(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048988
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】バトン昇降システムおよび制御装置
(51)【国際特許分類】
A63J 5/02 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
A63J5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155198
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴之
(57)【要約】
【課題】ワイヤロープの劣化度合いを把握すること。
【解決手段】実施形態に係るバトン昇降システムは、バトンと、ワイヤロープと、取得部と、解析部と、表示部とを具備する。バトンは、昇降可能なものである。ワイヤロープは、バトンを吊り下げる。取得部は、バトンの情報、バトンに取り付けられる器具の情報、バトンおよび器具に関する時間情報を取得する。解析部は、取得部によって取得した情報を蓄積し、蓄積した情報を分析し、分析結果からワイヤロープの劣化度合いを検知し、検知したワイヤロープの劣化度合いに応じて複数段にレベル分けする。表示部は、解析部によるワイヤロープの劣化度合いのレベル分けの結果に基づいて、ワイヤロープの状態について表示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能なバトンと;
前記バトンを吊り下げるワイヤロープと;
前記バトンの情報、前記バトンに取り付けられる器具の情報、前記バトンおよび前記器具に関する時間情報を取得する取得部と;
前記取得部によって取得した前記情報を蓄積し、蓄積した前記情報を分析し、分析結果から前記ワイヤロープの劣化度合いを検知し、検知した前記ワイヤロープの劣化度合いに応じて前記ワイヤロープを複数段にレベル分けする解析部と;
前記解析部による前記ワイヤロープの劣化度合いのレベル分けの結果に基づいて、前記ワイヤロープの状態について表示する表示部と;
を具備する、バトン昇降システム。
【請求項2】
前記ワイヤロープは、複数で同一の前記バトンを吊り下げており、
前記解析部は、前記ワイヤロープごとの劣化度合いを検知し、前記ワイヤロープごとに、劣化度合いに応じて複数段にレベル分けする、請求項1に記載のバトン昇降システム。
【請求項3】
前記バトンにおいて複数の範囲を設定する設定部;
を具備し、
前記解析部は、前記バトンの情報および前記器具の情報から前記バトンにおける前記器具の偏りを検知し、検知した前記器具の偏りに応じて前記範囲ごとに複数段にレベル分けし、
前記表示部は、前記解析部による前記器具の偏りのレベル分けの結果に基づいて、前記範囲ごとの前記ワイヤロープの状態について表示する、請求項1または2に記載のバトン昇降システム。
【請求項4】
昇降可能なバトンの情報、前記バトンに取り付けられる器具の情報、前記バトンおよび前記器具に関する時間情報を取得する取得部と;
前記取得部によって取得した前記情報を蓄積し、蓄積した前記情報を分析し、分析結果から前記バトンを吊り下げるワイヤロープの劣化度合いを検知し、検知した前記ワイヤロープの劣化度合いに応じて前記ワイヤロープを複数段にレベル分けする解析部と;
を具備する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バトン昇降システムおよび制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明装置などの器具が昇降可能なバトンに取り付けられ、バトンの昇降に応じて器具を昇降させる技術が提案されている。バトンは、ワイヤロープを介して巻上機で昇降される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、ワイヤロープの経年劣化が定期メンテナンスまたは問題が発生したときに発覚するケースが多く、ワイヤロープの劣化度合いを把握することが困難である。