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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048936
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】タイヤ画像の認識方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240402BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240402BHJP
   G06V 10/44 20220101ALI20240402BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20240402BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
G06T7/00 350B
G06V10/44
G06V10/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155116
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【弁理士】
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】日比野 敦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸志
(72)【発明者】
【氏名】稲石 伸二
【テーマコード(参考)】
3D131
5L096
【Fターム(参考)】
3D131BC55
3D131LA33
5L096BA04
5L096CA02
5L096DA01
5L096FA06
5L096FA59
5L096FA64
5L096HA08
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】タイヤの接地面の輪郭を推定するためのタイヤ画像の認識方法等を提供する。
【解決手段】タイヤ画像の認識方法は、タイヤの接地面を表す画像と、前記タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルに、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力し、出力を導出することと、前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭を推定することとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの接地面を表す画像と、前記タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルに、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力し、出力を導出することと、
前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭を推定することと
を含む、
タイヤ画像の認識方法。
【請求項2】
前記機械学習モデルは、前記対象タイヤについて推定される前記接地面の輪郭を表すデータを出力するように構成される、
請求項1に記載のタイヤ画像の認識方法。
【請求項3】
前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭により囲まれる部分の面積、接地長、接地幅、及びゴムブロックの接地面積の少なくとも1つのパラメータを導出すること
をさらに含む、
請求項1または2に記載のタイヤ画像の認識方法。
【請求項4】
前記導出された少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記対象タイヤの性能を予測すること
をさらに含む、
請求項3に記載のタイヤ画像の認識方法。
【請求項5】
タイヤの接地面を表す画像と、前記タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルを記憶する記憶部に接続されるコンピュータに、
前記機械学習モデルに、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力し、出力を導出することと、
前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭を推定することと
を実行させる、
タイヤ画像の認識プログラム。
【請求項6】
タイヤの接地面を表す画像と、前記タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルを記憶する記憶部と、
前記機械学習モデルに、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力し、出力を導出する導出部と、
前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭を推定する推定部と
を備える、
タイヤ画像の認識装置。
【請求項7】
タイヤの接地面を表す画像と、正解データとが組み合わせられた学習用のデータセットを、複数の異なる前記タイヤについて準備することと、
