(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048959
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】毛髪の染色性向上用組成物、染毛用品および染毛用品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240402BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20240402BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240402BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/10
A61Q5/06
A61K8/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155155
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】西尾 洋美
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄輝
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA072
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB082
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB412
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC552
4C083AC642
4C083AC692
4C083AC732
4C083AC792
4C083AC852
4C083AC892
4C083AC902
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD442
4C083AD452
4C083AD512
4C083AD642
4C083CC36
4C083EE07
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】 染毛用品の染色性を向上する技術を提供する。
【解決手段】 下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする毛髪の染色性向上用組成物;(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、(ウ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴、(エ)デキストロース当量が10以上35以下の水飴を還元してなる、還元水飴。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする、毛髪の染色性向上用組成物;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(ウ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴、
(エ)デキストロース当量が10以上35以下の水飴を還元してなる、還元水飴。
【請求項2】
染料と混合して用いられることを特徴とする、請求項1に記載の染色性向上用組成物。
【請求項3】
毛髪染色の前処理に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の染色性向上用組成物。
【請求項4】
下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を含有する、染毛用品;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(ウ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴、
(エ)デキストロース当量が10以上35以下の水飴を還元してなる、還元水飴。
【請求項5】
酸化染料、酸性染料、塩基性染料および非イオン性染料から選択されるいずれか1以上の染料をさらに含有する、請求項4に記載の染毛用品。
【請求項6】
半永久染毛料である、請求項4に記載の染毛用品。
【請求項7】
毛髪染色の前に用いられる前処理用品である、請求項4に記載の染毛用品。
【請求項8】
前記還元水飴を0.1質量%以上含有する、請求項4に記載の染毛用品。
【請求項9】
下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を原料として配合する工程を有する、染毛用品の製造方法;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(ウ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴、
(エ)デキストロース当量が10以上35以下の水飴を還元してなる、還元水飴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の染色性向上用組成物、染毛用品および染毛用品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、顔料や染料、酸化脱色剤などを用いて毛髪の色を変えること(ヘアカラーリング)が行われている。ヘアカラーリングに用いられる製品のうち、半永久染毛料や永久染毛剤(酸化染毛剤、非酸化染毛剤)は、毛髪内部に色素を浸透させ、あるいは毛髪内部で色素を生成させて染色するものであり、従来より、その染色性を向上するために研究開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エーテル結合を0乃至は1個有する炭素数4以上の多価アルコールをヘアマニキュア等の毛髪着色用の組成物に配合することにより、染色性が向上することが開示されている。同文献では、着色成分の浸透促進性が分子のサイズによって異なるため、前記多価アルコールの炭素数は好ましくは4~12、さらに好ましくは4~6とされている。そして、具体的な多価アルコールとしてアラビノース、リキソース、リボース、キシリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、エリスリトール、スレイトール、ペンタエリスリトール、1,2-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンが例示されている(段落[0006])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、還元水飴は、単糖および多糖(二糖、三糖、四糖または五糖以上)のうち、2種以上の糖アルコールを含む混合物である。ここで、特許文献1の「炭素数が4~12の多価アルコール」は、還元水飴においては、その含有成分のうちの「単糖の糖アルコールまたは二糖の糖アルコール」に相当し、「炭素数が4~6の多価アルコール」は、還元水飴においては、その含有成分のうちの「単糖の糖アルコール」に相当する。
