる、ものであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、2つのベーン部の長さの比を調整することで、上述の変換効率を変更することができるので、設計自由度が高い利点がある。
【0019】
好ましい実施の態様にあっては、前記ベーン部が、前記所定の回転軸部の周りの2箇所のそれぞれから半径方向外方へと突出する長さが同一な2つのベーン部からなり、それら2つのベーン部の一方又は双方の受圧面には、それらのベーン部が、前記圧力差に応じた方向へと回転するように、受圧分散加工が施されていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、2つのベーン部の長さを同一としたままで、第1の外部ポートの流体圧と前記アクチュエータ向けの第2の外部ポートの流体圧との圧力差に対応する回転トルクを生成することができる。
【0021】
好ましい実施の態様にあっては、前記流量制御機構が、前記回転型流量制御弁の筐体内に設けられた第2の閉空間と、前記回転体を構成する回転軸部の周りの2箇所のそれぞれから半径方向外方へと突出する第1、第2の弁体部とを備え、前記第1、第2の弁体部は、前記第2の閉空間を、第1、第2の室に仕切ると共に、その仕切った状態を維持したまま、前記回転体の回転軸部と共に、所定の回転ストローク範囲内を回転するようになされ、前記第1、第2の弁体部が、前記回転ストローク範囲の中立位置にあるとき、前記第1、第2の弁体部の一部にて、それぞれ、完全に塞がれる位置に、前記排気系に接続されるべき外部ポート、加圧流体供給源に接続されるべき外部ポートに、それぞれ、連通する第1、第2の弁座開口が配置されており、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートから選ばれた、互いに異なる1の外部ポートへと連通するものであり、前記第1の弁体部の一部と前記第1の弁座開口、前記第2の弁体部の一部と前記第2の弁座開口とにより、第1の弁機構、第2の弁機構がそれぞれ構成されていてもよい。
【0022】
このような構成によれば、流量制御機構の薄型化により、縦型構造の回転型流量制御弁の実現に寄与する利点がある。
【0023】
好ましい実施の態様にあっては、前記第1、第2の弁座開口が、それぞれ、半径方向の内方へ向けられた開口であり、かつ前記第1、第2の弁体部の一部が、それぞれの弁体部の先端面であってもよい。
【0024】
このような構成によれば、弁体部と弁座開口との相対移動を直線的に行うことができる利点がある。
【0025】
好ましい実施の態様にあっては、前記第1、第2の弁座開口の開口輪郭が矩形状であってもよい。
【0026】
このような構成によれば、弁開度と回転角度との間の直線性を改善して、弁開度を高精度に制御可能な回転型流量制御弁を実現することができる。
【0027】
好ましい実施の態様にあっては、前記第1、第2の弁座開口が、それぞれ、前記第1、第2の弁体部に対面するように、軸方向へ向けられた開口であり、かつ、前記第1、第2の弁体部の一部が、それぞれの弁座開口に対面するように、軸方向へ向けられた面の一部であってもよい。
【0028】
このような構成によれば、構造簡単にして製造加工が容易な弁機構を実現することで、コストダウンに寄与する利点がある。
【0029】
好ましい実施の態様にあっては、前記流量制御機構に含まれる回転軸部と前記バックドライブ機構に含まれる回転軸部とは、同一の回転軸部の軸方向へと変位した異なる部分により構成してもよい。
【0030】
このような構成によれば、バックドライブ機構の回転軸部と流量制御機構の回転軸部とを兼用することにより、構造簡単化によるコストダウン及び制御精度の向上を図ることができる。
【0031】
好ましい実施の態様にあっては、前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートの流体圧よりも第2の外部ポートの流体圧が大きいときに、前記第1の弁体部が、前記第1の室側から前記第2の室側へと、また前記第2の弁体部が、前記第2の室側から前記第1の室側へと回転するときには、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートへとそれぞれ連通するように構成してもよい。
【0032】
このような構成によれば、保護動作等に好適な負帰還制御を伴うバックドライブ機能を実現することができる。
【0033】
好ましい実施の態様にあっては、前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートの流体圧よりも第2の外部ポートの流体圧が大きいときに、前記第1の弁体部が、前記第1の室側から前記第2の室側へと、また前記第2の弁体部が、前記第2の室側から前記第1の室側へと回転するときには、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第2、第1の外部ポートへとそれぞれ連通するように構成してもよい。
【0034】
このような構成によれば、復元動作等に好適な正帰還制御を伴うバックドライブ機能を実現することができる。
【0035】
別の一面から見た本発明は、流量制御機構そのものにバックドライブ機能を持たせた回転型流量制御弁として把握することもできる。
【0036】
すなわち、この回転型流量制御弁は、アクチュエータ向け外部ポートと圧力流体供給源向け外部ポート又は圧力流体排気系向け外部ポートとの間を結ぶ内部流路に介在された弁機構の弁開度が、弁体としての機能を有しかつ回転駆動源により駆動される回転体の回転角度に応じて変化するようにした流量制御機構を有し、前記流量制御機構は、筐体内に設けられた閉空間と、前記回転体を構成する回転軸部の周りの2箇所のそれぞれから半径方向外方へと突出する長さが同一な第1、第2の弁体部とを備え、前記第1、第2の弁体部は、前記閉空間を、第1、第2の室に仕切ると共に、その仕切った状態を維持したまま、前記回転体の回転軸部と共に、所定の回転ストローク範囲内を回転するようになされ、前記第1、第2の弁体部が、前記回転ストローク範囲の中立位置にあるとき、前記第1、第2の弁体部の一部にて、それぞれ、完全に塞がれる位置に、前記排気系に接続されるべき外部ポート、加圧流体供給源に接続されるべき外部ポートに、それぞれ、連通する第1、第2の弁座開口が配置されており、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートから選ばれた、互いに異なる1の外部ポートへと連通するものであり、前記第1の弁体部の一部と前記第1の弁座開口、前記第2の弁体部の一部と前記第2の弁座開口とにより、第1の弁機構、第2の弁機構がそれぞれ構成されており、さらに前記第1、第2の弁体部は、前記第1の室の流体圧と前記第2の室の流体圧との圧力差に応じて決められた方向へと回転するように構成されている、ものであってもよい。
【0037】
このような構成によれば、流量制御用の弁体部にバックドライブ用のベーン部の機能を持たせることにより、別途に、バックドライブ機構を設けることを不要として、コストダウンを図ることができる。
【0038】
好ましい実施の態様にあっては、前記第1、第2の弁体部の一方又は双方の受圧面には、それらの弁体部が、前記圧力差に応じて決められた方向へと回転するように、受圧分散加工が施されている、ものであってもよい。
【0039】
このような構成によれば、第1、第2の弁体部の長さを同一としたままであっても、それらの弁体部が、前記圧力差に応じて決められた方向へと回転するように構成することができる。
【0040】
好ましい実施形態にあっては、前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートの流体圧よりも第2の外部ポートの流体圧が大きいときに、前記第1の弁体部が、前記第1の室側から前記第2の室側へと、また前記第2の弁体部が、前記第2の室側から前記第1の室側へとそれぞれ回転するときには、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第1、第2の外部ポートへとそれぞれ連通するように構成してもよい。