前記学習用のデータセットを用いて、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力すると、前記対象タイヤの接地面の輪郭を表すデータが出力されるように機械学習モデルを学習させることと
を含み、
前記正解データは、前記タイヤの接地面を表す画像に基づいて作成された、前記タイヤの接地面の輪郭を表すデータである、
学習済みモデルの生成方法。
【請求項8】
タイヤの接地面を表す画像と、正解データとが組み合わせられた学習用のデータセットを、複数の異なる前記タイヤについて記憶する記憶部に接続されるコンピュータに、
前記学習用のデータセットを用いて、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力すると、前記対象タイヤの接地面の輪郭を表すデータが出力されるように機械学習モデルを学習させること
を実行させ、
前記正解データは、前記タイヤの接地面を表す画像に基づいて作成された、前記タイヤの接地面の輪郭を表すデータである、
学習済みモデルの生成プログラム。
【請求項9】
タイヤの接地面を表す画像と、正解データとが組み合わせられた学習用のデータセットを、複数の異なる前記タイヤについて記憶する記憶部と、
前記学習用のデータセットを用いて、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力すると、前記対象タイヤの接地面の輪郭を表すデータが出力されるように機械学習モデルを学習させる学習部と
を備え、
前記正解データは、前記タイヤの接地面を表す画像に基づいて作成された、前記タイヤの接地面の輪郭を表すデータである、
学習済みモデルの生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ画像の認識方法、認識プログラム、認識装置、学習済みモデルの生成方法、学習済みモデルの生成プログラム、及び学習済みモデルの生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、車両の中で地面と接する唯一の部分であり、車両の運動性能にはタイヤの性能が大きく寄与する。タイヤの性能としては、例えば、操縦安定性、騒音性、ドライ路面やウェット路面における制動性等が挙げられる。
【0003】
特許文献1は、氷上性能が向上した氷雪路用空気入りタイヤを開示する。特許文献1によれば、トレッド面の接地総面積GCAに対する実接地面積ACAの比率を所定の範囲内とすることで氷上性能が向上する。加えて、タイヤ周方向の最大接地長Dに対する、接地幅中心から所定の距離離れた位置におけるタイヤ周方向の接地長dの比率を所定の範囲内とすることで、実接地面積比率を従来よりも大きくしたことに伴う排水性の低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-008710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、タイヤの開発や品質管理の場面では、所望の性能を実現すべくタイヤの接地形状を工夫することや、タイヤの性能を評価するためにその接地形状を解析することが従来行われている。タイヤがどのように接地しているかを表すタイヤの接地面の画像は、インクの転写等により比較的容易に取得することができる。ただし、タイヤには、通常地面と接しないトレッド溝やラグ溝(横溝)があるため、接地面の画像に現れるのは、基本的には地面と接するゴムブロックの表面である。このため、画像に現れるタイヤの接地面は、全体が閉曲線で囲まれた形状とはならない。そこで、タイヤの接地面の画像を解析しようとする際には、接地するゴムブロックの表面により形作られる図形に基づいて、接地面とみなせる領域の輪郭を特定する必要がある。しかしながら、従来の画像処理アルゴリズムでは、人が認識するような輪郭を適切に特定することが困難であった。
【0006】
本発明は、タイヤの接地面の輪郭を推定するためのタイヤ画像の認識方法、認識プログラム、認識装置、学習済みモデルの生成方法、学習済みモデルの生成プログラム、及び学習済みモデルの生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点に係るタイヤ画像の認識方法は、タイヤの接地面を表す画像と、前記タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルに、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力し、出力を導出することと、前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭を推定することとを含む。
【0008】
第2観点に係るタイヤ画像の認識方法は、第1観点に係るタイヤ画像の認識方法であって、前記機械学習モデルは、前記対象タイヤについて推定される前記接地面の輪郭を表すデータを出力するように構成される。
【0009】
第3観点に係るタイヤ画像の認識方法は、第1観点または第2観点に係るタイヤ画像の認識方法であって、前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭により囲まれる部分の面積、接地長、接地幅、及びゴムブロックの接地面積の少なくとも1つのパラメータを導出することをさらに含む。
【0010】