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ワイヤロープの劣化度合いを把握することができるバトン昇降システムおよび制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るバトン昇降システムは、バトンと、ワイヤロープと、取得部と、解析部と、表示部とを具備する。バトンは、昇降可能なものである。ワイヤロープは、バトンを吊り下げる。取得部は、バトンの情報、バトンに取り付けられる器具の情報、バトンおよび器具に関する時間情報を取得する。解析部は、取得部によって取得した情報を蓄積し、蓄積した情報を分析し、分析結果からワイヤロープの劣化度合いを検知し、検知したワイヤロープの劣化度合いに応じて複数段にレベル分けする。表示部は、解析部によるワイヤロープの劣化度合いのレベル分けの結果に基づいて、ワイヤロープの状態について表示する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係るバトン昇降システムによれば、ワイヤロープの劣化度合いを把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るバトン昇降システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ワイヤロープ5にかかる荷重の説明図である。
【
図4A】
図4Aは、ワイヤロープの劣化度合いの表示例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、ワイヤロープの劣化度合いの表示例を示す図である。
【
図5】
図5は、器具の偏り度合いの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施形態に係るバトン昇降システム1は、バトン2と、ワイヤロープ5と、取得部24と、解析部26と、表示部7とを具備する。バトン2は、昇降可能なものである。ワイヤロープ5は、バトン2を吊り下げる。取得部24は、バトン2の情報、バトン2に取り付けられる器具6の情報、バトン2および器具6に関する時間情報を取得する。解析部26は、取得部24によって取得した情報を蓄積し、蓄積した情報を分析し、分析結果からワイヤロープ5の劣化度合いを検知し、検知したワイヤロープ5の劣化度合いに応じて複数段にレベル分けする。表示部7は、解析部26によるワイヤロープ5の劣化度合いのレベル分けの結果に基づいて、ワイヤロープ5の状態について表示する。
【0010】
また、以下に説明する実施形態に係るバトン昇降システム1において、ワイヤロープ5は、複数で同一のバトン2を吊り下げており、解析部26は、ワイヤロープ5ごとの劣化度合いを検知し、ワイヤロープ5ごとに、劣化度合いに応じて複数段にレベル分けする。
【0011】
また、以下に説明する実施形態に係るバトン昇降システム1において、バトン2において複数の範囲A1~A3を設定する設定部25を具備し、解析部26は、バトン2の情報および器具6の情報からバトン2における器具6の偏りを検知し、検知した器具6の偏りに応じて範囲A1~A3ごとに複数段にレベル分けし、表示部7は、解析部26による器具6の偏りのレベル分けの結果に基づいて、範囲A1~A3ごとのワイヤロープ5の状態について表示する。
【0012】
また、以下に説明する実施形態に係る制御装置8は、取得部24と、解析部26とを具備する。取得部24は、昇降可能なバトン2の情報、バトン2に取り付けられる器具6の情報、バトン2および器具6に関する時間情報を取得する。解析部26は、取得部24によって取得した情報を蓄積し、蓄積した情報を分析し、分析結果からバトン2を吊り下げるワイヤロープ5の劣化度合いを検知し、検知したワイヤロープ5の劣化度合いに応じてワイヤロープ5を複数段にレベル分けする。
【0013】
以下、実施形態に係るバトン昇降システムおよび制御装置について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
まず、
図1を参照して実施形態に係るバトン昇降システム1の概要について説明する。
図1は、実施形態に係るバトン昇降システム1の構成例を示す図である。実施形態に係るバトン昇降システム1は、スタジオ、劇場および展示場などに配置されるバトン2を昇降させるシステムである。
