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特開2024-49026運転能力判定システムおよび運転能力判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049026
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】運転能力判定システムおよび運転能力判定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155245
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】松野 俊文
(72)【発明者】
【氏名】岩間 大輝
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF10
(57)【要約】
【課題】運転に支障をきたすことなく運転能力を判定する。
【解決手段】運転能力判定システム10は、車両が走行中の道路の路面の情報とともに、車両の時系列の操舵角の変化を示す操舵角データを取得する情報取得部13と、情報取得部13により取得された路面の情報に基づいて、路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する凹凸判定部14と、情報取得部13により取得された操舵角データに基づいて、運転者の操舵の特性を表す評価値を算出する評価値算出部16と、を備える。評価値算出部16は、情報取得部13により取得された操舵角データのうち、凹凸判定部14により路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定された期間の第1操舵角データの重みを、凹凸判定部14により路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定された期間の第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより、評価値を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中の道路の路面の情報とともに、前記車両の時系列の操舵角の変化を示す操舵角データを取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された前記路面の情報に基づいて、前記路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する凹凸判定部と、
前記情報取得部により取得された操舵角データに基づいて、運転者の操舵の特性を表す評価値を算出する評価値算出部と、を備え、
前記評価値算出部は、前記情報取得部により取得された操舵角データのうち、前記凹凸判定部により前記路面の凹凸の程度が前記所定程度以下であると判定された期間の第1操舵角データの重みを、前記凹凸判定部により前記路面の凹凸の程度が前記所定程度を超えると判定された期間の第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより、前記評価値を算出することを特徴とする運転能力判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運転能力判定システムにおいて、
前記路面の情報は、前記車両に搭載されたセンサにより検出された前記路面の凹凸の深さまたは高さの情報であり、
前記凹凸判定部は、前記凹凸の深さまたは高さが閾値以下のとき、前記路面の凹凸の程度が前記所定程度以下であると判定することを特徴とする運転能力判定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の運転能力判定システムにおいて、
前記路面の情報は、前記車両に搭載されたセンサにより検出された前記車両に作用する横加速度の情報であり、
前記凹凸判定部は、前記横加速度の大きさが閾値以下のとき、前記路面の凹凸の程度が前記所定程度以下であると判定することを特徴とする運転能力判定システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の運転能力判定システムにおいて、
前記路面の情報は、予め記憶された道路地図情報に含まれる、前記車両の位置情報に対応する道路の路面の情報であり、
前記凹凸判定部は、前記車両が走行中の道路が未舗装道路であるとき、前記路面の凹凸の程度が前記所定程度を超えると判定することを特徴とする運転能力判定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の運転能力判定システムにおいて、
前記情報取得部により取得された操舵角データに基づいて、運転者に所定の負荷が作用しているか否かを判定する負荷判定部をさらに備え、
前記評価値算出部は、前記情報取得部により取得された操舵角データに基づいて、運転者の平均的な操舵の特性を表す第1評価値を算出するとともに、算出された前記第1評価値と、前記情報取得部により取得された操舵角データのうち、前記負荷判定部により前記所定の負荷が作用していると判定された期間の操舵角データと、に基づいて、前記所定の負荷が作用したときの運転者の操舵の特性を表す第2評価値を算出し、
前記評価値算出部は、前記第1操舵角データおよび前記第2操舵角データのいずれにも重み付けすることなく前記第1評価値を算出する一方、前記第1操舵角データの重みを前記第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより前記第2評価値を算出することを特徴とする運転能力判定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の運転能力判定システムにおいて、