第4観点に係るタイヤ画像の認識方法は、第1観点から第3観点のいずれかに係るタイヤ画像の認識方法であって、前記導出された少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記対象タイヤの性能を予測することをさらに含む。
【0011】
第5観点に係るタイヤ画像の認識プログラムは、タイヤの接地面を表す画像と、前記タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルを記憶する記憶部に接続されるコンピュータに、前記機械学習モデルに、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力し、出力を導出することと、前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭を推定することとを実行させる。
【0012】
第6観点に係るタイヤ画像の認識装置は、記憶部と、導出部と、推定部とを備える。記憶部は、タイヤの接地面を表す画像と、前記タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルを記憶する。導出部は、前記機械学習モデルに、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力し、出力を導出する。推定部は、前記導出された出力に基づいて、前記対象タイヤの接地面の輪郭を推定する。
【0013】
第7観点に係る学習済みモデルの生成方法は、タイヤの接地面を表す画像と、正解データとが組み合わせられた学習用のデータセットを、複数の異なる前記タイヤについて準備することと、前記学習用のデータセットを用いて、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力すると、前記対象タイヤの接地面の輪郭を表すデータが出力されるように機械学習モデルを学習させることとを含む。なお、前記正解データは、前記タイヤの接地面を表す画像に基づいて作成された、前記タイヤの接地面の輪郭を表すデータである。
【0014】
第8観点に係る学習済みモデルの生成プログラムは、タイヤの接地面を表す画像と、正解データとが組み合わせられた学習用のデータセットを、複数の異なる前記タイヤについて記憶する記憶部に接続されるコンピュータに、前記学習用のデータセットを用いて、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力すると、前記対象タイヤの接地面の輪郭を表すデータが出力されるように機械学習モデルを学習させることを実行させる。なお、前記正解データは、前記タイヤの接地面を表す画像に基づいて作成された、前記タイヤの接地面の輪郭を表すデータである。
【0015】
第9観点に係る学習済みモデルの生成装置は、記憶部と、学習部とを備える。記憶部は、タイヤの接地面を表す画像と、正解データとが組み合わせられた学習用のデータセットを、複数の異なる前記タイヤについて記憶する。学習部は、前記学習用のデータセットを用いて、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像を入力すると、前記対象タイヤの接地面の輪郭を表すデータが出力されるように機械学習モデルを学習させる。前記正解データは、前記タイヤの接地面を表す画像に基づいて作成された、前記タイヤの接地面の輪郭を表すデータである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タイヤの接地面を表す画像と、タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルを利用して、認識対象となる対象タイヤの接地面の画像に基づいて、対象タイヤの接地面の輪郭が推定される。これにより、タイヤの接地面の領域の形状に基づいて、効率的にタイヤの性能と相関があるパラメータを導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係るタイヤの画像の認識装置の電気的構成を示すブロック図。
図2】タイヤの接地面を表す画像の一例。
図3A】人により作成された接地面の輪郭の一例を示す図。
図3B】公知の画像処理アルゴリズムにより作成された接地面の輪郭の一例を示す図。
図4】一実施形態に係る機械学習モデルの構成を説明する図。
図5】認識装置による処理の流れを示すフローチャート。
図6A】認識装置による輪郭の推定結果の表示例を示す図。
図6B】接地面に関するパラメータを説明する図。
図7】機械学習モデルの生成方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るタイヤ画像の認識装置により実行される認識方法、ならびに学習済みモデルの生成装置により実行される生成方法について説明する。
【0019】
<1.概要>
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ画像の認識装置1の電気的構成を示すブロック図である。認識装置1は、タイヤの接地面の画像に基づいて、当該接地面の輪郭を推定するように構成され、本実施形態では、これに加えて、推定された輪郭に基づき、接地面に関する1または複数のパラメータを導出する。接地面に関するパラメータは、タイヤの性能と相関が強く、タイヤの性能を評価するための重要な指標となる。さらに、接地面に関するパラメータは、使用中のタイヤに関しては、摩耗及び偏摩耗の状態の少なくとも一方を評価するための重要な指標ともなる。