【0041】
このような構成によれば、保護動作等に好適な負帰還制御を伴うバックドライブ機能を実現することができる。
【0042】
好ましい実施の態様にあっては、前記アクチュエータ向けの第1の外部ポートの流体圧よりも第2の外部ポートの流体圧が大きいときに、前記第1の弁体部が、前記第1の室側から前記第2の室側へと、また前記第2の弁体部が、前記第2の室側から前記第1の室側へとそれぞれ回転するときには、前記第1、第2の室は、前記アクチュエータ向けの第2、第1の外部ポートへとそれぞれ連通するように構成してもよい。
【0043】
このような構成によれば、復元動作等に好適な正帰還制御を伴うバックドライブ機能を実現することができる。
【0044】
別の一面から見た本発明の回転型流量制御弁は、前記回転体の回転態様に対応する電気信号を出力する回転検出器を有する、ものであってもよい。
【0045】
このような構成によれば、回転検出器から出力される電気信号に基づいて、流体の流れの方向、弁機構における弁開度、弁体開閉速度、等を正確に把握することができる。
【0046】
好ましい実施の態様にあっては、前記回転検出器から出力される電気信号、及び/又は、前記回転駆動源を構成する回転電動機の負荷電流に基づいて、前記回転電動機の動作を制御する制御部を有する、ものであってもよい。
【0047】
このような構成によれば、前記回転検出器から出力される電気信号、及び/又は、前記回転駆動源を構成する回転電動機の負荷電流に基づいて、外力が加えられたことにより、メカニカルなバックドライブ機能が作動したことを判定した上で、最適な制御動作を実現することができる。
【0048】
上述の構成よりなる回転型流量制御弁に適用可能な圧力流体としては、加圧油のみならず、加圧空気を含む、様々な液体又は気体を含むことは云うまでもない。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、メカニカルなバックドライブ機能を備えた回転型流量制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、回転型流量制御弁の外部ポートと周辺機器との接続関係を示す図である。
【
図2】
図2は、回転型流量制御弁の外観斜視図(回転駆動部省略)である。
【
図3】
図3は、回転型流量制御弁の縦断面図(回転駆動部省略)である。
【
図4】
図4は、流量制御機構を含む下部ケーシングの平面図である。
【
図5】
図5は、メカニカルなバックドライブ機構を含む上部ケーシングの平面図である。
【
図6】
図6は、流量制御用弁体部及びバックドライブ用ベーン部を一体に備えた回転体の立面図である。
【
図7】
図7は、上下各ケーシングの中心孔と円柱状回転体との相対関係(中立状態)を示す説明図である。
【
図8】
図8は、上下各ケーシングの中心孔と円柱状回転体のとの相対関係(第1の状態)を示す説明図である。
【
図9】
図9は、上下各ケーシングの中心孔と円柱状回転体との相対関係(第2の状態)を示す説明図である。
【
図10】
図10は、回転型流量制御弁とアクチュエータとの接続関係を示す図である。
【
図11】
図11は、メカニカルなバックドライブ機構による保護動作の説明図である。
【
図12】
図12は、回転型流量制御弁とアクチュエータとの接続関係を示す図(他の例)である。
【
図13】
図13は、メカニカルなバックドライブ機構による保護動作の説明図(他の例)である。
【
図14】
図14は、弁開度の変化を半径方向指向の開口と軸方向指向の開口とで比較して示す説明図である。
【
図15】
図15は、流量制御用弁体部と各外部ポート対応開口との位置関係の他の例を示す概念図である。
【
図16】バックドライブ用ベーン部の形状に関する他の設計例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(1.第1の実施形態)
以下に、本発明に係る回転型流量制御弁の好適な実施の一形態を添付図面にしたがって詳細に説明する。
【0052】
(回転型流量制御弁の概要及びその周辺機器との関係)
本発明を、流れ方向切替機能付きの回転型流量制御弁の一例である、いわゆる4ポート3位置切替・回転型流量制御弁(以下、単に、『回転型流量制御弁』と略称する)に適用した例について説明する。
【0053】
図1に回路シンボル表記で示されるように、回転型流量制御弁1は、4つの外部ポートP、T、A、Bを備えている。外部ポートPは、圧油供給源である油圧ポンプ(Pump)2へと通ずる配管に接続される。外部ポートTは、圧油排出系である油タンク(Tank)3へと通ずる配管に接続される。
【0054】
一方、外部ポートA、Bは、2ポート式のアクチュエータ4を駆動するためのポートである。2ポート式のアクチュエータ4としては、この例では、往復直線運動を実現するための油圧シリンダ機構が採用されている。油圧シリンダ機構は、油圧シリンダ内において、ピストンにて隔てられた第1の室(図中左側の室)と第2の室(図中右側の室)とを有しており、第1の室は外部ポートC1へ、第2室は外部ポートC2へと通ずるように構成されいる。この例では、回転型流量制御弁1の外部ポートA、Bは、それぞれ、アクチュエータ4の外部ポートC1、C2へと通ずる配管へと接続されている。
【0055】
回転型流量制御弁1における流量制御機構は、中立状態(回路シンボル表記で中央位置)と、第1の状態(回路シンボル表記で左位置)と、第2の状態(回路シンボル表記で右位置)とからなる3つの状態(位置)を選択することができる。ここで、中立状態とは、4つの外部ポートP、T、A、Bの相互間の流通がすべて遮断される状態である。また、第1の状態とは、2つの外部ポートP、A間及び2つの外部ポートT、B間のみが、その時々の弁開度に応じた流量にて流通を許容される状態である。さらに、第2の状態とは、2つの外部ポートP、B及び2つの外部ポートT、A間の流通のみが、その時々の弁開度に応じた流量にて流通を許容される状態である。
【0056】
中立状態と第1の状態との間の双方向遷移、及び中立状態と第2の状態との間の双方向遷移は、回転駆動源5の双方向回転に連動して、流量制御機構(詳細は、後述)を構成する所定の回転体7(
図6参照)が所定ストローク範囲で双方向へと回転することにより、連続的かつ滑らかに行われる。
【0057】
上述の回転型流量制御弁1には、本発明の要部である、メカニカルなバックドライブ機構(詳細は、後述)が含まれている。このバックドライブ機構は、2つの外部ポートA、Bに得られる油圧Pa、Pbの圧力差(Pa-Pb)の極性(正又は負)及びその絶対値|Pa-Pb|に応じたトルクが、弁体としての機能を有する回転体7(
図6参照)に、直接に(すなわち、メカニカル)に印加されるように作用する。
【0058】
(回転型流量制御弁の外観及び内部構造の概要)
次に、上述の回転型流量制御弁1の一例における外観並びに内部構造の概要について説明する。
図2は回転型流量制御弁の外観斜視図(回転駆動部省略)、
図3は回転型流量制御弁の縦断面図(回転駆動部省略)、
図6は流量制御用弁体部及びバックドライブ用ベーン部を一体に備えた回転体の立面図である。
【0059】
それらの図に示されるように、この回転型流量制御弁1は、ベースフレーム101、サブフレーム102、103からなる支持体により、必要な複数の構成部品を一体に組付けてなる集成体として構成されている。
【0060】
ここで、必要な構成部品のうちの主要なものとしては、回転電動機や必要な減速機構を一体に組み込んでなる回転駆動源(図中、仮想線で示す)5と、下部ケーシング104、上部ケーシング105及びカバー106からなるケーシング積層体100と、このケーシング積層体100の中心孔109内に、上部軸受け113及び下部受け114を介して、垂直姿勢で回転自在に支持された略円柱状の回転体7と、回転駆動源5の駆動軸を介して回転体7の回転角度や回転速度を検出するための回転検出器6とが含まれる。
【0061】
回転体7は、
