(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048956
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】水中探知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/526 20060101AFI20240402BHJP
G01S 7/62 20060101ALI20240402BHJP
G01S 7/537 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G01S7/526 M
G01S7/62 C
G01S7/537
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155151
(22)【出願日】2022-09-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 別紙「販売一覧」記載の日時に、当該別紙記載の場所にて販売
(71)【出願人】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174757
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和樹
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB01
5J083AB06
5J083AC13
5J083AD04
5J083AE04
5J083AE06
5J083AF16
5J083BA12
5J083BE23
5J083CA01
5J083CB01
5J083EA14
5J083EA27
5J083EB02
(57)【要約】
【課題】探知対象物を明確に表示しつつ、混信に基づく表示を削除できる水中探知装置を提供すること
【解決手段】一の探知において得られた判定対象受信信号23bに記憶された一の深度からの反射強度R1[i]を判定対象強度とし、一つ前の探知において得られた直前探知受信信号23aに記憶された一の深度と同一深度からの反射強度R0[i]を第一比較対象強度とし、一つ後の探知において得られた受信信号を直後探知受信信号23cに記憶された一の深度と同一の深度からの反射強度R2[i]を第二比較対象強度として、判定対象強度が第一比較対象強度及び前記第二比較対象強度のいずれとも所定量(強度基準値22b(RTH))以上強い深度が、少なくとも所定長さ(連続長さ閾値22c(CTH))連続して存在する場合に(S17:Yes)、それらの深度において受信した反射波が、別の超音波の混信によるものであると見なし判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を水中に送信し、その反射波を受信可能な振動子と、
その振動子より超音波を送信し、前記振動子にて水中の各深度より反射された前記超音波の反射波を受信することで、一回の探知を実行する探知実行手段と、
その探知実行手段による一回の探知において前記振動子が前記反射波を受信して生じる、各深度からの反射波の反射強度を示す受信信号に基づいて、前記水中の深度を長手方向として各深度からの前記反射強度を表した一本の表示線を形成する形成手段と、
その形成手段により形成される前記表示線を古い順に配列した探知画像を表示する表示手段と、を備えた水中探知装置であって、
一の探知において得られた前記受信信号における一の深度からの反射強度を判定対象強度とし、前記一の探知の一つ前の探知において得られた前記受信信号における前記一の深度と同一深度からの反射強度を第一比較対象強度とし、前記一の探知の一つ後の探知において得られた前記受信信号における前記同一深度からの反射強度を第二比較対象強度として、前記判定対象強度と前記第一比較対象強度と、及び、前記判定対象強度と前記第二比較対象強度とを比較する強度比較手段と、
その強度比較手段の比較の結果、前記一の探知において、前記判定対象強度が前記第一比較対象強度及び前記第二比較対象強度のいずれとも所定量以上強い深度が少なくとも所定長さ連続して存在する場合に、それらの深度において受信した前記反射波が、別の超音波の混信によるものであると見なし判定する判定手段と、
その判定手段により前記混信によるものと見なされた前記一の探知における前記深度の反射強度を是正する是正手段と、
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
前記是正手段は、前記一つ前の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度、及び/又は、前記一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度を加味して、前記一の探知における一の深度の反射強度を是正することを特徴とする請求項1記載の水中探知装置。
【請求項3】
前記是正手段は、前記一つ前の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値、及び/又は、前記一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値を加味して、前記一の探知における一の深度の反射強度を是正することを特徴とする請求項2記載の水中探知装置。
【請求項4】
前記是正手段は、前記一つ前の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値と、前記一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値との平均値を、前記一の探知における一の深度の反射強度として是正することを特徴とする請求項3記載の水中探知装置。
【請求項5】
前記超音波として、時間と共に周波数が変化するものを使用することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水中探知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に送信された超音波の反射波に基づいて探知対象物を探知する水中探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波の送受信によって水中の魚群などの探知対象物を探知する装置として魚群探知装置といった水中探知装置が知られている(例えば、特許文献1)。水中探知装置は、例えば船舶の船底などに配置される振動子から細いビーム状の超音波を水中や水底に向けて送信(照射)する。送信された超音波は、水中の各深度に存在する探知対象物や水底等から反射される。
【0003】
水底探知装置は、振動子より超音波を送信し、その反射波を振動子によって受信することで一回の探知を実行し、その一回の探知により得られる受信信号に基づいて、水中の深度を長手方向として、各深度からの反射波の反射強度(レベル)を色別に示す一本の表示線を形成する。水底探知装置は、形成した表示線を古い順に配列し、それを探知画像として表示装置に表示する。
【0004】
図7は、その探知画像50を示したものである。表示線は、長手方向(即ち、深度が変化する方向)が探知画像50の縦方向に沿うように表示される。一回の探知が実行される毎に、それまで表示していた表示線は一本ずつ左側にずらされ、新たな探知に基づく表示線が探知画像50の右端に表示される。つまり、探知画像50は、左端から古い順に表示線が配列されたものとなる。
【0005】
そして、上述した通り、各表示線には、各深度において探知対象物や水底等から反射された反射波の反射強度が色別で示されるので、探知画像50には、探知対象物51や水底52が、それらの存在する深度の位置に現れる。これにより、使用者は、探知画像50を視ることで、探知対象物や水底が存在する水中の深度を把握できる。
【0006】
このような水中探知装置において、従来より混信(干渉)が問題となっている。混信とは、近くに存在する別の水中探知装置等から送信された超音波の反射波を受信することを言い、それが探知画像50に、破線状のノイズ53として表示される。
