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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049011
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】光ファイバセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G01N21/41 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155223
(22)【出願日】2022-09-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、チーム型研究(CREST)、「根圏ケミカルの網羅的解析と新規根圏モニター技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条第1項の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】598123138
【氏名又は名称】学校法人 創価大学
(71)【出願人】
【識別番号】515117682
【氏名又は名称】株式会社コアシステムジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 望
(72)【発明者】
【氏名】細木 藍
(72)【発明者】
【氏名】西山 道子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博幸
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059EE04
2G059HH02
2G059JJ17
2G059LL02
(57)【要約】
【課題】曲げを付与することなく、センサ感度の向上を図ることが可能な光ファイバセンサを提供する。
【解決手段】光ファイバセンサ100は、コア11及びコア11の外周に設けられたクラッド12を有する光伝送部10と、光伝送部10の途中に設けられ、光伝送部10を伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部20とを備える。センサ部20は、光伝送部10のコア11よりも小径であって、両端面がそれぞれコア11に連なるコア21と、コア21と離間して設けられ、両端面のそれぞれの少なくとも一部が光伝送部10のコア11の端面と重なる領域22と、コア21の外周に設けられ、領域22を取り囲み、領域22の屈折率よりも屈折率が大きく、両端面がそれぞれ光伝送部10のクラッド12に連なるクラッド23とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及び該コアの外周に設けられたクラッドを有する光伝送部と、
前記光伝送部の途中に設けられ、該光伝送部を伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部とを備え、
前記センサ部は、
前記光伝送部のコアよりも小径であって、両端面がそれぞれ前記光伝送部のコアに連なるコアと、
前記コアと離間して設けられ、両端面のそれぞれの少なくとも一部が前記光伝送部のコアの端面と重なる領域と、
前記コアの外周に設けられ、前記領域を取り囲み、前記領域の屈折率よりも屈折率が大きく、両端面がそれぞれ前記光伝送部のクラッドに連なるクラッドとを有することを特徴とする光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記センサ部は、前記領域を前記センサ部のコアの軸心を中心として対称に複数有していることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記センサ部は応力付与型偏波保持光ファイバであるパンダファイバからなり、前記センサ部の領域は前記パンダファイバのストレスロッドであることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記光伝送部と前記センサ部とは融着により接合されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光ファイバセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)励起のエネルギ供給源となる光エバネッセント波の相互作用を原理として光ファイバをセンサ機能化した光ファイバセンサが知られている。一般に光が全反射する際に生じるエバネッセント波の外界への染み出しは入射角が臨界角度に近いほど深く、外界物質と大きく相互作用する。そのため、センサ感度を向上させるには、入射角を臨界角度に近付ければよい。光ファイバセンサに曲げを付与すれば、入射角を臨界角度に近付けることが可能であることは知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、ヘテロコア光ファイバSPRセンサに曲げを付与することにより、センサ感度を向上させることが開示されている。このヘテロコア光ファイバSPRセンサは、マルチモードファイバ(MMF)の途中に、小さいコア径のシングルモードファイバ(SMF)の小切片を挿入して融着することにより、ヘテロコア部を形成している。
【0004】
MMFのコアを伝搬してきた光の多くはSMFのクラッドに漏洩し、クラッドと外界との境界における光の全反射によってエバネッセント光が生じる。実験例として、ヘテロコア部に曲げを付与すると入射角度分布のピークが約1度減少して臨界角度に近付き、センサ感度が向上したことが記載されている。
【0005】
また、クラッドを除去したアンクラッドファイバに曲げを付与することにより、センサ感度を向上させることも知られている。例えば、非特許文献2にはプラスチッククラッドシリカファイバー(コア径600μm)を用いた例が、非特許文献3には通信用マルチモードファイバ(MMF)(コア径62.5μm)を用いた例が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Takagi, H. Sasaki, A. Seki, and K. Watanabe, Surface plasmon resonances of a curved optical hetero-core fiber sensor, Sens. Actuators A 161 (1-2) (2010) 1-5. https://doi.org/10.1016/j.sna.2010.03.009.
【非特許文献2】B.D. Gupta, H. Dodeja, and A.K. Tomar, Fibre-optic evanescent field absorption sensor based on a U-shaped probe, Opt. Quant. Electron 28 (1996) 1629-1639. https://doi.org/10.1007/BF00331053.