図6に示されるように、円柱状の回転軸部70と、回転軸部70の互いに180度離れた外周上の2箇所から半径方向外方へとそれぞれ直線状に突出する第1、第2の弁体部71,72と、回転軸部70の外周上の1箇所から半径方向外方へと直線状に突出するバックドライブ用のベーン部73とを有する。この例にあっては、第1、第2の弁体部71,72とバックドライブ用のベーン部73とは、回転体7の軸方向へ隣接して一体的に配置され、また、第1の弁体部71の突出方向とバックドライブ用のベーン73の突出方向とは同一とされている(例えば、
図7参照)。
【0062】
後述するように、第1、第2の弁体部71,72と下部ケーシング104の内部構造とが協働することにより流れ方向切替機能付きの流量制御機構が構成され、バックドライブ用のベーン部73と上部ケーシング105の内部構造とが協働することによりメカニカルなバックドライブ機構が構成される。
【0063】
なお、符合107は、下部ケーシング104、上部ケーシング105、カバー106を積層一体化するためのボルト、符合108は、回転型流量制御弁1を構成する集成体全体を図示しない取付基台に固定するためのボルト、符合115は、回転駆動源5をサブフレーム103に固定するためのボルト、符合111は、回転検出器6をサブフレーム103に固定するためのボルトである。
【0064】
(流れ方向切替機能付き流量制御機構の詳細)
次に、流れ方向切替機能付きの流量制御機構の構成について説明する。
図4は、流れ方向切替機能付きの流量制御機構を構成する下部ケーシングの平面図、
図5は、メカニカルなバックドライブ機構を含む上部ケーシングの平面図、
図6は、流量制御用弁体部及びバックドライブ用ベーン部を一体に備えた回転体の立面図、
図7~
図9は、上下各ケーシングの中心孔と円柱状回転体との相対的関係を示す説明図である。
【0065】
これらの図から明らかなように、下部ケーシング104は、平面視略正方形状でかつ所定の厚みを有するブロック体(
図2、
図3参照)として構成されており、その中心部には、回転体7に形成された第1、第2の弁体部71、72の先端面71a,72aのなす回転軌跡円に対応する直径を有する中心孔109が設けられている。この中心孔109を取り囲むその周壁内には、それぞれ回転体7の軸方向へと延びかつ円形断面を有する4本の油管81,82,83,84が互いに90度間隔で埋設配置されている。図では、それら油管81,82,83,84の開口端に相当する4つの円が90度間隔で描かれている。それらの油管81,82,83,84は、上下のケーシング104,105とカバー106とが積層一体化されたケーシング積層体100の状態においては、図示しない内部流路を介して、外部ポートT、A、P、Bへとそれぞれ連通する。
【0066】
中心孔109の内周壁面には、油管81,82,83,84の埋設位置にそれぞれ整合し、かつ中心孔109の半径方向内方へ向けて開口する4個の矩形開口10a,10b,10c,10d(
図14(b)参照)が配置されている。これら4個の矩形開口10a,10b,10c,10dは、それぞれ、その背後に位置する油管81,82,83,84と連通している。それら4つの矩形開口10a,10b,10c,10dの中で、矩形開口10aと矩形開口10cのみが、弁座として機能する開口(以下、「弁座開口」と称する)となる。矩形開口10bと矩形開口10dとは、弁座として機能するのではなく、後述する室110a,110bを外部ポートA,Bへとそれぞれ連通させるためにのみ機能する。
【0067】
一方、中心孔109内に、略円柱状の回転体7が回転自在に装着された状態にあっては、第1、第2の弁体部71,72は、その円弧状曲面をなす先端面71a、72aを、中心孔109の内周面に密に接しつつ、所定の回転ストロークをもって双方向(時計回り及び反時計回り)へと回転(旋回)する。この回転は、円筒状閉空間110の内部にて行われる。ここで、「円筒状閉空間」とは、
図3に示されるように、上部ケーシング105の下面と下部軸受け114の上面と中心孔109の内周面と回転体7の回転軸部70の外周面とで周囲を囲まれて生ずる閉空間のことである。
【0068】
このとき、第1、第2の弁体部71,72は、上記の円筒状閉空間110を、互いに流通不能な2つの室110a,110bに仕切ることとなる。ここで、重要な点は、第1、第2の弁体部71,72が、所定の回転ストローク範囲を回転する状態にあっては、外部ポートAに連通する開口10bは、第1の弁体部71の先端面71aにより塞がれることはなく、第1の室109aに露出(開放)され続けることであり、同様に、外部ポートBに連通する開口10dも、第2の弁体部72の先端面72aにより塞がれることはなく、第2の室109bに露出(開放)され続けることである。
【0069】
上述の構成を有する流量制御機構によれば、流れ方向切替機能及び流量制御機能が、以下のようにして、実現される(
図7(b),
図8(b)、
図9(b)参照)。前述のように、この回転型流量制御弁1の流量制御機構は、中立状態と第1の状態と第2の状態とからなる3つの状態を選択することができる。
【0070】
1)中立状態(図7(b)参照)
外部ポートTへ通ずる開口(「弁座開口」)10aは、第1の弁体部71の先端面71aにより完全に塞がれ、また、外部ポートPへ通ずる開口(「弁座開口」)10cは、第2の弁体部72の先端面72aにより完全に塞がれる。外部ポートAに通ずる開口10bと外部ポートBに通ずる開口10dとの間の流通は、第1、第2の弁体部71,72の全長部分により隔てられることに加えて、第1の弁体部71の先端面71aの左右両側縁部及び第2の弁体部72の先端面72aの左右両側縁部が、中心孔109の内周面と密に接することにより遮断される。そのため、この中立状態にあっては、4つの外部ポートP、T、A、Bの相互間の流通は、すべて遮断される。
【0071】
2)第1の状態(図8(b)参照)
この第1の状態は、回転体7が図において、中立状態に対応する所定の基準角度から反時計回りに回転することにより出現する。このとき、外部ポートTへ通ずる開口(「弁座開口」)10aにおいては、第1の弁体部71の先端面71aにより開口10aの全体が覆われた状態(弁機構の全閉状態)から、先端面71aの時計回り側(図中右側)の側縁より、開口10aの一部が露出する状態(弁機構の一部開状態)への移行が行われる(例えば、
図14(a),(b)参照)。
【0072】
同様にして、外部ポートPへ通ずる開口(「弁座開口」)10cにおいても、第2の弁体部72の先端面72aにより開口10cの全体が覆われた状態(弁機構の全閉状態)から、先端面72aの時計回り側(図中左側)の側縁から、開口10cの一部が露出する状態(弁機構の一部開状態)への移行が行われる。
【0073】
一方、外部ポートAに通ずる開口10bと外部ポートBに通ずる開口10dとの流通、及び外部ポートTに通ずる開口(「弁座開口」)10aと外部ポートPに通ずる開口10c(「弁座開口」)との流通は、第1の弁体部71の先端面71aの回転方向側の一部及び第2の弁体部72の先端面72aの回転方向側の一部が、中心孔109の内周面と密に接することにより阻止される。その結果、この第1の状態においては、2つの外部ポートP、A間及び2つの外部ポートT、B間のみが、流通可能な状態となり、第1の方向の油の流れが確立される。
【0074】
ここで、「第1の方向の油の流れ」とは、油圧ポンプ(Pump)2→外部ポートP→(内部流路)→外部ポートA→アクチュエータ4の外部ポートC1なる経路、及びアクチュエータ4の外部ポートC2→外部ポートB→(内部流路)→外部ポートT→油タンク3なる経路を有する油の流れである。
【0075】
このとき、第1の弁体部71の先端面71aと開口(「弁座開口」)10aとの相互スライド作用で構成される弁機構の弁開度と、第2の弁体部72の先端面72aと開口(「弁座開口」)10cとの相互スライド作用で構成される弁機構の弁開度とが、回転体7の、基準角度に対する反時計回りの回転角度に応じて変化することから、第1の方向の油の流れを維持しつつも、その流量を適宜に制御すること、すなわち第1の方向における「流量制御機能」が実現されるのである。
【0076】
3)第2の状態(図9(b)参照)
この第2の状態は、回転体7が、図において、中立状態に対応する所定の基準角度から時計回りに回転することにより出現する。このとき、外部ポートTへ通ずる開口(「弁座開口」)10aにおいては、第1の弁体部71の先端面71aにより開口10aの全体が覆われた状態(弁部の全閉状態)から、先端面71aの反時計回り側(図中左側)の側縁より、開口10aの一部が露出する状態(弁機構の一部開状態)への移行が行われる。