【0007】
特許文献1は、そのような問題を解決するために、読み出された各深度の反射強度を一表示線分遅延させ、深度毎に、その遅延された反射強度と次に読み出された反射強度とを比較し、強度の小さい方を表示情報として選出して出力する弱者選択処理を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の弱者選択処理では、単純に一表示線分遅延された反射強度と次に読み出された反射強度との大小関係を比較し、強度の小さい方を選出するだけであるので、場合よっては、本来の探知対象物の反応(探知対象物からの反射強度に基づく表示)の一部が破棄されてしまうおそれがあるという問題点があった。
【0010】
また、近年の水中探知装置では、超音波の照射エネルギーを高めることを目的として長い時間超音波を照射しつつ、探知分解能を高めるために、時間と共に周波数が変化するチャープ波を超音波に用いたものが増えてきた。しかしながら、チャープ波を用いた場合、探知分解能の高さによって探知対象物の反応(探知対象物からの反射強度に基づく表示)が細くなるため、探知対象物の反応の一部が破棄されてしまうと、探知対象物の反応そのものが見えづらい、または、完全に失ってしまう等、上記問題点がより顕著になるおそれもあった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、探知対象物を明確に表示しつつ、混信に基づく表示を削除できる水中探知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために本発明の第1の態様は、超音波を水中に送信し、その反射波を受信可能な振動子と、その振動子より超音波を送信し、前記振動子にて水中の各深度より反射された前記超音波の反射波を受信することで、一回の探知を実行する探知実行手段と、その探知実行手段による一回の探知において前記振動子が前記反射波を受信して生じる、各深度からの反射波の反射強度を示す受信信号に基づいて、前記水中の深度を長手方向として各深度からの前記反射強度を表した一本の表示線を形成する形成手段と、その形成手段により形成される前記表示線を古い順に配列した探知画像を表示する表示手段と、を備えた水中探知装置であって、一の探知において得られた前記受信信号における一の深度からの反射強度を判定対象強度とし、前記一の探知の一つ前の探知において得られた前記受信信号における前記一の深度と同一深度からの反射強度を第一比較対象強度とし、前記一の探知の一つ後の探知において得られた前記受信信号における前記同一深度からの反射強度を第二比較対象強度として、前記判定対象強度と前記第一比較対象強度と、及び、前記判定対象強度と前記第二比較対象強度とを比較する強度比較手段と、その強度比較手段の比較の結果、前記一の探知において、前記判定対象強度が前記第一比較対象強度及び前記第二比較対象強度のいずれとも所定量以上強い深度が少なくとも所定長さ連続して存在する場合に、それらの深度において受信した前記反射波が、別の超音波の混信によるものであると見なし判定する判定手段と、その判定手段により前記混信によるものと見なされた前記一の探知における前記深度の反射強度を是正する是正手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る水中探知装置において、前記是正手段は、前記一つ前の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度、及び/又は、前記一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度を加味して、前記一の探知における一の深度の反射強度を是正することを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様は、第2の態様に係る水中探知装置において、前記是正手段は、前記一つ前の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値、及び/又は、前記一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値を加味して、前記一の探知における一の深度の反射強度を是正することを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様は、第3の態様に係る水中探知装置において、前記是正手段は、前記一つ前の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値と、前記一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値との平均値を、前記一の探知における一の深度の反射強度として是正することを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様に係る水中探知装置であって、前記超音波として、時間と共に周波数が変化するものを使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の態様に係る水中探知装置によれば、探知実行手段により一回の探知が次のように実行される。即ち、超音波が振動子より水中に送信されると、その超音波が探知対象物等によって反射され、その反射波が振動子によって受信される。その一回の探知において振動子が反射波を受信して生じる、各深度からの反射波の反射強度を示す受信信号に基づいて、水中の深度を長手方向として各深度からの反射波の反射強度を表した一本の表示線が、形成手段により形成される。表示線は、古い順に配列されて探知画像を構成し、その探知画像が表示手段により表示される。
【0018】
ここで、別の超音波が混信した場合、一の探知において得られた受信信号の中に、所定範囲の深度にわたって極めて強い反射強度の信号が現れる一方、前後の探知において得られた受信信号には、その所定範囲の深度にそのような強い反射強度の信号が現れることは稀である。
【0019】
そこで、本発明の第1の態様に係る水中探知装置によれば、一の探知において得られた受信信号における一の深度からの反射強度を判定対象強度とし、一の探知の一つ前の探知において得られた受信信号における一の深度と同一深度からの反射強度を第一比較対象強度とし、一の探知の一つ後の探知において得られた受信信号における一の深度と同一深度からの反射強度を第二比較対象強度として、判定対象強度と第一比較対象強度と、及び、判定対象強度と第二比較対象強度とが、強度比較手段により比較される。その強度比較手段の比較の結果、一の探知において、判定対象強度が第一比較対象強度及び前記第二比較対象強度のいずれとも所定量以上強い深度が、少なくとも所定長さ連続して存在する場合に、判定手段によって、それらの深度において受信した反射波が、別の超音波の混信によるものであると見なし判定される。そして、混信によるものと見なされた一の探知における深度の反射強度が、是正手段により是正される。
【0020】
これにより、混信の判定が精度よく行われた上で、混信によるものとみなされる深度の反射強度のみが是正されるので、探知対象物を明確に表示しつつ、混信に基づく表示を削除できるという効果がある。
【0021】
本発明の第2の態様に係る水中探知装置によれば、第1の態様に係る水中探知装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、混信によるものと見なされた一の探知における一の深度の反射強度の是正は、是正手段によって、一つ前の探知において得られた一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度、及び/又は、一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度を加味して行われる。これにより、探知対象物により超音波の反射された深度が、一つ前及び/又は一つ後の探知においてずれが生じたとしても、一つ前及び/又は一つ前後の探知において、是正したい一の探知における一の深度と同一深度だけでなく、一の深度を含む所定範囲の深度の反射強度が加味されて、その一の探知における一の深度の反射強度が是正されるので、その一の探知における一の深度において、探知対象物の反応を再現でき、探知対象物を明確に表示できるという効果がある。
