(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048945
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車両電子システム、車両電子システムの制御方法、中継機器、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H04L7/00 990
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155133
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 拓望
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達郎
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA18
5K047GG56
(57)【要約】
【課題】接続する通信網の通信規格が異なる電子機器(2、9)間において、時刻同期を行うことができるようにする。
【解決手段】車両電子システム(1)は、第1通信規格の第1通信網(6)に接続される第1電子機器(2)と、第2通信規格の第2通信網(8)に接続される第2電子機器(9)と、前記第1通信網(6)及び前記第2通信網(8)に接続される中継機器(7)と、を備え、前記中継機器(7)は、前記第1通信網(6)において同期された時刻を示す第1時刻情報(J1)を、前記第2電子機器(9)に送信する中継機器送信部(701)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信規格の第1通信網に接続される第1電子機器と、
第2通信規格の第2通信網に接続される第2電子機器と、
前記第1通信網及び前記第2通信網に接続される中継機器と、を備え、
前記中継機器は、前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する中継機器送信部を備える、
車両電子システム。
【請求項2】
前記第2電子機器は、
前記第1時刻情報を受信する第2電子機器受信部と、
前記第1時刻情報に基づいて計時する第2電子機器計時部と、
前記第2電子機器計時部が計時した時刻を示す第2時刻情報を付加したデータを送信する第2電子機器送信部と、を備える、
請求項1に記載の車両電子システム。
【請求項3】
前記中継機器は、前記第2時刻情報の付与を要求する要求情報を受信する中継機器受信部を備え、
前記中継機器送信部は、前記中継機器受信部が前記要求情報を受信した場合、前記第2電子機器に前記第1時刻情報を送信する、
請求項2に記載の車両電子システム。
【請求項4】
前記第2電子機器送信部は、
前記第2時刻情報の送信を停止する停止情報を前記第2電子機器受信部が受信した場合、前記第2時刻情報の送信を停止する、
請求項2又は3に記載の車両電子システム。
【請求項5】
前記中継機器送信部は、前記第1時刻情報と、前記第1時刻情報の生成を開始してから生成した前記第1時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報と、を前記第2電子機器に送信する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両電子システム。
【請求項6】
前記第1通信規格は、イーサネット(登録商標)規格であり、
前記第2通信規格は、CAN規格である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両電子システム。
【請求項7】
前記第1電子機器は、絶対時刻を示す絶対時刻情報を受信する絶対時刻受信部を備え、
前記第1時刻情報が示す時刻は、前記絶対時刻受信部が受信した前記絶対時刻情報が示す絶対時刻である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両電子システム。
【請求項8】
第1通信規格の第1通信網に接続される第1電子機器と、第2通信規格の第2通信網に接続される第2電子機器と、前記第1通信網及び前記第2通信網に接続される中継機器と、を備える車両電子システムの制御方法において、
前記中継機器が、前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する、
車両電子システムの制御方法。
【請求項9】
第1電子機器が接続する第1通信規格の第1通信網と、第2電子機器が接続する第2通信規格の第2通信網と、に接続される中継機器において、
前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する中継機器送信部を備える、
中継機器。
【請求項10】
第1電子機器が接続する第1通信規格の第1通信網と、第2電子機器が接続する第2通信規格の第2通信網と、に接続される中継機器のプロセッサを、