【0015】
バトン昇降システム1は、バトン2と、巻上機3と、高さ検知部4と、ワイヤロープ5と、器具6と、表示部7(
図2参照)と、制御装置8とを備える。
【0016】
バトン2は、複数設けられる。なお、バトン2は、1つであってもよい。バトン2には、後述する器具6が取り付け可能である。バトン2は、後述するワイヤロープ5によって天井に吊り下げられる。
【0017】
巻上機3は、たとえば、グリッド天井10に設けられる。巻上機3は、ワイヤロープ5を介してバトン2を昇降する。巻上機3は、たとえば、モータによってドラム3aを回転させて、バトン2を昇降する。ドラム3aには、ワイヤロープ5が取り付けられる。巻上機3は、ドラム3aの回転方向を切り替えることで、ワイヤロープ5の繰り出し、ワイヤロープ5の巻き上げを切り替えて、バトン2を昇降する。
【0018】
巻上機3は、後述する制御装置8から送信される制御信号に基づいて、ドラム3aを回転させる。ワイヤロープ5は、滑車3bに巻き掛けられる。なお、ワイヤロープ5は、滑車3bに巻き掛けられなくてもよい。すなわち、バトン昇降システム1は、滑車3bを用いずに、バトン2を昇降させてもよい。
【0019】
高さ検知部4は、バトン2の高さを検知する。高さ検知部4は、たとえば、巻上機3に取り付けられるエンコーダを含む。高さ検知部4は、エンコーダによってドラム3aの回転を計測することで、バトン2の高さを検知する。なお、高さ検知部4は、バトン2の高さを検知可能なカメラ装置などであってもよい。
【0020】
高さ検知部4は、バトン2の上限位置およびバトン2の下限位置を検知する。バトン2の上限位置は、予め設定される位置であり、バトン2を上昇させる場合に最も高くなる位置である。バトン2の下限位置は、予め設定される位置であり、バトン2を下降させる場合に最も低くなる位置である。高さ検知部4は、バトン2の上限位置および下限位置において作動するマイクロスイッチを含んでもよい。
【0021】
ワイヤロープ5は、バトン2を吊り下げる。ワイヤロープ5は、たとえば、複数の鋼線がねじられて形成される。ワイヤロープ5は、たとえば、グリッド天井10から複数(たとえば、3つ)で同一のバトン2を吊り下げる。なお、ワイヤロープ5は、単一でバトン2を吊り下げてもよい。
【0022】
器具6は、バトン2に取り付けられる。器具6は、照明装置、幕類および舞台セットなどを含む。器具6は、バトン2のコンセントと接続され、バトン2のコンセントから電源が供給される。制御装置8は、器具6がRDM(Raw Device Mapping)対応器具である場合には、コンセントに流れる電流を検知することで、後述するバトン2の情報および器具6の情報を取得することができる。
【0023】
表示部7は、液晶などの表示画面を備える。表示部7は、たとえば、バトン昇降操作器に設けられる。なお、表示部7は、調光操作卓およびリモートコントローラなどに設けられてもよい。表示部7は、ワイヤロープ5の状態について表示する。ワイヤロープ5の状態およびワイヤロープ5の状態表示については、
図4Aおよび4Bを用いて後述する。
【0024】
次に、
図2を参照して実施形態に係る制御装置8について説明する。
図2は、実施形態に係る制御装置8の構成例を示すブロック図である。
【0025】
制御装置8は、巻上機3を制御することで、バトン2の昇降を制御する。制御装置8は、バトン昇降操作器に設けられる。
【0026】
図2に示すように、制御装置8は、通信部20と、操作部21と、記憶部22と、制御部23とを備える。
【0027】
通信部20は、たとえば、所定の通信回路などによって実現される。たとえば、通信部20は、イーサネット(登録商標)およびLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して、高さ検知部4、表示部7および巻上機3などとの間の通信を中継する。
【0028】
操作部21は、バトン2の昇降操作などを受け付ける。操作部21は、たとえば、ボタンおよびレバーを含む。なお、操作部21は、制御装置8とは別に設けられてもよい。この場合、制御装置8は、通信部20を介して操作部21によるバトン2の昇降操作に関する情報を取得する。すなわち、バトン2の昇降操作は、制御装置8とは異なるリモートコントローラによって行われてもよい。
