IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コイル装置 図1
  • 特開-コイル装置 図2
  • 特開-コイル装置 図3
  • 特開-コイル装置 図4
  • 特開-コイル装置 図5
  • 特開-コイル装置 図6
  • 特開-コイル装置 図7
  • 特開-コイル装置 図8
  • 特開-コイル装置 図9
  • 特開-コイル装置 図10
  • 特開-コイル装置 図11
  • 特開-コイル装置 図12
  • 特開-コイル装置 図13
  • 特開-コイル装置 図14
  • 特開-コイル装置 図15
  • 特開-コイル装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048976
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/30 20060101AFI20240402BHJP
   H01F 3/14 20060101ALI20240402BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240402BHJP
   H01F 27/42 20060101ALI20240402BHJP
   G01R 15/18 20060101ALI20240402BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01F38/30
H01F3/14
H01F27/28 195
H01F27/42 170
G01R15/18 D
H01F27/26 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155182
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】原田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勝
(72)【発明者】
【氏名】海野 晶裕
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 三紀夫
【テーマコード(参考)】
2G025
5E043
5E081
【Fターム(参考)】
2G025AA03
2G025AB14
2G025AC01
5E043AA01
5E043AB01
5E081AA05
5E081BB07
5E081CC14
5E081CC15
5E081DD03
5E081EE14
(57)【要約】
【課題】組み立て作業が容易なコイル装置を提供すること。
【解決手段】コイル装置100は、向かい合うように配置され、開閉可能な分割面11a,31aを有する2つの以上の磁性体片10a,30aで構成され、貫通孔を有する環状磁性体1aと、向かい合う分割面11a,31aが相互に近接する方向の力に抗する抵抗力を生じさせる緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2と、有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
向かい合うように配置され、開閉可能な分割面を有する2つの以上の磁性体片で構成され、貫通孔を有する環状磁性体と、
向かい合う前記分割面が相互に近接する方向の力に抗する抵抗力を生じさせる緩衝機構と、有するコイル装置。
【請求項2】
前記緩衝機構は、向かい合う前記分割面の間の距離を制御するように配置される対向部を有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
一方の前記対向部は、突出部を有し、
他方の対向部は、前記突出部に接触する受け部を有する請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記受け部は、前記受け部に働く力に応じて弾性的に幅を変化可能なスリットを有し、
前記スリットは、前記分割面が向かい合う方向に沿って延びるように配置してある請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記環状磁性体は、前記環状磁性体の周方向の一部が巻線部の巻き軸空間を通過するように配置してある請求項1に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記緩衝機構に生じる前記抵抗力より強い力で、相互に向かい合う前記分割面を接近させることが可能な固定具をさらに有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記磁性体片を固定するベース部品をさらに有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記磁性体片は、前記ベース部品の設置面に対して前記分割面の角度を変更可能に前記ベース部品に取り付けてある請求項7に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記磁性体片の外周面の少なくとも一部を覆うケースをさらに有する請求項1~8のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項10】
前記緩衝機構は、前記ケースの周方向の端部に具備してある請求項9に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記緩衝機構は、前記環状磁性体の貫通方向の端にあたる前記ケースの端壁に配置してある請求項10に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばカレントセンサなどに使用可能なコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カレントセンサとして用いられるコイル装置として、特許文献1には、2つの分割コアが突き合わされた環状コアを有するクランプ式のカレントセンサが開示されている。特許文献1に示すようなコイル装置では、環状コアの貫通孔に電線が通されるように分割コアを組み立てて、カレントセンサとして使用される。
