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特開2024-4902導電性繊維シート、ガス拡散電極、及び水分管理シート
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  • 特開-導電性繊維シート、ガス拡散電極、及び水分管理シート 図1
  • 特開-導電性繊維シート、ガス拡散電極、及び水分管理シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004902
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】導電性繊維シート、ガス拡散電極、及び水分管理シート
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20240110BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20240110BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20240110BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20240110BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240110BHJP
   H01M 4/74 20060101ALN20240110BHJP
   H01M 4/66 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
D04H1/728
H01G11/24
H01G11/70
H01M8/10 101
H01M4/74 Z
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104795
(22)【出願日】2022-06-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/共通課題解決型基盤技術開発/導電性ナノファイバーネットワークによる自立MPLの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】倉持 政宏
(72)【発明者】
【氏名】江尻 貴子
(72)【発明者】
【氏名】野口 知之
(72)【発明者】
【氏名】道畑 典子
(72)【発明者】
【氏名】川部 雅章
【テーマコード(参考)】
4L047
5E078
5H017
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4L047AA18
4L047AB08
4L047CB01
4L047CB10
4L047CC14
5E078AA03
5E078AB02
5E078BA44
5E078BA53
5E078FA07
5E078FA15
5E078FA24
5H017AA03
5H017AA10
5H017CC01
5H017EE07
5H017EE09
5H017HH01
5H018AA06
5H018DD05
5H018EE08
5H018EE17
5H018EE18
5H018HH05
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD04
5H126DD05
(57)【要約】
【課題】導電性の低下を抑制可能な導電性繊維シート、ガス拡散電極、及び水分管理シートを提供すること。
【解決手段】導電性繊維シート1は、第一導電性繊維2と、第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3と、第二導電性繊維4と、を備え、第一導電性繊維2、導電性粒状体3、及び第二導電性繊維4のそれぞれは、有機樹脂と導電性粒子とを含み、第二導電性繊維4の質量に占める第二導電性繊維4に含まれている有機樹脂の質量の割合は、第一導電性繊維2の質量に占める第一導電性繊維2に含まれている有機樹脂の質量の割合よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電性繊維と、
前記第一導電性繊維の表面に設けられる導電性粒状体と、
第二導電性繊維と、
を備え、
前記第一導電性繊維、前記導電性粒状体、及び前記第二導電性繊維のそれぞれは、有機樹脂と導電性粒子とを含み、
前記第二導電性繊維の質量に占める前記第二導電性繊維に含まれている前記有機樹脂の質量の割合は、前記第一導電性繊維の質量に占める前記第一導電性繊維に含まれている前記有機樹脂の質量の割合よりも大きい、導電性繊維シート。
【請求項2】
前記第一導電性繊維は、前記導電性粒状体に含まれる有機樹脂と同一の有機樹脂を含む、請求項1に記載の導電性繊維シート。
【請求項3】
前記第一導電性繊維の組成は、前記導電性粒状体の組成と同一である、請求項2に記載の導電性繊維シート。
【請求項4】
前記導電性繊維シートに担持されている燃料電池用の電極触媒を更に備える、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の導電性繊維シート。
【請求項5】
電気化学素子用のガス拡散電極であって、
請求項4に記載の導電性繊維シートを備える、ガス拡散電極。
【請求項6】
電気化学素子の水分管理シートであって、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の導電性繊維シートを備える、水分管理シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性繊維シート、ガス拡散電極、及び水分管理シートに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性と多孔性とを有する導電性繊維シートが知られている。導電性繊維シートは、燃料電池用のガス拡散電極、燃料電池用の水分管理シート、電気二重層キャパシタの電極、あるいはリチウムイオン二次電池の電極として使用されることが検討されている。このような導電性繊維シートとして、特許文献1には、導電性繊維に加えて、導電性繊維の表面に有機樹脂と導電性粒子とからなる導電性粒状体を含有する導電性繊維シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-169450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の導電性繊維シートにおいては、導電性繊維シートの導電性に寄与している導電性粒状体が脱落することがある。例えば、導電性繊維シートの取り扱い時及び工程通過時などに導電性繊維シートに力が加わると、導電性繊維シートが破断したり、意図せずに変形したりすることがある。このような場合に、導電性粒子が脱落すると考えられる。その結果、導電性繊維シートの導電性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、導電性の低下を抑制可能な導電性繊維シート、ガス拡散電極、及び水分管理シートを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る導電性繊維シートは、第一導電性繊維と、第一導電性繊維の表面に設けられる導電性粒状体と、第二導電性繊維と、を備える。第一導電性繊維、導電性粒状体、及び第二導電性繊維のそれぞれは、有機樹脂と導電性粒子とを含む。第二導電性繊維の質量に占める第二導電性繊維に含まれている有機樹脂の質量の割合は、第一導電性繊維の質量に占める第一導電性繊維に含まれている有機樹脂の質量の割合よりも大きい。
