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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049018
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】固定部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/44 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B65D19/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155236
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】金子 倫明
(72)【発明者】
【氏名】塚田 茂
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063AA11
3E063AA40
3E063BA05
3E063BA08
3E063DA05
3E063EE01
3E063FF06
3E063GG03
3E063GG10
(57)【要約】
【課題】塑性変形が生じた場合であっても、取り外しに係る作業性の低下を抑制した固定部材を提供する。
【解決手段】固定部材は、キャスタを有する機器の下面を基台の上面に固定する固定部材であって、機器の下面に設けられた貫通孔から挿入され、機器の下面の上側に沿って延び、機器の下面に係合する係合部と、係合部に対向して基台の上面の上側に沿って延び、基台の上面に取り付けられる取付部と、係合部から離れる方向に屈曲する屈曲部を有し、一端が係合部に取り付けられ、他端が取付部に取り付けられて、貫通孔を通って係合部および取付部を接続する接続部と、機器の下面の下側に接触して荷重を受ける荷重受け部と、を備え、係合部が延びる方向において、接続部の一端が、接続部の他端よりも後ろに位置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタを有する機器の下面を基台の上面に固定する固定部材であって、
前記機器の下面に設けられた貫通孔から挿入され、前記機器の下面の上側に沿って延び、当該機器の下面に係合する係合部と、
前記係合部に対向して前記基台の上面の上側に沿って延び、当該基台の上面に取り付けられる取付部と、
前記係合部から離れる方向に屈曲する屈曲部を有し、一端が当該係合部に取り付けられ、他端が前記取付部に取り付けられて、前記貫通孔を通って当該係合部および当該取付部を接続する接続部と、
前記機器の下面の下側に接触して荷重を受ける荷重受け部と、を備え、
前記係合部が延びる方向において、前記接続部の前記一端が、前記接続部の前記他端よりも後ろに位置する固定部材。
【請求項2】
前記接続部は、前記荷重受け部が予め定められた荷重を受けた場合に、前記係合部と前記接続部の前記他端とを近付ける方向に塑性変形することを特徴とする、請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
前記接続部は、前記荷重受け部が予め定められた荷重を受けた場合に、前記係合部における前記接続部の前記一端とは反対の端部と前記接続部の前記他端との間の距離が、前記機器の前記下面と前記基台の前記上面との間の距離よりも小さくなるように、塑性変形することを特徴とする、請求項2に記載の固定部材。
【請求項4】
前記屈曲部は、前記塑性変形により、前記係合部からさらに離れるように屈曲を大きくすることを特徴とする、請求項2に記載の固定部材。
【請求項5】
前記接続部の前記一端は、前記係合部が延びる方向において、前記係合部における前記接続部の前記一端とは反対の端部よりも後ろに位置することを特徴とする、請求項1に記載の固定部材。
【請求項6】
前記荷重受け部は、前記接続部に対し、前記係合部とは反対側に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の固定部材。
【請求項7】
前記荷重受け部は、前記係合部が延びる方向において、前記接続部の前記他端よりも後ろに位置することを特徴とする、請求項6に記載の固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャスタ付の機器を弾性支持および固定するパレットの支持構造であって、パレットの上面のデッキボードに形成される凹溝部に着脱自在に収納されキャスタを支持する弾性部材と、機器の下面とデッキボード間に挿脱可能に開設され、両者にボルト締め又はナット締めのみにより固定される固定部材とを備え、弾性部材はその上面をデッキボードの上面とほぼ面一に形成されることを特徴とする、機器搭載用パレットの支持構造について記載されている。
