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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048972
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】不断流工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20240402BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L55/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155176
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】牧野 芳和
(57)【要約】
【課題】作業弁の弁体の円滑な移動及び密封性を維持することができる不断流工法を提供すること。
【解決手段】既設の流体管2に対し密封状に取付けられた筐体10の上方に、該筐体10の上部開口10Cを開閉可能な作業弁5を設置し、筐体10内へのバタフライ弁14の取付け(制流体設置工程)、取外し(制流体除去工程)及び既設の流体管2の切断(切除工程)のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法であって、各作業工程において、弁蓋5bの荷重は地盤または基礎に載置されたジャッキ104,104により支持される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の流体管に対し密封状に取付けられた筐体の上方に、該筐体の上部開口を開閉可能な作業弁を設置し、前記筐体内への制流体の取付け、取外し及び前記既設の流体管の切断のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法であって、
前記作業弁は、前記筐体の上部に取付けられる弁箱と、該弁箱から側方に突出する弁蓋と、の間を弁体が移動することで前記筐体の上部開口を開閉するようになっており、
前記作業時において、前記弁蓋の荷重は地盤または基礎に載置された支持手段により支持されることを特徴とする不断流工法。
【請求項2】
前記支持手段は、高さ調整可能なジャッキを含むことを特徴とする請求項1に記載の不断流工法。
【請求項3】
前記弁蓋の荷重は複数の前記ジャッキにより支持されることを特徴とする請求項2に記載の不断流工法。
【請求項4】
前記弁蓋は、前記弁箱から前記既設の流体管の管軸方向に突出し、
前記支持手段は、前記既設の流体管を挟んで両側に配設されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の不断流工法。
【請求項5】
前記地盤は、前記筐体を取付けるために掘削した掘削穴の周囲の地面であることを特徴とする請求項1に記載の不断流工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の流路への制流体の取付け、取外し及び既設の流体管の切断のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる既設の流路に、弁やプラグ等の制流体を設置する作業や、既設の流路に設置された制流体を経年劣化による故障の修理やメンテナンスの目的で引き抜いて再度設置する作業や、経年劣化により既設の流体管の一部を新たな流体管に更新したり、他の流路と接続する作業等を不断流状態で行うことがある。
【0003】
この種の作業を不断流状態で行う不断流工法として、例えば、流体管に対し密封状に筐体を取付け、該筐体の上部開口に該筐体内を開閉可能な作業弁を取付けるとともに、作業弁にカッタと駆動部とを有する切断機を設置し、作業弁を開けた状態で駆動部によりカッタを進入させて筐体内において不断流状態で流体管の一部を切断する工法が知られている。
【0004】
また、上記のような方法で流体管が切断された箇所に制流体を設置する工法として、例えば、筐体の上部に作業弁を取付けるとともに、該作業弁の上部に挿入機を取付け、作業弁により筐体の上部開口を開放した状態で挿入機により制流体を進入させることにより、筐体内に不断流状態で制流体を設置する方法がある。このような不断流工法に用いられる作業弁として、筐体の上部に取付けられる弁箱と、弁箱から側方に突出する弁蓋と、弁箱と弁蓋との間を移動可能な弁体と、から主に構成され、弁体を弁箱から弁蓋側に移動させることにより筐体の上部開口を開放できるようになっているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-74122号(第11~14頁、第12~22図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の不断流工法において、筐体の上部に作業弁を取付けたときに、弁箱は直下の筐体に配置されるものの、弁蓋は弁箱から側方に突出するように片持ち状態で取付けられることで、これら弁蓋及び弁箱の内部を側方に往復移動する弁体に偏荷重がかかり円滑に移動できなくなるばかりか、弁箱と弁蓋を締結するボルト・ナットに負荷がかかり弁箱と弁体の間に介設されたシール材が擦れて密封性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、作業弁の弁体の円滑な移動及び密封性を維持することができる不断流工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の不断流工法は、
既設の流体管に対し密封状に取付けられた筐体の上方に、該筐体の上部開口を開閉可能な作業弁を設置し、前記筐体内への制流体の取付け、取外し及び前記既設の流体管の切断のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法であって、
前記作業弁は、前記筐体の上部に取付けられる弁箱と、該弁箱から側方に突出する弁蓋と、の間を弁体が移動することで前記筐体の上部開口を開閉するようになっており、
前記作業時において、前記弁蓋の荷重は地盤または基礎に載置された支持手段により支持されることを特徴としている。
この特徴によれば、弁箱から側方に突出する弁蓋の荷重が支持手段を介して強固な地盤または基礎で支持されることにより、弁体に偏荷重がかかることが防止されるため、作業弁の弁体の円滑な移動及び密封性を維持することができる。