【0007】
有機樹脂と導電性粒子とを含む導電性繊維では、有機樹脂と導電性粒子との界面において、破断などが生じやすくなるので、導電性粒子の含有量が増えるにつれて導電性繊維の強度が低下し得る。上記導電性繊維シートにおいては、第二導電性繊維の質量に占める第二導電性繊維に含まれている有機樹脂の質量の割合が、第一導電性繊維の質量に占める第一導電性繊維に含まれている有機樹脂の質量の割合よりも大きいので、第二導電性繊維の方が第一導電性繊維よりも強度が高い。このため、第一導電性繊維及び第一導電性繊維の表面に設けられる導電性粒状体からなる導電性繊維シートと比較して、導電性繊維シートの強度(剛性)を高めることができる。したがって、導電性繊維シートの破断及び変形が抑えられ、導電性繊維シートから導電性粒子が脱落する可能性が低減され得る。その結果、導電性繊維シートの導電性の低下を抑制することが可能となる。
【0008】
いくつかの実施形態において、第一導電性繊維は、導電性粒状体に含まれる有機樹脂と同一の有機樹脂を含んでもよい。この場合、第一導電性繊維と導電性粒状体との固着が強固になる。したがって、導電性粒状体が脱落する可能性が低減されるので、導電性繊維シートの導電性の低下を抑制することが可能となる。
【0009】
いくつかの実施形態において、第一導電性繊維の組成は、導電性粒状体の組成と同一であってもよい。この場合、同一の材料を用いて第一導電性繊維及び導電性粒状体を製造することができる。したがって、導電性繊維シートの製造を簡易化することが可能となる。
【0010】
いくつかの実施形態において、導電性繊維シートは、導電性繊維シートに担持されている燃料電池用の電極触媒を更に備えてもよい。この場合、触媒と酸素又は水素などの反応物質とが効率良く反応できると共に、反応により生じた電子が電気抵抗の影響を受け難く効率的に導電性繊維シートを移動することができる。その結果、発電性能に優れていると共に、内部抵抗の小さい燃料電池を実現可能である。
【0011】
本開示の別の側面に係るガス拡散電極は、電気化学素子用のガス拡散電極であって、上記導電性繊維シートを備える。このガス拡散電極は、導電性繊維シートを備えているので、導電性繊維シートにおける導電性の低下を抑制することができる。したがって、ガス拡散電極における抵抗損失を低減することができる。
【0012】
本開示の更に別の側面に係る水分管理シートは、電気化学素子の水分管理シートであって、上記導電性繊維シートを備える。導電性繊維シートは強度(剛性)に優れていることから、導電性繊維シートの厚み及び目付を低減することができる。そのため、薄い導電性繊維シートによって、導電性の低下を抑制することができると共に、電気抵抗が小さく排水性能にも富む、電気化学素子の水分管理シートを提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、導電性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る導電性繊維シートを拡大して示す概略構成図である。
図2図2は、比較例に係る導電性繊維シートを拡大して示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。個別に記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0016】
<導電性繊維シート>
図1を参照しながら、一実施形態に係る導電性繊維シートの構成を説明する。図1は、一実施形態に係る導電性繊維シートを拡大して示す概略構成図である。図1に示される導電性繊維シート1は、導電性及び多孔性を有する繊維シートであり、例えば、電気化学素子用のガス拡散電極又は電気化学素子の水分管理シートとして用いられる。導電性繊維シート1は、第一導電性繊維2と、第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3と、第二導電性繊維4と、を含む。導電性繊維シート1において、その表面に導電性粒状体3が設けられた第一導電性繊維2と第二導電性繊維4とが混合していてもよい。導電性繊維シート1は、第一導電性繊維2及び導電性粒状体3を含む繊維層と、第二導電性繊維4を含む繊維層と、が積層されることによって構成されてもよい。
【0017】
(第一導電性繊維)
第一導電性繊維2は、導電性を有する繊維である。第一導電性繊維2は、有機樹脂と導電性粒子とを含む。
【0018】
導電性粒子は、導電性を有する粒子である。導電性粒子の例としては、カーボン系粒子、金属粒子、及び金属酸化物粒子が挙げられる。カーボン系粒子の例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノファイバーが挙げられる。耐薬品性、導電性及び分散性を向上させる観点から、導電性粒子として、カーボン系粒子、特に、カーボンブラックが用いられてもよい。
【0019】
導電性粒子の形状は、特に限定されない。導電性粒子の形状の例としては、球状(略球状及び真球状)、繊維状、針状(例えば、テトラポット状など)、平板状、多面体形状、羽毛状、及び不定形形状が挙げられる。導電性粒子は、中空であっても、中実であってもよい。導電性粒子の粒径は、特に限定されない。導電性粒子の平均粒径は、5nm~200nmであってもよく、10nm~1000nmであってもよい。
【0020】
「平均粒径」とは、基本的に、動的光散乱法による粒度分布計から求められた粒子の平均粒径を表す。例えば、カーボンブラックなどのアグリゲートもしくはストラクチャーと呼ばれる状態を形成した粒子などのように、動的光散乱法による測定が難しい場合には、平均粒径は、粒子の電子顕微鏡写真に写っている50個の粒子の直径の算術平均値を表す。この場合、粒子の形状が電子顕微鏡写真において非円形である場合には、当該写真における粒子の面積と同じ面積を有する円の直径が、粒子の直径とみなされる。
【0021】
第一導電性繊維2は、素材及び平均粒径の少なくともいずれかで異なる2種類以上の導電性粒子を含んでいてもよい。
【0022】
第一導電性繊維2が柔軟性に優れ、導電性粒子が脱落しにくくするために、導電性粒子同士は、有機樹脂を介して接着されている。
【0023】
有機樹脂は、導電性粒子同士を接着可能な樹脂であって、疎水性有機樹脂でもよく、親水性有機樹脂でもよく、これらの樹脂の混合樹脂又は複合樹脂でもよい。導電性繊維シート1がガス拡散電極用の基材として用いられる場合、第一導電性繊維2に含まれる有機樹脂が疎水性有機樹脂であると、フッ素系樹脂等の疎水性樹脂を含浸しなくても優れた水の透過性を示し、優れた排水性とガス拡散性とを示す。第一導電性繊維2に含まれる有機樹脂が親水性有機樹脂であると、水分が保持され得る。したがって、低湿度下においても固体高分子膜が湿潤に保たれるので、充分な発電性能を発揮できる固体高分子形の燃料電池を製造できる。
【0024】