特許文献2には、パレット装置における固定部材として、パレット基台にねじ部材で固定され、断面コ字状で、ねじ部材が通過できる複数のスリットを形成し、これらスリットとねじ部材を利用し、製品の底面の位置を変え、固定部材を製品の下側へ入れたり、取り出したりが簡単にできるような固定部材について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-095429号公報
【特許文献2】特開2012-062112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば画像形成装置等の下面にキャスタを有する機器を、パレット等の基台に載せて搬送する場合、固定部材を用いて機器の下面と基台の上面との間を固定した状態で搬送する。
ところで、係合部を機器の下面に設けられた貫通孔から挿入して係合させる(「係合式」と呼ぶ場合がある。)ことで、機器への取り付けが可能な固定部材がある。係合式を用いると、ボルトやナット等のねじ部材を用いて取り付ける(「ねじ式」と呼ぶ場合がある。)固定部材に比べ、機器への固定部材の取り付けが容易になる。このような係合式を採用した場合、固定部材の高さ寸法は機器の下面と基台の上面との間の距離よりも大きくなる。したがって、取り付けおよび取り外しの際には、固定部材を傾けながら行うこととなる。
ここで、機器および基台に固定部材を取り付けた状態で、強い揺れや衝撃等の外力が加わると、固定部材に塑性変形が生じる場合がある。そして、塑性変形が生じると固定部材の寸法が変化するため、取り外しに係る作業性が低下する恐れがある。
本発明は、塑性変形が生じた場合であっても、取り外しに係る作業性の低下を抑制した固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、キャスタを有する機器の下面を基台の上面に固定する固定部材であって、前記機器の下面に設けられた貫通孔から挿入され、前記機器の下面の上側に沿って延び、当該機器の下面に係合する係合部と、前記係合部に対向して前記基台の上面の上側に沿って延び、当該基台の上面に取り付けられる取付部と、前記係合部から離れる方向に屈曲する屈曲部を有し、一端が当該係合部に取り付けられ、他端が前記取付部に取り付けられて、前記貫通孔を通って当該係合部および当該取付部を接続する接続部と、前記機器の下面の下側に接触して荷重を受ける荷重受け部と、を備え、前記係合部が延びる方向において、前記接続部の前記一端が、前記接続部の前記他端よりも後ろに位置する固定部材である。
請求項2に記載の発明は、前記接続部は、前記荷重受け部が予め定められた荷重を受けた場合に、前記係合部と前記接続部の前記他端とを近付ける方向に塑性変形することを特徴とする、請求項1に記載の固定部材である。
請求項3に記載の発明は、前記接続部は、前記荷重受け部が予め定められた荷重を受けた場合に、前記係合部における前記接続部の前記一端とは反対の端部と前記接続部の前記他端との間の距離が、前記機器の前記下面と前記基台の前記上面との間の距離よりも小さくなるように、塑性変形することを特徴とする、請求項2に記載の固定部材である。
請求項4に記載の発明は、前記屈曲部は、前記塑性変形により、前記係合部からさらに離れるように屈曲を大きくすることを特徴とする、請求項2に記載の固定部材である。
請求項5に記載の発明は、前記接続部の前記一端は、前記係合部が延びる方向において、前記係合部における前記接続部の前記一端とは反対の端部よりも後ろに位置することを特徴とする、請求項1に記載の固定部材である。
請求項6に記載の発明は、前記荷重受け部は、前記接続部に対し、前記係合部とは反対側に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の固定部材である。
請求項7に記載の発明は、前記荷重受け部は、前記係合部が延びる方向において、前記接続部の前記他端よりも後ろに位置することを特徴とする、請求項6に記載の固定部材である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、塑性変形が生じた場合であっても、取り外しに係る作業性の低下を抑制した固定部材を提供する。
請求項2に記載の発明によれば、異なる方向に塑性変形する場合と比較して、固定部材の取り外しが容易になる。
請求項3に記載の発明によれば、端部と他端との間の距離が、下面と上面の間の距離よりも大きい場合と比較して、固定部材の取り外しが容易になる。
請求項4に記載の発明によれば、固定部材の変形量を大きくして緩衝性を高めることができる。
請求項5に記載の発明によれば、固定部材の変形量を大きくして緩衝性を高めることができる。
請求項6に記載の発明によれば、荷重受け部が荷重を受けた際に、安定して塑性変形する。