前記情報取得部により取得された操舵角データに基づいて、運転者に所定の負荷が作用しているか否かを判定する負荷判定部をさらに備え、
前記評価値算出部は、前記情報取得部により取得された操舵角データに基づいて、運転者の平均的な操舵の特性を表す第1評価値を算出するとともに、算出された前記第1評価値と、前記情報取得部により取得された操舵角データのうち、前記負荷判定部により前記所定の負荷が作用していると判定された期間の操舵角データと、に基づいて、前記所定の負荷が作用したときの運転者の操舵の特性を表す第2評価値を算出し、
前記評価値算出部は、前記第1操舵角データの重みを前記第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより前記第1評価値を算出するとともに、前記第1操舵角データの重みを前記第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより前記第2評価値を算出することを特徴とする運転能力判定システム。
【請求項7】
コンピュータによりそれぞれ実行される、
車両が走行中の道路の路面の情報とともに、前記車両の時系列の操舵角の変化を示す操舵角データを取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップで取得された前記路面の情報に基づいて、前記路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する凹凸判定ステップと、
前記情報取得ステップで取得された操舵角データに基づいて、運転者の操舵の特性を表す評価値を算出する評価値算出ステップと、を含み、
前記評価値算出ステップでは、前記情報取得ステップで取得された操舵角データのうち、前記凹凸判定ステップで前記路面の凹凸の程度が前記所定程度以下であると判定された期間の第1操舵角データの重みを、前記凹凸判定ステップで前記路面の凹凸の程度が前記所定程度を超えると判定された期間の第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより、前記評価値を算出することを特徴とする運転能力判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の運転能力を判定する運転能力判定システムおよび運転能力判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、運転者の安全運転能力を測定するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、運転者に対し間欠的に音声出力による負荷を与えて注意力を分散させ、負荷状態と無負荷状態とで操舵のぶれを表すステアリングエントロピー値をそれぞれ算出し、負荷状態と無負荷状態とで算出されたぶれ評価値の差に基づいて運転者の安全運転能力を評価する。
【0003】
高齢運転者等の運転能力を評価し、必要に応じて運転免許の返納や運転支援機能の導入等を検討するきっかけを与えることで、交通の安全性を向上し、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-174848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、運転者の安全運転能力を評価するために運転者に負荷を与える必要があるため、運転の支障になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である運転能力判定システムは、車両が走行中の道路の路面の情報とともに、車両の時系列の操舵角の変化を示す操舵角データを取得する情報取得部と、情報取得部により取得された路面の情報に基づいて、路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する凹凸判定部と、情報取得部により取得された操舵角データに基づいて、運転者の操舵の特性を表す評価値を算出する評価値算出部と、を備える。評価値算出部は、情報取得部により取得された操舵角データのうち、凹凸判定部により路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定された期間の第1操舵角データの重みを、凹凸判定部により路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定された期間の第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより、評価値を算出する。
【0007】
本発明の別の態様である運転能力判定方法は、コンピュータによりそれぞれ実行される、車両が走行中の道路の路面の情報とともに、車両の時系列の操舵角の変化を示す操舵角データを取得する情報取得ステップと、情報取得ステップで取得された路面の情報に基づいて、路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する凹凸判定ステップと、情報取得ステップで取得された操舵角データに基づいて、運転者の操舵の特性を表す評価値を算出する評価値算出ステップと、を含む。評価値算出ステップでは、情報取得ステップで取得された操舵角データのうち、凹凸判定ステップで路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定された期間の第1操舵角データの重みを、凹凸判定ステップで路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定された期間の第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより、評価値を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転に支障をきたすことなく運転能力を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】走行区間と運転負荷ついて説明するための図。