【0022】
本発明の第3の態様に係る水中探知装置によれば、第2の態様に係る水中探知装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、混信によるものと見なされた一の探知における一の深度の反射強度の是正は、是正手段によって、一つ前の探知において得られた一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値、及び/又は、一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値を加味して行われる。このように、最大値を導出するだけで、高い演算処理性能を必要とすることなく、探知対象物の反応を明確に再現できるという効果がある。
【0023】
本発明の第3の態様に係る水中探知装置によれば、第2の態様に係る水中探知装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、一つ前の探知において得られた一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値と、一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値との平均値が、混信によるものと見なされた一の探知における一の深度の反射強度として是正される。これにより、探知対象物により超音波の反射された深度が、前後の探知においてずれが生じたとしても、一つ前の探知と一つ後の探知との両方の、一の深度を含む所定範囲の深度の反射強度が加味されるので、探知対象物の反応をより精度よく再現できる。一方で、一つ前の探知において得られた一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値と、一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度の最大値とを導出し、それらの最大値の平均値を算出するだけであるので、高い演算処理性能を必要とすることなく、探知対象物の反応をより明確に再現できるという効果がある。
【0024】
本発明の第5の態様に係る水中探知装置によれば、第1から第4のいずれかの態様に係る水中探知装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、超音波として、時間と共に周波数が変化するものが使用される。このような超音波を使用する場合、探知分解能を高めることができるが、その結果として探知対象物の反応も細くなる傾向にある。しかしながら、本発明の第1から第3のいずれかの態様に係る水中探知装置によって、混信による是正が行われたとしても、探知対象物の反応が消滅することを抑制でき、探知対象物を明確に表示できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)は、本発明の水中探査装置の一実施形態である魚群探知装置の構成を概略的に示す概略図であり、(b)は、同魚群探知装置が搭載された船舶によって水中の探知を行う場合の状態を側面より示す模式図である。
【
図2】同魚群探知装置の電気的構成を示したブロック図である。
【
図3】同魚群探知装置のCPUにより実行される混信判定処理を示すフローチャートである。
【
図4】同魚群探知装置のCPUにより実行される是正処理を示すフローチャートである。
【
図5】(a)は、混信が発生した場合の各深度からの反射強度の様子を示した概略図であり、(b)は、同是正処理による反射強度の是正方法を説明する図である。
【
図6】(a)は、同混信判定処理及び同是正処理を実行しない場合の探知画像の一部を示した図であり、(b)は、同混信判定処理及び同是正処理を実行した場合の探知画像の一部を示した図であり、(c)は、従来の弱者選択処理を実行した場合の探知画像の一部を示した図である。
【
図7】従来の水底探知装置の探知画像を模式的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。よって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。従って、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0027】
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の水中探知装置の一実施形態に係る魚群探知装置12の概略構成について説明する。
図1(a)は、その魚群探知装置12の構成を概略的に示す概略図であり、
図1(b)は、魚群探知装置12が搭載された船舶11によって水中の探知を行う場合の状態を側面より示す模式図である。
図2は、魚群探知装置12の電気的構成を示したブロック図である。
【0028】
図1に示す通り、魚群探知装置12は船舶11に搭載され、該船舶11直下又は周囲の水中に対し、魚群などの探知対象物Gの探知を行うものである。魚群探知装置12は、本体13と、本体13に設けられ使用者からの入力を受け付ける操作ボタン14と、本体13に一体形成されて、探知結果である探知画像等を表示する表示装置15と、超音波TBを送受信する振動子16とにより構成される。
【0029】
振動子16は、船舶11の船底又は船尾に固着され、ケーブルによって本体13と電気的に接続されている。振動子16は、本体13の送信回路26(
図2参照)から送信される信号によって、細いビーム状の超音波TBを1つの方向(例えば、船舶11の真下方向)に向けて送信(照射)する。
【0030】
送信された超音波TBは、水中の探知対象物Gや、海底,湖底,川底,池の底といった水底などにより反射される。振動子16は、各深度に存在する探知対象物Gや水底等より反射された超音波TBの反射波を受信し、その受信により生じた、反射波の反射強度に対応したアナログ信号を、本体13の受信回路27(
図2参照)へ送信する。
【0031】
本体13は、例えば船舶11の操舵室内に配置され、内部に
図2に示す制御装置20が設けられている。制御装置20は、魚群探知装置12の動作を制御するものであり、
図2に示す通り、CPU(Central Proccesing Unit)21と、フラッシュメモリ22と、RAM(Random Access Memory)23とを有しており、それらがバスラインを介して入出力ポート24に接続されている。
【0032】
また、制御装置20には、VRAM(Video RAM)25、送信回路26、受信回路27が設けられており、これらも入出力ポート24に接続されている。また、入出力ポート24には、上述した操作ボタン14が接続されるほか、表示装置15がVRAM25を介して接続され、振動子16が送信回路26及び受信回路27を介して接続される。
【0033】
CPU21は、制御装置20の中心的な演算処理を実行する中央演算処理装置である。CPU21は、フラッシュメモリ22に記憶されたプログラムデータ22aや固定値データ等に基づいて、RAM23に各種データを一時的に記憶し、また、読み出しながら、魚群探知装置12の動作を制御する。このCPU21の動作によって、制御装置20は、本発明の探知実行手段、形成手段、表示手段の一部、強度比較手段、判定手段及び是正手段として機能する。
【0034】
フラッシュメモリ22は、書き換え可能な不揮発性のメモリであり、プログラムデータ22aや各種固定値データを記憶する。プログラムデータ22aは、魚群探知装置12の動作を制御するためにCPU21が実行する一連の命令の集まりである。
図3及び
図4に示す混信判定処理及び是正処理をCPU21が実行するためのプログラムも、このプログラムデータ22aに含まれる。
【0035】
ここで、混信判定処理は、振動子16より超音波TBを送信し、振動子16にて水中の各深度より反射された超音波TBの反射波を受信することで実行される一回の探知において得られた、各深度からの超音波TBの反射波の反射強度を示す受信信号中に、別の超音波の混信(干渉)によるものが含まれているか否かを判定する処理である。