【0077】
同様にして、外部ポートPへ通ずる開口(「弁座開口」)10cにおいても、第2の弁体部72の先端面72aにより開口10cの全体が覆われた状態(弁機構の全閉状態)から、先端面72aの反時計回り側(図中右側)の側縁より、開口10cの一部が露出する状態(弁機構の一部開状態)への移行が行われる。
【0078】
一方、外部ポートAに通ずる開口10bと外部ポートBに通ずる開口10dとの流通、及び外部ポートTに通ずる開口(「弁座開口」)10aと外部ポートPに通ずる開口(「弁座開口」)10cとの流通は、第1の弁体部71の先端面71aの回転方向側の一部及び第2の弁体部72の先端面72aの回転方向側の一部が、中心孔109の内周面と密に接することにより阻止される。その結果、この第2の状態においては、2つの外部ポートP、B間及び2つの外部ポートT、A間のみが、流通可能な状態となり、第2の方向の油の流れが確立される。
【0079】
ここで、「第2の方向の油の流れ」とは、油圧ポンプ(Pump)2→外部ポートP→(内部流路)→外部ポートB→アクチュエータ4の外部ポートC2なる経路、及びアクチュエータ4の外部ポートC1→外部ポートA→(内部流路)→外部ポートT→油タンク3なる経路を有する油の流れである。
【0080】
このとき、第1の弁体部71の先端面71aと開口(「弁座開口」)10aとの相互スライド作用で構成される弁機構の弁開度と、第2の弁体部72の先端面72aと開口(「弁座開口」)10cとの相互スライド作用で構成される弁機構の弁開度とが、回転体7の、基準角度に対する時計回りの回転角度に応じて変化することから、第2の方向の油の流れを維持しつつも、その流量を適宜に制御すること、すなわち第2の方向における「流量制御機能」が実現されるのである。
【0081】
(メカニカルなバックドライブ機構の詳細)
次に、メカニカルなバックドライブ機構の構成について説明する。
図5は、メカニカルなバックドライブ機構を含む上部ケーシングの平面図、
図6は、流量制御用弁体部及びバックドライブ用ベーン部を一体に備えた回転体の立面図、
図7~
図9は、上下各ケーシングの中心孔と円柱状回転体との相対的関係を示す説明図である。
【0082】
これらの図から明らかなように、上部ケーシング105は、平面視略正方形状でかつ所定の厚みを有するブロック体(
図2、
図3参照)として構成されており、その中心部には、中心孔109が設けられている。この中心孔109は、
図5に示されるように、大半径R1に対応する部分円弧と小半径R2に対応する部分円弧とが連続する異形断面を有する。この異形断面を有する中心孔109は、仮想線に示す弧状線を境にして、大半径R1に対応する部分円弧帯状領域109aと小半径R2に対応する真円状領域109bとに分けることができる。
【0083】
上下のケーシング104,105とカバー106とが積層一体化されたケーシング積層体100に、略円筒状の回転体7が垂直姿勢で回転自在に装着された状態においては、上述の部分円弧帯状領域109aには、バックドライブ用のベーン部73が配置されると共に、真円状領域109bには、ベーン部73の基部に連続する軸部分70の外周をやや太径化してなる環状段部73b(
図6参照)が配置される。
【0084】
上述のケーシング積層体100内にあって、部分円弧帯状領域109aには、平断面において部分円弧帯状をなす閉空間91が存在し、バックドライブ用のベーン部73は、この閉空間91を、外部ポートAと連通する第1の室91aと外部ポートBと連通する第2の室91bとに仕切る状態を維持しながら、回転体7の回転と連動して、時計回り及び反時計回りに回転(旋回)するように構成されている(
図7(a)、
図8(a)、
図9(a)参照)。
【0085】
なお、ここで「部分円弧帯状の閉空間」とは、
図3及び
図5に示されるように、上部軸受け113の下面と第1の弁体部71の上面と半径R1を有する弧状壁の内周面と環状段部73bの外周面とで周囲を囲まれて生ずる閉空間のことである。
【0086】
また、第1の室91aと外部ポートAとの連通は、油管82を経由するものであってもよいし、別途専用の内部流路を経由するものであってもよい。第2の室91bと外部ポートBとの連通も、油管84を経由するものであってもよいし、別途専用の内部流路を経由するものであってもよい。
【0087】
上述の構成を有するメカニカルなバックドライブ機構によれば、バックドライブ機構に組み込まれたベーン部73と、流量制御機構に組み込まれた第1、第2の弁体部71,72とは、回転体7の回転軸部70を介して一体に結合され、ベーン部73の回転により回転軸部70に印加される回転トルクは、そのまま、回転軸部70から第1、第2の弁体部71,72,へと伝達される。そのため、メカニカルなバックドライブ機能が、以下のようにして、実現される(
図7、
図8、
図9参照)。
【0088】
1)Pa=Pbの状態におけるバックドライブ機能(図7(a),(b)参照)
バックドライブ機構の側において、バックトライブ用ベーン部73が、図において、垂直上向き状態にあるとき(
図7(a)参照)、ベーン部73と第1、第2の弁体部71,72とは、回転体7を介してメカニカルに結合されているため、流量制御機構の側では、前述の中立状態(
図7(b)参照)が出現する。すると、4つの外部ポートP、T、A、Bの相互間の流通は、すべて遮断される。
【0089】
一方、バックトライブ用ベーン部73が垂直上向き状態にあるということは、第1の室91aの油圧(すなわち、外部ポートAの油圧Pa)と第2の室91bの油圧(すなわち、外部ポートBの油圧Pb)とが同一(Pa=Pb)であることを意味している。
【0090】
このことから、外部ポートAの油圧Paと外部ポートBの油圧Pbとが同一のとき、4つの外部ポートP、T、A、Bの相互間の流通はすべて遮断され、その結果、外部ポートAの油圧Pa及び外部ポートBの油圧Pbは、変動することなく、そのままの状態に維持されることが理解される。
【0091】
2)Pa<Pbの状態におけるバックドライブ機能(図8(a),(b)参照)
バックドライブ機構の側において、バックトライブ用ベーン部73が、図において、反時計回り位置にあるとき(
図8(a)参照)、ベーン部73と第1、第2の弁体部71,72とは、回転体7を介してメカニカルに結合されているため、流量制御機構の側では、前述の第1の状態(
図8(b)参照)が出現する。すると、2つの外部ポートP、A間及び2つの外部ポートT、B間のみが、流通可能な状態となる。
【0092】
一方、バックトライブ用ベーン部73が反時計回りの位置になるということは、第1の室91aの油圧(すなわち、外部ポートAの油圧Pa)よりも第2の室91bの油圧(すなわち、外部ポートBの油圧Pb)の方が大きい(Pa<Pb)ことを意味している。
【0093】
このことから、外部ポートAの油圧Paよりも外部ポートBの油圧Pbの方が大きいとき(Pa<Pb)、2つの外部ポートP、A間及び2つの外部ポートT、B間のみが流通可能な第1の状態となり、外部ポートBの油圧Pbを低下させる一方、外部ポートAの油圧Paを上昇させると言った、いわば、圧力変化分を打ち消すような「負帰還作用」をともなうバックドライブ機能が実現されることが理解される。
【0094】
3)Pa>Pbの状態におけるバックドライブ機能(図9(a),(b)参照)
バックドライブ機構の側において、バックトライブ用ベーン部73が、図において、時計回り位置にあるとき(
図9(a)参照)、ベーン部73と第1、第2の弁体部71,72とは、回転体7を介してメカニカルに結合されているため、流量制御機構の側では、前述の第2の状態(
図9(b)参照)が出現する。すると、2つの外部ポートP、B間及び2つの外部ポートT、A間のみが、流通可能な状態となる。
【0095】
一方、バックトライブ用ベーン部73が時計回りの位置になるということは、第1の室91aの油圧(すなわち、外部ポートAの油圧Pa)の方が第2の室91bの油圧(すなわち、外部ポートBの油圧Pb)よりも大きい(Pa>Pb)ことを意味している。
