(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048901
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】センサ増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/34 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H03F3/34 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155056
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 有継
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AC13
5J500AF17
5J500AH38
5J500AK02
5J500AM11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オートゼロ回路に関する技術を利用したオフセット補償を実現しつつも、センサ信号を途切れることなく出力可能なセンサ増幅回路を提供する。
【解決手段】センサシステム10において、センサ回路50からの出力信号を増幅するためのセンサ増幅回路100は、演算増幅器181と、演算増幅器の入力オフセット電圧を低減させるオフセット補償回路110と、を備える。オフセット補償回路は、第1オートゼロ回路111及び第2オートゼロ回路112を含み、夫々、補償信号をサンプリングするゼロフェーズと、補償信号により入力オフセット電圧をキャンセルした状態で演算増幅器181に出力信号を増幅させる増幅フェーズとで動作し、第1オートゼロ回路が増幅フェーズで動作し、第2オートゼロ回路がゼロフェーズで動作する第1モードと、第1オートゼロ回路がゼロフェーズで動作し、第2オートゼロ回路が増幅フェーズで動作する第2モードとに切り替わる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ回路からの出力信号を増幅するためのセンサ増幅回路であって、
前記出力信号を増幅する演算増幅器と、
前記演算増幅器の入力オフセット電圧を低減させるオフセット補償回路とを備え、
前記オフセット補償回路は、第1オートゼロ回路および第2オートゼロ回路を含み、
前記第1オートゼロ回路および前記第2オートゼロ回路の各々は、前記入力オフセット電圧をキャンセルするための補償信号をサンプリングするゼロフェーズと、前記補償信号により前記入力オフセット電圧をキャンセルした状態で前記演算増幅器に前記出力信号を増幅させる増幅フェーズとで動作するように構成され、
前記オフセット補償回路は、前記第1オートゼロ回路が前記増幅フェーズで動作し、前記第2オートゼロ回路が前記ゼロフェーズで動作する第1モードと、前記第1オートゼロ回路が前記ゼロフェーズで動作し、前記第2オートゼロ回路が前記増幅フェーズで動作する第2モードとに切り替わるように構成される、センサ増幅回路。
【請求項2】
前記第1オートゼロ回路および前記第2オートゼロ回路の各々は、電流フィードバック計装増幅回路(Current Feedback Instrumentation Amplifier:CFIA)で構成されている、請求項1に記載のセンサ増幅回路。
【請求項3】
前記電流フィードバック計装増幅回路は、
複数の電流出力アンプ(Operational Transconductance Amplifier:OTA)と、
前記補償信号をサンプリングするためのキャパシタとを含む、請求項2に記載のセンサ増幅回路。
【請求項4】
温度の影響を受けて変動する前記センサ回路の感度を補償する感度温度特性補償回路と、
温度の影響を受けて変動する前記センサ回路の入力オフセット電圧を補償するオフセット温度特性補償回路と、
前記センサ回路の利得を補償する利得補償回路と、
前記センサ回路から出力される信号の非線形歪みを補償するリニアリティ補償回路とをさらに備える、請求項1または請求項2に記載のセンサ増幅回路。
【請求項5】
前記センサ回路には、4つのセンサ素子がブリッジ接続されており、
前記演算増幅器は、前記センサ回路からの一対の出力信号の差電圧を増幅する、請求項1または請求項2に記載のセンサ増幅回路。
【請求項6】
前記センサ回路は、磁気センサ素子を含み、
前記磁気センサ素子は、トンネル型磁気抵抗(Tunneling Magneto-Resistive:TMR)素子により構成される、請求項1または請求項2に記載のセンサ増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ増幅回路に関し、より特定的には、センサ増幅回路におけるオフセット補償の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
センサ増幅回路の入力オフセット電圧を補償するための回路として、オートゼロ(Auto Zero)回路が知られている。オートゼロ(Auto Zero)回路を利用することによって、センサ増幅回路の入力オフセット電圧を低減させることができる。
【0003】
