(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048902
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電波反射装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155057
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大一
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】沖田 光隆
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】大戸 琢也
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA01
5J020BA06
5J020BD00
5J020DA10
(57)【要約】
【課題】電波反射装置の反射利得を向上させる。
【解決手段】電波反射装置は、複数の第1パッチ電極と、複数の第1パッチ電極とは異なるサイズを有する複数の第2パッチ電極と、複数の第1パッチ電極及び複数の第2パッチ電極に対向し、かつ、複数の第1パッチ電極及び複数の第2パッチ電極と離隔して設けられる接地電極と、複数の第1パッチ電極及び複数の第2パッチ電極と、接地電極との間に設けられる液晶層と、を含み、平面視において、複数の第1パッチ電極及び複数の第2パッチ電極は、第1の方向及び第2の方向に配置され、隣接する2つの第1パッチ電極の中心間の距離を距離W1とした場合、第2パッチ電極は、第1パッチ電極から第1の方向と平行に距離W1/2及び第2の方向と平行に距離W1/2離れた位置に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1パッチ電極と、
前記複数の第1パッチ電極とは異なるサイズを有する複数の第2パッチ電極と、
前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極に対向し、かつ、前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極と離隔して設けられる接地電極と、
前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極と、前記接地電極との間に設けられる液晶層と、を含み、
平面視において、前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極は、第1の方向及び前記第1の方向に交差する第2の方向にマトリクス状に配置され、
隣接する2つの前記第1パッチ電極の中心間の距離を距離W1とした場合、前記第2パッチ電極は、前記第1パッチ電極の位置を基準として、前記第1パッチ電極から前記第1の方向と平行に距離W1/2及び前記第2の方向と平行に距離W1/2離れた位置に配置される、電波反射装置。
【請求項2】
前記複数の第1パッチ電極のうち、一つの前記第1パッチ電極に隣接する4つの前記第2パッチ電極のそれぞれの中心を線で結んで形成された正方形において、
前記正方形の対角線の交点が、前記一つの前記第1パッチ電極の中心と一致する、
請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項3】
前記複数の第2パッチ電極のうち、一つの前記第2パッチ電極に隣接する4つの前記第1パッチ電極のそれぞれの中心を線で結んで形成された正方形において、
前記正方形の対角線の交点が、前記一つの前記第2パッチ電極の中心と一致する、
請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項4】
前記複数の第1パッチ電極のサイズは、前記複数の第2パッチ電極のサイズより大きい、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項5】
平面視において、前記複数の第1パッチ電極の形状及び前記複数の第2パッチ電極の形状は、十字形状である、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項6】
前記複数の第1パッチ電極と前記複数の第2パッチ電極とは市松模様に配置される、
請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項7】
前記複数の第1パッチ電極のうち、少なくとも2つの第1パッチ電極に電気的に接続される第1-1の配線と、
前記複数の第2パッチ電極のうち、少なくとも2つの第2パッチ電極に電気的に接続され、前記第1-1の配線に平行に配置される第1-2の配線と、
前記第1-1の配線及び前記第1-2の配線に電気的に接続される駆動回路と、
をさらに含み、
前記駆動回路は、前記第1-1の配線及び前記第1-2の配線に第1の電圧を供給する、
請求項6に記載の電波反射装置。
【請求項8】
前記複数の第1パッチ電極のうち、前記少なくとも2つの第1パッチ電極とは異なる少なくとも2つの第1パッチ電極に電気的に接続され、前記第1-2の配線に平行に配置される第1-3の配線と、
前記複数の第2パッチ電極のうち、前記少なくとも2つの第2パッチ電極とは異なる少なくとも2つの第2パッチ電極に電気的に接続され、前記第1-3の配線に平行に配置される第1-4の配線と、
をさらに含み、
前記第1-3の配線及び前記第1-4の配線は、前記駆動回路に電気的に接続され、
前記駆動回路は、前記第1-3の配線及び前記第1-4の配線に、前記第1の電圧と異なる第2の電圧を供給する、
請求項7に記載の電波反射装置。
【請求項9】
前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極のそれぞれは、スイッチング素子に電気的に接続されている、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項10】
前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極は、5Gの通信規格に対応する電波の周波数を反射することが可能である、請求項1に記載の電波反射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、反射した電波の進行方向を制御することのできる電波反射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイアンテナ(Phased Array Antenna)装置は、面状に配置された複数のアンテナ素子を含む。フェーズドアレイアンテナ装置では、複数のアンテナ素子のそれぞれに印加する高周波信号の振幅及び位相が調整される。その結果、フェーズドアレイアンテナ装置は、複数のアンテナ素子のそれぞれが固定された状態で、アンテナの指向性を制御することができる。
【0003】
複数のアンテナ素子のそれぞれに印加する高周波信号の振幅及び位相を調整するために、フェーズドアレイアンテナ装置は移相器を必要とする。例えば、特許文献1は、液晶の配向状態による誘電率の変化を利用した移相器を用いたフェーズドアレイアンテナ装置を開示している。
【0004】