【0006】
中糖化還元水飴や低糖化還元水飴(中~低糖化還元水飴)は、還元水飴のうちでも、糖化(デンプンの加水分解)の程度が低いものをいうから、三糖以上(炭素数13以上)の糖アルコールを比較的多く含む。糖の重合数と炭素数との対応関係は上記のとおりであるから、中~低糖化還元水飴は、炭素数が13以上の多価アルコールを相当量含む混合物といえる。この点、特許文献1には、炭素数が13以上の多価アルコールが染色性向上効果を奏することも、分子サイズ(炭素数)が異なる多価アルコールの混合物が染色性向上効果を奏することも、記載も示唆もされていない。すなわち、中~低糖化還元水飴が染色性向上効果を奏することは、特許文献1には記載も示唆もされていない。
【0007】
このように、係る先行技術を鑑みても、染毛用品の染色性を向上する技術は十分に供給されている状況ではない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、染毛用品の染色性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、糖化の程度が比較的小さい水飴を還元してなる還元水飴(中~低糖化還元水飴)が、染毛用品の染色性を向上できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0009】
(1)本発明に係る毛髪の染色性向上用組成物は、下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴(中糖化還元水飴)、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴(低糖化還元水飴)、
(ウ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴(中糖化還元水飴)、
(エ)デキストロース当量が10以上35以下の水飴を還元してなる、還元水飴(低糖化還元水飴)。
【0010】
(2)本発明に係る毛髪の染色性向上用組成物は、染料と混合して用いられるものであってもよい。
【0011】
(3)本発明に係る毛髪の染色の前処理に用いられるものであってもよい。
【0012】
(4)本発明に係る染毛用品は、下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を含有することを特徴とする;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴(中糖化還元水飴)、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴(低糖化還元水飴)、
(ウ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴(中糖化還元水飴)、
(エ)デキストロース当量が10以上35以下の水飴を還元してなる、還元水飴(低糖化還元水飴)。
【0013】
(5)本発明に係る染毛用品は、酸化染料、酸性染料、塩基性染料および非イオン性染料から選択されるいずれか1以上の染料をさらに含有するものであってもよい。
【0014】
(6)本発明に係る染毛用品は、半永久染毛料であってもよい。
【0015】
(7)本発明に係る染毛用品は、毛髪染色の前に用いられる前処理用品であってもよい。
【0016】
(8)本発明に係る染毛用品において、還元水飴の配合量は、例えば0.1質量%以上であってもよい。
【0017】
(9)本発明に係る染毛用品の製造方法は、下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を原料として配合する工程を有する;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴(中糖化還元水飴)、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴(低糖化還元水飴)、
(ウ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴(中糖化還元水飴)、
(エ)デキストロース当量が10以上35以下の水飴を還元してなる、還元水飴(低糖化還元水飴)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、毛髪の染色性を向上することができる。本発明によれば、所定の還元水飴を原料として配合することにより、染色性に優れた染毛用品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】各種の多価アルコール(グリセリン、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴)を添加した半永久染毛料(酸性染料を含有するもの、色素:黒色)で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【
図2】各種の多価アルコール(グリセリン、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴)を添加した半永久染毛料(非イオン性染料および塩基性染料を含有するもの、色素:灰黒色)で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【
図3】各種の多価アルコール(グリセリン、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴)を添加した半永久染毛料(非イオン性染料および塩基性染料を含有するもの、色素:茶色)で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【