【0003】
特許文献1に示すようなコイル装置では、比較的に小電流を検出するカレントセンサとしては問題がないが、大電流を検知するためのカレントセンサとして用いる場合や、分割コアの重量が大きい場合には、取付作業に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-297921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、組み立て作業が容易なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
向かい合うように配置され、開閉可能な分割面を有する2つの以上の磁性体片で構成され、貫通孔を有する環状磁性体と、
向かい合う前記分割面が相互に近接する方向の力に抗する抵抗力を生じさせる緩衝機構と、有する。
【0007】
このように構成することで、たとえば計測対象となるケーブルに大電流が流れている状態で、コイル装置の組み立て作業を行っても、向かい合う分割面に生じる磁力による磁性体片同士が接近する方向の力(重力も含めて)を、緩衝機構で緩和することができる。そのため、磁性体片同士の衝突が有効に回避できる。磁性体片の分割面をさらに接近させる場合には、個別に調節すればよく、組み立て作業により磁性体片同士の急な接触などでの損傷を有効に防止することができる。そのため、磁性体片の損傷を防止しつつ、容易に組み立て作業を行うことができる。
【0008】
前記緩衝機構は、向かい合う前記分割面の間の距離を制御するように配置される対向部を有するように構成してもよい。
【0009】
向かい合う分割面の間の距離を制御することで、磁性体片同士の衝突を有効に防止し、組み立て作業をより安全に行うことができる。
【0010】
一方の前記対向部は、突出部を有し、他方の対向部は、前記突出部に接触する受け部を有するように構成してもよい。
【0011】
このように構成することで、一方の対向部を他方の対向部に挿入でき、磁性体片同士の位置決めを行いながら、磁性体片同士の衝突を有効に防止し、組み立て作業をより安全に行うことができる。
【0012】
前記受け部は、前記受け部に働く力に応じて弾性的に幅を変化可能なスリットを有し、前記スリットは、前記分割面が向かい合う方向に沿って延びるように配置してあってもよい。
【0013】
このように構成することで、一方の対向部を他方の対向部に深く挿入するにつれて緩衝機構での抵抗力を高められ、磁性体片同士の予期せぬ衝突を防止することがさらに容易になる。また、一方の対向部を他方の対向部から抜くことで、容易に環状磁性体を分解することできる。
【0014】
好ましくは、前記環状磁性体は、前記環状磁性体の周方向の一部が巻線部の巻き軸空間を通過するように配置してある。
【0015】
このように構成することで、コイル装置を、カレントセンサとして好適に使用できる。
【0016】
前記緩衝機構に生じる前記抵抗力より強い力で、相互に向かい合う前記分割面を接近させることが可能な固定具を、コイル装置がさらに有していてもよい。
【0017】
このように構成することで、磁性体片を任意の位置までゆっくりと近づけることが可能になる。また、固定具が取り付けられることで、磁性体片同士が固定され、磁性体片同士が予期せず分解されるなどの恐れがなくなり、コイル装置を安全に使用することができる。
【0018】
少なくとも1つの前記磁性体片を固定するベース部品を、コイル装置がさらに有していてもよい。
【0019】
磁性体片がベース部品に固定されることで、コイル装置の組み立て作業を安全かつ容易に行うことが可能になる。また、コイル装置は、ベース部品の設置面で外部に設置させて配置でき、コイル装置を安全に使用することができる。さらに、ベース部品の設置面は、水平面のみではなく、傾斜面に取り付けられていてもよい。
【0020】
前記磁性体片は、前記ベース部品の設置面に対して前記分割面の角度を変更可能に前記ベース部品に取り付けてあってもよい。
【0021】
コイル装置の使用環境や、組み立て作業を行う環境に合わせて分割面の角度変えることで、コイル装置の組み立て作業を容易かつ安全にすることができる。
【0022】
好ましくは、前記磁性体片の外周面の少なくとも一部を覆うケースを、コイル装置がさらに有する。
【0023】
磁性体片をケースで覆うことで、磁性体片の保護と絶縁を図ることができる。
【0024】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記ケースの周方向の端部に具備してあってもよい。
【0025】
このように構成することで、緩衝機構を、分割面の近くに配置することが可能になり、組み立て作業時に、磁性体片同士が急激に接触することを有効に防止し、磁性体の損傷をより効果的に防止することができる。
【0026】
前記緩衝機構は、前記環状磁性体の貫通方向の端にあたる前記ケースの端壁に配置してあってもよい。
【0027】
このように構成することで、ケースの外径を多くすることなく、また他の部品と干渉することなく、緩衝機構をケースに具備させることができる。また、ケースの機械強度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は一実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
図2図2図1に示すコイル装置の分解斜視図である。
図3図3図1に示すコイル装置の磁性体片の構成を示す斜視図である。
図4図4図1に示すコイル装置のケースの構成を示す平面図である。
図5図5図1に示すコイル装置のケースのインナーカバーの構成を示す斜視図である。
図6図6図1に示すコイル装置の磁性体ユニットの構成を示す斜視図である。
図7図7図1に示す巻線ユニットの周辺を示す斜視図である。
図8図8図1に示すコイル装置の組み立て途中の状態を示す斜視図である。