【0036】
混信判定処理の詳細については
図3を参照して説明するが、概要を説明すると、一の探知において得られた受信信号における一の深度からの反射強度を判定対象強度とし、一の探知の一つ前の探知において得られた受信信号における一の深度と同一深度からの反射強度を第一比較対象強度とし、一の探知の一つ後の探知において得られた受信信号における同一深度からの反射強度を第二比較対象強度として、判定対象強度と第一比較対象強度と、及び、判定対象強度と第二比較対象強度とを比較する。
【0037】
その比較の結果、一の探知において、判定対象強度が第一比較対象強度及び第二比較対象強度のいずれとも所定量以上強い深度が少なくとも所定長さ連続して存在する場合に、それらの深度において受信した反射波が、別の超音波の混信によるものであると見なし判定する。
【0038】
是正処理は、その混信判定処理により、一の探知において得られた各深度からの反射波の反射強度のうち、混信判定処理により混信によるものと見なされた反射強度を是正する処理である。是正処理の詳細については、
図4を参照して説明する。
【0039】
フラッシュメモリ22に記憶される固定値データとしては、例えば、探知で使用する超音波TBの周波数帯域や、探知対象物Gを探知する探知範囲(深度)等、魚群探知装置12を動作させるためにプログラムデータ22aで使用される各種パラメータが含まれる。各種パラメータの一部又は全部は、使用者が操作ボタン14を操作することで、その設定値を変更できるようになっている。
【0040】
また、各種パラメータの一種として、
図2に示す通り、強度差閾値22b、連続長さ閾値22cがフラッシュメモリ22に記憶される。強度差閾値22b及び連続長さ閾値22cは、いずれも混信判定処理の中で使用されるパラメータである。
【0041】
強度差閾値22bは、判定対象強度と第一比較対象強度と、及び、判定対象強度と第二比較対象強度との比較に用いられる閾値RTH(
図3参照)である。具体的には、判定対象強度が第一比較対象強度よりも大きく、その差が強度差閾値22b(RTH)以上の場合、判定対象強度が第一比較対象強度より所定量以上強いと判断する。また、判定対象強度が第二比較対象強度よりも大きく、その差が強度差閾値22b(RTH)以上の場合、判定対象強度が第二比較対象強度より所定量以上強いと判断する。つまり、この「所定量」が、強度差閾値22b(RTH)である。
【0042】
連続長さ閾値22cは、各深度において受信した反射が別の超音波の混信によるものであると見なし判定する条件である、判定対象強度が第一比較対象強度及び第二比較対象強度のいずれとも所定量強いと判断された深度が連続して存在する所定長さCTH(
図3参照)である。
【0043】
つまり、一の探知において、判定対象強度が第一比較対象強度及び第二比較対象強度のいずれとも所定量以上強い深度が、少なくとも連続長さ閾値22c(CTH)連続して存在する場合に、それらの深度において受信した反射波が、別の超音波の混信によるものであると見なし判定する。
【0044】
これら強度差閾値22b及び連続長さ閾値22cは、使用者による操作ボタン14の操作に基づいて、その設定値が変更できるようにしてもよい。これにより、混信した別の超音波の強度や送信長さ(送信時間)といった特性に合うように、強度差閾値22b及び連続長さ閾値22cを変更することで、混信の判定の精度を高めることができる。
【0045】
なお、制御装置20は、フラッシュメモリ22に代えて、又は、フラッシュメモリ22に加えて、書き換え不能な不揮発性メモリであるROM(Read Only Memry)を備え、プログラムデータ22aの一部若しくは全部、又は、固定値データの一部若しくは全部がROMに記憶されるようにしてもよい。
【0046】
RAM23は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、プログラムデータ22aのプログラムに従ってCPU21が演算処理を行う場合に、各種データを一時的に記憶する。RAM23には、各種データとして、直前探知受信信号23a、判定対象受信信号23b、直後探知受信信号23cが少なくとも記憶される。
【0047】
直前探知受信信号23a、判定対象受信信号23b、直後探知受信信号23cは、いずれも混信判定処理及び是正処理を実行するCPU21によって使用される。このうち、判定対象受信信号23bは、一回の探知を繰り返すことで得られた各受信信号のうち、混信の判定対象とする一の探知において得られた受信信号R1[i](
図3参照)である。
【0048】
直前探知受信信号23aは、混信の判定対象とした一の探知の一つ前の探知において得られた受信信号R0[i](
図3参照)である。直後探知受信信号23cは、混信の判定対象とした一の探知の一つ後の探知において得られた受信信号R2[i](
図3参照)である。
【0049】
ここでiは、深度に対応した変数であり、0~(IMAX-1)の整数を取る。ここで、IMAXは、一の探知における各深度からの反射波の反射強度の最大サンプリング数である。i=0は、水面(又は、振動子16の位置)に対応する深度であり、iの値が大きくなるほど、深い深度に対応する。そして、R0[i]、R1[i]、R2[i]には、それぞれの探知において、変数iに対応する深度にて反射された超音波TBの反射波の反射強度が格納される。
【0050】
なお、CPU21は、一回の探知を終える毎に是正判定処理を実行すると、判定対象受信信号23bとして記憶されていた受信信号R1[i]が、直前探知受信信号23aに複写され、直後探知受信信号23cとして記憶されていた受信信号R2[i]が、判定対象受信信号23bに複写される。そして、終えたばかりの探知において得られた受信信号が、直後探知受信信号23cに記憶させる。
【0051】
つまり、最新の探知において得られた受信信号が直後探知受信信号23cとなり、2番目に新しい探知において得られた受信信号が判定対象受信信号23bとなり、3番目に新しい探知において得られた受信信号が直前探知受信信号23aとなる。よって、2番目に新しい探知において得られた受信信号が、混信の判定対象となる。
【0052】
また、是正処理では、混信判定処理により、判定対象受信信号23bで示される、一の探知において得られた各深度からの反射波の反射強度の中に混信によるものと見なされた反射強度がある場合、その反射強度を、直前探知受信信号23a及び直後探知受信信号23cとを加味して是正する。是正された反射強度は、判定対象受信信号23bに対して上書きされ、全ての深度に対して混信判定処理及び是正処理が終了した時点で、是正された判定対象受信信号23bに基づいて、水中の深度を長手方向として各深度からの反射強度を表した一本の表示線が形成される。そして、この新たに形成された一本の表示線を含む探知画像を表示装置15に表示するための情報が、VRAM25に格納される。
【0053】
VRAM25は、魚群探知装置12の探知結果である探知画像をはじめ、表示装置15に表示する画像の画像データを格納するメモリである。CPU21は、表示装置15に表示する画像の画像データを生成してVRAM25に格納し、表示装置15は、VRAM25に格納された画像データに基づいて、各種画像を表示する。
【0054】
送信回路26は、CPU21からの指示に基づいて、超音波TBを送信するように振動子16を駆動制御する回路である。ここで、送信回路26は、超音波TBが、時間と共に周波数が増加又は減少するチャープ波となるように、振動子16に対して信号を出力する。超音波TBをチャープ波とすることで、長時間照射しても探知解像度を高めることができ、強い照射エネルギーと高い探知解像度との両立を図ることができる。
【0055】
受信回路27は、振動子16が超音波TBの反射波を受信して生じる、その反射波の反射強度に対応したアナログ信号を振動子16より受信し、そのアナログ信号から、振動子16が受信した反射波の反射強度を示すディジタル値に変換して、CPU21へ送信する回路である。受信回路27は、図示しないAD変換器を有しており、振動子16からのアナログ信号を所定時間毎にサンプリングしながらディジタル値に変換する。振動子16から超音波TBを送信した後、所定時間毎に振動子16にて受信した反射波に基づく信号をサンプリングすることで、その超音波TBに対して各深度から反射された反射波の反射強度が得られる。