【0020】
図2は、タイヤの接地面の画像の一例である。図2の黒い領域は、タイヤのトレッドのゴムブロックの表面に対応し、白い領域は、トレッド溝、ラグ溝(以下、これらをまとめて「溝」と称することがある)、または背景(タイヤが存在しない空間)に対応する。このように、タイヤの接地面の画像は、溝により互いに分断された複数のゴムブロックであって、地面に接する複数のゴムブロックの表面の形状がまとまって現れた画像である。このような接地面の原画像は、例えば、リムに装着された状態のタイヤのトレッド面にインクを塗布し、これを平らな面に置かれた紙面等に転写して取得することができる。
【0021】
こうしたタイヤの接地面の画像には、接地面の輪郭が直接現れるわけではない。このため、上記接地面のパラメータを導出するために、接地面の画像に基づき、人が接地面の輪郭を作成する方法がある。人は、通常、画像に現れた複数のゴムブロックのまとまり及び溝の周期性を認識して、このまとまりに外接する一方で、溝に対応する領域が補完された、自然で適切な閉曲線を輪郭として指定することができる(図3A参照)。人は、場合によっては、ゴムブロックによるものでは無い汚れ等のノイズを区別したり、偶然薄く転写されたゴムブロックの輪郭を補完したりしつつ、上記作業を行うことができる。これに対し、例えば輝度の二値化等のアルゴリズムを含む画像処理では、ゴムブロックのまとまりに外接する閉曲線から、溝に対応する部分が一律に排除されたり、ノイズ(汚れ)をゴムブロックと認識して閉曲線にこれを含めたりすることが多い。このため、極端な凹凸が多い、不自然な閉曲線が接地面の輪郭として作成されがちである(図3Bの破線丸内参照)。また、画像処理技術は、人の場合と比較して、多様なタイヤのパターンに対応させることが難しい。これらのことから、公知の画像処理技術を用いた輪郭推定では、人による確認及び輪郭修正の作業を多く要する。認識装置1は、このような問題を解決すべく、タイヤの接地面を表す画像と、当該タイヤの接地面の輪郭との関係を学習した機械学習モデルを用いて、接地面の輪郭をより適切に推定するように構成される。
【0022】
<2.認識装置の構成>
認識装置1は、ハードウェアとしては汎用のコンピュータであり、例えば、デスクトップパソコン、ラップトップパソコン、タブレット、スマートフォン等の情報処理装置として実現される。認識装置1は、CD-ROM、USBメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体133から、或いはネットワークを介して、プログラム132を汎用のコンピュータにインストールすることにより製造される。プログラム132は、認識装置1に後述する動作を実行させる。
【0023】
図1に示すように、認識装置1は、制御部10、表示部11、入力部12、記憶部13、及び通信部14を備える。これらの部10~14は、互いにバス線15を介して接続されており、相互に通信可能である。表示部11は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等で構成することができ、後述する機械学習モデルの機械学習過程における誤差、及び機械学習モデルから導出される出力結果等を表示する。入力部12は、マウス、キーボード、タッチパネル等で構成することができ、認識装置1に対する操作を受け付ける。表示部11及び入力部12は、ともに同じタッチパネルディスプレイで構成されてもよい。
【0024】
記憶部13は、ハードディスク及びフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリで構成することができる。記憶部13内には、プログラム132が記憶されている他、後述する機械学習により構築される、学習済みの機械学習モデル131を定義するパラメータが記憶される。通信部14は、外部の装置とのデータ通信を行う通信インターフェースとして機能する。
【0025】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM及びRAM等で構成することができる。制御部10は、記憶部13内のプログラム132を読み出して実行することにより、仮想的に取得部10A、導出部10B、推定部10C及び学習部10Dとして動作する。取得部10Aは、入力部12や通信部14等を介して、タイヤの接地面を表す画像データを取得する。導出部10Bは、取得された画像データを機械学習モデル131に入力し、機械学習モデル131からの出力を導出する。推定部10Cは、当該出力に基づき、タイヤの接地面の輪郭を推定するとともに、上記輪郭に基づいて、接地面に関するパラメータを導出する。学習部10Dは、後述する処理により、機械学習モデルを定義するパラメータの調整を行い、機械学習モデル131を生成する。
【0026】
<3.機械学習モデルの構成>
以下、機械学習モデル131の構成について説明する。本実施形態の機械学習モデル131は、これに限定されないが、図4に示すようなSegnetモデルに従う構造を有する。Segnetモデルは、入力された画像の特徴を抽出するエンコーダと、エンコーダにより抽出された特徴に基づいて画像を再構築し、出力するデコーダとが結合したモデルである。従って、本実施形態では、機械学習モデル131への入力は、タイヤの接地面を表す画像であり、機械学習モデル131からの出力は、推定される接地面の輪郭を表す画像のデータである。すなわち、本実施形態では、機械学習モデル131から出力を導出すること自体が、接地面の輪郭を推定することなる。