図2】本発明の実施形態に係る運転能力判定システムの要部構成の一例を示すブロック図。
図3】車両の操舵角の変動について説明するための図。
図4】操舵のぶれの程度の度数表示を例示する図。
図5図2の評価値算出部が考慮する路面の状態について説明するためのタイムチャート。
図6図2の演算部により実行される評価処理の一例を示すフローチャート。
図7図2の演算部により実行される重み付け処理の一例を示すフローチャート。
図8図2の演算部により実行される重み付け処理の別の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図8を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る運転能力判定システムは、車両の運転者の運転能力を判定する。一般に、運転者の運転行動は、認知、判断、および操作の3要素で構成される。これらの要素のうちの認知、判断に関わる人の知的機能である「認知機能」に係る能力は、加齢に伴って徐々に低下することが知られている。認知機能が低下すると、車両を安全に運転することが難しくなる。運転者が車両を運転したときの走行データに基づいて認知機能に係る運転能力を判定し、運転者自身やその家族が認知機能の低下傾向を把握することで安全運転を支援できる。
【0011】
図1は、走行区間と運転負荷ついて説明するための図である。図1に示すように、運転行動によって運転者にかかる運転負荷は、道路形状などの異なる走行区間に応じて変化する。例えば、S字カーブやクランク路の走行中、駐車スペースでの駐車中などは運転負荷が大きくなる。すなわち、車両の移動量あたりに運転者に要求される操舵が多く、車両の走行軌跡が複雑な形状となるような走行区間では、運転負荷が大きくなる。この場合、操舵の頻度が高いことに加え、アクセルやブレーキの操作と連携してステアリングを操作する必要があり、車両感覚も要求されるなど、高い運転技能が必要となる。このような走行区間(高負荷区間)では、運転者の運転技能が運転の安定性に大きく影響する。
【0012】
一方、直線路の走行中などは運転負荷がほとんどかからない。すなわち、車両の移動量あたりに運転者に要求される操舵がほとんどなく、車両の走行軌跡が極めて単純な形状となる走行区間では、運転負荷がほとんどなくなる。このような走行区間(無負荷区間)では、運転者の運転技能が運転の安定性にほとんど影響しない。
【0013】
カーブ路の走行中、複数車線の道路での車線変更中、交差点での右左折中などは、これらの中間の運転負荷となる。このような走行区間(低負荷区間)でも、運転者の運転技能は運転の安定性にそれほど影響しない。
【0014】
ただし、無負荷区間や低負荷区間であっても、例えば中央分離帯がない片側1車線の高速道路(対面通行区間)の走行中は、運転者が自車線の状況と対向車線の状況とを認識する必要が生じる。この場合、自車線と対向車線との間での視線移動が発生することで運転者の心的活動が増え、認知に係る運転負荷(以下、「認知負荷」と称する)が高くなる。交通量が多い複数車線の区間、標識や交通信号機が多く設けられている区間、繁華街などの歩行者が多い区間、見通しの悪いカーブ路や交差点などの死角が多い区間、複数の道路が交わる区間などでも、視線移動が要求されるため、認知負荷が高くなる。
【0015】
また、交差点において対向車線を越えて車両の進行方向を変更する旋回動作(車両の左側通行が採用されている国や地域では右折、右側通行が採用されている国や地域では左折。以下では、単に「右折」と称する。)を行うときは、運転者が車両の目標軌跡を認識するにあたり、前方の対向車線の状況を把握しつつ、右折した先の走行車線の状況を把握する必要が生じる。この場合も、前方の対向車線と右折した先の走行車線との間での視線移動が発生し、認知負荷が高くなる。
【0016】
このような認知負荷が高まる走行区間(以下、「特定区間」と称する)では、運転者の認知機能の状態が運転の安定性に影響する。特定区間の走行データを他の区間と識別可能な態様で取得し、その走行データに基づいて運転の安定性を評価することで、運転者の認知機能に係る運転能力を判定することができる。例えば、車両の時系列の位置情報を取得し、取得された位置情報に基づいて、地図情報において予め設定された特定区間の走行データを識別することができる。
【0017】
しかしながら、車両が走行中の道路における路面の凹凸の程度が大きく、進行方向に対して横方向の加速度(車幅方向または上下方向の加速度、以下では「横加速度」と称する)が作用するような場合には、運転者の操舵が乱され、走行データに基づいて運転者自身の運転の安定性を評価することが難しくなる。そこで本実施形態では、車両が走行中の道路における路面の状態に応じて走行データの取り扱い方を変えることで、認知機能に係る運転能力を適切に判定できるよう、以下のように運転能力判定システムを構成する。
【0018】
図2は、運転能力判定システム(以下、システム)10の要部構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、システム10は、CPUなどの演算部11、ROM,RAMなどの記憶部12、およびその周辺回路などを有するコンピュータを含んで構成される。演算部11は、情報取得部13と、凹凸判定部14と、負荷判定部15と、評価値算出部16と、認知機能評価部17と、情報出力部18として機能する。システム10は、車両に搭載された車載装置として構成されてもよく、車両の外部に設けられたサーバ装置等として構成されてもよく、車載装置と外部サーバ装置等とを組み合わせたものとして構成されてもよい。
【0019】