【0056】
次いで、以上のように構成された魚群探知装置12の動作について説明する。魚群探知装置12は、CPU21がプログラムデータ22aに従って各種演算を実行することで、探知対象物Gの探知を次のようにして実行する。
【0057】
まず、CPU21は、送信回路26に対して超音波TGの送信を指示すると、送信回路26が振動子16に対して信号を出力し、振動子16から水中に向けて、チャープ波の超音波TBが送信(照射)される。
【0058】
振動子16より超音波TBが水中に送信されると、受信回路27では、水中の各深度から反射された超音波TBの反射波を振動子16が受信することにより発生するアナログ信号を所定時間毎にサンプリングしながら、反射波の反射強度をディジタル信号に変換してCPU21に出力する。
【0059】
このように、CPU21は、送信回路26を介して振動子16より超音波TBを送信し、振動子16にて水中の各深度より反射された超音波TBの反射波の反射強度を受信回路27より受信することで、一回の探知を実行する。この一回の探知を実行するCPU21が、本発明の探知実行手段に該当する。
【0060】
次いで、CPU21は、
図3及び
図4を参照して後述する混信判定処理及び是正処理を実行する。そして、CPU21は、是正処理された判定対象受信信号23bに基づいて、水中の深度(水中の深度が変化する方向)を長手方向として、各深度からの反射強度を色別に示した一本の表示線を形成する。この表示線の形成を実行するCPU21が、本発明の形成手段に該当する。
【0061】
次いで、CPU21は、この新たに形成した一本の表示線を含む探知画像を表示装置15に表示するための情報をVRAM25に格納する。探知画像は、複数の表示線が長手方向(即ち、深度が変化する方向)を探知画像の縦方向に沿って、古い順に配列したものである。CPU21は、一回の探知が実行される毎に、それまで表示していた表示線を探知画像の中で一本ずつ左側にずらし、新たに形成した表示線を探知画像の右端に表示するように探知画像を形成して、その探知画像を表示するための情報をVRAM25に格納する。この探知画像の表示を実行するCPU21と表示装置15とが、本発明の表示手段に該当する。
【0062】
ここで、
図3及び
図5(a)を参照して混信判定処理の詳細について説明する。
図3は、CPU21により実行される混信判定処理を示すフローチャートである。
図5(a)は、混信が発生した場合の各深度からの反射強度の様子を示した概略図である。
【0063】
上述した通り、混信判定処理は、一回の探知が行われる毎にCPU21により実行される処理であり、一回の探知において得られた、各深度からの超音波TBの反射波の反射強度を示す受信信号中に、別の超音波の混信(干渉)によるものが含まれているか否かを判定する。
【0064】
図3に示す通り、混信判定処理では、まず、混信判定対象となる一の探知の一つ前の探知において得られた受信信号R0[i]と、混信対象となる一の探知において得られた受信信号R1[i]と、混信判定対象となる一の探知の一つ後の探知において得られた受信信号R2[i]とを設定する(S11)。
【0065】
具体的には、前回の混信判定処理にて判定対象受信信号23bとして記憶されていた受信信号を直前探知受信信号23aに複写して受信信号R0[i]とし、前回の混信判定処理にて直後探知受信信号23cとして記憶されていた受信信号を判定対象受信信号23bに複写して受信信号R1[i]とする。そして、終えたばかりの探知において得られた受信信号を直後探知受信信号23cに記憶させて、受信信号R2[i]とする。これにより、上述した通り、2番目に新しい探知(終えたばかりの探知の一つ前の探知)において得られた受信信号を、混信の判定対象とすることができる。
【0066】
次いで、混信判定処理では、深度に対応する変数iと、カウンタ変数cntとを0に初期化する(S12)。これらの変数はRAM23に記憶される。ここで、変数iは、0から順番に1ずつカウントアップさせながら、その変数iに対応する深度について、判定対象強度が第一比較対象強度及び第二比較対象強度のいずれとも所定量強いか否かを判断するために用いられる。また、カウンタ変数cntは、判定対象強度が第一比較対象強度及び第二比較対象強度のいずれとも所定量強いと判断された深度が連続する数をカウントするために用いられる。
【0067】
次いで、混信判定処理では、判定対象受信信号23bに記憶された変数iに対応する深度からの反射強度R1[i]を判定対象強度とし、直前探知受信信号23aに記憶された変数iに対応する深度からの反射強度R0[i]を第一比較対象強度とし、直後探知受信信号23cに記憶された変数iに対応する深度からの反射強度R2[i]を第二比較対象強度として、判定対象強度R1[i]と第一比較対象強度R0[i]と、及び、判定対象強度R1[i]と第二比較対象強度R2[i]とを比較する(S13)。このS13の比較を実行するCPU21が、本発明の強度比較手段に該当する。
【0068】
S13の比較の結果、判定対象強度R1[i]が第一比較対象強度R0[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強く((R0[i]+RTH)≦R1)、且つ、判定対象強度R1[i]が第二比較対象強度R2[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強い((R2[i]+RTH)≦R1)場合(S13:Yes)、カウンタ変数cntを1カウントアップする(S14)。
【0069】
そして、混信判定処理では、変数iを1カウントアップして(S15)、カウントアップ後の変数iが、一の探知における各深度からの反射波の反射強度の最大サンプリング数IMAX未満か否かを判断する(S16)。その結果、変数iがIMAX未満であれば(S16:Yes)、S13の比較処理に戻り、カウントアップ後の変数iに対応する深度からの反射強度R1[i]、R0[i]、R2[i]について、S13の比較が行われる。そして、S13の比較は、全ての深度からの反射強度R1[i]、R0[i]、R2[i]について行われる。
【0070】
S13の比較の結果、判定対象強度R1[i]が第一比較対象強度R0[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強くないか((R0[i]+RTH)>R1)、又は、判定対象強度R1[i]が第二比較対象強度R2[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強くない((R2[i]+RTH)>R1)場合(S13:No)、S17の判断処理に移行する。
【0071】
S17の判断処理では、カウンタ変数cntが、連続長さ閾値22c(CTH)以上であるかを判断する。このS17の処理が実行される場合に、カウンタ変数cntの値は、S13の処理において否定判断(S13:No)がなされるまで、S13の処理において肯定判断(S13:Yes)が連続してなされた数、即ち、判定対象強度R1[i]が第一比較対象強度R0[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強く((R0[i]+RTH)≦R1)、且つ、判定対象強度R1[i]が第二比較対象強度R2[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強い((R2[i]+RTH)≦R1)と判断された深度の連続した数を示す。
【0072】
このことを、
図5(a)を参照してより詳しく説明する。探知を行っている最中に別の超音波が混信した場合、例えば
図5(a)に示すように、一の探知において得られた受信信号(
図5(a)では、R1[i])の中に、所定範囲の深度にわたって強い反射強度の信号(
図5(a)において斜線で表した箇所)が現れる一方、前後の探知において得られた受信信号(