【0096】
このことから、外部ポートAの油圧Paの方が外部ポートBの油圧Pbよりも大きいとき(Pa>Pb)、2つの外部ポートP、B間及び2つの外部ポートT、A間のみが流通可能な第2の状態となり、外部ポートAの油圧Paを低下させる一方、外部ポートBの油圧Pbを上昇させる、いわば、圧力変化分を打ち消すような「負帰還作用」をともなうメカニカルなバックドライブ機能が実現されることが理解される。
【0097】
(メカニカルなバックドライブ機能による保護動作)
次に、以上説明した、メカニカルなバックドライブ機能を利用した保護動作について説明する。ここで、「保護動作」とは、アクチュエータによる駆動対象となる可動機構(例えば、ロボットアーム機構等)において、可動機構の動作中又は停止中に、何らかの障害(例えば、アームの予期せぬ物体への衝突等)が生じたとき、可動機構側又は物体側の損傷を最小限にとどめるような保護動作のことを意味している。
【0098】
今仮に、
図10に示されるように、回転型流量制御弁1の2つの外部ポートA、Bは、アクチュエータ4である油圧シリンダの第1の室(図では、左室)、第2の室(図では、右室)へとそれぞれ接続されているものと想定する。このような状態において、例えば、図中白抜き矢印にて示されるように、ピストンロッドを後退させる方向への外力が与えられると、外部ポートAの油圧Paは上昇し、外部ポートBの油圧Pbは低下する。すると、回転体7が図中時計回りに回転することにより、メカニカルなバックドライブ機構が作用して、上述の保護動作が実現される。
【0099】
以下、上述のアクチュエータと回転型流量制御弁との接続関係(
図10参照)を前提とした上で、メカニカルなバックドライブ機能による保護動作を、1)外力を受けていない場合、2)Pa<Pbとなる外力を受けた場合、3)Pa>Pbとなる外力を受けた場合に分けて説明する(
図11参照)。
【0100】
なお、以下では、説明の便宜上、アクチュエータを構成する油圧シリンダ内のピストンロッドが停止中に、なんらかの外力が加えられた場合で説明するが、ピストンロッドが動作中になんらかの外力が加えられた場合にも、同様に、保護動作を実行し得ることは、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【0101】
1)外力を受けていない場合(図11(a)参照)
外力を受けておらず、しかも油圧シリンダ機構においてピストンロッドが静止状態であれば、油圧シリンダ内において、第1の室(左室)の油圧と第2の室(右室)の油圧とは同一となる筈であるから、外部ポートAの油圧Paと外部ポートBの油圧Pbとは同一(Pa=Pb)となる。外部ポートAの油圧Paは、そのまま、バックドライブ機構内の第1の室91aの油圧となり、同様に、外部ポートBの油圧Pbは、そのまま、バックドライブ機構内の第2の室91bの油圧となる。
【0102】
そうすると、バックドライブ機構内においては、バックドライブ用のベーン部73を、時計回りに回転させようとする力と反時計回りに回転させようとする力とが均衡することにより、回転トルクが発生することはなく、ベーン部73は、垂直上向きの状態となる(
図11(a)上図参照)。
【0103】
これを受けて、流量制御機構は前述の「中立状態」となり(
図11(a)下図参照)、4つの外部ポートP、T、A、Bの相互間の流通はすべて遮断される。その結果、外部ポートAの油圧Pa及び外部ポートBの油圧Pbは、変動することなく、そのままの状態に維持される。
【0104】
2)Pa<Pbとなる外力を受けた場合(図11(b)参照)
油圧シリンダ機構においてピストンロッドが前進する方向(
図10において右方向)への外力を受けた場合、油圧シリンダ内において、第2の室(右室)の油圧は第1の室(左室)の油圧よりも大きくなる筈であるから、外部ポートBの油圧Pbは外部ポートAの油圧Paよりも大きく(Pa<Pb)なる。外部ポートBの油圧Pbは、そのまま、バックドライブ機構内の第2の室91bの油圧となり、同様に、外部ポートAの油圧Paは、そのまま、バックドライブ機構内の第1の室91aの油圧となる。
【0105】
そうすると、バックドライブ機構内においては、バックドライブ用のベーン部73を、時計回りに回転させようとする力よりも反時計回りに回転させようとする力の方が大きくなることにより、ベーン部73は、反時計回りの回転位置の状態となる(
図11(b)上図参照)。
【0106】
これを受けて、流量制御機構は前述の「第1の状態」となり(
図11(b)下図参照)、2つの外部ポートP、A間及び2つの外部ポートT、B間のみが、流通可能な状態となる。その結果、負帰還制御をともなうバックドライブ作用により、外部ポートBの油圧Pbは低下する一方、外部ポートAの油圧Paは上昇することとなって、油圧シリンダ機構内におけるピストンロッドは適宜に前進して外力は緩衝され、アクチュエータの駆動対象となる可動機構それ自身又は衝突相手方(例えば、人体)の損傷が軽減乃至回避されると言った保護動作が実行される。
【0107】
3)Pa>Pbとなる外力を受けた場合(図11(c)参照)
油圧シリンダ機構においてピストンロッドが後退する方向(
図10において左方向)への外力を受けた場合、油圧シリンダ内において、第1の室(左室)の油圧は第2の室(右室)の油圧よりも大きくなる筈であるから、外部ポートAの油圧Paは外部ポートBの油圧Pbよりも大きく(Pa>Pb)なる。外部ポートAの油圧Paは、そのまま、バックドライブ機構内の第1の室91aの油圧となり、同様に、外部ポートBの油圧Pbは、そのまま、バックドライブ機構内の第2の室91bの油圧となる。
【0108】
そうすると、バックドライブ機構内においては、バックドライブ用のベーン部73を、時計回りに回転させようとする力の方が反時計回りに回転させようとする力よりも大きくなることにより、ベーン部73は、時計回りの回転位置の状態となる(
図11(c)上図参照)。
【0109】
これを受けて、流量制御機構は前述の「第2の状態」となり(
図11(c)下図参照)、2つの外部ポートP、B間及び2つの外部ポートT、A間のみが、流通可能な状態となる。その結果、負帰還制御をともなうバックドライブ作用により、外部ポートAの油圧Paは低下する一方、外部ポートBの油圧Pbは上昇することとなって、油圧シリンダ機構内におけるピストンロッドは適宜に後退して外力は緩衝され、アクチュエータの駆動対象となる可動機構それ自身又は衝突相手方の損傷が軽減乃至回避されると言った保護動作が実行される。
【0110】
(2.変形例)
本発明は、上述の実施形態に係る構成に限定されず、様々に変形して実施することができる。
【0111】
(流量制御機構に関する変形例)
1)開口の向きと弁体部との関係について(図15(a)(b)参照)
流れ方向切替機能付き流量制御機構の一例として、回転体7の半径方向外方へと突出する2つの弁体部71,72と、回転体7を中心とするその周に沿って適当な間隔で配置された4個の開口10a、10b、10c、10d(外部ポートT、A、P、Bにそれぞれ対応)との相互作用を利用する構成を採用する場合、4個の開口10a、10b、10c、10dのそれぞれをどのような方向へ向けて配置するかについては、2つの方式が考えられる。なお、開口10a,10cのみが、弁機構を構成する「弁座開口」である。
【0112】
すなわち、先に、
図2~
図11を参照して説明したように、半径方向内方へと指向させて配置し(図中白抜き矢印で示す)、弁体部71,72の先端面71a,72aにてこれらを選択的に塞ぐ、「半径方向指向方式」の場合(
図15(a)参照)と、弁体部71,72の長手方向に沿う面71b,72bと対向するように、軸方向へ指向させて配置し(図中白抜き矢印で示す)、弁体部71,72の長手方向に沿う面71b,72bにてこれらを選択的に塞ぐ、「軸方向指向方式」の場合(
図15(b)参照)とが存在する。
【0113】
軸方向指向方式の流量制御機構にあっても、半径方向指向方式の場合と同様に、流れ方向切替機能付き流量制御機構並びにメカニカルなバックドライブ機能を実現し得ることは云うまでもない(
図12、
図13参照)。
【0114】
なお、