「疎水性有機樹脂」は、水との接触角が90°以上の有機樹脂である。疎水性有機樹脂の例としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びポリエステル系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF・HFP)、及び前記樹脂を構成する各種モノマーの共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン、及び前記樹脂を構成する各種モノマーの共重合体が挙げられる。ポリエステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリブチレンナフタレート(PBN)が挙げられる。これらの疎水性有機樹脂は単独で用いられてもよく、2種類以上の疎水性有機樹脂が混合又は複合されて使用されてもよい。耐熱性、耐薬品性、及び疎水性を向上させる観点から、疎水性有機樹脂としてフッ素系樹脂が用いられてもよい。特に、撥水性に優れるよう、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物などの3元系のフッ素系樹脂が用いられてもよい。フッ素系樹脂の分子量は、適宜選択され得る。例えば、分子量60万~150万のフッ素系樹脂が採用され得る。
【0025】
「親水性有機樹脂」は、水との接触角が90°未満の有機樹脂である。親水性有機樹脂の例としては、セルロース(例えば、レーヨン)、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、親水性基を有する樹脂、ポリアクリロニトリル、酸化アクリル、ポリビニルアルコール系樹脂、及びポリエチレングルコール系樹脂が挙げられる。ポリアミド系樹脂の例としては、ナイロン6及びナイロン66が挙げられる。アクリル系樹脂の例としては、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸が挙げられる。親水性基の例としては、アミド基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びスルホン酸基が挙げられる。このような親水性基を有する樹脂の例としては、親水性ポリウレタン及びポリビニルピロリドンが挙げられる。これらの親水性有機樹脂は単独で用いられてもよく、2種類以上の親水性有機樹脂が混合又は複合されて使用されてもよい。耐熱性を向上させる観点から、親水性有機樹脂としてポリアクリロニトリルが用いられてもよい。ポリアクリロニトリルは、固体高分子膜の膨潤によっても厚さが潰れにくく、導電性繊維シート1の空隙を維持できる。したがって、導電性繊維シート1がガス拡散電極用の基材として用いられる場合には、有機樹脂としてポリアクリロニトリルが用いられてもよい。
【0026】
疎水性有機樹脂及び親水性有機樹脂の少なくともいずれかは、熱硬化性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂に加えて硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0027】
「熱硬化性樹脂」の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びジアリルフタレート樹脂が挙げられる。これらの中でも、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂は、耐熱性及び耐酸性に優れるので、熱処理によって第一導電性繊維2の剛性を高めることができる。有機樹脂は、1種類の熱硬化性樹脂から構成されてもよく、2種類以上の熱硬化性樹脂が混合又は複合されることによって構成されてもよく、1種類以上の熱硬化性樹脂と1種類以上の熱可塑性の疎水性有機樹脂又は熱可塑性の親水性有機樹脂とが混合又は複合されることによって構成されてもよい。
【0028】
第一導電性繊維2における有機樹脂と導電性粒子との質量比は、特に限定されない。導電性粒子が10質量%よりも少ないと、導電性が不十分になる傾向がある。導電性粒子が95質量%よりも多いと、充分な柔軟性が得られない傾向がある。したがって、導電性及び柔軟性に優れるという観点から、第一導電性繊維2における有機樹脂と導電性粒子との質量比は、10:90~90:10であってもよく、20:80~80:20であってもよく、30:70~70:30であってもよく、30:70~60:40であってもよい。
【0029】
第一導電性繊維2において、有機樹脂が導電性粒子を接着していればよく、第一導電性繊維2における導電性粒子と有機樹脂との位置関係は、特に限定されない。第一導電性繊維2の外表面にのみ導電性粒子が存在する場合には、第一導電性繊維2の内部における樹脂成分が抵抗成分となり、導電性に劣る傾向がある。したがって、第一導電性繊維2の内部に導電性粒子が存在してもよい。第一導電性繊維2間の導電性を向上させるために、導電性粒子は第一導電性繊維2の外表面に露出していてもよい。第一導電性繊維2の内部に導電性粒子が存在し、かつ、外表面において導電性粒子が露出した第一導電性繊維2は、例えば、有機樹脂と導電性粒子とを含む紡糸液を紡糸することによって製造され得る。
【0030】
第一導電性繊維2の平均繊維径は、特に限定されない。第一導電性繊維2の平均繊維径が10μmよりも大きいと、第一導電性繊維2間の接触点が少なく、導電性が不足しやすい傾向がある。第一導電性繊維2の平均繊維径が10nmよりも小さいと、導電性繊維シート1の取り扱い性に劣る傾向がある。これらの観点から、第一導電性繊維2の平均繊維径は、例えば、10nm~10μmであってもよく、100nm~1μmであってもよく、300nm~500nmであってもよい。第一導電性繊維2の平均繊維径は、導電性粒子が脱落しにくいように、導電性粒子の平均粒径の5倍以上であってもよい。
【0031】
ここで、「平均繊維径」とは、40本の繊維における繊維径の算術平均値を意味する。「繊維径」とは、顕微鏡写真をもとに計測した繊維の長さ方向に対して直交する方向の長さ(太さ)である。第一導電性繊維2の外表面の全体に導電性粒子が露出している場合には、第一導電性繊維2の繊維径は、導電性粒子を含めた第一導電性繊維2の太さである。第一導電性繊維2の外表面の一部においてのみ導電性粒子が露出している場合には、第一導電性繊維2の繊維径は、導電性粒子が露出していない部分における太さ(直径)である。
【0032】
第一導電性繊維2は、導電性に優れるという観点から、特定長を有する長繊維又は短繊維ではなく、特定長を有していない連続的な長さを有する連続繊維であってもよい。このような連続繊維の第一導電性繊維2は、例えば、静電紡糸法又はスパンボンド法により製造され得る。
【0033】
(導電性粒状体)
導電性粒状体3は、導電性を有する粒状体である。導電性粒状体3は、第一導電性繊維2及び第二導電性繊維4とは別部材であって、第一導電性繊維2の表面に設けられている。導電性粒状体3が第一導電性繊維2の表面に設けられる態様は適宜調整され得る。例えば、第一導電性繊維2の表面と導電性粒状体3の表面とが接触している箇所で、第一導電性繊維2と導電性粒状体3とが一体化していてもよい。導電性粒状体3と第二導電性繊維4とは一体化していなくてもよい。導電性粒状体3は、有機樹脂と導電性粒子とを含む。