請求項7に記載の発明によれば、荷重受け部が接続部の他端よりも前に位置する場合と比較して、塑性変形が生じた後の固定部材の取り外しが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】固定部材により、画像形成装置をパレットに固定した様子を示す図である。
図2】本発明の実施の形態が適用される固定部材について説明する図であり、図2(a)は固定部材の斜視図、図2(b)は図2(a)のIIA-IIA面における断面図である。
図3】固定部材の取り付けの手順について説明する図であり、図3(a)は固定部材を画像形成装置の下面とパレットの上面との間に挿入する様子、図3(b)は貫通孔から係合部を挿入する様子、図3(c)は係合部を係合させる様子を示す図である。
図4】本発明の実施の形態が適用される固定部材に生じる塑性変形について説明する図である。
図5】本発明の実施の形態が適用されない比較例の固定部材に生じる塑性変形について説明する図であり、図5(a)は第1比較例の固定部材、図5(b)は第2比較例の固定部材である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<固定部材による機器の固定>
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態(「本実施の形態」と呼ぶ場合がある。)について説明する。
まず初めに、固定部材による機器の固定について説明する。以下では、キャスタを有する機器の一例である画像形成装置が、基台の一例であるパレットに固定される場合を例にして説明する。
図1は、固定部材1により、画像形成装置8をパレット9に固定した様子を示す図である。なお、以下では、画像形成装置8に対しパレット9が位置する側を下、パレット9に対し画像形成装置8が位置する側を上とする。
【0009】
画像形成装置8は、画像形成部等の各種機能部から構成される本体80と、本体80を移動可能に支持するキャスタ81とを備えている。
キャスタ81は、本体80の下面801に取り付けられ、車輪により本体80の前後左右斜め方向への移動を可能としている。
下面801は、本体80におけるいわゆるハウジングであり、本体80の外観において下端となる。下面801は、例えばプラスチック等の弾性材料により構成される。
【0010】
パレット9は、運搬等を行う際に画像形成装置8を載せるためのブロックであり、例えば木材やプラスチック等の弾性材料により構成される。
パレット9の側面(符号なし)には、フォークリフトの爪を差し込むための溝(いわゆるフォークポケット)が設けられており、フォークリフトによってパレット9と画像形成装置8とを持ち上げて、運搬できるようになっている。
【0011】
なお、画像形成装置8の下面801およびパレット9の上面90を、互いに対向する平面として説明するが、下面801および上面90は曲面であってもよく、溝や突起、孔等が形成された凹凸形状を有していても構わない。
【0012】
先述したように、画像形成装置8はキャスタ81を有しているため、少なくとも運搬を行う際には、パレット9上で画像形成装置8が移動しないように固定する必要がある。
図示するように、固定部材1は、画像形成装置8の下面801とパレット9の上面90とを繋ぎ留め、パレット9上で画像形成装置8が移動しないように固定する。
図1の例では、画像形成装置8に対し前後方向および左右方向に取り付けられた、4つの固定部材1により固定が行われている。ただし、このうち2つは、画像形成装置8に隠れて見えないため、図示していない。
【0013】
<固定部材1>
次に、本実施の形態が適用される固定部材1について、詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態が適用される固定部材1について説明する図であり、図2(a)は固定部材1の斜視図、図2(b)は図2(a)のIIA-IIA面における断面図である。なお、図2(b)では説明のため、固定部材1が画像形成装置8の下面801およびパレット9の上面90に取り付けられた状態(以下、「取付状態」と呼ぶ場合がある。)を示している。
図2(a)における右上側が+x方向、左上側が+y方向、上側が+z方向であり、対応して、図2(b)における右側が+x方向、紙面の裏面側(奥側)が+y方向、上側が+z方向である。
【0014】
図2(a),(b)に示すように、本実施の形態が適用される固定部材1は、取付部11と、接続部12と、係合部13と、荷重受け部14(14a,14b)と、側方支持部15(15a,15b)とを備える。
本実施の形態が適用される固定部材1では、隣接する各部分は連続した板材により構成されている。
固定部材1を構成する板材としては、例えば、金属板等を用いることができる。