記憶部12には、演算部11が実行するプログラムや設定値などの情報とともに、道路地図情報が記憶される。道路地図情報には、道路の位置情報、道路の曲率や幅員等の情報、道路がアスファルト等で舗装された舗装道路であるか砂利道等の未舗装道路であるかについての情報などが含まれる。未舗装道路には、林道や農道、あぜ道なども含まれる。
【0020】
情報取得部13は、予め登録された運転者ごとに、車両の時系列の走行データを取得する。例えば、各運転者が日常的に運転する予め登録された車両で測定された走行データを取得する。走行データには、少なくとも、車両が走行中の道路の路面の情報と、運転者によるステアリング(ステアリングホイール、ハンドル)の操舵角の変化を示す時系列の操舵角データとが含まれる。走行データには、車両の時系列の位置情報なども含まれる。
【0021】
情報取得部13が取得する路面の情報は、例えば、車両に搭載されたセンサ(外界センサ)により検出された、車両周辺の道路における路面の凹凸の程度の情報である。例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有して道路の路面を含む車両周辺を撮像するカメラが搭載された車両からは、カメラにより検出(撮像)された路面の画像情報を路面の情報として取得することができる。
【0022】
この場合、情報取得部13により取得された路面の画像情報を処理し、路面の凹凸を検出し、検出された凹凸の面積、密集度、および深さまたは高さを推定することで、路面の凹凸の程度を推定することができる。なお、路面の凹凸には、道路に敷設された敷砂利等による一定の凹凸のほか、路面の陥没、道路上の散乱物、降雪時の轍なども含まれる。
【0023】
情報取得部13は、車両周辺の車両や障害物等の対象物までの距離を測定するライダやレーダが搭載された車両から、車両周辺における路面の凹部の深さまたは凸部の高さの情報を路面の情報として取得してもよい。
【0024】
情報取得部13が取得する路面の情報は、車両に搭載された加速度センサ(横Gセンサ)により検出された、車両に作用する横加速度の情報であってもよい。一般に、路面の凹凸の程度が大きいほど、車両に作用する横加速度は大きくなる。このため、取得された横加速度の情報に基づいて、車両が走行中の道路における路面の凹凸の程度を推定することができる。また、車両に作用する横加速度の大きさを所定の閾値と比較することで、路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定することもできる。
【0025】
情報取得部13が取得する路面の情報は、予め記憶された道路地図情報に含まれる、車両の位置情報に対応する道路の路面の情報であってもよい。この場合、情報取得部13は、車両に搭載された測位センサにより検出された車両の現在位置の情報(位置情報)を取得する。取得された車両の位置情報と、記憶部12に記憶された道路地図情報における道路の位置情報とを比較することで、車両が走行中の道路を特定し、走行中の道路が道路地図情報において予め定められた舗装道路であるか未舗装道路であるかを判定することができる。
【0026】
走行データは、例えば、車両に搭載されたTCU(テレマティクス制御装置)を介して所定周期で車両からシステム10に送信される。情報取得部13は、予め登録された車両から送信された走行データを、予め登録された運転者ごとの時系列の走行データとして取得する。情報取得部13により取得された運転者ごとの時系列の走行データは、記憶部12に記憶される。
【0027】
凹凸判定部14は、記憶部12に記憶された路面の情報に基づいて、路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する。より具体的には、路面の情報が路面の画像情報である場合は、先ず、路面の画像情報を処理することで路面の凹凸を検出し、検出された凹凸の深さまたは高さを推定する。次いで、推定された凹凸の深さまたは高さを所定の閾値と比較し、閾値以下のとき、路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定する。凹凸判定部14は、画像処理により検出された凹凸の面積や密集度を推定し、これらを考慮して凹凸の程度を推定してもよい。
【0028】
路面の情報が車両周辺における路面の凹部の深さまたは凸部の高さの情報である場合、凹凸判定部14は、凹凸の深さまたは高さを所定の閾値と比較して路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する。
【0029】
路面の情報が車両に作用する横加速度の情報である場合、凹凸判定部14は、横加速度の大きさを所定の閾値と比較し、閾値以下のとき、路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定する。
【0030】
路面の情報が車両の位置情報である場合、凹凸判定部14は、先ず、車両の位置情報と道路地図情報における道路の位置情報とを比較することで、車両が走行中の道路を特定する。次いで、特定された道路が道路地図情報において予め定められた舗装道路であるか未舗装道路であるかを判定し、未舗装道路であるとき、路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定する。
【0031】
同時刻の路面の情報として、複数種類の情報、例えば、車両に作用する横加速度の情報と車両の位置情報とが情報取得部13により取得され、記憶部12に記憶されている場合、凹凸判定部14は、上記の判定を組み合わせて行うことができる。すなわち、位置情報に基づいて特定された道路が未舗装道路である場合は、路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定する一方、舗装道路である場合は、さらに、横加速度の情報に基づいて路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する。この場合、位置情報に基づいて特定された道路が未舗装道路であっても、横加速度の大きさが閾値を超える場合は、路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定される。