図9図9図1に示すコイル装置の組み立て途中の状態を示す側面図である。
図10図10図1に示すコイル装置の組み立てた状態を示す側面図である。
図11図11図1に示すコイル装置の組み立て途中の状態の緩衝機構の拡大斜視図である。
図12図12図1に示すコイル装置の組み立て途中の状態の緩衝機構の拡大側面図である。
図13図13図1に示すコイル装置の組み立てた状態の緩衝機構の拡大側面図である。
図14図14は環状磁性体の構成を示す側面図である。
図15図15は他の実施形態に係るコイル装置のケースの構成を示す斜視図である。
図16図16図15に示すケースの組み立て途中の状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に示す実施形態に基づき説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本願の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、以下、実施形態により具体的に説明するがこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0030】
第1実施形態
(コイル装置の全体構成)
一実施形態として、コイル装置100の全体構成について説明する。図1に示すように、コイル装置100は、環状磁性体ユニット1と、巻線ユニット80と、ベース部品90と、を有する。コイル装置100は、環状磁性体ユニット1の貫通孔2に、計測対象となるケーブル110を通してケーブル110に流れる電流を計測するカレントセンサとして好適に使用される。なお、計測対象となるケーブルは、複数本まとめて貫通孔2に通して使用してもよい。
【0031】
本実施形態では、コイル装置100の重量は特に限定されないが、5kg以上であってもよい。また、コイル装置100の大きさは特に限定されないが、たとえばX軸方向の幅は200mm以上、Y軸方向の幅は200mm以上、Z軸方向の高さは200mm以上に設計してもよい。
【0032】
図面において、Z軸は、ベース部品90の設置面91からのコイル装置100の高さ方向に対応しており、Y軸は、環状磁性体ユニット1の貫通孔2の延在する方向に対応している。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直である。明細書において、環状磁性体ユニット1に関して、貫通孔2の中心に近接する方向を「内」と称し、貫通孔2の中心から遠い方向を「外」と称することがある。
【0033】
図2に示すように、巻線ユニット80は、中空のボビン81と、ボビンカバー82を有する。ボビン81には、巻線部84が巻回されている。巻線部84は、X軸に垂直な断面が略長方形(円形などのその他の形状でもよい)である巻き軸空間85を有している。巻線ユニット80の巻き軸空間85には、図1に示す環状磁性体ユニット1の周方向の一部が通過するようになっている。ボビンカバー82は、巻線部84のZ軸に沿って上側に取り付けられる。
【0034】
図7に示すように、巻線ユニット80は、巻線部84の巻き軸がX軸に略平行にベース部品90に取り付けられている。ベース部品90の保持部92が、巻線ユニット80のY軸方向の両側と、Z軸方向下方を保持している。巻線部84の周囲は、防水性や絶縁性を有する防水性部材によって封止されている。本実施形態では、ボビン81とボビンカバー82の間に防水性部材が満たされている。また、保持部92の窪みにも、防水性部材が満たされることで、巻線部84の周囲が防水性部材によって封止される。また、防水性部材は、接着剤としての機能も有し、保持部92と巻線ユニット80との固定が強固になる。
【0035】
また、防水性部材は、特に限定されないが、たとえばシリコーン、エポキシ、アクリル、ウレタンなどであってもよい。また、ボビン81とボビンカバー82の間に配置される防水性部材と、保持部92に配置される防水性部材は、同じ材料であってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
なお、巻線部84を形成するワイヤは特に限定されないが、たとえば、銅(Cu)などの良導体からなる芯材を、イミド変成ポリウレタンなどからなる絶縁材で覆い、さらに最表面をポリエステルなどの薄い樹脂膜で覆ったものを用いることができる。
【0037】
また、ボビン81およびボビンカバー82は、それぞれ同じ部材で構成されていてもよく、異なる部材で構成されていてもよい。ボビン81およびボビンカバー82の材質は、特に限定されないが、それぞれ絶縁部材で構成されることが好ましく、たとえばPA、PET、PBT、PPSなどであってもよい。ボビン81およびボビンカバー82は、それぞれ樹脂の射出成形などで一体成形することができる。
【0038】
また、ベース部品90の材質は、特に限定されないが、絶縁部材で構成されることが好ましく、たとえばPET、PPS、DAPなどであってもよい。
ベース部品90は、樹脂の射出成形などで一体成形することができる。
【0039】
図1に示すように、環状磁性体ユニット1は、磁性体ユニット10,30を有する。本実施形態では、環状磁性体ユニット1は、たとえばZ軸に沿って、一方の磁性体ユニット10と、他方の磁性体ユニット30とに分解され得る。磁性体ユニット10は、巻線ユニット80と共に、固定部品95a,95bによって、ベース部品90に固定されている。磁性体ユニット10,30は、磁性体ユニット10,30の周方向から固定具6などで固定することで環状磁性体ユニット1を形成している。
【0040】
なお、本実施形態では、固定具6は、伸縮しにくい金属製のバンドで構成されているが、磁性体ユニット10,30を組み立てて固定することができればその構成は特に限定されない。本実施形態では、固定具6は、ネジを締めることで固定具6の周方向の径を小さくする締め付け部品7を有するが、これに限定されない。なお、磁性体ユニット10,30が締め付け部品7で締め付けられた後には、固定具6以外の手段で、磁性体ユニット10,30を固定してもよい。