【0015】
取付部11は、固定部材1をパレット9に取り付けるための部分であり、図2(b)に示すように、取付状態において、パレット9の上面90の上側に沿って延びている。
本実施の形態に係る取付部11は、図2(a)に示すように、板状に構成され、ねじ孔11Aを有している。そして、このねじ孔11Aを通るねじ部材(不図示)により、上面90に取り付けられる。
なお、図2(a)では、取付部11が六角形状の例を示しているが、形状は限定されない。
【0016】
接続部12は、取付部11および係合部13を接続する部分である。より詳しくは、図2(b)に示すように、取付状態において、画像形成装置8の下面801に設けられた貫通孔801Aを通って取付部11および係合部13を接続する。
言い換えると、接続部12は、一端(図2(a),(b)における+z方向の端)が係合部13と連続し、他端(図2(a),(b)における-z方向の端)が取付部11と連続している。なお、接続部12の一端であって係合部13に連続する端部を、端部125とする。また、接続部12の他端であって取付部11に連続する端部を、端部124とする。
【0017】
本実施の形態に係る接続部12は、屈曲部123にて係合部13から離れる方向(図2(b)における+x方向)に屈曲した板材であり、屈曲部123よりも下側(つまり、取付部11に近い側)の下部121と、上側(つまり、係合部13に近い側)の上部122を有する。
下部121は、屈曲部123から-x方向かつ-z方向である斜め方向に向かって延びている。
上部122は、屈曲部123から-x方向かつ+z方向である斜め方向に向かって延びている。
【0018】
なお、本実施の形態の形態において、屈曲部123は、係合部13よりも取付部11に近い位置に設けられる。つまり、取付部11および係合部13が対向する方向(図2(b)におけるz方向)において、接続部12の半分よりも下側(-z方向側)に、屈曲部123が設けられる。
【0019】
係合部13は、固定部材1を画像形成装置8の下面801に係合するための部分であり、図2(b)に示すように、取付状態において、下面801の上側に沿って、取付部11と対向するように延びている。図2(b)の例では、取付部11および係合部13は、-x方向に向かって対向するように延びている。なお、係合部13の-x方向における端部(先端)を、先端131とする。言い換えると、先端131は、係合部13における端部125とは反対側の端部である。
本実施の形態に係る係合部13は、図2(a)に示すように、接続部12の上端122Aから折り曲げられた板状に構成されている。詳細は図3(c)を用いて後述するが、係合部13は、下面801に設けられた貫通孔801Aを通って下面801の上側に位置し、下面801に対して係合する。
【0020】
なお、画像形成装置8の下面801における貫通孔801Aのy方向の幅は、係合部13および接続部12において貫通孔801Aを通る部分のy方向の幅よりも大きくなっている。
【0021】
荷重受け部14は、接続部12に対し、係合部13とは反対側(+x方向)に設けられ、画像形成装置8の荷重を受ける部分である。より詳しくは、図2(b)に示すように、取付状態において、下面801に接触し、画像形成装置8の荷重を受ける。
図2(a),(b)に示すように、本実施の形態に係る荷重受け部14は、曲面により構成されている。言い換えると、取付状態において、荷重受け部14として画像形成装置8の下面801に接触する部分は、曲率を有している。
【0022】
なお、画像形成装置8の下面801における貫通孔801Aのy方向の幅は、2つの荷重受け部14a,14bの間の距離よりも小さくなっている。これにより、荷重受け部14a,14bと、下面801における貫通孔801Aが形成されていない部分と、が接触し、荷重を受けられるようになっている。
【0023】
荷重受け部14は、接続部12の上端122Aから連続して延びる板材が、屈曲部123に向かってヘミング曲げで曲げられることによって構成された曲面である。
【0024】
側方支持部15は、接続部12の側方に延びる部分であって、固定部材1の荷重による変形量が大きくなった(図3(c)を用いて後述する。)際に、画像形成装置8の荷重を支持する。これにより、固定部材1の変形量が予め定められた量よりも大きくなることを抑制する。
本実施の形態に係る側方支持部15は、接続部12の上部122から連続する板材の折り曲げにより形成され、-x方向へ向かって延びる部分である。
【0025】
図2(b)に示すように、本実施の形態が適用される固定部材1では、係合部13が延びる方向(図2(a),(b)における-x方向)において、接続部12の端部125が、端部124よりも後ろに位置している。
また、係合部13が延びる方向(図2(a),(b)における-x方向)において、接続部12の端部125は、係合部13の先端131よりも後ろに位置している。