【0034】
導電性粒状体3の平均粒径は、特に限定されない。導電性粒状体3の平均粒径は、50nm~50μmであってもよく、100nm~10μmであってもよく、1μm~5μmであってもよい。導電性に富む導電性繊維シート1を提供し易いことから、導電性粒状体3の平均粒径は、第一導電性繊維2の平均繊維径よりも大きくてもよい。
【0035】
導電性粒状体3に含まれる導電性粒子としては、上述の第一導電性繊維2に含まれ得る導電性粒子と同じ導電性粒子が用いられる。導電性粒状体3に含まれる導電性粒子は、第一導電性繊維2に含まれる導電性粒子と同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、導電性粒状体3に含まれる導電性粒子は、素材及び平均粒径の少なくともいずれかにおいて第一導電性繊維2に含まれる導電性粒子と異なっていてもよい。
【0036】
導電性粒状体3に含まれる有機樹脂としては、上述の第一導電性繊維2に含まれ得る有機樹脂と同じ有機樹脂が用いられる。導電性粒状体3に含まれる有機樹脂は、第一導電性繊維2に含まれる有機樹脂と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
導電性粒状体3の組成は、第一導電性繊維2の組成と同一であってもよい。この場合、同一の材料を用いて、第一導電性繊維2及び導電性粒状体3が製造され得る。導電性粒状体3の組成は、第一導電性繊維2の組成と異なっていてもよい。
【0038】
(第二導電性繊維)
第二導電性繊維4は、有機樹脂と導電性粒子とを含む。
【0039】
第二導電性繊維4に含まれる導電性粒子としては、上述の第一導電性繊維2に含まれ得る導電性粒子と同じ導電性粒子が用いられる。第二導電性繊維4に含まれる導電性粒子は、第一導電性繊維2に含まれる導電性粒子と同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、第二導電性繊維4に含まれる導電性粒子は、素材及び平均粒径の少なくともいずれかにおいて第一導電性繊維2に含まれる導電性粒子と異なっていてもよい。同様に、第二導電性繊維4に含まれる導電性粒子は、導電性粒状体3に含まれる導電性粒子と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
第二導電性繊維4に含まれる有機樹脂としては、上述の第一導電性繊維2に含まれ得る有機樹脂と同じ有機樹脂が用いられる。第二導電性繊維4に含まれる有機樹脂は、第一導電性繊維2に含まれる有機樹脂と同一であってもよく、異なっていてもよい。同様に、第二導電性繊維4に含まれる有機樹脂は、導電性粒状体3に含まれる有機樹脂と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
第二導電性繊維4の質量に占める第二導電性繊維4に含まれている有機樹脂の質量の割合(質量%)は、第一導電性繊維2の質量に占める第一導電性繊維2に含まれている有機樹脂の質量の割合(質量%)よりも大きい。第二導電性繊維4における有機樹脂と導電性粒子との質量比は、10:90~90:10であってもよく、20:80~80:20であってもよく、30:70~70:30であってもよく、40:60~60:40であってもよい。
【0042】
導電性繊維シート1の剛性を更に向上させる観点から、第二導電性繊維4の平均繊維径は、第一導電性繊維2の平均繊維径よりも大きくてもよい。第二導電性繊維4の平均繊維径は、例えば、10nm~10μmであってもよく、500nm~3μmであってもよく、700nm~1μmであってもよい。第二導電性繊維4は、導電性に優れるという観点から、連続繊維であってもよい。
【0043】
第一導電性繊維2、導電性粒状体3、及び第二導電性繊維4は、導電性粒子以外にも、例えば、無機粒子、イオン交換樹脂粉体、及び植物の種子などといった非導電性材料を含んでもよい。無機粒子の例としては、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化亜鉛、チタン含有酸化物、ゼオライト、触媒担持セラミックス、及びシリカが挙げられる。
【0044】
導電性繊維シート1を構成する導電性繊維同士は、どのようにして結合されていてもよい。導電性繊維同士は、例えば、絡合、溶媒による有機樹脂の可塑化による結合、又は熱による有機樹脂の融着による結合、或いはこれらの併用によって結合されてもよい。
【0045】
導電性繊維シート1は、導電性繊維シート1内の空隙を有効に利用するために、20%以上の空隙率を有してもよく、30%以上の空隙率を有してもよく、50%以上の空隙率を有してもよい。空隙率の上限は、特に限定されないが、形態安定性の観点から99%以下であってもよい。空隙率P(単位:%)は、導電性繊維シート1を構成するN個の成分の充填率Fr(単位:%)を用いて、式(1)によって算出される。Nは2以上の整数であり、nは1~Nの整数である。導電性繊維シート1を構成する成分は、例えば、導電性粒子及び有機樹脂を含む。
【0046】
【数1】
【0047】
ここで、n番目の成分の充填率Fr(単位:%)は、導電性繊維シート1の目付M(単位:g/cm)、導電性繊維シート1の厚さT(単位:cm)、導電性繊維シート1におけるn番目の成分の存在質量比率Pr、n番目の成分の比重SG(単位:g/cm)を用いて、式(2)によって算出される。
【0048】
【数2】
【0049】
導電性繊維シート1の目付は、特に限定されない。導電性繊維シート1がある程度の導電性繊維量を有し、導電性に優れるという観点、並びに、取り扱い性及び生産性の観点から、導電性繊維シート1の目付は、0.1g/m~200g/mであってもよく、0.3g/m~100g/mであってもよく、0.5g/m~50g/mであってもよい。導電性繊維シート1の厚さは、特に限定されない。導電性繊維シート1の厚さは、例えば、1μm~1000μmであってもよく、5μm~500μmであってもよく、10μm~400μmであってもよく、10μm~300μmであってもよい。
【0050】
「目付」は、10cm角の導電性繊維シート1の質量を、1mの大きさの質量に換算した値を意味する。「厚さ」は、シックネスゲージ((株)ミツトヨ製:コードNo.547-401:測定力3.5N以下)を用いて測定された値である。
【0051】
<導電性繊維シートの製造方法>
一例として、静電紡糸法によって導電性繊維シート1を製造する方法を説明する。
【0052】
まず、第一導電性繊維2及び導電性粒状体3を形成するための紡糸液(以下、「第一紡糸液」という。)と、第二導電性繊維4を形成するための紡糸液(以下、「第二紡糸液」という。)と、を準備する工程が行われる。第一紡糸液及び第二紡糸液のそれぞれは、有機樹脂、導電性粒子、及び分散媒を含む。後述の第一静電紡糸において第一導電性繊維2と導電性粒状体3とが得られるように、第一紡糸液に占める有機樹脂の質量%が調整される。紡糸液の組成及び紡糸条件によって、第一導電性繊維2と導電性粒状体3とを得るために必要な有機樹脂の質量%は異なる。したがって、紡糸液の組成及び紡糸条件を考慮して、第一紡糸液に占める有機樹脂の質量%が設定される。
【0053】