図12において、4つの開口10a、10b、10c、10dは、回転体7の軸と直交する弁座平面上にそれぞれ上向きに開口するものであり、2つの弁体部71,72は、弁座平面と密に接しつつ時計回り及び反時計回りに所定ストローク内を回転し、その延在方向の下面71b,72b(
図15(b)参照)により、外部ポートTに連通する開口10aと外部ポートPに連通する開口10cとを同時に塞ぐことが可能とされている。その他、
図12、
図13において、
図10、
図11と同一構成部分について、同符合を付すことにより説明は省略する。
【0115】
2)回転体の回転角度と弁開度との関係の比較について
回転体の回転角度と弁開度との関係を、「半径方向指向方式」の場合(
図15(a)参照)と「軸方向指向方式」の場合(
図15(b)参照)とで比較した結果が、
図14に示されている。
図14(a),(b)に示されるように、「半径方向指向方式」の場合には、弁体部71,72の先端面71a,72aと4つの開口10a~10dのそれぞれとは、互いに平行な状態を保ちつつ直線に沿って相対的に移動するのに対して(
図14(a)参照)、「軸方向指向方式」の場合には、弁体部71,72の下面71b,72bと4つの開口10a~10dのそれぞれとは、互いに平行な状態を保ちつつ円弧に沿って相対的に移動する(
図14(b)参照)。そのため、開口の輪郭が矩形であることとも相まって、「半径方向指向方式」の場合の方が、回転体の回転角度と弁開度との間に正確な直線性を確保できることが理解される。
【0116】
3)2つの弁体部のなす角度と4つの開口の配列との関係について(図15(c)参照)
2つの弁体部71,72の互いになす角度については、4個の開口10a、10b、10c、10dの配列との関係で決まり、重要な点は、外部ポートTに連通する開口(「弁座開口」)10aと外部ポートPに連通する開口(「弁座開口」)10cとが2つの弁体部71,72により同時に開閉可能とされる一方、ポートAに連通する開口10bとポートBに連通する開口10dとが、2つの弁体部71,72の全長部分とにより隔てられた2つの閉室109a,109bにそれぞれ配置され、しかも、弁体部71,72の回転ストローク範囲では塞がれることがなく、常に、開放状態に保たれることである。なお、2つの弁体部71,72は、ケーシング積層体100内に形成された閉空間を、外部ポートAへ連通する第1の室110aと外部ポートBに連通する第2の室110bとに仕切ることは云うまでもない。
【0117】
したがって、例えば、
図15(c)に示されるように、2つの弁体部71,72を反時計回りに270度の間隔で突出させる一方、4つの外部ポートT、A、P、Bに通ずる開口10a、10b、10c、10dを、開口10aを起点として、反時計回りに135度、135度、90度の間隔で配置するといった変則的な開口配列も可能である。
【0118】
このような構成によっても、外部ポートTに連通する開口(「弁座開口」)10aと外部ポートPに連通する開口(「弁座開口」)10cとは、第1及び第2の弁体部71,72により同時に開閉される一方、外部ポートAに連通する開口10bと外部ポートBに連通する開口10dとは、第1及び第2の弁体部により仕切られて生じた2つの部屋110a,110bにあって、常に、開放された状態に維持されるので、先に説明した、流れ方向切替機能つきの流量制御機構が実現される。
【0119】
(流量制御弁に関する変形例)
1)ポート数や流れ方向切替の有無について
本発明の要点は、回転型流量制御弁において、アクチュエータに接続されるべき外部ポートの流体圧に応じたトルクを生成して、流量制御用の回転体の回転軸に対して伝達するメカニカルなバックドライブ機構を備えたことであって、回転型制御弁のポート数や流れ方向切替の有無については、なんら限定するものではない。
【0120】
したがって、本発明は、上述の4ポート3位置切替式・回転型流量制御弁(
図1の回路シンボル表記参照)のみならず、2つの外部ポートP、Tと1つのアクチュエータ向けの外部ポートとを有する3ポート2位置切替・回転型流量制御弁や2つの外部ポートP、Tと2つのアクチュエータ向けの外部ポートA、Bとを有するものの、流れ方向切替機能を有しない4ポート2位置切替・回転型流量制御弁にも、適用可能である。
【0121】
2)回転型流量制御機構の構造について
本発明の要点は、回転型流量制御弁において、アクチュエータに接続されるべき外部ポートの流体圧に応じたトルクを生成して、流量制御用回転体の回転軸に対して伝達するメカニカルなバックドライブ機構を備えたことであって、回転型の流量制御機構の構造それ自体については、なんら限定するものではない。
【0122】
したがって、本発明は、上述の2つの弁体部71,72とその回転軌跡円に沿って適当な配列で配置された4つの開口10a~10dとの協働により、流れ方向切替機能付きの流量制御機構を実現する構造の回転型の流量制御弁(
図15(a),(b)参照)のみならず、円柱状回転体内に直径方向へ開口する流体通路を貫通形成する一方、この円筒状回転体を包囲する固定スリーブ側にも、外部ポートへ連通する開口を設け、回転体側開口とスリーブ側開口との整合程度を変化させることで、流量制御機能を実現するような構造の回転型流量制御機構(例えば、特許文献1参照)にも適用が可能であるほか、さらには、平坦な弁座面にそれぞれ外部ポートへ連通する複数の開口を配置する一方、弁座面に対して垂直な軸を中心として、弁座面と接しつつ回転する気密連通孔を設け、この気密連通孔によりそれら複数の開口の内の2つを選択的に連通させる構造の回転型流量制御機構(例えば、特許文献2参照)にも適用が可能である。
【0123】
3)メカニカルなバックドライブ機構について
本発明のメカニカルなバックドライブ機構の要点は、回転型流量制御弁において、アクチュエータに接続されるべき外部ポートの流体圧に応じたトルクを生成して、流量制御用回転体の回転軸に対して伝達する機能そのものであって、回転軸から半径方向へ突出するベーン部73により、所定の閉空間91を、外部ポートAへ連通する第1の室91aと外部ポートBに連通する第2の室91bとに仕切ると言った構成は、当該機能実現のための一手法に過ぎないことに留意されたい。
【0124】
仮に、このような手法を採用するとしても、2つの室91a,91bを仕切るベーン部としては、様々な構造のものを選択することができる。すなわち、ベーン部として機能するための要点は、2つの室91a、91bの油圧に圧力差が生じた場合、その圧力差の極性に応じた回転方向のトルクが、弁体として機能する回転体の軸部に伝達されることであり、このような作用をもたらすためのベーン部としては、以下のように、様々な構成を採用することができる。
【0125】
3-1)回転可能な1つのベーン部73により閉空間91を2つの室91a,91bに仕切る場合(図7~図9参照)
図7~
図9に記載の構成は、回転体7の軸部70の外周上の1点から、半径方向外方へと1つのベーン部73を突出させる構造(いわゆる「片側ベーン構造」)に係るものである。
【0126】
このような片側ベーン構造によれば、異形断面の中心孔を必要とすること、受圧面積が比較的に小さいこと、ベーン長の制限から圧力差/トルクの変換効率の制御が難しいこと、等々の製作上や設計上の難点は幾分に残されるものの、左室91aの油圧は、すべて、ベーン部73を時計回りに回転させるために費やされる一方、右室91bの油圧は、すべて、ベーン部73を反時計回りに回転させるために費やされるため、圧力差/トルクの変換効率が良好であるという利点がある。
【0127】
3-2)回転可能な2つのベーン部731,732により閉空間を2つの室に仕切る場合(図16(a)、図16(b)参照)
図16(a)及び
図16(b)に記載の構成は、回転体7の軸部70の外周上において、互いに適当な角度(例えば、180度)だけ離れた2点から、半径方向外方へと2つのベーン部731,732を突出させる構造(いわゆる「両側ベーン構造」)に係るものである。
【0128】
このような両側ベーン構造によれば、仮に、第1、第2のベーン部731,732の長さ及び受圧面の構造を同一とすると、左室の油圧Paが第1のベーン部731を時計回りに回転させようとする力と第2のベーン部732を反時計回りに回転させようとする力とが均衡することから、左室の油圧Paは、第1、第2のベーン部731,732の回転動作に寄与することができない。
