(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048897
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240402BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240402BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240402BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J7/35 K
H02J7/34 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155046
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 竜治
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA10
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA04
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BB01
5G503DA07
5G503DA16
5G503DA17
5G503DA18
5G503GB03
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】コスト増を招くことなく発電電力の自家消費を可能とする蓄電システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る蓄電システムは、商用電力系統に接続された逆電力継電器付きの電力ラインに一般負荷および太陽光発電システムと並列に設けられ、電力ラインから供給される電力を蓄える負の電力供給と、蓄えた電力を電力ラインに向けて供給する正の電力供給とが可能なシステムである。蓄電システムは、正または負の電力供給(S3)を行っているときに逆電力継電器によって商用電力系統への逆潮流が検出されると(S1が0→1)、当該電力供給(S3)を予め設定した傾きで減らしていき、これにより逆潮流が検出されなくなると(S1が1→0)、当該電力供給(S3)を予め設定した傾きで増やしていく。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統に接続された逆電力継電器付きの電力ラインに一般負荷および太陽光発電システムと並列に設けられ、前記電力ラインから供給される電力を蓄える負の電力供給と、蓄えた電力を前記電力ラインに向けて供給する正の電力供給とが可能な蓄電システムであって、
正または負の電力供給を行っているときに前記逆電力継電器によって前記商用電力系統への逆潮流が検出されると、当該電力供給を予め設定した傾きで減らしていき、前記逆潮流が検出されなくなると、当該電力供給を予め設定した傾きで増やしていく
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記電力ラインに接続された双方向DC/AC変換部と、
前記双方向DC/AC変換部に接続された蓄電池と、
前記双方向DC/AC変換部に接続されるとともに、太陽電池に接続されるDC/DC変換部と、
前記逆潮流が検出されているか否か基づいて前記双方向DC/AC変換部および前記DC/DC変換部を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記電力ラインに接続された双方向DC/AC変換部と、
前記双方向DC/AC変換部に接続された蓄電池と、
前記逆潮流が検出されているか否か基づいて前記双方向DC/AC変換部を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力系統に接続された逆電力継電器付きの電力ラインに一般負荷および太陽光発電システムと並列に設けられる蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に、一般的な蓄電システム100を示す。同図に示すように、蓄電システム100は、商用電力系統(以下、単に「系統」ともいう)20に接続された電力ライン21に一般負荷101および太陽光発電システム102と並列に設けられている。蓄電システム100は、図示しない蓄電池を含み、太陽電池104の発電電力を一般負荷101、特定負荷103、系統20および蓄電池のうちの少なくとも1つに供給したり、太陽光発電システム102の発電電力および系統20からの電力を蓄電池および特定負荷103のうちの少なくとも1つに供給したりすることができる。
