(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048957
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240402BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20240402BHJP
H04R 3/12 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/00 310G
H04R3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155152
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】今野 文靖
(72)【発明者】
【氏名】大西 将秀
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 義孝
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D017AA13
5D017AA14
5D220AA14
5D220AA34
(57)【要約】
【課題】シートに着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる信号処理装置を提供する。
【解決手段】シート100に設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための信号処理装置40は、楽曲のデータを取得する取得部50と、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を1以上のアクチュエータへ出力し、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を1以上のスピーカへ出力する出力部60と、を備え、第1周波数帯域は、1以上のアクチュエータの共振周波数を含む帯域である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための信号処理装置であって、
前記楽曲のデータを取得する取得部と、
前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を前記1以上のアクチュエータへ出力し、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力する出力部と、を備え、
前記第1周波数帯域は、前記1以上のアクチュエータの共振周波数を含む帯域である、
信号処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記楽曲のデータをフィルタリング処理することで、前記第1周波数帯域の音信号を前記1以上のアクチュエータへ出力する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記楽曲のデータをフィルタリング処理することで、前記第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記1以上のアクチュエータは、人が前記シートに着座したときに、前記シートの座面における前記人の大腿部に対応する位置に内蔵された第1アクチュエータ、又は、前記シートの背もたれにおける前記人の仙骨に対応する位置に内蔵された第2アクチュエータを含み、
前記1以上のスピーカは、人が前記シートに着座したときに、前記シートの背もたれにおける前記人の下腹部に対応する位置に内蔵された第1スピーカを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記出力部は、さらに、超音波信号を、前記シートのヘッドレストに内蔵されたスピーカ、又は、前記ヘッドレストに取り付けられたツィータへ出力する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
シートに設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための信号処理方法であって、
前記楽曲のデータを取得し、
前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を前記1以上のアクチュエータへ出力し、
前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力し、
前記第1周波数帯域は、前記1以上のアクチュエータの共振周波数である、
信号処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理装置、信号処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、特定の周波数の音信号を通過/減衰させるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、スピーカ及びアクチュエータが埋め込まれたシートが開発されており、シートに着座した人に対して、スピーカから音を再生すると共にアクチュエータによって当該音に応じた振動を与えることが可能となっている。しかしながら、特許文献1に記載されているシステムをこのようなシートに適用した場合、音の種類によってはシートに着座した人に不快な振動を与えてしまう場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、シートに着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる信号処理装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る信号処理装置は、シートに設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための信号処理装置であって、前記楽曲のデータを取得する取得部と、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を前記1以上のアクチュエータへ出力し、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力する出力部と、を備え、前記第1周波数帯域は、前記1以上のアクチュエータの共振周波数を含む帯域である。
【0007】
本開示の一態様に係る信号処理方法は、シートに設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための信号処理方法であって、前記楽曲のデータを取得し、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を前記1以上のアクチュエータへ出力し、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力し、前記第1周波数帯域は、前記1以上のアクチュエータの共振周波数である。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、上記の信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る信号処理装置等によれば、シートに着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るシートの一例を示す正面図である。