特許文献1に示されるフェーズドアレイアンテナ装置のアンテナ素子は、複数のストリップ配線と、複数のストリップ配線と対向する平面電極と、複数のストリップ配線と平面電極との間に設けられた液晶層と、を含む。複数のストリップ配線には、例えば、異なる電圧が印加される。その結果、アンテナ素子ごとに液晶層の液晶の配向が調整されることに基づき生成される反射波を重ね合わせることができるため、電波の位相を変化させることができる。これにより、電波の反射方向を任意の方向に設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通信分野では、5Gと呼ばれる第5世代の通信規格の導入が進んでいる。この通信規格では、例えば、26GHz~28GHzのミリ波帯の周波数が採用されている。5G規格による通信は、ミリ波帯の周波数の採用によって非常に高いスループットを達成することができ、広い帯域幅で伝送することが可能となる。しかし、ミリ波帯の周波数による電波は直進性が高く、障害物を回り込んで伝搬することが難しいという特性がある。そのため都市部などでは5G規格がカバーできる通信エリアが狭くなることが問題となっている。
【0007】
このような問題に対し、障害物を避けて通信エリアを広げるために反射板を用いて電波の伝送方向を変えることが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のフェーズドアレイアンテナ装置では、電波の位相変化量が十分でなく、目標の方向に電波を反射することができない。
【0008】
このような問題に鑑み、本発明の一実施形態は、電波反射装置の反射利得を向上させることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る電波反射装置は、複数の第1パッチ電極と、前記複数の第1パッチ電極とは異なるサイズを有する複数の第2パッチ電極と、前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極に対向し、かつ、前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極と離隔して設けられる接地電極と、前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極と、前記接地電極との間に設けられる液晶層と、を含み、平面視において、前記複数の第1パッチ電極及び前記複数の第2パッチ電極は、第1の方向及び前記第1の方向に交差する第2の方向にマトリクス状に配置され、隣接する2つの前記第1パッチ電極の中心間の距離を距離W1とした場合、前記第2パッチ電極は、前記第1パッチ電極の位置を基準として、前記第1パッチ電極から前記第1の方向と平行に距離W1/2及び前記第2の方向と平行に距離W1/2離れた位置に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電波反射装置に用いられる反射板ユニットセルを示す平面図である。
【
図2】
図1に示されるA1-A2線の切断面を示す断面図である。
【
図3】
図1に示されるB1-B2線の切断面を示す断面図である。
【
図4】
図1に示されるC1-C2線の切断面、又は、C3-C4線の切断面を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る反射板ユニットセルに含まれる第1のサブユニットセルを説明するための図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る反射板ユニットセルに含まれる第2のサブユニットセルを説明するための図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る電波反射装置に用いられる反射板ユニットセルにおいて、パッチ電極と接地電極との間に電圧が印加されない状態を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る電波反射装置に用いられる反射板ユニットセルにおいて、パッチ電極と接地電極との間に電圧が印加された状態を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る電波反射装置によって反射波の進行方向が変化することを模式的に示す図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る電波反射装置の構成を示す平面図である。
【
図11】
図10に示される反射板ユニットセルの構成を示す平面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る電波反射装置における反射板ユニットセルの切断面を示す断面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る電波反射装置の構成を示す。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る電波反射装置に用いられる反射板ユニットセルを示す平面図である。
【
図15】
図14に示されるD1-D2線の切断面を示す断面図である。
【
図16】
図14に示されるE1-E2線の切断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面などを参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0012】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0013】
本願の明細書において、X方向はY方向に交差する。X方向は第1の方向と呼ばれ、Y方向は第2の方向と呼ばれる。
【0014】
本願の明細書において、同一及び一致という表記を用いている場合、同一及び一致には、設計の範囲での誤差が含まれてもよい。
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態では、二軸反射制御可能な電波反射装置100a(
図10)を、
図1~
図12を参照して説明する。
【0016】
<1.反射板ユニットセル>
まず、本発明の第1実施形態に係る電波反射装置100aに用いられる反射板ユニットセル102を説明する。電波反射装置100aは、複数の反射板ユニットセル102を含む。
【0017】
図1は、反射板ユニットセル102を上方(電波が入射する側)から見たときの平面図である。
図2は、
図1に示されるA1-A2線の切断面を示す断面図であり、
図3は
図1に示されるB1-B2線の切断面を示す断面図であり、
図4は、
図1に示されるC1-C2線の切断面、又は、C3-C4線の切断面を示す断面図である。
図5は、反射板ユニットセル102に含まれる第1のサブユニットセル103aを説明するための図であり、
図6は反射板ユニットセル102に含まれる第2のサブユニットセル103bを説明するための図である。
【0018】
図1、
図2、
図3、
図4、
図5又は
