(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048905
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コンクリート輸送ホース
(51)【国際特許分類】
E04G 21/04 20060101AFI20240402BHJP
F16L 9/02 20060101ALI20240402BHJP
F16L 11/08 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E04G21/04 102
F16L9/02
F16L11/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155061
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直希
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】井手 一雄
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
【テーマコード(参考)】
2E172
3H111
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA17
2E172CA22
2E172CA33
2E172CA44
2E172CA47
2E172CA61
3H111AA01
3H111AA02
3H111BA02
3H111BA15
3H111DA23
3H111DA26
3H111DB27
(57)【要約】
【課題】コンクリートの閉塞の恐れがなく、コンクリートの輸送速度を低減して材料分離を抑制できる、コンクリート輸送ホースを提供すること。
【解決手段】コンクリートの打設の際に適用される、コンクリート輸送ホース100であり、ホース本体50と、ホース本体50の内部に張り出して、ホース本体50に取り付けられている支持材61と、支持材61から垂下されている被垂下材70とを有し、被垂下材70は、複数の無端状線材71が相互に回転自在に繋がることにより形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの打設の際に適用される、コンクリート輸送ホースであって、
ホース本体と、
前記ホース本体の内部に張り出して、前記ホース本体に取り付けられている支持材と、
前記支持材から垂下されている、被垂下材とを有し、
前記被垂下材は、複数の無端状線材が相互に回転自在に繋がることにより形成されていることを特徴とする、コンクリート輸送ホース。
【請求項2】
前記支持材が、前記ホース本体の内部を横断している第1支持材であることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート輸送ホース。
【請求項3】
前記支持材が、前記ホース本体の内部を横断せずに張り出している第2支持材であり、
複数の前記第2支持材が、前記ホース本体の内面の周方向に間隔を置いて取り付けられ、各第2支持材から前記被垂下材が垂下していることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート輸送ホース。
【請求項4】
前記支持材が、前記ホース本体の内部を横断している第1支持材と、前記ホース本体の内部を横断せずに張り出している第2支持材とを備え、
複数の前記第2支持材が、前記ホース本体の内面の周方向に間隔を置いて取り付けられており、
前記第1支持材と前記第2支持材からそれぞれ、前記被垂下材が垂下していることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート輸送ホース。
【請求項5】
複数の前記支持材が、前記ホース本体の長手方向に間隔を置いて取り付けられていることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のコンクリート輸送ホース。
【請求項6】
前記支持材から、複数の前記被垂下材が垂下していることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のコンクリート輸送ホース。
【請求項7】
前記支持材が、前記ホース本体の内部において回転軸を中心に回転自在に支持されていることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のコンクリート輸送ホース。
【請求項8】
