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特開2024-48892合成開口レーダシステムおよびダウンロード判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048892
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】合成開口レーダシステムおよびダウンロード判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G01S13/90 191
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155037
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】有井 基文
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AE07
5J070AF06
5J070AF08
5J070AJ07
5J070AK40
5J070BE02
(57)【要約】
【課題】ダウンロードデータ量の削減および計算負荷軽減の両方を達成し、高精度のターゲット探知を実現する。
【解決手段】合成開口レーダ(SAR)の受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力する間引き処理部120と、所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行するレンジ圧縮部121と、レンジ圧縮後のデータD1がレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定するターゲット有無判定部125と、SAR受信データにおけるターゲットの総数と閾値との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する集計判定部126と、を有する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダシステムであって、
アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力する間引き処理部と、
前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行するレンジ圧縮部と、
レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定するターゲット有無判定部と、
前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する集計判定部と、
を有する合成開口レーダシステム。
【請求項2】
前記ターゲット有無判定部は、前記レンジ圧縮後のデータから前記所定サイズのブロック毎に区分された背景領域と前記狭サイズのブロック毎に区分された判定領域とを抽出するデータ抽出部を有し、
前記データ抽出部は、スクイント角が大きくなるに応じて前記狭サイズのブロックのアジマス方向のデータ数を小さく設定する、請求項1に記載の合成開口レーダシステム。
【請求項3】
前記ターゲット有無判定部は、前記所定サイズのブロックの平均強度および標準偏差からなる背景特徴量と前記狭サイズのブロックの平均強度からなる判定特徴量とを比較し、前記狭サイズのブロックの判定特徴量が前記所定サイズのブロックの背景特徴量より大きい時に当該狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定する、請求項1または2に記載の合成開口レーダシステム。
【請求項4】
前記ターゲット有無判定部は、一の狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定した場合、ターゲットの想定される大きさに応じて当該一の狭サイズのブロックに続く所定数の狭サイズのブロックの間だけターゲット有無判定を行わない、請求項1または2に記載の合成開口レーダシステム。
【請求項5】
移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダ(SAR)システムにおけるSAR受信データのダウンロード判定方法であって、
前記SARシステムのデータ処理部が、
アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力し、
前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行し、
レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定し、
前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する、
ダウンロード判定方法。
【請求項6】
前記レンジ圧縮後のデータから前記所定サイズのブロック毎に区分された背景領域と前記狭サイズのブロック毎に区分された判定領域とを抽出し、スクイント角が大きくなるに応じて前記狭サイズのブロックのアジマス方向のデータ数を小さく設定する、請求項5に記載のダウンロード判定方法。
【請求項7】
合成開口レーダ(SAR)と、SAR受信データを格納する記憶部と、データをダウンロードするための通信部と、データ処理部と、を有する衛星であって、
前記データ処理部が、
アジマス方向およびレンジ方向で示されるSAR受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力し、
前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行し、
レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭範囲におけるターゲットの有無を判定し、
前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定し、
前記ダウンロードを許可されたSAR受信データを前記記憶部から読み出し、前記通信部を通してダウンロードする、
衛星。
【請求項8】
前記レンジ圧縮後のデータから前記所定サイズのブロック毎に区分された背景領域と前記狭サイズのブロック毎に区分された判定領域とを抽出し、スクイント角が大きくなるに応じて前記狭サイズのブロックのアジマス方向のデータ数を小さく設定する、請求項7に記載の衛星。
【請求項9】
移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダシステムにおけるダウンロード判定装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力する機能と、
前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行する機能と、
レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭範囲の特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定する機能と、
前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する機能と、
を前記コンピュータに実現するためのプログラム。
【請求項10】
前記レンジ圧縮後のデータから前記所定サイズのブロック毎に区分された背景領域と前記狭サイズのブロック毎に区分された判定領域とを抽出し、スクイント角が大きくなるに応じて前記狭サイズのブロックのアジマス方向のデータ数を小さく設定する機能を前記コンピュータに更に実現する請求項9に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成開口レーダシステムに係り、特にデータをダウンロードする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar;以下、SARという。)は、マイクロ波を照射し、その反射強度を計測することにより対象物の画像化を行う能動型センサである。マイクロ波は可視光や近赤外光より遙かに長い波長を有し、雲や霧などを貫通する性質を有する。したがって、SARを衛星や航空機等の移動プラットフォームに搭載することにより、夜間や悪天候であっても地表や海面の種々のデータを取得することが可能となる。
【0003】
このようなSARの主要な用途一つは船舶等の有無を確認する海洋監視である。ところが海洋監視ではSARデータの多くが船舶等が存在しない広大な海洋の撮影データである。このようなSARデータを地上にダウンロードして船舶等の存在を確認することは極めて非効率である。
【0004】
さらにSARの分解能の向上および観測幅の拡大に伴いデータ量が急速に増大しており、衛星から地上へのダウンロード(DL)データ量が急速に増大し、すべてのデータのダウンロードは回線容量の制約から困難になりつつある。
【0005】
特許文献1には衛星からのDLデータを削減する方法の一例が開示されている。特許文献1によれば、衛星内で画像解析を行い、関心対象エリアの画像データ(たとえば雲のない画像部分、船舶候補を含む画像部分)だけをダウンロードすることでDLデータ量を削減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-119693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムは、主に光学センサにより撮影された画像を対象の物理的特徴に基づいて解析し、識別された対象を含むデータのみをダウンロードする。したがって特許文献1はSARを前提としたシステムを開示していない。
【0008】
SARでは、周知のように、画像化するためにレンジ圧縮およびアジマス圧縮を必要とする。アジマス圧縮処理はレンジ圧縮後の画像データに対して実行され、計算負荷が大きく、また大きなメモリ容量が必要である。一般に衛星でのオンボード処理はCPU(Central Processing Unit)の計算能力やメモリの容量の制約が厳しく、処理負荷の軽減およびメモリの必要量の低減が望ましい。
【0009】
このようなSARに対して、特許文献1のような画像解析に基づくDLデータ削減方法はそのまま適用することができない。また特許文献1では、そもそもSARにおける処理負荷の軽減およびメモリの必要量の低減の課題が認識されていない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ダウンロードデータ量の削減および計算負荷軽減の両方を達成し、高精度のターゲット探知を実現する合成開口レーダシステム、ダウンロード判定方法、衛星およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダシステムは、アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力する間引き処理部と、前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行するレンジ圧縮部と、レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定するターゲット有無判定部と、前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する集計判定部と、を有する。