【0041】
磁性体ユニット10は、図2に示す磁性体片10a,10b,10cを有する。磁性体ユニット10は、磁性体片10a,10b,10cを収納するケース20と、磁性体片10a,10b,10cの内側を覆うインナーカバー27を有する。磁性体ユニット30は、磁性体片10a,10b,10cに対応する磁性体片30a,30b,30cと、ケース20に対応するケース40と、インナーカバー27に対応するインナーカバー47と、を有する。
【0042】
本実施形態では、磁性体片10a,10b,10c,30a,30b,30cは、磁性を有する部材であれば特に限定されず、それぞれフェライト、金属磁性体、それらと樹脂との複合組成物などの磁性体で構成してもよく、圧縮成形後の焼成、射出成形後の焼成、あるいは一般的な圧粉成形などの方法により製造することができる。
【0043】
ケース20,40の材質は、特に限定されないが、絶縁部材で構成されることが好ましく、たとえばPA、PET、PPなどであってもよい。ケース20,40は、樹脂の射出成形などで各構成を一体成形してもよい。
【0044】
また、インナーカバー27,47は、ケース20,40と同じ部材で構成されていてもよく、異なる部材で構成されていてもよい。インナーカバー27,47の材質は、絶縁部材で構成されることが好ましく、たとえばPA、PET、PPなどであってもよい。インナーカバー27,47は、樹脂の射出成形などで各構成を一体成形してもよい。
【0045】
本実施形態では、磁性体ユニット10,30は、それぞれ同じ構成を有する。以下、主として磁性体ユニット10について説明し、個別に説明をしない限り、磁性体ユニット30の構成については説明しないが、磁性体ユニット10の説明と同じである。なお、磁性体ユニット10,30必ずしも同一の形状を有しなくてもよく、磁性体片の大きさや、ケースの構成が異なっていてもよい。
【0046】
図4に示すように、本実施形態では、ケース20は、磁性体片を収納する収納部20a,20b,20cを有する。ケース20は、外周壁21と、端壁22a,22bと、分離壁23と、を有する。外周壁21は、ケース20の外側を覆っており、端壁22a,22bは、それぞれY軸方向の両端を覆っている。端壁22aは、収納部20aのY軸方向の一方の壁を構成している。端壁22bは、収納部20cのY軸方向の他方の壁を構成している。分離壁23は、収納部20a,20b,20cを隔てている。
【0047】
図8に示すように、端壁22a,22bには、磁性体ユニット10をベース部品90に対して固定ために用いられる固定突起221が形成してある。本実施形態では、複数の固定突起221が、周方向に沿って形成されており、そのうちの2つの固定突起221が、固定部品の係合溝96に嵌ることで、ベース部品90に固定される。係合溝96に嵌める固定突起221を変更することで、磁性体ユニット10がベース部品90に固定される角度を変更することができる。
【0048】
図4に示すように、それぞれの収納部20a,20b,20cには、磁性体片の振動を吸収する板バネ24が形成してある。板バネ24は、外周壁21の一部が、内側に折れ曲がった形状を有する。図4に示すように、ケース20の端壁22a,22bおよび分離壁23には、磁性体片10a,10b,10cがZ軸方向上側に抜けることを防止する係止爪25が形成してある。
【0049】
図4に示すケース20の収納部20aには、図3に示す磁性体片10aが収納される。図14に示すように、磁性体片10aは、同一平面に配置された分割面11a,12aを有する半弧形状であり、同様の半弧形状の磁性体片30aを組み合わされることで、環状磁性体1aを形成する。図3に示すように、磁性体片10aの内側の内周面13aには吸音材3が貼り付けられている。磁性体片10aの外側の外周面14aには吸音材4が貼り付けられている。磁性体片10aのY軸方向の両側の端面15aには吸音材5が貼り付けられている。
【0050】
図4に示すケース20の収納部20bには、図3に示す磁性体片10bが収納される。図14に示すように、磁性体片10bは、同一平面に配置された分割面11b,12bを有する半弧形状であり、同様の半弧形状の磁性体片30bを組み合わされることで、環状磁性体1bを形成する。図3に示すように、磁性体片10bの内側の内周面13bには吸音材3が貼り付けられている。磁性体片10bの外側の外周面14bには吸音材4が貼り付けられている。磁性体片10bのY軸方向の両側の端面15bには吸音材5が貼り付けられている。
【0051】
図4に示すケース20の収納部20cには、図3に示す磁性体片10cが収納される。図14に示すように、磁性体片10cは、同一平面に配置された分割面11c,12cを有する半弧形状であり、同様の半弧形状の磁性体片30cを組み合わされることで、環状磁性体1cを形成する。図3に示すように、磁性体片10cの内側の内周面13cには吸音材3が貼り付けられている。磁性体片10cの外側の外周面14cには吸音材4が貼り付けられている。磁性体片10cのY軸方向の両側の端面15cには吸音材5が貼り付けられている。
【0052】
環状磁性体1a,1b,1cの大きさは、特に限定されない。図14に示すように、環状磁性体1a,1b,1cの外径D1および貫通孔2の内径D2は、計測対象となるケーブルの太さや流れる電流などに応じて設計される。本実施形態では、たとえばD1は100~150mm、D2は80~130mmとすることができる。本実施形態では、貫通孔2の外周の形状は、略円形状であるが、ケーブルを挿通可能であれば、貫通孔2の外周の形状は、楕円形、正方形、長方形などの形状であってもよい。
【0053】
図6に示すように、磁性体片10a,10b,10cは、ケース20に収納された状態では、分割面11a,12a,11b,12b,11c,12cは、それぞれ同一平面に配置されていることが好ましい。分割面11a,12a,11b,12b,11c,12cが、同一平面にあると、磁性体ユニットを組み立てやすくなる。
【0054】
