(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000489
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】バッテリデバイスの放電バランス方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231225BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231225BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037042
(22)【出願日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】111122932
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】509343390
【氏名又は名称】新盛力科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】張古博
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS01
5H030AS08
5H030BB23
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バッテリモジュールの放電量及び使用寿命を増加させるバッテリデバイスの放電バランス方法を提供する。
【解決手段】バッテリデバイスのバッテリモジュールは、互いに並列に接続された複数のバッテリブロックを含み、バッテリブロックは複数のセルの直列接続を含む。バッテリモジュールの放電過程では、各セルの電圧を測定して複数のセル電圧を生成する。また、いずれか1つのセル電圧が放電カットオフ電圧に達したとき、バッテリモジュールが完全放電したと判定する。そして、各バッテリブロックにおける最小のセル電圧をそれぞれ取得して、複数のカットオフセル電圧を生成する。カットオフセル電圧に基づき、バッテリモジュールの次の放電過程における各バッテリブロックの放電比率をそれぞれ調整する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリデバイスの放電バランス方法であって、前記バッテリデバイスはバッテリモジュールを含み、前記バッテリモジュールは並列に接続された複数のバッテリブロックを含み、各前記バッテリブロックは直列に接続された複数のセルを含み、前記バッテリデバイスの放電バランス方法は、
前記バッテリモジュールが放電すること、
各前記バッテリブロックの各前記セルの電圧を測定して複数のセル電圧を生成すること、
前記複数のセル電圧のうち少なくとも1つが放電カットオフ電圧に達すること、
各前記バッテリブロックにおける最小の前記セル電圧をそれぞれ取得して、複数のカットオフセル電圧を生成すること、及び
前記複数のカットオフセル電圧に基づき、前記バッテリモジュールの次の放電過程において各前記バッテリブロックの放電比率を調整すること、
を含むバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項2】
前記複数のバッテリブロックはそれぞれ同じ数の前記セルを有し、且つ、前記バッテリブロックと前記カットオフセル電圧の数は同じである請求項1に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項3】
前記複数のセル電圧のうち少なくとも1つが前記放電カットオフ電圧に達したとき、前記バッテリモジュールを完全放電したと定義する請求項1に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項4】
各前記バッテリブロックの前記複数のセル電圧をソートして、各前記バッテリブロックの前記カットオフセル電圧を取得することを含む請求項1に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項5】
各前記バッテリブロックの今回の前記放電比率及び前記カットオフセル電圧に基づいて、各前記バッテリブロックの次の前記放電比率をそれぞれ算出することを含む請求項1に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項6】