つまり、-x方向側から、先端131、端部124、端部125がこの順で位置している。
【0026】
<固定部材1の取り付け>
次に、固定部材1を取り付ける手順について説明する。
図3は、固定部材1の取り付けの手順について説明する図であり、図3(a)は固定部材1を画像形成装置8の下面801とパレット9の上面90との間に挿入する様子、図3(b)は貫通孔801Aから係合部13を挿入する様子、図3(c)は係合部13を係合させる様子を示す図である。なお、何れも、図2(b)と同様のIIA-IIA断面に対応する断面図である。
【0027】
まず、図3(a)に示すように、固定部材1が接続部12の端部124を中心に(図3(a)の例では時計回りに)傾けられる。なお、固定部材1では、高さ(図2におけるz方向の寸法)が、下面801と上面90との間の距離よりも大きくなるので、このように傾けることが必要になる。
そして、白抜きの矢印で示すように、固定部材1が下面801と上面90との間の空間に差し込まれる。
【0028】
次に、図3(b)に示すように、固定部材1の係合部13の先端131を、下面801の貫通孔801Aに通す。
そして、白抜きの矢印で示すように、固定部材1を、端部124を中心にして図3(a)とは逆に(図3(b)における反時計回りに)傾け、角度を調整する。
これにより、係合部13が貫通孔801Aを通り抜ける。また、接続部12の上端が貫通孔801Aに通った状態となる。
【0029】
固定部材1の角度の調整は、図3(c)に示すように、取付部11と上面90とが略平行になるまで行う。
そして、白抜きの矢印で示すように、接続部12が貫通孔801Aの縁(図3(c)における左端)に突き当たるまで、固定部材1の位置を調整する。これにより、係合部13が下面801に係合する。
以上、図3(a)~(c)に示す手順が完了した後、ねじ部材(不図示)をねじ孔11Aに通して締めることで、固定部材1の取り付けが完了し、取付状態となる。
【0030】
図3(c)に示すように、固定部材1の取付状態において、荷重受け部14は下面801の下側に接触している。画像形成装置8およびパレット9が静止した状態で、外力がかかっていない場合、画像形成装置8の荷重は、キャスタ81(図1参照。)によって支持されており、荷重受け部14にかかる荷重はそれよりも小さく、例えば略ゼロである。
【0031】
取付状態において、例えば画像形成装置8およびパレット9を運搬する場合等、画像形成装置8およびパレット9に揺れや衝撃等の外力が加わることがある。
外力が加わると、画像形成装置8の下面801およびパレット9の上面90が弾性変形を起こし、下面801から上面90に向かう力(下面801と上面90とを近付けようとする力)がはたらく。この力は、荷重受け部14によって支持されることとなる。
【0032】
画像形成装置8およびパレット9に外力が加わった際、荷重受け部14で支持する荷重が大きくなると、固定部材1は変形し始めるが、荷重受け部14で支持する荷重が大き過ぎ、予め定められた荷重を超える(いわゆる降伏点を超える)場合には、固定部材1に塑性変形が生じる。
この塑性変形に伴い、外力に由来するエネルギーの少なくとも一部が消費される。つまり、本実施の形態が適用される固定部材1は、画像形成装置8およびパレット9にかかる力を和らげる(緩衝する)緩衝材としても機能する。
【0033】
<固定部材の塑性変形>
ここで、図4,5を用いて、固定部材の塑性変形について詳細に説明する。
図4は、本発明の実施の形態が適用される固定部材1に生じる塑性変形について説明する図であり、図2(b)と同様のIIA-IIA断面に対応する断面図である。便宜上、固定部材1を簡略化して示しており、荷重受け部14(図2参照)等の一部構成を省略している。
図4において、実線で示す符号1aは取付状態かつ塑性変形が生じる前の固定部材1、破線で示す符号1bは取付状態かつ塑性変形が生じた後の固定部材1、一点鎖線で示す符号1cは取り外しのために傾けられた塑性変形が生じた後の固定部材1、にそれぞれ対応する。
【0034】
図5は、本発明の実施の形態が適用されない比較例の固定部材2,3に生じる塑性変形について説明する図であり、図5(a)は第1比較例の固定部材2、図5(b)は第2比較例の固定部材3である。なお、図5(a),(b)は何れも、図4と同様の断面図である。
以下、本実施の形態が適用される固定部材1および第1比較例の固定部材2、固定部材1および第2比較例の固定部材3で対応する構成については、同じ名称を付して詳細な説明を省略する場合がある。
図5(a),(b)において、実線で示す符号2aおよび符号3aは取付状態かつ塑性変形が生じる前の固定部材2および固定部材3、破線で示す符号2b/2b′および符号3bは取付状態かつ塑性変形が生じた後の固定部材2および固定部材3、一点鎖線で示す符号2cおよび符号3cは取り外しのために傾けられた塑性変形が生じた後の固定部材2および固定部材3にそれぞれ対応する。