【0009】
前記支持手段は、高さ調整可能なジャッキを含むことを特徴としている。
この特徴によれば、地盤または基礎から弁蓋までの高さに応じて調整して支持することができる。
【0010】
前記弁蓋の荷重は複数の前記ジャッキにより支持されることを特徴としている。
この特徴によれば、弁蓋の複数個所の高さを個別に調整することができるため、弁蓋を略水平に維持することができる。
【0011】
前記弁蓋は、前記弁箱から前記既設の流体管の管軸方向に突出し、
前記支持手段は、前記既設の流体管を挟んで両側に配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管を避けながら、弁蓋における幅方向の両側を安定して支持することができる。
【0012】
前記地盤は、前記筐体を取付けるために掘削した掘削穴の周囲の地面であることを特徴としている。
この特徴によれば、掘削穴に入り込むことなく、支持手段を容易に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は実施例における不断流工法において流体管の所定部の周囲を掘削して底盤コンクリート上に下部筐体を配置した状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図2】(a)は下部筐体に上部筐体を仮固定した状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図3】(a)は図2(b)のX部分の拡大断面図、(b)は下部筐体に上部筐体を仮固定した状態を一部破断して示す側面図である。
図4】筐体に作業弁を取付ける状態を一部破断して示す正面図である。
図5】(a)はジャッキにより弁蓋の下面を支持する前の状態、(b)は支持した状態を示す概略断面図である。
図6】(a)は筐体に作業弁を取付けた状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図7】筐体に作業弁を取付けた状態を一部破断して示す側面図である。
図8】切除装置を用いて流体管の一部を切除した状態を一部破断して示す正面図である。
図9】挿入装置を用いたバタフライ弁挿入開始時の状態を一部破断して示す側面図である。
図10】バタフライ弁設置後の状態を一部破断して示す正面図である。
図11】(a)は本発明の変形例1としての不断流工法において筐体に作業弁を取付けた状態を一部破断して示す正面図、(b)は一部破断して示す側面図である。
図12】(a)は本発明の変形例2としての不断流工法において筐体に作業弁を取付けた状態を一部破断して示す正面図、(b)は一部破断して示す側面図である。
図13】本発明の変形例3としての不断流工法において切除装置を用いて流体管の一部を切除した状態を一部破断して示す正面図である。
図14】本発明の変形例3としての不断流工法において挿入装置を用いたバタフライ弁挿入開始時の状態を一部破断して示す側面図である。
図15】本発明の変形例4としての不断流工法において切除装置を用いて流体管の一部を切除した状態を一部破断して示す正面図である。
図16】本発明の変形例4としての不断流工法において挿入装置を用いたバタフライ弁挿入開始時の状態を一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る不断流工法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例に係る不断流工法として、既設の流路に制流体としてのバタフライ弁14を設置するための不断流工法を、図1図10に基づいて説明する。
【0016】
本実施例の不断流工法として、地中に埋設された既設の流路を構成している流体管2の所定箇所を筐体10内にて切除し、その切除箇所にバタフライ弁14を設置するまでの一連の流れについて説明する。尚、流体管内の流体は、本実施例では上水であるが、これに限らず、例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0017】
また、本発明に係る流体管2は、ダクタイル鋳鉄管であって、断面視略円筒状に形成されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0018】
まず、作業現場を整備する整備工程を行う。図1(a),(b)を参照して、整備工程では、地中に埋設された流体管2の所定部分、つまり、制流体としてのバタフライ弁14を設置する部分の周囲の地盤を掘削して掘削穴16を形成する。
【0019】
次いで、掘削穴16の底部、すなわち掘削した地盤Gに底盤コンクリートFを打設して、流体管2及び筐体10からの荷重を地盤Gに伝える基礎の一部を構成する。底盤コンクリートFの上面Fa(図4参照)は露出した流体管2の管底部から上下方向に離間している。尚、底盤コンクリートFに替えて、筐体10の下部筐体30の荷重及び後述するジャッキ4を支持可能であれば基礎として敷鉄板等であってもよい。
【0020】
次に、下部筐体30を配置する下部筐体配置工程を行う。下部筐体配置工程では、まず図示しないクレーンに吊支されるフックを備えた吊り具H及びワイヤWにより吊持した下部筐体30を流体管2の下部に外嵌させ、荷重支持機能及び高さ調整機能を有する2つのジャッキ4,4(図3(b)参照)を下部筐体30と底盤コンクリートFとの間に配置する。以降、下部筐体配置工程について詳しく説明する。
【0021】
下部筐体30は、下方に向かって延び、有底円筒状に形成されている胴部31と、胴部31に略直交して側方に延び、流体管2の軸方向から見て半円弧状に湾曲形成されている曲板状の半割腕部32,33を備える正面視T字状に形成されている。また、胴部31の下部には、ドレン管(図示略)が接続される排水管35が開閉可能に設けられており、筐体10内の水を筐体10外部に排出できるようになっている。
【0022】
ジャッキ4は、台座を有する有底円筒状の基台4aに形成されている雌ネジにボルト4bが螺合されている、いわゆる機械式のジャッキである。尚、機械式のジャッキでなく、液体作動式や空気作動式のジャッキを用いてもよく、種類は上記に限定されるものではない。
【0023】
また、ボルト4bの上端には、平坦な円板状の皿4cが載置されている。ジャッキ4,4を底盤コンクリートF上に載置するにあたって、胴部31の底壁31aにおける中心を基準として外径側に離間した位置かつ管軸直交方向に離間した位置に、ジャッキ4,4を配置する(図3(b)参照)。