各前記カットオフセル電圧をソートして最小カットオフセル電圧を生成すること、
各前記カットオフセル電圧及び前記最小カットオフセル電圧に基づき、各前記バッテリブロックの一時調整パラメータをそれぞれ算出すること、及び
各前記バッテリブロックの前記一時調整パラメータに基づき、各前記バッテリブロックの次の前記放電比率を算出すること、
を含む請求項1に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項7】
各前記バッテリブロックの今回の前記放電比率、各前記カットオフセル電圧及び前記最小カットオフセル電圧に基づき、各前記バッテリブロックの前記一時調整パラメータをそれぞれ算出することを含む請求項6に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項8】
各前記バッテリブロックの前記一時調整パラメータをそれぞれ正規化することで、各前記バッテリブロックの次の前記放電比率を取得することを含む請求項6に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項9】
プロセッサにより各前記セルの電圧を測定して前記複数のセル電圧を生成すること、及び
各前記セル電圧が前記放電カットオフ電圧よりも大きいか否かを前記プロセッサが比較すること、を含む請求項1に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記複数のセル電圧のうち少なくとも1つが前記放電カットオフ電圧に達したと判断すること、
前記プロセッサが、各前記カットオフセル電圧をソートして最小カットオフセル電圧を生成すること、
前記プロセッサが、各前記カットオフセル電圧及び前記最小カットオフセル電圧に基づき、各前記バッテリブロックの次の放電過程における前記放電比率を算出すること、及び
前記プロセッサが、各バッテリブロックの前記放電比率に基づき、それぞれ制御回路を通じて、各前記バッテリブロックが放電するように制御すること、
を含む請求項9に記載のバッテリデバイスの放電バランス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュールが供給可能な電気量及び使用寿命を増加させるのに有利なバッテリデバイスの放電バランス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池には、主に、ニッケル水素電池、ニッケル・カドミウム電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池が含まれる。リチウム電池は、エネルギー密度が高く、動作電圧が高く、使用温度の範囲が広く、メモリー効果がなく、長寿命であり、複数回の充放電に耐え得る等の利点を有する。また、例えば、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等のポータブル式電子製品に幅広く使用されており、近年では更に自動車分野にも利用されている。
【0003】
セル(Cell)の構造には、主に、正極材、電解液、負極材、セパレータ及びハウジングが含まれる。セパレータは、正極材と負極材を隔離して短絡を回避するためのものである。また、電解液は、多孔質のセパレータ内に設置され、イオンの電荷を伝導する役割を担う。ハウジングは、上記の正極材、セパレータ、電解液及び負極材を覆うために用いられる。一般的に、ハウジングは金属材質からなるのが常である。
【0004】
使用時には、電池の導電性フレームにより複数のセルを直列及び/又は並列に接続することでバッテリモジュールを形成し、バッテリモジュールによって製品に必要な電圧を出力可能とする。
【0005】
バッテリモジュールの充電及び放電の過程では、バッテリモジュールにおける複数のセル間の温度に差が生じることで、各セルの劣化度合に違いが発生する。例えば、温度の高いセルの劣化度合は温度の低いセルよりも大きくなる。また、バッテリモジュール全体の放電カットオフ条件は、バッテリモジュールのうち最も早く放電を終えたセルが基準となる。換言すれば、バッテリモジュールにおける各セルの劣化度合の差が大きいほど、バッテリモジュールの放電効率は低くなる。
【0006】