図4】グリセリンまたは低糖化還元水飴を添加した半永久染毛料(塩基性染料を含有するもの、色素:赤色)で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【
図5】グリセリンまたは低糖化還元水飴を添加した半永久染毛料(非イオン性染料および塩基性染料を含有するもの、色素:青黒色)で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【
図6】多価アルコール(グリセリンまたは低糖化還元水飴)を0.1、1、5または10質量%配合した半永久染毛料で染色した毛髪について、評価色差(同じ添加量の試料2(低糖化還元水飴)の色差から、試料1(グリセリン)の色差を減じた値)を示す棒グラフである。
【
図7】各種の多価アルコール(グリセリン、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴)を配合した前処理液を染色前に塗布し、緑系(エメラルド)の酸化染毛剤で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【
図8】各種の多価アルコール(グリセリン、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴)を配合した前処理液を染色前に塗布し、赤系(ネイキッドコーラル)の酸化染毛剤で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【
図9】中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を配合した前処理液を染色前に塗布し、青系(マットアッシュ)の酸化染毛剤で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【
図10】低糖化還元水飴を0~20質量%配合した前処理液を染色前に塗布し、緑系(エメラルド)の酸化染毛剤で染色した毛髪について、染色前後の色差を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明は、毛髪の染色性向上用組成物、染毛用品および染毛用品の製造方法を提供する。これらはいずれも、中~低糖化還元水飴(上記(ア)~(エ)の還元水飴)を用いることを特徴としている。
【0022】
還元水飴は、水飴を還元して得られる糖アルコールである。ここで、水飴は、デンプンを酸や酵素などで加水分解(糖化)して得られる物質であり、単糖(ブドウ糖)および多糖(オリゴ糖やデキストリンなど)の混合物である。よって、還元水飴もまた、単糖の糖アルコールおよび多糖(二糖、三糖、四糖または五糖以上)の糖アルコールのうち、2種以上の糖アルコールを含む混合物である。還元水飴は、糖化の程度により高糖化還元水飴、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴に分けられる場合がある。これらのうち、本発明では、中糖化還元水飴および/または低糖化還元水飴が有効成分として用いられる。
【0023】
中糖化還元水飴の糖組成として、具体的には、(ア)単糖を30質量%未満および五糖以上を50質量%未満含有する糖組成、(オ)単糖を30質量%未満、三糖以上を20質量%以上および五糖以上を50質量%未満含有する糖組成、あるいは、(カ)単糖を2~10質量%、二糖を15~55質量%、三糖を15~65質量%、四糖を1~15質量%および五糖以上を1~38質量%含有する糖組成を例示することができる。
【0024】
低糖化還元水飴の糖組成として、具体的には、(イ)五糖以上を50質量%以上含有する糖組成、(キ)三糖以上を67質量%以上および五糖以上を50質量%以上含有する糖組成、あるいは、(ク)単糖を1~10質量%、二糖を6~21質量%、三糖を7~23質量%、四糖を5~13質量%および五糖以上を50~82質量%含有する糖組成を例示することができる。
【0025】
なお、本発明において、糖組成とは、糖の総質量に占める各糖の質量割合を百分率で示すものをいう。すなわち、糖の総質量を100とした場合の、各糖の質量百分率である。
【0026】
糖組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認することができる。すなわち、還元水飴を試料としてHPLCに供してクロマトグラムを得る。当該クロマトグラムにおいて、全ピークの面積の総和が「糖の総質量」に、各ピークの面積が「各糖の質量」に相当する。よって、試料における各糖の質量百分率は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として算出することができる。HPLCの条件は、定法に従って適宜設定することができるが、下記条件を例示することができる。
《HPLCの条件》
カラム;MCI GEL CK04S(10mm ID x 200mm)
溶離液;高純水
流速;0.4mL/分
注入量;20μL
カラム温度;65℃
検出;示差屈折率検出器RI-10A(島津製作所)
【0027】
還元水飴は、水飴を還元して製造することから、還元水飴の糖化の程度は、水飴の糖化の程度に準じる。すなわち、原料水飴の糖化の程度が高いほど還元水飴の糖化の程度が高く、原料水飴の糖化の程度が低いほど還元水飴の糖化の程度は低い。水飴の糖化の程度の指標は、一般に、デキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)が用いられる。DEは、試料中の還元糖をブドウ糖として測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)である。DEの最大値は100で、固形分の全てがブドウ糖であることを意味し、DEが小さくなるほど少糖類や多糖類が多いことを意味する。
【0028】
すなわち、中糖化還元水飴の原料水飴のDEとしては、(ウ)35超、37以上、48以下、50以下、55以下を例示することができる。
【0029】
また、低糖化還元水飴の原料水飴のDEとしては、(エ)10以上、12以上、14以上、30以下、32以下、35以下を例示することができる。
【0030】
なお、水飴のDEは、下記の方法により測定することができる。
《DEの測定方法》