図6に示されるように、反射板ユニットセル102は、第1のサブユニットセル103a及び第2のサブユニットセル103bを含む。第1のサブユニットセル103aの一部は、第2のサブユニットセル103bと重なり、第2のサブユニットセル103bの一部は、第1のサブユニットセル103aと重なる。第1のサブユニットセル103aは、対向基板106、接地電極110、第2配向膜112b、液晶層114、第1配向膜112a、パッチ電極108a、アレイ層180及び誘電体基板104を含む。また、第2のサブユニットセル103bは、誘電体基板104、対向基板106、接地電極110、第2配向膜112b、液晶層114、第1配向膜112a、パッチ電極108b、アレイ層180及び誘電体基板104を含む。第1のサブユニットセル103a及び第2のサブユニットセル103bの中で、誘電体基板104は一つの層をなすものとして誘電体層とみなすこともできる。よって、誘電体基板104は、誘電体層と呼ばれる場合がある。詳細は後述されるが、アレイ層180は、パッチ電極108a及び108bのそれぞれに電気的に接続されるスイッチング素子134(
図11)を含む。パッチ電極108aは第1のパッチ電極と呼ばれ、パッチ電極108bは第2のパッチ電極と呼ばれる場合がある。
【0019】
図2~
図4に示されるように、アレイ層180が、誘電体基板104の上に設けられる。パッチ電極108a及び108bが、アレイ層180の上に設けられる。第1配向膜112aが、パッチ電極108a及び108bを覆うように設けられる。接地電極110が対向基板106の上に設けられる。第2配向膜112bが接地電極110を覆うように設けられる。パッチ電極108a及び108bは、接地電極110と対向するように配置される。パッチ電極108a及び108bと、接地電極110との間に液晶層114が設けられる。パッチ電極108a及び108bと液晶層114との間には、第1配向膜112aが介在する。接地電極110と液晶層114との間には、第2配向膜112bが介在する。誘電体基板104の厚さTは、例えば、パッチ電極108の液晶層114側の表面から誘電体基板104のパッチ電極108が設けられる面とは反対側の面までの長さとする。
【0020】
電波反射装置100aにおいて、第1のサブユニットセル103a及び第2のサブユニットセル103bの異なる点は、例えば、パッチ電極108a及びパッチ電極108bのサイズである。
図1に示される例では、パッチ電極108aのサイズは、パッチ電極108bのサイズより大きい。なお、パッチ電極108aのサイズは、パッチ電極108bのサイズより小さくてもよい。本願の明細書では、第1のサブユニットセル103a及び第2のサブユニットセル103bを特に区別しない場合には、単に反射板ユニットセル102と記載する。また、パッチ電極108a及びパッチ電極108bを特に区別する必要がない場合には、単にパッチ電極108と記載する。
【0021】
図5に示されるように、複数の第1のサブユニットセル103aの平面視では、複数のパッチ電極108aは、X方向(第1の方向)、及び、X方向と交差するY方向(第2の方向)にマトリクス状に配置される。X方向に平行な、パッチ電極108aの中心O1と、隣接するパッチ電極108aの中心O1との間の距離は、距離W1である。また、X方向と同様に、Y方向に平行な、パッチ電極108aの中心O1と、隣接するパッチ電極108aの中心O1との距離は、距離W1である。すなわち、複数のパッチ電極108aは、X方向及びY方向に、同じピッチ(距離W1)で配置される。換言すると、複数の第1のサブユニットセル103aは、X方向及びY方向に、同じピッチ(距離W1)で配置される。
【0022】
パッチ電極108aの形状は、例えば、十字形状である。十字形状のX方向に平行なパターンの長さは、十字形状のY方向に平行なパターンの長さと同じであり、その長さは、長さW3である。十字形状のX方向に平行なパターンの幅は、十字形状のY方向に平行なパターンの幅と同じであり、その幅は、幅W4である。また、パッチ電極108aと隣接するパッチ電極108aとの距離は、距離W2である。
【0023】
図6に示されるように、複数の第2のサブユニットセル103bの平面視では、複数のパッチ電極108bは、複数のパッチ電極108aと同様に、X方向及びY方向にマトリクス状に配置される。X方向に平行な、パッチ電極108bの中心O2と、隣接するパッチ電極108bの中心O2との間の距離、及び、Y方向に平行な、パッチ電極108bの中心O2と、隣接するパッチ電極108aの中心O2との距離は、距離W5である。すなわち、複数のパッチ電極108bは、X方向及びY方向に、同じピッチ(距離W5)で配置される。換言すると、複数の第2のサブユニットセル103bは、X方向及びY方向に、同じピッチ(距離W5)で配置される。本明細書において、距離W5は、距離W1と同じである。すなわち、第2のサブユニットセル103bは第1のサブユニットセル103aと同じピッチで配置される。
【0024】
パッチ電極108bの形状は、パッチ電極108aの形状と同様に、例えば、十字形状である。パッチ電極108bでは、十字形状のX方向に平行なパターンの長さは、十字形状のY方向に平行なパターンの長さと同じであり、その長さは、長さW7である。十字形状のX方向に平行なパターンの幅は、十字形状のY方向に平行なパターンの幅と同じであり、その幅は、幅W8である。また、パッチ電極108bと隣接するパッチ電極108bとの距離は、距離W6である。
【0025】
例えば、距離W1は距離W5と同一であり、距離W2は距離W6より短く、幅W3は長さW7より長く、幅W4は幅W8より長い。
【0026】
十字形状は、パッチ電極108aの中心O1、及びパッチ電極108bの中心O2のそれぞれに対して4回回転対称性を有する形状である。パッチ電極108aが、パッチ電極108aの中心O1に対して回転対称性を有することにより、入射する電波の垂直偏波及び水平偏波に対して電波の反射に関する異方性を小さくできる。パッチ電極108aと同様に、パッチ電極108bが、パッチ電極108bの中心O2に対して回転対称性を有することにより、入射する電波の垂直偏波及び水平偏波に対して電波の反射に関する異方性を小さくできる。すなわち、
図1、
図5及び
図6におけるXY平面内に関する垂直偏波及び水平偏波の偏りを抑制して、垂直偏波及び水平偏波を均一に反射させることができる。
【0027】
図1、
図5及び
図6に示されるように、電波反射装置100aの平面視では、複数のパッチ電極108a及び複数のパッチ電極108bは、千鳥格子状(hounds tooth check pattern)、又は、市松模様(Checkered pattern)に配置されている。具体的には、パッチ電極108bは、パッチ電極108aとは、X方向と平行に距離W1/2(W5/2)、及び、Y方向と平行に距離W1/2(W5/2)離れて配置される。また、一つのパッチ電極108aの周辺の4つのパッチ電極108bのそれぞれの中心O2を線で結んで形成された正方形において、当該正方形の対角線の交点が、一つのパッチ電極108aの中心O1と一致する。同様にして、一つのパッチ電極108bの周辺の4つのパッチ電極108aのそれぞれの中心O1を線で結んで形成された正方形において、当該正方形の対角線の交点が、一つのパッチ電極108bの中心O2と一致する。
【0028】
電波反射装置100aでは、一例として、複数のパッチ電極108aの形状及び複数のパッチ電極108bの形状は十字形状であるが、複数のパッチ電極108aの形状及び複数のパッチ電極108bの形状は十字形状に限定されない。例えば、パッチ電極108aの形状及びパッチ電極108bの形状は、X方向及びY方向に同一の長さの正方形を45度回転した多角形であってよく、パッチ電極108aに対して4回回転対称性のひし形及びパッチ電極108bの中心O2に対して4回回転対称性のひし形であってもよい。