【0027】
エンコーダへの入力は、認識対象となるタイヤ(以下、「対象タイヤ」とも称する)の接地面を表すRGB画像である。RGB画像は、エンコーダにより予め規定されたサイズ(W×H)で準備される。エンコーダは、連続した2つまたは3つの畳み込み層1310と、プーリング層1311とが複数組み合わせられた構造を有する。本実施形態のエンコーダは、畳み込み層1310とプーリング層1311との組み合わせが、5回連続した構造を有する。
【0028】
連続する畳み込み層のうち、1つ目の畳み込み層1310では、畳み込みフィルタによる入力データ(画像)の畳み込みが行われ、入力された画像よりも小さいサイズを有する特徴マップが作成される。畳み込みフィルタは、入力された画像の特徴を抽出するためのフィルタであり、フィルタが持つパラメータは、後述する学習処理により調整済みである。畳み込みの演算の際には、ReLU関数が適用されることが好ましく、これにより、抽出された特徴がより強調される。畳み込み層におけるフィルタ数、フィルタサイズ、フィルタにより入力データをスキャンする間隔、及び作成される特徴マップのサイズ調整のためのパディング方法等は、適宜設定することができる。
【0029】
上記畳み込み層から出力された特徴マップは、2つ目の畳み込み層1310に入力される。2つ目の畳み込み層1310では、入力データに対し、1つ目の畳み込み層1310と同様に、複数の畳み込みフィルタを用いた畳み込みが行われる。これにより、より微細な特徴を捉えた新たな特徴マップが出力される。3つ目の畳み込み層1310がこれにさらに連続する場合は、2つ目の畳み込み層1310から出力された特徴マップに対し、これまでと同様に畳み込みが実行され、さらに新たな特徴マップが出力される。
【0030】
出力された特徴マップは、プーリング層1311に入力され、ダウンサンプリングされる。本実施形態のプーリング層1311では、最大値プーリングが行われる。これは、特徴マップに対し、特徴マップよりも小さなサイズのカーネル(窓)によるスキャンを行い、カーネル内における最大値を抽出する処理である。本実施形態のプーリング層1311では、さらに、特徴マップにおいて最大値が抽出された位置がプーリング座標インデックスとして記憶され、後述されるデコーダによる処理において利用される。カーネルのサイズや、特徴マップをスキャンする間隔は、適宜設定することができる。本実施形態では、カーネルのサイズは2×2、間隔は2であり、特徴マップの空間解像度が半分になるように設定される。プーリング層1311は、学習により調整されるパラメータを有さない。
【0031】
エンコーダでは、畳み込み層1310とプーリング層1311との組み合わせによる処理が進行する度に、より小さな特徴を捉えた、小さなサイズの特徴マップが出力される。エンコーダにより最終的に出力された特徴マップは、デコーダに入力される。
【0032】
デコーダは、アップサンプリング層1312と、連続した2つまたは3つの畳み込み層1310とが複数組み合わせられ、その最後にSoftmax層1313が接続された構造を有する。本実施形態のデコーダは、エンコーダと同様に、アップサンプリング層1312と、連続した2つまたは3つの畳み込み層1310との組み合わせが5回連続した後、1つのSoftmax層1313が接続された構造を有する。
【0033】
最初のアップサンプリング層1312には、エンコーダから受け渡された特徴マップが入力される。アップサンプリング層1312には、エンコーダにおいて、当該アップサンプリング層1312と対応する階層のプーリング層1311において記憶されたプーリング座標インデックスが読み込まれる。アップサンプリング層1312では、このプーリング座標インデックスに基づき、元のプーリング層1311でダウンサンプリングされる前のサイズの特徴マップが出力される。すなわち、入力された画像がより大きなサイズにアップサンプリングされる。
【0034】
アップサンプリング層1312から出力された特徴マップは、これに続く、連続した2つまたは3つの畳み込み層1310に入力される。これにより、特徴マップに現れた特徴が保持された、より大きなサイズの画像が復元される。連続した畳み込み層1310で行われる処理は、エンコーダについての説明において説明した通りである。連続した畳み込み層1310から出力された特徴マップは、さらに続くアップサンプリング層1312に入力される。
【0035】
各アップサンプリング層1312では、最初のアップサンプリング層1312と同様に、エンコーダにおいて、当該アップサンプリング層1312と対応する階層のプーリング層1311において記憶されたプーリング座標インデックスが読み込まれる。そして、当該対応する階層のプーリング層1311における、ダウンサンプリング前の特徴マップのサイズと同じサイズの画像が復元される。すなわち、デコーダでは、機械学習モデル131に入力された画像と同じサイズの画像が生成されるまで、アップサンプリングと畳み込みが繰り返される。
【0036】