【0029】
記憶部22は、制御部23による制御を実現するためのプログラムなどを記憶する。記憶部22は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子またはハードディスク、光ディスクなどの記憶装置によって実現される。
【0030】
制御部23は、各種の情報処理を実行する演算装置であり、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を採用できる。制御部23は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部23は、各種のプログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。
【0031】
制御部23は、取得部24と、設定部25と、解析部26と、昇降制御部27とを備える。
【0032】
取得部24は、通信部20を介して、バトン2の情報、バトン2に取り付けられた器具6の情報、バトン2および器具6に関する時間情報を取得する。これらの情報のうち、バトン情報とは、たとえば、バトン2の昇降回数およびバトン2における器具6の取付位置である。
【0033】
バトン2の昇降回数は、操作部21におけるバトン2の昇降のスイッチ操作から取得することができる。また、バトン2の昇降回数は、後述する昇降制御部27からも取得することができる。
【0034】
バトン2における器具6の取付位置は、器具6がRDM対応である場合には、バトン2のコンセントに流れる電流を検知することで取得することができる。また、器具6の取付位置は、器具6がRDM非対応の場合には、器具6にRFID(Radio Frequency Identification)タグを取り付けることで、このRFIDタグから取得することができる。
【0035】
器具6の情報とは、たとえば、器具6の重さである。器具6の重さは、ロードセルなどの検知によって取得することができる。また、器具6の重さは、器具6がRDM対応である場合には、コンセントに流れる電流を検知することで取得することができる。また、器具6の重さは、器具6がRDM非対応の場合には、器具6にRFIDタグを取り付けることで、このRFIDタグから取得することができる。
【0036】
バトン2および器具6に関する時間情報とは、たとえば、バトン2に器具6が取り付けられている時間およびバトン2の昇降時間である。バトン2に器具6が取り付けられている時間は、バトン昇降システム1が納入されてから現在まで器具6が取り付けられている合計時間である。バトン2に器具6が取り付けられている時間は、器具6がRDM対応である場合には、コンセントに流れる電流を検知することで取得することができ、器具6がRDM非対応の場合には、器具6にRFIDタグを取り付けることで、このRFIDタグから取得することができる。
【0037】
バトン2の昇降時間は、操作部21におけるバトン2の昇降のスイッチ操作から取得することができる。また、バトン2の昇降時間は、昇降制御部27からも取得することができる。
【0038】
なお、バトン2に取り付けられた器具6は、照明装置のようにバトン2のコンセントに電気的に接続されるもののオンオフ状態からだけでなく、通電しない器具であっても、器具6の重さ、バトン2に取り付けられている時間およびバトンにおける取付位置の各情報を取得することが様々な方法から可能である。
【0039】
設定部25は、バトン2において、現在バトン2に取り付けられている器具6の取付位置の範囲A1~A3(
図5参照)を設定する。また、設定部25は、範囲A1~A3ごとに器具6の取付位置の偏り度合いの基準を設定する。なお、バトン2における器具6の取付位置の範囲A1~A3、器具6の取付位置の偏り度合いの基準については、
図5を用いて後述する。
【0040】
解析部26は、取得部24によって取得した各情報を蓄積する。また、解析部26は、蓄積した情報を分析する。また、解析部26は、分析結果からワイヤロープ5の劣化(たとえば、ワイヤロープ5の伸び)の度合いを検知(推測)し、検知したワイヤロープ5の劣化度合いに応じて、ワイヤロープ5を複数段にレベル分けする。なお、ワイヤロープ5のレベル分けについては、