本実施形態では、吸音材3,4,5の構成は特に限定されないが、シート状に形成した材料が使用され得る。吸音材3,4,5の材料は、計測対象となるケーブルに大電流が流れているなどの場合に生じる環状磁性体1a,1b,1cの磁歪による騒音を防止することができる材料であることが好ましい。吸音材3,4,5は、たとえば吸音ゴム、吸音スポンジなどであってもよい。吸音材3,4,5は、接着剤を用いて、磁性体片に貼り付けることができる。
【0055】
図6に示すように、ケース20には、磁性体片10a,10b,10cの内側を覆うインナーカバー27が取り付けられている。図5に示すように、インナーカバー27は、図3に示す磁性体片10a,10b,10cのそれぞれの内周面13a,13b,13cに沿って配置される内周壁27a有する。内周壁27aには、板バネ28が形成してある。板バネ28は、内周壁27aの一部が、外側に折れ曲がった形状を有する。
【0056】
図4に示すように、ケース20の端壁22aには、対向部51,52が一体成型することができる。対向部52は、磁性体ユニットの周方向の一方の端部261に配置されており、対向部51は、磁性体ユニットの周方向の他方の端部262に配置されている。
【0057】
また、図4に示すように、ケース20の端壁22bには、対向部51,52が一体成型することができる。対向部51は、磁性体ユニットの周方向の一方の端部261に配置されており、対向部52は、磁性体ユニットの周方向の他方の端部262に配置されている。
【0058】
ケース20において、端壁22aと端壁22bは、Z軸を対称軸として回転対称になっている。それぞれ同じ形状の対向部51が、Z軸方向に沿って見て、四角形に見えるケース20のそれぞれ対角の位置に配置されている。また、それぞれ同じ形状の対向部52が、Z軸方向に沿って見て、四角形に見えるケース20のそれぞれ対角の位置に配置されている。
【0059】
図6に示すように、対向部51は、突出部51aを有する。突出部51aは、ケース20の対向端26aおよび磁性体片の分割面11a,12a,11b,12b,11c,12cよりも、Z軸に沿って突出している。突出部51の端部は、細くなっており、後述する対向部52の受け部52aに挿入し易くなっている。
【0060】
図6に示すように、対向部52は、受け部52aを有する。受け部52aの先端52bは、ケース20の対向端26aと同一平面に配置されている。受け部52aは、突出部51aが差し込まれるZ軸方向に沿って窪む収容溝を有し、受け部52aの収容溝を囲む壁面にはスリット53が形成されている。スリット53は、受け部52aに突出部51aが挿入されると弾性的に幅が広がるように構成してある。このような観点から受け部52aは弾性変形し得る材料で構成されることが好ましい。
【0061】
図4に示すように、本実施形態では、突出部51aは、略楕円形状を有する。突出部51aは、X軸方向に幅W1の長径を有する。また、受け部52aの窪みの内側は、突出部51aの形状に対応した略楕円形状を有する。受け部52aの窪みの内側は、X軸方向に幅W2の長径を有する。幅W1は幅W2よりも広くなっており、突出部51aは、受け部52aをX軸方向に広げながら、受け部52aに挿入される。本実施形態では、たとえばW2/W1は0.6~0.9とすることができる。
【0062】
図9および図10に示すように、磁性体ユニット30は、周方向の一方の端部461が磁性体ユニット10の周方向の端部262に対向し、周方向の他方の端部462が磁性体ユニット10の周方向の端部261するように配置してある。
【0063】
図10に示すように、磁性体ユニット30の端壁42a側の端部462に形成されている突出部51aを有する対向部51は、磁性体ユニット10の端壁22a側の端部261に形成されている受け部52aを有する対向部52に対向する位置に配置されることになる。また、磁性体ユニット30の端壁42a側の端部461に形成されている受け部52aを有する対向部52は、磁性体ユニット10の端壁22a側の端部262に形成されている突出部51aを有する対向部51に対向する位置に配置されることになる。
【0064】
図9および図10に示すように、本実施形態では、端壁22a側の端部261に形成された対向部52と、端壁42a側の端部462に形成された対向部51が緩衝機構50a1を構成する。また、端壁22a側の端部262に形成された対向部52と、端壁42a側の端部461に形成された対向部51が緩衝機構50a2を構成する。
【0065】
図9には示すように、端壁22b,42b側においても同様に、磁性体ユニット30の突出部51aを有する対向部51は、磁性体ユニット10の受け部52aを有する対向部52に対向する位置に配置されることになる。図示されていないが、端壁22b,42b側において、磁性体ユニット30の受け部52aを有する対向部52は、磁性体ユニット10の突出部51aを有する対向部51に対向する位置に配置されることになる。
【0066】
本実施形態では、端壁22b,42b側において、端部261に形成された対向部51と、端部462に形成された対向部52が緩衝機構50b1を構成する。また、端壁22b,42b側において、端部262に形成された対向部52と、端部461に形成された対向部51が緩衝機構50b2を構成する。
【0067】
本実施形態では、緩衝機構50a1と緩衝機構50a2は、Y軸を軸とした回転対称であり、緩衝機構50a1と緩衝機構50b2は、Z軸を軸とした回転対称である。緩衝機構50a2と緩衝機構50b1は、Z軸を軸とした回転対称である。このように構成することで、磁気特性への影響を抑えることができるとともに、各緩衝機構に力が均等に係りコイル装置の損傷を防止することができる。
【0068】
以下では、主として、緩衝機構50a1について説明し、緩衝機構50a2,50b1,50b2についての説明は省略する。緩衝機構50a1についての説明は、軸の方向を変えて緩衝機構50a2,50b1,50b2にも妥当する。
【0069】