【0035】
図5(a)に示すように、第1比較例の固定部材2は、パレット9の上面90に取り付けられる取付部21と、画像形成装置8の下面801に係合する係合部23と、取付部21および係合部23を接続する接続部22とを有している。より詳しくは、接続部22の一方の端部(図5(a)における+z方向の端部)225が係合部23と連続し、他方の端部(図5(a)における-z方向の端部)224が取付部21と連続している。
第1比較例の固定部材2では、接続部22に屈曲部が設けられておらず、接続部22が下面801および上面90に直交する平面として延びている。したがって、係合部23が延びる方向(図5(a)における-x方向)において、端部225と端部224とが同じ位置となっている。
【0036】
図5(b)に示すように、第2比較例の固定部材3は、パレット9の上面90に取り付けられる取付部31と、画像形成装置8の下面801に係合する係合部33と、取付部31および係合部33を接続する接続部32とを有している。より詳しくは、接続部32の一方の端部(図5(b)における+z方向の端部)325が係合部33と連続し、他方の端部(図5(b)における-z方向の端部)324が取付部31と連続している。そして、接続部32には、屈曲部323が設けられている。
第2比較例の固定部材3では、係合部33が延びる方向(図5(b)における-x方向)において、端部325が端部324よりも前に位置している。
【0037】
図4に示すように、本実施の形態において、取付状態かつ塑性変形が生じる前の固定部材1aでは、係合部13が画像形成装置8の下面801の上側に位置し、かつ、取付部11がパレット9の上面90に取り付けられている。つまり、固定部材1の高さ寸法(図4におけるz方向の寸法)は、下面801と上面90との間の距離よりも大きくなっている。
また、図5(a),(b)に示すように、第1比較例および第2比較例の固定部材2a,3aにおいても、高さ寸法(図5(a),(b)におけるz方向の寸法)は、下面801と上面90との間の距離よりも大きくなっている。
【0038】
図4に示すように、画像形成装置8およびパレット9に外力がかかると、下面801と上面90との間の距離を小さくする方向の力がかかる。例えば、外力によって下面801が下向きに撓むように変形し、下面801と上面90との間の距離が小さくなる。このとき、白抜きの矢印で示す荷重が固定部材1aの荷重受け部14(図3(c)参照)によって支持される。
そして、荷重受け部14が支持する荷重が大きくなりすぎる(降伏点を超える)と、固定部材1aに塑性変形が生じる。この塑性変形は、固定部材1bとして示すように、荷重のかかる方向に対応して、固定部材1の高さ寸法を小さくする。
なお、下面801が撓むことによって、塑性変形が生じた後の固定部材1bにおいても、係合部13は下面801に係合した状態を維持しているが、図4では撓んだ状態の下面801を省略している。
【0039】
図5(a),(b)に示すように、第1比較例および第2比較例の固定部材2a,3aにおいても、支持する荷重が大きくなりすぎる(降伏点を超える)と、塑性変形が生じ、固定部材2b/2b′,3bとして示すように、高さ寸法が小さくなる。
なお、下面801が撓むことによって、塑性変形が生じた後の固定部材2b/2b′,3bにおいても、係合部23,33は下面801に係合した状態を維持しているが、図5(a),(b)では撓んだ状態の下面801を省略している。
【0040】
ここで、本実施の形態が適用される固定部材1では、塑性変形が生じる場合、接続部12における変形が屈曲部123にガイドされる。より詳しくは、荷重を受けた際に屈曲部123に応力集中し、屈曲部123の部分での変形が他の部分よりも起こり易くなっている。
図5(a)に示すように、第1比較例の固定部材2では、接続部22に屈曲部を有しないため、塑性変形の生じ方が安定しない。例えば、固定部材2bのように接続部22が-x方向に凸となる塑性変形を生じる場合もあれば、固定部材2b′のように接続部22が+x方向に凸となる塑性変形を生じる場合もある。つまり、塑性変形の後の固定部材2b/2b′の形状が安定せず、意図しない形状となった結果、取り外しに係る作業性が低下する恐れがある。
これに対し、本実施の形態の固定部材1では、塑性変形が屈曲部123によりガイドされるため、屈曲部123を有しない場合と比較して、塑性変形の生じ方が安定する。つまり、塑性変形の後の固定部材1bの形状が安定するため、取り外しに係る作業性の低下が抑制される。
【0041】