特開平6-85669号公報(特許文献1)には、オートゼロ回路の一例が示されている。特開平6-85669号公報に記載のオートゼロ回路は、信号入力端子に向かう第1経路と、アースに向かう第2経路と、第1経路と第2経路と間で、アンプの入力側に接続する経路を切り替えるためのスイッチを備える。このオートゼロ回路は、アンプの入力側に接続する経路を第1経路と第2経路とに切り替えることを繰り返しつつ、入力電圧とアース電圧の差を測定値として出力することにより、オフセット補償を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、オートゼロ回路は、増幅回路の入力オフセット電圧を低減させるために、入力オフセット電圧を測定するオートゼロフェーズと、アンプとして動作する増幅フェーズとを有する。オート回路は、増幅フェーズにおいては信号を増幅することができるが、オートゼロフェーズにおいては信号を増幅することができない。したがって、オートゼロフェーズにおいては、増幅回路から信号が出力されない状態となる。この状態においては、センサ回路から出力されている信号がセンサ増幅回路で途絶えてしまう。
【0006】
磁気センサなどのセンサ素子を用いたセンサ回路は、たとえば、電気自動車(Electric Vehicle:EV)あるいはハイブリッド車両(Hybrid Vehicle:HV)などの電動車両における電流センサとして用いられることがある。たとえば、このような用途においては、車両の操作性および安全性の観点から、センサ信号に追従して、途切れることなく、信号を出力できるセンサ増幅回路が必要とされる。しかしながら、従来のオートゼロ回路に関する技術では、そのようなセンサ増幅回路を提供することができなかった。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、オートゼロ回路に関する技術を利用したオフセット補償を実現しつつも、センサ信号を途切れることなく出力可能なセンサ増幅回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るセンサ増幅回路は、センサ回路からの出力信号を増幅するためのセンサ増幅回路であって、出力信号を増幅する演算増幅器と、演算増幅器の入力オフセット電圧を低減させるオフセット補償回路とを備え、オフセット補償回路は、第1オートゼロ回路および第2オートゼロ回路を含み、第1オートゼロ回路および第2オートゼロ回路の各々は、入力オフセット電圧をキャンセルするための補償信号をサンプリングするゼロフェーズと、補償信号により入力オフセット電圧をキャンセルした状態で演算増幅器に出力信号を増幅させる増幅フェーズとで動作するように構成され、オフセット補償回路は、第1オートゼロ回路が増幅フェーズで動作し、第2オートゼロ回路がゼロフェーズで動作する第1モードと、第1オートゼロ回路がゼロフェーズで動作し、第2オートゼロ回路が増幅フェーズで動作する第2モードとに切り替わるように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、オートゼロ回路に関する技術を利用したオフセット補償を実現しつつも、センサ信号を途切れることなく出力可能なセンサ増幅回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】センサ増幅回路100を用いたセンサシステム10の概略構成図である。
【
図2】1組のオートゼロ回路111,112で構成されたオフセット補償回路110の具体例を説明するための図である。
【
図3】
図2に示されるオートゼロ回路111,112の詳細を説明するための図である。
【
図4】オートゼロ回路111,112のスイッチ動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】オフセット補償回路110の第1モードおよび第2モードを説明するための図である。
【
図6】入力端子T1,T2への入力信号の一例を示す図である。
【
図7】オートゼロ回路111から出力される信号の一例を示す図である。
【
図8】オートゼロ回路112から出力される信号の一例を示す図である。
【
図9】オフセット補償回路110から出力される信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
(センサシステムの概要)
図1は、センサ増幅回路100を用いたセンサシステム10の概略構成図である。
図1を参照して、センサシステム10は、センサ回路50およびセンサ増幅回路100を含む。
【0013】
センサ回路50は、4つのセンサ素子51~54がブリッジ接続された構成を有している。センサ素子51~54の各々は、検出される磁界に応じて抵抗値が変化する磁気センサである。センサ素子51~54の各々は、たとえば、トンネル型磁気抵抗(TMR)素子である。なお、検出される物理量に応じて抵抗値が変化する素子であれば、他の抵抗素子をセンサ素子51~54として用いてもよい。
【0014】
センサ素子51,52は、一対の電源端子5a,5bの間に直列に接続されている。また、センサ素子53,54も、一対の電源端子5a,5bの間に直列に接続されている。センサ回路50は、電源端子5a,5bに所定の電圧が印加されることによって動作し、検出された磁界に応じて、一対の信号出力端子5c,5dに電圧差を生じさせる。信号出力端子5cは、センサ素子51とセンサ素子52との接続ノードであり、信号出力端子5dは、センサ素子53とセンサ素子54との接続ノードである。
【0015】
信号出力端子5c,5dは、センサ増幅回路100の入力端子T1,T2にそれぞれ接続される。すなわち、センサ回路50の一対の出力信号の差電圧は、センサ増幅回路100の入力として与えられる。以下、センサ回路50から出力される信号を「センサ信号」とも称する。
【0016】
センサ増幅回路100は、たとえば、集積回路(IC:Integrated Circuit)により構成される。センサ増幅回路100は、入力端子T1,T2に加えて、出力端子T3と、オフセット補償回路110と、演算増幅器181と、増幅器182と、バッファ183と、抵抗R1,R2と、可変抵抗R3とを備える。演算増幅器181は、センサ回路5からの出力信号を増幅する演算増幅器の一例である。