前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する中継機器送信部として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両電子システム、車両電子システムの制御方法、中継機器、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の通信規格の通信網に接続される中継機器が知られている。例えば、特許文献1は、イーサネット(登録商標)を用いた車載LANに接続された中継装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載のような中継機器は、通信規格が異なる複数の通信網に接続される場合がある。この場合、接続する通信網の通信規格が異なる電子機器間において、時刻同期を行いたいとする要望があるが、従来、この要望に応える仕組みがなかった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、接続する通信網の通信規格が異なる電子機器間において、時刻同期を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、第1通信規格の第1通信網に接続される第1電子機器と、第2通信規格の第2通信網に接続される第2電子機器と、前記第1通信網及び前記第2通信網に接続される中継機器と、を備え、前記中継機器は、前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する中継機器送信部を備える、車両電子システムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、接続する通信網の通信規格が異なる電子機器間において、時刻同期を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】第1ECU、中継ECU、及び第2ECUの構成を示すブロック図である。
【
図3】中継ECU、及び第2ECUの動作を示すフローチャートである。
【
図4】第1ECU、中継ECU、及び第2ECUの動作を示すフローチャートである。
【
図5】中継ECUの動作を示すフローチャートである。
【
図6】第1ECU、中継ECU、及び第2ECUの構成を示すブロック図である。
【
図7】中継ECU、及び第2ECUの構成を示すブロック図である。
【
図8】時刻同期を具体的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、車両電子システム1の構成を示す図である。
車両電子システム1は、車両Vに適用されるシステムである。車両電子システム1は、車両Vに搭載されるECU(Electronic Control Unit)を備える。車両電子システム1は、車両Vを制御するシステムとして機能してもよい。
【0009】
車両電子システム1は、第1ECU2を備える。第1ECU2は、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ3、及びTCU(Telematics Control Unit)4と接続する。第1ECU2は、第1通信網6を介して、中継ECU7が接続する。第1通信網6は、イーサネット規格の通信網である。
第1ECU2は、本開示の「第1電子機器」に相当する。中継ECU7は、本開示の「中継機器」に相当する。イーサネット規格は、本開示の「第1通信規格」に相当する。
【0010】
中継ECU7は、第1ECU2と第2ECU9との間におけるデータの送受信を中継する。中継ECU7は、第1ECU2と時刻同期している。中継ECU7と第1ECU2とは、例えばIEEE 802.1ASで規定されるgPTP(generalized Precision Time Protocol)の同期方式によって時刻同期している。中継ECU7には、第1通信網6と第2通信網8とが接続する。第2通信網8は、CAN規格の通信網である。第2通信網8には、第2ECU9が接続している。
第2ECU9は、本開示の「第2電子機器」に相当する。CAN規格は、本開示の「第2通信規格」に相当する。
【0011】
第2ECU9は、例えば車速センサなどのセンサ10やV2X(Vehicle to Everything)通信装置などのデバイスを制御するECUである。本実施の形態では、センサ10が第2ECU9に接続し、第2ECU9がセンサ10を制御する場合を例示する。
【0012】
図2は、第1ECU2、中継ECU7、及び第2ECU9の構成を示すブロック図である。
第1ECU2は、CPU(Central Processing Unit)などの第1プロセッサ20、第1メモリ21、及び第1通信部22を備える。
【0013】