図5(a)では、R0[i],R2[i])には、その所定範囲の深度に強い反射強度の信号が現れることは稀である。
【0073】
そこで、浅い深度からの順番に各深度からの反射強度についてS13の比較を繰り返し行うと、
図5(a)に示す例では、変数iが12~21の範囲で肯定判断(S13:Yes)がなされ、S14の処理によってカウンタ変数cntが1ずつカウントアップされることとなる。そして、変数iが22となった段階で、S13の比較において否定判断(S13:No)がなされて、S17の処理が実行される。
【0074】
この段階において、カウンタ変数cntは、S13の比較において肯定判断(S13:Yes)が連続してなされた深度の数を表すこととなり、
図5(a)に示す例では、cnt=10となる。S17の判断処理は、このカウンタ変数cntが連続長さ閾値22c(CTH)以上であるかを判断することになる。
【0075】
つまり、S17の判断処理は、判定対象強度R1[i]が第一比較対象強度R0[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強く((R0[i]+RTH)≦R1)、且つ、判定対象強度R1[i]が第二比較対象強度R2[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強い((R2[i]+RTH)≦R1)と判断された深度が、連続して連続長さ閾値22c(CTH)以上存在したかを判断する。
【0076】
S17の判断の結果、カウンタ変数cntが連続長さ閾値22c(CTH)以上である場合(S17:Yes)、S13の比較において肯定判断(S13:Yes)された各深度からの反射強度が混信によるものと見なし判定し、これらの深度からの反射強度を是正する是正処理を実行する(S18)。
【0077】
例えば、
図5(a)に示す例では、連続長さ閾値22c(CTH)が10である場合、一の探知において得られた受信信号R1[i]のおける、変数iが12~21の範囲に対応する深度からの反射強度は、混信によるものと見なされ、これらの深度からの反射強度が是正処理(S18)により是正される。
【0078】
なお、S17の判断が、本発明の判定手段に該当し、S18の是正処理が、本発明の是正手段に該当する。是正処理(S18)の詳細については、
図4を参照して後述する。是正処理(S18)を終了すると、混信判定処理は、S19の処理に移行する。
【0079】
一方、S17の判断の結果、カウンタ変数cntが連続長さ閾値22c(CTH)未満である場合(S17:No)、S13の比較において肯定判断(S13:Yes)がなされた深度が連続長さ閾値22c(CTH)以上連続して存在しないことを意味するので、混信による影響はないと見なし、是正処理(S18)を行わずS19の処理に移行する。
【0080】
このように、混信判定処理は、判定対象強度R1[i]が第一比較対象強度R0[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強く((R0[i]+RTH)≦R1)、且つ、判定対象強度R1[i]が第二比較対象強度R2[i]よりも強度差閾値22b(RTH)以上強い((R2[i]+RTH)≦R1)と判断された深度が、連続して連続長さ閾値22c(CTH)以上存在した場合に限り、それらの深度からの反射強度が混信によるものと見なされ、是正される。よって、混信の判定が精度よく行われた上で、混信によるものとみなされる深度の反射強度のみが是正され、探知対象物Gからの反射波を含むその他の反射強度については是正が行われないので、探知対象物Gを明確に表示しつつ、混信に基づく表示を削除できる。
【0081】
S19の処理では、カウンタ変数cntを0に初期化する。そして、上述したS15の処理に移行する。
【0082】
また、S16の判断の結果、カウントアップ後の変数iが、一の探知における各深度からの反射波の反射強度の最大サンプリング数IMAX以上である場合(S16:No)、全ての深度(変数i=0~(IMAX-1)に対応する深度)からの反射強度R1[i]、R0[i]、R2[i]に対してS13の比較が行われ、混信の判定が完了したことを意味するので、混信判定処理を終了する。
【0083】
次に、
図4及び
図5(b)を参照して、上述した是正処理(S18)について説明する。
図4は、その混信処理を示すフローチャートである。
図5(b)は、是正処理(S18)による反射強度の是正方法を説明する図である。
図5(b)は、判定対象受信信号23bのうち、変数j=12に対応する深度からの反射強度R1[12]に対して是正を行う場合の一例を示してある。是正前の反射強度R1[12](混信によって得られたと見なされる反射強度)は、150であったとする。
【0084】
図4に示す通り、是正処理では、まず、変数jに、変数iからカウンタ変数cntを減算した値(i-cnt)を初期値として代入する(S31)。この変数jは、是正処理を行う深度に対応させた変数であり、RAM23に記憶される。
【0085】
この是正処理の実行が開始される段階において、混信によるものと見なされて反射強度の是正の対象となっているのは、判定対象受信信号23bのうち、(i-cnt)に対応する深度からの反射強度R1[i-cnt]から、(i-1)に対応する深度からの反射強度R1[i-1]までである。S31の処理により、変数jを(i-cnt)に初期化し、反射強度の是正を行いながら、変数jを1ずつカウントアップしていくことで、混信によるものと見なされた深度からの反射強度を順番に是正する。
【0086】
次いで、是正処理では、判定対象受信信号23bにおいて是正対象となる深度(変数j)に対して、直前探知受信信号23aのうち、(j-1)、j、(j+1)のそれぞれに対応する3つの深度からの反射強度R0[j-1]、R0[j]、R0[j+1]の最大値を導出し、変数R0MAXとしてRAM23に記憶する(S32)。
図5(b)に示す例では、R0[11]、R0[12]、R0[13]の各反射強度(25,40,31)の最大値「40」を変数R0MAXとして記憶させる。
【0087】
次いで、是正処理では、判定対象受信信号23bにおいて是正対象となる深度(変数j)に対して、直後探知受信信号23cのうち、(j-1)、j、(j+1)のそれぞれに対応する3つの深度からの反射強度R2[j-1]、R2[j]、R2[j+1]の最大値を導出し、変数R2MAXとしてRAM23に記憶する(S33)。
図5(b)に示す例では、R2[11]、R2[12]、R2[13]の各反射強度(12,15,22)の最大値「22」を変数R2MAXとして記憶させる。
【0088】
そして、是正処理では、S32の処理により記憶された変数R0MAXとS33の処理により記憶された変数R2MAXとの平均値を算出し、判定対象受信信号23bの是正対象となる深度(変数j)の反射強度R1[j]を、算出した平均値に置き換える(S34)。
図5(b)に示す例では、変数R0MAXが40、変数R2MAXが22であるので、その平均値「31」を、判定対象受信信号23bの是正対象となる深度(変数j)の反射強度R1[j]とする。
【0089】
是正処理では、S34の処理を終えると、変数jを1カウントアップし(S35)、カウントアップ後の変数jが、変数i以上であるかを判断する(S36)。そして、カウントアップ後の変数jが、変数i未満であれば(S36:No)、S32の処理に戻り、S32~S34の処理を、判定対象受信信号23bのうち、カウントアップ後の変数jに対応する深度の反射強度R1[j]について行い、その反射強度R1[j]を是正する。
【0090】
S36の判断の結果、変数jが、変数i以上であると判断されると(S36:Yes)、この是正処理を終了し、混信判定処理に戻る。よって、是正処理では、変数jが(i-cnt)~(i-1)の範囲でS32~S34の処理が行われ、判定対象受信信号23bのうち、混信によるものと見なされた、変数j=(i-cnt)に対応する深度の反射強度R1[i-cnt]から、変数j=(i-1)に対応する深度の反射強度R1[i-1]までを是正することができる。
【0091】