【0017】
オフセット補償回路110は、計装アンプにより構成される。オフセット補償回路110は、入力端子T1,T2と、演算増幅器181の入力端子との間に配置されている。オフセット補償回路110は、センサ増幅回路100に生じる直流動作点のズレを補償するためのオフセット補償を行う。センサ増幅回路100に生じる直流動作点のズレとは、センサ増幅回路100自体が有する入力オフセット電圧である。
【0018】
オフセット補償回路110により、センサ増幅回路100自体が有する入力オフセット電圧が補償される。しかしながら、センサシステム全体で考えた場合、センサ回路50に関する補償機能も必要とされる。
【0019】
センサ回路50は、たとえば、車載用の電流センサとして用いられる。センサ回路50がインバーターやBMS(Battery Motor System)の電流を検知するデバイスとして用いられる場合、センサ回路50には、高精度なセンシング機能が要求される。しかしながら、個々のセンサ回路50のデバイス特性にはバラツキが存在する。センサ回路50のデバイス特性のバラツキを低減するため、センサ増幅回路100は、オフセット補償回路110とは別に、様々な補償機能を備える。以下、その補償機能を含めて、
図1に示されるセンサ増幅回路100の構成を説明する。
【0020】
センサ回路50の一対の出力信号の差電圧は、入力端子T1,T2を介してオフセット補償回路110に入力される。入力オフセット電圧は、演算増幅器181の入力で発生する。演算増幅器181は、センサ回路50からセンサ信号として入力された差電圧のみならず入力オフセット電圧も増幅する。このため、演算増幅器181の出力電圧には、増幅された入力オフセット電圧が誤差として重畳される。オフセット補償回路110は、入力オフセット電圧をキャンセルすることにより、その誤差を低減させる。
【0021】
演算増幅器181の出力端子は、増幅器182の入力端子に接続されている。増幅器182の出力端子は、バッファ183の入力端子に接続されている。バッファ183の出力端子は、センサ増幅回路100の出力端子T3に接続されている。
【0022】
演算増幅器181の出力端子と、接地電位との間には、電圧V1が印加される。図示を省略する可変電圧回路によって、電圧V1の電圧値が調整される。電圧V1を含む回路によって、オフセット温度特性補償回路130が構成される。センサ回路50は、センサ増幅回路100と別に入力オフセット電圧を有する。センサ回路50の入力オフセット電圧は、温度の影響を受けて変動する。オフセット温度特性補償回路130は、たとえば、温度センサ(図示省略)の検出値に基づいて電圧V1を変化させることにより、センサ回路50の入力オフセット電圧を補償する。
【0023】
電圧V1の高電位側と、演算増幅器181の出力端子との間には、抵抗R1,R2が直列接続されている。抵抗R1,R2は分圧抵抗として機能する。演算増幅器181からの出力信号を分圧した信号は、オフセット補償回路110に入力される。
【0024】
抵抗R1,R2を含む回路によって、利得補償回路140が構成されている。センサ回路50の感度にはバラつきがある。このため、製造されたセンサ回路50毎に磁界レンジがバラつく。利得補償回路140は、製造された各センサ回路50の磁界レンジを均一にするため、センサ回路50の感度を補償する。利得補償回路140の抵抗R1によって、センサ回路50の感度を補償するための利得が微調整され、抵抗R2によって、センサ回路50の感度を補償するための利得が粗調整される。微調整および粗調整のための抵抗R1,R2の抵抗値の比率は、必要に応じて様々に調整され得る。
【0025】
増幅器182の出力端子と入力端子との間には、可変抵抗R3を含む帰還回路が構成されている。可変抵抗R3を含む帰還回路により、リニアリティ補償回路150が構成される。リニアリティ補償回路150は、センサ信号の非線形歪みを補償する。なお、リニアリティ補償回路150の位置と、利得補償回路140の位置とを入れ替えてもよい。要するに、センサ増幅回路100全体として、必要なリニアリティ補償および利得補償が実行されるのであれば、リニアリティ補償回路150および利得補償回路140が配置される箇所は、
図1に示される箇所に限られない。
【0026】
センサ増幅回路100は、感度温度特性補償回路120をさらに備える。感度温度特性補償回路120は、センサ回路50に接続されている。感度温度特性補償回路120は、温度の影響を受けて変動するセンサ素子51~54の感度を補償する。
【0027】
センサ回路50からセンサ増幅回路100の入力端子T1,T2に入力されたセンサ信号は、オフセット補償回路110、演算増幅器181、増幅器182、およびバッファ183を経て、増幅信号としてセンサ増幅回路100の出力端子T3から出力される。
【0028】
演算増幅器181、およびオフセット補償回路110に含まれる演算増幅器191,192を、1つの演算増幅器とみなすことができる。この場合、その演算増幅器に抵抗R1,R2の信号がフィードバックされていることになる。したがって、その演算増幅器と、抵抗R1,R2の信号をフィードバックさせる経路とにより、1つの非反転増幅回路が構成される。この非反転増幅回路は、オフセット補償回路110によりオフセット補償をしつつ、R1,R2の比率で定められる増幅度に応じてセンサ信号を増幅する。
【0029】
オフセット補償回路110は、1組のオートゼロ回路を含んで構成される。1組のオートゼロ回路は、入力端子T1,T2と演算増幅器181との間に並列接続されている。