【
図2A】実施の形態1に係るスピーカシステムの一例を示す正面図及び断面図である。
【
図2B】実施の形態1に係るスピーカシステムの一例を示す正面図及び断面図である。
【
図2C】実施の形態1に係るスピーカシステムの一例を示す正面図及び断面図である。
【
図2D】実施の形態1に係るスピーカシステムの一例を示す正面図及び断面図である。
【
図3】実施の形態1に係るスピーカシステムが備えるスピーカ及びアクチュエータから出力された音(音圧)の周波数特性の一例を示すグラフである。
【
図4】実施の形態2に係る信号処理装置の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態3に係る信号処理装置の一例を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態3に係る出力部が備える低域フィルタのフィルタ特性の一例を示す図である。
【
図7】その他の実施の形態に係る信号処理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1に係るスピーカシステム及び当該スピーカシステムが設けられたシートについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、実施の形態1に係るシート100の一例を示す正面図である。
【0015】
シート100は、例えば、車両、航空機、船舶等の移動体に配置される座席である。なお、シート100は、移動体の室内に配置される座席に限らずに、映画館、劇場、会議室に配置される座席であってもよいし、クッションを有する椅子、座椅子、ソファ、マッサージチェア等であってもよい。
【0016】
シート100は、背もたれ110と、座面120と、ヘッドレスト130と、を備える。背もたれ110は、人がシート100に着座したときに人の背中等を支持する部位である。座面120は、人がシート100に着座したときに人の大腿部等を支持する部位である。ヘッドレスト130は、人がシート100に着座したときに人の頭等を支持する部位である。
【0017】
シート100には、1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータが設けられる。スピーカは、電気信号を音に変換する装置であり、アクチュエータは、電気信号を物理的運動(例えば振動)に変換する装置である。例えば、1以上のアクチュエータは、人がシート100に着座したときに、シート100の座面120における人の大腿部に対応する位置に内蔵された第1アクチュエータ、又は、シート100の背もたれ110における人の仙骨に対応する位置に内蔵された第2アクチュエータを含む。例えば、1以上のスピーカは、人がシート100に着座したときに、シート100の背もたれ110における人の下腹部に対応する位置に内蔵された第1スピーカ、シート100の背もたれ110における人の背中に対応する位置に内蔵された第2スピーカ、シート100のヘッドレスト130に内蔵された第3スピーカ、又は、ヘッドレスト130に取り付けられたツィータ600を含む。
【0018】
例えば、シート100は、スピーカシステム200、400及び500、アクチュエータシステム300並びにツィータ600を備える。例えば、1以上のスピーカは、スピーカシステム200、400及び500に含まれており、1以上のアクチュエータは、スピーカシステム200及びアクチュエータシステム300に含まれている。例えば、スピーカシステム200及び400は背もたれ110に内蔵され、アクチュエータシステム300は座面120に内蔵され、スピーカシステム500はヘッドレスト130に内蔵される。
【0019】
スピーカシステム200は、スピーカ201と、スピーカ201が設けられたスピーカボックス202と、アクチュエータ203と、を備える。アクチュエータ203は、スピーカボックス202のバッフル面に振動を発生させるようにスピーカボックス202内に設けられる(後述する
図2A参照)。
【0020】
スピーカボックス202は、シート100に内蔵され、例えば、背もたれ110に内蔵される。例えば、
図1に示されるように、スピーカボックス202は、シート100の背もたれ110における中央よりも下側に内蔵される。これにより、シート100に着座した人の下腹部及び臀部周辺に、スピーカボックス202内のアクチュエータ203による迫力のある振動を与えることができる。また、スピーカ201から重低音が出力された場合、シート100に着座した人の下腹部及び臀部周辺にスピーカボックス202内のスピーカ201から重低音の音波を暴露でき、振動と共に迫力のある音を提供することができる。スピーカボックス202は、例えば直方体形状の部材であり、木材、樹脂、金属等により構成される。
【0021】
アクチュエータ203は、例えば、スピーカ201よりも、背もたれ110における下側に設けられる。これにより、シート100に着座した人の臀部周辺にアクチュエータ203による迫力のある振動を与えることができる。具体的には、アクチュエータ203は、例えば、人がシート100に着座したときに、背もたれ110における人の仙骨に対応する位置に設けられる。これにより、シート100に着座した人の仙骨にアクチュエータ203による迫力のある振動を与えることができる。アクチュエータ203は、第2アクチュエータの一例である。アクチュエータ203は、例えば、40Hzから90Hzの音を再生可能(言い換えると、40Hzから90Hzの低周波振動を発生可能)となっている。例えば、アクチュエータ203は、モノラル駆動される。なお、スピーカボックス202内に複数のアクチュエータ203が設けられてもよい。
【0022】
スピーカ201は、例えば、人がシート100に着座したときに、背もたれ110における人の下腹部に対応する位置に設けられる。これにより、スピーカ201から重低音が出力された場合、シート100に着座した人の下腹部に重低音の音波を暴露でき、振動と共に迫力のある音を提供することができる。スピーカ201は、第1スピーカの一例である。例えば、スピーカ201は、ウーハであり、40Hzから150Hzの帯域の音を再生可能となっている。例えば、スピーカ201は、モノラル駆動される。なお、スピーカボックス202に複数のスピーカ201が設けられてもよい。また、背もたれ110に複数のスピーカシステム200が設けられていてもよい。
【0023】
スピーカシステム200によって、シート100の背もたれ110からシート100に着座した人に音波を暴露しつつ、振動を与えることができる。
【0024】
アクチュエータシステム300は、アクチュエータ301と、振動板302と、を備える。
【0025】