そして、是正処理では、是正対象となる判定対象受信信号23bの変数jに対応する深度からの反射強度R1[j]に対し、直前探知受信信号23a及び直後探知受信信号23cの同一深度(変数jに対応する深度)からの反射強度R0[j]、R2[j]だけでなく、その変数jに対応する深度を含む所定範囲の深度(本実施形態では、(j-1)~(j+1)に対応する深度)の反射強度R0[j-1]~R0[j+1]、R2[j-1]~R2[j+1]が加味されて、反射強度R1[j]が是正される。これにより、探知対象物Gにより超音波TBの反射された深度が、前後の探知においてずれが生じたとしても、是正処理によって探知対象物Gの反応(探知対象物Gからの反射強度に基づく表示)を再現でき、探知対象物Gを明確に表示できる。
【0092】
ここで、
図6に、混信判定処理及び是正処理を実行することの効果を示す。
図6(a)は、混信判定処理及び是正処理を実行しない場合の探知画像の一部を示した図であり、
図6(b)は、混信判定処理及び是正処理を実行した場合の探知画像の一部を示した図であり、
図6(c)は、従来の弱者選択処理を実行した場合の探知画像の一部を示した図である。
【0093】
図6(a)には、他の超音波からの混信によるノイズ31が探知画像に現れている。しかしながら、混信判定処理及び是正処理を実行することで、
図6(b)に示す通り、他の超音波からの混信によるノイズ31が削除されていることが分かる。一方、
図6(c)に示す通り、従来の弱者選択処理でも他の超音波からの混信によるノイズ31は削除されているが、探知対象物Gの反応32の一部が破棄されてしまって探知対象物Gの反応32そのものが見えづらくなっている。これに対し、混信判定処理及び是正処理を実行することで、
図6(b)に示す通り、探知対象物Gの反応32が明確に表示されていることが分かる。
【0094】
以上説明した通り、本実施形態に係る魚群探知装置12は、次の効果を奏する。
【0095】
(1)一の探知において得られた受信信号を判定対象受信信号23bとして判定対象受信信号23bに記憶された一の深度からの反射強度R1[i]を判定対象強度とし、一の探知の一つ前の探知において得られた受信信号を直前探知受信信号23aとして直前探知受信信号23aに記憶された一の深度と同一深度からの反射強度R0[i]を第一比較対象強度とし、一の探知の一つ後の探知において得られた受信信号を直後探知受信信号23cとして直後探知受信信号23cに記憶された一の深度と同一の深度からの反射強度R2[i]を第二比較対象強度として、判定対象強度R1[i]と第一比較対象強度R0[i]と、及び、判定対象強度R1[i]と第二比較対象強度R2[i]とを比較する。
【0096】
その比較の結果、判定対象受信信号23bにおいて、判定対象強度が第一比較対象強度及び前記第二比較対象強度のいずれとも所定量(強度差閾値22b(RTH))以上強い深度が、少なくとも所定長さ(連続長さ閾値22c(CTH))連続して存在する場合に、それらの深度において受信した反射波が、別の超音波の混信によるものであると見なし判定する。そして、判定対象受信信号23bにおいて、混信によるものと見なされた深度の反射強度が是正される。
【0097】
これにより、混信の判定が精度よく行われた上で、混信によるものとみなされる深度の反射強度のみが是正されるので、探知対象物Gを明確に表示しつつ、混信に基づく表示を削除できる。
【0098】
(2)一の探知における判定対象受信信号23bにおいて混信によるものと見なされた一の深度(変数jに対応する深度)の反射強度の是正は、是正処理(S18)によって、一の探知の一つ前の探知において得られた直前探知受信信号23aのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])と、一の探知の一つ後の探知において得られた直後探知受信信号23cのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])と、を加味して行われる。
【0099】
これにより、探知対象物Gにより超音波TBの反射された深度が、一つ前及び一つ後の探知においてずれが生じたとしても、一つ前及び一つ後の両方の探知において、是正したい一の探知における一の深度と同一深度だけでなく、一の深度を含む所定範囲の深度の反射強度が加味されて、その一の探知における一の深度の反射強度が是正されるので、その一の探知における一の深度において、探知対象物Gの反応を再現でき、探知対象物Gを明確に表示できる。
【0100】
(3)混信によるものと見なされた判定対象受信信号23bにおける一の深度(変数jに対応する深度)の反射強度の是正は、是正処理(S18)によって、直前探知受信信号23aにおける一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])の最大値、及び、直後探知受信信号23cにおける一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])の最大値を加味して行われる。これにより、最大値を導出するだけで高い演算処理性能を必要とすることなく、探知対象物Gの反応を明確に再現できる。
【0101】
(4)直前探知受信信号23aにおける一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])の最大値と、直後探知受信信号23cのうち、一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])の最大値との平均値が、混信によるものと見なされた判定対象受信信号23bにおける一の深度(変数jに対応する深度)の反射強度として是正される。
【0102】
これにより、混信によるものと見なされた判定対象受信信号23bにおける一の深度の反射強度として是正は、直前探知受信信号23aにおける一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])の最大値、及び、直後探知受信信号23cにおける一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])の最大値の平均値を算出するだけで実行でき、高い演算処理性能を必要とすることなく、探知対象物Gの反応をより明確に再現できるという効果がある。
【0103】
(5)超音波TBとして、時間と共に周波数が増加又は減少するチャープ波が使用される。このような超音波TBを使用する場合、探知分解能を高めることができるが、その結果として探知対象物Gの反応も細くなる傾向にある。しかしながら、本実施形態に係る魚群探知装置12によって、混信による是正が行われたとしても、探知対象物Gの反応が消滅することを抑制でき、探知対象物Gを明確に表示できる。
【0104】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各実施形態は、以下に説明する変形例を含めて、それぞれ他の実施形態が有する構成の一部又は複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部又は複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。また、上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0105】
上記実施形態では、判定対象強度と第一比較対象強度との比較に用いる強度差閾値22bと、判定対象強度と第二比較対象強度との比較に用いる強度差閾値22bとで、同じ値(RTH)を用いる場合について説明したが、これらを異なる値に設定されてもよい。即ち、判定対象強度が第一比較対象強度よりも大きく、その差が第一強度差閾値(RTH1)以上の場合、判定対象強度が第一比較対象強度より所定量以上強いと判断し、判定対象強度が第二比較対象強度よりも大きく、その差が第一強度差閾値と異なる第二強度差閾値(RTH2)以上の場合、判定対象強度が第二比較対象強度より所定量以上強いと判断してもよい。つまり、請求項1に記載される所定量は、判定対象強度と第一比較対象強度との比較と、判定対象強度と第二比較対象強度との比較とで、異なるものであってもよい。
【0106】