図1では、1組のオートゼロ回路が、演算増幅器191,192、4つのスイッチSWA、および4つのスイッチSWBによって概念的に表されている。演算増幅器191および4つのスイッチSWAにより一方のオートゼロ回路が構成され、演算増幅器192および4つのスイッチSWBにより他方のオートゼロ回路が構成される。
【0030】
オートゼロ回路は、ゼロフェーズと増幅フェーズとの2つの動作フェーズを有する。オートゼロ回路は、ゼロフェーズと増幅フェーズとに動作フェーズを交互に切り替えて動作する。ゼロフェーズでは、入力オフセット電圧が測定される。増幅フェーズでは、入力オフセット電圧がキャンセルされた状態でセンサ信号が増幅される。ゼロフェーズにおいては、入力および出力共に他の回路からオートゼロ回路が切り離された状態となる。このため、ゼロフェーズでは、センサ信号を増幅することができない。このように、オートゼロ回路のオフセット補償は、離散的に実行される。
【0031】
仮に、オフセット補償回路110を1つのオートゼロ回路で構成すると、ゼロフェーズでは、センサ回路50からのセンサ信号がセンサ増幅回路100内で途切れる。このことは、センサ信号の連続性が重要な局面において、問題を発生させる。
【0032】
そこで、本実施の形態においては、1組のオートゼロ回路によって、オフセット補償回路110が構成されている。オフセット補償回路110は、4つのスイッチSWAと4つのスイッチSWBとを交互にオンとオフとに切り替える。これにより、1組のオートゼロ回路のうちの一方がゼロフェーズで動作しているとき、他方が増幅フェーズで動作する。このように、オフセット補償回路110は、いわば、「Ping-Pong」方式によって、1組のオートゼロ回路を動作させる。
【0033】
演算増幅器191は、4つのスイッチSWAがオンのとき、入力端子T1,T2および演算増幅器181と接続される。このとき、演算増幅器191を含んで構成されるオートゼロ回路は、増幅フェーズで動作する。演算増幅器191は、4つのスイッチSWAがオフのとき、入力端子T1,T2および演算増幅器181と切り離される。このとき、演算増幅器191を含んで構成されるオートゼロ回路は、ゼロフェーズで動作する。
【0034】
演算増幅器192は、4つのスイッチSWBがオンのとき、入力端子T1,T2および演算増幅器181と接続される。このとき、演算増幅器192を含んで構成されるオートゼロ回路は、増幅フェーズで動作する。演算増幅器192は、4つのスイッチSWBがオフのとき、入力端子T1,T2および演算増幅器181と切り離される。このとき、演算増幅器192を含んで構成されるオートゼロ回路は、ゼロフェーズで動作する。
【0035】
このように、オフセット補償回路110は、4つのスイッチSWAと4つのスイッチSWBとを交互にオンとオフとに切り替えることにより、1組のオートゼロ回路の一方が増幅フェーズで動作しているとき、他方がゼロフェーズで動作するように制御する。オフセット補償回路110によれば、連続的に入力されるセンサ信号に対して途切れることなくオフセット補償をしつつ、演算増幅器181から増幅信号を出力させることが可能になる。
【0036】
演算増幅器181の入力側に代えて、増幅器182の入力側にオフセット補償回路110を設けることも考えられる。増幅器182にも入力オフセット電圧が存在するからである。しかし、増幅器182は、演算増幅器181に比べると、オフセット補償をする必要性に乏しい。なぜなら、増幅器182は、演算増幅器181のように信号を大幅に増幅することを目的として設計されているのではなく、リニアリティ補償のために信号の波形を補正することを目的として設計されているからである。
【0037】
増幅器182は、信号の波形を補正することを目的として設計されているため、増幅器182の増幅率は、演算増幅器181の増幅率に比べて極めて低い。したがって、増幅器182において入力オフセット電圧が増幅されたとしても、増幅信号に対する入力オフセット電圧の影響は無視できる程度に小さい。バッファ183についても同様の理由により、そこにオフセット補償回路110を設ける技術的意義は小さい。
【0038】
本実施の形態においては、センサ信号を大幅に増幅することを目的として設計された演算増幅器181にオフセット補償回路110を設けている。したがって、本実施の形態によれば、入力オフセット電圧によって信号の精度が低下することを効果的に防止することができる。
【0039】
(オフセット補償回路110の説明)
次に、
図2および
図3を用いて、オフセット補償回路110の詳細を説明する。
図2は、1組のオートゼロ回路111,112で構成されたオフセット補償回路110の具体例を説明するための図である。
図3は、
図2に示されるオートゼロ回路111,112の詳細を説明するための図である。
【0040】
図2に示されるように、オートゼロ回路111,112は、電流フィードバック計装増幅回路(CFIA: Current Feedback Instrumentation Amplifier)で構成されている。オフセット補償回路110は、上記のとおり、「Ping-Pong」方式によって、オートゼロ回路111,112を動作させる。以下、オートゼロ回路111,112をまとめて「Ping-Pong回路」と称する場合がある。
【0041】
図3に示されるように、オートゼロ回路111,112は、共通の電流フィードバック計装増幅回路で構成されており、その電流フィードバック計装増幅回路は、複数の電流出力アンプ(OTA: Operational Transconductance Amplifier)161~163を含んで構成されている。
【0042】