試料2.5gを正確に量り、水で溶かして200mLとする。この液10mLを量り、1/25mol/L ヨウ素溶液(注1)10mLと1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液(注2)15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸(注3)を5mL加えて混和した後、1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(注4)で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、デンプン指示薬(注5)2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。水を用いてブランク値を求め、次式1によりDEを求める。
(注1)1/25mol/L ヨウ素溶液:ヨウ化カリウム20.4gとヨウ素10.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注2)1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム3.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注3)2mol/L 塩酸:水750mLに塩酸150mLをかき混ぜながら徐々に加える。
(注4)1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液:チオ硫酸ナトリウム20gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注5)デンプン指示薬:可溶性デンプン5gを水500mLに溶解し、これに塩化ナトリウム100gを溶解する。
【0031】
本発明において、中~低糖化還元水飴は、市販されているものをそのまま用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。市販の中糖化還元水飴としては、例えば、「アクアオール#1」、「スイートOL」、「スイートG3」、「エスイー57」および「エスイー58」(以上、物産フードサイエンス)などを、市販の低糖化還元水飴としては、例えば、「アクアオール#2」、「スイートNT」、「エスイーP」、「エスイー30」および「エスイー100」(以上、物産フードサイエンス)、「PO-10」、「PO-20」(以上、三菱商事ライフサイエンス)などを例示することができる。
【0032】
還元水飴の公知の製造方法としては、水飴(原料糖)に水素を添加する還元反応を挙げることができる。水素添加による還元反応は、例えば、40~75質量%の原料糖水溶液を、還元触媒と併せて高圧反応器中に仕込み、反応器中の水素圧を4.9~19.6MPa、反応液温を70~180℃として、混合攪拌しながら、水素の吸収が認められなくなるまで反応を行なえばよい。その後、還元触媒を分離し、イオン交換樹脂処理、必要であれば活性炭処理等で脱色脱塩した後、所定の濃度まで濃縮すれば、高濃度の還元水飴を作ることができる。
【0033】
中~低糖化還元水飴は、毛髪染色のための染料と混合して用いることができる。染料は、染毛に通常用いられる、色素を含むもの、あるいは毛髪内部で色素を生成するものであればよい。具体的には、例えば、酸性染料、塩基性染料、非イオン性染料、酸化染料、多価フェノール(タンニン酸、ピロガロールなど)および鉄イオン(硫酸第一鉄など)等を例示することができるが、そのいずれであってもよい。
【0034】
また、中~低糖化還元水飴は、染料による毛髪の染色に先立つ処理(前処理)に用いることもできる。係る前処理の態様としては、例えば、洗髪が例示される。還元水飴を、当該洗髪の際に使用する毛髪洗浄料やすすぎ水に配合して用いることができる。また、別の態様として、還元水飴を配合した組成物を、染毛の前に毛髪に塗布や噴霧、浸漬等して用いることもできる。
【0035】
本発明において、「毛髪の染色性を向上する」とは、毛髪を染料と接触させた際の毛髪色の変化の程度を大きくすることをいう。
【0036】
毛髪の色の変化の程度は常法に従って確認することができる。すなわち、例えば、染色前後の毛髪について市販の測色器械を使って色を測定(数値化)し、これら前後の測定値間の色差ΔE*を算出する。色差が大きければ色変化が大きく、色差が小さければ色変化は小さいと判断することができる。従って、中~低糖化還元水飴を用いた場合と用いていない場合とで色差を比較し、前者の色差が大きければ、中~低糖化還元水飴により毛髪の染色性が向上したと判断することができる。あるいは、単に、中~低糖化還元水飴を用いた場合と用いていない場合とで染色後の毛髪の色を比較してもよい。
【0037】
本発明において、「染毛用品」とは、毛髪の染色(染毛)の目的に用いられる製品をいう。染毛用品は、1種類の組成物であってもよく、複数種の組成物からなる一組の製品であってもよい。例えば、染毛用品は、「1剤と2剤」や「前処理用組成物と染料含有組成物」といったように、使用のタイミングの異なる複数種の組成物からなるものであってもよい。
【0038】
染毛用品は、(複数種の組成物からなる一組の製品である場合は、少なくともいずれか1以上の組成物に)染毛のための染料を含むものであってもよい。この場合の染料は、上記と同様のものが例示される。
【0039】
ここで、染料を含む染毛用品は、染毛の作用機序の違いから下記のように分けられる場合がある;
「酸化染毛剤(通称:ヘアカラー、ヘアダイ、白髪染め、おしゃれ染め、おしゃれ白髪染め、ファッションカラー)」染料:酸化染料、作用機序:過酸化水素が毛髪内部に元来存するメラニン色素を脱色するとともに、染料を酸化して毛髪内部で色素を生成する。
「非酸化染毛剤(通称:オハグロ式白髪染め)」染料:多価フェノールおよび鉄イオン、作用機序:多価フェノールが空気酸化や鉄イオンの作用により、毛髪内部で黒色色素を生成する。
「半永久染毛料(通称:ヘアマニキュア)」染料:酸性染料、作用機序:色素が毛髪表面から内部に浸透して染色する。
「半永久染毛料(通称:カラートリートメント、カラーリンス)」染料:塩基性染料や非イオン性染料、作用機序:色素が毛髪表面から内部に浸透して染色する。
【0040】
後述する実施例に示すように、中~低糖化還元水飴は、異なる作用機序、染料および色素(黒系、茶系、青系、赤系あるいは緑系)による染色であっても、染料と同時あるいはそれに先立って毛髪に接触させることにより、染色性を向上できる。したがって、本発明に係る染毛用品は、上記のいずれであってもよい。
【0041】