第1メモリ21は、第1プロセッサ20が実行するプログラムやデータを記憶する記憶装置である。第1メモリ21は、例えばROM(Read Only Memory)などの不揮発性の記憶装置により構成される。第1メモリ21は、例えばRAM(Random Access Memory)などの、第1プロセッサ20のワークエリアを構成する揮発性の記憶装置を含んでもよい。第1メモリ21は、第1プロセッサ20により処理されるデータや、第1プロセッサ20が実行する第1制御プログラム211を記憶する。
【0014】
第1通信部22は、CAN規格に従った通信回路やコネクタなどのハードウェアを備え、第1プロセッサ20の制御に従って中継ECU7と通信する。第1通信部22には、第1通信バス6が接続される。
【0015】
第1プロセッサ20は、第1メモリ21が記憶する第1制御プログラム211を読み出して実行することにより、第1通信部201、第2通信部202、絶対時刻受信部203、第1計時部204、及び第1調整部205として機能する。
【0016】
第1通信部201は、第1通信部22を介して中継ECU7と通信する。
【0017】
第2通信部202は、TCU4を介して図示せぬサーバ装置と通信する。
【0018】
絶対時刻受信部203は、GNSSセンサ3から絶対時刻情報を受信する。絶対時刻情報は、絶対時刻を示す。絶対時刻とは、協定世界時(UTC)における所定の時刻からの形式的な経過秒数(実質的な経過秒数から、その間に挿入された閏秒を引き、削除された閏秒を加えたもの)として表される時刻であり、高精度で共有可能な時刻を指す。
【0019】
第1計時部204は、時刻を計時する。例えば、第1計時部204は、RTC(Real Time Clock)として動作して、現在時刻を計時する。第1計時部204が計時する時刻は、第1調整部205に調整される。
【0020】
第1調整部205は、第1計時部204が計時する時刻を調整する。絶対時刻受信部203が絶対時刻情報を受信すると、第1調整部205は、第1計時部204が計時する時刻を、受信された絶対時刻情報が示す絶対時刻に調整する。
【0021】
中継ECU7は、CPUなどの中継プロセッサ70、中継メモリ71、及び中継通信部72を備える。
中継プロセッサ70は、本開示の「プロセッサ」に相当する。
【0022】
中継メモリ71は、中継プロセッサ70が実行するプログラムやデータを記憶する記憶装置である。中継メモリ71は、例えばROMなどの不揮発性の記憶装置により構成される。中継メモリ71は、例えばRAMなどの、中継プロセッサ70のワークエリアを構成する揮発性の記憶装置を含んでもよい。中継メモリ71は、中継プロセッサ70により処理されるデータや、中継プロセッサ70が実行する中継制御プログラム711を記憶する。
中継制御プログラム711は、本開示の「プログラム」に相当する。
【0023】
中継通信部72は、イーサネット規格に従った通信回路やコネクタなどのハードウェアを備え、中継プロセッサ70の制御に従って第2ECU9と通信する。また、中継通信部72は、CAN規格に従った通信回路やコネクタなどのハードウェアを備え、中継プロセッサ70の制御に従って第2ECU9と通信する。
【0024】
中継プロセッサ70は、中継メモリ71が記憶する中継制御プログラム711を読み出して実行することにより、中継送信部701、中継受信部702、中継計時部703、及び生成部704として機能する。
中継送信部701は、本開示の「中継機器送信部」に相当する。中継受信部702は、本開示の「中継機器受信部」に相当する。
【0025】
中継送信部701は、中継通信部72を介して、第1ECU2及び第2ECU9へ情報を送信する。
【0026】
中継受信部702は、中継通信部72を介して、第1ECU2及び第2ECU9から情報を受信する。
【0027】
中継計時部703は、時刻を計時する。上述した通り、中継ECU7と第1ECU2とは、例えばgPTPの同期方式によって時刻同期している。よって、中継計時部703が計時する時刻は、第1計時部204が計時する時刻と同期している。
【0028】
生成部704は、中継計時部703が計時した時刻を示す第1時刻情報J1を生成する。生成部704は、生成した第1時刻情報J1を中継送信部701に出力する。
【0029】
第2ECU9は、CPUなどの第2プロセッサ90、第2メモリ91、及び第2通信部92を備える。
【0030】
第2メモリ91は、第2プロセッサ90が実行するプログラムやデータを記憶する記憶装置である。第2メモリ91は、例えばROMなどの不揮発性の記憶装置により構成される。第2メモリ91は、例えばRAMなどの、第2プロセッサ90のワークエリアを構成する揮発性の記憶装置を含んでもよい。第2メモリ91は、第2プロセッサ90により処理されるデータや、第2プロセッサ90が実行する第2制御プログラム911を記憶する。
【0031】
第2通信部92は、CAN規格に従った通信回路やコネクタなどのハードウェアを備え、第2プロセッサ90の制御に従って中継ECU7と通信する。