本発明の第2の態様によれば、移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダ(SAR)システムにおけるSAR受信データのダウンロード判定方法は、前記SARシステムのデータ処理部が、アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力し、前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行し、レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定し、前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する。
本発明の第3の態様によれば、合成開口レーダ(SAR)と、SAR受信データを格納する記憶部と、データをダウンロードするための通信部と、データ処理部と、を有する衛星は、前記データ処理部が、アジマス方向およびレンジ方向で示されるSAR受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力し、前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行し、レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭範囲におけるターゲットの有無を判定し、前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定し、前記ダウンロードを許可されたSAR受信データを前記記憶部から読み出し、前記通信部を通してダウンロードする。
本発明の第4の態様によれば、移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダシステムにおけるダウンロード判定装置としてコンピュータを機能させるプログラムは、アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力する機能と、前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行する機能と、レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭範囲の特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定する機能と、前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する機能と、を前記コンピュータに実現する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダウンロードデータ量の削減および計算負荷軽減の両方を達成し、高精度のターゲット探知を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は衛星搭載SARシステムとターゲットとの位置関係を説明するための模式図である。
図2図2はSARのレンジ圧縮について説明するための波形図である。
図3図3は本発明によるSARシステムにおけるターゲット計数方法を説明するためのレンジ圧縮後の画像の一例を示す模式図である。
図4図4は本発明の一実施形態によるSARシステムの機能構成を例示するブロック図である。
図5図5は本実施形態にSARシステムにおけるレンジ方向およびアジマス方向のデータ数で表記した画像の一例を示す模式図である。
図6図6図5に示す画像における判定領域の一例を示す模式図である。
図7図7図5に示す画像における背景領域の一例を示す模式図である。
図8図8図5に示す画像における判定領域および背景領域の重なりを示す模式図である。
図9図9は本実施形態によるターゲット有無判定を説明するための判定領域および背景領域のパワー分布を示すグラフである。
図10図10は本実施形態によるDLデータ判定方法を説明するためのターゲット集計の一例を示す模式図である。
図11図11は本実施形態によるDLデータ判定方法の一例を示すフローチャートである。
図12図12は衛星搭載SARシステムとターゲットとの位置関係にスクイント角がある場合を説明するための模式図である。
図13図13はスクイント角とレンジマイグレーションの大きさとの関係を例示するグラフである。
図14図14はスクイント角とアジマス方向積分画素数との関係を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態の概要>
本発明の一実施形態によれば、合成開口レーダ(SAR)の受信データを合成開口時間毎に間引いてレンジ圧縮処理を実行する。レンジ圧縮後のデータにおける背景領域と判定領域との特徴量を比較することでターゲットの有無を判定し、ターゲット総数をカウントできる。ターゲットの総数が所定値を超えているSAR受信データのみをダウンロードすることができる。
【0015】
受信データを合成開口時間毎に間引くことで、ターゲットを発見するために必要なデータを残すことができ計算負荷を軽減できる。レンジ圧縮後のデータの特徴量を用いてターゲットの有無を判定するので、アジマス圧縮無しでターゲット数を計数できる。アジマス圧縮はメモリを2次元に縦横無尽にアクセスする必要があるために計算負荷が大きく処理時間が長くなる。したがってアジマス圧縮無しでターゲット数を計数できることは、計算資源および能力に制約がある移動プラットフォームでは特に有利である。
【0016】
さらに、本実施形態によればターゲット数が閾値より大きいSAR受信データのみをダウンロードする。したがってダウンロードデータ量を大幅に削減でき、DL回線の制約問題を解消できる。また有効なSAR受信データのみをダウンロードするので、地上において必要な範囲を高精度にターゲット探知可能となる。