第一紡糸液の質量に占める有機樹脂の質量の百分率(質量%)は適宜調整され得る。第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、第一紡糸液における当該質量%は、0.1質量%~10.0質量%であってもよく、0.3質量%~5.0質量%であってもよく、0.5質量%~3.0質量%であってもよく、0.8質量%~1.6質量%であってもよい。
【0054】
第一紡糸液の質量に占める導電性粒子の質量の百分率(質量%)は適宜調整され得る。第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、第一紡糸液における当該質量%は、3質量%~20質量%であってもよく、5質量%~10質量%であってもよく、6.4質量%~7.2質量%であってもよい。
【0055】
第一紡糸液を構成する溶媒の種類は、有機樹脂を溶解可能な溶媒であればよく、適宜選択され得る。第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、第一紡糸液を構成する溶媒として、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はN,N-ジメチルホルムアミドが採用されてもよい。
【0056】
同様に、後述の第二静電紡糸において第二導電性繊維4が得られるように、第二紡糸液に占める有機樹脂の質量%が調整される。紡糸液の組成及び紡糸条件によって、第二導電性繊維4を得るために必要な有機樹脂の質量%は異なる。したがって、紡糸液の組成及び紡糸条件を考慮して、第二紡糸液に占める有機樹脂の質量%が設定される。第二紡糸液に占める有機樹脂の質量%は、第一紡糸液に占める有機樹脂の質量%よりも大きい。
【0057】
第二紡糸液の質量に占める有機樹脂の質量の百分率(質量%)は適宜調整され得る。第二導電性繊維4を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、第二紡糸液における当該質量%は、2.5質量%~6.5質量%であってもよく、3.0質量%~6.0質量%であってもよく、3.5質量%~5.5質量%であってもよく、4.0質量%~5.0質量%であってもよい。
【0058】
第二紡糸液の質量に占める導電性粒子の質量の百分率(質量%)は適宜調整され得る。第二導電性繊維4を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、第二紡糸液における当該質量%は、4.8質量%~20質量%であってもよく、6.0質量%~15.0質量%であってもよく、7.2質量%~11.2質量%であってもよい。
【0059】
第二紡糸液を構成する溶媒の種類は、有機樹脂を溶解可能な溶媒であればよく、適宜選択され得る。第二導電性繊維4を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、第二紡糸液を構成する溶媒として、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はN,N-ジメチルホルムアミドが採用されてもよい。
【0060】
そして、第一紡糸液及び第二紡糸液が互いに異なるノズル付きシリンジに充填される。
【0061】
続いて、第一紡糸液を用いた静電紡糸(第一静電紡糸)を行う工程が行われる。この工程では、第一紡糸液がノズルから吐出され、対向電極に集積される。これにより、対向電極上に、第一導電性繊維2と、第一導電性繊維2の表面に固着した導電性粒状体3と、を含む導電性繊維ウェブが形成される。第一導電性繊維2と導電性粒状体3とは、同一の紡糸液(第一紡糸液)から形成されるので、同一の組成を有している。
【0062】
第一静電紡糸において、ノズルから吐出される第一紡糸液へ作用させる電圧(換言すれば、第一紡糸液と捕集体(対向電極)との電圧差)は、適宜調整され得る。第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、1kV~20kVの電圧が作用されてもよく、4kV~16kVの電圧が作用されてもよく、8kV~12kVの電圧が作用されてもよい。
【0063】
ノズルから吐出される第一紡糸液の量は適宜調整され得る。第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、ノズルから吐出される第一紡糸液の量は、0.1g/時間~10g/時間であってもよく、0.5g/時間~5g/時間であってもよく、1g/時間~2g/時間であってもよい。
【0064】
第一静電紡糸における紡糸距離は適宜調整され得る。紡糸距離とは、紡糸液の吐出部分(ノズル先端)から捕集体(対向電極)までの距離である。第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、第一静電紡糸における紡糸距離は、4cm~20cmであってもよく、6cm~16cmであってもよく、8cm~12cmであってもよい。
【0065】
さらに、第二紡糸液を用いた静電紡糸(第二静電紡糸)を行う工程が行われる。この工程では、第二紡糸液がノズルから吐出され、対向電極に集積される。これにより、対向電極上に、第二導電性繊維4を含む導電性繊維ウェブが形成される。この第二導電性繊維4の表面には、導電性粒状体3は形成されない。
【0066】
第二静電紡糸において、ノズルから吐出される第二紡糸液へ作用させる電圧(換言すれば、第二紡糸液と捕集体(対向電極)との電圧差)は適宜調整され得る。第二導電性繊維4を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、1kV~20kVの電圧が作用されてもよく、4kV~16kVの電圧が作用されてもよく、8kV~12kVの電圧が作用されてもよい。
【0067】
ノズルから吐出される第二紡糸液の量は適宜調整され得る。第二導電性繊維4を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、ノズルから吐出される第二紡糸液の量は、0.1g/時間~10g/時間であってもよく、0.5g/時間~5g/時間であってもよく、1g/時間~2g/時間であってもよい。
【0068】
第二静電紡糸における紡糸距離は適宜調整され得る。第二導電性繊維4を有する導電性繊維シート1を実現し易いことから、第二静電紡糸における紡糸距離は、4cm~20cmであってもよく、6cm~16cmであってもよく、8cm~12cmであってもよい。
【0069】
紡糸空間の温湿度は適宜調整され得る。導電性繊維シート1を実現し易いことから、紡糸空間の温度は10℃~40℃であってもよく、18℃~33℃であってもよく、23℃~28℃であってもよい。紡糸空間の湿度は5%RH~60%RHであってもよく、10%RH~50%RHであってもよく、20%RH~40%RHであってもよい。
【0070】
なお、第一静電紡糸が行われた後に第二静電紡糸が行われてもよく、第一静電紡糸と第二静電紡糸とが交互に行われてもよく、第一静電紡糸と並行して第二静電紡糸が行われてもよい。
【0071】
続いて、導電性繊維ウェブから分散媒を除去する工程が行われる。以上により、導電性繊維シート1が製造される。
【0072】