図4Aおよび4Bを用いて後述する。
【0041】
また、解析部26によるワイヤロープ5の劣化度合いのレベル分けの結果は、表示部7へ送信される。表示部7は、ワイヤロープ5の劣化度合いのレベル分けの結果に基づいて、ワイヤロープ5の状態について表示する。
【0042】
昇降制御部27は、巻上機3を制御し、バトン2の昇降を制御する。昇降制御部27は、操作部21における操作に基づいて、巻上機3のモータを制御するための制御信号を生成する。生成された制御信号は、通信部20を介して巻上機3に送信される。なお、バトン2の昇降状態は、告知部(図示せず)によって表示される。
【0043】
ここで、
図3を参照してワイヤロープ5にかかる荷重について説明する。
図3は、ワイヤロープ5にかかる荷重の説明図である。なお、
図3において、図中の左側には、器具6が取り付けられていないバトン2およびワイヤロープ5を示し、図中の右側には、器具6が取り付けられたバトン2およびワイヤロープ5を示している。
【0044】
図3(左側)に示すように、たとえば、3本のワイヤロープ5(5a~5c)で30kgのバトン2を吊り下げている場合、1本のワイヤロープ5には単純計算で10kgの荷重がかかる。
図3(右側)に示すように、ワイヤロープ5aに10kgの器具6を取り付けると、各ワイヤロープ5a~5cにかかる荷重は均等ではなくなり、器具6の重さと、器具6からワイヤロープ5a~5cまでの距離によってワイヤロープ5a~5cにかかる荷重が決まる。
図3の例では、たとえば、ワイヤロープ5aには15kg(荷重「大」)、ワイヤロープ5bには13kg(荷重「中」)、ワイヤロープ5cには11kg(荷重「小」)の荷重がかかる。
【0045】
この状態が、たとえば、20年続いた場合、ワイヤロープ5の劣化(ここでは、ワイヤロープ5の伸び)は、ワイヤロープ5a、ワイヤロープ5b、ワイヤロープ5cの順で伸びている。
【0046】
ワイヤロープ5a~5cにかかる荷重と時間の各情報を蓄積することで、ワイヤロープ5a~5cの伸びの度合いを検知することができる。すなわち、ワイヤロープ5a~5cの劣化度合いを検知することができる。そして、このような検知結果をワイヤロープ5の劣化予測に活用して点検時期および部品の交換時期を予測し、これらの時期の目安とすることができる。なお、
図3においては、ワイヤロープ5の劣化をワイヤロープ5の伸びとしているが、ワイヤロープ5の伸び以外にも、たとえば、ワイヤロープ5の一部破断などをワイヤロープ5の劣化として検知することも可能である。
【0047】
このように、ワイヤロープ5は、長期間の使用によって経年劣化していることがあるため、安全性の確保のためにメーカなどの作業者が定期的にメンテナンスする。具体的には、バトン2の上限位置および下限位置の停止位置のずれ、およびワイヤロープ5の太さを点検する。ワイヤロープ5の劣化が確認されると、このワイヤロープ5を交換する。
【0048】
ワイヤロープ5の経年劣化は、定期メンテナンスまたは問題が発生したときに発覚するケースが多く、ワイヤロープ5の劣化度合いを把握することは困難である。このため、本実施形態では、ワイヤロープ5の劣化度合いを表示する表示部7を備えることで、ワイヤロープ5の劣化度合いを把握することができる。
【0049】
次に、
図4Aおよび4Bを参照して表示部7におけるワイヤロープ5の劣化度合いの表示例について説明する。
図4Aおよび4Bは、ワイヤロープ5の劣化度合いの表示例を示す図である。なお、
図4Aには、バトン単位で表示する例を示し、
図4Bには、ワイヤロープ単位で表示する例を示している。また、図中の「B1」、「B2」、「UH1」、「UH2」は、それぞれ1つのバトン2である。
【0050】
図4Aに示すように、表示部7は、バトン単位の表示では、バトン2ごとのワイヤロープ5全体に、「正常」、「注意」、「異常」の3段階にレベル分けしたアラーム表示を表示する。なお、ワイヤロープ5のレベル分けについては、3段階に限定されず、たとえば、「正常」、「異常」の2段階にレベル分けしてもよい。また、4段階以上のレベル分けでもよい。また、たとえば、「正常」は緑色、「注意」は黄色、「異常」は赤色で表示する。