【0017】
1.ターゲットの計数原理
図1に例示するように、本発明によるSARシステムは移動プラットフォーム10に搭載され、地上にあるターゲット20を探知する。移動プラットフォーム10は例えば人工衛星あるいは航空機等であり、進行方向30(アジマス方向)に移動しているものとする。移動プラットフォーム10にはSARシステムのアンテナ100が設けられ、一定間隔PRI(Pulse Repetition Interval)でパルス波を地上に送信し、その反射波を受信する。SARシステムによるターゲット20の観測可能時間が合成開口時間Tである。したがって、SARシステムは、ターゲット20をアジマス方向に合成開口時間T(図1では-T/2~+T/2)の間検知する。以下説明の便宜上、合成開口時間Tの中心にある時点tでアンテナ100とターゲット20とのスラントレンジ距離が最短となるものとする。時点tを基準点として、基準点から前後に離れるに従って当該距離が長くなる。
【0018】
図2に例示するように、アンテナ100はアジマス方向に移動しつつ、一定間隔PRIでパルス波(N=2)を放射するものとする。放射されたパルス波はターゲット20で反射し、その反射波がアンテナ100で受信される。上述したように基準点の時点t=0、基準点よりT/4前の時点t-1、T/2前の時点t-2、T/4後の時点t、およびT/2後の時点tで、それぞれパルス波(N=2)が放射される。
【0019】
各時点でパルス波が放射されると、その放射時点から反射波が受信されるまでの経過時間は時点tが最も短く、基準点tから前後に離れるに従って経過時間は長くなる。すなわち、アンテナ100の移動によりターゲット20までのスラントレンジ距離が変化し(レンジマイグレーション)、それにより反射波の到達までの経過時間が変化する。したがって受信データ200をレンジ圧縮し、レンジ圧縮後のデータD1からターゲット20の存在をレンジマイグレーション線201として検出できる。
【0020】
既存の手法では、レンジ圧縮後のデータD1に対してアジマス圧縮を行い、アジマス圧縮後のデータからターゲット数をカウントする。アジマス圧縮ではメモリを2次元に縦横無尽にアクセスする必要があるために、計算資源および能力に制約がある衛星ではコストとリスクが増大する。
【0021】
これに対して本実施形態によれば、レンジ圧縮後のデータD1からアジマス方向に合成開口時間Tを周期としてデータを抽出してターゲットを検出する。以下、図3を参照してターゲット計数の原理について説明する。
【0022】
図3に模式的に示すように、レンジ圧縮後のレンジ方向およびアジマス方向の画像には、ターゲットが合成開口時間Tのレンジマイグレーション線201として示される。したがって、レンジ圧縮後の画像をアジマス方向に合成開口時間T毎に抽出すれば(その他の画像部分を間引けば)、レンジ圧縮後の画像に存在するターゲットを黒丸で表示されたように検出可能である。こうして黒丸の個数を計数することで、レンジ圧縮後の画像に存在するターゲットの総数を取得できる。
【0023】
以上述べたターゲット計数方法を用いてダウンロードする画像の判定を行うことができる。以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成要素は単なる例示であって、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨ではない。
【0024】
2.一実施形態
図4に例示するように、本発明の一実施形態によるSARシステムは送信部101および受信部102を有する。送信部101は、アンテナ100から一定間隔PRIでパルス波を送信する。送信パルス波は観測面で反射し、一部がアンテナ100に到達する。受信部102は反射波を受信してSAR受信データを出力する。SAR受信データは図2に例示する受信データ200であり、SAR受信データ記憶部103に格納される。
【0025】
さらにSARシステムはDL判定部104、制御部105および通信部106を有する。DL判定部104は、後述するようにSAR受信データのダウンロードの可否を判定する。上述したようにSAR受信データはレンジ方向およびアジマス方向からなる2次元空間内の受信パルス波形からなる画像を構成する。制御部105は、ダウンロード有効と判定されたSAR受信データをSAR受信データ記憶部103から読み出し、無線通信部106を通して地上局へダウンロードする。以下、DL判定部104の機能構成および動作について説明する。
【0026】
<ダウンロード判定>
図4において、DL判定部104は間引き処理部120およびレンジ圧縮部121を有する。間引き処理部120は、SAR受信データ記憶部103からSAR受信データを順次読み出し、アジマス方向に合成開口時間Tの周期でデータを間引きした後、残ったレンジ方向1ライン分のデータのみをレンジ圧縮部121へ出力する。レンジ圧縮部121は受信データと参照関数との相関をとり、レンジ圧縮後のデータD1をデータ抽出部122へ出力する。
【0027】
データ抽出部122はレンジ圧縮後のデータD1から判定領域データD2および背景領域データD3を抽出して判定特徴量計算部124および背景特徴量算出部125へそれぞれ出力する。なお、後述するように、判定領域データD2のアジマス方向のサイズはスクイント角θsqに応じて調整される。
【0028】
後述するように、判定特徴量計算部124は判定領域データD2から各判定ブロックの特徴量を算出し、背景特徴量算出部125は背景領域データD3から各背景ブロックの特徴量を算出する。背景ブロックは所定サイズのデータ範囲であり、判定ブロックは背景ブロックに含まれる狭いデータ範囲である。
【0029】