アクチュエータ301は、例えば、人がシート100に着座したときに、シート100の座面120における人の大腿部に対応する位置に設けられる。アクチュエータ301は、第1アクチュエータの一例である。アクチュエータ301は、振動板302に振動を発生させるように振動板302に固定される。振動板302は、座面120に内蔵される。振動板302は、例えば矩形板状の部材であり、木材、樹脂、金属等により構成される。アクチュエータシステム300によって、シート100の座面120からシート100に着座した人に振動を与えることができる。アクチュエータ301は、例えば、40Hzから90Hzの音を再生可能(言い換えると、40Hzから90Hzの低周波振動を発生可能)となっている。例えば、アクチュエータ301は、モノラル駆動される。なお、振動板302にアクチュエータ301が1つのみ設けられてもよいし、3つ以上のアクチュエータ301が設けられてもよい。
【0026】
スピーカシステム400は、スピーカ401と、スピーカ401が設けられたスピーカボックス402と、を備える。
【0027】
スピーカボックス402は、シート100に内蔵され、例えば、背もたれ110に内蔵される。例えば、
図1に示されるように、スピーカボックス402は、シート100の背もたれ110における中央よりも上側に内蔵される。スピーカボックス402は、例えば直方体形状の部材であり、木材、樹脂、金属等により構成される。
【0028】
スピーカ401は、例えば、人がシート100に着座したときに、背もたれ110における人の背中に対応する位置に設けられる。スピーカ401は、第2スピーカの一例である。例えば、スピーカ401は、フルレンジスピーカであり、150Hzから800Hzの帯域の音を再生可能となっている。例えば、スピーカ401は、モノラル駆動される。なお、スピーカボックス402にスピーカ401が1つのみ設けられてもよいし、3つ以上のスピーカ401が設けられてもよい。また、背もたれ110に複数のスピーカシステム400が設けられていてもよい。
【0029】
スピーカシステム400によって、シート100の背もたれ110からシート100に着座した人に音波を暴露することができる。
【0030】
スピーカシステム500は、スピーカ501と、スピーカ501が設けられたスピーカボックス502と、を備える。
【0031】
スピーカボックス502は、シート100に内蔵され、例えば、ヘッドレスト130に内蔵される。スピーカボックス502は、例えば直方体形状の部材であり、木材、樹脂、金属等により構成される。
【0032】
スピーカ501は、例えば、人がシート100に着座したときに、ヘッドレスト130における人の頭に対応する位置に設けられる。スピーカ501は、第3スピーカの一例である。例えば、スピーカ501は、フルレンジスピーカであり、350Hzから20kHzの帯域の音を再生可能となっている。
図1に示されるように、例えば、ヘッドレスト130に2つのスピーカシステム500が設けられ、2つのスピーカシステム500は、ステレオ駆動される。なお、スピーカボックス502に複数のスピーカ501が設けられてもよい。また、ヘッドレスト130にスピーカシステム500が1つのみ設けられていてもよいし、3つ以上のスピーカシステム500が設けられていてもよい。
【0033】
スピーカシステム500によって、シート100のヘッドレスト130からシート100に着座した人に音波を暴露することができる。
【0034】
ツィータ600は、ヘッドレスト130に設けられる。例えば、ツィータ600は、20kHzから100kHzの帯域の音を再生可能となっている。
図1に示されるように、例えば、ヘッドレスト130に2つのツィータ600が設けられ、2つのツィータ600は、ステレオ駆動される。なお、ヘッドレスト130にツィータ600が1つのみ設けられていてもよいし、3つ以上のツィータ600が設けられていてもよい。
【0035】
ツィータ600によって、シート100のヘッドレスト130からシート100に着座した人に音波を暴露することができる。
【0036】
なお、後述する実施の形態2に係る信号処理装置10又は実施の形態3に係る信号処理装置40によって、スピーカ501又はツィータ600から超音波が出力されてもよく、この場合、シート100のヘッドレスト130からシート100に着座した人に超音波を暴露することができる。
【0037】
また、後述する実施の形態2に係る信号処理装置10によって、アクチュエータ203は、楽曲を形成する複数のトラックのデータのうち1つのトラックのデータに含まれる音信号に応じた振動を発生し、スピーカ201は、複数のトラックのデータのうち他の1つのトラックのデータに含まれる音信号を再生してもよい。具体的には、アクチュエータ203は、複数のトラックのデータのうちドラムのトラックのデータに含まれるキックドラムの音信号に応じた振動を発生し、スピーカ201は、複数のトラックのデータのうちドラム以外のトラックのデータに含まれる音信号を再生してもよい。
【0038】
また、後述する実施の形態3に係る信号処理装置40によって、アクチュエータ203は、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号に応じた振動を発生し、スピーカ201は、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を再生し、第1周波数帯域は、アクチュエータ203の共振周波数を含む帯域であってもよい。
【0039】
次に、スピーカシステム200の詳細について、
図2Aから
図2Dを用いて説明する。
【0040】
図2Aから
図2Dは、実施の形態1に係るスピーカシステム200の一例を示す正面図及び断面図である。各図の(a)は、スピーカシステム200の正面図であり、各図の(b)は、スピーカシステム200の断面図である。なお、各図の(b)では、スピーカ201及びアクチュエータ203の断面の詳細の図示を省略している。
【0041】
アクチュエータ203は、スピーカボックス202のバッフル面202aに振動を発生させるようにスピーカボックス202内に設けられ、
図2Aから
図2Dに示されるように、例えば、バッフル面202aと反対側のスピーカボックス202内の面に固定される。また、スピーカ201は、スピーカボックス202のバッフル面202aに設けられた孔に嵌められて固定される。このようにして、スピーカ201とアクチュエータ203とは、スピーカボックス202によって一体化されている。
【0042】
例えば、スピーカ201の口径は120mmから160mmであり、アクチュエータ203の口径は70mmから80mmである。スピーカシステム200を正面視したときの、スピーカ201の中心からアクチュエータ203の中心までの距離は、例えば120mmから150mmである。スピーカ201とアクチュエータ203とが一体化されているため、スピーカ201とアクチュエータ203との距離を短くすることができている。
【0043】
スピーカ201とアクチュエータ203とが別体に設けられている場合には、スピーカ201とアクチュエータ203との距離が離れやすくなるため、スピーカ201から出力された音の位相とアクチュエータ203による振動の位相とがずれやすくなり、シート100に着座した人に迫力のある音及び振動を提供できない場合がある。これに対して、実施の形態1に係るスピーカシステム200及びシート100によれば、スピーカ201とアクチュエータ203とが1つのスピーカボックス202によって一体化されているため、スピーカ201とアクチュエータ203との距離を短くすることができ、スピーカ201から出力された音の位相とアクチュエータ203による振動の位相とが合いやすくなる。したがって、シート100に着座した人に迫力のある音及び振動を提供することができる。