【非特許文献3】J.-C. Hsu, S.-W. Jeng, and Y.-S. Sun, Simulation and experiments for optimizing the sensitivity of curved D-type optical fiber sensor with a wide dynamic range, Opt. Commu. 341 (15) (2015) 210-217. 1664323852523_0.038.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1などに開示されたヘテロコア光ファイバセンサにおいては、センサ感度を高めるために過度な曲げを付与すると、センサが破損するという課題があった。また、非特許文献2,3などに開示されたアンクラッドファイバにおいては、エバネッセント光を取り出すために、機械的研磨や化学的溶解によってクラッド層を除去するため、機械的強度が低く実用的でないという課題があった。
【0008】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、曲げを付与することなく、センサ感度の向上を図ることが可能な光ファイバセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光ファイバセンサは、コア及び該コアの外周に設けられたクラッドを有する光伝送部と、前記光伝送部の途中に設けられ、該光伝送部を伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部とを備え、前記センサ部は、前記光伝送部のコアよりも小径であって、両端面がそれぞれ前記光伝送部のコアに連なるコアと、前記コアと離間して設けられ、両端面のそれぞれの少なくとも一部が前記光伝送部のコアの端面と重なる領域と、前記コアの外周に設けられ、前記領域を取り囲み、前記領域の屈折率よりも屈折率が大きく、両端面がそれぞれ前記光伝送部のクラッドに連なるクラッドとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の光ファイバセンサによれば、入射端側の光伝送部のコアからセンサ部のコアに入らずに漏れ出た光の一部は、領域内に入射される。領域の屈折率よりもセンサ部のクラッドの屈折率が大きいので、スネルの法則により、この光が領域からクラッドに出射する出射角は、領域内に入射したときの入射角よりも小さくなる。そして、この小さな角度でクラッドと外界との境界面に光は入射する。そのため、センサ部に屈折率の小さな上記領域が存在しない上記非特許文献1などに開示されているヘテロコア光ファイバセンサと比較して、境界面への入射角度が臨界角度に近付き、この境界面における全反射によって多くのエバネッセント波が発生し得るので、センサ感度の向上を図ることが可能となる。
【0011】
本発明の光ファイバセンサにおいて、前記センサ部は、前記領域を前記センサ部のコアの軸心を中心として対称に複数有していることが好ましい。
【0012】
この場合、上記領域が複数存在するので、領域が1つである場合と比較して、エバネッセント波が発生する境界面の範囲が増加すると共に、上記領域がコアを中心に対称に位置しているので、エバネッセント波が発生する境界面の範囲も対称となり、より均一かつ多くのエバネッセント波を発生させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の光ファイバセンサにおいて、前記センサ部は応力付与型偏波保持光ファイバであるパンダファイバからなり、前記センサ部の領域は前記パンダファイバのストレスロッドであることが好ましい。
【0014】
この場合、センサ部が市販のパンダファイバからなるものとできるので、簡易に本発明の光ファイバセンサを作製することが可能となる。
【0015】
また、本発明の光ファイバセンサにおいて、前記光伝送部と前記センサ部とは融着により接合されていることが好ましい。
【0016】
この場合、光伝送部とセンサ部とを簡易かつ強固に接合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る光ファイバセンサの模式断面図。
図2図1のII-II線模式断面図。
図3】光ファイバセンサの説明図
図4】実施例における各屈折率の相違によるSPR波長と光損失との関係を示すSPRスペクトルのグラフ。
図5】比較例における各屈折率の相違によるSPR波長と光損失との関係を示すSPRスペクトルのグラフ。
図6】実施例及び比較例における屈折率とSPR共鳴波長との関係を示すグラフ。
図7】実施例及び比較例における単一波長光に対する屈折率と光損失との関係を示すグラフ。
図8】実施例及び比較例における屈折率と光損失との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る光ファイバセンサ100について図面を参照して説明する。なお、図面は、光ファイバセンサ100及びその構成要素などを明確化するためにデフォルメされており、実際の比率を表すものではない。
【0019】
光ファイバセンサ100は、図1及び図2を参照して、光伝送部10と、光伝送部10の途中に設けられ、光伝送部10を伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にするセンサ部20とを備えている。センサ部20の長さは、例えば、数mmから数十mmである。
【0020】