【0003】
ところで、近年の電力買取価格の低下に伴い、太陽光発電システム102および太陽電池104の発電電力をなるべく自家消費しようとする動きが広まってきている。自家消費とは、発電電力を系統20への供給(売電)によって消費するのではなく、一般負荷101、特定負荷103および蓄電池への供給によって消費することをいう。このような動きをとる場合は、通常、系統20との間での電力の授受を監視するために、電力ライン21に電力計105を新設する。しかしながら、電力計105の新設には、自家消費の経済的メリットを超えるコストがかかる場合があり、その場合、電力計105の新設は、自家消費を実現する手段として好適ではない。
【0004】
なお、電力計の計測結果を用いて自家消費向けに出力を制御することは、例えば、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社フィールドロジック Webページ、自家消費向け出力制御のシステム構成例、[online]、ソリューション/自家消費向け出力制御、[令和4年9月27日検索]、インターネット<URL:https://www.f-logic.jp/solution/control_consumption.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、コスト増を招くことなく発電電力の自家消費を可能にする蓄電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓄電システムは、商用電力系統に接続された逆電力継電器付きの電力ラインに一般負荷および太陽光発電システムと並列に設けられ、電力ラインから供給される電力を蓄える負の電力供給と、蓄えた電力を電力ラインに向けて供給する正の電力供給とが可能なシステムであって、正または負の電力供給を行っているときに逆電力継電器によって商用電力系統への逆潮流が検出されると、当該電力供給を予め設定した傾きで減らしていき、逆潮流が検出されなくなると、当該電力供給を予め設定した傾きで増やしていく、との構成を有している。
【0008】
この構成では、電力計ではなく、各種施設に予め設置されている場合が多い逆電力継電器を用いて自家消費を実現する。このため、この構成によれば、電力計の設置コストを節約することができる。
【0009】
また、この構成では、正または負の電力供給を行っているときに逆電力継電器によって商用電力系統への逆潮流が検出されると当該電力供給が予め設定した傾きで減っていき逆潮流が検出されなくなると、当該電力供給が予め設定した傾きで増えていく。つまり、この構成では、逆潮流が検出されたこと/されなくなったことをきっかけとして、電力供給がステップ状にではなくゆっくりと変化し始める。したがって、この構成によれば、電力供給が急激に増減するのを防ぐことができる。ひいては、この構成によれば、高コストな電力計を用いて緻密な制御を行った場合と同様に、不必要な売電または買電の電力量が増大するのを防ぐことができる。
【0010】
上記蓄電システムは、電力ラインに接続された双方向DC/AC変換部と、双方向DC/AC変換部に接続された蓄電池と、双方向DC/AC変換部に接続されるとともに、太陽電池に接続されるDC/DC変換部と、逆潮流が検出されているか否か基づいて双方向DC/AC変換部およびDC/DC変換部を制御する制御部とを備えていてもよい。
【0011】
また、上記蓄電システムは、電力ラインに接続された双方向DC/AC変換部と、双方向DC/AC変換部に接続された蓄電池と、逆潮流が検出されているか否か基づいて双方向DC/AC変換部を制御する制御部とを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コスト増を招くことなく発電電力の自家消費を可能とする蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施例に係る蓄電システムおよびその周辺を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す検出信号S1、中間信号S2および指令信号S3の関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の第2実施例に係る蓄電システムおよびその周辺を示すブロック図である。
【
図5】従来の蓄電システムおよびその周辺を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る蓄電システムの実施例について説明する。