最後の畳み込み層1310から出力された画像は、Softmax層1313に入力される。Softmax層1313では、入力された画像の各ピクセルについて、当該ピクセルが接地面の輪郭に該当するか否かの判定が行われる。つまり、対象タイヤの接地面の輪郭が推定される。そして、推定された接地面の輪郭を表す画像であって、機械学習モデル131に入力された画像と同じサイズの画像が出力される。画像は、例えば接地面の輪郭に該当すると推定されたピクセルと、輪郭に該当しないと推定されたピクセルとが区別された態様で出力される。区別の態様は特に限定されないが、例えば輪郭に該当すると推定されたピクセルは所定の色(例えば、黒)で、それ以外のピクセルは別の色(例えば、白)で、それぞれ表示されてもよい。また、例えば、輪郭及びこれに包含される領域に対応するピクセルは所定の色(例えば、黒)で、それ以外のピクセルは別の色(例えば、白)で、それぞれ表示されてもよい。
【0037】
<4.輪郭推定方法>
図5は、認識装置1により実行される、接地面の輪郭の推定処理と、推定された輪郭に基づく接地面に関するパラメータの導出処理との流れを示すフローチャートである。以下、図5を参照しつつ、認識装置1の動作について説明する。
【0038】
まず、取得部10Aが、対象タイヤの接地面を表す画像を取得する(ステップS1)。画像は、上述したように、規定のサイズの画像であって、対象タイヤの接地面全体が表れている画像である。取得部10Aによる画像の取得は、例えばCD-ROM、USBメモリ等の記録媒体を介して行われてもよいし、ネットワーク通信を介して、外部装置が保有するデータを読み出すことにより行ってもよい。取得部10Aは、取得した画像をRAMまたは記憶部13に保存する。
【0039】
続いて、導出部10Bが、ステップS1で取得した対象タイヤの接地面を表す画像を機械学習モデル131に入力し、出力を導出する(ステップS2)。上述したように、出力は、推定される対象タイヤの接地面の輪郭を表す画像である。
【0040】
続いて、推定部10Cが、輪郭推定の結果を表す結果表示画面を生成し、表示部11にこれを表示する(ステップS3)。結果表示画面は、本実施形態では、図6Aに示すように、元の接地面の画像にステップS2で推定された輪郭の閉曲線が重ね合わされた画像を含む。
【0041】
続いて、推定部10Cが、ステップS2で推定された輪郭に基づき、接地面に関するパラメータを導出する(ステップS4)。接地面に関するパラメータとしては、タイヤの接地特性を表すパラメータであれば特に限定されず、例えば、推定された輪郭により囲まれる部分(接地面)の面積A1、ゴムブロックの接地面積合計A2、タイヤの回転方向(図6Bのy軸方向)に沿った最大接地長L1、タイヤの幅方向(図6Bのx軸方向)に沿った最大接地幅L2等とすることができる。さらに、接地面に関するパラメータとして、A1に対するA2の割合R、及び最大接地幅の中心線からx軸方向に0.5×b×L2だけ移動した2つの位置の接地長L3、L4等が導出されてもよい。bは、1未満の所定の係数である。上記パラメータは、公知の画像処理技術を用いて、自動で導出することができる。
【0042】
上記パラメータ、及び上記パラメータに基づいて算出される値は、タイヤの性能と密接な関係を有することが分かっており、タイヤの各種性能を示す指標となる。例えば、b=0.9であるとき、L3/L1及びL4/L1は、当該タイヤの排水性能を示す指標となり、概ね0.65未満であれば良好と言える。また、割合Rは、路面に対するタイヤの制動性能やグリップ性能を示す指標となり、高ければ高いほど制動性能及びグリップ性能が高いと言える。つまり、上記パラメータに基づいてタイヤの各種性能を示す指標を算出することは、当該タイヤの性能を予測することに相当する。
【0043】
上記パラメータは、開発中のタイヤや新品状態のタイヤのみならず、使用されたタイヤにも適用することができる。この場合、割合Rは、当該タイヤの摩耗状態を示す指標となり得る。例えば、割合Rが、同じ種類の新品状態のタイヤの割合Rと比較して一定割合以上に小さい場合、当該タイヤの摩耗が進行していると言える。また、接地面が接地幅の中心線に対して対称となるように設計されているタイヤの場合、例えばL3/L4は、当該タイヤの偏摩耗状態を示す指標となり得る。例えば、L3/L4が1から一定以上乖離している場合、当該タイヤは、幅方向の片側においてより摩耗が進行した偏摩耗が生じていると言える。
【0044】
以上のように、認識装置1においては、機械学習モデル131により推定された、対象タイヤの接地面の輪郭に基づいて、タイヤの接地特性を表すパラメータが導出される。推定部10Cは、導出されたパラメータを表示する画面を作成し、表示部11にこれを表示する(ステップS5)。上記画面は、例えば、導出されたパラメータを、ステップS3で生成された画像とともに表示する画面であってもよい。推定部10Cは、これに加えてまたはこれに代えて、導出されたパラメータと、対象タイヤについて予め設定された閾値とを比較することにより、導出されたパラメータから予測される対象タイヤの性能を表示する画面を生成し、表示部11にこれを表示してもよい。
【0045】
認識装置1のユーザとしては、例えばタイヤの設計開発従事者や、品質管理従事者等が挙げられる。ユーザは、推定部10Cにより生成された画面を確認することにより、対象タイヤの各種性能を把握し、タイヤの開発や品質管理等に活用したりすることができる。また、使用されたタイヤの摩耗状態や偏摩耗状態を把握し、タイヤの摩耗及び偏摩耗に対する知見を得たり、ドライバーにタイヤの交換及びローテーションを促したりすることができる。この場合、認識装置1のユーザには、タイヤの販売従事者や、タイヤの点検サービス提供者等が含まれ得る。
【0046】
<5.学習方法>