光伝送部10は、コア11及びコア11の外周に設けられたクラッド12を有している。光伝送部10は、例えば、コア11の直径が50μm、クラッド12の直径が125μmの通信用の光ファイバであるマルチモードファイバ(MMF)からなる。
【0021】
センサ部20は、光伝送部10のコア11よりも小径であって、両端面がそれぞれ光伝送部10のコア11に連なるコア21を有している。センサ部20は、コア21と離間して設けられ、両端面のそれぞれの少なくとも一部がコア11の端面と重なる領域22を有している。また、センサ部20は、コア21の外周に設けられ、領域22を取り囲み、両端面が光伝送部10のクラッド12に連なるクラッド23を有している。
【0022】
コア21は、ここでは、断面円形状であり、その直径は光伝送部10のコア11の直径よりも小さい。コア21の直径は、例えば、通信用の光ファイバであるシングルモードファイバ(SMF)のコアと同じ9μmや3μmなどである。クラッド23の外径は、光伝送部10のクラッド11の外径と同じであることが好ましい。コア21の両端面は、それぞれが全体に亘ってコア11の端面と重っている。
【0023】
領域22は、ここでは、2つ存在しているが、少なくとも1つ存在していればよい。ただし、領域22は、2つ以上存在していることが好ましく、この場合、複数の領域22は、コア21の軸心を中心に対称に存在していることが好ましい。ここでは、2つの領域22とコア21との各軸心は一平面上に位置している。
【0024】
領域22は、コア21と平行して延びるように存在しており、その両端面のそれぞれの少なくとも一部がコア11の端面と接している。これにより、コア11を伝送する光の一部がコア21の他に領域22内に入ることになる。領域22の断面は、ここでは、円形状であるが、これに限定されず、矩形状、多角形状、楕円形状などであってもよい。
【0025】
センサ部20は、例えば、応力付与型偏波保持光ファイバであるパンダ(PANDA:Polarization maintaining AND Absorption reducing)ファイバからなる。これにより、センサ部20に市販のパンダファイバを用いることが可能となる。パンダファイバは、コア21を中心に2つの断面円形状のストレスロッドが配置されている光ファイバである。パンダファイバのストレスロッドは、領域22になる。
【0026】
センサ部20は、また、bow-tieファイバなどの他の形式の応力付与型偏波保持光ファイバからなるものであってもよい。bow-tieファイバはコア21と2つの領域22となるストレスロッドが全体としてなす断面形状が蝶ネクタイ(bow-tie)状であり、個々のストレスロッドの断面形状は環状扇状(バームクーヘン状)である。
【0027】
クラッド23の屈折率は、領域22の屈折率と比較して僅かに大きい。すなわち、領域22は、クラッド23を満たす媒体の屈折率よりも僅かに小さい屈折率の媒体で満たされている。なお、領域22は空隙ではない。また、領域22の屈折率はコア21の屈折率と比較して僅かに小さいことが好ましい。
【0028】
光伝送部10とセンサ部20とは融着などにより接合されている。光伝送部10とセンサ部20とを融着により接合することにより、これらを簡易かつ強固に接合することが可能となる。
【0029】
さらに、センサ部20の外周面全体に、金、銀などの金属からなる金属膜30が蒸着などにより形成されている。金属膜30の厚さは、例えば、数nmから数十nmである。
【0030】
さらに、図3を参照して、光ファイバセンサ100の入射端である一方の光伝送部10の入射端には、半導体発光ダイオード(LED)や半導体レーザなどの発光素子を有する光源41が接続されている。光ファイバセンサ100の出射端である他方の光伝送部10の端部には、フォトダイドード(PD)や電荷結合素子(CCD)などの受光素子を有する光パワーメータなどの受光部42が接続されている。さらに、受光部42には、CPUやメモリ等を備えた検出部43が接続されている。なお、受光部42から検出部43に無線で受光信号を送信してもよい。
【0031】
以上のように構成された光ファイバセンサ100において、入射端側の光伝送部10のコア11からセンサ部20のコア21に入らずに漏れ出た光の一部は、領域22内に入射される。そして、この光が領域22に入射したときの入射角をθ1とすると、領域22の屈折率よりもクラッド23の屈折率が大きいので、スネルの法則により領域22からクラッド23に出射する光の出射角θ2は、θ1よりも小さくなる。そして、この角度θ2でクラッド23と外界との境界面に入射する。
【0032】
そのため、センサ部20に領域22が存在しない上記非特許文献1などに開示されているヘテロコア光ファイバセンサと比較して、境界面への入射角度が臨界角度に近付くので、この境界面における全反射によって多くのエバネッセント波が発生し、センサ感度の向上を図ることが可能となる。
【0033】
なお、本発明は、上述したように光ファイバセンサ100に限定されない。例えば、図示しないが、光源41が接続されている光伝送部10の中途部に光カプラを設け、この光カプラで別の光伝送部を分岐させるとともに、他方の光伝送部10の端部に銀蒸着などによって鏡を形成した反射部を設けてもよい。この場合、分岐された光伝送部の端部が出射端となり、この出射端に受光部42を接続すればよい。
【実施例0034】
実施例として、センサ部20がパンダファイバからなる光ファイバセンサ100を作製した。
【0035】