ターゲット有無判定部126は、背景ブロックの特徴量と当該背景ブロックに含まれる判定ブロックの特徴量を比較し、当該判定ブロックにターゲットが存在するか否かを判定する。その際、ターゲットの想定される大きさを参照情報として利用できる。以上述べた処理は、レンジ圧縮部121からレンジ方向のライン毎に順次出力されるデータD1に対して繰り返される。
【0030】
集計判定部126は、ターゲットが存在すると判定された判定ブロックの個数をSAR受信データの画像全体にわたって集計し、集計されたターゲット総数が閾値より多ければ、当該画像(SAR受信データ)をダウンロード有効と判定して、制御部105へ通知する。ターゲット総数が閾値より少ないSAR受信データはダウンロード無効と判定される。こうしてダウンロード有効と判定されたSAR受信データのみが無線通信部106を通して地上へダウンロードされる。
【0031】
なお、DL判定部104におけるターゲット有無判定は、レンジ方向の1ライン分のデータD1毎に実行されてもよいし、1ライン分のデータD1を2以上に分割した各データに対して実行されてもよい。データD1を分割する方が処理に必要なメモリ容量を削減することができる。
【0032】
また、DL判定部104および制御部105の機能は、図示しないメモリに格納されたプログラムをCPUあるいはプロセッサ上で実行することにより実現することができる。
【0033】
3.ダウンロード判定の例
以下、本実施形態によるSARシステムを衛星に搭載して海洋監視を行う場合のダウンロード判定について図5図11を参照しながら説明する。
【0034】
まず、図5に例示するように、アジマス方向を縦軸、レンジ方向を横軸とする2次元座標によりSAR受信データを表わすものとする。上述したように、アンテナ100は移動しながら一定間隔PRI毎にパルス波を送信する。したがって、縦軸はアジマス方向に移動しつつ一定間隔PRI毎にパルス送信を行う回数を意味し、その数はアジマス方向のデータ数を表す。NazはSAR受信データを取得するためのアジマス方向の移動距離あるいは時間に対応する。N azは合成開口時間Tに相当するアジマス方向のパルス送信回数であり、N az=T/PRIである。
【0035】
また横軸は対象で反射して戻ってきたパルスを一定時間でサンプリングして表記したものであり、したがってレンジ方向のデータ数を表す。Nrgは各パルス送信における検知可能な反射パルスの経過時間あるいは距離に対応する。
【0036】
このように、図5において、アジマス方向のパルス数はアンテナ100の進行方向(アジマス方向)のデータ数を示し、レンジ方向のデータ数はアンテナ100から放射されるパルスの方向(レンジ方向)のデータ数を示す。したがって、任意の単位区画PXL(1×1パルス)はデータ数で座標表記でき、その位置からの反射パルスを受信することで、その位置の受信データを取得できる。図5の例ではNaz=30000、N az=10000、Nrg=20000である。
【0037】
<判定領域>
図6に例示するように、本実施形態によれば、アジマス方向に合成開口時間Tの周期でデータを間引きし、残ったレンジ方向1ライン分のデータから判定領域データD2を抽出する。本例では、判定領域データD2のアジマス方向のデータ数はN azである。判定領域データD2は判定ブロックRtを単位として区分されている。判定ブロックRtはレンジ方向にデータ数N rg、アジマス方向にデータ数N azのサイズを有する矩形領域(狭サイズのブロック)である。ただし、後述するようにアジマス方向にN azはスクイント角θsqに依存して決定される。判定ブロックRtは監視対象物である船舶の有無を判定するための判定特徴量の計算に使用される。任意の判定ブロックを座標(i、j)で表記し、当該判定ブロックの判定特徴量をμ(i、j)と表記するものとする。
【0038】
<背景領域>
図7に例示するように、本実施形態によれば、アジマス方向に合成開口時間Tの周期でデータを間引きし、残ったレンジ方向1ライン分のデータから背景領域データD3を抽出する。本例では、背景領域データD3が背景ブロックRsを単位として区分されている。背景ブロックRsはレンジ方向にデータ数N rg、アジマス方向にデータ数N azのサイズを有する矩形領域(所定サイズのブロック)である。背景ブロックRsは監視対象物である船舶の有無を判定するための背景特徴量の計算に使用される。任意の背景ブロックを座標(i、j)で表記し、当該背景ブロックの判定特徴量をσ (i、j)と表記するものとする。
【0039】
判定領域データD2は背景領域データD3に含まれる部分領域であればよい。背景ブロックRsおよび判定ブロックRtのサイズおよび位置関係は、図6に例示する通りである。すなわち、背景ブロックRsは複数個の判定ブロックRtを含むサイズを有し、N az<<N azかつN rg<<N rgの関係を有する。すなわち所定サイズの各背景ブロックRsは複数の狭サイズの判定ブロックRtを含む。
【0040】
一例として、各背景ブロックRsはレンジ方向にN rg=500、アジマス方向にN az=10の所定サイズを有し、各背景ブロックRsに含まれる各判定ブロックRtはレンジ方向にN rg=1、アジマス方向にN az=3の狭サイズを有する。本例では、図6に例示するように、各背景ブロックRsに含まれる複数の判定ブロックRtは当該背景ブロックRs内でアジマス方向の一方に偏在するように配置される。
【0041】
海面に浮かぶ船舶(ターゲット)を探索する場合、海面は背景として受信強度の変化が緩やかであり、ターゲットが存在する狭領域の受信強度は海面よりかなり高いことが前提とされる。そこでは本例ではCFAR(一定誤警報確率)を導入することで、海面の状況にアダプティブに対応することが可能となる。すなわち、比較的広い範囲を背景ブロックRsとし、その平均受信強度を用いて当該背景ブロックRsに含まれる各判定ブロックRtの受信強度を規格化する。
【0042】
<ターゲット有無判定>