なお、図4に固定部材1bとして示すように、屈曲部123は塑性変形によって係合部13から離れるように屈曲を大きくする。これにより、本実施の形態の固定部材1では、屈曲部123を有しない場合と比較して、塑性変形による変形量が大きくなる。
【0042】
ここで、図4に示すように、塑性変形が生じる前の固定部材1aでは、係合部13が延びる方向(図4における-x方向)において、接続部12の端部125が端部124よりも後ろに位置している。これに対し、図5(a)に示す固定部材2aでは接続部22の端部225と端部224とが同じ位置であり、図5(b)に示す固定部材3aでは接続部32の端部325が端部324よりも前に位置している。このため、固定部材1aにおける係合部13の先端131と端部124との間の距離は、固定部材2a,2bにおける係合部23,33の先端231,331と端部224,324との間の距離よりも小さくなる。
【0043】
本発明の実施の形態、第1比較例、第2比較例で塑性変形が生じた後の固定部材1,2,3の高さ寸法が等しくなる場合において、固定部材1b,1cにおける先端131と端部124との間の距離をL1(図4参照)、固定部材2b,2cにおける先端231と端部224との間の距離をL2(図5(a)参照)、固定部材3b,3cにおける先端331と端部324との間の距離をL3(図5(b)参照)とする。このとき、塑性変形が生じる前の大小関係と同様に、距離L1は距離L2,L3よりも小さくなる(L1<L2,L3)。
【0044】
(塑性変形を生じた後の取り外し)
図4に固定部材1cとして示すように、塑性変形が生じた後の固定部材1bを取り外す際には、曲げ矢印401の向き(時計回り)に傾け、係合部13の係合を外す。そして、傾けた状態の固定部材1cを+x方向/-x方向に引き出すことで、取り外しが行われる。また、図5(a),(b)に示すように、塑性変形が生じた後の固定部材2b,3bについても、同様の方法で取り外しが行われる。
先述したように、距離L1が距離L2,L3よりも小さくなるため、固定部材1cは固定部材2c,3cに比べ、下面801および上面90に干渉し難く、取り外しに係る作業性の低下が抑制される。
【0045】
また、本実施の形態では、固定部材1aが予め定められた荷重を受けて塑性変形した場合、固定部材1b,1cの先端131と端部124との間の距離L1が、下面801および上面90の間の距離よりも小さくなる。したがって、図4に示すように、傾けた状態の固定部材1cにおいて、先端131や端部124が下面801および上面90に干渉しない。したがって、本実施の形態の固定部材1では、固定部材2,3に比べ、取り外しに係る作業性の低下がさらに抑制される。
【0046】
また、本実施の形態では、図2を用いて先述したように、係合部13が延びる方向(図2(a),(b)における-x方向)において、接続部12の端部125が係合部13の先端131よりも後ろに位置している。これにより、この構成を有しない場合と比較して、荷重を受けた際に屈曲部123に応力集中し易くなり、固定部材1の変形量を大きくして緩衝性を高めることができる。
【0047】
さらにまた、本実施の形態では、係合部13が延びる方向(図2(a),(b)における-x方向)において、荷重受け部14は、接続部12の端部124よりも後ろに位置している(図2(a),(b)参照)。これにより、この構成を有しない場合と比較して、荷重を受けた際に屈曲部123に応力集中し易くなり、固定部材1の変形量を大きくして緩衝性を高めることができる。
【0048】
以上記載した本発明の実施の形態が適用される固定部材1は、キャスタ81を有する画像形成装置8の下面801をパレット9の上面90に固定する固定部材であって、下面801に設けられた貫通孔801Aから挿入され、下面801の上側に沿って延び、下面801に係合する係合部13と、係合部13に対向して上面90の上側に沿って延び、上面90に取り付けられる取付部11と、係合部13から離れる方向に屈曲する屈曲部123を有し、端部125が係合部13に取り付けられ、端部124が取付部11に取り付けられて、貫通孔801Aを通って係合部13および取付部11を接続する接続部12と、下面801の下側に接触して荷重を受ける荷重受け部14と、を備え、係合部13が延びる方向において、接続部12の端部125が端部124よりも後ろに位置する固定部材として理解される。
【0049】
<変形例等>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施の形態に記載の範囲に限定されない。上記した実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0050】
上記した実施の形態では、屈曲部123が接続部12の半分よりも下側(-z方向側)に設けられることとしたが、限定されない。屈曲部123を接続部12の半分よりも上側(+z方向)に設けても良い。つまり、屈曲部123が係合部13よりも取付部11に近い位置に設けられることとしても構わない。