以下、図7を参照しつつ、学習済みの機械学習モデル131を生成するための方法、つまり、学習部10Dにより実行される機械学習モデルの学習方法について説明する。
【0047】
まず、機械学習モデルを学習させるための学習用データセットが準備される(ステップS11)。学習用データセットは、タイヤの接地面を表すRGB画像と、正解データとの複数の組み合わせからなるデータセットである。タイヤの接地面を表す画像は、オールシーズン、スタッドレス、リブ、トラクション、ラグ等、複数の異なる種類のタイヤの画像を含んでも良く、新品状態のタイヤ及び(偏摩耗を含む)摩耗状態のタイヤの画像を含んでも良い。また、上記画像は、タイヤの接地面が表れていれば特に限定されず、例えば、インクの転写による原画をデータ化したもの、光の吸収率に基づいて接地圧分布を測定する接地圧分布測定装置からの出力画像、スキャナにより取得される画像、タイヤをガラス面に接地させて撮影した画像等であってよい。なお、これらのタイヤの接地面の画像は、原寸大であることが好ましいが、原寸に対する縮尺が統一されていれば、原寸大の画像でなくてもよい。
【0048】
正解データは、タイヤの接地面を表す画像に基づいて特定された、当該タイヤの接地面の輪郭を表すデータであり、タイヤの接地面を表す画像と同じサイズを有する。正解データは、例えば、タイヤの接地面の輪郭に相当するピクセルと、それ以外のピクセルとで異なるラベルが割り当てられ(例えば、輪郭は「1」でそれ以外は「0」等)、これによりタイヤの接地面の輪郭を表現している。このようなデータは、例えば人がタイヤの接地面を表す画像に基づいて作成した接地面の輪郭を元に作成することができる。また例えば、公知の画像処理により作成された接地面の輪郭に、人が修正を加えたものを元に作成することもできる。なお、正解データの元となる輪郭のデータは、接地面の輪郭が閉曲線であることを前提条件として作成され、これに加え、タイヤの回転方向における接地面の両端縁において、接地面の輪郭は概ね対称となること、を前提条件として作成されることが好ましい。さらに、ゴムブロックのまとまりの形状に外接する曲線が、ラグ溝等により途切れるような場合は、正解データの元となる輪郭のデータは、途切れた外接曲線を補間するように作成されることが好ましい。
【0049】
本実施形態では、準備された学習用データセットは、記録媒体やネットワークを介して認識装置1に取り込まれ、学習部10Dによって学習用データセット134として記憶部13に保存される。学習部10Dは、学習用データセット134を、パラメータ調整用の訓練用データセットと、精度検証用のテスト用データセットとに予め分けて保存する。両者の割合は、適宜設定することができる。
【0050】
続いて、学習部10Dが、訓練用データセットを所定の数のデータセットごとに分割し、複数のサブセットとする(ステップS12)。所定の数は、次のステップS13で1回当たりに機械学習モデルに入力するデータの数であり、適宜設定することができる。
【0051】
続いて、学習部10Dがサブセットの1つを選択し、選択したサブセットに含まれる画像を機械学習モデルに入力し、機械学習モデルからの出力を導出する(ステップS13)。出力は、入力されたタイヤの接地面の画像にそれぞれ組み合わされている正解データに対応するデータであり、本実施形態では、推定される当該タイヤの接地面の輪郭を表すデータである。なお、ステップS13では、各畳み込み層において、畳み込み演算の後、ReLU関数の適用前に、バッチ正規化の処理が導入されてもよい。これにより、学習の安定化及び速度向上を図ることができる。
【0052】
続いて、学習部10Dが、ステップS13で導出された出力と、ステップS13で入力された画像に組み合わせられている正解データとの誤差関数の値が最小となるようにパラメータを調整する(ステップS14)。誤差関数としては、例えばクロスエントロピー誤差関数等が挙げられる。学習部10Dは、例えば確率的勾配降下法に従い、機械学習モデルの各畳み込み層におけるバイアス、及び畳み込みフィルタが有するパラメータ等を調整し、更新する。
【0053】
続いて、学習部10Dが、1エポックの学習が完了したか否かを判断する(ステップS15)。本実施形態では、ステップS12で作成された各サブセットについて、ステップS13及びS14が1巡した場合に、1エポックの学習が完了したと判断される。1エポックの学習が完了していないと判断された場合(NO)、学習部10Dは、まだ使用されていないサブセットを用いて、ステップS13~ステップS14を繰り返す。一方、1エポックの学習が完了したと判断された場合(YES)、ステップS16が実行される。
【0054】
続くステップS16では、学習部10Dが、全エポックの学習が完了したか否かを判断する。全エポック数は、特に限定されず、適宜設定することができる。全エポックの学習が完了していないと判断された場合(NO)、学習部10Dは、前回のエポックと同じ順でサブセットを選択しながら、ステップS13~ステップS15を繰り返す。一方、全エポックの学習が完了したと判断された場合(YES)、学習部10Dは、最新のパラメータを記憶部13に格納し、これを学習済みの機械学習モデル131を定義するパラメータとする。つまり、以上の手順により、学習済みの機械学習モデル131が生成される。
【0055】
なお、学習部10Dは、学習が1エポック終了するごとに、テスト用データをその時点の機械学習モデルに入力して、その出力とテスト用データの正解データに対する誤差を算出し、算出結果を表示部11に表示してもよい。これにより、全エポックの学習が終了する前に、機械学習モデルの出力の誤差が所定の範囲内に収束したと考えられる場合は、その時点で学習を終了させてもよい。