前記ホース本体は、鋼管と、前記鋼管の端部に取り付けられている可撓性ホースとを備え、
前記鋼管の内部に前記支持材が取り付けられていることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のコンクリート輸送ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート輸送ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施工現場において例えば高所から低所へコンクリートを輸送(圧送)する際には、コンクリートの自由落下に伴って輸送速度が高くなり、落下した際の衝撃やコンクリート輸送ホースの内面への衝突等に起因して、コンクリートの材料分離が生じ易いといった課題がある。
【0003】
この課題を解消するべく、特許文献1には、コンクリート輸送管の途中の少なくとも1箇所に扁平に加工したくびれ部を設け、くびれ部に復元力をもたせるとともに、所定の内圧以上で拡がって他の部分と同じ径になり得る弾性力をもたせた構成を有する、コンクリート輸送管が提案されている。
【0004】
一方、特許文献2には、特許文献1のくびれ部に相当する扁平部を備えたコンクリート打設用扁平ホースが提案されており、このコンクリート打設用扁平ホースは、コンクリートのスランプやスランプフロー、扁平部の扁平率が所定の要件を満たすように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63-12561号公報
【特許文献2】特開2016-183514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載されるコンクリート輸送管やコンクリート打設用扁平ホースは、途中位置にくびれ部や扁平部を設け、コンクリートがくびれ部や扁平部を通過する過程で拡がって他の部分と同じ径になる作用を期待するものであるが、コンクリートには普通コンクリートや流動化コンクリート等、フレッシュな状態でも硬さを含めた性状の異なる様々な種類が存在し、普通コンクリートであっても、粗骨材量や水セメント比等が様々に相違し、従って性状の異なる様々な種類が存在することから、輸送される様々な種類のコンクリートの通過の過程で扁平部等が一律に拡がるように設定することは極めて難しく、扁平部等が所望に拡がらない場合は扁平部等によってコンクリートの輸送が阻害され、コンクリートの閉塞に繋がって打設不能に至るといった恐れがある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、コンクリートの閉塞の恐れがなく、コンクリートの輸送速度を低減して材料分離を抑制できる、コンクリート輸送ホースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明によるコンクリート輸送ホースの一態様は、
コンクリートの打設の際に適用される、コンクリート輸送ホースであって、
ホース本体と、
前記ホース本体の内部に張り出して、前記ホース本体に取り付けられている支持材と、
前記支持材から垂下されている、被垂下材とを有し、
前記被垂下材は、複数の無端状線材が相互に回転自在に繋がることにより形成されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、ホース本体の内部に張り出している支持材から被垂下材が垂下され、複数の無端状線材が相互に回転自在に繋がって被垂下材が形成されていることにより、輸送されるコンクリートが被垂下材に接触した際に、被垂下材は回転しながらコンクリートの輸送速度を低減することから、コンクリートに対して被垂下材から大きな衝撃(もしくは反力)を作用させることなく、コンクリートの輸送速度を効果的に低減し、コンクリートの材料分離を抑制することができる。また、ホース本体の途中に扁平部が設けられていないことから、様々な性状のコンクリートの輸送に際してホース本体が閉塞する恐れもない。
【0010】
ここで、「ホース本体」には、鋼管のみにより形成される形態、鋼管と可撓性ホースのユニット形態等が含まれる。また、「無端状線材」には、線形が真円(リング)やトラック状、多角形状等が含まれ、コンクリートの衝突の際に破損しない剛性を有する鋼製線材や硬質の樹脂製線材等が適用できる。
【0011】
また、本発明によるコンクリート輸送ホースの他の態様において、