バッテリモジュールの使用寿命を伸ばすために、現在は、バッテリモジュール内のセルについてバランス管理を行っている。例えば、バッテリが満充電の場合に、バッテリ管理システム(Battery Management System,BMS)のバッテリバランスメカニズム(Battery Balancing Algorithm)によって各セルの開回路電圧(Open-circuit voltage)を同一に維持している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者は、バッテリモジュールについて行われている現在のバランス管理メカニズムでは、一般的に、バッテリモジュールの充電過程とセルのバランスメカニズムに重点が置かれていると考える。しかし、これらの方法では、バッテリモジュールにおける各バッテリブロック及び/又はセルの劣化がアンバランスになるとの課題は解決できない。そこで、バッテリモジュールの寿命及びパフォーマンスを更に向上させるために、本発明では、バッテリデバイスの放電バランス方法を提供する。バッテリデバイスのバッテリモジュールは並列に接続された複数のバッテリブロックを含み、各バッテリブロックは直列に接続された複数のセルを含む。バッテリモジュールの放電過程では、各バッテリブロックにおける各セルの関連データをモニタリングし、各バッテリブロック及び/又は各セルのパフォーマンス、劣化度合及び/又はバッテリ容量を推測する。そして、推測した結果に基づき、各バッテリブロックの放電比率又は放電量を調整することで、バッテリモジュールの総放電量及び使用寿命を増加させるのに有利とする。
【0008】
本発明の一の目的は、バッテリデバイスの放電バランス方法を提供することである。バッテリモジュールは複数のバッテリブロックの並列接続を含む。また、プロセッサは、入力端子及び出力端子を含む。プロセッサは、入力端子を通じて各バッテリブロックの各セルに接続されており、各セルの動作状態を検出するために用いられる。そのほか、プロセッサは、出力端子を通じて制御信号を出力し、各バッテリブロックの放電をそれぞれ制御することで、バッテリモジュールの放電過程における各バッテリブロックの放電比率を変更可能である。
【0009】
具体的には、バッテリモジュールの完全放電後に、放電過程におけるシステムパラメータと時間との関係に基づき、各バッテリブロックの劣化度合を評価する。その後、バッテリモジュールの放電量を最大化させ得るよう、各バッテリブロックの劣化度合に基づき、バッテリモジュールにおける各バッテリブロックの放電比率又は放電量をそれぞれ調整する。
【0010】
本発明の一の目的は、バッテリモジュールが完全放電に達したときに、各バッテリブロックにおける最小のセル電圧をそれぞれ取得することで、複数のカットオフセル電圧をそれぞれ生成するバッテリデバイスの放電バランス方法を提供することである。各カットオフセル電圧は、それぞれ各バッテリブロックに対応している。そして、各カットオフセル電圧と、それらのうちの最小のカットオフセル電圧に基づいて一時調整パラメータを算出し、一時調整パラメータに基づき各バッテリブロックの次の放電比率を調整する。これにより、各バッテリブロックの劣化度合のバランスを取るとともに、バッテリモジュールの使用寿命を伸ばす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、バッテリデバイスの放電バランス方法を提供する。バッテリデバイスはバッテリモジュールを含み、バッテリモジュールは並列に接続された複数のバッテリブロックを含み、各バッテリブロックは直列に接続された複数のセルを含む。当該方法は、バッテリモジュールが放電すること、各バッテリブロックの各セルの電圧を測定して複数のセル電圧を生成すること、複数のセル電圧のうち少なくとも1つが放電カットオフ電圧に達すること、各バッテリブロックにおける最小のセル電圧をそれぞれ取得して複数のカットオフセル電圧を生成すること、及び、複数のカットオフセル電圧に基づき、バッテリモジュールの次の放電過程において各バッテリブロックの放電比率を調整すること、を含む。
【0012】
本発明の少なくとも1つの実施例において、複数のバッテリブロックはそれぞれ同じ数のセルを有し、且つ、バッテリブロックとカットオフセル電圧の数は同じである。
【0013】
本発明の少なくとも1つの実施例において、複数のセル電圧のうち少なくとも1つが放電カットオフ電圧に達したとき、バッテリモジュールを完全放電したと定義する。
【0014】
本発明の少なくとも1つの実施例において、各バッテリブロックの複数のセル電圧をソートして、各バッテリブロックのカットオフセル電圧を取得することを含む。