【0044】
図3は、実施の形態1に係るスピーカシステム200が備えるスピーカ201及びアクチュエータ203から出力された音(音圧)の周波数特性の一例を示すグラフである。
図3は、スピーカシステム200の正面から50cmの距離で測定されたスピーカ201から出力された音及びアクチュエータ203から出力された音(振動)の周波数特性を示す。
【0045】
図3に示されるように、スピーカ201とアクチュエータ203とで、周波数に対する音圧レベルの変化の仕方に対応関係があり、それぞれから出力された音(振動)の位相がおおよそ合っていることがわかる。
【0046】
例えば、
図2Bに示されるように、スピーカボックス202は、スピーカボックス202内において、アクチュエータ203とスピーカ201とを仕切る仕切り204を有していてもよい。仕切り204によってアクチュエータ203とスピーカ201とを仕切ることができるため、アクチュエータ203による振動の影響をスピーカ201に与えにくくすることができ、また、スピーカ201による振動の影響をアクチュエータ203に与えにくくすることができる。例えば、仕切り204は、スピーカボックス202と同じ部材により構成されていてもよいし、異なる部材により構成されていてもよい。
【0047】
例えば、
図2Cに示されるように、スピーカボックス202は、スピーカボックス202内において、アクチュエータ203を密閉する密閉部205を有していてもよい。アクチュエータ203が密閉されているため、アクチュエータ203による振動の影響をスピーカ201に与えにくくすることができ、また、スピーカ201による振動の影響をアクチュエータ203に与えにくくすることができる。例えば、密閉部205は、スピーカボックス202と同じ部材により構成されていてもよいし、異なる部材により構成されていてもよい。
【0048】
例えば、
図2Dに示されるように、バッフル面202aを平面視した場合における、バッフル面202a上のアクチュエータ203とスピーカ201との間の部分206の材質は、バッフル面202a上の他の部分の材質よりも柔らかくてもよい。バッフル面202aにおける柔らかい材質の部分206によって振動を吸収することができるため、アクチュエータ203による振動の影響をスピーカ201に与えにくくすることができ、また、スピーカ201による振動の影響をアクチュエータ203に与えにくくすることができる。例えば、部分206の材質は、バッフル面202a上の他の部分(例えばスピーカボックス202)よりも柔らかい材質であれば、特に限定されない。
【0049】
例えば、スピーカボックス202は、仕切り204、密閉部205及び部分206の2つ以上を有していてもよい。
【0050】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る信号処理装置について、図面を参照しながら説明する。
【0051】
図4は、実施の形態2に係る信号処理装置10の一例を示すブロック図である。なお、
図4には、信号処理装置10の他に、シート100も示している。
【0052】
信号処理装置10は、シート100に設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための装置である。信号処理装置10は、取得部20及び出力部30を備える。信号処理装置10は、プロセッサ及びメモリ等を含む。メモリは、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などであり、プロセッサにより実行されるプログラムを記憶することができる。取得部20及び出力部30は、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ等によって実現される。
【0053】
取得部20は、楽曲を形成する複数のトラックのデータを取得する。例えば、取得部20は、ミックスダウンされた楽曲のデータをCD(Compact Disc)等の音楽ソースから取得し、取得した楽曲のデータから複数のトラックのデータを抽出することで、複数のトラックのデータを取得する。なお、取得部20は、予め準備された複数のトラックのデータを取得してもよい。複数のトラックは、同時並行で再生される複数のトラックである。複数のトラックのデータには、例えば、ボーカルのトラックのデータ、ベースのトラックのデータ、ドラムのトラックのデータ、ギターのトラックのデータ、及び、キーボードのトラックのデータ等が含まれる。
【0054】
また、例えば、取得部20は、超音波信号を取得してもよい。図示していないが、例えば、信号処理装置10は、超音波生成部を備えていてもよく、取得部20は、超音波生成部で生成された超音波信号を取得してもよい。例えば、超音波生成部は、ピッチ制御部と、抽出部とを有する。
【0055】
例えば、ピッチ制御部は、楽曲のデータのピッチ(音の高さ)をn(nは1より大きい実数)倍に制御する。楽曲のデータのピッチがn倍されることで、楽曲のデータの周波数成分が全体的にn倍高周波側へ遷移する。nの値は特に限定されないが、ピッチが制御された音源データに、20kHz以上の周波数成分が含まれるような値に設定される。例えば、ピッチ制御部は、楽曲のデータに含まれる最大の周波数成分を取得し、当該最大の周波数成分が20kHzよりも小さい場合には、20kHzを当該最大の周波数成分で割った値以上の値にnを設定してもよい。例えば、nは2のm(mは1以上の整数)乗であってもよい。つまり、ピッチ制御部は、楽曲のデータのピッチを2のm乗倍(2倍、4倍、8倍、・・・など)に制御してもよい。なお、人は超音波が暴露されることで心身の状態の改善効果を得ることができるが、mの値に応じて、超音波によって得られる心身の状態の改善効果の度合いが異なる場合がある。そこで、超音波生成部は、ユーザが得たい心身の状態の改善効果の度合いを示す情報を受け付ける入力部を備えていてもよく、ピッチ制御部は、入力部が受け付けた情報に応じて、mの値を制御してもよい。これにより、ユーザは、ユーザが望む度合いの改善効果を得ることができる。
【0056】
なお、ピッチ制御部は、ピッチに加えて音圧レベルを制御してもよい。このとき、ピッチ制御部は、音圧レベルを大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
【0057】
抽出部は、ピッチが制御された楽曲のデータに含まれる20kHz以上の周波数成分を抽出する。抽出部は、例えばハイパスフィルタである。抽出部は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。
【0058】
なお、まず、抽出部は、楽曲のデータに含まれる特定の周波数(例えば4kHzなど)以上の周波数成分を抽出し、次に、ピッチ制御部は、抽出された周波数成分をn倍(例えば10倍など)してもよい。このようにしても、20kHz以上の周波数成分を抽出することができる。
【0059】
このようにして、超音波生成部は超音波信号(20kHz以上の周波数成分を含む音信号)を生成し、取得部20は、超音波生成部から超音波信号を取得してもよい。
【0060】