【0015】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る蓄電システム1Aを示す。同図に示すように、蓄電システム1Aは、商用電力系統20に接続された電力ライン21に一般負荷22および太陽光発電システム(太陽電池25およびパワーコンディショナ26)と並列に設けて使用されるもので、開閉器2を介して電力ライン21に接続される双方向DC/AC変換部3と、双方向DC/AC変換部3に接続された蓄電池5およびDC/DC変換部4と、双方向DC/AC変換部3およびDC/DC変換部4を制御する制御部10とを備えている。DC/DC変換部4は、太陽電池24に接続される。
【0016】
太陽光発電システム(25,26)は、蓄電システム1Aとは独立に、発電電力P3を電力ライン21に供給する。
【0017】
蓄電システム1Aは、制御部10の制御下で双方向DC/AC変換部3およびDC/DC変換部4が作動することにより、主に次の(1),(2),(3)の動作を行う。
(1)太陽電池24の発電電力を、蓄電池5、特定負荷23および電力ライン21(一般負荷22を含む)のうちの少なくとも1つに供給する。
(2)蓄電池5の貯蔵電力を、特定負荷23および電力ライン21(一般負荷22を含む)のうちの少なくとも1つに供給する。
(3)電力ライン21から供給される電力を、特定負荷23および蓄電池5のうちの少なくとも1つに供給する。電力ライン21からの電力には、太陽光発電システム(25,26)の発電電力と系統20から供給される電力とが含まれている。
【0018】
なお、本明細書では、上記動作(1),(2)により蓄電システム1Aが電力を供給していること(すなわち、電力P1が正であること)を、「蓄電システム1Aが正の電力供給を行っている」、「蓄電システム1Aによる電力供給が正である」等と表現することがある。また、本明細書では、上記動作(3)により蓄電システム1Aに電力が供給されていること(すなわち、電力P1が負であること)を、「蓄電システム1Aが負の電力供給を行っている」、「蓄電システム1Aによる電力供給が負である」等と表現することがある。
【0019】
開閉器2は、系統20に停電が発生すると、通常状態である閉状態から開状態に切り替わるよう構成されている。開閉器2が開状態に切り替わると、蓄電システム1Aは電力ライン21から切り離されたことになる。切り離された後は、蓄電池5の貯蔵電力または太陽電池24の発電電力によって特定負荷23の駆動が継続される。
【0020】
図1に示すように、電力ライン21には逆電力継電器27が設けられている。そして、制御部10は、この逆電力継電器27によって逆潮流が検出されているか否か(すなわち、電力P1と発電電力P3の和電力から一般負荷22に向かう電力P2を差し引いた残りの電力P4が正であるか否か)を示す検出信号S1に基づいて双方向DC/AC変換部3およびDC/DC変換部4を制御することもできる。なお、検出信号S1は、逆潮流が検出されているときは“1”であり、それ以外のときは“0”である。
【0021】
図2に示すように、制御部10は、ランプ処理部11と、指令信号生成部12とを含んでいる。ランプ処理部11は、予め設定されたランプ設定値(傾き)に基づいて検出信号S1にランプリミテーション処理を行い、これにより中間信号S2を生成する。指令信号生成部12は、中間信号S2を変数とした次式により電力P1に関する指令信号S3を生成する。
S3=(0.5-S2)×2×Po
Poは、蓄電システム1A(厳密には、双方向DC/AC変換部3)の定格電力である。本実施例では、定格電力Poを10[kW]とした。
【0022】
図3に、検出信号S1、中間信号S2および指令信号S3の関係の一例を示す。
【0023】
蓄電システム1Aによる電力供給が正(より詳しくは、電力P1(S3)が+4[kW])である時刻t1に逆電力継電器27が逆潮流を検出すると、検出信号S1が0から1に変化し、中間信号S2が予め設定された傾きで増加し始める。そして、これに伴って、指令信号S3が低下し始める。
【0024】
時刻t2に蓄電システム1Aによる電力供給が停止しても(より詳しくは、電力P1(S3)が±0[kW]になっても)、依然として逆電力継電器27が逆潮流を検出しているため、指令信号S3は低下を続ける。このとき、系統20には、発電電力P3から電力P2を差し引いた残りの電力P4が逆潮流している。
【0025】
蓄電システム1Aによる電力供給が負(より詳しくは、電力P1(S3)が-6.8[kW])である時刻t3に逆電力継電器27が逆潮流を検出しなくなると、検出信号S1が1から0に変化し、中間信号S2が予め設定された傾きで低下し始める。そして、これに伴って、指令信号S3が増加し始める。
【0026】