【0129】
同様にして、第1、第2のベーン部731,732の長さ及び受圧面の構造を同一とすると、右室の油圧Pbが第1のベーン部731を反時計回りに回転させようとする力と第2のベーン部732を時計回りに回転させようとする力とが均衡することから、右室の油圧Pbは、第1、第2のベーン部731,732の回転動作に寄与することができない。
【0130】
そのため、第1、第2のベーン部731,732の長さ及び受圧面の構造を同一とする限り、仮に、左室の油圧Paと右室の油圧Pbとの間に圧力差(Pa-Pb)が存在したとしても、第1、第2のベーン部731,732が時計回り又は反時計回りに回転することはない。
【0131】
つまり、両側ベーン構造において、左室の油圧Paと右室の油圧Pbとの圧力差(Pa-Pb)により、第1、第2のベーン部731,732に時計回り又は反時計回りの回転トルクが生ずるためには、第1、第2のベーン部731,732の長さ及び/又は受圧面の角度に対して、一定の工夫が必要である。
【0132】
i)長さを工夫する場合(図16(a)参照)
図16(a)に示されるように、第1のベーン部731の長さL1よりも第2のベーン部732の長さL2の方が短いと(L1>L2)と、両ベーン731,732の間に受圧面積の差が生ずるため、左室の油圧Paが第1のベーン部731を時計回りに回転させようとする力は、第2のベーン部732を反時計回りに回転させようとする力に勝ることから、結局、左室の油圧Paは第1、第2のベーン部731,732を時計回りに回転させるように作用することとなる。一方、右室の油圧Pbが第1のベーン部731を反時計回りに回転させようとする力は、第2のベーン部732を時計回りに回転させようとする力に勝ることから、結局、右室の油圧Paは第1、第2のベーン部731,732を反時計回りに回転させるように作用することとなる。
【0133】
その結果、第1、第2のベーン部731,732は、左室の油圧Paの方が右室の油圧Pbよりも大きいとき(Pa>Pb)、反時計回りの回転トルクを生ずるのに対して、右室の油圧Pbの方が左室の油圧Paよりも大きいとき(Pb>Pa)、時計回りの回転トルクを生ずることとなる。
【0134】
ii)受圧面の構造を工夫する場合(図16(b)参照)
受圧面の構造に工夫する場合の要点は、受圧面上の各点のそれぞれにおいて、受圧面の垂直方向に受ける圧油からの圧力が、ベーン部の回転軌跡円における接線方向へなるべく向かないように、受圧面全体又は個々の部分に、「受圧分散加工」を施すことである。
【0135】
このような「受圧分散加工」の一例としては、例えば、
図16(b)に示されるように、第1のベーン部731において、受圧面全体を平坦に維持しつつも、その平坦面に適当な傾斜角θを付与することが挙げられる。
【0136】
このように、第1のベーン部731についてのみ、受圧面(回転方向に面する両側面)に傾斜角θを付与すると、受圧面の垂直方向に受ける圧油からの圧力が、ベーン部の回転軌跡円における接線方向へ向かなくなる。
【0137】
そのため、第1のベーン部731の長さL1と第2のベーン部732の長さL2とは同一(L1=L2)であるにも拘らず、左室の油圧Paが第1のベーン部731を時計回りに回転させようとする力は、第2のベーン部732を反時計回りに回転させようとする力に劣ることから、結局、左室の油圧Paは第1、第2のベーン部731,732を反時計回りに回転させるように作用することとなる。
【0138】
一方、右室の油圧Pbが第1のベーン部731を反時計回りに回転させようとする力は、第2のベーン部732を時計回りに回転させようとする力に勝ることから、結局、右室の油圧Paは第1、第2のベーン部731,732を反時計回りに回転させるように作用することとなる。
【0139】
そのため、第1、第2のベーン部731,732は、左室の油圧Paの方が右室の油圧Pbよりも大きいとき(Pa>Pb)、反時計回りの回転トルクを生ずるのに対して、右室の油圧Pbの方が左室の油圧Paよりも大きいとき(Pb>Pa)、時計回りの回転トルクを生ずることとなる。
【0140】
受圧面の角度に工夫する場合の他の例としては、第1又は第2のベーン部のいずれか一方の受圧面の全体に、例えば半球状の微細な凹部又は微細な凸部を適当な密度で分散配置したり、それぞれ底面が傾斜面となる凹溝、上面が傾斜面となる凸条をストライプ上に配置してもよい。
【0141】
他の「受圧分散加工」の例としては、第1又は第2のベーン部のいずれか一方の受圧面の全体に、例えば半球状の微細な凹部又は微細な凸部を適当な密度で分散配置したり、それぞれ底面が傾斜面となる凹溝、上面が傾斜面となる凸条をストライプ上に配置して、その断面を波状(三角波状、正弦波状、鋸歯状、等々)としてもよい。このような受圧面の角度に工夫する例にあっては、第1、第2のベーン部731,732の長さL1、L2を同一(L1=L2)に維持しつつも、外部ポートAの油圧Paと外部ポートBの油圧Pbとの差(Pa-Pb)の極性に応じた回転トルクを、第1、第2のベーン部731,732を介して、回転体7の軸部70へ付与することができる。
【0142】
そのため、第1、第2のベーン部731,732を包囲する閉空間の外周輪郭は円形となるため、製作時の加工も容易であり、また圧力差を回転角度に変換する際の感度は、上述の受圧面に対する加工内容により決定できるため、圧力差を回転角度に変換する際の設計自由度が高い等の利点もある。
【0143】
(バックドライブ機能による帰還制御(フィードバック制御)の極性について)
主として
図11を参照して説明したバックドライブ機構及び流量制御機構にあっては、そもそも「保護動作」の実行を意図とするものであったため、外部ポートA又はBの油圧が上昇した場合には、その上昇した側の外部ポートの油圧を低下させる一方、低下した側の外部ポートの油圧を上昇させると言った負帰還作用をともなうバックドライブ機能が実現されるように構成されている。
【0144】
しかし、アクチュエータの駆動対象となる可動機構において、外力によりなんらかの変位が生じたとき、この変位を元通りに復元するような「復元動作」を意図するのであれば、外部ポートA又はBの油圧が上昇した場合には、その上昇した側の外部ポートの油圧をさらに上昇させる一方、低下した側の外部ポートの油圧をさらに低下させると言った正帰還作用をともなうバックドライブ機能が実現されるように構成してもよい。
【0145】
そのためには、例えば、流量制御機構において、開口10dの連通先を外部ポートAから外部ポートBへと変更すると共に、開口10dの連通先を外部ポートBから外部ポートAへと変更すればよい(
図4参照)。
【0146】
(流量制御用の弁体部とバックドライブ用のベーン部との兼用)
以上述べた流れ方向切替機能付きの回転型流量制御弁にあっては、流量制御用の2つの弁体部71,72とは別に、バックドライブ用のベーン部73を設けることにより、バックドライブ機能を実現しているが、これに代えて、弁体部71,72に、第1、第2のベーン部731,732(
図16(b)参照)の機能を兼用させることによっても、バックドライブ機能を実現することができる。
【0147】
この場合には、
図7(a)、
図8(a)、
図9(a)にそれぞれに示されるバックドライブ機構を省略する代わりに、
図7(b)、
図8(b)、
図9(b)にそれぞれ示される流量制御機構において、2つの弁体部71,72のいずれか(例えば、弁体部72)の延在方向に沿う両側面(受圧面)に、「受圧分散加工」を施すことで、弁体部71,72に対して、第1、第2のバックドライブ用ベーン部の機能を持たせることができる。また、圧力差に応じて決められた方向へと回転するように、前記第1、第2の弁体部71,72は互いに長さが異なるように設定されてもよい。
【0148】
ここで、「受圧分散加工」としては、先に
図16(b)に示したように、受圧面を平坦に維持したまま、その全体を傾斜させたり、その他、先に述べたように、受圧面の全体に、例えば半球状の微細な凹部又は微細な凸部を適当な密度で分散配置したり、その断面を波状(三角波状、正弦波状、鋸歯状、等々)としてもよい。
【0149】