なお、紡糸液に含まれる有機樹脂の分子鎖同士の絡み合いの強さ(重なりの大きさ)によって、第一導電性繊維2と第一導電性繊維2の表面に固着した導電性粒状体3とを含む導電性繊維ウェブ、及び第二導電性繊維4を含む導電性繊維ウェブのいずれが形成されるかが変わり得る。例えば、紡糸液における有機樹脂の濃度が高くなると、分子鎖同士の絡み合いが強くなり、太い繊維径を有する第二導電性繊維4が形成されやすくなる。一方、紡糸液における有機樹脂の濃度が低くなると、分子鎖同士の絡み合いが弱くなり、細い繊維径を有する第一導電性繊維2が形成され、その表面に導電性粒状体3が形成されやすくなる。
【0073】
<導電性繊維シートの作用効果>
次に、図2を更に参照しながら、本実施形態に係る導電性繊維シート1の作用効果を説明する。図2は、比較例に係る導電性繊維シートを拡大して示す概略構成図である。図2に示される導電性繊維シート100は、第二導電性繊維4を含まない点において、導電性繊維シート1と主に相違する。言い換えると、導電性繊維シート100は、第一導電性繊維2と、第一導電性繊維2の表面に設けられる導電性粒状体3と、から構成されている。
【0074】
有機樹脂と導電性粒子とを含む導電性繊維では、有機樹脂と導電性粒子との界面において、破断などが生じやすくなるので、導電性粒子の含有量が増えるにつれて導電性繊維の強度が低下し得る。導電性繊維シート1においては、第二導電性繊維4の質量に占める第二導電性繊維4に含まれている有機樹脂の質量の割合が、第一導電性繊維2の質量に占める第一導電性繊維2に含まれている有機樹脂の質量の割合よりも大きいので、第二導電性繊維4の方が第一導電性繊維2よりも強度が高い。このため、導電性繊維シート100と比較して、導電性繊維シート1の強度(剛性)を高めることができる。したがって、導電性繊維シート1の取り扱い時及び工程通過時などに破損(破断)したり、意図せず変形したりする可能性が低減されるので、導電性繊維シート1から導電性粒子が脱落する可能性が低減され得る。その結果、導電性繊維シート1の導電性の低下を抑制することが可能となる。言い換えると、導電性繊維シート1の電気抵抗を低減することが可能となる。導電性粒子が脱落する可能性が低減されるので、導電性繊維シート1に含まれる導電性粒子の量を増やすことも可能である。
【0075】
導電性繊維シート1は剛性を有するので、取り扱いやすさを向上させることができ、さらに工程における不良発生率を低減することができる。
【0076】
第一導電性繊維2は、導電性粒状体3に含まれる有機樹脂と同一の有機樹脂を含んでもよい。この場合、第一導電性繊維2と導電性粒状体3との固着が強固になる。したがって、導電性粒状体3が脱落する可能性が低減されるので、導電性繊維シート1の導電性の低下を更に抑制することが可能となる。第一導電性繊維2と導電性粒状体3との固着が強固になることにより、第一導電性繊維2と導電性粒状体3との間の接触抵抗を低減することができる。したがって、第一導電性繊維2と導電性粒状体3との間を低抵抗で電気が通過することが可能となるので、導電性繊維シート1の電気抵抗を低減することが可能となる。
【0077】
第一導電性繊維2の組成は、導電性粒状体3の組成と同一であってもよい。この場合、同一の材料を用いて第一導電性繊維2及び導電性粒状体3を製造することができる。したがって、導電性繊維シート1の製造を簡易化することが可能となる。
【0078】
第二導電性繊維4の平均繊維径は、第一導電性繊維2の平均繊維径よりも大きくてもよい。この場合、第二導電性繊維4の強度が一層高くなる。したがって、導電性繊維シート1の強度(剛性)を一層高めることができ、導電性繊維シート1から導電性粒子が脱落する可能性が一層低減され得る。その結果、導電性繊維シート1の導電性の低下を一層抑制することが可能となる。
【0079】
第二導電性繊維4は、第一導電性繊維2に含まれる有機樹脂と同一の有機樹脂を含んでもよい。この場合、第一導電性繊維2と第二導電性繊維4とが強固に接触又は固着し得るので、第一導電性繊維2と第二導電性繊維4との間の接触抵抗を低減することができる。したがって、第一導電性繊維2と第二導電性繊維4との間を低抵抗で電気が通過することが可能となるので、導電性繊維シート1の電気抵抗を低減することが可能となる。
【0080】
第一導電性繊維2、導電性粒状体3、及び第二導電性繊維4に含まれる有機樹脂は、フッ素系樹脂であってもよい。この場合、撥水性に富む導電性繊維シート1を実現することができる。例えば、導電性繊維シート1が電気化学素子用のガス拡散電極に用いられた場合には、ガス拡散電極において発生した水によるガス流路の閉塞を抑制することができ、供給したガスの拡散性が損なわれることを回避することができる。
【0081】
なお、本開示に係る導電性繊維シートは上記実施形態に限定されない。
【0082】
導電性繊維シート1は、低い電気抵抗値を有するので、導電性を必要とする用途に使用され得る。例えば、導電性繊維シート1は、燃料電池のガス拡散電極用の基材、燃料電池の水分管理シート用の基材、電気二重層キャパシタの電極、又はリチウムイオン二次電池の電極として使用されてもよい。
【0083】
導電性繊維シート1が電気化学素子のガス拡散電極用の基材として使用された場合を説明する。この場合、ガス拡散電極は、導電性繊維シート1を含む。ガス拡散電極は、導電性繊維シート1をガス拡散電極用の基材として用いる以外は、従来のガス拡散電極と同様の構造を有する。
【0084】
導電性繊維シート1は多孔性であるので、ガス拡散電極用の基材(導電性繊維シート1)の空隙に何も充填されていない場合には、ガス拡散電極用の基材(導電性繊維シート1)の厚さ方向及び面方向への排水性に優れているとともに、供給したガスの拡散性に優れている。
【0085】
導電性繊維シート1は、導電性繊維シート1の空隙にフッ素系樹脂及びカーボンの少なくともいずれかを含んでいてもよい。フッ素系樹脂が含まれることによって、液水が押し出されやすくなるので、導電性繊維シート1の排水性を向上させることができる。カーボンが含まれることによって、導電性繊維シート1の導電性を更に高めることができる。
【0086】
フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び上記有機樹脂を構成し得る各種モノマーの共重合体が挙げられる。
【0087】
カーボンの例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノファイバーが挙げられる。
【0088】
ガス拡散電極は、導電性繊維シート1に担持された燃料電池用の電極触媒を更に含んでもよい。このような電極触媒として、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、チタン、マンガン、マグネシウム、ランタン、セリウム、バナジウム、ジルコニウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、金、ニッケル-ランタン合金、及びチタン-鉄合金などからなるグループから選択された1種類以上の触媒が、導電性繊維シート1に担持される。この場合、触媒と酸素又は水素などの反応物質とが効率良く反応できると共に、反応により生じた電子が電気抵抗の影響を受け難く効率的に導電性繊維シート1を移動することができる。その結果、発電性能に優れていると共に、内部抵抗の小さい燃料電池を実現可能である。
【0089】