【0032】
第2プロセッサ90は、第2メモリ91が記憶する第2制御プログラム911を読み出して実行することにより、第2送信部901、第2受信部902、第2計時部903、及び第2調整部904として機能する。
第2送信部901は、本開示の「第2電子機器送信部」に相当する。第2受信部902は、本開示の「第2電子機器受信部」に相当する。第2計時部903は、本開示の「第2電子機器計時部」に相当する。
【0033】
第2送信部901は、第2通信部92を介して、中継ECU7へ情報を送信する。
【0034】
第2受信部902は、第2通信部92を介して、中継ECU7から情報を受信する。
【0035】
第2計時部903は、時刻を計時する。例えば、第2計時部903は、RTCとして動作して時刻を計時する。第2計時部903が計時する時刻は、第2調整部904に調整される。
【0036】
第2調整部904は、第2計時部903が計時する時刻を調整する。
【0037】
次に、本実施形態に係わる車両電子システム1の動作について説明する。
図3は、中継ECU7と第2ECU9との動作を示すフローチャートである。
図3に示す動作は、時刻同期に係わる動作である。
図3において、フローチャートFAは中継ECU7の動作を示し、フローチャートFBは第2ECU9の動作を示す。
【0038】
フローチャートFAで示すように、生成部704は、第1時刻情報J1を送信する周期が到来したか否かを判定する(ステップSA1)。
【0039】
生成部704は、第1時刻情報J1を送信する周期が到来していないと判定した場合(ステップSA1:NO)、再度、ステップSA1の判定を行う。
【0040】
一方、生成部704は、第1時刻情報J1を送信する周期が到来したと判定した場合(ステップSA1:YES)、第1時刻情報J1を生成する(ステップSA2)。ステップSA2で生成される第1時刻情報J1は、第1時刻情報J1の生成が開始されたときに中継計時部703が計時している時刻を示す。
【0041】
次いで、中継送信部701は、生成部704が生成した第1時刻情報J1を第2ECU9に送信する(ステップSA3)。
【0042】
フローチャートFBで示すように、第2受信部902は、第1時刻情報J1を中継ECU7から受信する(ステップSB1)。
【0043】
次いで、第2調整部904は、第2計時部903が計時する時刻を、ステップSB1で受信された第1時刻情報J1が示す時刻に調整する(ステップSB2)。ステップSB2の調整後は、ステップSB1で受信された第1時刻情報J1が示す時刻を基準にして、第2計時部903が時刻を計時することになる。
【0044】
この
図3の動作によって、第2ECU9は、計時する時刻を絶対時刻に同期させることができる。そのため、車両電子システム1が備える各ECUが計時する時刻を絶対時刻に同期させることができる。
【0045】
図4は、第1ECU2、中継ECU7、及び第2ECU9の動作を示すフローチャートである。
図4に示す動作は、第2ECU9が制御するセンサ10の検出値を車両Vの外部に送信する場合の動作である。
図4において、フローチャートFCは第1ECU2の動作を示し、フローチャートFDは中継ECU7の動作を示し、フローチャートFEは第2ECU9の動作を示す。
【0046】
フローチャートFEで示すように、第2送信部901は、センサデータJ2を送信するトリガーが発生したか否かを判定する(ステップSE1)。センサデータJ2は、センサ10の検出値を含むデータである。センサデータJ2を送信するトリガーとしては、センサ10から検出値を受信したことが例に挙げられる。
センサデータJ2は、本開示の「データ」に相当する。
【0047】
第2送信部901は、センサデータJ2を送信するトリガーが発生していないと判定した場合(ステップSE1:NO)、再度、ステップSE1の判定を行う。
【0048】
一方、第2送信部901は、センサデータJ2を送信するトリガーが発生したと判定した場合(ステップSE1:YES)、センサデータJ2を生成する(ステップSE2)。
【0049】
次いで、第2送信部901は、第2計時部903が計時した時刻を示す第2時刻情報J3を生成する(ステップSE3)。ステップSE3で生成される第2時刻情報J3は、第2時刻情報J3の生成を開始した時に第2計時部903が計時している時刻を示す。
【0050】
次いで、第2送信部901は、ステップSE2で生成したセンサデータJ2にステップSE3で生成した第2時刻情報J3を付加して、ステップSE2で生成したセンサデータJ2を中継ECU7に送信する(ステップSE4)。
【0051】
フローチャートFDで示すように、中継受信部702は、第2時刻情報J3が付加されたセンサデータJ2を第2ECU9から受信する(ステップSD1)。
【0052】
次いで、中継送信部701は、ステップSD1で受信された、第2時刻情報J3が付加されたセンサデータJ2を第1ECU2に送信する(ステップSD2)。