【0015】
本発明の少なくとも1つの実施例において、各バッテリブロックの今回の放電比率及びカットオフセル電圧に基づいて、各バッテリブロックの次の放電比率をそれぞれ算出することを含む。
【0016】
本発明の少なくとも1つの実施例において、各カットオフセル電圧をソートして最小カットオフセル電圧を生成すること、各カットオフセル電圧及び最小カットオフセル電圧に基づき、各バッテリブロックの一時調整パラメータをそれぞれ算出すること、及び、各バッテリブロックの一時調整パラメータに基づき、各バッテリブロックの次の放電比率を算出すること、を含む。
【0017】
本発明の少なくとも1つの実施例において、各バッテリブロックの今回の放電比率、各カットオフセル電圧及び最小カットオフセル電圧に基づき、各バッテリブロックの一時調整パラメータをそれぞれ算出することを含む。
【0018】
本発明の少なくとも1つの実施例において、各バッテリブロックの一時調整パラメータをそれぞれ正規化することで、各バッテリブロックの次の放電比率を取得することを含む。
【0019】
本発明の少なくとも1つの実施例において、プロセッサにより各セルの電圧を測定して複数のセル電圧を生成すること、及び、各セル電圧が放電カットオフ電圧よりも大きいか否かをプロセッサが比較すること、を含む。
【0020】
本発明の少なくとも1つの実施例において、プロセッサが、複数のセル電圧のうち少なくとも1つが放電カットオフ電圧に達したと判断すること、プロセッサが、各カットオフセル電圧をソートして最小カットオフセル電圧を生成すること、プロセッサが、各カットオフセル電圧及び最小カットオフセル電圧に基づき、各バッテリブロックの次の放電過程における放電比率を算出すること、及び、プロセッサが、各バッテリブロックの放電比率に基づき、それぞれ制御回路を通じて、各バッテリブロックが放電するように制御すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明のバッテリデバイスの一実施例における概略ブロック接続図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るバッテリデバイスの放電バランス方法の一実施例におけるステップフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明を未使用時及び本発明を使用時の放電バランス方法の放電時間関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び
図2を参照する。これらは、それぞれ、本発明のバッテリデバイスの一実施例における概略ブロック接続図と、放電バランス方法の一実施例におけるステップフローチャートである。
図1に示すように、バッテリデバイス10は、バッテリモジュール11及びプロセッサ13を含む。例えば、プロセッサ13は、バッテリ管理システム(Battery Management System,BMS)とすることができる。バッテリモジュール11は、負荷(electrical load)15に接続されており、負荷15にエネルギーを供給するために用いられる。
【0023】
バッテリモジュール11は、複数のバッテリブロック110を含み得る。各バッテリブロック110は互いに並列に接続される。各バッテリブロック110は、少なくとも1つのセル1111又は複数のセル1111の直列接続を含む。各バッテリブロック110は、同じ数のセル1111を有するため、各バッテリブロック110は類似した電圧を有する。本発明における上記のセル1111は二次電池であり、何度も充電及び放電が可能である。例えば、セル1111はリチウムイオン電池である。
【0024】
本発明の一実施例において、プロセッサ13は、入力端子131及び出力端子133を含み得る。プロセッサ13の入力端子131は、バッテリブロック110の各セル1111に電気的に接続され、入力端子131を通じて、例えば、電圧、電流及び温度等の各セル1111の動作状態を検出する。プロセッサ13の出力端子133は、複数の制御回路17を介して各バッテリブロック110にそれぞれ接続されており、出力端子133から各制御回路17に制御信号を出力する。例えば、制御回路17は、複数の切替スイッチ及び制御ユニットを含み得る。
【0025】