なお、ガス拡散電極は、触媒以外にも、電子伝導体及びプロトン伝導体を含んでもよい。電子伝導体としては、カーボンブラック等の導電性粒子と同様の導電性粒子が用いられてもよい。触媒は、この電子伝導体(導電性粒子)に担持されてもよい。プロトン伝導体としては、イオン交換樹脂が用いられてもよい。
【0090】
このようなガス拡散電極は、例えば、次の方法で製造される。まず、溶媒中に触媒を加えて混合し、これにイオン交換樹脂溶液を加え、超音波分散等で均一に混合することによって、触媒分散懸濁液が得られる。溶媒としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、及びエチレングリコールジメチルエーテルなどからなる単一溶媒又は混合溶媒が用いられる。触媒としては、例えば、白金などの触媒を担持したカーボン粉末が用いられる。そして、上述のような導電性繊維シート1に、上記触媒分散懸濁液をコーティング、或いは散布し、これを乾燥することによって、ガス拡散電極が製造される。
【0091】
ガス拡散電極は導電性繊維シート1を含むので、導電性繊維シート1における導電性の低下を抑制することができる。したがって、ガス拡散電極における抵抗損失を低減することができるので、充分な発電性能を発揮できる固体高分子形の燃料電池を製造することができる。導電性繊維シート1がある程度の剛性を有することによって、固体高分子膜の膨潤及び収縮が抑制されるので、固体高分子膜に亀裂が生じる可能性を低減することができる。さらに、固体高分子膜の膨潤によってもガス拡散電極が潰れにくいので、空隙を維持することができ、ガス拡散性を維持することが可能となる。
【0092】
ガス拡散電極においては、触媒同士の接触による電子伝導だけではなく、第一導電性繊維2、導電性粒状体3、及び第二導電性繊維4による電子伝導の経路が形成されるので、電子伝導の経路から孤立した触媒が少ない。そのため、触媒の利用効率を向上させることができ、触媒量を低減することができる。
【0093】
上記ガス拡散電極は、膜-電極接合体に用いられてもよい。膜-電極接合体は、ガス拡散電極以外は、従来の膜-電極接合体と同様の構成を有する。例えば、固体高分子膜としては、パーフルオロカーボンスルホン酸系樹脂膜、スルホン化芳香族炭化水素系樹脂膜、又はアルキルスルホン化芳香族炭化水素系樹脂膜などが用いられる。例えば、一対のガス拡散電極のそれぞれの触媒担持面の間に固体高分子膜を挟み、熱プレスによりそれらを接合することによって、膜-電極接合体が製造される。
【0094】
膜-電極接合体の製造方法はこれに限られない。例えば、上記触媒分散懸濁液を支持体に塗布することによって触媒層が形成される。この触媒層を固体高分子膜に転写した後、触媒層に導電性繊維シート1が当接するように積層し、これらを熱プレスすることによって、膜-電極接合体が製造される。
【0095】
膜-電極接合体は上述のガス拡散電極を含むので、電気抵抗を低減することができ、充分な発電性能を発揮できる固体高分子形の燃料電池を製造することができる。
【0096】
固体高分子形の燃料電池は、ガス拡散電極を含む。燃料電池は上述のガス拡散電極を備えていること以外は、従来の燃料電池と同様の構成を有する。例えば、上述のような膜-電極接合体を1対のバイポーラプレートで挟むことによって、セル単位が作製され、複数のセル単位を積層し、固定することによって、燃料電池が製造される。燃料電池は、上述のガス拡散電極を含むので、電気抵抗を低減することができ、充分な発電性能を発揮することができる。
【0097】
バイポーラプレートは、導電性が高く、ガスを透過せず、ガス拡散電極にガスを供給できる流路を有していればよい。バイポーラプレートの例としては、カーボン成形材料、カーボン-樹脂複合材料、及び金属材料が挙げられる。
【0098】
導電性繊維シート1は、電気化学素子の水分管理シート用の基材として使用されてもよい。この場合、水分管理シートは、導電性繊維シート1を含む。導電性繊維シート1は強度(剛性)に優れていることから、導電性繊維シート1の厚み及び目付を低減することができる。そのため、薄い導電性繊維シート1によって、導電性の低下を抑制することができると共に、電気抵抗が小さく排水性能にも富む、電気化学素子の水分管理シートを提供できる。
【実施例0099】
以下、本開示に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本開示を更に詳細に説明する。なお、本開示はこれらの実施例に限定されない。
【0100】
以下の組成を有する紡糸液S1~S3が調製された。
【0101】
(紡糸液S1)
・有機樹脂:フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物
・導電性粒子:N-メチル-2-ピロリドンに、導電性粒子であるカーボンブラック(CB)を分散させたディスパージョン[固形分濃度22質量%、平均粒径280nm]
・分散媒:ジメチルホルムアミド
なお、紡糸液S1に占める有機樹脂及び導電性粒子を合わせた固形分質量は8質量%であった。紡糸液S1に占める有機樹脂と導電性粒子との質量比は20:80に設定された。
【0102】
(紡糸液S2)
・有機樹脂:フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物
・導電性粒子:N-メチル-2-ピロリドンに、導電性粒子であるカーボンブラック(CB)を分散させたディスパージョン[固形分濃度22質量%、平均粒径280nm]
・分散媒:ジメチルホルムアミド
なお、紡糸液S2に占める有機樹脂及び導電性粒子を合わせた固形分質量は12質量%であった。紡糸液S2に占める有機樹脂と導電性粒子との質量比は40:60に設定された。
【0103】
(紡糸液S3)
・有機樹脂:フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物
・導電性粒子:N-メチル-2-ピロリドンに、導電性粒子であるカーボンブラック(CB)を分散させたディスパージョン[固形分濃度22質量%、平均粒径280nm]
・分散媒:ジメチルホルムアミド
なお、紡糸液S3に占める有機樹脂及び導電性粒子を合わせた固形分質量は8質量%であった。紡糸液S3に占める有機樹脂と導電性粒子との質量比は10:90に設定された。
【0104】
(静電紡糸条件)
シリンジに設けられているノズル(以降、単に「ノズル」と略記する。)Aの詳細:紡糸液の吐出部分の形状が、内径0.2mmの円形である金属ノズル
ノズルAに作用させる電圧(ノズルAから吐出される紡糸液に作用させる電圧):9kV
ノズルAにおける紡糸液の吐出部分から、アースされたステンレス製の回転ドラム(捕集体)までの距離:10cm
ノズルBの詳細:紡糸液の吐出部分の形状が、内径0.25mmの円形である金属ノズル
ノズルBに作用させる電圧(ノズルBから吐出される紡糸液に作用させる電圧):9kV
ノズルBにおける紡糸液の吐出部分から、アースされたステンレス製の回転ドラム(捕集体)までの距離:10cm
紡糸空間の温度:25℃
紡糸空間の湿度:20%RH
【0105】
(比較例1)