【0032】
負荷判定部15は、記憶部12に記憶された走行データに基づいて、単位時間ごとに、運転者に所定の認知負荷が作用しているか否かを判定する。より具体的には、負荷判定部15は、車両の時系列の位置情報に基づいて、単位時間ごとの走行区間が、図1の無負荷区間または低負荷区間(無負荷・低負荷区間)であるか高負荷区間であるかを判定する。さらに、負荷判定部15は、単位時間ごとの走行区間が、無負荷・低負荷区間のうち、地図情報において予め設定された特定区間であるか否かを判定する。
【0033】
評価値算出部16は、記憶部12に記憶された操舵角データに基づいて、運転者個人の平均的な操舵の特性を表すα値と、認知負荷が高まったときの運転者の操舵の特性を表すHp値とを算出する。より具体的には、評価値算出部16は、負荷判定部15により無負荷・低負荷区間を走行中であると判定された期間の操舵角データに基づいてα値を算出する。また、評価値算出部16は、算出されたα値と、負荷判定部15により特定区間を走行中であると判定された期間の操舵角データとに基づいてHp値を算出する。
【0034】
図3は、車両の操舵角θの変動について説明するための図である。車両の運転が安定した状態では、操舵がぶれることなく滑らかに行われ、操舵角θの変動が小さくなる。一方、運転が不安定な状態では、操舵がぶれ、操舵角θの変動が大きくなる。
【0035】
より具体的には、図3に示すように、特定の時点nの直前の時点n-3,n-2,n-1の実際の操舵角θ(n-3),θ(n-2),θ(n-1)に基づいて、時点(n-1)を中心とする2次テイラー展開により時点nの予測操舵角θp(n)を算出する。予測操舵角θp(n)は、操舵が滑らかに行われたと仮定した推定値であるため、実際の操舵が滑らかに行われた場合は、実際の操舵角θ(n)に一致し、実際の操舵がぶれた場合は、ぶれの程度に応じて実際の操舵角θ(n)から乖離する。このような、ぶれの程度は、下式(i)により算出される予測誤差e(n)として表すことができる。
e(n)=θ(n)-θp(n) ・・・(i)
【0036】
図4は、操舵のぶれの程度の度数表示を例示する図であり、予測誤差e(n)の度数表示の一例を示す。評価値算出部16は、無負荷・低負荷区間の操舵角データに基づいて各時点nの予測操舵角θp(n)、予測誤差e(n)を算出し、実線で示すような予測誤差e(n)の度数分布における90パーセンタイル値(α値)を算出する。操舵が滑らかで操舵のぶれが少ないほど、予測誤差e(n)の度数分布が、操舵のぶれがない“0°”を中心としたシャープな形状となり、α値が小さくなる。一方、操舵のぶれが多いほど、予測誤差e(n)の度数分布がブロードな形状となり、α値が大きくなる。
【0037】
操舵が多く、操舵のぶれに対する運転技能の影響が大きい高負荷区間を除外した無負荷・低負荷区間の操舵角データを利用することで、運転者の平均的な操舵のぶれを表すα値を適切に算出することができる。
【0038】
さらに、評価値算出部16は、算出されたα値と、特定区間の操舵角データとに基づいて、Hp値を算出する。より具体的には、特定区間の操舵角データに基づいて各時点nの予測操舵角θp(n)、予測誤差e(n)を算出し、破線で示すような予測誤差e(n)の度数分布をα値に基づいて9つの範囲P1~P9に分ける。すなわち、8つの基準値-5α,-2.5α,-α,-0.5α,0.5α,α,2.5α,5αに基づいて、9つの範囲P1(~-5α),P2(-5α~-2.5α),P3(-2.5α~-α),P4(-α~-0.5α),P5(-0.5α~0.5α),P6(0.5α~α),P7(α~2.5α),P8(2.5α~5α),P9(5α~)に分ける。そして、各範囲P1~P9の割合p1~p9に基づいて、下式(ii)によりステアリングエントロピー値(Hp値)を算出する。
Hp=-Σpi・log9pi ・・・(ii)
【0039】
Hp値は、操舵の滑らかさを表し、操舵のぶれが少なく予測誤差e(n)の度数分布がシャープになるほど小さい値となり、操舵のぶれが多く予測誤差e(n)の度数分布がブロードになるほど大きい値となる。視線移動が多く操舵のぶれに対する認知機能の影響が大きい特定区間の操舵角データを利用することで、通常の状態に比して認知負荷が高まったときの運転者の操舵のぶれを表すHp値を適切に算出することができる。
【0040】
図5は、評価値算出部16が考慮する路面の状態について説明するためのタイムチャートであり、路面の状態についての凹凸判定部14による判定結果を示す。図5に示すように、情報取得部13により取得され、記憶部12に記憶された操舵角データのうち、凹凸判定部14により路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定された期間(~t1,t2~)の操舵角データを、以下では「第1操舵角データ」と称する。また、凹凸判定部14により路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定された期間(t1~t2)の操舵角データを、以下では「第2操舵角データ」と称する。なお、図5では、凹凸の程度が所定程度以下である路面の状態を「良好」、凹凸の程度が所定程度を超える路面の状態を「不良」として示す。
【0041】
(評価値の重み付け)
評価値算出部16は、第1操舵角データの重みを第2操舵角データの重みよりも大きくする重み付けを行った上で、Hp値、あるいはα値およびHp値を算出する。より具体的には、重み付けを行うことなくα値を算出する一方、重み付けを行った上でHp値を算出する。あるいは、重み付けを行った上でα値を算出するとともに、重み付けを行った上でHp値を算出する。