本実施形態では、図12に示すように、緩衝機構50a1において、突出部51aは、受け部52aに向かって長さL0で突出している。本実施形態では、長さL0は、特に限定されず、ケース20,40の材質や、図1に示す計測対象となるケーブル110の構成や、図14に示す環状磁性体1a,1b,1cの外径D1などの環状磁性体の構成に応じて設計してもよい。本実施形態では、たとえばL0/D1は、0.01~0.04に設計することができる。図12に示すように、固定具6で締め付ける前の状態において、受け部52aに突出部51aが挿入される深さL1は、特に限定されないが、本実施形態では、L1/L0は、0~0.08になるように設計することができる。
【0070】
このような設計では、弾性的に変形する受け部52aがX軸方向の両側から突出部51aを抑えることで、摩擦力が生じる。この摩擦力が、磁性体片10a,10b,10cと、磁性体片30a,30b,30cとの間に働く磁力および重力に抗する抵抗力となり、分割面11a,11b,11cと、向かい合う分割面31a,31b,31cとの間に幅W0の隙間を生じさせることができる。このように、固定具6で締め付ける前の状態で、向かい合う分割面同士の間に隙間が生じることで、磁力および重力により磁性体片同士が衝突することを防止できる。なお、幅W0は0より大きくなるように設計されることが好ましく、幅W0は、5mm以上であることがより好ましい。
【0071】
図13に示すように、固定具6の締め付け部品7によって、受け部52aと突出部51aとの間に生じる抵抗力よりも強い力で締め付けることで、分割面11a,11b,11cと、向かい合う分割面31a,31b,31cを接触させることができる。このように、分割面同士が接触した状態では、受け部52aに突出部51aが深さL2だけ挿入される。本実施形態では、L2≦L1+W0の関係が満たされている。深さL2は、スリット53の受け部52aの先端52bから底部53aまでの深さL3よりも小さい。なお、スリット53は底部53aがなくてもよい。また、分割面11a,11b,11cと、向かい合う分割面31a,31b,31cは接触せず、隙間があってもよい。
【0072】
図10に示すように、本実施形態では、コイル装置100は、磁性体片の外周面の少なくとも一部を覆うケース20,40を有する。磁性体片をケース20,40で覆うことで、磁性体片の保護と絶縁を図ることができる。また、計測対象となるケーブル110に大電流が流れるなどの場合には、環状磁性体が振動して騒音の原因となり得るが、本実施形態では、図4に示すケースの板バネ24および図5に示すインナーカバー27の板バネが、環状磁性体の振動を吸収することができるので騒音を効果的に防止できる。
【0073】
図9に示すように、本実施形態では、緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2は、ケース20,40の周方向の端部261,262,461,462に具備してある。そのため、緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2を、磁性体片の分割面11a,12a,11b,12b,11c,12c,31a,32a,31b,32b,31c,32cの近くに配置することが可能になり、組み立て作業時に、磁性体片同士が急激に接触することを有効に防止し、磁性体の損傷をより効果的に防止することができる。
【0074】
緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2は、環状磁性体の貫通方向であるY軸方向の端にあたるケース20,40の端壁22a,22b,42a,42bに配置してある。そのため、ケース20,40の外径を多くすることなく、また他の部品と干渉することなく、緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2をケース20,40に具備させることができる。また、ケース20,40の機械強度を十分に確保することができる。本実施形態では、緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2は、ケース20,40と一体成型されることで、機械的強度が高くなる。
【0075】
図10に示すように、本実施形態のコイル装置100では、一方の磁性体ユニット10と他方の磁性体ユニット30とが組み合わせられることで、環状磁性体ユニット1が構成される。環状磁性体ユニット1の内部では、図14に示すように、一方の磁性体ユニットの磁性体片10aと他方の磁性体ユニット30の磁性体片30aとによって、貫通孔2を有する環状磁性体1aが構成される。
【0076】
磁性体片10aの分割面11aと、磁性体片30aの分割面32aが向かい合うように配置されており、磁性体片10aの分割面12aと、磁性体片30aの分割面31aが向かい合うように配置されている。磁性体片10aの分割面11aは、磁性体片30aの分割面32aと接触し、磁性体片10aの分割面12aは、磁性体片30aの分割面31aと接触しているが、分割面11a,12a,31a,32aは、開閉可能であり、貫通孔2に容易にケーブルを通すことができるようになっている。
【0077】
環状磁性体1b,1cも環状磁性体1aと同様に、それぞれ磁性体片10b,10cと磁性体片30b,30cとによって構成されている。環状磁性体1a、磁性体片10aおよび磁性体片30aについての説明が、環状磁性体1b,1c、磁性体片10b,10cおよび磁性体片30b,30cにも妥当するため、環状磁性体1b,1c、磁性体片10b,10cおよび磁性体片30b,30cについての説明は省略する。
【0078】
本実施形態では、図6に示すように、コイル装置は、緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2を有する。緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2は、図14に示す環状磁性体1aの向かい合う分割面11aと分割面32aおよび分割面12aと分割面31aが相互に近接する方向の力に抗する抵抗力を生じさせるように構成してある。
【0079】