前記支持材が、前記ホース本体の内部を横断している第1支持材であることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、支持材がホース本体の内部を横断している第1支持材であることにより、第1支持材から垂下されている被垂下材を、ホース本体の断面の中心やその近傍に配置することが可能になり、ホース本体の内部を通過するコンクリートの輸送速度を効果的に低減することができる。
【0013】
また、本発明によるコンクリート輸送ホースの他の態様において、
前記支持材が、前記ホース本体の内部を横断せずに張り出している第2支持材であり、
複数の前記第2支持材が、前記ホース本体の内面の周方向に間隔を置いて取り付けられ、各第2支持材から前記被垂下材が垂下していることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、支持材がホース本体の内部を横断せずに張り出している複数の第2支持材が、ホース本体の内面の周方向に間隔を置いて取り付けられていることにより、複数の被垂下材をホース本体の内面の近傍に配置することが可能になり、ホース本体の内部を通過するコンクリートの輸送速度を効果的に低減することができる。
【0015】
また、本発明によるコンクリート輸送ホースの他の態様において、
前記支持材が、前記ホース本体の内部を横断している第1支持材と、前記ホース本体の内部を横断せずに張り出している第2支持材とを備え、
複数の前記第2支持材が、前記ホース本体の内面の周方向に間隔を置いて取り付けられており、
前記第1支持材と前記第2支持材からそれぞれ、前記被垂下材が垂下していることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、支持材が第1支持材と第2支持材の双方を備え、従って複数の被垂下材をホース本体の断面の中心やその近傍と、さらに内面の近傍の複数箇所に配置することができるため、ホース本体の内部を通過するコンクリートの輸送速度を、より一層効果的に低減することができる。
【0017】
また、本発明によるコンクリート輸送ホースの他の態様において、
複数の前記支持材が、前記ホース本体の長手方向に間隔を置いて取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、複数の支持材がホース本体の長手方向に間隔を置いて取り付けられていることにより、ホース本体の長さが長い場合には、ホース本体の長手方向の複数箇所に配置されている複数の被垂下材にてコンクリートの輸送速度を低減することができる。
【0019】
ここで、「複数の支持材がホース本体の長手方向に間隔を置いて取り付けられている」には、複数の第1支持材がホース本体の長手方向の異なる位置に取り付けられている形態や、複数の第2支持材が、ホース本体の長手方向の異なる位置に螺旋状に取り付けられている形態、ホース本体の1つの断面においてその周方向に複数の第2支持材が取り付けられて1つのユニットを形成し、ホース本体の長手方向の異なる位置に複数のユニットが取り付けられている形態等を含んでいる。
【0020】
また、本発明によるコンクリート輸送ホースの他の態様は、
前記支持材から、複数の前記被垂下材が垂下していることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、支持材から複数の被垂下材が垂下していることにより、コンクリートの輸送速度の低減効果を一層高めることができる。例えば、第1支持材に対して、複数の被垂下材が間隔を置いて垂下された形態等を挙げることができる。
【0022】
また、本発明によるコンクリート輸送ホースの他の態様は、
前記支持材が、前記ホース本体の内部において回転軸を中心に回転自在に支持されていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、支持材がホース本体の内部において回転軸を中心に回転自在に支持されていることにより、コンクリートとの接触によって被垂下材が回転するのみならず、支持材も回転することから、コンクリートに付与される衝撃をより一層低減しながら、コンクリートの輸送速度を効果的に低減することが可能になる。
【0024】
また、本発明によるコンクリート輸送ホースの他の態様において、
前記ホース本体は、鋼管と、前記鋼管の端部に取り付けられている可撓性ホースとを備え、
前記鋼管の内部に前記支持材が取り付けられていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、ホース本体が鋼管とその端部に取り付けられている可撓性ホースとを備え、鋼管の内部に支持材が取り付けられていることにより、被垂下材が垂下される支持材を剛性のある鋼管に強固に取り付けることができ、可撓性ホースによってホース本体の可撓性を保証してハンドリング性に優れたホース本体を形成できる。