あるいは、染毛用品は、染料を含まず、染料による毛髪の染色に先立つ処理(前処理)に用いられるもの(前処理用品)であってもよい。係る前処理の態様としては、上記と同様のものが例示される。従って、前処理用品としては、例えば、毛髪洗浄料(シャンプー)や、洗髪のすすぎ水に添加したり、(染毛前に)毛髪に塗布や噴霧、浸漬して用いるクリーム状、液状、エアゾル状、泡状、粉末状、ゲル状ないしゾル状組成物などを例示することができる。
【0042】
中~低糖化還元水飴は、染毛用品を製造する通常の工程において、原料として配合して用いる。その配合方法は、製品の種別、他の原料成分の種類や配合量、所望の使用感などに応じて、適宜、当業者に公知の手法により行うことができる。還元水飴は多価アルコールであることから、グリセリンや1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等の従来配合される他の多価アルコールと同様に扱って、染毛用品を製造することができる。
【0043】
染毛用品には、中~低糖化還元水飴を配合するほか、本発明の特徴を損なわない限り他の成分(例えば、染料、顔料、界面活性剤、溶媒、分散媒、他の多価アルコール、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、ソルビトール等の他の糖類、着色剤、動植物エキス、ビタミン類、無機塩類、有機塩類、可溶化剤、殺菌剤、保湿剤、酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、増粘剤、香料、カチオンポリマー、清涼剤、冷感剤、油剤など)が配合されてよい。
【0044】
染毛用品における中~低糖化還元水飴の配合量もまた、製品の種別、他の原料成分の種類や配合量、所望の使用感などに応じて適宜設定することができる。例えば、染毛用品(複数種の組成物からなる一組の製品である場合は、還元水飴を含む組成物のみ)の総質量を100質量%として、染色性向上効果を得る観点からは、還元水飴の下限は、0.01質量%超、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%超、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上または0.09質量%以上を例示することができる。また、上限は、30質量%以下、29質量%以下、28質量%以下、27質量%以下、26質量%以下、25質量%以下、24質量%以下、23質量%以下、22質量%以下、21質量%以下、20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、16質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下または11質量%以下を例示することができる。
【0045】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0046】
<試験方法>試験は、特段の記載のない限り下記の方法により行った。
(1)多価アルコール
多価アルコールは表1に示す市販品を用いた。還元水飴については、その糖組成および原料糖のDE値も表1に示す。
【表1】
【0047】
(2)毛髪
毛髪は、市販のレベル16のブリーチ毛からなる毛束(製品名:人毛ライトブラウン(16LV)、ビューラックス社)または白髪からなる毛束(製品名:人毛白髪100%、ビューラックス社)を用いた。
【0048】
(3)染毛用品
染毛用品は下記[3-1]および[3-2]を用いた。
[3-1]半永久染毛料
≪3-1-1≫酸性染料を含有するもの
製品名「ブローネ 美髪ヘアマニキュア/ナチュラルブラック」(花王社)、含有成分;水、LPG、エタノール、ベンジルグリコール、乳酸、グリセリン、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、DME、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-9ジメチコン、水添ポリイソブテン、(C12-14)s-パレス-9、香料、BG、水酸化Na、リンゴ酸、ローヤルゼリーエキス、加水分解シルク、ヒバマタエキス、黄203、 黒401、紫401、赤227、橙205
≪3-1-2≫非イオン性染料および塩基性染料を含有するもの
製品名「サイオス syoss カラートリートメント/アッシュブラック」(ヘンケルジャパン社)、含有成分;水、セテアリルアルコール、セタノール、イソノナン酸イソノニル、ステアラミドプロピルジメチルアミン、HC青12、ジメチコン、フェノキシエタノール、乳酸、ベヘントリモニウムクロリド、メチルパラベン、水酸化Na、ジメチコノール、イソプロパノール、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン(羊毛)、加水分解ケラチン(羊毛)、2‐アミノ‐6‐クロロ‐4‐ニトロフェノール、HC青16、HC赤3、N,N’‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐ニトロ‐p‐フェニレンジアミン、塩基性赤76、塩基性黄57、香料
製品名「hoyu Bigen カラートリートメント ナチュラルブラウン」(ホーユー社)、含有成分;水、グリセリン、ステアリルアルコール、セタノール、ベヘントリモニウムクロリド、タウリン、ジメチコン、ミネラルオイル、ツバキ種子油、ヒアルロン酸Na、乳酸、ヒドロキシエチルセルロース、セトリモニウムクロリド、イソプロパノール、フェノキシエタノール、香料、(+/-)HC黄4、HC青2、塩基性青75、塩基性茶16
製品名「マカロンパレット ヘアカラー ブルーブラック」(O+LIFE社)、含有成分;水、DPG、セタノール、セテアリルアルコール、水添ポリイソブテン、ジメチコン、セトリモニウムプロミド、ミツロウ、ツバキ種子油、マカデミア種子油、アボカド油、アルガニアスピノサ核油、セテス-40、グリセリン、カニナバラ果実エキス、センチフォリアバラ花エキス、セラミドAP、セラミドNP、加水分解ヒアルロン酸、加水分解シルク、PEG-90M、PEG-60水添ヒマシ油、ステアルトリモニウムプロミド、イソプロパノール、エチドロン酸、シア脂、乳酸、水酸化Na、エタノール、BG、HC黄2、HC青2、塩基性青99、香料
≪3-1-3≫塩基性染料を含有するもの
製品名「hoyu Beauteen ポイントカラークリーム ファイヤーレッド」(ホーユー社)、含有成分;水、セテアリルアルコール、グリセリン、ジメチコン、ベヘントリモニウムクロリド、イソノナン酸イソノニル、DPG、アルガニアスピノサ核油、アミノプロピルジメチコン、クエン酸、フェノキシエタノール、メチルパラベン、ワセリン、香料、(+/-)塩基性赤51、塩基性青124、塩基性紫2