図4Aの例では、「B2」、「UH2」のバトン2のワイヤロープ5は「正常」、「B1」のバトン2のワイヤロープ5は「注意」、「UH1」のバトン2のワイヤロープ5は「異常」と表示している。なお、1つのバトン2に複数のワイヤロープ5がある場合、最もレベルの高い(「正常」、「注意」、「異常」の順でレベルが高くなる)ものをバトン2におけるワイヤロープ5の状態としている。
【0051】
図4Bに示すように、表示部7は、ワイヤロープ単位の表示では、ワイヤロープ5ごとに、「正常」、「注意」、「異常」の3段階にレベル分けしたアラーム表示を表示する。なお、この場合も、ワイヤロープ5のレベル分けについては、3段階に限定されず、たとえば、「正常」、「異常」の2段階にレベル分けしてもよい。また、4段階以上のレベル分けでもよい。
図4Bの例では、「B2」、「UH2」のバトン2のワイヤロープ5a~5cはすべて「正常」と表示している。「B1」のバトン2のワイヤロープ5は、ワイヤロープ5aが「異常」、ワイヤロープ5bが「注意」、ワイヤロープ5bが「正常」と表示している。「UH1」のバトン2のワイヤロープ5a~5cはすべて「異常」と表示している。
【0052】
次に、
図5を参照して表示部7における器具6の偏り度合いの表示例について説明する。
図5は、器具6の偏り度合いの表示例を示す図である。なお、
図5において、図中の左側には、器具6に偏りがない状態を示し、図中の右側には、器具6に偏りがある状態を示している。
【0053】
バトン2に取り付けられる器具6は、演出によっては、たとえば、バトン2の一方端に偏る場合があり、一部のワイヤロープ5に荷重が集中することがある。このような荷重の集中は、ワイヤロープ5の劣化を加速させる可能性があるとともに、バトン2のバランスも悪くなる。バトン2のバランスが悪いと、バトン2の昇降時に器具6が落下する可能性がある他、巻上機3(
図1参照)の過負荷が発生する可能性がある。このため、本実施形態では、表示部7が、現在バトン2に取り付けられている器具6の取付位置および器具6の偏り度合いを表示することで、器具6の偏り度合いを把握することができる。
【0054】
図5に示すように、バトン2は、たとえば、3つの範囲A1~A3に分けられる。このような範囲A1~A3は、上記したように、制御装置8の設定部25(いずれも、
図2参照)によって設定される。
【0055】
さらに、解析部26(
図2参照)によってバトン2の情報および器具6の情報から現在バトン2における器具6の偏りを検知し、検知した器具6の偏りに応じて、範囲A1~A3ごとに複数段にレベル分けする。そして、表示部7は、解析部26による器具6の偏りのレベル分けの結果に基づいて、範囲A1~A3ごとのワイヤロープ5の状態について表示する。
【0056】
また、表示部7は、範囲A1~A3ごとに、器具6の偏りについて「正常」、「注意」、「異常」の3段階にレベル分けしたアラーム表示を表示する。なお、器具6の偏りのレベル分けについては、3段階に限定されず、たとえば、「正常」、「異常」の2段階にレベル分けしてもよい。また、4段階以上のレベル分けでもよい。また、たとえば、「正常」は緑色、「注意」は黄色、「異常」は赤色で表示する。
図5(左側)の例では、3つの範囲A1~A3のすべてにおいて器具6の偏り度合いは「正常」と表示している。
【0057】
図5(右側)の例では、器具6が集中して取り付けられている範囲A1において器具6の偏り度合いは「異常」と表示しており、範囲A2,A3においては器具6の偏り度合いは「正常」と表示している。
【0058】
なお、基準範囲の一例としては、「正常」は、たとえば、ワイヤロープ5にかかる荷重が40kg未満、器具6が3つ取り付けられた状態である。また、「注意」は、たとえば、ワイヤロープ5にかかる荷重が40~60kg未満、器具6が5つ取り付けられた状態である。また、「異常」は、たとえば、ワイヤロープ5にかかる荷重が60~90kg未満、器具6が7つ取り付けられた状態である。このような基準範囲は、上記したように、設定部25(
図2参照)によって設定される。
【0059】
また、表示部7は、このような現在バトン2に取り付けられている器具6の偏り度合いの表示と、経年によるワイヤロープ5の劣化度合いの表示とを切り替え可能に構成される。
【0060】