このようなベーン兼用弁体部71,72を備えた流量制御機構によれば、外部ポートAの油圧Paと外部ポートBの油圧Pbとが同一(Pa=Pb)のとき、第1の室110aの油圧と第2の室110bの油圧とは同一となるため、前述の中立状態(
図7(b)参照)が出現して、外部ポートA、Bの油圧Pa、Pbはそのままの状態に維持される。
【0150】
また、外部ポートAの油圧Paが低下しかつ外部ポートBの油圧Pbが上昇したとき(Pa<Pb)、第1の室110aの油圧よりも第2の室110bの油圧の方が大きくなるため、第1、第2の弁体部71,72は反時計回りに回転する。すると、前述の第1の状態(
図8(b)参照)が出現して、外部ポートAの油圧を上昇させる一方、外部ポートBの油圧を低下させるような、負帰還作用をともなうバックドライブ動作により、アクチュエータの駆動対象となる可動機構に対する保護動作が実行される。
【0151】
さらに、外部ポートAの油圧Paが上昇しかつ外部ポートBの油圧Pbが低下したとき(Pa>Pb)、第1の室110aの油圧の方が第2の室110bの油圧よりも大きくなるため、第1、第2の弁体部71,72は時計回りに回転する。すると、前述の第2の状態(
図9(b)参照)が出現して、外部ポートAの油圧を低下させる一方、外部ポートBの油圧を上昇させるような、負帰還作用をともなうバックドライブ動作により、アクチュエータの駆動対象となる可動機構に対する保護動作が実行される。
【0152】
なお、このベーン兼用弁体部71,72を備えた流量制御機構においても、正帰還制御をともなうバックドライブ動作を実現するのであれば、例えば、開口10dの連通先を外部ポートAから外部ポートBへと変更すると共に、開口10dの連通先を外部ポートBから外部ポートAへと変更すればよい(
図4参照)。
【0153】
(バックドライブ機構から流量制御機構へのトルク伝達機構)
以上の実施形態にあっては、バックドライブ機構から流量制御機構へのトルク伝達は、バックドライブ用ベーン73の支持軸と弁体部71,72の支持軸とを同一の回転軸部70の上下に異なる部分とすることで、直接的に行うように構成した。しかし、本発明の趣旨によれば、上述のトルク伝達は、歯車列やベルト等を介して間接的に行うように構成してもよい。このような間接的なトルク伝達方式によれば、トルク伝達比を任意に設定できるため、設計自由度が高いという利点がある。
【0154】
(回転検出器を利用した電気的制御)
図2に示されるように、回転型流量制御弁1の円柱状回転体7は、回転駆動源5の出力軸に直結され、時計回り及び反時計回りに回転可能になされている。しかしながら、回転体7と回転駆動源の出力軸との間の動力伝達手段としては、上述の直結のみならず、ギア列機構やベルト機構等の動力伝達機構を介在するものであってもよい。
【0155】
回転駆動源5としては、時計回り及び反時計回りの精密な回転量制御が可能な回転電動機Mを含んで構成される。このような回転電動機Mとしては、直流電動機、同期電動機、誘導電動機、パルスモータ、等々、公知の電動機を適宜に採用することができる。
【0156】
ここで、上述の回転駆動源5の「出力軸」とは、回転電動機Mの出力軸そのものであってもよいし、回転電動機Mの回転を減速させるための減速機(例えば、遊星ギア機構)の出力軸であってもよい。
【0157】
上述の回転型流量制御弁1には、回転電動機Mの駆動軸又はこれに連動する従動軸(例えば、減速機の出力軸等)の回転に連動して、回転型流量制御弁1の動作状態を反映する電気信号を出力する回転検出器6が設けることができる。回転検出器6としては、光学式や磁気式の回転型エンコーダ(インクリメント式、アブソリュート式を含む)、抵抗式や容量式の回転型ポテンショメータのほか、公知の検出原理を有する様々な回転検出器を任意に選択することができる。
【0158】
前述のように、上述の流れ方向切替機能付きの回転型流量制御弁1にあって、回転体7の所定の基準角度と現在角度との「偏差の極性」及び「偏差の大きさ」は、回転型流量制御弁1の動作状態を反映することとなる。すなわち、「偏差の極性」は、内部の油の流れが、第1の方向の流れ(P→A、B→T)であるか又は第2の方向の流れ(P→B、A→T)であるかを示す。「偏差の大きさ」は、その時点の油の流れ方向における弁機構(弁体部71,72と弁座開口10a,10cとで構成される)の弁開度を示す。
【0159】
したがって、外力が加えられていない平常時にあっては、外部から与えられる指令値(少なとも、流れ方向、弁開度を含む)と回転検出器6から得られる検出値(少なくとも、流れ方向、弁開度を含む)とに基づいて、電気的なサーボ制御系を構成することにより、回転型流量制御弁1の動作状態を所望の状態に導くような「平常時の制御動作」を実行することができる。
【0160】
一方、アクチュエータの駆動対象となる可動機構における障害により、アクチュエータ4に外力が加えられた異常時にあっては、回転検出器6からの電気信号を適当に処理して得られる流れ方向別弁開度曲線(横軸は時間、縦軸の正負は方向別弁開度)上には、外力が加えられたことに起因する特異な変化(例えば、正方向又は負方向へのステップ状の大きな変化)が現れ、同時に、回転電動機Mの負荷曲線(横軸は時間、縦軸は負荷電流)上にも、外力が加えられたことに起因する特異な変化(例えば、外力付加時の急上昇部分と外力解放時の急下降部分とで構成される急峻なパルス状の変化)が現れる。
【0161】
したがって、方向別開度曲線上に特異な変化が認められたとき、及び/又は、負荷曲線上に特異な変化が認められたとき、外力が加えられた異常事態と判定して、予め用意され「異常時の制御動作」を実行するようにしてもよい。
【0162】
この異常時の制御動作としては、回転電動機Mに与えられるべき駆動電流を遮断して、正常時の電気的な制御動作を停止させ、メカニカルなバックドライブ機能による制御を優先させると共に、警告信号を生成して、外力が加えられたことによりバックドライブ機能が作動したことを視覚的、及び/又は、聴覚的に外部に報知可能にすると言った動作を含むことができる。
【0163】
(適用可能な流体システムの範囲)
本発明に係る回転型流量制御弁は、油圧駆動式のアクチュエータ(例えば、油圧駆動式の直動シリンダ機構、回転動モータ、等々)を含む油圧システムのみならず、空気圧式のアクチュエータ(例えば、空気圧駆動式の直動シリンダ機構、回転動モータ、等々)を含む空気圧システム、さらには他の圧力液体又は気体で駆動される任意のアクチュエータを含む流体圧システムに広く適用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、回転型流量制御弁並びに同制御弁を用いたロボット等の機械システムの製造業に利用することができる。
【符号の説明】
【0165】
1 回転型流量制御弁
2 油圧ポンプ
3 油タンク
4 アクチュエータ
5 回転駆動源
6 回転検出器
7 回転体
7a 駆動軸の取付孔
10a 外部ポートTへ連通する開口(弁座開口)
10b 外部ポートAへ連通する開口
10c 外部ポートPへ連通する開口(弁座開口)
10d 外部ポートBへ連通する開口
70 回転軸部
71 第1の弁体部
72 第2の弁体部
73 バックドライブ用のベーン部
73a ベーン部の先端面
73b 環状段部
81,82,83,84 油管
91 閉空間
91a 第1の室
91b 第2の室
100 ケーシング積層体
101 ベースフレーム
102,103 サブフレーム
104 下部ケーシング
105 上部ケーシング
106 カバー
107,108,111,112,115 ボルト
109 中心孔
109a 部分円弧帯状領域
109b 真円状領域
110 閉空間
110a 第1の室
110b 第2の室
113 上部軸受
114 下部軸受
731 第1のベーン部
732 第2のベーン部
A アクチュエータ接続用の外部ポート
B アクチュエータ接続用の外部ポート
P 油圧ポンプ接続用の外部ポート
T 油タンク接続用の外部ポート
M 回転電動機
C1 アクチュエータの第1ポート
C2 アクチュエータの第2ポート
R1 大半径
R2 小半径
Pa 外部ポートAの油圧
Pb 外部ポートBの油圧
L1 第1のベーン部の長さ
L2 第2のベーン部の長さ
θ 受圧面の傾斜角度