【0053】
フローチャートFCで示すように、第1通信部201は、第2時刻情報J3が付加されたセンサデータJ2を中継ECU7から受信する(ステップSC1)。
【0054】
次いで、第2通信部202は、ステップSC1で受信された、第2時刻情報J3が付加されたセンサデータJ2を車両Vの外部に送信する(ステップSC2)。
【0055】
この
図4の動作によって、センサデータJ2が示すセンサ10の検出値が、どの時刻における検出値であるのかを、センサデータJ2の受信側が判断できるようになる。よって、車両Vの外部装置が活用し易いセンサデータJ2を車両Vの外部装置に送信できるようになる。なお、車両Vの外部装置としては、車両Vから情報を収集する収集サーバや、車両Vから受信した情報を解析する解析サーバなどが例に挙げられる。
【0056】
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態の説明では、第1実施形態の車両電子システム1の各部の構成要素と同じ構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を適宜に省略する。
【0057】
上述した第1実施形態では、所定周期が到来するたびに中継ECU7が第1時刻情報J1を第2ECU9に送信する構成である。第2実施形態は、第1ECU2を介して、中継ECU7が車両Vの外部装置から第1要求情報を受信した場合に、中継ECU7が第1時刻情報J1の送信を開始する。第1要求情報は、センサデータJ2への時刻情報の付加を要求する情報である。また、第2実施形態は、第1ECU2を介して、中継ECU7が車両Vの外部から第2要求情報を受信した場合に、中継ECU7が第1時刻情報J1の送信を停止する。第2要求情報は、センサデータJ2への時刻情報の付加の停止を要求する情報である。
第1要求情報は、本開示の「要求情報」に相当する。
【0058】
第2実施形態に係わる車両電子システム1の動作について説明する。
図5は、中継ECU7の動作を示すフローチャートFFである。
【0059】
中継受信部702は、第1ECU2から第1要求情報を受信したか否かを判定する(ステップSF1)。
【0060】
中継受信部702は、第1ECU2から第1要求情報を受信していないと判定した場合(ステップSF1:NO)、再度、ステップSF1の判定を行う。
【0061】
中継受信部702が、第1ECU2から第1要求情報を受信したと判定した場合(ステップSF1:YES)、中継送信部701は、第1時刻情報J1の送信を開始する(ステップSF2)。
【0062】
なお、第2ECU9は、第1時刻情報J1の受信を開始すると、第1実施形態と同様にして、第2計時部903が計時する時刻を受信した第1時刻情報J1が示す時刻に調整する。また、第2ECU9は、第1時刻情報J1の受信を開始すると、第1実施形態と同様にして、第2時刻情報J3を付加したセンサデータJ2の送信を開始する。
【0063】
次いで、中継受信部702は、第2要求情報を受信したか否かを判定する(ステップSF3)。
【0064】
中継受信部702は、第1ECU2から第2要求情報を受信していないと判定した場合(ステップSF3:NO)、再度、ステップSF3の判定を行う。
【0065】
中継受信部702が、第1ECU2から第2要求情報を受信したと判定した場合(ステップSF3:YES)、中継送信部701は、第1時刻情報J1の送信を停止する(ステップSF4)。
【0066】
次いで、中継送信部701は、第2時刻情報J3の送信を停止させる停止情報を第2ECU9に送信する(ステップSF5)。
【0067】
第2ECU9は、停止情報を受信すると、第2時刻情報J3を付加することなく、センサデータJ2を送信する、或いは、第2時刻情報J3及びセンサデータJ2の送信を停止する。なお、第2ECU9は、停止情報の受信後、中継ECU7から第1時刻情報J1を受信すると、第2時刻情報J3を付加したセンサデータJ2を中継ECU7に送信する。
【0068】
[3.第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
第3実施形態の説明では、第1実施形態の車両電子システム1の各部の構成要素と同じ構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を適宜に省略する。
【0069】
第3実施形態は、第1実施形態と比較し、第2ECU9の時刻同期に係わる車両電子システム1の動作が異なる。
図6は、第3実施形態に係わる第1ECU2、中継ECU7、及び第2ECU9の構成を示すブロック図である。
【0070】
図6と
図2とを比較し、第3実施形態の中継プロセッサ70は、さらに計測部705として機能する。
計測部705は、経過時間を計測する。経過時間とは、第1時刻情報J1の生成が開始されてから生成された第1時刻情報J1が送信されるまでに経過した時間である。計測部705は、例えばカウンタなどの計測手段によって経過時間を計測する。