以下説明を簡略化するために、図8に示すように各背景ブロックRsが3個の判定ブロックRtを含むものとする。背景ブロックRsの特徴量をσ (i、j)、当該背景ブロックRsに含まれる判定ブロックRtの特徴量をμ(i、j)とする。
【0043】
背景ブロックRsの特徴量σ (i、j)は当該所定領域の海面散乱の特徴量である。本例において、背景ブロックRs(i、j)の特徴量σ (i、j)は以下の式で算出される:
σ (i、j)=a・μ(i、j)+b・σ(i、j)。
ここで、μ(i、j)は受信強度の平均、σ(i、j)はその標準偏差、aおよびbは調整可能な係数である。
【0044】
各判定ブロックRt(i、j)の特徴量μ(i、j)と背景ブロックRs(i、j)の特徴量σ (i、j)とを比較することで、当該判定ブロックRtにターゲット船舶が存在するか否かを判定できる。図9を参照して詳述する。
【0045】
図9において、判定ブロックRt(i、j)毎の特徴量μ(i、j)が当該判定ブロックRtが含まれる背景ブロックRs(i、j)の特徴量σ (i、j)より大きいか否かが判定される。μ(i、j)>σ (i、j)であればターゲット有りと判定され、μ(i、j)<=σ (i、j)であればターゲット無しと判定される。図9に示す例では、背景ブロックRsのうち判定ブロックRt(3)のみターゲット有りと判定される。
【0046】
ただし、ある判定ブロックRt(p)でターゲット有りと判定されたとき、それに続く所定数n=Nskip rgの判定ブロックRt(p+1)~Rt(p+n)についてはターゲット有無判定をスキップする。このスキップ数n=Nskip rgはターゲットの想定される大きさに依存して設定されうる。 SARシステムの分解能により船舶が1隻なのか複数密集しているのか判別できない場合を考慮して、密集によりターゲット有り判定されたときのカウントをスキップ数n=Nskip rgだけ実行しない。したがって、このスキップ区間であれば、μ(i、j)>σ (i、j)であってもターゲット無しと判定される。
【0047】
このようにレンジ方向1ライン分のデータ量(本例では、背景領域D3の1ライン分のデータ量)によりターゲット有無判定が実行され、ライン毎のターゲット数を集計できる。本例では、判定領域D2が背景領域D3に含まれるので、背景領域D3の1ライン分のデータを用いてターゲットの有無を判定でき、処理時間およびメモリ使用量の削減が可能となる。
【0048】
<ダウンロード可否判定>
図10に例示するように、合成開口時間Tごとの判定領域D2のターゲット数N(1)~N(Naz/N az)を集計し、それらをアジマス方向に集計することで、SAR受信データの画像内のターゲット総数Nttl を取得できる。本例では閾値Nusr を用いて、ターゲット総数Nttl >Nusr であれば、当該画像のSAR受信データのダウンロードを有効と判定し、それ以外であれば無効と判定する。閾値Nusr は、たとえば100程度である。
【0049】
4.ダウンロード制御
以上述べたDL判定部104によるDL判定機能と制御部105によるDL制御機能はデータ処理部(CPUあるいはプロセッサ)がプログラムを実行することにより実現されうる。以下、データ処理部による制御フローを図11を参照しながら説明する。
【0050】
図11を参照して、DL判定部104がSAR受信データ記憶部103から受信データを入力すると(動作301)、間引き処理部120が受信データを(N az-N az+1)データ分読み飛ばすことで合成開口時間T毎の間引き処理を実行する(動作302)。続いてレンジ圧縮部121は、間引き処理により残った(読み込まれた)N az分のデータをレンジ圧縮する(動作303)。レンジ圧縮により、レンジ方向の1ライン分のデータD1がデータ抽出部122へ出力される。
【0051】
データ抽出部122は、レンジ圧縮されたデータD1からN az分の判定領域データD2とN az分の背景領域データD3とを抽出する(動作304;図6および図7参照)。背景特徴量算出部124はN az分の背景領域データD3から背景ブロックRs毎に背景特徴量σ を順次算出し、判定特徴量算出部123はN az分の判定領域データD2から判定ブロックRt毎に判定特徴量μを順次算出する(動作305)。
【0052】
ターゲット有無判定部125は、図9に例示したように、順次算出された背景ブロックRs毎の背景特徴量σ と、各背景ブロックRsに含まれる各判定ブロックの判定特徴量μとを比較してターゲットの有無を判定する(動作306)。
【0053】
以上のN az分のデータを用いたターゲット有無判定処理(動作302~306)が終了すると、画像全体の処理が終了したか否かを判定する(動作307)。処理すべきが受信データが残っていれば(動作307のNO)、上記動作302の間引き処理へ戻り、次のラインのN az分のデータに対して動作303~306を繰り返す。
【0054】
画像全体の処理が終了すると(動作307のYES)、図10に例示したように、集計判定部126はレンジ方向およびアジマス方向のターゲット数を集計し、ターゲット総数Nttl を算出する(動作308)。集計判定部126は、ターゲット総数Nttl >Nusr であれば(動作309のYES)、当該画像のSAR受信データをダウンロード有効として保存する(動作310)。それ以外であれば(動作309のNO)、ダウンロード無効として保存しない。
【0055】
こうして制御部105は、ダウンロード有効と判定されたSAR受信データのみを無線通信部106を通して地上局へダウンロードする。
【0056】
5.レンジマイグレーションとスクイント角
図6において、判定領域データD2のアジマス方向のデータ数N azはスクイント角θsqに依存して決定される。
【0057】
図12に例示するように、移動プラットフォーム10に搭載されたアンテナ100aがスクイント角θsq≠0を有するものとする。この場合、スクイント角θsqの大きさに応じて判定領域データD2のアジマス方向のデータ数N azを変更する必要が生じる。