蓄電システム1Aによる電力供給が負(より詳しくは、電力P1(S3)が-1[kW])である時刻t4に逆電力継電器27が逆潮流を検出すると、検出信号S1が0から1に変化し、中間信号S2が予め設定された傾きで増加し始める。そして、これに伴って、指令信号S3が低下し始める。その後、逆電力継電器27が逆潮流を検出しなくなると、検出信号S1が1から0に変化し、中間信号S2が予め設定された傾きで低下し始める。そして、これに伴って、指令信号S3が増加し始める。
【0027】
時刻t5に蓄電システム1Aによる電力供給を停止しても(より詳しくは、電力P1(S3)が±0[kW]になっても)、依然として逆電力継電器27が逆潮流を検出していないため、指令信号S3は増加を続ける。その後、逆電力継電器27が逆潮流を検出すると、検出信号S1が0から1に変化し、中間信号S2が予め設定された傾きで増加し始める。そして、これに伴って、指令信号S3が低下し始める。
【0028】
蓄電システム1Aによる電力供給が正(より詳しくは、電力P1(S3)が+1[kW])である時刻t6に逆電力継電器27が逆潮流を検出しなくなると、検出信号S1が1から0に変化し、中間信号S2が予め設定された傾きで低下し始める。そして、これに伴って、指令信号S3が増加し始める。
【0029】
このように、本実施例に係る蓄電システム1Aの制御部10は、電力計ではなく、各種施設に予め設置されている場合が多い逆電力継電器27を用いて自家消費を実現する。このため、この構成によれば、電力計の設置コストを節約することができる。
【0030】
また、蓄電システム1Aの制御部10は、蓄電システム1Aが正または負の電力供給を行っているときに逆電力継電器27によって系統20への逆潮流が検出されると、当該電力供給を予め設定した傾きで減らしていき、これにより逆潮流が検出されなくなると、当該電力供給を予め設定した傾きで増やしていく、との制御を行う。本実施例に係る蓄電システム1Aによれば、このような制御部10の制御によって双方向DC/AC変換部3およびDC/DC変換部4の動作状態をゆっくりと変化させることで、正または負の電力供給の急激な増減を防ぐことができ、ひいては、不必要な売電または買電の電力量が増大するのを防ぐことができる。
【0031】
[第2実施例]
図4に、本発明の第2実施例に係る蓄電システム1Bを示す。同図に示すように、蓄電システム1Bは、系統20に接続された電力ライン21に一般負荷22および太陽光発電システム(25,26)と並列に設けて使用されるもので、開閉器2を介して電力ライン21に接続される双方向DC/AC変換部3と、双方向DC/AC変換部3に接続された蓄電池5と、双方向DC/AC変換部3を制御する制御部10とを備えている。蓄電システム1Bは、太陽電池24に接続されるDC/DC変換部4を備えていない点において蓄電システム1Aと相違するが(
図1参照)、他の点においては蓄電システム1Aと共通する。
【0032】
蓄電システム1Bは、制御部10の制御下で双方向DC/AC変換部3が作動することにより、主に次の(1),(2)の動作を行う。
(1)蓄電池5の貯蔵電力を、特定負荷23および電力ライン21(一般負荷22を含む)のうちの少なくとも1つに供給する。
(2)電力ライン21からの電力を、特定負荷23および蓄電池5のうちの少なくとも1つに供給する。
【0033】
本実施例に係る蓄電システム1Bによれば、制御部10の第1実施例と同様の制御によって双方向DC/AC変換部3の動作状態をゆっくりと変化させることで、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0034】
[変形例]
以上、本発明に係る蓄電システムの第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0035】
例えば、蓄電システム1Aは、開閉器2が省略されていたり、別の開閉器をさらに備えていたり、双方向DC/AC変換部3、DC/DC変換部4および蓄電池5の接続点における電圧を安定化させる大容量キャパシタを備えていたり、任意の箇所にノイズフィルタを備えていたりしてもよい。蓄電システム1Bについても同様である。
【0036】
また、蓄電システム1Aおよび蓄電システム1Bは、特定負荷23に接続されていなくてもよい。
【0037】
ランプ処理部11および指令信号生成部12で制御部10を構成すること、および指令信号生成部12が式“S3=(0.5-S2)×2×Po”に従って指令信号S3を求めることも単なる一例にすぎない。
【符号の説明】
【0038】
1A,1B 蓄電システム
2 開閉器
3 双方向DC/AC変換部
4 DC/DC変換部
5 蓄電池
10 制御部
11 ランプ処理部
12 指令信号生成部
20 商用電力系統
21 電力ライン
22 一般負荷
23 特定負荷
24 太陽電池
25 太陽電池
26 パワーコンディショナ
27 逆電力継電器