【0071】
次に、時刻同期に係わる車両電子システム1の動作について説明する。
図7は、中継ECU7と第2ECU9との動作を示すフローチャートである。
図7に示す動作は、時刻同期に係わる動作である。
図7において、フローチャートFGは中継ECU7の動作を示し、フローチャートFHは第2ECU9の動作を示す。
【0072】
フローチャートFGで示すように、生成部704は、第1時刻情報J1を送信する周期が到来したか否かを判定する(ステップSG1)。
【0073】
生成部704は、第1時刻情報J1を送信する周期が到来したと判定した場合(ステップSG1:NO)、再度、ステップSG1の判定を行う。
【0074】
一方、生成部704は、第1時刻情報J1を送信する周期が到来したと判定した場合(ステップSG1:YES)、第1時刻情報J1の生成を開始する(ステップSG2)。
【0075】
次いで、計測部705は、経過時間の計測を開始する(ステップSG3)。
【0076】
次いで、中継送信部701は、生成部704が生成した第1時刻情報J1を第2ECU9に送信する(ステップSG4)。
【0077】
次いで、計測部705は、経過時間の計測を終了する(ステップSG5)。
【0078】
次いで、中継送信部701は、計測部705が計測した経過時間を示す経過時間情報J4を第2ECU9に送信する(ステップSG6)。
【0079】
フローチャートFHで示すように、第2受信部902は、第1時刻情報J1を中継ECU7から受信する(ステップSH1)。
【0080】
次いで、第2調整部904は、第2計時部903が計時する時刻を、ステップSH1で受信された第1時刻情報J1が示す時刻に調整する(ステップSH2)。ステップSH2の調整後は、ステップSH1で受信された第1時刻情報J1が示す時刻を基準にして第2計時部903が時刻を計時することになる。
【0081】
次いで、第2受信部902は、経過時間情報J4を中継ECU7から受信する(ステップSH3)。
【0082】
次いで、第2調整部904は、第2計時部903が計時する時刻を、経過時間加算時刻に調整する(ステップSH4)。経過時間加算時刻とは、ステップSH2で調整した時刻を基準にして第2計時部903が計時した時刻に対して、ステップSH3で受信された経過時間情報J4が示す経過時間を加えた時刻である。
【0083】
図8を参照して、中継ECU7と第2ECU9との時刻同期を具体的に説明する。
図8は、時刻同期を具体的に説明するための図である。
【0084】
タイミングT1おいて、生成部704は、第1時刻情報J1の生成を開始する。タイミングT1は、中継計時部703が計時する時刻が「t1」である場合のタイミングである。
【0085】
タイミングT2において、中継送信部701は、タイミングT1で生成を開始した第1時刻情報J1を第2ECU9に送信する。タイミングT2は、中継計時部703が計時している時刻が「t2」である場合のタイミングである。時刻「t2」は、時刻「t1」からΔtだけ時が進んだ時刻である。タイミングT2で送信される第1時刻情報J1は、生成が開始された時刻である「t1」を示している。
【0086】
タイミングT2において第2受信部902が第1時刻情報J1を受信すると、第2ECU9の第2調整部904は、第2計時部903が計時する時刻を、第2受信部902が受信した第1時刻情報J1が示す時刻「t1」に調整する。この調整後、第2計時部903は、時刻「t1」を基準に計時を行う。
【0087】
タイミングT3において、中継ECU7の生成部704は、経過時間情報J4を第2ECU9に送信する。タイミングT3は、中継計時部703が計時する時刻が、時刻「t3」である場合のタイミングである。時刻「t3」は、時刻「t2」からさらに時が進んだタイミングである。タイミングT3で送信される経過時間情報J4は、「Δt」の経過時間を示している。
図8において、「Δt」は、時刻「t2」から時刻「t1」を引いた経過時間である。
【0088】
タイミングT3において第2受信部902が経過時間情報J4を受信すると、第2ECU9の第2調整部904は、第2計時部903が計時する時刻を、時刻「t4+Δt」に調整する。時刻「t4+Δt」は、経過時間加算時刻である。時刻「t4」は、調整された時刻「t1」を基準としてタイミングT3まで第2計時部903が計時した時刻を示す。
【0089】
[4.他の実施形態]
上述した各実施形態は、あくまでも一態様を示すものであり任意に変形及び応用が可能である。
【0090】
上述した実施形態では、第1通信網6に接続する中継ECU7以外のECUは、第1ECU2の他に多数存在してもよい。また、上述した実施形態では、第2通信網8に接続する中継ECU7以外のECUは、第2ECU9の他に多数存在してもよい。
【0091】