より具体的には、オートゼロ回路111,112は、電流出力アンプ161~163と、スイッチSW1a~SW1fと、スイッチSW2a~SW2fと、キャパシタCazとを含む。以下、スイッチSW1a~SW1fを「スイッチSW1」と総称する場合があり、スイッチSW2a~SW2fを「スイッチSW2」と総称する場合がある。
【0043】
オートゼロ回路111,112は、共通の構成を有している。しかしながら、
図2に示されるように、演算増幅器181への接続形態および利得補償回路140への接続形態がオートゼロ回路111とオートゼロ回路112とで異なる。そこで、はじめに、そのような接続形態を含めてオートゼロ回路111の回路構成および回路動作について説明する。
【0044】
(オートゼロ回路111の回路構成)
オートゼロ回路111において、電流出力アンプ161の非反転入力端子とノードN1との間にスイッチSW1aが配置されている。ノードN1は、入力端子T1と接続されている(
図2参照)。電流出力アンプ161の反転入力端子とノードN2との間にスイッチSW1bが配置されている。ノードN2は、入力端子T2と接続されている(
図2参照)。
【0045】
ノードN10とノードN11との間にスイッチSW2aとスイッチSW2bとが直列に配置されている。スイッチSW2aとスイッチSW2bとの間には、参照電圧Vrefが印加されている。ノードN10は電流出力アンプ161の非反転入力端子に接続され、ノードN11は電流出力アンプ161の反転入力端子に接続されている。
【0046】
電流出力アンプ162の非反転入力端子とノードN3との間にスイッチSW1eが配置されている。ノードN3は、オフセット温度特性補償回路130を介して、抵抗R1と接地電位とを接続している(
図2参照)。電流出力アンプ162の反転入力端子とノードN4との間にスイッチSW1fが配置されている。ノードN4は、抵抗R1と抵抗R2とを接続している(
図2参照)。
【0047】
ノードN12とノードN13との間にスイッチSW2cとスイッチSW2dとが直列に配置されている。スイッチSW2cとスイッチSW2dとの間には、参照電圧Vrefが印加されている。ノードN12は電流出力アンプ162の非反転入力端子に接続され、ノードN13は電流出力アンプ162の反転入力端子に接続されている(
図3参照)。
【0048】
電流出力アンプ161の反転出力端子とノードN5との間にスイッチSW1cが配置されている。ノードN5は、演算増幅器181の反転入力端子と接続されている(
図2参照)。電流出力アンプ161の非反転出力端子とノードN6との間にSW1dが配置されている。ノードN6は、演算増幅器181の非反転入力端子と接続されている(
図3参照)。
【0049】
電流出力アンプ162の反転出力端子と電流出力アンプ163の反転出力端子とが接続されている。電流出力アンプ162の非反転出力端子と電流出力アンプ163の非反転出力端子とが接続されている。電流出力アンプ162の反転出力端子と電流出力アンプ163の反転出力端子とを接続するノードN19は、ノードN16と接続されている。ノードN16は、電流出力アンプ161の非反転出力端子と接続されている。電流出力アンプ162の非反転出力端子と電流出力アンプ163の非反転出力端子とを接続するノードN18は、ノードN14と接続されている。ノードN14は、電流出力アンプ161の反転出力端子と接続されている。
【0050】
電流出力アンプ163の非反転入力端子と反転入力端子との間には、キャパシタCazが接続されている。キャパシタCazは、ノードN20によって電流出力アンプ163の非反転入力端子と接続されている。キャパシタCazは、ノードN21によって電流出力アンプ163の反転入力端子と接続されている。ノードN20とノードN17との間にスイッチSW2eが配置されている。ノードN17は、SW1dと接続されている。ノードN21とノードN15との間にスイッチSW2fが配置されている。ノードN15は、SW1cと接続されている。
【0051】
(オートゼロ回路111の回路動作)
次に、オートゼロ回路111の回路動作を説明する。オートゼロ回路111は、センサ増幅回路100内において供給される所定のクロック信号に基づいて、スイッチSW1(SW1a~SW1f)と、スイッチSW2(SW2a~SW2f)とを交互にオフオンする。
【0052】
オートゼロ回路111は、SW1がオフし、かつ、SW2がオンしているとき、入力端子T1,T2、演算増幅器181、オフセット温度特性補償回路130、および利得補償回路140を含むすべての他の回路から切り離された状態となる。このとき、オートゼロ回路111は、外部からの信号を受け付けることができず、また、外部へ信号を出力することができない。
【0053】
この状態において、オートゼロ回路111は、ゼロフェーズで動作する。ゼロフェーズにおいて、オートゼロ回路111の入力オフセット電圧がキャパシタCazにチャージされる。これにより、オートゼロ回路111の入力オフセット電圧をキャンセルするための補償信号がキャパシタCazにサンプリングされる。
【0054】
オートゼロ回路111は、SW2がオフし、かつ、SW1がオンしているとき、入力端子T1,T2、演算増幅器181、オフセット温度特性補償回路130、および利得補償回路140と接続された状態となる。この状態において、オートゼロ回路111は、増幅フェーズで動作する。増幅フェーズでは、入力端子T1,T2からのセンサ信号がオートゼロ回路111に入力され、センサ信号がオートゼロ回路111から出力される。
【0055】
増幅フェーズでは、キャパシタCazにチャージされた電圧とオートゼロ回路111の入力オフセット電圧とが相殺される。このため、増幅フェーズでは、入力オフセット電圧の影響を受けていない増幅信号が出力される。このように、オートゼロ回路111は、増幅フェーズにおいて、補償信号により入力オフセット電圧をキャンセルした状態で演算増幅器181にセンサ信号を増幅させる。