【0024】
下部筐体30を流体管2に外嵌させるにあたって詳しくは、クレーンにて吊持している状態の下部筐体30を流体管2の下部に外嵌させ、下部筐体30の内周面が流体管2の外周面2aに当接するように吊り上げる。この際、下部筐体30の内周面と流体管2の外周面2aの当接箇所には、傷を防止するためにゴムシート等を挟み込んでもよい。そして、下部筐体30の底壁31aと底盤コンクリートFの離間寸法に応じてジャッキ4,4の長さを調整し、底壁31aと底盤コンクリートFの間にジャッキ4,4を配置する。
【0025】
これにより、下部筐体30の内周面が流体管2の外周面2aに当接された状態が保持されるため、言い換えれば下部筐体30が、流体管2及びジャッキ4,4によって上下方向に挟持されて安定した状態となるため、吊り具H及びワイヤWを下部筐体30から取外すことができる。
【0026】
次に、下部筐体30に筐体10の上部筐体20を密封状に連結する連結工程を行う。図2(a),(b)に示されるように、連結工程では、まず吊り具H及びワイヤWを介してクレーンで上部筐体20を吊り下ろし、上部筐体20を流体管2に外嵌させつつ、下部筐体30の割面30aに上部筐体20の割面20aを当接させて載置する。
【0027】
上部筐体20は、上方に向かって延び、略円筒状に形成されている首部21と、首部21に略直交して側方に延び、流体管2の軸方向から見て半円弧状の曲板状に形成されている半割腕部22,23を備える正面視倒立T字状に形成されている。首部21の上端には上部開口10Cが形成されている。また、首部21の周面には、後述する孔部71が2箇所に形成されている。
【0028】
また、上部筐体20の半割腕部22,23の及び下部筐体30に半割腕部32,33には、それぞれの割面20a,30aと略平行かつ外側に突出する矩形板状のフランジ(図示略)が形成されており、これらフランジをボルト・ナット(図示略)にて締結することにより、上部筐体20及び下部筐体30を仮固定することができる。
【0029】
そして、上部筐体20及び下部筐体30の割面20a,30a同士を密封状に溶接することで、筐体10が構成される。これに伴い、半割腕部22,32により筐体10における円筒状の腕部10Aが構成され、半割腕部23,33により筐体10における円筒状の腕部10Bが構成される。
【0030】
尚、上部筐体20及び下部筐体30の半割腕部等の適所には、径方向に進退可能な複数の図示しない調整ボルトが設けられ、これらの調整ボルトを適宜進退させることで、上部筐体20、下部筐体30若しくはこれらを溶接した後の筐体10を、流体管2に対し径方向に位置調整することができる。
【0031】
次に、筐体10と流体管2との間を密封する密封工程を行う。図3(a)に示されるように、密封工程では、まず流体管2の外周面2aにシールリング12を周方向に亘って配置し、半割状に形成された押輪13をそれぞれ流体管2に外嵌して連結し、腕部10Bのフランジと押輪13とをT頭ボルトB2にナットN2を螺合することで締結する。
【0032】
このとき、腕部10Bの中心が流体管2の管軸と位置合わせされていることから、腕部10Bの内周面と流体管2の外周面2aの間に、周方向に亘り略一定幅の環状の隙間が形成されている。これにより、腕部10Bと流体管2の間にシールリング12を軸方向に圧入しやすいばかりか、圧入されたシールリング12を周方向に亘って均一の力で腕部10Bの内周面及び流体管2の外周面2aに圧着させて密封することができる。
【0033】
さらに、周方向に等配されているボルト13A,13A,…を用いて、押輪13の内径側に配置されている爪部材13Bを流体管2の外周面2aに押しつける。尚、腕部10A側については、腕部10B側の説明と同様であるため、その説明は省略する。
【0034】
以上のように、流体管2に筐体10を外嵌するにあたって、ジャッキ4,4により筐体10を流体管2に対する移動代を確保した状態で配置することができる。これにより、流体管2に対する筐体10の位置合わせを確実に行うことができるため、施工を簡便にすることができる。
【0035】
また、下部筐体設置工程において、下部筐体30を流体管2及びジャッキ4,4により挟持させることができるため、同じクレーンを用いて上部筐体20の運搬、筐体10の吊持を行うことができる。
【0036】
次いで、直接の図示は省略するが、筐体10のフランジ部21aに水圧テスト用のフランジ蓋を装着し、筐体10の内周面と流体管2の外周面2aとの密封した隙間に流体管2内と略同圧の水圧をかけてテストを行う。このとき、筐体10内に水が満たされ、総重量が増大するものの、筐体10はジャッキ4,4によって支持されているため、流体管2に対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0037】
また、筐体10は、流体管2が軸通されている状態にあるものの、平面視においてジャッキ4,4が流体管2の軸心から外径側に離間した位置かつ同軸心に対する直交方向に沿った位置に対向配置されているため、筐体10が流体管2を軸として管軸回りに回動する虞が防止されている。
【0038】
水圧テストの終了後、フランジ蓋を撤去し、流体管2及び筐体10と底盤コンクリートFとの間に防護コンクリートC1を打設する打設工程を行う。図4に示されるように、打設工程では、ドット柄で示す防護コンクリートC1を、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分、及び底盤コンクリートFを一体化させるように打設する。腕部10B、流体管2における腕部10B側の露出部分についても同様である。この打設工程において上記したジャッキ4,4は筐体10等の荷重を下方で支持しているため、防護コンクリートC1が固まるまでの間、筐体10の位置を保持し続けることができる。
【0039】
このように防護コンクリートC1は、下部筐体30及び流体管2の下半面を下方から覆うように底盤コンクリートFの上面Faに一体に形成され、流体管2の前後には、管軸方向に延びる略水平な上面C1b,C1bが形成される(図6(a),(b)参照)。この防護コンクリートC1は、流体管2及び筐体10からの力を地盤Gに伝える基礎の一部を構成する。
【0040】