【0042】
重み付けを行うことなくα値を算出し、Hp値のみ重み付けを行った上で算出する場合、路面の状態についての凹凸判定部14による判定は、負荷判定部15により特定区間を走行中であると判定された期間の走行データについてのみ行うようにしてもよい。この場合、必要に応じて凹凸判定部14による演算負荷を抑制することができる。
【0043】
(α値の重み付け-度数への重み付け-)
評価値算出部16は、重み付けを行った上でα値を算出する場合、先ず、負荷判定部15により無負荷・低負荷区間を走行中であると判定された期間の第1操舵角データに基づいて、予測操舵角θp1(n)、予測誤差e1(n)を算出する。また、同様の期間の第2操舵角データに基づいて予測操舵角θp2(n)、予測誤差e2(n)を算出する。次いで、予測誤差e1(n)の度数(図4に実線で示す度数分布)に重み係数W1(0<W1、例えばW1=1)を乗算し、予測誤差e2(n)の度数に重み係数W2(0≦W2<W1、例えばW2=0)を乗算し、これらを合算する。評価値算出部16は、重み付けを行った上で合算された予測誤差(W1e1(n)+W2e2(n))の度数分布における90パーセンタイル値を、α値として算出する。
【0044】
(Hp値の重み付け-度数への重み付け-)
評価値算出部16は、重み付けを行った上でHp値を算出する場合、先ず、負荷判定部15により特定区間を走行中であると判定された期間の第1操舵角データに基づいて、予測操舵角θp1(n)、予測誤差e1(n)を算出する。また、同様の期間の第2操舵角データに基づいて予測操舵角θp2(n)、予測誤差e2(n)を算出する。次いで、予測誤差e1(n)の度数(図4に破線で示す度数分布)に重み係数W1(0<W1、例えばW1=1)を乗算し、予測誤差e2(n)の度数に重み係数W2(0≦W2<W1、例えばW2=0)を乗算し、これらを合算する。評価値算出部16は、重み付けを行った上で合算された予測誤差(W1e1(n)+W2e2(n))の度数分布をα値に基づいて範囲P1~P9に分け、各範囲P1~P9の割合p1~p9に基づいて、式(ii)によりHp値を算出する。
【0045】
(Hp値の重み付け-直接的な重み付け-)
評価値算出部16は、重み付けを行った上でHp値を算出する場合、第1操舵角データに基づくHp1値と第2操舵角データに基づくHp2値とをそれぞれ算出し、算出されたHp1値、Hp2値に重み係数W1,W2を乗算してもよい。より具体的には、評価値算出部16は、負荷判定部15により特定区間を走行中であると判定された期間の第1操舵角データに基づいて、予測操舵角θp1(n)、予測誤差e1(n)、Hp1値を算出する。また、同様の期間の第2操舵角データに基づいて予測操舵角θp2(n)、予測誤差e2(n)、Hp2値を算出する。評価値算出部16は、Hp1値に重み係数W1(0<W1、例えばW1=1)を乗算し、Hp2値に重み係数W2(0≦W2<W1、例えばW2=0)を乗算し、これらを合算した値(W1Hp1+W2Hp2)をHp値として算出する。
【0046】
認知機能評価部17は、評価値算出部16により算出されたHp値に基づいて運転者の認知機能を評価する。すなわち、認知負荷が高まったときの操舵のぶれを表すHp値を継続的に監視することで、その運転者の認知機能の低下傾向を評価することができる。例えば、日常的な運転の走行データに基づいて定期的に(例えば、毎月)算出されるHp値が増加傾向にある場合は、認知機能が低下傾向にあると評価する。
【0047】
情報出力部18は、認知機能評価部17による評価結果を運転者本人や家族などのユーザ端末に送信する。例えば、予め登録されたメールアドレス宛てに通知を送信することができる。この場合、通知をきっかけに、運転者本人や家族などが運転免許の返納や運転支援機能が充実した車両への代替えなどを検討することができる。走行データに基づく客観的な情報が提供されるため、運転者本人にとって自身の認知機能の現状を受け入れやすく、早期に適切な対応を検討することができる。
【0048】
図6は、システム10の演算部11により実行される評価処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば定期的に実行される。先ずステップS1で、記憶部12に記憶された走行データを読み出す。次いでステップS2で、ステップS1で読み出された走行データに基づいて、単位時間ごとの走行中の道路の路面の状態が良好であるか不良であるかを判定する。次いでステップS3で、ステップS1で読み出された走行データに基づいて、単位時間ごとの走行区間が無負荷・低負荷区間であるか高負荷区間であるかを判定する。また、無負荷・低負荷区間の走行データに基づいて、単位時間ごとの走行区間が特定区間であるか否かを判定する。
【0049】
次いでステップS4で、ステップS3で無負荷・低負荷区間を走行中であると判定された期間の操舵角データに基づいてα値を算出する。次いでステップS5で、ステップS4で算出されたα値と、ステップS3で特定区間を走行中であると判定された期間の操舵角データとに基づいて、Hp値を算出する。ステップS5で算出された最新のHp値は、記憶部12に記憶され、蓄積される。次いでステップS6で、記憶部12に記憶された最新のHp値を過去のHp値と比較し、運転者の認知機能に係る運転能力を判定する。次いでステップS7で、ステップS6の評価結果を事前に登録されたメールアドレス宛てに送信し、処理を終了する。
【0050】
このように、日常的な走行データのみに基づいて運転者の運転能力を判定するための指標となるα値およびHp値を算出できるため、運転に支障をきたすことなく運転能力を判定することができる(ステップS1~S5)。また、日常的な走行データのみに基づいて運転者の認知機能が自動的に評価され、評価結果が本人や家族に通知されるため、車両を運転する高齢者と離れて暮らす家族の見守り負担を軽減することができる(ステップS1~S7)。