【発明の効果】
【0026】
以上の説明から理解できるように、本発明のコンクリート輸送ホースによれば、コンクリートの閉塞の恐れがなく、コンクリートの輸送速度を低減して材料分離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】コンクリートポンプ車を用いて高所から低所へコンクリートを輸送する方法を説明する図であって、コンクリートポンプ車の備える最前にある圧送管の先端に実施形態に係るコンクリート輸送ホースが取り付けられている状態を示す図である。
【
図2A】実施形態に係るコンクリート輸送ホースのうち、ホース本体を構成する鋼管に第1支持材が取り付けられ、第1支持材から被垂下材が垂下している状態を示す側面図である。
【
図2B】
図2AのB-B矢視図であって、鋼管の内部にある第1支持材を上から見た平面図である。
【
図3】実施形態に係るコンクリート輸送ホースの一例の側面図である。
【
図4】
図2Bに対応する図であって、第1支持材の変形例を示す平面図である。
【
図5】(a)、(b)はいずれも、被垂下材の変形例を示す図である。
【
図6A】実施形態に係るコンクリート輸送ホースのうち、ホース本体を構成する鋼管に第2支持材が取り付けられ、第2支持材から被垂下材が垂下している状態を示す側面図である。
【
図6B】
図6AのB-B矢視図であって、鋼管の内部にある複数の第2支持材を上から見た平面図である。
【
図7A】実施形態に係るコンクリート輸送ホースのうち、ホース本体を構成する鋼管に第1支持材と第2支持材が取り付けられ、第1支持材と第2支持材からそれぞれ被垂下材が垂下している状態を示す側面図である。
【
図7B】
図7AのB-B矢視図であって、鋼管の内部にある第1支持材と複数の第2支持材を上から見た平面図である。
【
図8】コンクリート輸送ホースの性能試験で適用した、ホース試験体の外観を示す図である。
【
図9A】性能試験結果のうち、実施例1,2と比較例の各ホース試験体を用いた際の、打ち込み後のコンクリートの広がり(フロー)に関する試験結果を示す図である。
【
図9B】性能試験結果のうち、実施例1,2と比較例の各ホース試験体を用いた際の、打ち込み後のコンクリートの材料分離の程度の指標となる飛散率に関する試験結果を示す図である。
【
図10】(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例1、実施例2、及び比較例の打ち込み後のコンクリートの広がり状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係るコンクリート輸送ホースの一例について、コンクリートポンプ車を用いて高所から低所へコンクリートを輸送する方法とともに、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0029】
[実施形態に係るコンクリート輸送ホース]
図1乃至
図7を参照して、実施形態に係るコンクリート輸送ホースの一例と、コンクリートポンプ車を用いて高所から低所へコンクリートを輸送する方法の一例について説明する。ここで、
図1は、コンクリートポンプ車を用いて高所から低所へコンクリートを輸送する方法を説明する図であって、コンクリートポンプ車の備える最前にある圧送管の先端に実施形態に係るコンクリート輸送ホースが取り付けられている状態を示す図である。また、
図2Aは、実施形態に係るコンクリート輸送ホースのうち、ホース本体を構成する鋼管に第1支持材が取り付けられ、第1支持材から被垂下材が垂下している状態を示す側面図であり、
図2Bは、
図2AのB-B矢視図であって、鋼管の内部にある第1支持材を上から見た平面図である。さらに、
図3は、実施形態に係るコンクリート輸送ホースの一例の側面図である。
【0030】
まず、
図1を参照して、コンクリートポンプ車を用いて高所から低所へコンクリートを輸送する方法の一例について説明する。
【0031】
図1に一例として示すコンクリートポンプ車10は、車体11と、車体11に対して水平方向及び鉛直方向に旋回自在に装着された第1アーム12と、第1アーム12に対して回動自在に装着された第2アーム13と、第2アーム13に対して回動自在に装着された第3アーム14とを備え、各アームには圧送管15,16,17が支持され、各圧送管15,16,17は相互に連通しながら回動自在に接続されている。
【0032】