【0056】
(オートゼロ回路112の回路構成および回路動作)
以上、
図2および
図3を参照して、オートゼロ回路111について説明した。オートゼロ回路112は、
図3において括弧書きで示されるように、SW1eと接続されるノードがノードN4である点、SW1fと接続されるノードがノードN3である点、SW1cと接続されるノードがノードN6である点、SW1dと接続されるノードがノードN5である点、を除いて、オートゼロ回路111と同様の回路構成を有している。そのため、ここでは、これ以上にオートゼロ回路112の回路構成を説明しない。
【0057】
オートゼロ回路112は、オートゼロ回路111と同様に、所定のクロック信号に基づいて、スイッチSW1とスイッチSW2とを交互にオフオンする。これにより、オートゼロ回路112の動作するフェーズがゼロフェーズと増幅フェーズとに交互に切り替わる。ただし、オートゼロ回路112は、オートゼロ回路111がゼロフェーズで動作しているときに増幅フェーズで動作し、オートゼロ回路111が増幅フェーズで動作しているときにゼロフェーズで動作する。
【0058】
このため、オートゼロ回路111,112を有するオフセット補償回路110は、連続的に入力されるセンサ信号に対して途切れることなくオフセット補償をしつつ、演算増幅器181から増幅信号を出力させることが可能になる。
【0059】
なお、オートゼロ回路111,112のいずれが先にゼロフェーズで動作してもよい。本実施の形態において、オートゼロ回路111,112の一方がゼロフェーズで動作しているとき、他方が増幅フェーズで動作していればよい。
【0060】
図4は、オートゼロ回路111,112のスイッチ動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4に示されるように、オートゼロ回路111およびオートゼロ回路112において、SW1とSW2とが交互にオフオンする。特に、オートゼロ回路111においてSW1がオフし、かつ、SW2がオンしているときには、オートゼロ回路112においてSW1がオンし、SW2がオフする。逆に、オートゼロ回路111においてSW1がオンし、かつ、SW2がオフしているときには、オートゼロ回路112においてSW1がオフし、SW2がオンする。
【0061】
これにより、オートゼロ回路111,112により構成されるPing-Pong回路では、一方のオートゼロ回路が増幅フェーズで動作しつつ、他方のオートゼロ回路がゼロフェーズで動作することが繰り返される。
【0062】
なお、
図4に示されるスイッチ動作によってオートゼロ回路111,112を交互に増幅フェーズとゼロフェーズとに動作させることができれば、SW1のオンを継続する時間とSW2のオンを継続する時間とを異ならせてもよい。
【0063】
図5は、オフセット補償回路110の第1モードおよび第2モードを説明するための図である。
図5に示されるように、オフセット補償回路110は、第1モードと第2モードとに補償モードを切り替えることができる。第1モードでは、オートゼロ回路111が増幅フェーズで動作し、オートゼロ回路112がゼロフェーズで動作する。第2モードでは、オートゼロ回路111がゼロフェーズで動作し、オートゼロ回路112が増幅フェーズで動作する。オフセット補償回路110は、第1モードと第2モードとに補償モードを切り替えることを繰り返す。
【0064】
(シミュレーション)
次に、
図6~
図9を用いて、センサ増幅回路100を用いた信号処理のシミュレーション結果について説明する。
図6は、入力端子T1,T2への入力信号の一例を示す図である。
【0065】
図6において、「Vin-」は、入力端子T1に入力される基準信号を示し、「Vin+」は、入力端子T2に入力される信号を示している。本シミュレーションを実行した試験者は、
図6に示される信号をセンサ増幅回路100に入力し、オートゼロ回路111およびオートゼロ回路112のそれぞれの出力信号を計測した。
【0066】
本シミュレーションにおいて、試験者は、入力端子T2に100Hzの信号を入力した。また、オートゼロ回路111、112のフェーズを切り替えるための信号として、試験者は、1.0kHzのクロック信号をオートゼロ回路111,112に入力した。
【0067】
図7は、オートゼロ回路111から出力される信号の一例を示す図である。
図8は、オートゼロ回路112から出力される信号の一例を示す図である。
【0068】
図7および
図8に示されるように、オートゼロ回路111,112は、クロック信号によって定まる所定の時間幅Taで、入力信号に対応する増幅信号を出力する状態と、入力信号に対応する増幅信号を出力しない状態とに切り替わる。入力信号に対応する増幅信号が出力される状態は、増幅フェーズに対応する。入力信号に対応する増幅信号が出力されない状態は、ゼロフェーズに対応する。オートゼロ回路112は、オートゼロ回路111が増幅信号を出力している期間t1~t2において、増幅信号を出力せず、オートゼロ回路111が増幅信号を出力しない期間t2~t3において、増幅信号を出力する。
【0069】
図9は、オフセット補償回路110から出力される信号の一例を示す図である。
図9において、「Vin+」は、入力端子T2に入力される信号を示し、「OUT」は、オフセット補償回路110から出力される信号を示している。オフセット補償回路110から出力される信号「OUT」は、オートゼロ回路111の出力信号とオートゼロ回路112の出力信号とを重畳させることによって得られる信号である。
【0070】