上記実施形態では、判定対象強度が第一比較対象強度よりも大きく、その差が強度差閾値22b(RTH)以上の場合、判定対象強度が第一比較対象強度より所定量以上強いと判断し、判定対象強度が第二比較対象強度よりも大きく、その差が強度差閾値22b(RTH)以上の場合、判定対象強度が第二比較対象強度より所定量以上強いと判断する場合について説明した。これに対し、判定対象強度が第一比較対象強度の所定倍以上である場合に、判定対象強度が第一比較対象強度より所定量以上強いと判断し、判定対象強度が第二比較対象強度の所定倍以上である場合に、判定対象強度が第一比較対象強度より所定量以上強いと判断してもよい。また、この場合の「所定倍」は、使用者によって変更できるようにしてもよい。また、判定対象強度と第一比較対象強度との比較において用いる「所定倍」の値と、判定対象強度と第二比較対象強度との比較において用いる「所定倍」の値とを異ならせてもよい。
【0107】
上記実施形態では、是正処理(S18)において、一の探知における判定対象受信信号23bにおいて混信によるものと見なされた一の深度(変数jに対応する深度)の反射強度の是正を行う場合に、一の探知の前後におこなわれた探知において得られた直前探知受信信号23a及び直後探知受信信号23cのうち、それぞれ一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲として3つの各深度からの反射強度を加味する場合について説明したが、その所定範囲は、一の深度を含んで2つの深度以上であれば、その範囲は、4つの深度、5つの深度…と任意に設定されてよい。一の探知の前後におこなわれた探知において得られた直前探知受信信号23a及び直後探知受信信号23cのうち、所定範囲の各深度からの反射強度を加味することで、探知対象物Gにより超音波の反射された深度が、一つ前及び/又は一つ後の探知においてずれが生じたとしても、判定対象受信信号23bにおける一の深度において、探知対象物Gの反応を再現でき、探知対象物Gを明確に表示できる。
【0108】
このとき、一の深度が所定範囲の中間に位置するように所定範囲が設定されるとなおよい。一の深度が所定範囲の中間に位置するように所定範囲が設定されれば、一の探知における探知対象物Gより超音波TBが反射された深度と、一つ前及び/又は一つ後の探知における探知対象物Gより超音波TBが反射された深度とのずれが、上下いずれの方向にずれたとしても、判定対象受信信号23bにおける一の深度において、探知対象物Gの反応を再現でき、探知対象物Gを明確に表示できる。
【0109】
また、直前探知受信信号23aに設定される所定範囲と、直後探知受信信号23cに設定される所定範囲とで、異なる範囲が設定されてもよく、この場合も、本発明の「前記一つ前の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度、及び/又は、前記一つ後の探知において得られた前記一の深度を含む所定範囲の各深度からの反射強度を加味して、前記一の探知における一の深度の反射強度を是正する」概念に含まれる。
【0110】
上記実施形態では、是正処理(S18)において、一の探知における判定対象受信信号23bにおいて混信によるものと見なされた一の深度(変数jに対応する深度)の反射強度の是正は、是正処理(S18)によって、一の探知の一つ前の探知において得られた直前探知受信信号23aのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])と、一の探知の一つ後の探知において得られた直後探知受信信号23cのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])と、を加味して行う場合について説明した。これに対し、一の探知の一つ前の探知において得られた直前探知受信信号23aのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])、及び、一の探知の一つ後の探知において得られた直後探知受信信号23cのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])のいずれか一方のみを加味して、一の探知における判定対象受信信号23bにおいて混信によるものと見なされた一の深度(変数jに対応する深度)の反射強度の是正を行ってもよい。いずれか一方のみを加味することで、両方を加味する場合と比して再現率はやや劣るものの、是施肥に必要な演算性能を抑えつつ、探知対象物Gの反応を再現でき、探知対象物Gを明確に表示できる。
【0111】
上記各実施形態では、是正処理(S18)において、直前探知受信信号23aのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])の最大値を導出し、また、直後探知受信信号23cのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])の最大値を導出したが、混信によるものと見なされた一の深度の反射強度の是正を行う場合において、直前探知受信信号23aのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])を加味する方法と、直後探知受信信号23cのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])を加味する方法とは、任意のものであってよい。例えば、直前探知受信信号23a及び/又は直後探知受信信号23cにおいて、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1]、R2[j-1]~R2[j+1])の平均値、中央値、又は、一の深度に近いほど重み付けを大きくした加重平均等を導出して、混信によるものと見なされた一の深度の反射強度の是正を行ってもよい。
【0112】
上記実施形態では、是正処理(S18)において、直前探知受信信号23aのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R0[j-1]~R0[j+1])から導出した値と、直後探知受信信号23cのうち、一の深度(変数jに対応する深度)を含む所定範囲の各深度からの反射強度(R2[j-1]~R2[j+1])から導出した値との平均値を、混信によるものと見なされた一の深度の反射強度として是正したが、その是正において、直前探知受信信号23aから導出した値と、直後探知受信信号23cから導出した値とを加味する方法は、平均値以外の任意の方法であってよい。例えば、直前探知受信信号23aから導出した値と、直後探知受信信号23cから導出した値との最大値を、混信によるものと見なされた一の深度の反射強度として是正してもよいし、直前探知受信信号23aから導出した値と、直後探知受信信号23cから導出した値とで、どちらか一方の重み付けを大きくした加重平均を求めて、その値を混信によるものと見なされた一の深度の反射強度として是正してもよい。
【0113】
上記実施形態では、超音波TBとしてチャープ波を用いる場合について説明したが、その波形は任意のものであってよい。たとえば、時間と共に周波数が変化する波形(スイープ波等)や、従来のパルス波を超音波TBとして用いられてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、超音波TBを水中の1つの方向(船舶11の真下方向)に固定して送信し、その反射波を受信して水中の探知を行う魚群探知装置について、本発明を適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、1つの方向に送信される超音波TBの送信方向を変化させながら、所定範囲にわたり水中の探知を行うソナー型の魚群探知装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0115】
12 魚群探知装置
15 表示装置(表示手段の一部)
16 振動子
20 制御装置
23a 直前探知受信信号
23b 判定対象受信信号
23c 直後探知受信信号
S13 (強度比較手段)
S17 (判定手段)
S18 是正処理(是正手段)