【0029】
なお、接地電極110の形状は制限されない。例えば、接地電極110の形状は、パッチ電極108aより大きな面積を有する形状であればよい。電波反射装置100aでは、接地電極110は、対向基板106の液晶層114が設けられる側に、全面又は略全面に配置される。
【0030】
また、パッチ電極108及び接地電極110を形成する材料に制限はない。例えば、パッチ電極108及び接地電極110は、導電性を有する金属、金属酸化物を用いて形成される。
【0031】
また、詳細は後述されるが、誘電体基板104には第1配線118a及び118bが設けられていてもよい。例えば、第1配線118aは、同一列に配置されたパッチ電極108aを接続し、第1配線118bは同一列に配置されるパッチ電極108bを接続する。第1配線118a及び118bは、パッチ電極108a及びパッチ電極108bに制御信号を印加するときに用いることができる。また、第1配線118a及び118bは、パッチ電極108aとパッチ電極108bとを接続するときに用いることができる。
【0032】
反射板ユニットセル102は、電波を所定の方向に反射する反射板120として用いられる。そのため、反射板ユニットセル102は、反射した電波の振幅がなるべく減衰しないことが好ましい。
図2~
図4に示される構造から明らかなように、空中を伝播する電波が反射板ユニットセル102で反射されるとき、電波は誘電体基板104を2回通過する。誘電体基板104は、例えば、ガラス、樹脂などの誘電体材料で形成されることが好ましい。
【0033】
誘電体基板104は、対向基板106と、シール材128(
図10)を用いて、貼り合わされている。間隙が誘電体基板104と対向基板106との間に含まれるように、誘電体基板104は、対向基板106と、対向配置している。液晶層114は、シール材128で囲まれる領域内に設けられる。側面視において、誘電体基板104と対向基板106との間の間隙は、20μm以上100μm以下である。電波反射装置100aでは、誘電体基板104と対向基板106との間の間隙は、例えば、75μmである。誘電体基板104と対向基板106との間には、パッチ電極108、接地電極110、第1配向膜112a、及び第2配向膜112bが設けられる。正確には、誘電体基板104と対向基板106の各々に設けられた第1配向膜112aと第2配向膜112bとの間隙が液晶層114の厚さとなる。なお、図示は省略されるが、誘電体基板104と対向基板106との間には、間隔を一定に保つためのスペーサが設けられてもよい。
【0034】
パッチ電極108には、液晶層114の液晶分子の配向を制御する制御信号が印加される。制御信号は、直流電圧の信号、又は正の直流電圧と負の直流電圧とが交互に反転する極性反転信号である。接地電極110には、接地又は極性反転信号の中間レベルの電圧が印加される。パッチ電極108に、制御信号が印加されることで液晶層114に含まれる液晶分子の配向状態が変化する。液晶層114には、誘電異方性を有する液晶材料が用いられる。例えば、液晶層114として、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレスティック液晶、ディスコティック液晶を用いる。誘電異方性を有する液晶層114は、液晶分子の配向状態の変化により誘電率が変化する。反射板ユニットセル102は、パッチ電極108に印加される制御信号によって液晶層114の誘電率を変化させることができる。これにより、電波を反射するときに、反射波の位相を遅延させることができる。
【0035】
反射板ユニットセル102が反射する電波の周波数帯は、超短波(VHF:Very High Frequency)帯、極超短波(UHF:Ultra-High Frequency)帯、マイクロ波(SHF:Super High Frequency)帯、サブミリ波(THF:Tremendously high frequency)、ミリ波(EHF:Extra High Frequency)帯である。ミリ波とは、例えば、30GHz~300GHzの周波数帯をいう。なお、5Gと呼ばれる第5世代の通信規格の周波数帯域は、26GHz帯~29GHz帯を含んでおり、26GHz帯以上の周波数をまとめてミリ波と呼ぶ場合がある。液晶層114の液晶分子の配向は、パッチ電極108に印加される制御信号に応答して、変化するが、パッチ電極108に入射される電波の周波数にはほとんど追従しない。したがって、反射板ユニットセル102は、電波の影響を受けずに反射する電波の位相を制御することができる。
【0036】
なお、複数のパッチ電極108a及び複数のパッチ電極108bは、5Gの通信規格に対応する電波の周波数を反射することが可能な電極である。当該周波数は、上述のとおり、例えば、ミリ波帯の周波数であり、26GHz以上の周波数であってよく、26GHz以上36GHz以下の範囲の周波数であってよい。
【0037】
図7は、パッチ電極108と接地電極110との間に電圧が印加されない状態(「第1の状態」とする)を示す。
図7は、第1配向膜112a及び第2配向膜112bが水平配向膜である場合を示す。第1の状態における液晶分子116の長軸は、第1配向膜112a及び第2配向膜112bにより、パッチ電極108及び接地電極110の表面に対して水平に配向している。
図8は、パッチ電極108に制御信号(電圧信号)が印加された状態(「第2の状態」とする)を示す。第2の状態において、液晶分子116は電界の作用を受けて長軸がパッチ電極108及び接地電極110の表面に対し垂直に配向する。液晶分子116の長軸が配向する角度は、パッチ電極108に印加する制御信号の大きさ(接地電極とパッチ電極との間の電圧の大きさ)によって、水平方向と垂直方向との中間の方向に配向させることもできる。
【0038】
液晶分子116が正の誘電異方性を有する場合、第1の状態に対して第2の状態の方が、誘電率が大きくなる。また、液晶分子116が負の誘電異方性を有する場合、第1の状態に対して第2の状態の方が見かけ上の誘電率が小さくなる。誘電異方性を有する液晶層114は、可変誘電体層とみなすこともできる。反射板ユニットセル102は、液晶層114の誘電異方性を利用して、反射波の位相を遅らせる(又は遅らせない)ように制御することができる。
【0039】
図9は、任意の第1のサブユニットセル103a及び任意の第1のサブユニットセル103aに隣接する第1のサブユニットセル103aによって反射波の進行方向が変化することを模式的に示す。任意の第1のサブユニットセル103a及び任意の第1のサブユニットセル103aに隣接する第1のサブユニットセル103aは、X方向において隣接している。つまり、任意のパッチ電極108aと任意のパッチ電極108aに隣接するパッチ電極108aとは、異なる第1配線118(第1配線118a、第1配線118b)に接続されている。任意の第1のサブユニットセル103a及び隣接する第1のサブユニットセル103aに同じ位相で電波が入射した場合には、任意の第1のサブユニットセル103a及び隣接する第1のサブユニットセル103aに異なる制御信号(V1≠V2)が印加されているために、任意の第1のサブユニットセル103aによる反射波の位相変化は、隣接する第1のサブユニットセル103aによる反射波の位相変化より大きい。その結果、任意の第1のサブユニットセル103aで反射した反射波R1の位相と、隣接する第1のサブユニットセル103aで反射した反射波R2の位相が異なり(