最前にある圧送管17の先端には、コンクリート輸送ホース100を構成するホース本体50の端部が嵌め込まれ、ファスナー18により固定されている。コンクリート輸送ホース100は、鋼管20と可撓性ホース30からなるホース本体50を有し、可撓性ホース30の固定端31が鋼管20の端部に嵌め込まれ、例えば番線等の留め具40により固定されている。
【0033】
一方、可撓性ホース30の筒先32は、所定の打設場所まで延びており、コンクリート輸送ホース100にて輸送されたコンクリート(フレッシュコンクリート)が筒先32を介して打設場所に打設される。尚、コンクリートポンプ車には様々な形態があり、圧送管の数や長さ等には多様なバリーションがある。
【0034】
図1に示すように、各圧送管15,16,17を介して輸送(圧送)されたコンクリートは、コンクリート輸送ホース100の内部において自由落下することになるが、この自由落下の過程で輸送速度が高くなり、落下した際の衝撃やコンクリート輸送ホース100の内面への衝突等に起因して、コンクリートの材料分離が生じ易いといった課題がある。コンクリート輸送ホース100は、このようなコンクリートの落下速度を効果的に低減して、材料分離を抑制可能としたホースである。
【0035】
図2Aに示すように、鋼管20は、外径が均一の一般部21の上方に、相対的に径の大きな拡径部22を有しており、この拡径部22に対して圧送管17の先端が嵌め込まれるようになっている。
【0036】
図2Bに示すように、一般部21の長手方向の途中位置において、鋼管20の断面中心を通る仮想直径線が側面に交差する任意の2点にはボルト孔21aが開設されており、鋼管20の内部23を横断しているボルト61(第1支持材の一例)の両端が2つのボルト孔21aを貫通し、鋼管20の外側面において座金62を介してナット63にて締め付けられることにより、鋼管20に対して第1支持材61が固定される。
【0037】
第1支持材61のうち、鋼管20の中心側(中心近傍)の2箇所には、それぞれ被垂下材70が垂下されている。各被垂下材70は、複数の無端状線材71が相互にX2方向に回転自在に繋がることにより形成されている。
【0038】
図示例の無端状線材71はトラック状を呈し、コンクリートの衝突の際に破損しない剛性を有する鋼製線材により形成されている。
【0039】
被垂下材70の最上部にある無端状線材71は第1支持材61に挿通され、無端状線材71の左右を一対の座金62が挟み、ボルト61に螺合する一対のナット63が一対の座金62を挟むことにより、第1支持材61に対して被垂下材70の位置がずれることなく固定される。
【0040】
図3に示すように、可撓性ホース30の上端開口に鋼管20の下端が挿入され、複数本(図示例は2本)の番線40にて双方が固定されることにより、ホース本体50が形成される。ここで、鋼管20と可撓性ホース30を固定する部材は、番線以外にも、2つの半割リングを閉じてリングとした際に双方を固定する締結バンド等であってもよい。
【0041】
可撓性ホース30には、例えば、軟質の塩化ビニールホースやシリコーンホース、PVC(polyvinyl chloride:ポリ塩化ビニル)製のホース、サニーホース(登録商標)等が適用される。
【0042】
ここで、図示を省略するが、ホース本体が長尺の鋼管のみから形成される形態であってもよいが、鋼管20は第1支持材61を強固に固定できる剛性を備えており、可撓性ホース30は様々な方向へその筒先32を向けることができ、軽量でハンドリング性が良好であることから、鋼管20と可撓性ホース30のユニット構造である図示例のホース本体50は好ましい形態である。
【0043】
図3に示すように、上方から下方へ向かってコンクリート輸送ホース100の内部を不図示のコンクリートがX1方向に輸送される過程で、障害物となる被垂下材70にコンクリートが接触した際に、被垂下材70を構成する各無端状線材71はコンクリートの流下方向に沿う回転力を付与されてX2方向に回転しながらコンクリートの輸送速度を低減する。このように、コンクリートが接触した際に各無端状線材71が回転することから、コンクリートに対して被垂下材70から大きな衝撃(もしくは反力)を作用させることなく、コンクリートの輸送を阻害することなく、コンクリートの輸送速度を効果的に低減して、コンクリートの材料分離を抑制することが可能になる。
【0044】
また、被垂下材70の下端が固定されていないことにより、コンクリートの落下に伴って、被垂下材70が可撓性ホース30の内部を移動することになり、ホース本体50を閉塞することなく、コンクリートの落下速度を低減して、コンクリートの材料分離を抑制することが可能になる。
【0045】