以上説明したように、実施形態に係るバトン昇降システム1は、バトン2と、ワイヤロープ5と、取得部24と、解析部26と、表示部7とを具備する。バトン2は、昇降可能なものである。ワイヤロープ5は、バトン2を吊り下げる。取得部24は、バトン2の情報、バトン2に取り付けられる器具6の情報、バトン2および器具6に関する時間情報を取得する。解析部26は、取得部24によって取得した情報を蓄積し、蓄積した情報を分析し、分析結果からワイヤロープ5の劣化度合いを検知し、検知したワイヤロープ5の劣化度合いに応じて複数段にレベル分けする。表示部7は、解析部26によるワイヤロープ5の劣化度合いのレベル分けの結果に基づいて、ワイヤロープ5の状態について表示する。
【0061】
このような構成によれば、バトン2の情報(たとえば、バトン2の昇降回数、バトン2における器具6の取付位置)、器具6の情報(たとえば、器具6の重さ)、バトン2および器具6に関する時間情報(たとえば、バトン2の昇降時間、器具6がバトン2に取り付けられている時間)からワイヤロープ5の劣化度合いを検知(推測)することができる。また、ワイヤロープ5の劣化度合いに応じてワイヤロープ5の状態について表示することで、ワイヤロープ5の劣化度合いを把握することができる。また、ワイヤロープ5の劣化度合いに応じてワイヤロープ5の状態について表示することで、定期メンテナンスでは、たとえば、ワイヤロープ5が多い場合でも作業時間を短縮することができ、保守作業の負荷を低減することができる。
【0062】
また、実施形態に係るバトン昇降システム1において、ワイヤロープ5は、複数で同一のバトン2を吊り下げており、解析部26は、ワイヤロープ5ごとの劣化度合いを検知し、ワイヤロープ5ごとに、劣化度合いに応じて複数段にレベル分けする。
【0063】
このような構成によれば、ワイヤロープ5が複数の場合でもワイヤロープ5ごとの状態について表示することができ、ワイヤロープ5ごとの劣化度合いを把握することができる。また、定期メンテナンスでは、たとえば、バトン2が多いことに伴いワイヤロープ5が多い場合でも作業時間を短縮することができ、保守作業の負荷を低減することができる。
【0064】
また、実施形態に係るバトン昇降システム1において、バトン2において複数の範囲A1~A3を設定する設定部25を具備し、解析部26は、バトン2の情報および器具6の情報からバトン2における器具6の偏りを検知し、検知した器具6の偏りに応じて範囲A1~A3ごとに複数段にレベル分けし、表示部7は、解析部26による器具6の偏りのレベル分けの結果に基づいて、範囲A1~A3ごとのワイヤロープ5の状態について表示する。
【0065】
このような構成によれば、バトン2の情報(たとえば、バトン2の昇降回数、バトン2における器具6の取付位置)および器具6の情報(たとえば、器具6の重さ)から現在バトン2に取り付けられている器具6の偏りを検知することができる。また、バトン2に設定された範囲A1~A3ごとの器具6の偏りに応じてワイヤロープ5の状態について表示することで、バトン2における器具6の偏りを把握することができる。
【0066】
また、実施形態に係る制御装置8は、取得部24と、解析部26とを具備する。取得部24は、昇降可能なバトン2の情報、バトン2に取り付けられる器具6の情報、バトン2および器具6に関する時間情報を取得する。解析部26は、取得部24によって取得した情報を蓄積し、蓄積した情報を分析し、分析結果からバトン2を吊り下げるワイヤロープ5の劣化度合いを検知し、検知したワイヤロープ5の劣化度合いに応じてワイヤロープ5を複数段にレベル分けする。
【0067】
このような構成によれば、バトン2の情報(たとえば、バトン2の昇降回数、バトン2における器具の取付位置)、器具6の情報(たとえば、器具6の重さ)、バトン2および器具6に関する時間情報(たとえば、バトン2の昇降時間、器具6がバトン2に取り付けられている時間)からワイヤロープ5の劣化度合いを検知(推測)することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 バトン昇降システム
2 バトン
5 ワイヤロープ
6 器具
7 表示部
24 取得部
25 設定部
26 解析部
A1 範囲
A2 範囲
A3 範囲