説明の便宜上、本発明の実施例では、3つの並列に接続されたバッテリブロック110及び3つの制御回路17を含む。例えば、第1バッテリブロック111、第2バッテリブロック113及び第3バッテリブロック115が互いに並列に接続される。ただし、実際に応用する際には、バッテリブロック110の数は2つ又は3つ以上としてもよい。各バッテリブロック110は、それぞれ制御回路17に接続される。バッテリデバイス10が放電する際に、プロセッサ13は、各制御回路17を介して各バッテリブロック110の放電比率をそれぞれ制御可能である。
【0026】
プロセッサ13は、各バッテリブロック110及び各セル1111に電気的に接続されており、各バッテリブロック110及び/又は各セル1111が充電又は放電を行うようそれぞれ制御する。実際に応用するにあたり、当業者は、本発明の放電バランス方法に基づきプロセッサ13及び制御回路17を設計可能なため、ここではプロセッサ13及び制御回路17の詳細な回路構造については詳述しない。また、プロセッサ13及び制御回路17の回路構造は本発明の権利範囲の制限を受けない。
【0027】
バッテリモジュール11は少なくとも1つの負荷15に接続可能である。例えば、負荷15は、サーバ、エンジン、コンピュータ、電球、オーディオ等を含み得る。ステップ21に示すように、プロセッサ13は、バッテリモジュール11が放電して、負荷15に対し放電することで、負荷15に電力を供給するよう制御する。これにより、負荷15は正常に動作可能となる。
【0028】
ステップ23に示すように、バッテリモジュール11の放電過程では、プロセッサ13が各バッテリブロック110内の各セル1111の電圧を持続的に測定し、複数のセル電圧を生成する。例えば、プロセッサ13は、入力端子131を通じて各セル1111の電圧を測定可能である。実際に応用する際、プロセッサ13は、各セル1111の電流及び温度を測定するために使用してもよい。
【0029】
ステップ25に示すように、一般的に、バッテリモジュール11における少なくとも1つのセル電圧が放電カットオフ電圧(Cut-off discharge voltage)に達したとき(例えば、放電カットオフ電圧以下となったとき)に、バッテリモジュール11を完全放電したと定義する。具体的に、放電カットオフ電圧は人為的に定義される電圧であり、バッテリの種類や放電条件によって異なる。例えば、リン酸リチウム鉄リチウムイオン電池の最低放電電圧は、通常、2.0V未満とはなり得ない。また、例えば、三元系リチウムイオン電池の最低放電電圧は、通常、2.5V未満とはなり得ない。
【0030】
放電カットオフ電圧は、主に、バッテリモジュール11及びセル1111を保護することで、バッテリモジュール11及びセル1111の過放電に起因する恒久的な損傷を回避するために定義される。換言すれば、セル電圧が放電カットオフ電圧以下の場合には、バッテリモジュール11が放電を継続できないことを意味するものではない。バッテリモジュール11の完全放電後は、充電しなければ使用を継続できない。
【0031】
理想的な状態では、バッテリモジュール11の放電過程において、並列に接続された各バッテリブロック110は、理論上は同じ電気量を負荷15に供給する。また、バッテリモジュール11の完全放電時にも、並列に接続された各バッテリブロック110の電圧は同じになるはずである。
【0032】
しかし、実際の状況では、バッテリブロック110内の各セル1111の製造プロセスに差が存在する場合がある。そのため、工場出荷後の各セル1111のバッテリ容量、定格電圧、及び/又は開回路電圧にはわずかな差が存在する。
【0033】
また、工場出荷後の各セル1111の規格が完全に同じであると仮定したとしても、一定期間の使用(例えば、複数回の充電又は放電)後には、各セル1111の劣化度合がやや異なってくることで、各セル1111のバッテリ容量、定格電圧、及び/又は開回路電圧に差が生じる。そして、当然ながら、1つのセル1111を含むか複数のセル1111が直列に接続されたバッテリブロック110の容量又は電圧にも差が生じる。
【0034】
具体的に、バッテリモジュール11の充電又は放電の過程では、各バッテリブロック110及び/又はセル1111の温度に差が生じることで、各バッテリブロック110及び/又はセル1111の劣化度合に違いが発生する。例えば、長時間にわたり動作温度の高かったバッテリブロック110及び/又はセル1111の劣化速度は比較的早くなる。
【0035】