紡糸液S1がノズルAから2.0g/時間の吐出量で吐出され、アースされた対向電極であるステンレス製の回転ドラム上に集積されることによって、静電紡糸が行われた。静電紡糸によって、回転ドラム上の全面に、有機樹脂と導電性粒子とが質量比20:80で混合した連続繊維の第一導電性繊維のみからなる導電性繊維ウェブが形成された。この導電性繊維ウェブでは、第一導電性繊維の表面に、第一導電性繊維と同一組成の導電性粒状体が固着していた。そして、導電性繊維ウェブから分散媒が除去され、回転ドラム上の全面に、導電性繊維シートが調製された。回転ドラム上の導電性繊維シートの目付は、7g/mと算出された。
【0106】
(実施例1)
紡糸液S1がノズルAから2.0g/時間の吐出量で吐出され、それと同時に紡糸液S2がノズルBから2.0g/時間の吐出量で吐出され、紡糸液S1及び紡糸液S2がアースされた対向電極であるステンレス製の回転ドラム上に集積されることによって、静電紡糸が行われた。紡糸時間は、回転ドラム上に目付7g/mの導電性繊維シートが調製されるように、短く設定された。その他の紡糸条件は、比較例1と同じに設定された。静電紡糸によって、回転ドラム上の全面に、有機樹脂と導電性粒子とが質量比20:80で混合した連続繊維の第一導電性繊維と、有機樹脂と導電性粒子とが質量比40:60で混合した連続繊維の第二導電性繊維とが混在する導電性繊維ウェブが形成された。この導電性繊維ウェブでは、第一導電性繊維の表面に、第一導電性繊維と同一組成の導電性粒状体が固着していた。一方、第二導電性繊維の表面には、第二導電性繊維と同一組成の導電性粒状体は固着していなかった。第二導電性繊維の平均繊維径は、第一導電性繊維の平均繊維径よりも大きかった。そして、導電性繊維ウェブから分散媒が除去され、回転ドラム上の全面に、導電性繊維シートが調製された。
【0107】
(比較例2)
紡糸液S3がノズルAから2.0g/時間の吐出量で吐出され、アースされた対向電極であるステンレス製の回転ドラム上に集積されることによって、静電紡糸が行われた。紡糸条件は、比較例1と同じに設定された。静電紡糸によって、回転ドラム上の全面に、有機樹脂と導電性粒子とが質量比10:90で混合した連続繊維の第一導電性繊維のみからなる導電性繊維ウェブが形成された。この導電性繊維ウェブでは、第一導電性繊維の表面に、第一導電性繊維と同一組成の導電性粒状体が固着していた。そして、導電性繊維ウェブから分散媒が除去され、回転ドラム上の全面に、導電性繊維シートが調製された。回転ドラム上の導電性繊維シートの目付は、16g/mと算出された。
【0108】
(実施例2)
紡糸液S3がノズルAから2.0g/時間の吐出量で吐出され、それと同時に紡糸液S2がノズルBから2.0g/時間の吐出量で吐出され、紡糸液S3及び紡糸液S2がアースされた対向電極であるステンレス製の回転ドラム上に集積されることによって、静電紡糸が行われた。紡糸時間は、回転ドラム上に目付16g/mの導電性繊維シートが調製されるように、長く設定された。その他の紡糸条件は、実施例1、比較例1、及び比較例2と同じに設定された。静電紡糸によって、回転ドラム上の全面に、有機樹脂と導電性粒子とが質量比10:90で混合した連続繊維の第一導電性繊維と、有機樹脂と導電性粒子とが質量比40:60で混合した連続繊維の第二導電性繊維とが混在する導電性繊維ウェブが形成された。この導電性繊維ウェブでは、第一導電性繊維の表面に、第一導電性繊維と同一組成の導電性粒状体が固着していた。一方、第二導電性繊維の表面には、第二導電性繊維と同一組成の導電性粒状体は固着していなかった。第二導電性繊維の平均繊維径は、第一導電性繊維の平均繊維径よりも大きかった。そして、導電性繊維ウェブから分散媒が除去され、回転ドラム上の全面に、導電性繊維シートが調製された。
【0109】
<評価方法>
実施例及び比較例の導電性繊維シートが以下の方法で評価された。
【0110】
(強度評価方法)
回転ドラム上から導電性繊維シートを剥がすことが試みられた。亀裂及び破断が発生することなく、回転ドラム上から導電性繊維シートが剥がされ、単体の導電性繊維シートが得られた場合に、強度評価は「OK」に設定された。一方、亀裂又は破断が発生して、回転ドラム上から導電性繊維シートが剥がされず、単体の導電性繊維シートが得られなかった場合に、強度評価は「NG」に設定された。
【0111】
「OK」と評価された導電性繊維シートは、剛性に富み、取り扱いやすく、工程における不良発生率が低いと考えられる。導電性繊維シートに力が加わったとしても、導電性繊維シートの構成繊維である導電性繊維が破断し難いことから、導電性粒状体が脱落する可能性が低減されると考えられる。「NG」と評価された導電性繊維シートは、剛性に劣り、取り扱いにくく、工程における不良発生率が高いと考えられる。導電性繊維シートに力が加わった際に、導電性繊維シートの構成繊維である導電性繊維が破断し易いことから、導電性粒状体が脱落し易いと考えられる。
【0112】
(液中での耐性評価方法)
導電性繊維シートが、ビーカーに満たされた33v/v%のアルコール水溶液(色:透明)中に浸漬され、ビーカーが軽く揺動された。その後、アルコール水溶液中から導電性繊維シートが取り出された。導電性繊維シートが取り出された後のアルコール水溶液が目視で観察されることによって、耐性評価が行われた。アルコール水溶液の色が透明のままであると感じられた場合に、耐性評価は「OK」に設定され、アルコール水溶液の色が灰色に変化したと感じられた場合に、耐性評価は「NG」と評価された。
【0113】
「OK」と評価された導電性繊維シートは、黒色の導電性粒子を含む導電性粒状体が脱落し難い導電性繊維シートであると考えられる。「NG」と評価された導電性繊維シートは、黒色の導電性粒子を含む導電性粒状体が脱落し易い導電性繊維シートであると考えられる。
【0114】
(電気抵抗の測定方法)
導電性繊維シートをφ25mmの大きさに切断することによって得られた試験片の両面が、金メッキ処理が施された金属プレートで挟まれ、金属プレートの積層方向に2MPaの圧力が加えられた。この状態で、低抵抗測定装置(日置電機社製、型名:RM3545)を用いて、試験片の抵抗値(mΩ)が測定され、更に、測定された抵抗値に試験片の面積(4.9cm)を乗じることによって、電気抵抗値(mΩ・cm)が算出された。
【0115】
(接触角の測定方法)
動的接触角の測定装置(協和界面科学(株)製、型名:DM500)により接触角が測定された。つまり、導電性繊維シートから採取された試験片の表面上に、純水の液滴が滴下され、滴下から15秒後に、滴下された液滴が試験片表面に対して成す角度が測定された。接触角が大きいほど、撥水性に富む導電性繊維シートであることを意味する。
【0116】
表1に、各評価結果及び各測定結果が示される。なお、比較例1では、導電性繊維シートが単体で得られなかったので、耐性評価は行われず、厚さ、電気抵抗値、及び接触角は測定されなかった。
【0117】
【表1】
【0118】
表1に示されるように、比較例1及び比較例2の導電性繊維シートでは、強度評価がNGであった。したがって、比較例1及び比較例2の導電性繊維シートでは、導電性粒状体が脱落し易いと考えられる。一方、実施例1及び実施例2の導電性繊維シートでは、強度評価及び耐性評価がOKであった。したがって、実施例1及び実施例2の導電性繊維シートでは、導電性粒状体が脱落し難いと考えられる。
【符号の説明】
【0119】
1…導電性繊維シート、2…第一導電性繊維、3…導電性粒状体、4…第二導電性繊維。
図1
図2