次いで、流体管2を切除する切除工程を行う。図4に示されるように、切除工程では、まず、防護コンクリートC1の右側面C1aの近傍における流体管2の前後側に、後述する弁蓋5bの荷重を底盤コンクリートFにて支持する支持手段としてのジャッキ104,104を、流体管2及び防護コンクリートC1の右側面C1aに接触しないように、流体管2を径方向に挟むような対向位置にて、上面Faに載置する。
【0041】
図5(a),(b)に示されるように、ジャッキ104,104は、台座を有する有底円筒状の基台104aに形成されている雌ネジにボルト104bが螺合されている、いわゆる機械式のジャッキである。また、ボルト104bの上端104dには、平坦な円板状の皿104cが載置されている。尚、ジャッキ4,4は、ジャッキ104,104と高さが異なるだけで同様に構成されている。
【0042】
ボルト104bの上端104dは円錐状に形成されている。皿104cの下面の径方向中心には、断面視円錐状の凹部104eが形成されている。ボルト104bの上端104dと皿104cの凹部104eとは嵌合可能に形成されている。これにより、皿104cは、ボルト104bに対して着脱可能であるとともに、ボルト104bの回動に伴って共回りすることを規制することができる。また、皿104cをボルト104bに載置するにあたり、位置決めが容易である。尚、皿104cの凹部104eの円錐角度を、ボルト104bの上端104dの円錐角度よりも緩やかにすることが好ましく、このようにすることで、皿104cをボルト104bに対し若干傾斜させることができる。
【0043】
底盤コンクリートFの上面Faにおいて弁蓋5bの下面5iが当接しない位置にジャッキ104,104を載置しておく(図5(a)参照)。
【0044】
次いで、上部筐体20の上部に作業弁5を取付ける。詳しくは、図4に示されるように、作業弁5は、筐体10の上方に位置するとともに、上下方向に貫通する貫通路5dを有する弁箱5aと、該弁箱5aに側方に接続される弁蓋5bと、弁箱5aと弁蓋5bとの間で移動可能に設けられ、周面にシール部材(図示略)が設けられた弁体5cと、を有する。また、弁箱5aの貫通路5dの上下部には、外径方向に突出するフランジ部5e,5fが突設されている。弁蓋5bの側端には、弁蓋5b内部にて弁体5cと螺合した弁棒5gの端部が突出するとともに、この弁棒5gに回転駆動力を与える駆動部5hが設けられている。
【0045】
次いで、図6(a),(b)及び図7に示されるように、作業弁5をクレーンで吊り下ろし、弁箱5aを上部筐体20の上部開口10Cに載置した状態で、上部筐体20のフランジ部21aと弁箱5aのフランジ部5eとを図示しないボルト・ナットで締結する。尚、上部筐体20のフランジ部21aと弁箱5aのフランジ部5eとの間には図示しないガスケットが介設されることで、上部筐体20と弁箱5aとは密封状態で接続される。
【0046】
作業弁5の弁箱5aが上部筐体20に取付けられた状態において、弁蓋5bは、弁箱5aに対し側方(水平方向)に向けて突出している。詳しくは、筐体10の上部開口10Cを開閉可能とする作業弁5の弁体5cは、上部開口10Cを閉鎖可能な閉鎖位置(弁箱5aの内部)と、該閉鎖位置から側方に退避する退避位置(弁蓋5bの内部)との間で、流体管2の管軸方向に向けて水平移動可能に設けられることで、弁箱5aに対し弁蓋5bが側方に突出する。
【0047】
また、弁箱5aと上部筐体20とを図示しないボルト・ナットで締結した後、図5(b)に示されるように、前後のジャッキ104,104各々のボルト104bを回動し、皿104cが弁蓋5bの下面5iに当接するまで上昇させて高さを調整する。そして、クレーンによる吊り下げを解除し、これにより弁蓋5bの下面5iが皿104cに当接することで、弁蓋5bの荷重が前後のジャッキ104,104を介して底盤コンクリートFの上面Faで支持される。
【0048】
詳しくは、図6(a),(b)及び図7に示されるように、ジャッキ104,104は、弁蓋5bの下面5iにおける先端側で、かつ、流体管2の前後側に配置され、弁蓋5bの先端側の前後2箇所が下方から受支されることで、弁体5cの移動方向である左右方向の傾きだけでなく、弁体5cの移動方向に対し直交する前後方向の傾きが防止される。より詳しくは、弁蓋5bは、左側が弁箱5aに支持されるとともに、右側の前後位置がジャッキ104,104により支持されることで、略水平に維持される。
【0049】
これにより、荷重による弁蓋5bの撓みが防止されるため、弁蓋5b内にて弁体5cに偏荷重がかかりにくくなる。また、上面Faが不陸な場合でも、前後のジャッキ104,104各々で高さを調整できるため、例えば前側のジャッキ104を後側のジャッキ104に対し高さを僅かに変えることで、弁蓋5bに捻じれ方向の偏荷重をかけることなく、容易に略水平に支持することができる。尚、前後のジャッキ104,104の高さ調整の際には、弁蓋5bの先端側の上面に水平器を載置して水平状態を確認しながら行うと好ましい。
【0050】
尚、本実施例では、作業弁5は、弁箱5aと弁蓋5bと弁体5cとが一体化された状態で吊り下ろされて上部筐体20に取付けられる形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上部筐体20の上部開口10Cに弁箱5aのみを取付けた後、該弁箱5aに弁蓋5bと弁体5cとを一体に吊る、または弁体5c、弁蓋5bの順に取付けることで作業弁5を上部筐体20の上方で組立てる分割構造でもよい。
【0051】
また、本実施例では、弁箱5aと上部筐体20とを図示しないボルト・ナットで締結した後、前後のジャッキ104,104各々の高さを調整する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上部筐体20の上方に弁箱5aを載置するとともに、ジャッキ104,104の皿104cに弁蓋5bを載置してから、弁箱5aと上部筐体20とを図示しないボルト・ナットで締結するようにしてもよい。
【0052】
次に、図8に示されるように、弁箱5aのフランジ部5fと取付フランジ筒6の下方のフランジ部6aを図示しないボルト・ナットで連結し、取付フランジ筒6の上方のフランジ部6bと駆動機構7とを図示しないボルト・ナットで連結する。尚、弁箱5aのフランジ部5fと取付フランジ筒6の下方のフランジ部6aとの間、取付フランジ筒6の上方のフランジ部6bと駆動機構7との間にそれぞれガスケットが介設されることで、弁箱5aと取付フランジ筒6と駆動機構7とは密封状態で接続される。
【0053】