【0051】
図7は、システム10の演算部11により実行される重み付け処理の一例を示すフローチャートであり、評価値(α値、Hp値)の算出過程で予測誤差の度数に重み係数を乗算する場合の重み付け処理の一例を示す。このフローチャートに示す処理は、図6のステップS4および/またはS5において実行される。
【0052】
(α値の重み付け-度数への重み付け-)
α値の算出過程で予測誤差の度数に重み係数を乗算する場合、このフローチャートに示す処理は、図6のステップS4において実行される。図7に示すように、先ずステップS10で、ステップS3で無負荷・低負荷区間を走行中であると判定された期間の第1操舵角データに基づいて予測操舵角θp1(n)を算出し、予測誤差e1(n)を算出する。また、同様の期間の第2操舵角データに基づいて予測操舵角θp2(n)を算出し、予測誤差e2(n)を算出する。次いでステップS11で、ステップS10で算出された予測誤差e1(n)の度数に重み係数W1を乗算し、ステップS10で算出された予測誤差e2(n)の度数に重み係数W2を乗算する。次いでステップS12で、ステップS11で算出された重み付け後の度数W1e1(n),W2e2(n)を合算する。この場合、図6のステップS4では、ステップS12で算出された、重み付けを行った上で合算された予測誤差(W1e1(n)+W2e2(n))の度数分布における90パーセンタイル値が、α値として算出される。
【0053】
(Hp値の重み付け-度数への重み付け-)
Hp値の算出過程で予測誤差の度数に重み係数を乗算する場合、このフローチャートに示す処理は、図6のステップS5において実行される。図7に示すように、先ずステップS10で、ステップS3で特定区間を走行中であると判定された期間の第1操舵角データに基づいて予測操舵角θp1(n)を算出し、予測誤差e1(n)を算出する。また、同様の期間の第2操舵角データに基づいて予測操舵角θp2(n)を算出し、予測誤差e2(n)を算出する。次いでステップS11で、ステップS10で算出された予測誤差e1(n)の度数に重み係数W1を乗算し、ステップS10で算出された予測誤差e2(n)の度数に重み係数W2を乗算する。次いでステップS12で、ステップS11で算出された重み付け後の度数W1e1(n),W2e2(n)を合算する。この場合、図6のステップS5では、ステップS12で合算された、重み付けを行った上で合算された予測誤差(W1e1(n)+W2e2(n))の度数分布と、図6のステップS4で算出されたα値とに基づいて、Hp値が算出される。
【0054】
(Hp値の重み付け-直接的な重み付け-)
図8は、システム10の演算部11により実行される重み付け処理の別の例を示すフローチャートであり、評価値(Hp値)に直接、重み係数を乗算する場合の、図6のフローチャートの変形例である。図8のステップS1~S4,S6,S7は、図6のステップS1~S4,S6,S7と同様であるため、説明を省略する。図8に示すように、ステップS5Aでは、ステップS4で算出されたα値と、ステップS3で特定区間を走行中であると判定された期間の第1操舵角データに基づいて予測操舵角θp1(n)、予測誤差e1(n)、Hp1値を算出する。また、同様の期間の第2操舵角データに基づいて予測操舵角θp2(n)、予測誤差e2(n)、Hp2値を算出する。次いでステップS5Bで、ステップS5Aで算出されたHp1値に重み係数W1を乗算し、ステップS5Aで算出されたHp2値に重み係数W2を乗算する。次いでステップS5Cで、ステップS5Bで算出された重み付け後のHp1値、Hp2値を合算し、Hp値(W1Hp1+W2Hp2)として算出する。
【0055】
車両が走行中の道路における路面の凹凸の程度が大きく、路面の状態が不良である場合には、車両に作用する横加速度が大きくなることで運転者の操舵が乱されるため、操舵角データに基づいて運転者自身の運転の安定性を評価することが難しくなる。一方、路面の凹凸の程度が小さく、路面の状態が良好な道路を走行中は、車両に作用する横加速度が小さく、運転者の操舵に対する影響が小さいため、操舵角データに基づいて運転者自身の運転の安定性を適切に評価することができる。路面の状態が良好な道路を走行中の第1操舵角データを積極的に利用する、すなわち第1操舵角データの重みを第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより評価値を算出することで、運転能力を精度よく判定することができる(ステップS11,S5B)。
【0056】
例えば、Hp値の算出に第1操舵角データを積極的に利用する場合は、路面の状態が良好な道路を走行中に認知負荷が高まったときの運転者の操舵の特性を評価することができる。この場合、定期的に算出され、蓄積されるHp値の精度が高まるため、運転者の認知機能を精度よく評価することができる。また、α値の算出にも第1操舵角データを積極的に利用する場合は、路面の状態が良好な道路の走行中における運転者の操舵の特性を評価することができ、α値の精度が高まるため、運転者の認知機能を一層精度よく評価することができる。
【0057】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)システム10は、車両が走行中の道路の路面の情報とともに、車両の時系列の操舵角の変化を示す操舵角データを取得する情報取得部13と、情報取得部13により取得された路面の情報に基づいて、路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する凹凸判定部14と、情報取得部13により取得された操舵角データに基づいて、運転者の操舵の特性を表す評価値を算出する評価値算出部16と、を備える(図2)。
【0058】