【0049】
[3-2]酸化染毛剤
酸化染毛剤は、使用直前に1剤と2剤とを1:1(重量比)で混合して用いた。1剤は、色素(緑系、赤系、青系)別に下記の各製品を用いた。2剤はいずれの場合も共通して下記製品を用いた。
緑系酸化染毛剤(1剤):製品名「オルディーブ アディクシー エメラルド」(ミルボン社)、有効成分;レゾルシン、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、硫酸トルエン2,5-ジアミン、その他の成分;ステアリルアルコール、セタノール、セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、オレイルアルコール、キサンタンガム、POEセチルエーテルリン酸、POEステアリルエーテル、PG、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、アスコルビン酸、無水亜硫酸Na、HEDTA・3Na2水塩、香料、水
赤系酸化染毛剤(1剤):製品名「オルディーブ アディクシー ネイキッドコーラル」(ミルボン社)、有効成分;レゾルシン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、硫酸トルエン2,5-ジアミン、5-アミノオルトクレゾール、その他の成分;ステアリルアルコール、セタノール、セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、オレイルアルコール、キサンタンガム、ジメチコン、POEセチルエーテルリン酸、POEステアリルエーテル、PG、アンモニア水、重炭酸アンモニウム、アスコルビン酸、無水亜硫酸Na、HEDTA・3Na2水塩、香料、水
青系酸化染毛剤(1剤):製品名「オルディーブ アディクシー マットアッシュ」(ミルボン社)、有効成分;レゾルシン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、パラフェニレンジアミン、その他の成分;オクタン酸セチル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、パラフィン、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体液、塩化トリメチルアンモニオヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、セトリモニウムクロリド、POEセチルエーテル、POEヘベニルエーテル、親油型ステアリン酸グリセリル、高重合ジメチコン-1、PEG(20)、PG、プロパノール、アンモニア水、アスコルビン酸、無水亜硫酸Na、エデト酸塩、香料、水
酸化染毛剤(2剤):製品名「オルディーブ アディクシー オキシダン6.0%」(ミルボン社)、有効成分;過酸化水素水、その他の成分;サラシミツロウ、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、流動パラフィン、ステアリルアルコール、セタノール、POEステアリルエーテル、POEセチルエーテル、POPステアリルエーテル、セトリモ二ウムクロリド、ヒドロキシエタンジホスホン酸液、ヒドロキシホスホン酸4Na液、フェノキシエタノール、水
【0050】
(4)染色性の評価
下記〔1〕-〔5〕の手順で、毛髪に対する染色の程度を評価した。なお、色測定は試料毎に4検体を測定し、色差は平均値を算出した。
〔1〕予洗い:ラウレス硫酸Naを0.27質量%含有する水溶液に検体の毛髪を浸漬し、軽くもみ洗いした後、15分間室温で静置した。続いて、流水で洗浄した後、高純水でさらにすすぎ、ドライヤーを用いて乾燥させた。
〔2〕染色前の色測定:予洗いした毛髪について、分光光度計(島津社)を用いて波長380~740nmの反射率を測定した。反射スペクトルから、式2によりXYZ表色系の三刺激値X,Y,Zを算出した。続いて、X,Y,Zに基づき、式3によりL*a*b*表色系の値(L*,a*,b*)を算出した。これらの算出は、日本産業規格(JIS)Z8781-4に従い、カラー測定ソフトウェアCOL-UVPC(島津社)を用いて行った。
〔3〕染色:毛髪1gあたり染毛用品を1.5gの割合で塗布し、室温にて20分(半永久染毛料の場合)または30分(酸化染毛剤の場合)静置した。続いて1分間流水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥させて染色毛とした。
〔4〕染色後の色測定:染色毛について、〔2〕に記載の方法により反射率を測定してL*a*b*値を得た。
〔5〕色差の算出:染色前後の毛髪の色測定値(〔2〕および〔4〕のL*a*b*)を下記の式4に代入し、色差ΔE*abを算出した。式4:ΔE*ab=〔(ΔL*)
2+(Δa*)
2+(Δb*)
2〕
1/2
【0051】
ここで、色差は、色空間における2つの色(本実施例においては、洗髪前の毛髪の色と洗髪後の毛髪の色)の間の距離である。したがって、色差が大きいほど当該2つの色は互いに区別しやすく、色差が小さいほど区別しにくいといえる。色差の値と目視での感じ方との対応関係について、参考として、塗料・塗装業界における一般的目安を表2に示す(日本画像学会誌石川典夫、測色の基礎と実際、日本画像学会誌 第44巻 第6号、2005年第489-498頁)。本実施例では、当該目安に準じ、対照試料との比較基準を0.8とした。すなわち、対照試料の色差との差が0.8未満であれば「有意差なし(染色性を向上しない)」と評価し、0.8以上であれば「有意差あり(染色性を向上した)」と評価した。
【表2】
【0052】
<実施例1>半永久染毛料への添加:染色性を向上する多価アルコールの検討
(1)酸性染料を含有する半永久染毛料(黒色)
「ブローネ 美髪ヘアマニキュア/ナチュラルブラック」(酸性染料として黄203、 黒401、紫401、赤227および橙205を含有する半永久染毛料)100重量部に対して、多価アルコールを10重量部となるよう添加して混合した。続いて、当該染毛用品を〔3〕の染色工程で用いて、試験方法(4)に記載のとおり染色性の評価を行った。毛髪は、白髪からなる毛束を用いた。グリセリン、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴をそれぞれ添加したもので染色した毛束を試料1~3とした。これら試料の染色前後の色差の棒グラフを