【0058】
図13に例示するように、スクイント角θsq=0であれば、レンジマイグレーションが小さい(レンジマイグレーション線201a)。したがって判定領域データD2のアジマス方向のデータ数Nt0 azを大きくとることができる。これに対して、スクイント角θsq>0が大きくなると(レンジマイグレーション線201b)、データ数N azを大きくとるとターゲット信号のない範囲を受信強度も積分に加えることとなり、検出精度が著しく劣化する。このために、スクイント角θsq>0が大きくなると、レンジマイグレーション線201bに従ってデータ数N azを小さくする必要がある。
【0059】
図14はスクイント角θsqに対するアジマス方向積分画素数(データ数)の変化を示すグラフである。N azは以下の式で決定することができる:
az=Nt0 az・cosθsq+1。
このグラフに示すようにスクイント角θsq>0に応じてデータ数N azを小さくすることで、判定ブロックRtの平均強度の精度の劣化を回避することができる。
【0060】
6.効果
以上述べたように、本実施形態によれば、受信データを合成開口時間毎に間引くことで、ターゲットを発見するために必要なデータを残すことができ計算負荷を軽減できる。レンジ圧縮後のデータの特徴量を用いてターゲットの有無を判定するので、処理負荷の大きいアジマス圧縮を用いることなくターゲット数を計数できる。したがって計算資源および能力に制約がある移動プラットフォームでは特に有利である。
【0061】
また本実施形態によればターゲット数が閾値より大きいSAR受信データのみをダウンロードする。したがってダウンロードデータ量を大幅に削減でき、DL回線の制約問題を解消できる。有効なSAR受信データのみをダウンロードするので、地上において必要な範囲を高精度にターゲット探知可能となる。
【0062】
特に、海洋監視に有効なデータのみをDLすればよいため、回線の制約問題を根本的に打開でき、より広い範囲を高分解能にデータ取得でき、海洋監視の品質を抜本的に向上できる。またDL制約が緩和されるために、その他のミッションデータの伝送に割り当てることが可能となる。
【0063】
7.付記
上述した実施形態および実施例の一部あるいは全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、これらに限定されるものではない。
(付記1)
移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダシステムであって、
アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力する間引き処理部と、
前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行するレンジ圧縮部と、
レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定するターゲット有無判定部と、
前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する集計判定部と、
を有する合成開口レーダシステム。
(付記2)
前記ターゲット有無判定部は、前記レンジ圧縮後のデータから前記所定サイズのブロック毎に区分された背景領域と前記狭サイズのブロック毎に区分された判定領域とを抽出するデータ抽出部を有し、
前記データ抽出部は、スクイント角が大きくなるに応じて前記狭サイズのブロックのアジマス方向のデータ数を小さく設定する、付記1に記載の合成開口レーダシステム。
(付記3)
前記ターゲット有無判定部は、前記所定サイズのブロックの平均強度および標準偏差からなる背景特徴量と前記狭サイズのブロックの平均強度からなる判定特徴量とを比較し、前記狭サイズのブロックの判定特徴量が前記所定サイズのブロックの背景特徴量より大きい時に当該狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定する、付記1または2に記載の合成開口レーダシステム。
(付記4)
前記ターゲット有無判定部は、一の狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定した場合、ターゲットの想定される大きさに応じて当該一の狭サイズのブロックに続く所定数の狭サイズのブロックの間だけターゲット有無判定を行わない、付記1または2に記載の合成開口レーダシステム。
(付記5)
移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダ(SAR)システムにおけるSAR受信データのダウンロード判定方法であって、
前記SARシステムのデータ処理部が、
アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力し、
前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行し、
レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定し、
前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する、
ダウンロード判定方法。
(付記6)
前記レンジ圧縮後のデータから前記所定サイズのブロック毎に区分された背景領域と前記狭サイズのブロック毎に区分された判定領域とを抽出し、スクイント角が大きくなるに応じて前記狭サイズのブロックのアジマス方向のデータ数を小さく設定する、付記5に記載のダウンロード判定方法。
(付記7)