各バッテリブロック110の劣化度合の違いに応じて、プロセッサ13により、各バッテリブロック110及び/又は各セル1111に対し充電バランス管理を実施すればよい。これにより、バッテリモジュール11が充電を完了したときには(例えば、満充電)、バッテリモジュール11内の各バッテリブロック110及び/又は各セル1111も満充電となり、各バッテリブロック110及び/又はセル1111が同じ開回路電圧を有するようにする。
【0036】
本発明の一実施例では、第1バッテリブロック111の温度が第2バッテリブロック113よりも低く、第2バッテリブロック113の温度が第3バッテリブロック115よりも低いと仮定可能である。この場合、温度が最も高い第3バッテリブロック115の劣化度合は、第2バッテリブロック113及び第1バッテリブロック111よりも早くなり、第3バッテリブロック115の容量が第2バッテリブロック113及び第1バッテリブロック111よりも小さくなる。例えば、複数回の充電及び放電後に、第1バッテリブロック111の容量は1063mAh、第2バッテリブロック113の容量は1039mAhであるのに対し、第3バッテリブロック115の容量は851mAhとなる。
【0037】
本発明で記載する放電バランス方法を採用しない場合、バッテリモジュール11の放電過程において、第1バッテリブロック111、第2バッテリブロック113及び第3バッテリブロック115の放電比率が同じであれば、第3バッテリブロック115の電気量を使い切ったあと、例えば、第3バッテリブロック115内の1つのセル1111のセル電圧が放電カットオフ電圧よりも小さくなった場合に、バッテリモジュール11は完全放電したと判断されるため、負荷15に対しエネルギーを供給できなくなる。
【0038】
この場合、第1バッテリブロック111及び第2バッテリブロック113は使い切られていないが、第1バッテリブロック111及び第2バッテリブロック113の電気残量は使用できなくなる。例えば、第1バッテリブロック111及び第2バッテリブロック113にはそれぞれ212mAh及び188mAhの電気量が残り、バッテリモジュール11が供給可能な総電気量が低下してしまう。
【0039】
そこで、本発明は、放電バランス方法を提供する。主として、各バッテリブロック110及び/又は各セル1111の動作状態又は劣化度合の違いに応じて、プロセッサ13及び制御回路17により、各バッテリブロック110及び/又は各セル1111について放電バランス管理を行う。プロセッサ13は、バッテリモジュール11における各バッテリブロック110のパフォーマンスに基づいて、出力端子133を通じて各制御回路17に制御信号を伝送する。そして、各制御回路17は、受信した制御信号に基づいて各バッテリブロック110の放電比率を調整する。これにより、バッテリモジュール11は、より多くの電気量を供給可能となる。また、このことは、バッテリモジュール11の使用寿命を伸ばすのに都合がよい。
【0040】
本発明の一実施例において、第1バッテリブロック111の容量が第2バッテリブロック113よりも大きく、第2バッテリブロック113の容量が第3バッテリブロック115よりも大きいと仮定する。この場合、バッテリモジュール11の放電過程において、プロセッサ13は、第1バッテリブロック111の放電比率又は放電量を第2バッテリブロック113よりも大きくし、第2バッテリブロック113の放電比率又は放電量を第3バッテリブロック115よりも大きくすることで、第1バッテリブロック111、第2バッテリブロック113及び第3バッテリブロック115が同時又は近い時間に完全放電を達成するよう、各バッテリブロック110を制御するために使用可能である。
【0041】
バッテリモジュール11が完全放電したとき、例えば、バッテリモジュール11における少なくとも1つのセル1111のセル電圧が放電カットオフ電圧よりも小さくなったときには、ステップ27に示すように、各バッテリブロック110における最小のセル電圧をそれぞれ取得して、複数のカットオフセル電圧Vj(k)を生成する。各カットオフセル電圧Vj(k)は各バッテリブロック110にそれぞれ対応している。なお、jはバッテリブロックの番号を表し、kは放電した回数を表す。
【0042】
実際に応用する際、プロセッサ13は、各バッテリブロック110の各セル1111の使用状態を持続的にモニタリングすることで、各セル1111のセル電圧を把握する。例えば、プロセッサ13は、入力端子131を通じて各セル1111の電圧、電流及び温度を受信する。そして、プロセッサ13は、更に、各セル電圧が放電カットオフ電圧よりも大きいか否かを比較することで、バッテリモジュール11が完全放電したか否かを判断可能である。