出力部30は、複数のトラックのデータのうち1つのトラックのデータに含まれる音信号を1以上のアクチュエータへ出力し、複数のトラックのデータのうち他の1つのトラックのデータに含まれる音信号を1以上のスピーカのうちのいずれかのスピーカへ出力する。
【0061】
楽曲を形成する複数のトラックのデータに含まれる音信号によっては、アクチュエータに出力された場合にシート100に着座した人に不快な振動を与える場合がある。例えば、持続的な重低音が発生するベースのトラックに含まれる音信号がアクチュエータに出力された場合、持続的な振動が発生し、シート100に着座した人に不快な振動を与える場合がある。これに対して、実施の形態2に係る信号処理装置10によれば、特定のトラックのデータに含まれる音信号をアクチュエータに出力することができる、言い換えると、シート100に着座した人に不快な振動を与えにくいようなトラックのデータに含まれる音信号をアクチュエータに出力することができる。したがって、シート100に着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる。
【0062】
例えば、出力部30は、複数のトラックのデータのうちドラムのトラックのデータに含まれるキックドラムの音信号を1以上のアクチュエータへ出力してもよい。例えば、出力部30は、低域フィルタ31を有し、ドラムのトラックのデータを低域フィルタ31に入力することでキックドラムの音信号を抽出し、当該音信号を1以上のアクチュエータへ出力する。低域フィルタ31は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。なお、キックドラムのトラックのデータが存在する場合には、取得部20は、キックドラムのトラックのデータを取得してもよい。この場合、出力部30は、低域フィルタ31を有していなくてもよく、キックドラムのトラックのデータを1以上のアクチュエータへフィルタを介さずに出力してもよい。キックドラムの振動は弦楽器の重低音による持続的な振動ではなく歯切れの良いリズム振動であり、シート100に着座した人にアクチュエータから不快な振動を与えにくいため、シート100に着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる。
【0063】
1以上のアクチュエータは、例えば、上述したように、人がシート100に着座したときに、シート100の座面120における人の大腿部に対応する位置に内蔵されたアクチュエータ301、又は、シート100の背もたれ110における人の仙骨に対応する位置に内蔵されたアクチュエータ203を含む。
【0064】
例えば、出力部30は、複数のトラックのデータのうちドラムのトラックのデータに含まれるキックドラムの音信号をアクチュエータ301へ出力してもよい。これにより、シート100に着座した人の大腿部にキックドラムによる迫力のある振動を与えることができる。
【0065】
例えば、出力部30は、複数のトラックのデータのうちドラムのトラックのデータに含まれるキックドラムの音信号をアクチュエータ203へ出力してもよい。これにより、シート100に着座した人の仙骨にキックドラムによる迫力のある振動を与えることができる。
【0066】
また、例えば、出力部30は、複数のトラックのデータのうちドラム以外のトラックのデータに含まれる音信号を1以上のスピーカのうちのいずれかのスピーカへ出力してもよい。
【0067】
1以上のスピーカは、例えば、上述したように、人がシート100に着座したときに、シート100の背もたれ110における人の下腹部に対応する位置に内蔵されたスピーカ201、シート100の背もたれ110における人の背中に対応する位置に内蔵されたスピーカ401、シート100のヘッドレスト130に内蔵されたスピーカ501、又は、ヘッドレスト130に取り付けられたツィータ600を含む。
【0068】
例えば、出力部30は、複数のトラックのデータのうちベースのトラックのデータに含まれる音信号をスピーカ201へ出力してもよい。例えば、出力部30は、ベースのトラックのデータに含まれる低域の音信号をスピーカ201へ出力する。これにより、シート100に着座した人の下腹部にベースの重低音の音波を暴露でき、振動と共に迫力のある音を提供することができる。例えば、出力部30は、低域フィルタ34を有し、ベースのトラックのデータを低域フィルタ34に入力することでベースの低域の音信号を抽出し、当該音信号をスピーカ201へ出力する。低域フィルタ34は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。
【0069】
例えば、出力部30は、複数のトラックのデータのうち、ドラムのトラックのデータに含まれるスネアの音信号、ベースのトラックのデータに含まれる音信号、及び、ボーカルのトラックのデータに含まれる音信号をスピーカ401へ出力してもよい。
【0070】
例えば、出力部30は、中域フィルタ32を有し、ドラムのトラックのデータを中域フィルタ32に入力することでスネアの音信号を抽出し、当該音信号をスピーカ401へ出力する。中域フィルタ32は、低域フィルタ31よりも通過帯域が高いフィルタである。中域フィルタ32は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。なお、スネアのトラックのデータが存在する場合には、取得部20は、スネアのトラックのデータを取得してもよく、この場合、出力部30は、中域フィルタ32を有していなくてもよく、スネアのトラックのデータをスピーカ401へフィルタを介さずに出力してもよい。
【0071】
例えば、出力部30は、中域フィルタ35を有し、ベースのトラックのデータを中域フィルタ35に入力することでベースの中域の音信号を抽出し、当該音信号をスピーカ401へ出力する。中域フィルタ35は、低域フィルタ34よりも通過帯域が高いフィルタである。中域フィルタ35は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。
【0072】
例えば、出力部30は、加算器36を有し、スネアの音信号、ベースの中域の音信号、及び、ボーカルの音信号を加算器36に入力する。これにより、出力部30は、スネアの音信号、ベースの中域の音信号、及び、ボーカルの音信号を加算することができ、当該加算された音信号をスピーカ401へ出力することができる。
【0073】
これにより、シート100に着座した人の背中に対応する位置からスネア、ベース、ボーカルの音を出力することができる。
【0074】
例えば、出力部30は、複数のトラックのデータのうち、ベース及びドラム以外のトラックのデータに含まれる音信号、並びに、ドラムのトラックのデータに含まれるハイハットの音信号をスピーカ501又はツィータ600へ出力してもよい。
【0075】
例えば、出力部30は、高域フィルタ33を有し、ドラムのトラックのデータを高域フィルタ33に入力することでハイハットの音信号を抽出し、当該音信号をスピーカ501及びツィータ600へ出力する。高域フィルタ33は、中域フィルタ32よりも通過帯域が高いフィルタである。高域フィルタ33は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。なお、ハイハットのトラックのデータが存在する場合には、取得部20は、ハイハットのトラックのデータを取得してもよく、この場合、出力部30は、高域フィルタ33を有していなくてもよく、ハイハットのトラックのデータをスピーカ501及びツィータ600へフィルタを介さずに出力してもよい。