図9では、反射波R2の位相が反射波R1の位相より進んでいる)、見かけ上、反射波の進行方向が斜め方向に変化する。なお、電波反射装置100aでは、第1配線を区別する場合には、第1配線118a、第1配線118bのように表し、第1配線を区別しない場合は、第1配線118のように表す。
【0040】
次に、電波反射装置100aにおいて、液晶層の厚さは75μmとし、上述のサイズのパッチ電極108a及び108bを用いて、位相変化量(deg)をシミュレーションした結果について説明する。シミュレーションでは、パッチ電極108a及び108bが
図1に示すように配置された反射板を想定し、シミュレーションは、CST Studio Suite(ダッソー・システムズ株式会社製)を用いて実行された。
【0041】
図示は省略するが、電波反射装置100aでは、一例として、電波の周波数が31GHzにおいて、液晶層に電圧が印加されていない状態の位相を基準とすると、液晶層に電圧が印加された状態における位相変化量が-416degとなることが示された。一方、比較例として、形状が正方形の一種類のパッチ電極を含む電波反射装置を用いて、電波反射装置100aと同様の趣味レーションを実行した結果、位相変化量が-270degとなることが示された。すなわち、電波反射装置100aのように、サイズの異なる十字形状のパッチ電極108a及び108bを用いることは、位相変化量を大きくすることに有効である。また、図示は省略するが、例えば、サイズの異なる十字形状のパッチ電極108a及び108bを用いることによって、パッチ電極108aで起こる共振、及びパッチ電極108bで起こる共振により、ミリ波帯における共振周波数のピーク(反射率が最小となる点)を二つにすることができるため、反射波の振幅の減衰を抑制できるとともに、位相変化量を大きくすることができる。
【0042】
また、
図1、
図5及び
図6に示されるように、電波反射装置100aでは、サイズの異なる十字形状のパッチ電極108a及び108bを用いることによって、パッチ電極108aをX方向及びY方向に距離W1/2離した位置に、パッチ電極108aより小さなサイズのパッチ電極108bを配置することができる。その結果、
図1に示すように、X方向に平行なC1-C2線に沿って、パッチ電極108aの十字の凸部109aと、パッチ電極108bの十字の凸部109bとを交互に配置することができ、Y方向に平行なC3-C4線に沿って、パッチ電極108aの十字の凸部109aと、パッチ電極108bの十字の凸部109bを交互に配置することができる。よって、電波反射装置100aは、比較例のような形状が正方形の一種類のパッチ電極を配置する場合より、反射板120内でのパッチ電極の密度(反射板120内でのパッチ電極の占有率、反射板120内でのパッチ電極が配置された領域とパッチ電極が配置されない領域との比)を高くすることができる。サイズの異なる十字形状のパッチ電極108a及び108bを用いることによって、電波を反射することができる電極の面積が大きくなるため、電波の反射強度を強くすることができる。
【0043】
さらに、
図1、
図5及び
図6に示されるように、複数のパッチ電極108aと複数のパッチ電極108bとは、隣接するように配置されている。反射板ユニットセル102の中心(
図1、
図5及び
図6では、真ん中に配置されたパッチ電極108bの中心O2)に対して、複数のパッチ電極108a及び複数のパッチ電極108bが、2回回転対称又は4回回転対称となるように配置されることが好ましい。複数のパッチ電極108a及び複数のパッチ電極108bが、2回回転対称又は4回回転対称となるように配置されることで、垂直偏波及び水平偏波に対して対称とすることができる。
【0044】
電波反射装置100aでは、一例として、反射板ユニットセル102が、パッチ電極108a及びパッチ電極108bの2種類のパッチ電極を含む例を示したが、パッチ電極は2種類に限定されない。反射板ユニットセル102は、パッチ電極108a及びパッチ電極108bとは異なる第3のパッチ電極(図示は省略)を含んでもよい。ここで、第3のパッチ電極のサイズは、パッチ電極108aのサイズ及びパッチ電極108bのサイズと異なる。例えば、第3のパッチ電極のサイズは、パッチ電極108aのサイズより小さくてよく、パッチ電極108bのサイズより大きく、パッチ電極108aのサイズより小さくてもよい。また、第3のパッチ電極は、パッチ電極108aの形状とパッチ電極108bとの間に配置されてよい。電波反射装置100aが第3のパッチ電極を含む場合には、第3のパッチ電極のサイズ及び配置などが、パッチ電極108a及びパッチ電極108bのサイズ並びに配置などに応じて、適宜調整されることによって、本発明の一実施形態に係る電波反射装置は構成される。
【0045】
以上のように、電波反射装置100aでは、反射板ユニットセル102のパッチ電極のサイズを少なくとも2種類とする。本発明の第1実施形態に係る電波反射装置100aを用いることは、反射波の振幅の減衰の抑制、位相変化量の向上、及び電波の反射強度を強くすることに有効である。電波反射装置100aを用いることによって、複数の電波反射装置100aを組み合わせて空中に伝送経路を形成する場合であっても、電波の減衰を抑制することができるため、通信機器が良好な通信を行うことができる。
【0046】
また、電波反射装置100aでは、パッチ電極108及び接地電極110が透明導電膜を用いて形成され、液晶層114が透光性を有するため、採光性を損なわずに電波を反射することができる。よって、電波反射装置100aは、ビルディングのような高層建築物の窓に設置することができる。その結果、障害物が比較的少ない高所で、直進性の高い電波を所定の方向に反射することが可能となる。よって、電波反射装置100aは、都市部において電波の不感地帯(電波の届かない場所)を解消するために用いることができる。
【0047】
<2.電波反射装置>
次に、反射板ユニットセル102が集積された電波反射装置100aの構成を説明する。電波反射装置100aは、二軸反射制御をすることができる電波反射装置である。
図10は、電波反射装置100aの構成を示す平面図である。
図11は、
図10に示される反射板ユニットセル102を拡大し、反射板ユニットセル102の構成を示す平面図である。
図12は、反射板ユニットセル102の切断面を示す断面図である。
図1~
図9と同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する。
【0048】
「1.反射板ユニットセル」において説明したように、反射板120は、誘電体基板104と対向基板106との間に設けられる。
図10に示されるように、反射板120は複数の反射板ユニットセル102が集積化された構造を有する。反射板ユニットセル102は、第1のサブユニットセル103a及び第2のサブユニットセル103bを含む。例えば、複数の反射板ユニットセル102(複数の第1のサブユニットセル103a及び複数の第2のサブユニットセル103b)は、X方向及びY方向に配置される。第1のサブユニットセル103aは、接地電極110、接地電極110の上に配置された第2配向膜112b、パッチ電極108a、パッチ電極108aの上に配置された第1配向膜112a、アレイ層180、第1配向膜112aと第2配向膜112bとの間に設けられた液晶層(図示は省略)を含む。また、第2のサブユニットセル103bは、接地電極110、接地電極110の上に配置された第2配向膜112b、パッチ電極108b、パッチ電極108bの上に配置された第1配向膜112a、アレイ層180、第1配向膜112aと第2配向膜112bとの間に設けられた液晶層(図示は省略)を含む。パッチ電極108a及び108bは、誘電体基板104の上に配置されたアレイ層180の上に設けられ、接地電極110は対向基板106の上に設けられる。また、誘電体基板104は対向基板106とシール材128を用いて貼り合わされる。液晶層はシール材128の内側の領域に設けられる。