本実施形態では、図9に示すように、計測対象となるケーブル110に大電流が流れている状態で、コイル装置100の組み立て作業を行っても、図14に示す向かい合う分割面11aと分割面32aとの間および分割面12aと分割面31aとの間に生じる磁力による磁性体片10aと磁性体片30aとが接近する方向の力(重力も含めて)を、緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2で緩和することができる。そのため、磁性体片同士の衝突が有効に回避できる。
【0080】
図10に示すように、磁性体片の分割面31a,32aをさらに分割面11a,12aに接近させる場合には、個別に調節すればよく、組み立て作業により磁性体片同士の急な接触などでの損傷を有効に防止することができる。そのため、磁性体片の分割面11a,12a,31a,32aの周辺の損傷を防止しつつ、容易に組み立て作業を行うことができる。
【0081】
緩衝機構50a1,50a2,50b1,50b2は、向かい合う分割面11aと分割面32aの間および分割面12aと分割面31aの間の距離を制御するように配置される対向部51,52を有する。向かい合う分割面11aと分割面32aの間および分割面12aと分割面31aの間の距離を制御することで、磁性体片同士の衝突を有効に防止し、組み立て作業をより安全に行うことができる。
【0082】
図11に示すように、本実施形態では、一方の対向部51は、突出部51aを有し、他方の対向部52は、突出部51aに接触する受け部52aを有する。このように構成することで、一方の対向部の突出部51aを他方の対向部52の受け部52aにゆっくり挿入でき、磁性体ユニット10,30の磁性体片同士の位置決めを行いながら、磁性体片同士の衝突を有効に防止し、組み立て作業をより安全に行うことができる。
【0083】
図11に示すように、受け部52aは、突出部51aが挿入されることによって受け部52aに働く力に応じて弾性的に幅を変化可能なスリット53を有する。スリット53は、分割面が向かい合うZ軸方向に沿って延びるように配置してある。
【0084】
本実施形態では、一方の対向部51の突出部51aを他方の対向部52の受け部52aに深く挿入するにつれて緩衝機構50a1での抵抗力が高められ、磁性体ユニット10,30の磁性体片同士の予期せぬ衝突を防止することがさらに容易になる。また、本実施形態では、突出部51aと受け部52aとの間には、摩擦による抵抗力で保持されているため、容易に一方の対向部51の突出部51aを他方の対向部52の受け部52aから抜くことができる。そのため、本実施形態では、容易に環状磁性体を分解することできる。
【0085】
図1に示すように、本実施形態では、コイル装置100は、磁性体ユニット10,30の外周に、固定具6を有する。固定具6は、締め付け部品7によって緩衝機構50a1,50a2に生じる抵抗力より強い力で、相互に向かい合う磁性体片の分割面を接近させることが可能になっている。そのため、図12に示す磁性体片10a,30bを任意の位置までゆっくりと近づけることが可能になる。また、固定具6が取り付けられることで、磁性体片が収納された磁性体ユニット10,30が固定され、磁性体ユニット10,30同士が予期せず分解されるなどの恐れがなくなり、コイル装置100を安全に使用することができる。
【0086】
本実施形態では、固定具6を緩めることで、環状磁性体ユニット1を容易に磁性体ユニット10,30に分解できる。そのため、磁性体ユニットの交換や点検など、容易にコイル装置100のメンテナンスを行うことができる。
【0087】
また、本実施形態では、環状磁性体ユニット1には、図14に示す環状磁性体1a,1b,1cが収納されているが、環状磁性体は、1つ以上あればよく、必要に応じてその数を変更してもよい。本実施形態のように、複数の環状磁性体は、大きな環状磁性体よりも製造が容易である。
【0088】
図10に示すように、本実施形態では、コイル装置100は、磁性体片が収納された磁性体ユニット10を固定するベース部品90を有する。磁性体ユニット10が、ベース部品90に固定されることで、コイル装置100の組み立て作業を安全かつ容易に行うことが可能になる。また、コイル装置100は、ベース部品90の設置面91で外部に設置させて配置でき、コイル装置を安全に使用することができる。さらに、ベース部品90の設置面91は、水平面のみではなく、傾斜面に取り付けられていてもよい。
【0089】
図8に示すように、本実施形態では、固定部品95a,95bの係合溝96に嵌める固定突起221を変更しすることで、磁性体片が収納された磁性体ユニット10は、ベース部品90の設置面91に対して分割面11a,12a,11b,12b,11c,12cの角度を変更可能にベース部品90に取り付けることができる。
【0090】
図8に示すように、本実施形態では、環状磁性体を構成する磁性体片10a,10b,10cの周方向の一部が、図7に示す巻線部84の巻き軸空間85を通過するように配置してある。そのため、コイル装置100を、カレントセンサとして好適に使用できる。
【0091】
(コイル装置の製造方法)
コイル装置100の製造方法について説明する。まず、図7に示すように、ベース部品90の保持部92に、巻線ユニット80を取り付ける。この時、あらかじめ、巻線ユニット80のボビン81とボビンカバー82との間に防水性部材を満たし、巻線部84の周囲を外気から遮断しておくことが好ましい。保持部92の窪みに防水性部材を満たし、巻線部84のZ軸方向下側を外気から遮断すると共に、ベース部品90と巻線ユニット80を固定する。
【0092】
次に、図6に示す磁性体ユニット10を、図7に示す巻線ユニット80の巻き軸空間85に通す。磁性体ユニット10の周方向の端部262を巻き軸空間85に挿入し、磁性体ユニット10を周方向に回転させることで、図8に示すように、巻き軸空間85に磁性体ユニット10を通すことができる。
【0093】