前記所定サイズのブロックの平均強度および標準偏差からなる背景特徴量と前記狭サイズのブロックの平均強度からなる判定特徴量とを比較し、前記狭サイズのブロックの判定特徴量が前記所定サイズのブロックの背景特徴量より大きい時に当該狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定する、付記5または6に記載のダウンロード判定方法。
(付記8)
一の狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定した場合、ターゲットの想定される大きさに応じて当該一の狭サイズのブロックに続く所定数の狭サイズのブロックの間だけターゲット有無判定を行わない、付記5または6に記載のダウンロード判定方法。
(付記9)
合成開口レーダ(SAR)と、SAR受信データを格納する記憶部と、データをダウンロードするための通信部と、データ処理部と、を有する衛星であって、
前記データ処理部が、
アジマス方向およびレンジ方向で示されるSAR受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力し、
前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行し、
レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭サイズのブロックの特徴量とを比較することで、前記狭範囲におけるターゲットの有無を判定し、
前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定し、
前記ダウンロードを許可されたSAR受信データを前記記憶部から読み出し、前記通信部を通してダウンロードする、
衛星。
(付記10)
前記データ処理部が、前記レンジ圧縮後のデータから前記所定サイズのブロック毎に区分された背景領域と前記狭サイズのブロック毎に区分された判定領域とを抽出し、スクイント角が大きくなるに応じて前記狭サイズのブロックのアジマス方向のデータ数を小さく設定する、付記7に記載の衛星。
(付記11)
前記データ処理部が、前記所定サイズのブロックの平均強度および標準偏差からなる背景特徴量と前記狭サイズのブロックの平均強度からなる判定特徴量とを比較し、前記狭サイズのブロックの判定特徴量が前記所定サイズのブロックの背景特徴量より大きい時に当該狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定する、付記9または10に記載の衛星。
(付記12)
前記データ処理部が、一の狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定した場合、ターゲットの想定される大きさに応じて当該一の狭サイズのブロックに続く所定数の狭サイズのブロックの間だけターゲット有無判定を行わない、付記9または10に記載の衛星。
(付記13)
移動プラットフォームに搭載された合成開口レーダシステムにおけるダウンロード判定装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
アジマス方向およびレンジ方向で示される合成開口レーダ(SAR)受信データをアジマス方向に合成開口時間毎に間引いて所定データ数の受信データを出力する機能と、
前記所定データ数の受信データに対してレンジ圧縮処理を実行する機能と、
レンジ圧縮後のデータがレンジ方向に区分された所定サイズのブロックの特徴量と前記所定サイズのブロックに含まれる狭範囲の特徴量とを比較することで、前記狭サイズのブロックにおけるターゲットの有無を判定する機能と、
前記SAR受信データにおける前記ターゲットの総数と所定数との比較結果に基づいて当該SAR受信データのダウンロードの可否を判定する機能と、
を前記コンピュータに実現するためのプログラム。
(付記14)
前記レンジ圧縮後のデータから前記所定サイズのブロック毎に区分された背景領域と前記狭サイズのブロック毎に区分された判定領域とを抽出し、スクイント角が大きくなるに応じて前記狭サイズのブロックのアジマス方向のデータ数を小さく設定する機能を前記コンピュータに更に実現する付記13に記載のプログラム。
(付記15)
前記所定サイズのブロックの平均強度および標準偏差からなる背景特徴量と前記狭サイズのブロックの平均強度からなる判定特徴量とを比較し、前記狭サイズのブロックの判定特徴量が前記所定サイズのブロックの背景特徴量より大きい時に当該狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定するする機能を前記コンピュータに更に実現する付記13または14に記載のプログラム。
(付記16)
一の狭サイズのブロックにターゲットが存在すると判定した場合、ターゲットの想定される大きさに応じて当該一の狭サイズのブロックに続く所定数の狭サイズのブロックの間だけターゲット有無判定を行わないする機能を前記コンピュータに更に実現する付記13または14に記載のプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、人工衛星や航空機などに搭載されるSARシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 移動プラットフォーム
20 ターゲット
30 進行方向
100、100a アンテナ
101 送信部
102 受信部
103 SAR受信データ記憶部
104 DL判定部
105 制御部
106 無線通信部
120 間引き処理部
121 レンジ圧縮部
122 データ抽出部
123 判定特徴量算出部
124 背景特徴量算出部
125 ターゲット有無判定部
126 集計判定部
200 受信データ
201 レンジマイグレーション線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14