【0049】
反射板ユニットセル102において、パッチ電極108a及び108bが電波の入射面に向くように配置される。接地電極110は平板状である。複数のパッチ電極108a及び108bは、平板状の接地電極110の面内、かつ、シール材128の内側の領域に、マトリクス状に配置される。
【0050】
「1.反射板ユニットセル」において説明したように、電波反射装置100aの平面視では、複数のパッチ電極108a及び複数のパッチ電極108bは、千鳥格子状、又は、市松模様に配置されている。具体的には、パッチ電極108bは、パッチ電極108aとは、X方向と平行に距離W1/2(W5/2)、及び、Y方向と平行に距離W1/2(W5/2)離れて配置される。また、各パッチ電極108aは、各パッチ電極108bとX方向又はY方向において隣接している。
【0051】
誘電体基板104にはY方向に伸びる複数の第1配線118a及び複数の第1配線118bが配設される。第1配線118a及び第1配線118bは、X方向に交互に配設される。複数の第1配線118aのそれぞれは、第2方向に配置される複数のパッチ電極108aと電気的に接続され、複数の第1配線118bのそれぞれは、第2方向に配置される複数のパッチ電極108bと電気的に接続される。反射板120は、第1配線118a及び118bによって接続された一列のパッチ電極アレイがY方向に複数個並べられた構成を有する。
【0052】
また、誘電体基板104にはX方向に伸びる複数の第2配線132a及び複数の第2配線132bが配設される。第2配線132a及び第2配線132bは、Y方向に交互に配設される。複数の第2配線132aのそれぞれは、第2方向に配置される複数のパッチ電極108aと電気的に接続され、複数の第2配線132bのそれぞれは、第2方向に配置される複数のパッチ電極108bと電気的に接続される。反射板120は、第2配線132a及び第2配線132bによって接続された一列のパッチ電極アレイがX方向に複数個並べられた構成を有する。
【0053】
誘電体基板104において、反射板120が設けられる以外の領域を周辺領域122という。周辺領域122には、第1駆動回路124及び端子部126が設けられる。端子部126は、外部回路との接続を形成する領域であり、例えば、図示されない端子部126には、フレキシブルプリント回路が接続される。端子部126には、フレキシブルプリント回路から第1駆動回路124を制御する信号が入力される。
【0054】
反射板120に配設された複数の第1配線118a及び118bは、Y軸方向に延在すると共に、周辺領域122に延在し、第1駆動回路124と接続される。第1駆動回路124は、第1配線118a及び118bを介してパッチ電極108a及び108bに制御信号を出力する。第1駆動回路124は、複数の第1配線118a及び118bのそれぞれに異なる電圧レベルの制御信号を出力することができる。異なる電圧レベルの制御信号は、例えば、第1の電圧レベルの制御信号、及び第2の電圧レベル期間の制御信号である。
【0055】
反射板120に配設されたX方向に延在する複数の第2配線132a及び132bは、X方向に延在すると共に、第2駆動回路130に接続される。第2駆動回路130は、複数の第2配線132a及び132bに走査信号を出力する。
【0056】
図11は、2つのパッチ電極108a及び2つのパッチ電極108b、第1配線118a及び118b、並びに、第2配線132a及び132bの配置を拡大した図を示す。2つのパッチ電極108a及び2つのパッチ電極108bのそれぞれにはスイッチング素子134が設けられる。スイッチング素子134のスイッチング(オン及びオフ)は第2配線132a及び132bに印加される走査信号により制御される。第2配線132aに印加された走査信号に応じて、スイッチング素子134がオンになったパッチ電極108aは、第1配線118aと導通し制御信号が印加される。また、第2配線132bに印加された走査信号に応じて、スイッチング素子134がオンになったパッチ電極108bは、第1配線118bと導通し制御信号が印加される。スイッチング素子134は、例えば、薄膜トランジスタで形成される。このような構成によれば、X方向に配列する複数のパッチ電極108a及び108bを行ごとに選択し、各行に異なる電圧レベルの制御信号を印加することができる。
【0057】
電波反射装置100aは、反射板120に入射された電波を、Y方向に平行な反射軸VRを中心として図面の左右方向に反射波の進行方向を制御することができることに加え、X方向に平行な反射軸HRを中心として図面の上下方向へも反射波の進行方向を制御することができる。すなわち、電波反射装置100aは、Y方向に平行な反射軸VR、及びX方向に平行な反射軸VHを含み、反射軸VRを回転軸とした方向、及び反射軸HRを回転軸とした方向に反射角を制御することができる。
【0058】
なお、
図10に示される電波反射装置100aの例では、Y方向において、第1駆動回路124と遠い側にパッチ電極108aがX方向に平行に配置され、第1駆動回路124と近い側にパッチ電極108bがX方向に平行に配置されている。また、
図10に示される電波反射装置100aの例では、X方向において、第2駆動回路130と遠い側にパッチ電極108aがY方向に平行に配置され、第2駆動回路130と近い側にパッチ電極108aがY方向に平行に配置されている。パッチ電極108a及び108bの配置は
図10で示される配置に限定されない。例えば、第1駆動回路124と遠い側にパッチ電極108bがX方向に平行に配置されてよく、第1駆動回路124と近い側にパッチ電極108aがX方向に平行に配置されてもよい。また、第2駆動回路130と遠い側にパッチ電極108bがY方向に平行に配置されてよく、第2駆動回路130と近い側にパッチ電極108bがY方向に平行に配置されてもよい。電波反射装置100aは、反射軸VRを回転軸とした方向、及び反射軸HRを回転軸とした方向に反射角を制御する構成を含んでいれば、電波反射装置100aの構成に制限はない。
【0059】
図12は、パッチ電極108にスイッチング素子134が接続された反射板ユニットセル102の断面構造の一例を示す。反射板ユニットセル102は、第1のサブユニットセル103a及び第2のサブユニットセル103bを含み、第1のサブユニットセル103aの切断面は、第2のサブユニットセル103bの切断面と同様である。ここでは、第1のサブユニットセル103aの切断面を、主に説明する。スイッチング素子134が誘電体基板104に設けられる。スイッチング素子134はトランジスタである。スイッチング素子134は、第1ゲート電極138、第2ゲート絶縁層146、半導体層142、第2ゲート絶縁層146、及び第2ゲート電極148を積層した構造を含む。第1ゲート電極138と誘電体基板104との間にはアンダーコート層136が設けられていてもよい。第1ゲート絶縁層140と第2ゲート絶縁層146との間に第1配線118aが設けられる。第1配線118aは半導体層142と接するように設けられる。また、第1配線118aを形成する導電層と同一の導電層に、第1接続配線144が設けられる。第1接続配線144は半導体層142と接するように設けられる。第1配線118a及び第1接続配線144の半導体層142に対する接続構造は、一方の配線がトランジスタのソースに接続され、もう一方の配線がドレインに接続された構造を示す。