取付フランジ筒6の内部には、ホールソー8a及びセンタドリル8bからなるカッタが配置されており、ホールソー8a及びセンタドリル8bは、駆動機構7により回転及び筐体10内に進退可能に昇降されるようになっている。このように、取付フランジ筒6と、ホールソー8a及びセンタドリル8bと、これらを昇降駆動させる駆動機構7と、により切除装置8が構成される。
【0054】
このように、作業弁5、取付フランジ筒6、及び駆動機構7の重量が加わって、筐体10の総重量が増大しても、筐体10はジャッキ4,4及び防護コンクリートC1によって支持されているため、流体管2に対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0055】
また、筐体10は、ジャッキ4,4及び防護コンクリートC1により、流体管2の管軸回りに回動する虞が防止されているため、筐体10の上方に一体に立設され重心位置の高い作業弁5、取付フランジ筒6、及び駆動機構7が転倒する虞がない。
【0056】
また、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分は、防護コンクリートC1によって底盤コンクリートFと一体化されて支持されており、腕部10B、流体管2における腕部10B側の露出部分は、防護コンクリートC1によって底盤コンクリートFと一体化されて支持されていることから、流体管2に筐体10の総重量の大半が作用することが防止されている。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0057】
そして、作業弁5の弁箱5a内から弁蓋5bまで弁体5cを後退させて開放状態とし、切除装置8により流体管2の一部を不断流状態で切断する。これにより、筐体10の内部に管内流体が流入する。
【0058】
このとき、弁蓋5bまで弁体5cが後退することにより弁蓋5bの荷重が増大するため、弁蓋5bが下方に撓みやすくなるが、ジャッキ104,104により底盤コンクリートFにて支持されことで撓みが防止されるため、弁体5cを円滑に移動させることができる。
【0059】
また、筐体10は調整ボルト(図示略)によって流体管2に連結され、押輪13,13はボルト(図示略)によって流体管2の端部2H,2Tに連結されているため、流体管2を切断するにあたって生じる急激な流れの変化等が生じて流体管2が跳ね上がるような挙動が生じたとしても、筐体10及び押輪13,13から流体管2が抜け出すことを防止することができる。
【0060】
また、筐体10内に上水が満たされ、筐体10の総重量がさらに増大しても、筐体10はジャッキ4,4及び防護コンクリートC1によって支持されているため、切断された流体管2の端部2H,2Tに対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。
【0061】
これにより、端部2H,2Tが傾動することを防止できるため、端部2H,2Tに繋がる流路に意図しない負荷が及ぶことを防止できるばかりでなく、流体管2を切断後のホールソー8a及びセンタドリル8bからなるカッタの抜出しに必要な開口面積を確保することができる。そのため、ホールソー8a及びセンタドリル8bを容易に抜出すことができる。
【0062】
また、筐体10は、ジャッキ4,4及び防護コンクリートC1により、流体管2の管軸回りに回動する虞が防止されているため、筐体10の総重量がさらに増大しても安定して支持されている。
【0063】
また、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分を含む端部2Hは、防護コンクリートC1によって底盤コンクリートFと一体化されて支持されていることから、腕部10Aと位置合わせされた状態が保持される。これは、腕部10B及び腕部10B側の露出部分を含む端部2Tについても同様である。
【0064】
尚、筐体10の底壁31aは、流体管2よりも十分に離間した位置に設けられているため、流体管2を切断するにあたってホールソー8a及びセンタドリル8bが接触しにくくなっている。
【0065】
また、流体管2を接続するにあたって、胴部31の下部に設けられている排水管35にドレン管(図示略)を接続しておくことにより、ホールソー8aにより流体管2を切断する際に発生する切り粉を流体とともに外部へ排出することができる。
【0066】
その後、直接の図示は省略するが、ホールソー8a及びセンタドリル8bを流体管2の切片とともに引き上げ、作業弁5の弁体5cを弁蓋5bから弁箱5a内に進出させて閉塞状態とする。これにより、上水の漏水を防止して不断流状態を保ったまま切除装置8を作業弁5より取外すことができる。
【0067】
次に、筐体10内に制流体としてのバタフライ弁14を設置する制流体設置工程を行う。図9に示されるように、制流体設置工程では、まず、弁箱5aの上方のフランジ部5fと挿入装置9の円筒部材9aの下方のフランジ部9cとを図示しないボルト・ナットで連結する。続けて、作業弁5を開放状態とし、挿入装置9の駆動機構7を操作して、開放状態にあるバタフライ弁14を下降させて筐体10内に配置する。尚、弁箱5aのフランジ部5fと円筒部材9aのフランジ部9cとの間に図示しないガスケットが介設されることで、弁箱5aと円筒部材9aとは密封状態で接続される。
【0068】
このように、作業弁5、挿入装置9、及びバタフライ弁14の重量が加わって、筐体10の総重量が増大しても、筐体10はジャッキ4,4及び防護コンクリートC1によって支持されているため、流体管2の端部2H、2Tに対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。これにより、流体管2の端部2H,2Tが傾動することを防止できるため、バタフライ弁14を安定して挿入することができる。
【0069】
特に、バタフライ弁14の設置時には、挿入装置9によってバタフライ弁14を筐体10の内底面に向けて一時的に下方に押圧して荷重をかけるが、ジャッキ4,4及び防護コンクリートC1により、作業弁5、挿入装置9等の重量及び下方の荷重に抗して支持できる。
【0070】
また、腕部10A、流体管2における端部2Hは、腕部10Aとともに防護コンクリートC1によって底盤コンクリートFと一体化されて支持されていることから、筐体10の重量が変化しても、腕部10Aと位置合わせされた状態が保持される。これは、腕部10B及び端部2Tについても同様である。
【0071】