また、支持材が鋼管20の内部を横断している第1支持材61であることにより、第1支持材61から垂下されている被垂下材70を、鋼管20の断面の中心やその近傍に配置することが可能になり、ホース本体50の内部を通過するコンクリートの輸送速度を効果的に低減することができる。
【0046】
また、ホース本体50の途中に扁平部が設けられていないことから、様々な性状のコンクリートの輸送に際してホース本体50が閉塞する恐れもない。
【0047】
図4は、
図2Bに対応する図であって、第1支持材の変形例を示す平面図である。この変形例は、ボルト61が鋼管20に固定されることに代わり、鋼管20における仮想直径線上の位置にある任意の2箇所にボルトからなる回転軸64を固定しておき、2つの回転軸64に対して回転支持材65(支持材の一例)が回転自在に取り付けられ、回転支持材65から被垂下材70が垂下されている点において、
図2に示す第1支持材61と相違する。
【0048】
回転軸64も、座金62を介してナット63にて鋼管20に固定される。不図示のコンクリートが流下し、回転支持材65に接触した際に、回転支持材65もX3方向に回転することから、被垂下材70を構成する各無端状線材71の回転と相俟って、接触の際のコンクリートに付与される衝撃を一層緩和しながら、コンクリートの輸送速度を低減することが可能になる。
【0049】
図5(a)、(b)はいずれも、被垂下材の変形例を示す図である。
図5(a)に示す被垂下材70Aは、線形が真円の無端状線材72が相互に係合されている形態であり、コンクリートが接触した際により一層スムーズなX2方向への回転が促進され、コンクリートへの衝撃緩和性が一層向上する。
【0050】
一方、
図5(b)に示す被垂下材70Bは、線形が三角形(多角形の一例)の無端状線材73が相互に係合されている形態である。このような多角形状の無端状線材73でも、コンクリートが接触した際にX2方向へ回転することにより、コンクリートに対して大きな衝撃を作用させることなく、コンクリートの輸送速度を低減できる。
【0051】
次に、
図6と
図7を参照して、実施形態に係るコンクリート輸送ホースの変形例について説明する。以下、各図に示される変形例は、鋼管の内部における支持材の形態が
図2に示す例と異なるものであり、可撓性ホースに関しては同一であることから、可撓性ホースを除いた構成のみを図示して説明する。
【0052】
まず、
図6Aは、実施形態に係るコンクリート輸送ホースのうち、ホース本体を構成する鋼管に第2支持材が取り付けられ、第2支持材から被垂下材が垂下している状態を示す側面図であり、
図6Bは、
図6AのB-B矢視図であって、鋼管の内部にある複数の第2支持材を上から見た平面図である。
【0053】
図示する変形例は、一般部21の長手方向の途中位置において、鋼管20の内部23を横断せずに張り出している複数(図示例は4つ)のボルト66(第2支持材の一例)が、鋼管20の内面の周方向に間隔(図示例は90度の間隔)を置いて開設されている各ボルト孔21aを貫通し、鋼管20の外側面において座金62を介してナット63にて締め付けられることにより、鋼管20に対して固定されている。
【0054】
第2支持材66のうち、鋼管20の内部への張り出し箇所に被垂下材70が垂下されており、この被垂下材70も、複数の無端状線材71が相互に回転自在に繋がることにより形成されている。この形態においても、被垂下材70の最上部にある無端状線材71が第2支持材66に挿通され、無端状線材71の左右を一対の座金62が挟み、ボルト61に螺合する一対のナット63が一対の座金62を挟むことにより、第2支持材66に対して被垂下材70の位置がずれることなく固定される。
【0055】
ここで、図示例は、相互に90度間隔で配設されている4つの第2支持材66に対して、それぞれ被垂下材70が垂下されている形態であるが、180度間隔で配設されている2つの第2支持材に被垂下材が垂下されている形態や、120度間隔で配設されている3つの第2支持材66に対して被垂下材70が垂下されている形態等であってもよい。また、鋼管20の同一断面内に複数の第2支持材66が配設される代わりに、鋼管20の長手方向にずれた位置に、複数の第2支持材66が例えば螺旋状に配設される形態であってもよい。さらには、例えば同一の第1断面に複数の第2支持材が配設され、別の同一の第2断面に複数の第2支持材が配設され、平面的に見た際に各第2支持材が鋼管の周方向で異なるように配設されている形態であってもよい。
【0056】