【0043】
本発明の一実施例において、プロセッサ13が、入力端子131を通じて1つのセル1111のセル電圧が放電カットオフ電圧よりも小さいことを把握した場合、プロセッサ13は、各バッテリブロック110の各セル電圧をそれぞれソートする。これにより、各バッテリブロック110における最小のセル電圧をそれぞれ把握して、複数のカットオフセル電圧Vj(k)を生成する。具体的に、カットオフセル電圧Vj(k)の数はバッテリブロック110の数と等しい。
【0044】
その後、ステップ29に示すように、プロセッサ13は、各カットオフセル電圧Vj(k)に基づき、バッテリモジュール11の次の放電過程において、各バッテリブロック110の放電比率又は放電量を調整する。例えば、プロセッサ13は、更に各カットオフセル電圧Vj(k)をソートして、それらの中から最小のカットオフセル電圧Vj(k)を探し出し、最小カットオフセル電圧Vmin(k)を生成可能である。そして、各カットオフセル電圧Vj(k)及び最小カットオフセル電圧Vmin(k)に基づき、各バッテリブロック110の次の放電過程における放電比率を算出する。
【0045】
実際に応用する際、プロセッサ13は、入力端子131を通じて、各バッテリブロック110の各セル1111の電圧、電流、温度及びそれらの経時的変化を検出可能であり、且つ、制御回路17を介して各バッテリブロック110の放電比率を制御する。具体的に、プロセッサ13は、各バッテリブロック110の今回の放電比率、完全放電時のカットオフセル電圧Vj(k)及び最小カットオフセル電圧Vmin(k)に基づき、各バッテリブロック110の次の放電比率を算出可能である。
【0046】
本発明の一実施例において、バッテリモジュール11が完全放電したあと、第1バッテリブロック111のカットオフセル電圧V1(k)が第2バッテリブロック113のカットオフセル電圧V2(k)よりも大きく、第2バッテリブロック113のカットオフセル電圧V2(k)が第3バッテリブロック115のカットオフセル電圧V3(k)よりも大きいと仮定する。
【0047】
バッテリモジュール11が完全放電したあとは、バッテリモジュール11を充電可能であり、例えば、バッテリモジュール11を満充電まで充電する。バッテリモジュール11の充電が完了し、次の放電を行う過程において、プロセッサ13は各バッテリブロック110の放電比率を制御する。これにより、例えば、第1バッテリブロック111の放電比率又は放電量を第2バッテリブロック113よりも大きくし、第2バッテリブロック113の放電比率又は放電量を第3バッテリブロック115よりも大きくする。
【0048】
本発明の一実施例において、jはバッテリブロック110のナンバリングに用いられ、kはk回目の放電のナンバリングに用いられる。また、Pj(k)は第jバッテリブロック110のk回目の放電比率を表す。なお、全てのバッテリブロック110の放電比率の合計は1又は100%となる。k回目の放電過程において、プロセッサ13は、Pj(k)の放電比率に基づき、出力端子133を通じて各制御回路17に制御信号を伝送することで、各バッテリブロック110の放電比率を制御する。
【0049】
バッテリモジュール11がk回目に完全放電したとき、プロセッサ13が測定した第jバッテリブロック110のカットオフセル電圧はVj(k)となる。また、全てのカットオフセル電圧Vj(k)のうちの最小カットオフセル電圧がVmin(k)であることを把握する。
【0050】
各カットオフセル電圧Vj(k)、最小カットオフセル電圧Vmin(k)及び今回の放電比率Pj(k)に基づき、各バッテリブロック110の一時調整パラメータAj(k)を算出する。各バッテリブロック110は、いずれも一時調整パラメータAj(k)=Pj(k)+G*[Vj(k)-Vmin(K)]・・・演算式(a)を取得可能である。なお、式中の補正値Gは固定の比値である。
【0051】
そして、各バッテリブロック110の今回の一時調整パラメータAj(k)に基づき、各バッテリブロック110の次の放電比率Pj(k+1)を算出する。本発明の一実施例では、次の(k+1)回目の放電過程において、第jバッテリブロック110の放電比率が一時調整パラメータAj(k)の比率に基づき正規化(normalization)される。これにより、各バッテリブロック110の次の放電比率Pj(k+1)=Aj(k)/ΣAj(k)・・・演算式(b)を取得する。