また、バタフライ弁14を筐体10内に挿入する前に、上部筐体20の上部に形成された孔部71と、円筒部材9aの下部に形成された孔部72とを接続管73にて接続して筐体10の内部と円筒部材9aの内部とを連通させ、円筒部材9aの上部に設けたエア抜き用バルブ(図示略)からエアを抜きながら円筒部材9a内に流体管2内と略同圧の水圧をかけ、円筒部材9a内のエアが抜けたことを確認し、エア抜き用バルブ(図示略)を閉鎖し、筐体10の内部と円筒部材9aの内部を略同圧にした状態で作業弁5を開放状態とし、挿入装置9の駆動機構7を操作してバタフライ弁14を下降させる。
【0072】
尚、筐体10の内部と円筒部材9aの内部を略同圧にする際は、排水管35と孔部72とを連通してもよい。尚、孔部71,72には図示しない開閉弁が設けられている。
【0073】
そして、バタフライ弁14を筐体10内に挿入し、筐体10内に形成されている座面にパッキン40,41が圧着された状態で配置される。ここで、パッキン40は、弁体42とともに流体管2の端部2H,2T間を仕切るための仕切壁43の両側面及び底面に亘って固着されている。パッキン41は、筐体10の首部21を閉塞するための円板状の蓋部44の外周に亘って固着されている。これらパッキン40,41は連続するように接続されている。
【0074】
さらに、図10を参照して、首部21の周方向に配置されている複数の押さえボルト25を首部21の内径側に進出させる。押さえボルト25について詳しくは、首部21の周壁を貫通し、この周壁に形成された貫通部の雌ネジに螺合されている。押さえボルト25は所定方向に回動させることで首部21の内径側に進出するため、バタフライ弁14の蓋部44に当接させることで、蓋部44の抜け止めをなすことができる。尚、押さえボルト25のような押さえ手段は、貫通部の雌ネジに螺合される進出部材と、進出部材に従動して制流体に当接する当接部材が別体であってもよく、その数や配置を含め、適宜変更されてもよい。また、周壁内面に凹部が設けられ、プレート等を嵌め込んで固定する態様であってもよい。
【0075】
その後、孔部71,72(または排水管35と孔部72)の開閉弁(図示略)を閉鎖し、円筒部材9aの上部に設けたエア抜き用バルブ(図示略)を開放して、バタフライ弁14のパッキン41が止水できているかを確認して、接続管73、挿入装置9及び作業弁5を筐体10から取外す。尚、作業弁5とともにジャッキ104,104を除去する。
【0076】
次いで、首部21の内周面と蓋部44に外嵌されたリング45との間にパッキン46を配置した後、首部21のフランジ部21aと本体蓋11を図示しないボルト・ナットにて締結する。これにより、首部21の内周面と蓋部44の間は密封される。尚、首部21のフランジ部21aと本体蓋11との間にガスケットを介設して密封することは言うまでもない。
【0077】
そして、掘削穴16を埋め戻すことで(図示略)、制流体設置工程の作業が完了する。尚、弁操作部47の周辺領域は埋め戻さずに、図示しない弁筐を設置し、該弁筐の上面開口を閉塞する弁室用蓋(図示略)を取外すことで、弁室にて弁操作部47を操作できるようにすることが好ましい。また、図10に示される状態から掘削穴16を埋め戻すことはせず、掘削穴16の全域を弁室とするように広く設けてもよい。
【0078】
このように、流体管2の所定箇所に不断流状態を保ちながらバタフライ弁14を設置する本実施例の不断流工法を行うことができる。
【0079】
尚、割面20a,30a同士を密封状にするには、溶接のみに限られず、シール部材を介在させた状態で、上部筐体20及び下部筐体30をボルト・ナットを用いて締結して密封状にしてもよい。また、上述したように本体蓋11を筐体10に取付けた後、ジャッキ4,4を取外してもよく、ジャッキ4,4を回収することで、他の施工において再度使用することができる。
【0080】
また、筐体10の保持手段としてクレーンを例に説明したが、これに限られず、ジャッキ4,4を保持手段として使用してもよい。すなわち、筐体10をジャッキ4,4に載置した状態のまま、ジャッキ4,4を伸縮させることにより、おおよその位置合わせを行ってもよい。
【0081】
また、制流体はバタフライ弁14であるとして説明したが、これに限られず、切換弁、ゲート弁、ボール弁等他の種類の弁でもよいし、これらの弁に限らず仕切板やプラグ等であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0082】
また、筐体10内に設置されたバタフライ弁14を除去する制流体除去工程は、特に詳細な説明はしないが、上記した制流体設置工程と同じように、上部筐体20の上方に作業弁5を取付けるとともに、作業弁5の弁蓋5bの荷重をジャッキ104,104により上面Faで支持する(図6参照)。次いで、作業弁5の上方に挿入装置9の円筒部材9aを取付け、さらにその上方に駆動機構7を取付けた後(図9参照)、作業弁5を開放状態として駆動機構7を操作し、バタフライ弁14を筐体10内から引き抜いて上昇させ、作業弁5を閉鎖状態とする。
【0083】
以上説明したように、本発明の実施例としての不断流工法は、地中に埋設された既設の流体管2に対し密封状に取付けられた筐体10の上方に、該筐体10の上部開口10Cを開閉可能な作業弁5を設置し、筐体10内へのバタフライ弁14の取付け(制流体設置工程)、取外し(制流体除去工程)及び前記既設の流体管2の切断(切除工程)のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法であって、各作業工程において、弁蓋5bの荷重は基礎である底盤コンクリートFの上面Faに載置されたジャッキ104,104により支持される。
【0084】
これによれば、弁箱5aから側方に突出する弁蓋5bの荷重がジャッキ104,104を介して強固な底盤コンクリートFで支持されることにより、弁蓋5bの先端側が荷重により下方に撓んでしまい、弁体5cに偏荷重がかかることが防止される。よって、弁体5cを弁箱5aの閉鎖位置と弁蓋5bの退避位置との間で円滑に移動させることができるとともに、偏荷重により弁体5cのシール部材が弁蓋5bの内面に強く接触して擦れてしまうことで密封性が低下することを防止することができる。
【0085】
また、弁蓋5bの荷重がジャッキ104,104を介して強固な底盤コンクリートFで支持され、既設の流体管2に弁蓋5bの荷重がかかることがないので、流体管2の破損が防止される。
【0086】