【0060】
スイッチング素子134を覆うように第1層間絶縁層150が設けられる。第1層間絶縁層150の上に第2配線132aが設けられる。第2配線132aは、第1層間絶縁層150に形成されたコンタクトホールを介して第2ゲート電極148と接続される。なお、図示されないが、第1ゲート電極138と第2ゲート電極148とは半導体層142と重ならない領域で相互に電気的に接続されている。第1層間絶縁層150の上には、第2配線132aと同一の導電層で第2接続配線152が設けられる。第2接続配線152は、第1層間絶縁層150に形成されたコンタクトホールを介して第1接続配線144と接続される。
【0061】
第2配線132a及び第2接続配線152を覆うように第2層間絶縁層154が設けられる。さらに、スイッチング素子134の形成に伴う段差を埋めるように平坦化層156が設けられる。平坦化層156を設けることにより、スイッチング素子134の段差を埋めることができるため、平坦化層156の表面は平坦になる。よって、スイッチング素子134の段差の影響を受けることなく、平坦化層156の平坦な面(表面)の上に、パッチ電極108aを形成することができる。平坦化層156の平坦な表面の上にパッシベーション層158が設けられる。電波反射装置100aでは、アレイ層180は、例えば、アンダーコート層136、第1ゲート電極138を含む導電層、第1ゲート絶縁層140、半導体層142、第1接続配線144を含む導電層、第2ゲート絶縁層146、第2ゲート電極148を含む導電層、第1層間絶縁層150、第2接続配線152を含む導電層、第2層間絶縁層154、平坦化層156、及び、パッシベーション層158、を含む。アレイ層180は、パッシベーション層158、平坦化層156、及び第2層間絶縁層154を貫通するコンタクトホールに設けられるパッチ電極108を形成する導電層を含んでもよい。
【0062】
パッチ電極108はパッシベーション層158の上に設けられる。パッチ電極108は、パッシベーション層158、平坦化層156、及び第2層間絶縁層154を貫通するコンタクトホールを介して第2接続配線152と接続される。パッチ電極108の上に第1配向膜112aが設けられる。
【0063】
対向基板106の上には、
図2~
図4に示される切断面の構造と同様に、接地電極110、第2配向膜112bが設けられる。誘電体基板104のスイッチング素子134及びパッチ電極108aが設けられた面が、対向基板の接地電極110が設けられた面に対向するように配置され、スイッチング素子134及びパッチ電極108aが設けられた面と接地電極110が設けられた面との間に液晶層114が設けられる。誘電体基板104の厚さTは、パッチ電極108aの液晶層114側の表面から誘電体基板104のパッチ電極108が設けられる面とは反対側の面までの長さとすることができる。この場合、パッチ電極108と誘電体基板104との間にある少なくとも1層の絶縁層(アンダーコート層136、第1ゲート絶縁層140、第2ゲート絶縁層146、第1層間絶縁層150、第2層間絶縁層154、平坦化層156、パッシベーション層158)の厚さを考慮に入れることができる。
【0064】
誘電体基板104に形成される各層は以下のような材料を用いて形成される。アンダーコート層136は、例えば、シリコン酸化膜で形成される。第1ゲート絶縁層140、第2ゲート絶縁層146は、例えば、酸化シリコン膜、又は酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造で形成される。半導体層は、アモルファスシリコン、多結晶シリコンのようなシリコン半導体、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムなどの金属酸化物を含む酸化物半導体で形成される。第1ゲート電極138及び第2ゲート電極148は、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)又はこれらの合金で構成されてもよい。第1配線118、第2配線132、第1接続配線144、及び第2接続配線152は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)などの金属材料を用いて形成される。例えば、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/チタン(Ti)の積層構造、又はモリブデン(Mo)/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo)の積層構造で構成されてもよい。平坦化層156は、アクリル、ポリイミドなどの樹脂材料で形成される。パッシベーション層158は、例えば、窒化シリコン膜などで形成される。パッチ電極108a及び接地電極110は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの金属膜、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電膜で形成される。
【0065】
図12に示されるように、第2配線132aをスイッチング素子134として用いるトランジスタのゲートに接続し、第1配線118aを当該トランジスタのソース及びドレインの一方に接続し、パッチ電極108aをソース及びドレインの他方に接続することで、マトリクス状に配列された複数のパッチ電極108aの中から所定のパッチ電極を選択して制御信号を印加することができる。そして、反射板120の中の個々のパッチ電極108aにスイッチング素子134を設けることにより、X方向に平行に横一列に配置されるパッチ電極108aごと、又は、Y方向に平行に縦一列に配置されるパッチ電極108aごとに制御電圧を印加することができる。例えば、反射板120が直立しているとき、左右方向及び上下方向に反射波の反射方向を制御することができる。
【0066】
なお、第2のサブユニットセル103bでは、パッチ電極108a、第1配線118a及び第2配線132aが、パッチ電極108b、第1配線118b及び第2配線132bと置き換えられた構成を含む。
【0067】
<第2実施形態>
第2実施形態では、一例として、一軸反射制御可能な電波反射装置100bを説明する。電波反射装置100bの反射軸RYは、一軸である。電波反射装置100bでは、反射軸RYを回転軸とした方向に反射角を制御することができる。第2実施形態に係る電波反射装置100bは、第1実施形態に係る電波反射装置100aに対して、少なくとも、アレイ層180、複数の第2配線132a及び複数の第2配線132b、並びに、第2駆動回路130を含まない。第2実施形態では、主に、第1実施形態と相違する点を説明する。
【0068】
図13は、第2実施形態に係る電波反射装置100bの構成を示す平面図である。