評価値算出部16は、情報取得部13により取得された操舵角データのうち、凹凸判定部14により路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定された期間の第1操舵角データの重みを、凹凸判定部14により路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定された期間の第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより、評価値を算出する。
【0059】
このように、日常的な走行データに基づいて運転者の運転能力を判定するための指標となる評価値を算出することで、運転に支障をきたすことなく運転者の運転能力を判定することができる。また、路面の凹凸の程度が小さく、車両に作用する横加速度による運転者の操舵に対する影響が小さい、良好な路面の状態の道路を走行中の第1操舵角データを積極的に利用することで、運転能力を精度よく判定することができる。
【0060】
(2)路面の情報は、車両に搭載されたセンサにより検出された路面の凹凸の深さまたは高さの情報である。凹凸判定部14は、凹凸の深さまたは高さが閾値以下のとき、路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定する。これにより、路面の状態が良好であるか不良であるかを精度よく判定することができる。
【0061】
(3)路面の情報は、車両に搭載されたセンサにより検出された車両に作用する横加速度の情報である。凹凸判定部14は、横加速度の大きさが閾値以下のとき、路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定する。これにより、路面の状態が良好であるか不良であるかを簡易かつ精度よく判定することができる。
【0062】
(4)路面の情報は、予め記憶された道路地図情報に含まれる、車両の位置情報に対応する道路の路面の情報である。凹凸判定部14は、車両が走行中の道路が未舗装道路であるとき、路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定する。これにより、路面の状態が良好であるか不良であるかを簡易に判定することができる。
【0063】
(5)システム10は、情報取得部13により取得された操舵角データに基づいて、運転者に所定の認知負荷が作用しているか否かを判定する負荷判定部15をさらに備える(図2)。評価値算出部16は、情報取得部13により取得された操舵角データに基づいて、運転者の平均的な操舵の特性を表すα値を算出するとともに、算出されたα値と、情報取得部13により取得された操舵角データのうち、負荷判定部15により所定の認知負荷が作用していると判定された期間の操舵角データと、に基づいて、所定の認知負荷が作用したときの運転者の操舵の特性を表すHp値を算出する。
【0064】
評価値算出部16は、第1操舵角データおよび第2操舵角データのいずれにも重み付けすることなくα値を算出する一方、第1操舵角データの重みを第2操舵角データの重みよりも大きくすることによりHp値を算出する。このように、路面の状態が良好な道路を走行中に認知負荷が高まったときの第1操舵角データを積極的に利用することで、Hp値を精度よく算出し、運転者の認知機能を精度よく評価することができる。また、α値を算出するための操舵角データについては路面の状態にかかわらず利用するため、十分なデータ量を確保することで、運転者の平均的な操舵の特性を表すα値を適切に算出することができる。
【0065】
(6)評価値算出部16は、第1操舵角データの重みを第2操舵角データの重みよりも大きくすることによりα値を算出するとともに、第1操舵角データの重みを第2操舵角データの重みよりも大きくすることによりHp値を算出する。例えば十分なデータ量が確保されている場合には、路面の状態が良好な道路を走行中に認知負荷が高まったときの第1操舵角データを積極的に利用することで、α値を精度よく算出し、運転者の認知機能を精度よく評価することができる。
【0066】
上記実施形態では、無負荷・低負荷区間を走行したときの操舵角データに基づいてα値を算出し、特定区間を走行したときの操舵角データに基づいてHp値を算出する例を説明したが、評価値算出部は、このようなものに限らない。評価値算出部は、運転者ごとの操舵角データに基づいて各運転者の操舵の特性を表す評価値を算出するものであれば、どのようなものでもよい。
【0067】
以上では、本発明を運転能力判定システムとして説明したが、本発明は、運転能力判定方法として用いることもできる。すなわち、運転能力判定方法は、コンピュータによりそれぞれ実行される、車両が走行中の道路の路面の情報とともに、車両の時系列の操舵角の変化を示す操舵角データを取得する情報取得ステップS1と、情報取得ステップS1で取得された路面の情報に基づいて、路面の凹凸の程度が所定程度以下であるか否かを判定する凹凸判定ステップS2と、情報取得ステップS1で取得された操舵角データに基づいて、運転者の操舵の特性を表す評価値を算出する評価値算出ステップS4,S5,S10~S12,S5A~A5Cと、を含む(図6図8)。評価値算出ステップS4,S5,S10~S12,S5A~A5Cでは、情報取得ステップS1で取得された操舵角データのうち、凹凸判定ステップS2で路面の凹凸の程度が所定程度以下であると判定された期間の第1操舵角データの重みを、凹凸判定ステップS2で路面の凹凸の程度が所定程度を超えると判定された期間の第2操舵角データの重みよりも大きくすることにより、評価値を算出する。
【0068】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 運転能力判定システム(システム)、11 演算部、12 記憶部、13 情報取得部、14 凹凸判定部、15 負荷判定部、16 評価値算出部、17 認知機能評価部、18 情報出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8