また、支持手段として高さ調整可能なジャッキ104,104が適用されていることで、底盤コンクリートFの上面Faから弁蓋5bまでの高さに応じて調整することができるため、上面Faの不陸に対応して支持することができる。
【0087】
また、弁蓋5bの荷重は複数のジャッキ104,104により支持されることで、弁蓋5bの複数個所の高さを個別に調整できることができるため、弁蓋5bを略水平に維持することができる。
【0088】
また、弁蓋5bは、弁箱5aから流体管2の管軸方向に突出しており、該流体管2を挟んで前後両側にジャッキ104,104が配設されることで、弁蓋5bの荷重が流体管2にかからないように避けながら、弁蓋5bにおける前後幅方向の両側を安定して支持することができる。
【0089】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0090】
例えば、前記実施例では、支持手段としてのジャッキ104,104は、基礎の一部を構成する底盤コンクリートFの上面Faに載置される形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図11に示される本発明の変形例1の支持手段としてのジャッキ114,114のように、基礎の一部である防護コンクリートC1の前後の上面C1b,C1bに載置するようにしてもよい。このようにすることで、底盤コンクリートFの上面Faよりも弁蓋5bの下面5iに近い防護コンクリートC1の上面C1b,C1bにジャッキ114,114を載置できることで、ジャッキ114,114を短寸化できるため、ジャッキ114,114の設置作業が容易になるだけでなく、安定性が向上する。尚、特に図示しないが、底盤コンクリートFの上面Faに載置するジャッキ104,104と、防護コンクリートC1の上面C1b,C1bに載置するジャッキ114,114とを併用しても良い。
【0091】
また、前記実施例では、弁蓋5bは、弁箱5aに対し流体管2の管軸方向に向けて突出する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、弁箱5aに対し側方(水平方向)に突出していれば、図12(a),(b)に示される本発明の変形例2のように、流体管2の管軸方向とは異なる方向(例えば、流体管2の管軸に対し直交する前後方向など)に向けて水平に突出されてもよい。このような場合においても、弁蓋5bの荷重が、基礎である底盤コンクリートFの上面Faに載置された左右のジャッキ124,124により支持されるようにすればよい。
【0092】
また、この場合、弁蓋5bの下方に流体管2が存在しないことで、ジャッキ124,124の配置位置が制限されないので、弁蓋5bの下面5iにおいて最も安定する先端側の複数個所をジャッキ124,124にて支持することができる。さらに、左右のジャッキ124,124の間であってより先端側に3個目のジャッキを配置し、下面5iの3箇所を支持するようにしてもよい。
【0093】
また、前記実施例及び変形例では、弁蓋5bの荷重が、掘削穴16の内部に設けられた底盤コンクリートFや防護コンクリートC1といった基礎に載置された支持手段としてのジャッキ104,104、ジャッキ114,114、ジャッキ124,124により支持される形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図13及び図14に示される本発明の変形例3のように、弁蓋5bの荷重が、掘削穴16の周囲に拡がる地盤の地面GLに載置された支持手段としてのジャッキ134,134により支持されるようにしてもよい。
【0094】
このようにする場合、作業弁5を地面GLよりも上方に配置する必要があるため、まず、上部筐体20の上部に延設部としてのスペーサ50を取付ける。スペーサ50は、内径が上部筐体20の胴部31と同径をなす筒状管51からなり、筒状管51の管軸方向の両端側には、外径方向に向けてフランジ部52a、52bが突設されている。
【0095】
このように構成されたスペーサ50をクレーンで上部筐体20の上部開口10Cに吊り下ろし、上部筐体20のフランジ部21aとスペーサ50のフランジ部52aとを図示しないボルト・ナットで締結する。尚、首部21のフランジ部21aとスペーサ50のフランジ部52aとの間には図示しないガスケットが介設されることで、上部筐体20とスペーサ50とは密封状態で接続される。次いで、作業弁5をクレーンでスペーサ50の上部開口に吊り下ろし、スペーサ50のフランジ部52bと弁箱5aのフランジ部5eとを図示しないボルト・ナットで締結する。尚、スペーサ50のフランジ部52bと弁箱5aのフランジ部5eとの間には図示しないガスケットが介設されることで、スペーサ50と弁箱5aとは密封状態で接続される。
【0096】
このように、筐体10と作業弁5との間に延設部としてのスペーサ50を配設することで、該作業弁5を地面GLより上方に配置させる。これによれば、作業弁5の設置スペースを掘削により確保せずに済むため、掘削範囲を小さくして作業を簡素化することができる。
【0097】
そして、地面GLにおける弁蓋5bの下面側にジャッキ134,134を配置し、弁蓋5bの荷重は地盤Gの地面GLに載置されたジャッキ134,134により支持されるようにしてもよく、このようにすることで、弁体5cに偏荷重がかかることが防止されるため、作業弁5の弁体5cの円滑な移動及び密封性を維持することができる。また、作業者が掘削穴16内に入り込んでジャッキ134,134を設置する必要がないので、作業性が好適に向上する。尚、本実施例の地面GLは、地盤Gを掘削せずに自然状態の地面であるが、整地作業を行って水平面に形成すると好ましい。また地盤Gを僅かに掘削して良質な地面を露出させてもよい。また、ジャッキ134,134の配置位置の近傍では、掘削穴16の内壁の土留めを強化すると好ましく、このようにすることで、地盤Gによる支持力を確保することができる。
【0098】
また、ここでは延設部として両端にフランジ部52a、52bが形成された筒状管51からなるスペーサ50が適用された形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、延設部は、弁箱5aの下面から下方に延設される筒状部にて構成されていてもよいし、筐体10の上部開口10Cから上方に延設される筒状部にて構成されていてもよい。つまり、延設部は、弁箱5aまたは筐体10のいずれかに一体に設けられていてもよい。
【0099】