図9から理解されるとおり、本シミュレーションにおいては、連続的に入力される「Vin+」に対して、オフセット補償回路110から出力される信号「OUT」の連続性が維持されていた。オフセット補償回路110に含まれるオートゼロ回路111,112は、上述のとおり、Ping-Pong方式で動作する。このため、オフセット補償回路110からは、
図9に示されるように、連続した波形の出力信号が得られる。
【0071】
なお、今回のシミュレーションにおいて、オフセット補償機能を有するセンサ増幅回路100は、オフセット補償機能を有しないセンサ増幅回路と比較して、オフセットを1/20以下に低減することができた。
【0072】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、オートゼロ回路に関する技術を利用したオフセット補償を実現しつつも、センサ信号を途切れることなく出力可能なセンサ増幅回路100を提供することができる。また、本実施の形態によれば、オフセット補償回路110、感度温度特性補償回路120、オフセット温度特性補償回路130、利得補償回路140、およびリニアリティ補償回路150によって、センサ信号を精度良く増幅することが可能なセンサ増幅回路100を提供することができる。
【0073】
本実施の形態では、オフセット補償回路110がPing-Pong回路で実現される計装アンプで構成されている。これにより、回路のオフセット成分を低減させたセンサ増幅回路100を提供することができる。また、本実施の形態によれば、オフセット成分の影響が極めて低減された高精度なセンサシステム10を実現できる。
【0074】
特に、本実施の形態によれば、オフセット補償回路110が有するPing-Pong回路構成により、センサ増幅回路100のオフセット成分を大幅に、かつ、自動的に低減することができる。このため、センサ回路50を含むセンサシステム10全体として見たとき、設計者は、センサ回路50自体が有するオフセット成分のみを考慮してオフセット補償の調整をすればよい。換言すると、設計者は、センサ増幅回路100のオフセット成分と、センサ回路50自体のオフセット成分とを組み合せてセンサシステム10全体のオフセット補償を検討する必要がない。
【0075】
設計者は、センサ回路50のオフセット成分を測定し、オフセット成分をキャンセルするための設計をしさえすれば、結果的にセンサシステム10全体のオフセット成分をキャンセルすることができる。このように、本実施の形態によれば、オフセット補償の際の調整範囲を狭くすることができるので、設計者による調整作業を単純化することができる。その結果、本実施の形態によれば、調整コストを低減させることができる。また、追加で必要とされる補償回路には、センサ回路50のオフセット成分をキャンセル機能のみを設ければよいため、追加で必要とされる補償回路を小型化することができる。
【0076】
(特徴的な構成)
ここで、これまでに説明した実施の形態における特徴的な構成を示す。センサ増幅回路100は、センサ回路50からの出力信号を入力する第1入力端子(T1)および第2入力端子(T2)と、演算増幅器181の出力端子と接地電位との間に直列に接続された第1抵抗(R1)および第2抵抗(R2)とを備えている。
【0077】
センサ増幅回路100は、演算増幅器181の出力を、接地電位と第1抵抗(R1)とを接続するノードN3からオフセット補償回路110に帰還させる第1帰還経路(ノードN3~オフセット補償回路110へ至る経路)と、演算増幅器181の出力を、第1抵抗(R1)と第2抵抗(R2)とを接続するノードN4からオフセット補償回路110に帰還させる第2帰還経路(ノードN4~オフセット補償回路110に至る経路)とをさらに備えている。
【0078】
電流フィードバック計装増幅回路(111,112)は、複数の電流出力アンプを含んで構成されている。複数の電流出力アンプは、第1電流出力アンプ161と、第2電流出力アンプ162と、第3電流出力アンプ163とを含む。
【0079】
電流フィードバック計装増幅回路(111,112)は、第1電流出力アンプ161の非反転入力端子と、第1入力端子(T1)との間に配置される第1スイッチ(SW1a)と、第1電流出力アンプ161の反転入力端子と、第2入力端子(T2)との間に配置される第2スイッチ(SW1b)と、第1電流出力アンプ161の反転出力端子と、演算増幅器181の入力側の第1端子(非反転入力端子または反転入力端子)との間に配置される第3スイッチ(SW1c)と、第1電流出力アンプ161の非反転出力端子と、演算増幅器181の入力側の第2端子(非反転入力端子または反転入力端子)との間に配置される第4スイッチ(SW1d)と、第2電流出力アンプ162の非反転入力端子と、第1帰還経路および第2帰還経路のうちの一方との間に配置される第5スイッチ(SW1e)と、第2電流出力アンプの反転入力端子と、第1帰還経路および第2帰還経路のうちの他方との間に配置される第6スイッチ(SW1f)とを含む。
【0080】
電流フィードバック計装増幅回路(111,112)は、第1電流出力アンプ161の非反転出力端子と第1スイッチ(SW1a)とを接続するノードN10と、第1電流出力アンプ161の反転出力端子と第2スイッチ(SW1b)とを接続するノードN11との間に直列に配置される第7スイッチ(SW2a)および第8スイッチ(SW2b)と、第2電流出力アンプ162の非反転出力端子と第5スイッチ(SW1e)とを接続するノードN12と、第2電流出力アンプ162の反転出力端子と第6スイッチ(SW1f)とを接続するノードN13との間に直列に配置される第9スイッチ(SW2c)および第10スイッチ(SW2d)と、第3電流出力アンプ163の非反転入力端子と、第1電流出力アンプ161の非反転出力端子と第4スイッチ(SW1d)とを接続するノードN17との間に配置される第11スイッチ(SW2e)と、第3電流出力アンプ163の反転入力端子と、第1電流出力アンプ161の反転出力端子と第3スイッチ(SW1c)とを接続するノードN15との間に配置される第12スイッチ(SW2f)とをさらに含む。