図14は、電波反射装置100bに用いられる反射板ユニットセル102bを示す平面図である。
図15は、
図14に示されるD1-D2線の切断面を示す断面図であり、
図16は、
図14に示されるE1-E2線の切断面を示す断面図である。
図1~
図12と同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する。
【0069】
図13に示されるように、第2実施形態に係る反射板120は、複数の反射板ユニットセル102bを含む。第2実施形態に係る反射板120は、第1実施形態に係る反射板120の複数の反射板ユニットセル102を、複数の反射板ユニットセル102bに置き換えた構成を含む。
【0070】
図13及び
図14に示されるように、Y方向に配列された複数のパッチ電極108aは第1配線118aに電気的に接続され、Y方向に配列された複数のパッチ電極108bは第1配線118bに電気的に接続される。第2実施形態に係る反射板120では、第1配線118aに電気的に接続された複数のパッチ電極108a、及び第1配線118bに電気的に接続された複数のパッチ電極108bを一組の電圧印加ユニット190aとし、電圧印加ユニット190aがX方向に複数並べられる。第1配線118aは、周辺領域122で、第1配線118bと電気的に接続される。なお、第2実施形態に係る反射板120では、電圧印加ユニット190bは電圧印加ユニット190aと同様の構成を含み、電圧印加ユニット190aと電圧印加ユニット190bとが、X方向に交互に配置される。電圧印加ユニット190aに含まれる第1配線118aは第1-1配線と呼ばれ、電圧印加ユニット190aに含まれる第1配線118bは第1-2配線と呼ばれ、電圧印加ユニット190bに含まれる第1配線118aは第1-3配線と呼ばれ、電圧印加ユニット190bに含まれる第1配線118bは第1-4配線と呼ばれる場合がある。
【0071】
「1.反射板ユニットセル」において説明した反射板120と同様に、第2実施形態に係る反射板120は、誘電体基板104と対向基板106との間に設けられる。
図13及び
図14に示されるように、第2実施形態に係る反射板120は複数の反射板ユニットセル102bが集積化された構造を有する。反射板ユニットセル102と同様に、反射板ユニットセル102bは、第1のサブユニットセル103a及び第2のサブユニットセル103bを含む。
【0072】
図15及び
図16に示されるように、第1のサブユニットセル103aは、接地電極110、接地電極110の上に配置された第2配向膜112b、パッチ電極108a、パッチ電極108aの上に配置された第1配向膜112a、第1配向膜112aと第2配向膜112bとの間に設けられた液晶層114を含む。また、第2のサブユニットセル103bは、接地電極110、接地電極110の上に配置された第2配向膜112b、パッチ電極108b、パッチ電極108bの上に配置された第1配向膜112a、第1配向膜112aと第2配向膜112bとの間に設けられた液晶層(図示は省略)を含む。パッチ電極108a及び108bは誘電体基板104の上に設けられ、接地電極110は対向基板106の上に設けられる。また、誘電体基板104は対向基板106とシール材128を用いて貼り合わされる。液晶層はシール材128の内側の領域に設けられる。
【0073】
反射板ユニットセル102bにおいて、パッチ電極108a及び108bが電波の入射面に向くように配置される。接地電極110は平板状である。複数のパッチ電極108a及び108bは、平板状の接地電極110の面内、かつ、シール材128の内側の領域に、マトリクス状に配置される。
【0074】
第2実施形態に係る反射板120に配設された複数の第1配線118a及び118bは、周辺領域122に延在し、第1駆動回路124と接続される。第1駆動回路124は、第1配線118a及び118bを介してパッチ電極108a及び108bに制御信号を出力する。その結果、反射板120では、X方向及びY方向に配置されたパッチ電極108a及びパッチ電極108bに対し、Y方向に配置されたパッチ電極108a及びパッチ電極108bに制御信号が印加される。
【0075】
電波反射装置100bでは、第1駆動回路124は、第2方向に配列された電圧印加ユニット190a(電圧印加ユニット190b)ごとに制御信号を印加することができる。第2方向に配列された電圧印加ユニット190a(電圧印加ユニット190b)ごとに、反射板120に入射した電波の反射波の反射方向を制御することができる。すなわち、電波反射装置100aでは、第1駆動回路124は、電圧印加ユニット190aと電圧印加ユニット190bとに異なる電圧(第1の電圧と第2の電圧)を印加(供給)することができるため、反射板120に入射した電波の反射波の進行方向をY方向に平行な反射軸VRを中心として図面の左右方向に、制御することができる。
【0076】
一つの電圧印加ユニット190a(電圧印加ユニット190b)に含まれる第2方向に配置される複数のパッチ電極108a及び108bは、第1配線118a及び118bを用いて、周辺領域122で電気的に接続され、電気的に等電位となる。電波反射装置100bでは、
図13に示されるように、パッチ電極108a及びパッチ電極108bを垂直偏波及び水平偏波に対して対称となる形状としてアレイ状に配置し、反射軸RYに平行に配置される複数のパッチ電極108a及び複数のパッチ電極108bを第1配線118a及び第1配線118bで接続することによって、反射板120に入射した電波の反射波の進行方向をY方向に平行な反射軸VRを中心として図面の左右方向に、制御することができる。
【0077】
本発明の一実施形態として例示した電波反射装置及び反射板ユニットの各種構成は相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。また、本明細書及び図面に開示された電波反射装置及び反射板ユニットを基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0078】
本明細書に開示された実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0079】
100a:電波反射装置、100b:電波反射装置、102:反射板ユニットセル、102b:反射板ユニットセル、103a:第1のサブユニットセル、103b:第2のサブユニットセル、104:誘電体基板、106:対向基板、108:パッチ電極、108a:パッチ電極、108b:パッチ電極、109a:凸部、109b:凸部、110:接地電極、112a:第1配向膜、112b:第2配向膜、114:液晶層、116:液晶分子、118:第1配線、118a:第1配線、118b:第1配線、120:反射板、122:周辺領域、124:第1駆動回路、126:端子部、128:シール材、130:第2駆動回路、132:第2配線、132a:第2配線、132b:第2配線、134:スイッチング素子、136:アンダーコート層、138:第1ゲート電極、140:第1ゲート絶縁層、142:半導体層、144:第1接続配線、146:第2ゲート絶縁層、148:第2ゲート電極、150:第1層間絶縁層、152:第2接続配線、154:第2層間絶縁層、156:平坦化層、158:パッシベーション層、180:アレイ層、190a:電圧印加ユニット、190b:電圧印加ユニット