図8に示す状態で、固定部品95a,95bをY軸方向両側から取り付ける。固定部品95a,95bの係合溝96を、固定突起221に嵌めることで、磁性体ユニット10が、ベース部品90に固定される。なお、図8では、分割面11a,12a,11b,12b,11c,12cが、ベース部品90の設置面91に対して水平になるように配置しているが、組み立て作業を行いやすいように、係合溝96に嵌める固定突起221を変更して角度を変えてもよい。
【0094】
次に、図9に示すように、ベース部品90の設置面91を平面に置き、磁性体ユニット10のZ軸方向上側にケーブル110を配置する。磁性体ユニット30をケーブル110のZ軸方向上側に配置し、対向部51の突出部51aの先端51bを対向部52の受け部52aの先端52bに近づける。突出部51aと受け部52aが当接したら、図1に示すように、磁性体ユニット10,30の外周壁21に沿って固定具6を取り付ける。
【0095】
なお、組み立て作業の際に、ケーブル110に電流が流れていると、磁性体ユニット10と磁性体ユニット30との間に磁力が発生し、磁性体ユニット10と磁性体ユニット30とが引き合うことになる。本実施形態では、図11に示すように、一方の磁性体ユニットの対向部51の突出部51aが、他方の磁性体ユニットの対向部52の受け部52aに挿入されるにつれて、受け部52aのスリット53の幅がX軸方向に弾性的に広がる。弾性的に広がったスリット53が元に戻ろうとする力による摩擦力が抵抗力となり、抵抗力が磁性体ユニット30に働く磁力および重力に抗するため、磁性体片の分割面同士が衝突しないようになっている。
【0096】
次に、図12に示すように、固定具6に取り付けられている締め付け部品7のネジを締める。締め付け部品7のネジを締めると、受け部52aに生じる抵抗力よりも強い力で、一方の磁性体ユニット10に他方の磁性体ユニット30が接近する。締め付け部品7のネジをより強く締めることで、図13に示すように、磁性体ユニット30の磁性体片の分割面32a,32b,32cを、磁性体ユニット10の磁性体片の分割面11a,11b,11cに接触させることができる。なお、磁性体ユニット30の磁性体片の分割面32a,32b,32cは、必ずしも磁性体ユニット10の磁性体片の分割面11a,11b,11cに接触していなくてもよく、分割面32a,32b,32cと分割面11a,11b,11cとの間に隙間があってもよい。
【0097】
第2実施形態
本実施形態に係るコイル装置は、ケース120,140が第1実施形態のケース20,40と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について、図15および図16を用いて、主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1実施形態の説明と同様である。
【0098】
図15に示すように、緩衝機構150a1,150a2,150b1,150b2は、ラチェット式になっている。緩衝機構150a1,150a2,150b1,150b2は、凸部151cを有する突出部151aと、スリット153に凸部151cの形状に対応する凹部152cを有する受け部152aと、を有する。
【0099】
本実施形態では、図16に示すように、突出部151aの凸部151cと、受け部152aの凹部152cが係合すると、磁性体片同士が引き合う磁力および重力よりも強い抵抗力を生じる。突出部151aをより深く凸部151cおよび凹部152cは丸みを帯びており、抵抗力よりも強い力で、突出部151aを受け部152aに挿入しようとすると、スリット153が開くように変形し、突出部151aがより深く挿入され、凸部151cはより深い位置の凹部152cに係合する。
【0100】
このように、本実施形態では、凸部151c係合する凹部152cの位置を変えることができる。そのため、凸部151cと凹部152cの設計によって、磁性体片同士の接近距離を決めておくことが可能になる。
【0101】
なお、上述した実施形態は、特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
【0102】
たとえば、上述の実施形態では、2つの磁性体ユニット10,30が組み合わさって1つの環状磁性体ユニット1を構成しているが、磁性体ユニットを3つ以上組み合わせて1つの環状磁性体ユニット1としてもよい。
【符号の説明】
【0103】
100…コイル装置
1…環状磁性体ユニット
1a,1b,1c…環状磁性体
2…貫通孔
10…磁性体ユニット
10a,10b,10c…磁性体片
11a,11b,11c,12a,12b,12c…分割面
13a,13b,13c…内周面
14a,14b,14c…外周面
15a,15b,15c…端面
20,120…ケース
20a,20b,20c…収納部
21…外周壁
22a…端壁
22b…端壁
221…固定突起
23…分離壁
24…板バネ
25…係止爪
261,262…端部
26a…対向端
27…インナーカバー
27a…内周壁
28…板バネ
30…磁性体ユニット
30a,30b,30c…磁性体片
31a,31b,31c,32a,32b,32c…分割面
33a,33b,33c…内周面
34a,34b,34c…外周面
35a,35b,35c…端面
40,140…ケース
40a,40b,40c…収納部
41…外周壁
42a…端壁
42b…端壁
461,462…端部
46a…対向端
47…インナーカバー
50a1,50a2,50b1,50b2,150a1,150a2,150b1,150b2…緩衝機構
51,151…対向部
51a,151a…突出部
51b,151b…先端
151c…凹部
52,152…対向部
52a,152a…受け部
52b,152b…先端
152c…凸部
53,153…スリット
53a…底部
80…巻線ユニット
81…ボビン
82…ボビンカバー
84…巻線部
85…巻き軸空間
90…ベース部品
91…設置面
92…保持部
95a,95b…固定部品
96…係合溝
3,4,5…吸音材
6…固定具
7…締め付け部品
110…ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16