【0081】
電流フィードバック計装増幅回路(111,112)において、第7スイッチ(SW2a)と第8スイッチ(SW2b)との間、および第9スイッチ(SW2c)と第10スイッチ(SW2d)との間の各々に、参照電圧Vrefが印加される。
【0082】
電流フィードバック計装増幅回路(111,112)において、第2電流出力アンプ162の非反転入力端子と第3電流出力アンプ163の非反転入力端子とが接続され、第2電流出力アンプ162の反転入力端子と第3電流出力アンプ163の反転入力端子とが接続され、第2電流出力アンプ162の非反転入力端子と第3電流出力アンプ163の非反転入力端子とを接続するノードN18は、第1電流出力アンプ161の反転出力端子と第3スイッチ(SW1c)とを接続するノードN14(N15)と接続され、第2電流出力アンプ162の反転入力端子と第3電流出力アンプ163の反転入力端子とを接続するノードN19は、第1電流出力アンプ161の非反転出力端子と第4スイッチ(SW1d)とを接続するノードN17(N16)と接続される。
【0083】
キャパシタCazは、第2電流出力アンプ162の非反転入力端子と第11スイッチ(SW2e)とを接続するノードN20と、第2電流出力アンプ162の反転入力端子と第12スイッチ(SW2f)とを接続するノードN21との間に接続される。
【0084】
電流フィードバック計装増幅回路(111,112)は、第1スイッチ(SW1a)~第6スイッチ(SW1f)がオフし、前記第7スイッチ(SW2a)~第12スイッチ(SW2f)がオンすることにより、ゼロフェーズで動作し、第1スイッチ(SW1a)~第6スイッチ(SW1f)がオンし、第7スイッチ(SW2a)~第12スイッチ(SW2f)がオフすることにより、増幅フェーズで動作する。
【0085】
[態様]
(第1項)一態様に係るセンサ増幅回路は、センサ回路からの出力信号を増幅するためのセンサ増幅回路であって、出力信号を増幅する演算増幅器と、演算増幅器の入力オフセット電圧を低減させるオフセット補償回路とを備え、オフセット補償回路は、第1オートゼロ回路および第2オートゼロ回路を含み、第1オートゼロ回路および第2オートゼロ回路の各々は、入力オフセット電圧をキャンセルするための補償信号をサンプリングするゼロフェーズと、補償信号により入力オフセット電圧をキャンセルした状態で演算増幅器に出力信号を増幅させる増幅フェーズとで動作するように構成され、オフセット補償回路は、第1オートゼロ回路が増幅フェーズで動作し、第2オートゼロ回路がゼロフェーズで動作する第1モードと、第1オートゼロ回路がゼロフェーズで動作し、第2オートゼロ回路が増幅フェーズで動作する第2モードとに切り替わるように構成される。
【0086】
(第2項)第1項に記載のセンサ増幅回路において、第1オートゼロ回路および第2オートゼロ回路の各々は、電流フィードバック計装増幅回路(Current Feedback Instrumentation Amplifier:CFIA)で構成されている。
【0087】
(第3項)第2項に記載のセンサ増幅回路において、電流フィードバック計装増幅回路は、複数の電流出力アンプ(Operational Transconductance Amplifier:OTA)と、補償信号をサンプリングするためのキャパシタとを含む。
【0088】
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載のセンサ増幅回路において、温度の影響を受けて変動するセンサ回路の感度を補償する感度温度特性補償回路と、温度の影響を受けて変動するセンサ回路の入力オフセット電圧を補償するオフセット温度特性補償回路と、センサ回路の利得を補償する利得補償回路と、センサ回路から出力される信号の非線形歪みを補償するリニアリティ補償回路とをさらに備える。
【0089】
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載のセンサ増幅回路において、センサ回路には、4つのセンサ素子がブリッジ接続されており、演算増幅器は、センサ回路からの一対の出力信号の差電圧を増幅する。
【0090】
(第6項)第1項~第5項のいずれか1項に記載のセンサ増幅回路において、センサ回路は、磁気センサ素子を含み、磁気センサ素子は、トンネル型磁気抵抗(Tunneling Magneto-Resistive:TMR)素子により構成される。
【0091】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
5a,5b 電源端子、5c,5d 信号出力端子、10 センサシステム、50 センサ回路、51,52,53,54 センサ素子、100 センサ増幅回路、110 オフセット補償回路、111,112 オートゼロ回路、120 感度温度特性補償回路、130 オフセット温度特性補償回路、140 利得補償回路、150 リニアリティ補償回路、161~163 電流出力アンプ、181,191,192 演算増幅器、182 アンプ、183 バッファ、Caz キャパシタ、N1~N6,N10~N21 ノード、R1,R2 抵抗、R3 可変抵抗、SWA,SWB,SW1,SW1a~SW1f,SW2,SW2a~SW2f スイッチ、T1,T2 入力端子、T3 出力端子、V1 電圧、Vref 参照電圧。