図示する変形例によれば、支持材が鋼管20の内部を横断せずに張り出している複数の第2支持材66が、鋼管20の内面の周方向に間隔を置いて取り付けられていることにより、鋼管20の内面の近傍に複数の被垂下材70を配置することができ、ホース本体の内部を通過するコンクリートの輸送速度を効果的に低減することができる。
【0057】
一方、
図7Aは、実施形態に係るコンクリート輸送ホースのうち、ホース本体を構成する鋼管に第1支持材と第2支持材が取り付けられ、第1支持材と第2支持材からそれぞれ被垂下材が垂下している状態を示す側面図であり、
図7Bは、
図7AのB-B矢視図であって、鋼管の内部にある第1支持材と複数の第2支持材を上から平面図である。
【0058】
すなわち、図示する変形例は、鋼管20の長手方向のずれた位置に、第1支持材61と複数の第2支持材66が固定され、それぞれの支持材61,66から被垂下材70が垂下されている形態である。
【0059】
図示する変形例によれば、複数の被垂下材70が鋼管20の断面の中心近傍と、さらに内面の近傍の複数箇所に配置されることにより、ホース本体の内部を通過するコンクリートの輸送速度をより一層効果的に低減することができる。
【0060】
[コンクリート輸送ホースの性能試験とその結果]
本発明者等は、実施形態に係るコンクリート輸送ホースの性能を評価する性能試験を行った。具体的には、
図8に示すように、共通の外観を有する複数種のホース試験体を製作し、各ホース試験体にコンクリートを輸送させ、下方の筒先からコンクリートをトレーに落下させた際の、コンクリートの広がり(フロー)を測定及び観察し、さらに、コンクリートの材料分離の程度の指標となる飛散率を求めたものである。
【0061】
ここで、
図2A,
図2B及び
図3に示す形態のホース試験体を実施例1とし、
図6A及び
図6Bに示す形態であって
図3と同様に可撓性ホースが取り付けられているホース試験体を実施例2とした。さらに、実施例1,2と異なり、支持材や被垂下材を備えていない鋼管と可撓性ホースのみを有する形態を比較例とした。
【0062】
図9Aは、性能試験結果のうち、実施例1,2と比較例の各ホース試験体を用いた際の、打ち込み後のコンクリートの広がり(フロー)に関する試験結果を示す図であり、
図9Bは、性能試験結果のうち、実施例1,2と比較例の各ホース試験体を用いた際の、打ち込み後のコンクリートの材料分離の程度の指標となる飛散率に関する試験結果を示す図である。さらに、
図10は、(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例1、実施例2、及び比較例の打ち込み後のコンクリートの広がり状態を示す図である。
【0063】
まず、
図9Aと
図10より、コンクリートの広がりに関しては、比較例、実施例2、実施例1の順に広がりの程度が小さくなり、この順でフローを低減できることが実証されている。
【0064】
具体的には、比較例が770mmであり、実施例2は720mmであって比較例と比べて50mmもフローを低減でき、実施例1は705mm程度であって実施例1からさらに15mmもフローを低減できることが実証されている。
【0065】
一方、
図9Bより、飛散量を吐出全量で除した値である飛散率に関しても、比較例、実施例2、実施例1の順に飛散率が小さくなり、この順で材料分離を低減できることが実証されている。
【0066】
具体的には、比較例が8.5%であり、実施例2は4.5%であって比較例と比べて4%も飛散率を低減でき、実施例1は2%であって実施例1からさらに2.5%も飛散率を低減できることが実証されている。
【0067】
本実験結果によれば、複数の無端状線材が回転自在に相互に係合している被垂下材をホース本体の内部に配置することにより、コンクリートの広がりと材料分離を効果的に低減できることが実証され、さらに、ホース本体の内面近傍よりも中心近傍に被垂下材を配置した場合に、より一層高い効果が得られることが実証されている。
【0068】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0069】
10:コンクリートポンプ車
11:車体
12:第1アーム
13:第2アーム
14:第3アーム
15,16,17:圧送管
18:ファスナー
20:鋼管
21:一般部
21a:ボルト孔
22:拡径部
23:内部(中空)
30:可撓性ホース
31:固定端
32:筒先
40:留め具(番線)
50:ホース本体
61:第1支持材(支持材、ボルト)
62:座金
63:ナット
64:回転軸
65:回転支持材(支持材)
66:第2支持材(支持材、ボルト)
70,70A,70B:被垂下材
71,72,73:無端状線材
100:コンクリート輸送ホース