上述した実施形態では、第2ECU9が第2時刻情報J3を付加して送信するデータとして、センサデータJ2を例示した。しかしながら、第2ECU9が第2時刻情報J3を付加して送信するデータは、センサデータJ2に限定されず、第2ECU9に接続するデバイスが出力するデータ、情報、及び検出値を示すデータや、第2ECU9に接続するデバイスに係わるデータ、情報、及び検出値を示すデータ、第2ECU9に係わるデータ、情報、及び検出値を示すデータなどでもよい。
【0092】
第1プロセッサ20、中継プロセッサ70、及び第2プロセッサ90は、複数のプロセッサにより構成されてもよいし、単一のプロセッサで構成されてもよい。これらプロセッサは、上述した機能部を実現するようプログラムされたハードウェアでもよい。この場合、これらプロセッサは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成される。
【0093】
また、
図2及び
図6に示した車両電子システム1の各部の構成は一例であって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0094】
また、
図3、
図4、及び
図7に示す動作のステップ単位は、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本開示が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本開示の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0095】
また、上述した車両電子システム1の制御方法を、プロセッサを用いて実現する場合、このプロセッサに実行させるプログラムを記録媒体、又はこのプログラムを伝送する伝送媒体の態様で構成することも可能である。すなわち、第1制御プログラム211は、可搬型の情報記録媒体に第1制御プログラム211を記録させた状態で実現することも可能である。情報記録媒体は、ハードディスク等の磁気的記録媒体、CD等の光学的記録媒体、USB(Universal Serial Bus)メモリやSSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイスが挙げられるが、その他の記録媒体を用いることも可能である。また、中継制御プログラム711は、第1制御プログラム211と同様、可搬型の情報記録媒体に中継制御プログラム711を記録させた状態で実現することも可能である。また、第2制御プログラム911は、第1制御プログラム211と同様、可搬型の情報記録媒体に第2制御プログラム911を記録させた状態で実現することも可能である。
【0096】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0097】
(構成1)第1通信規格の第1通信網に接続される第1電子機器と、第2通信規格の第2通信網に接続される第2電子機器と、前記第1通信網及び前記第2通信網に接続される中継機器と、を備え、前記中継機器は、前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する中継機器送信部を備える、車両電子システム。
【0098】
構成1の車両電子システムによれば、第2電子機器が、第1時刻情報が示す時刻に同期できるようになるため、第1通信網に接続する第1電子機器と、第2通信網に接続する第2電子機器とが時刻同期を行えるようになる。よって、接続する通信網の通信規格が異なる電子機器間において、時刻同期を行うことができる。また、構成1の車両電子システムによれば、中継機器からの情報送信で第1電子機器と第2電子機器とが時刻同期できるようになるため、中継機器と第2電子機器との間で往復の通信が必要なく、時刻同期に係わる通信量を低減できる。
【0099】
(構成2)前記第2電子機器は、前記第1時刻情報を受信する第2電子機器受信部と、前記第1時刻情報に基づいて計時する第2電子機器計時部と、前記第2電子機器計時部が計時した時刻を示す第2時刻情報を付加したデータを送信する第2電子機器送信部と、を備える、構成1に記載の車両電子システム。
【0100】
構成2の車両電子システムによれば、接続する通信網の通信規格が異なる電子機器間において同期した時刻情報を、送信するデータに付加できる。そのため、送信するデータが、どの時刻におけるデータであるを、データの受信側が判断できるようになる。よって、データの受信側が活用し易いデータを送信できるようになる。
【0101】
(構成3)前記中継機器は、前記第2時刻情報の付与を要求する要求情報を受信する中継機器受信部を備え、前記中継機器送信部は、前記中継機器受信部が前記要求情報を受信した場合、前記第2電子機器に前記第1時刻情報を送信する、構成2に記載の車両電子システム。
【0102】
構成3の車両電子システムによれば、第2時刻情報の付与が必要な場合に第1時刻情報を送信するため、不必要に中継機器と第2電子機器とが通信することを抑制できる。そのため、車両電子システムにおける電子機器間の通信量を低減できる。