【0076】
例えば、出力部30は、加減算器37を有する。例えば、出力部30は、ボーカルのトラックのデータ、ベースのトラックのデータ、ドラムのトラックのデータ、ギターのトラックのデータ、及び、キーボードのトラックのデータ等を全て含むトータルのトラックのデータに含まれる音信号、並びに、ハイハットの音信号を加減算器37のプラス端子へ入力する。また、例えば、出力部30は、ドラムのトラックのデータに含まれる音信号及びベースのトラックのデータに含まれる音信号を加減算器37のマイナス端子へ入力する。これにより、出力部30は、トータルのトラックのデータに含まれる音信号からドラムのトラックのデータに含まれる音信号及びベースのトラックのデータに含まれる音信号を減算し、当該音信号とハイハットの音信号とを加算することができる。すなわち、複数のトラックのデータのうち、ベース及びドラム以外のトラックのデータに含まれる音信号、並びに、ドラムのトラックのデータに含まれるハイハットの音信号が加算された信号をスピーカ501及びツィータ600へ出力することができる。
【0077】
これにより、ヘッドレスト130からベース及びドラム以外の音(例えば、ボーカル、ギター、キーボード等の音)と、ハイハットの音を出力することができる。
【0078】
例えば、出力部30は、さらに、超音波信号をスピーカ501又はツィータ600へ出力してもよい。例えば、出力部30は加算器38を有し、上述したように、取得部20が超音波信号を取得した場合、出力部30は、トータルのトラックのデータに含まれる音信号、及び、超音波信号を加算器38に入力する。これにより、トータルのトラックのデータに含まれる音信号と超音波信号とを加算でき、超音波信号が加算された音信号をスピーカ501又はツィータ600へ出力することができる。
【0079】
これにより、シート100に着座した人の頭に超音波を暴露でき、シート100に着座した人に対して、ハイパーソニック効果を与えることができる。具体的には、シート100に着座した人に対して、脳血流が改善されて心身の状態が改善される効果を与えることができる。
【0080】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る信号処理装置について、図面を参照しながら説明する。
【0081】
図5は、実施の形態3に係る信号処理装置40の一例を示すブロック図である。なお、
図5には、信号処理装置40の他に、シート100も示している。
【0082】
信号処理装置40は、シート100に設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための装置である。信号処理装置10は、取得部50及び出力部60を備える。信号処理装置40は、プロセッサ及びメモリ等を含む。メモリは、ROM及びRAMなどであり、プロセッサにより実行されるプログラムを記憶することができる。取得部50及び出力部60は、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ等によって実現される。
【0083】
取得部50は、楽曲のデータを取得する。具体的には、取得部50は、ミックスダウンされた楽曲のデータをCD等の音楽ソースから取得する。
【0084】
また、例えば、取得部50は、超音波信号を取得してもよい。例えば、信号処理装置40は、信号処理装置10と同じように、超音波生成部を備えていてもよく、取得部50は、超音波生成部で生成された超音波信号を取得してもよい。超音波生成部の詳細については、実施の形態2で説明したものと同じであるため説明は省略する。
【0085】
出力部60は、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を1以上のアクチュエータへ出力し、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を1以上のスピーカへ出力する。第1周波数帯域は、1以上のアクチュエータの共振周波数を含む帯域である。例えば、出力部60は、楽曲のデータをフィルタリング処理することで、第1周波数帯域の音信号を1以上のアクチュエータへ出力し、第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力する。例えば、1以上のアクチュエータは、アクチュエータ203又は301を含み、1以上のスピーカは、スピーカ201を含む。
【0086】
特許文献1に記載されているシステムがアクチュエータ及びスピーカが内蔵されたシートに適用された場合、アクチュエータ及びスピーカに同じ周波数帯域の信号が入力されることになるため、シートに着座した人に不快な振動を与え得る。これに対して、実施の形態3では、アクチュエータ203又は301、及び、スピーカ201のそれぞれに出力される信号の周波数帯域が異なるため、アクチュエータ203又は301、及び、スピーカ201のそれぞれからシート100に着座した人の最適な箇所に振動及び重低音を暴露することができ、シート100に着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる。
【0087】
例えば、キックドラムの振動は弦楽器の重低音による持続的な振動ではなく歯切れの良いリズム振動であり、シート100に着座した人に不快な振動を与えにくい。また、このようなリズム振動の振動周波数は、アクチュエータ203又は301の共振周波数と近い周波数となっている。そこで、アクチュエータ203又は301の共振周波数を含む第1周波数帯域の音信号、具体的には、振動周波数がアクチュエータ203又は301の共振周波数と近いリズム振動の音信号がアクチュエータ203又は301に出力されることで、シート100に着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる。例えば、シート100に着座した人の大腿部又は仙骨にアクチュエータ203又は301による迫力のある振動を与えることができる。また、スピーカ201から重低音が出力された場合、シート100に着座した人の下腹部に重低音の音波を暴露でき、振動と共に迫力のある音を提供することができる。
【0088】
例えば、出力部60は、低域フィルタ61及び62を有する。例えば、出力部60は、楽曲のデータを低域フィルタ61に入力することで、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を抽出し、当該音信号をアクチュエータ203及び301へ出力する。また、例えば、出力部60は、楽曲のデータを低域フィルタ62に入力することで、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を抽出し、当該音信号をスピーカ201へ出力する。低域フィルタ61及び62は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。
【0089】