具体的には、光伝送部10として、コア11が直径50μm、クラッド12が直径125μmの市販の通信用の光ファイバであるマルチモードファイバ(MMF)(株式会社フジクラ製のFutureGuide-MM50)を用いた。
【0036】
センサ部20として、コア21が直径3μm程度、クラッド23が直径125μm、ストレスロッド(領域)22が直径34μmの市販のパンダファイバ(ソーラボジャパン株式会社から購入したPM-S405-XP)を用いた。ストレスロッド22は、2つ存在し、それぞれの中心がコア21の中心を挟んで27.5μmだけ離れて対称に位置している。センサ部20の長さは15mmであった。光伝送部10とセンサ部20とは融着により接合した。
【0037】
さらに、センサ部20の外周面全体に、金からなり、厚さ30nmの金属膜30を蒸着により形成した。
【0038】
一方、比較例として、センサ部20が、コアが直径3μm、クラッドが直径125μmの市販のシングルモードファイバ(SMF)(Newport(米国)社製のF-SA)からなることだけが実施例と相違する光ファイバセンサ100を作製した。
【0039】
センサ部20を構成する光ファイバのモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)は、実施例は波長488nmにて2.8~4.1μmであり、比較例は波長405nmにて3.3±0.5μm、波長630nmにて4.6±0.5μmであった。センサ部20を構成する光ファイバの開口数(NA)は、実施例は0.10~0.14、比較例は0.12であった。
【0040】
センサ部20を構成する光ファイバのクラッド23の屈折率は、実施例は波長488nmにて1.46302、波長514nmにて1.46159であり、比較例は波長405nmにて1.4658である。そして、センサ部20を構成する光ファイバの動作波長は、実施例は488~633nmであり、比較例は400~680nmである。
【0041】
実施例及び比較例の光ファイバセンサ100を用いて、屈折率が1.33RIU~1.39RIUの範囲で相違する複数のグリセリン水溶液に、一直線状に固定した状態のセンサ部20を浸漬させた状態で、それぞれSPRスペクトルを計測した。なお、光源41として、オーシャンフォトニクス株式会社製の白色光源HL-2000-LLを用いた。受光部42及び検出部43として、ソーラボジャパン株式会社製の光ファイバ分光器CCS200を用いた。
【0042】
各屈折率におけるSPR波長と光損失との関係を示すSPRスペクトルのグラフを、それぞれ、図4図5に示す。SPRスペクトルのピークから各屈折率におけるSPR共鳴波長λresが求まる。なお、実施例においては、各屈折率においてSPRスペクトルのピークが比較例ほど明確に表れていない。これは、実施例においては、光伝送路10のコア11から漏れ出た光は、センサ部20の領域22を介して外界への境界面に入射するものと、領域22を介さずに外界への境界面に入射するものとが存在するからであると推察される。
【0043】
実施例及び比較例における屈折率とSPR共鳴波長λresとの関係を示すグラフを図6に示す。実施例においては、屈折率1.332RIUにおけるセンサ感度に対応する屈折率分解能は3.97×10-4nm/RIU、屈折率1.396RIUにおける屈折率分解能は8.53×10-5nm/RIUであった。なお、波長分解能は0.5nmである。屈折率分解能はセンサ感度に対応する。一方、比較例においては、屈折率1.332RIUにおける屈折率分解能は5.69×10-4nm/RIU、屈折率1.396 RIUにおける屈折率分解能は1.37×10-4nm/RIUであった。これらから、実施例の光ファイバセンサ100は、比較例と比べてセンサ感度が高いことがわかった。
【0044】
実施例及び比較例における単一波長光に対する屈折率と光損失との関係を示すグラフを図7に示す。ここでは、単一波長光の波長は近赤外光領域の850nmであった。なお、単一波長光であれば、光源41として安価なLEDを、受光部42及び検出部43として簡素な計測機器を使用することが可能となるなどの利点が生じる。なお、光損失は、厚さ30nmの金からなる金属膜30で空気を取り囲んだ状態における理論値を基準(1.0)とした正規値を示している。図7から、実施例の光ファイバセンサ100は、比較例と比べてセンサ感度が約1.5倍と高いことが分かる。これは、実施例は、単一波長においてもセンサ感度が高いことを示している。
【0045】
このように実施例においては従来例よりもセンサ感度が高いが、これは上記非特許文献1などの開示を参照して、センサ部20と外界との境界面における光の入射角が臨界角度に近付くからであると考えられる。そこで、これを検証するために、金薄膜などをコートしていない実施例と比較例において、濃度が約60~90%のグリセリン水溶液に対する、センサ部20の外界との境界面における屈折率と伝搬光損失(波長450~800nmにおける平均値)との関係を求めた。その結果を図8に示す。
【0046】
実施例の入射角分布のピーク角度は約83°であり、従来例の入射角分布のピーク角度の約84°と比較して、約1°臨界角度に近付いていることが分かった。これより、上記の仮説が成立することが立証された。
【符号の説明】
【0047】
10…光伝送部、 11…コア、 12…クラッド、 20…センサ部、 21…コア、 22…領域、ストレスロッド、 23…クラッド、 30…金属膜、 41…光源、 42…受光部、 43…検出部、 100…光ファイバセンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8