【0056】
<6.特徴>
以上の認識装置1によれば、タイヤの接地面の輪郭を表す画像に基づいて、人が作成するであろう接地面の輪郭が作成される。このため、従来の画像処理アルゴリズムを使用して接地面の輪郭を作成する場合よりも、上記正解データが従う前提条件に合致する、より自然な輪郭を自動で作成することができ、作成された輪郭に基づいて、タイヤの接地特性を効率的に導出することができる。また、学習用データセット134を、様々な種類のタイヤについて作成することにより、多様な種類のタイヤに対応して接地面の輪郭を作成することが容易となる。学習用データセット134は、これに加えてまたはこれに代えて、様々な(偏摩耗状態を含む)摩耗状態のタイヤについて作成することもできる。これにより、例えばタイヤが一定程度摩耗したときに、特定の性能が新品時と比較してどの程度低下する等、タイヤの状態と接地特性との関連について、より多くの知見が得られる。
【0057】
また、人が作成するタイヤの接地面の輪郭にも、作成する人による差異が生じ、接地面に関するパラメータの導出に影響を及ぼすことがある。この点、認識装置1によれば、学習用データセット134に基づいて学習された機械学習モデル131が用いられるため、学習用データセット134の均質性に応じて、ある程度安定した輪郭の作成が行われることが期待される。
【0058】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下に示す変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0059】
(1)
上記実施形態では、機械学習モデル131としてSegnetをベースとしたモデルが用いられたが、機械学習モデル131はこれに限定されない。機械学習モデル131は、例えば、Segnetと同様のセマンティックセグメンテーションのカテゴリに属するモデルである、全層畳み込みネットワーク(FCN)、FPN、PSPNet、RefineNet、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)ベースのモデル、U-Net、USegnet、TransNet、Large Kernel Matters、Deeplabv3+等をベースとするモデル、及びこれらを適宜組み合わせたモデルであってもよい。また、上記カテゴリに属する以外のモデル、例えば、ResNet、サポートベクタ―マシン(SVM)、ニューラルネットワーク(NN)モデル、K-NNモデル、クラスタリング、k-means、決定木、ロジスティック回帰モデルをベースとしたモデルやこれらを適宜組み合わせたモデル等が用いられてもよい。また、Segnetをベースとしたモデルの層構成も上記実施形態のものに限られず、例えば畳み込み層1310の追加または省略を行ったり、階層数の変更を行ったりしてもよい。
【0060】
(2)
上記実施形態では、正解データとして、タイヤの接地面の輪郭に相当するピクセルと、それ以外のピクセルとで、これらを区別するラベルが割り当てられたデータが使用された。しかしながら、正解データはこれに限られない。例えば、タイヤの接地面の輪郭に相当する輪郭ピクセル、及び輪郭ピクセルで囲まれる領域内にあるピクセルと、輪郭ピクセルで囲まれる領域外にあるピクセルとを区別するようなラベル付けが行われたデータを正解データとすることもできる。この場合、機械学習モデル131からの出力は、接地面全体の投影形状を表すデータとなり、この出力に基づいて、接地面の輪郭を推定することができる。すなわち、接地面の投影形状において、最も外側のピクセルを特定することにより、接地面の輪郭を推定することができる。これに加えてまたはこれに代えて、正解データは、ゴムブロックまたは溝に相当するピクセルに、これらを区別するラベル付けが行われたデータであってもよい。
【0061】
(3)
上記実施形態では、公知の画像処理技術により、接地面に関するパラメータが導出された。しかしながら、接地面に関するパラメータの少なくとも一部に対応するデータが、機械学習モデル131の出力に含まれるように機械学習モデル131を構成してもよい。また、接地面に関するパラメータの少なくとも一部も、機械学習モデル131とは別に構築された機械学習モデルによって導出されてもよい。
【0062】
(4)
上記実施形態では、認識装置1は1つの装置として構成されたが、各部10A~10D、及び記憶部13の機能は、複数の装置に分散されていてもよい。例えば、機械学習モデルの学習はネットワークを通じて提供されるサービスにより行い、構築された機械学習モデル131を定義するパラメータを認識装置1に保存することとしてもよい。
【0063】
(5)
認識装置1の制御部10は、CPUやGPUの他、ベクトルプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、その他人工知能専用チップ等を含んで構成されてもよい。また、制御部10の動作は、1または複数のプロセッサにより実行されてもよい。
【0064】
1 認識装置
10 制御部
10A 取得部
10B 導出部
10C 推定部
10D 学習部
131 機械学習モデル
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7