図6は、実施の形態3に係る出力部60が備える低域フィルタ61及び62のフィルタ特性の一例を示す図である。
図6の(a)は、低域フィルタ61のフィルタ特性を示し、
図6の(b)は、低域フィルタ62のフィルタ特性を示す。
【0090】
図6の(a)に示されるように、低域フィルタ61は、例えば、Q値の高いバンドパスフィルタであり、アクチュエータ203及び301の共振周波数(例えば90Hz)を含む帯域を通過帯域とする。これにより、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域(例えば90Hzを含む帯域)の音信号をアクチュエータ203及び301に出力することができ、アクチュエータ203及び301は、キックドラム等のリズム振動を生成することができる。
【0091】
一方で、
図6の(b)に示されるように、低域フィルタ62は、例えば、バンドエリミネーションフィルタであり、第1周波数帯域を阻止帯域とする。低域フィルタ62によって、アクチュエータ203及び301の共振周波数を含む第1周波数帯域の音信号が減衰されるため、第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号と第1周波数帯域の音信号との振幅干渉を抑制することができる。
【0092】
例えば、出力部60は、中域フィルタ63を有していてもよい。中域フィルタ63は、低域フィルタ61よりも通過帯域が高いフィルタである。例えば、出力部60は、楽曲のデータを中域フィルタ63に入力することで、楽曲のデータに含まれる中域(例えば150Hzから800Hz)の音信号を抽出し、当該音信号をスピーカ401へ出力する。中域フィルタ63は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。これにより、シート100に着座した人の背中に対応する位置からスネア、ベース、ボーカル等の音を出力することができる。
【0093】
例えば、出力部60は、中高域フィルタ64を有していてもよい。中高域フィルタ64は、中域フィルタ63よりも通過帯域が高いフィルタである。例えば、出力部60は、楽曲のデータを中高域フィルタ64に入力することで、楽曲のデータに含まれる中高域(例えば350Hzから100kHz)の音信号を抽出し、当該音信号をスピーカ501又はツィータ600へ出力する。中域フィルタ63及び中高域フィルタ64は、例えばデジタルフィルタにより実現されるが、アナログフィルタで実現されてもよい。これにより、ヘッドレスト130からギター、キーボード、ボーカル、ハイハット等の音を出力することができる。
【0094】
例えば、出力部60は、さらに、超音波信号をスピーカ501又はツィータ600へ出力してもよい。例えば、出力部60は加算器65を有し、上述したように、取得部50が超音波信号を取得した場合、出力部60は、楽曲のデータ及び超音波信号を加算器65に入力する。これにより、楽曲のデータと超音波信号とを加算でき、超音波信号が加算された楽曲のデータから抽出された超音波信号を含む音信号をスピーカ501又はツィータ600へ出力することができる。
【0095】
これにより、シート100に着座した人の頭に超音波を暴露でき、シート100に着座した人に対して、ハイパーソニック効果を与えることができる。具体的には、シート100に着座した人に対して、脳血流が改善されて心身の状態が改善される効果を与えることができる。
【0096】
(その他の実施の形態)
以上のように、本開示に係る技術の例示として実施の形態を説明した。しかしながら、本開示に係る技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用可能である。例えば、以下のような変形例も本開示の一実施の形態に含まれる。
【0097】
例えば、上記実施の形態1では、シート100がスピーカシステム200、400及び500並びにアクチュエータシステム300を備える例を説明したが、シート100は、少なくともスピーカシステム200を備えていればよい。
【0098】
例えば、上記実施の形態1では、スピーカシステム200がシート100の背もたれ110における中央よりも下側に内蔵される例を説明したが、スピーカシステム200は、シート100の背もたれ110の中央よりも上側に内蔵されていてもよいし、座面120に内蔵されていてもよい。
【0099】
例えば、上記実施の形態2、3では、シート100がアクチュエータ203及び301、スピーカ201、401及び501並びにツィータ600を備える例を説明したが、これに限らない。例えば、シート100は、アクチュエータ203及び301のうちの少なくとも1つのアクチュエータを備えていればよく、また、スピーカ201、401及び501並びにツィータ600のうちの少なくとも1つのスピーカを備えていればよい。
【0100】
例えば、上記実施の形態2、3では、超音波信号がスピーカ501又はツィータ600から出力される例を説明したが、超音波信号がスピーカ501又はツィータ600から出力されなくてもよい。
【0101】
例えば、上記実施の形態1~3では、シート100がヘッドレスト130を備える例を説明したが、シート100は、ヘッドレスト130を備えていなくてもよい。
【0102】
例えば、本開示は、信号処理装置40として実現できるだけでなく、信号処理装置40を構成する構成要素が行うステップ(処理)を含む信号処理方法として実現できる。
【0103】
図7は、その他の実施の形態に係る信号処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0104】
信号処理方法は、シート100に設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための信号処理方法であって、
図7に示されるように、楽曲のデータを取得し(ステップS11)、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を1以上のアクチュエータへ出力し(ステップS12)、楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を1以上のスピーカへ出力する(ステップS13)処理を含み、第1周波数帯域は、1以上のアクチュエータの共振周波数である。
【0105】
例えば、信号処理方法におけるステップは、コンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本開示は、信号処理方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。
【0106】
さらに、本開示は、そのプログラムを記録したCD-ROMなどである非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0107】
例えば、本開示が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリ及び入出力回路などのハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリ又は入出力回路などから取得して演算したり、演算結果をメモリ又は入出力回路などに出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0108】