【0103】
(構成4)前記第2電子機器送信部は、前記第2時刻情報の送信を停止する停止情報を前記第2電子機器受信部が受信した場合、前記第2時刻情報の送信を停止する、構成2又は構成3に記載の車両電子システム。
【0104】
構成4の車両電子システムによれば、第2時刻情報の送信を停止できる構成としたため、不必要に中継機器と第2電子機器とが通信することを抑制できる。そのため、車両電子システムにおける電子機器間の通信量を低減できる。
【0105】
(構成5)前記中継機器送信部は、前記第1時刻情報と、前記第1時刻情報の生成を開始してから生成した前記第1時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報と、を前記第2電子機器に送信する、構成1から構成4のいずれか一つに記載の車両電子システム。
【0106】
構成5の車両電子システムによれば、第1時刻情報の生成を開始してから第1時刻情報を送信するまでの経過時間を考慮して、第2電子機器が計時する時刻を調整できるようなる。そのため、接続する通信網の通信規格が異なる電子機器間において、精度良く時刻同期を行うことができる。
【0107】
(構成6)前記第1通信規格は、イーサネット(登録商標)規格であり、前記第2通信規格は、CAN規格である、構成1から構成5のいずれか一つに記載の車両電子システム。
【0108】
構成6の車両電子システムによれば、イーサネット規格の通信網に接続する電子機器と、CAN規格の通信網に接続する電子機器との間で時刻同期を行うことができる。また、CA規格の通信網を車両電子システムに採用した場合でも電子機器間で時刻同期できるため、車両電子システムのコスト低下を図りつつ、接続する通信網の通信規格が異なる電子機器間において、時刻同期を行うことができる。
【0109】
(構成7)前記第1電子機器は、絶対時刻を示す絶対時刻情報を受信する絶対時刻受信部を備え、前記第1時刻情報が示す時刻は、前記絶対時刻受信部が受信した前記絶対時刻情報が示す絶対時刻である、構成1から構成6のいずれか一つに記載の車両電子システム。
【0110】
構成7の車両電子システムによれば、接続する通信網の通信規格が異なる電子機器間において、同期する時刻を絶対時刻に調整できる。
【0111】
(構成8)第1通信規格の第1通信網に接続される第1電子機器と、第2通信規格の第2通信網に接続される第2電子機器と、前記第1通信網及び前記第2通信網に接続される中継機器と、を備える車両電子システムの制御方法において、前記中継機器が、前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する、車両電子システムの制御方法。
【0112】
構成8の車両電子システムの制御方法によれば、構成1の車両電子システムの効果と同様の効果を奏する。
【0113】
(構成9)第1電子機器が接続する第1通信規格の第1通信網と、第2電子機器が接続する第2通信規格の第2通信網と、に接続される中継機器において、前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する中継機器送信部を備える、中継機器。
【0114】
構成9の中継機器によれば、構成1の車両電子システムの効果と同様の効果を奏する。
【0115】
(構成10)第1電子機器が接続する第1通信規格の第1通信網と、第2電子機器が接続する第2通信規格の第2通信網と、に接続される中継機器のプロセッサを、前記第1通信網において同期された時刻を示す第1時刻情報を、前記第2電子機器に送信する中継機器送信部として機能させる、プログラム。
【0116】
構成10のプログラムによれば、構成1の車両電子システムの効果と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0117】
1…車両電子システム、2…第1ECU(第1電子機器)、3…GNSSセンサ、4…TCU、6…第1通信網、7…中継ECU(中継機器)、8…第2通信網、9…第2ECU(第2電子機器)、10…センサ、20…第1プロセッサ、21…第1メモリ、22…第1通信部、70…中継プロセッサ(プロセッサ)、71…中継メモリ、72…中継通信部、90…第2プロセッサ、91…第2メモリ、92…第2通信部、201…第1通信部、202…第2通信部、203…絶対時刻受信部、204…第1計時部、205…第1調整部、211…第1制御プログラム、701…中継送信部(中継機器送信部)、702…中継受信部(中継機器受信部)、703…中継計時部、704…生成部、705…計測部、711…中継制御プログラム(プログラム)、901…第2送信部(第2電子機器送信部)、902…第2受信部(第2電子機器受信部)、903…第2計時部(第2電子機器計時部)、904…第2調整部、911…第2制御プログラム、J1…第1時刻情報、J2…センサデータ(データ)、J3…第2時刻情報、V…車両。