また、上記変形例3では、弁蓋5bは、弁箱5aに対し流体管2の管軸方向に向けて突出する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、弁箱5aに対し側方(水平方向)に突出していれば、図15及び図16に示される本発明の変形例4のように、流体管2の管軸方向とは異なる方向(例えば、流体管2の管軸に対し直交する前後方向など)に向けて水平に突出されてもよい。このような場合においても、弁蓋5bの荷重が、地盤である地面GLに載置されたジャッキ144,144により支持されるようにすればよい。
【0100】
また、この場合、弁蓋5bの下方に流体管2が存在しないことで、ジャッキ144,144の配置位置が制限されないので、弁蓋5bの下面5iにおいて最も安定する位置をジャッキ144,144にて支持することができる。
【0101】
また、前記実施例では、弁蓋5bの荷重を支持する支持手段として、高さ調整機能を有するジャッキ104,104、ジャッキ114,114、ジャッキ124,124、ジャッキ134,134、またはジャッキ144,144を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、必ずしも高さ調整機能を有するものでなくてもよく、高さ調整不能な角材やH鋼材などであってもよい。
【0102】
また前記実施例では、ジャッキ104,104、ジャッキ114,114、ジャッキ124,124、ジャッキ134,134、またはジャッキ144,144は、流体管2を径方向に挟む対向位置に配置されていたが、これに限らず、弁蓋5bの側方の延設方向に離間して複数配置してもよく、このようにすることで、弁蓋5bにおける比較的撓み量の大きい先端側と、撓み量の小さい基端側とで、ジャッキの高さ位置を変化させることができ、より高精度に水平調整を行うことができる。
【0103】
また、前記実施例では、支持手段としてのジャッキ104,104、ジャッキ114,114、ジャッキ124,124、ジャッキ134,134、またはジャッキ144,144を基礎または地盤に直接載置する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基礎または地盤との間に、H鋼や角材などの他の支持手段を設けて高さを調整してから、ジャッキのボルトを用いて高さの微調整を行うようにしてもよい。
【0104】
また、前記実施例では、不断流工法として、既設の流体管2の切断作業を不断流状態で行う切除工程(図8)と、既設の流体管2内への制流体としてのバタフライ弁14の取付け作業を不断流状態で行う制流体設置工程(図9)と、既設の流体管2内からの制流体としてのバタフライ弁14の取外し作業を不断流状態で行う制流体除去工程(図示略)と、が例示されていたが、本発明の不断流工法は、これら切除工程(図8)、制流体設置工程(図9)、制流体除去工程(図示略)といった複数の作業のうち少なくともいずれか1つの作業を行う場合に適用可能である。
【0105】
例えば、上記切除工程(図8)の作業のみを行う場合に、既設の流体管2に対し密封状に取付けられた筐体10の上方に作業弁5を設置した後、弁蓋5bの荷重が基礎または地盤に載置された支持手段により支持されるものでもよい。
【0106】
また、制流体は、上記バタフライ弁14や中蓋(図示略)などに限らず、流体を制御可能なものであれば、切換弁、ゲート弁やボール弁、あるいは仕切板やプラグ等であってもよい。
【0107】
また、前記実施例では、流体管と筐体との間はシール部材により密封される構成として説明したが、これに限られず、溶接により密封されてもよく、いわゆるサイドリングが流体管及び筐体にそれぞれ溶接されて密封されてもよく、適宜変更されてもよい。
【0108】
また、前記実施例では、切除装置は、カッタを有するホールソーであるとして説明したが、これに限られず、穿孔機であってもよく、ワイヤーソー、バイト、エンドミルであってもよく、適宜変更されてもよい。すなわち、流路を構成する流体管は、切断されることに限定されるものではなく、少なくとも一部が切除された箇所を通じて流体が流通可能となればよい。
【0109】
また、前記実施例では、既設の流体管としての流体管2は地中に埋設されていた形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、流体管は、プラント配管などのような地上に露出した状態、すなわち地表面よりも上方位置にて延設された状態の流体管でもよい。この場合、特に図示しないが、流体管周辺の地盤または基礎にH鋼などを配置して施工用仮設架台(支持手段)を組立てるとともに、その施工用仮設架台と作業弁との間にジャッキ(支持手段)等を設置して支持するようにすればよい。尚、プラント配管は、地面から数メートル以上の高さ位置に設置されることもあるので、その配管の高さに合わせて施工用仮設架台を組立てて設置することが好ましい。
【0110】
また、前記実施例では、既設の流体管2の切断作業を不断流状態で行う切除工程において、既設の流体管2を切断して管軸方向に分断した後、流体管2の切片を除去する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、弁蓋の荷重が地盤または基礎に載置された支持手段により支持される切断作業は、不断流状態において既設の流体管の少なくとも一部を切断する作業であればよく、例えば、既設の流体管を分断することなく管壁の一部を穿孔する作業でもよいし、また例えば、エンドミル等で管壁の一部を穿孔することで切片除去を含まない作業でもよい。
【符号の説明】
【0111】
2 流体管
5 作業弁
5a 弁箱
5b 弁蓋
5c 弁体
5d 貫通路
5e、5f フランジ部
5g 弁棒
5h 駆動部
5i 下面
7 駆動機構
8 切除装置
9 挿入装置
9a 円筒部材
9c フランジ部
10 筐体
10C 上部開口
13 押輪
14 バタフライ弁(制流体)
16 掘削穴
20 上部筐体
30 下部筐体
50 スペーサ
104 ジャッキ(支持手段)
104a 基台
104b ボルト
104c 皿
104d 上端
104e 凹部
114 ジャッキ(支持手段)
124 ジャッキ(支持手段)
134 ジャッキ(支持手段)
144 ジャッキ(支持手段)
148 弁筐
C1 防護コンクリート(基礎)
C1a 右側面
C1b 上面
F 底盤コンクリート(基礎)
Fa 上面
G 地盤
GL 地面(地盤)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16