【0052】
例えば、第1バッテリブロック111のk回目の放電時の放電比率がP1(k)=0.34、第2バッテリブロック113のk回目の放電時の放電比率がP2(k)=0.335、第3バッテリブロック111のk回目の放電時の放電比率がP3(k)=0.325であったとする。また、バッテリモジュール11がk回目に完全放電したあと、第1バッテリブロック111のカットオフセル電圧がV1(k)=3.27Vであり、第2バッテリブロック113のカットオフセル電圧がV2(k)=3.09Vであり、第3バッテリブロック115のカットオフセル電圧がV3(k)=2.5Vであったとする。この場合、k回目の放電における最小カットオフセル電圧はVmin(k)=2.5Vとなる。仮に、補正値Gを6%とした場合、A1(k)=Pj(k)+G×[Vj(k)-Vmin(K)]=0.34+6%×(3.27-2.5)=0.386となる。
【0053】
演算式(a)により同様の演算を行うことで、A2(k)=0.371及びA3(k)=0.325を取得可能である。その後、演算式(b)に基づき正則化演算を行うことで、第1バッテリブロック111の次(k+1回目)の放電比率P1(k+1)=0.356と、第2バッテリブロック113の次(k+1回目)の放電比率P2(k+1)=0.343と、第3バッテリブロック115の次(k+1回目)の放電比率P3(k+1)=0.301を取得可能である。
【0054】
その後、バッテリモジュール11がk+1回目の放電を行う過程において、プロセッサ13は、算出した放電比率P1(k+1)、P2(k+1)及びP3(k+1)に基づき、第1バッテリブロック111、第2バッテリブロック113及び第3バッテリブロック115の放電比率をそれぞれ制御可能である。
【0055】
上記の演算式(a)、演算式(b)、カットオフセル電圧の値、最小カットオフセル電圧の値、放電比率の値、定数の値は、本発明において実施例を説明するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を制限するものではない。実際に応用する際には、バッテリモジュール11がより良好な放電バランス効果を達成し得るよう、演算式(a)及び/又は演算式(b)を調整可能である。
【0056】
実際に応用する際には、バッテリモジュール11が1回放電するごとに、各バッテリブロック110の放電比率を算出すればよい。これにより、直ちに各バッテリブロック110を調整及び制御して放電バランス管理を行い、各バッテリブロック110の劣化度合のバランスを取ることで、バッテリモジュール11の使用寿命の延長と、バッテリモジュール11が供給し得る電気量の増加が可能となる。
【0057】
図3は、劣化度合の異なる3つのセルを例として行った放電実験である。対照群(本発明の放電バランス方法を未使用)は、これら3つのセルを直列に接続したバッテリ群であり、一般的なシステムをシミュレーションした。また、実験群(本発明の放電バランス方法を使用)は、本発明の方式に従ってこれら3つのセルを3つの並列に接続されたバッテリモジュールに分け、セルごとに1つのバッテリブロックをシミュレーションした。放電方式は、定電力90Wとした。また、放電カットオフ電圧は2.5Vとした。実験の結果、対照群で実現された放電時間は340秒であったのに対し、本発明の点線で示した放電時間は、開始時の323秒から、4回のサイクル(4回目の放電)後にシステム容量が399秒まで押し上げられた。これは、本発明の設計が劣化度合に基づき各バッテリブロックの放電容量のバランスを取ることが可能であり、且つ、それにより更に多くの全体容量が供給されることを意味する。
【0058】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。即ち、本発明の特許請求の範囲に記載する形状、構造、特徴及び精神に基づきなされる等価の変形及び改変は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10 バッテリデバイス
11 バッテリモジュール
110 バッテリブロック
111 第1バッテリブロック
1111 セル
113 第2バッテリブロック
115 第3バッテリブロック
13 プロセッサ
131 入力端子
133 出力端子
15 負荷
17 制御回路