ただし、上記した実施の形態のように、屈曲部123を接続部12の半分よりも下側に設けることで、例えば図3(a)の手順における固定部材1の傾けが行い易くなり、固定部材1の取り付けが容易になる。
【0051】
荷重受け部14は、固定部材1にかかる荷重を支持するものであれば良く、形状や個数、位置、形成する方法等は限定されない。例えば、荷重受け部14を曲面により構成したが平面としても良い。また、接続部12の上部122の+x方向側の面に突出部を設け、この突出部を荷重受け部14としても良い。さらに、ヘミング曲げとは異なる加工方法によって、曲面の荷重受け部14を形成しても良く、荷重受け部14を、接続部12に対し、係合部13と同じ側に設けても良い。
【0052】
上記した実施の形態では、固定部材1に側方支持部15を設けることとしたが、側方支持部15を設けなくとも良い。ただし、側方支持部15を設けた場合、変形量が大きくなると側方支持部15によっても荷重が支持されるため、変形量がそれ以上大きくなり難くなる。つまり、変形量が予め定められた量を超えることが抑制される。
【0053】
<付記>
(((1)))に記載の発明は、キャスタを有する機器の下面を基台の上面に固定する固定部材であって、前記機器の下面に設けられた貫通孔から挿入され、前記機器の下面の上側に沿って延び、当該機器の下面に係合する係合部と、前記係合部に対向して前記基台の上面の上側に沿って延び、当該基台の上面に取り付けられる取付部と、前記係合部から離れる方向に屈曲する屈曲部を有し、一端が当該係合部に取り付けられ、他端が前記取付部に取り付けられて、前記貫通孔を通って当該係合部および当該取付部を接続する接続部と、前記機器の下面の下側に接触して荷重を受ける荷重受け部と、を備え、前記係合部が延びる方向において、前記接続部の前記一端が、前記接続部の前記他端よりも後ろに位置する固定部材である。
(((2)))に記載の発明は、前記接続部は、前記荷重受け部が予め定められた荷重を受けた場合に、前記係合部と前記接続部の前記他端とを近付ける方向に塑性変形することを特徴とする、(((1)))に記載の固定部材である。
(((3)))に記載の発明は、前記接続部は、前記荷重受け部が予め定められた荷重を受けた場合に、前記係合部における前記接続部の前記一端とは反対の端部と前記接続部の前記他端との間の距離が、前記機器の前記下面と前記基台の前記上面との間の距離よりも小さくなるように、塑性変形することを特徴とする、(((2)))に記載の固定部材である。
(((4)))に記載の発明は、前記屈曲部は、前記塑性変形により、前記係合部からさらに離れるように屈曲を大きくすることを特徴とする、(((2)))に記載の固定部材である。
(((5)))に記載の発明は、前記接続部の前記一端は、前記係合部が延びる方向において、前記係合部における前記接続部の前記一端とは反対の端部よりも後ろに位置することを特徴とする、(((1)))~(((4)))に記載の固定部材である。
(((6)))に記載の発明は、前記荷重受け部は、前記接続部に対し、前記係合部とは反対側に設けられることを特徴とする、(((1)))~(((5)))に記載の固定部材である。
(((7)))に記載の発明は、前記荷重受け部は、前記係合部が延びる方向において、前記接続部の前記他端よりも後ろに位置することを特徴とする、(((6)))に記載の固定部材である。
【0054】
(((1)))に記載の固定部材によれば、塑性変形が生じた場合であっても、取り外しに係る作業性の低下を抑制した固定部材を提供する。
(((2)))に記載の固定部材によれば、異なる方向に塑性変形する場合と比較して、固定部材の取り外しが容易になる。
(((3)))に記載の固定部材によれば、端部と他端との間の距離が、下面と上面の間の距離よりも大きい場合と比較して、固定部材の取り外しが容易になる。
(((4)))に記載の固定部材によれば、固定部材の変形量を大きくして緩衝性を高めることができる。
(((5)))に記載の固定部材によれば、固定部材の変形量を大きくして緩衝性を高めることができる。
(((6)))に記載の固定部材によれば、荷重受け部が荷重を受けた際に、安定して塑性変形する。
(((7)))に記載の固定部材によれば、荷重受け部が接続部の他端よりも前に位置する場合と比較して、塑性変形が生じた後の固定部材の取り外しが容易になる。
【符号の説明】
【0055】
1,1a,1b,1c…固定部材、8…画像形成装置、9…パレット、11…取付部、12…接続部、13…係合部、14…荷重受け部、90…上面、123…屈曲部、124,125…端部、801…下面、801A…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5