図1に示す。
【0053】
図1に示すように、試料2(中糖化還元水飴)および試料3(低糖化還元水飴)は、試料1(グリセリン)よりも色差が顕著に大きかった。試料1の色差との差は、試料2で約2.73、試料3で約2.61であり、いずれも基準の0.8より顕著に大きかった。すなわち、中~低糖化の還元水飴を添加した染毛用品で染色した毛髪は、グリセリンを添加した場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。
【0054】
(2)非イオン性染料および塩基性染料を含有する半永久染毛料(灰黒色)
「サイオス syoss カラートリートメント/アッシュブラック」(非イオン性染料としてHC青12、 2‐アミノ‐6‐クロロ‐4‐ニトロフェノール、HC青16、HC赤3およびN,N’‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐ニトロ‐p‐フェニレンジアミンを含有し、塩基性染料として塩基性赤76および塩基性黄57を含有する半永久染毛料)100重量部に対して、多価アルコールを10重量部となるよう添加して混合した。続いて、当該染毛用品を〔3〕の染色工程で用いて、試験方法(4)に記載のとおり染色性の評価を行った。毛髪は、白髪からなる毛束を用いた。グリセリン、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴をそれぞれ添加したもので染色した毛束を試料1~3とした。これら試料の染色前後の色差の棒グラフを
図2に示す。
【0055】
図2に示すように、試料2(中糖化還元水飴)および試料3(低糖化還元水飴)は、試料1(グリセリン)よりも色差が顕著に大きかった。試料1の色差との差は、試料2で約2.86、試料3で約5.16であり、いずれも基準の0.8より顕著に大きかった。すなわち、中~低糖化の還元水飴を添加した染毛用品で染色した毛髪は、グリセリンを添加した場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。
【0056】
(3)非イオン性染料および塩基性染料を含有する半永久染毛料(茶色)
「hoyu Bigen カラートリートメント ナチュラルブラウン」(非イオン性染料として(+/-)HC黄4およびHC青2を含有し、塩基性染料として塩基性青75および塩基性茶16を含有する半永久染毛料)100重量部に対して、多価アルコールを10重量部となるよう添加して混合した。続いて、当該染毛用品を〔3〕の染色工程で用いて、試験方法(4)に記載のとおり染色性の評価を行った。毛髪は、白髪からなる毛束を用いた。グリセリン、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴をそれぞれ添加したもので染色した毛束を試料1~3とした。これら試料の染色前後の色差の棒グラフを
図3に示す。
【0057】
図3に示すように、試料2(中糖化還元水飴)および試料3(低糖化還元水飴)は、試料1(グリセリン)よりも色差が顕著に大きかった。試料1の色差との差は、試料2で約1.40、試料3で約2.56であり、いずれも基準の0.8より顕著に大きかった。すなわち、中~低糖化の還元水飴を添加した染毛用品で染色した毛髪は、グリセリンを添加した場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。
【0058】
以上(1)~(3)の結果から、中~低糖化の還元水飴は、染毛用品の染色効果を向上できることが明らかになった。
【0059】
<実施例2>半永久染毛料への添加:染料の色素の検討
実施例1にて、中~低糖化の還元水飴は、半永久染毛料において、染料の種類(酸性染料、塩基性染料および非イオン性染料)や色素(黒色系、灰色系および茶色系)の別に関わらず染色向上効果を発揮することが明らかになった。そこで、低糖化還元水飴を用いて、さらに異なる種類の染料ないし色素について検討した。
【0060】
(1)塩基性染料を含有する半永久染毛料(赤色)
「hoyu Beauteen ポイントカラークリーム ファイヤーレッド」(塩基性染料として(+/-)塩基性赤51、塩基性青124および塩基性紫2を含有する半永久染毛料)100重量部に対して、多価アルコールを10重量部となるよう添加して混合した。続いて、当該染毛用品を〔3〕の染色工程で用いて、試験方法(4)に記載のとおり染色性の評価を行った。毛髪は、レベル16のブリーチ毛からなる毛束を用いた。グリセリンおよび低糖化還元水飴をそれぞれ添加したもので染色した毛束を試料1および試料2とした。これら試料の染色前後の色差の棒グラフを
図4に示す。
【0061】
図4に示すように、試料2(低糖化還元水飴)は、試料1(グリセリン)よりも色差が大きかった。試料2と試料1との色差の差は、約0.83であり、基準の0.8より大きかった。すなわち、低糖化還元水飴を添加した染毛用品で染色した毛髪は、グリセリンを添加した場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。
【0062】
(2)非イオン性染料および塩基性染料を含有する半永久染毛料(青黒色)
「マカロンパレット ヘアカラー ブルーブラック」(非イオン性染料としてHC黄2およびHC青2を含有し、塩基性染料として塩基性青99を含有する半永久染毛料)100重量部に対して、表1の多価アルコールを10重量部となるよう添加して混合した。続いて、当該染毛用品を〔3〕の染色工程で用いて、試験方法(4)に記載のとおり染色性の評価を行った。毛髪は、レベル16のブリーチ毛からなる毛束を用いた。グリセリンおよび低糖化還元水飴をそれぞれ添加したもので染色した毛束を試料1および試料2とした。これら試料の染色前後の色差の棒グラフを
図5に示す。
【0063】
図5に示すように、試料2(低糖化還元水飴)は、試料1(グリセリン)よりも色差が大きかった。試料2と試料1との色差の差は、約1.10であり、基準の0.8より大きかった。すなわち、低糖化還元水飴を添加した染毛用品で染色した毛髪は、グリセリンを添加した場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。
【0064】
以上(1)~(2)の結果から、中~低糖化の還元水飴は、染料の種類や色素の別に関わらず、染毛用品の染色効果を向上できることが明らかになった。
【0065】