また、上記実施の形態の信号処理装置40に含まれる各構成要素は、専用又は汎用の回路として実現されてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態の信号処理装置40に含まれる各構成要素は、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。
【0110】
また、集積回路はLSIに限られず、専用回路又は汎用プロセッサで実現されてもよい。プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続及び設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが、利用されてもよい。
【0111】
さらに、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、信号処理装置40に含まれる各構成要素の集積回路化が行われてもよい。
【0112】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0113】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0114】
(技術1)シートに設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための信号処理装置であって、前記楽曲のデータを取得する取得部と、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を前記1以上のアクチュエータへ出力し、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力する出力部と、を備え、前記第1周波数帯域は、前記1以上のアクチュエータの共振周波数を含む帯域である、信号処理装置。
【0115】
特許文献1に記載されているシステムがアクチュエータ及びスピーカが内蔵されたシートに適用された場合、アクチュエータ及びスピーカに同じ周波数帯域の信号が入力されることになるため、シートに着座した人に不快な振動を与え得る。これに対して、本開示では、アクチュエータ及びスピーカのそれぞれに出力される信号の周波数帯域が異なるため、アクチュエータ及びスピーカのそれぞれからシートに着座した人の最適な箇所に振動及び重低音を暴露することができ、シートに着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる。例えば、キックドラムの振動は弦楽器の重低音による持続的な振動ではなく歯切れの良いリズム振動であり、シートに着座した人に不快な振動を与えにくい。また、このようなリズム振動の振動周波数は、アクチュエータの共振周波数と近い周波数となっている。そこで、アクチュエータの共振周波数を含む第1周波数帯域の音信号、具体的には、振動周波数がアクチュエータの共振周波数と近いリズム振動の音信号がアクチュエータに出力されることで、シートに着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる。
【0116】
(技術2)前記出力部は、前記楽曲のデータをフィルタリング処理することで、前記第1周波数帯域の音信号を前記1以上のアクチュエータへ出力する、技術1に記載の信号処理装置。
【0117】
このように、楽曲のデータをフィルタリング処理することで、第1周波数帯域の音信号を抽出することができる。
【0118】
(技術3)前記出力部は、前記楽曲のデータをフィルタリング処理することで、前記第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力する、技術1又は2に記載の信号処理装置。
【0119】
このように、楽曲のデータをフィルタリング処理することで、第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を抽出することができる。
【0120】
(技術4)前記1以上のアクチュエータは、人が前記シートに着座したときに、前記シートの座面における前記人の大腿部に対応する位置に内蔵された第1アクチュエータ、又は、前記シートの背もたれにおける前記人の仙骨に対応する位置に内蔵された第2アクチュエータを含み、前記1以上のスピーカは、人が前記シートに着座したときに、前記シートの背もたれにおける前記人の下腹部に対応する位置に内蔵された第1スピーカを含む、技術1~3のいずれかに記載の信号処理装置。
【0121】
これによれば、シートに着座した人の大腿部又は仙骨にアクチュエータによる迫力のある振動を与えることができる。また、第1スピーカから重低音が出力された場合、シートに着座した人の下腹部に重低音の音波を暴露でき、振動と共に迫力のある音を提供することができる。
【0122】
(技術5)前記出力部は、さらに、超音波信号を、前記シートのヘッドレストに内蔵されたスピーカ、又は、前記ヘッドレストに取り付けられたツィータへ出力する、技術1~4のいずれかに記載の信号処理装置。
【0123】
これによれば、シートに着座した人の頭に超音波を暴露でき、シートに着座した人に対して、ハイパーソニック効果を与えることができる。具体的には、シートに着座した人に対して、脳血流が改善されて心身の状態が改善される効果を与えることができる。
【0124】
(技術6)シートに設けられた1以上のスピーカ及び1以上のアクチュエータから楽曲を再生するための信号処理方法であって、前記楽曲のデータを取得し、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域の音信号を前記1以上のアクチュエータへ出力し、前記楽曲のデータに含まれる第1周波数帯域を除く周波数帯域の音信号を前記1以上のスピーカへ出力し、前記第1周波数帯域は、前記1以上のアクチュエータの共振周波数である、信号処理方法。
【0125】
これによれば、シートに着座した人に不快な振動を与えることを抑制できる信号処理方法を提供することができる。
【0126】
(技術7)技術6に記載の信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0127】
これによれば、シートに着座した人に不快な振動を与えることを抑制できるプログラムを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本開示は、例えば、スピーカ及びアクチュエータが内蔵され、楽曲を再生可能なシート等に適用できる。
【符号の説明】
【0129】
10、40 信号処理装置
20、50 取得部
30、60 出力部
31、34、61、62 低域フィルタ
32、35、63 中域フィルタ
33 高域フィルタ
36、38、65 加算器
37 加減算器
64 中高域フィルタ
100 シート
110 背もたれ
120 座面
130 ヘッドレスト
200、400、500 スピーカシステム
201、401、501 スピーカ
202、402、502 スピーカボックス
202a バッフル面
203、301 アクチュエータ
204 仕切り
205 密閉部
206 部分
300 アクチュエータシステム
302 振動板
600 ツィータ