<実施例3>半永久染毛料への添加:配合量の検討
半永久染毛料に、多価アルコール(グリセリンまたは低糖化還元水飴)を固形分濃度で0.1、1、5または10質量%となるよう添加して混合した。半永久染毛料は「hoyu Bigen カラートリートメント ナチュラルブラウン」(非イオン性染料および塩基性染料を含有するもの、色素:茶色)を用いた。当該染毛用品を〔3〕の染色工程で用いて、試験方法(4)に記載のとおり染色性の評価を行った。毛髪は、白髪からなる毛束を用いた。グリセリンおよび低糖化還元水飴をそれぞれ添加したもので染色した毛束を、試料1および試料2とした。同濃度の試料2(低糖化還元水飴)の色差から、試料1(グリセリン)の色差を減じて、これを評価色差とした。評価色差の棒グラフを
図6に示す。
【0066】
図6に示すように、多価アルコール(グリセリンまたは低糖化還元水飴)の配合量が0.1、1、5および10質量%のいずれの場合も、評価色差は、基準の0.8よりも顕著に大きい値であった。すなわち、低糖化還元水飴を0.1、1、5および10質量%配合した半永久染毛料で染色した毛髪は、同濃度のグリセリンを配合した場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。この結果から、中~低糖化還元水飴は、その配合量の多少に関わらず、染毛用品の染色効果を向上できることが明らかになった。
【0067】
<実施例4>染毛前処理液への添加:染色性を向上する多価アルコールの検討
(1)緑系(エメラルド)の酸化染毛剤
表3に示す配合となるよう、精製水に多価アルコールを溶解し、試料2~4の前処理液を調製した。
【表3】
【0068】
試験方法(4)工程〔1〕の予洗い後の毛髪1gあたり2gの水または前処理液(試料2~4)を塗布し、室温で5分間放置した。その後、毛髪をペーパータオルに挟み、毛髪1束あたり1kgの重りを置いて1分間放置することにより水分を除去した。続いて、試験方法(4)工程〔2〕~〔5〕に記載のとおり染色し、染色性の評価を行った。毛髪は、レベル16のブリーチ毛からなる毛束を用いた。染毛用品は「オルディーブ アディクシー エメラルド」(緑系の酸化染毛剤)を用いた。前処理液に代えて水を塗布した毛束を試料1とし、試料2~4の前処理液を塗布した毛束をそれぞれ試料2~4とした。これら試料の染色前後の外観および色差の棒グラフを
図7に示す。
【0069】
図7に示すように、試料3(中糖化還元水飴)および試料4(低糖化還元水飴)は、試料1(水)や試料2(グリセリン)よりも色差が顕著に大きかった。試料1の色差との差は、試料3で約1.34、試料3で約4.24であり、いずれも基準の0.8より顕著に大きかった。すなわち、中~低糖化還元水飴を配合した前処理液を染色前に塗布した毛髪は、水やグリセリン溶液を用いた場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。
【0070】
(2)赤系(ネイキッドコーラル)の酸化染毛剤
本実施例4(1)に記載の方法で毛髪に水または前処理液を塗布した後、染色して染色性を評価した。ただし、染毛用品は「オルディーブ アディクシー ネイキッドコーラル」(赤系の酸化染毛剤)を用いた。試料1~4の染色前後の外観および色差の棒グラフを
図8に示す。
【0071】
図8に示すように、試料3(中糖化還元水飴)および試料4(低糖化還元水飴)は、試料1(水)や試料2(グリセリン)よりも色差が顕著に大きかった。試料1の色差との差は、試料3で約2.94、試料3で約2.77であり、いずれも基準の0.8より顕著に大きかった。すなわち、中~低糖化還元水飴を配合した前処理液を染色前に塗布した毛髪は、水やグリセリン溶液を用いた場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。
【0072】
以上(1)~(2)の結果から、中~低糖化の還元水飴は、染毛用品の染色効果を向上できることが明らかになった。
【0073】
<実施例5>染毛前処理液への添加:染料の色素の検討
実施例4にて、中~低糖化還元水飴は、染色前に毛髪に塗布することにより、酸化染毛剤の染料ないし色素(緑色系および赤色系)の別に関わらず染色向上効果を発揮することが明らかになった。そこで、さらに異なる種類の染料ないし色素について検討した。
【0074】
具体的には、実施例4(1)に記載の方法で毛髪に水または前処理液を塗布した後、染色して染色性を評価した。ただし、多価アルコールは中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を用いて、それぞれを配合した前処理液を試料2および試料3とした。染毛用品は「オルディーブ アディクシー マットアッシュ」(青系の酸化染毛剤)を用いた。その染色前後の色差の棒グラフを
図9に示す。
【0075】
図9に示すように、試料2(中糖化還元水飴)および試料3(低糖化還元水飴)は、試料1(水)よりも色差が大きかった。試料1の色差との差は、試料2で約0.86、試料3で約3.31であり、いずれも基準の0.8より大きかった。すなわち、中~低糖化還元水飴を配合した前処理液を染色前に塗布した毛髪は、水を用いた場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。この結果から、中~低糖化の還元水飴は、染毛用品の染料ないし色素の別に関わらず、染色効果を向上できることが明らかになった。
【0076】
<実施例6>染毛前処理液への添加:配合量の検討
表4に示す配合となるよう、精製水に低糖化還元水飴を溶解し、試料1~6の前処理液を調製した。実施例4(1)に記載の方法で、当該前処理液を毛髪に塗布した後、染色して染色性を評価した。ただし、試料毎の毛束の検体数は3とした。その染色前後の色差の棒グラフを
図10に示す。
【表4】
【0077】
図10に示すように、試料2(0.1質量%)、試料3(1質量%)、試料4(5質量%)、試料5(10質量%)および試料6(20質量%)のいずれも、試料1(0質量%)よりも色差が大きかった。試料1の色差との差は、試料2で約1.04、試料3で約1.19、試料4で約1.46、試料5で約1.08、試料6で約1.72であり、いずれも基準の0.8より大きかった。すなわち、低糖化還元水飴を0.1~20質量%配合した前処理液を染色前に塗布した毛髪は、配合量が0質量%の前処理液(水)を用いた場合と比較して、染色前後の色差が大きかった。この結果から、中~低糖化還元水飴は、その配合量の多少に関わらず、染毛用品の染色効果を向上できることが明らかになった。