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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049046
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20240402BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20240402BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240402BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W30/16
B60W40/02
F02D29/02 301D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155272
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 一貴
【テーマコード(参考)】
3D241
3G093
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BA26
3D241BA60
3D241BB33
3D241BB34
3D241CE05
3D241DA12Z
3G093AA01
3G093BA23
3G093CB13
3G093DA06
3G093DB23
(57)【要約】
【課題】右折又は左折後に車両の速度の自動制御を簡易な操作で再開する。
【解決手段】車両の制御装置は、車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する走行制御部を備え、走行制御部は、速度制御機能の動作中に運転者によって車両の制動操作子が操作されたことに応じて速度制御機能の動作を中断し、再開条件を満たす場合に速度制御機能の動作を再開し、再開条件は、運転者が車両を交差点で右折又は左折した後の運転者による車両の駆動操作子の操作レベルが所定の範囲内であることを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置であって、
前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する走行制御手段を備え、
前記走行制御手段は、
前記速度制御機能の動作中に運転者によって前記車両の制動操作子が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断し、
再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開し、
前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子の操作レベルが所定の範囲内であることを含む、制御装置。
【請求項2】
前記再開条件は、前記速度制御機能の動作が中断されてからの経過時間が閾値以下であることを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記速度制御機能の動作の中断中に前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後に、前記速度制御機能の動作を再開することの再開提案を前記運転者に提供する提案手段をさらに備え、
前記走行制御手段は、前記再開提案が前記運転者に提供された後に、前記再開条件を満たすかどうかを判定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記提案手段は、提案条件を満たす場合に前記再開提案を前記運転者に提供し、
前記提案条件は、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記駆動操作子の操作レベルが閾値以下であることと、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記制動操作子の操作レベルが閾値以下であることと、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記車両の加減速が閾値以下であることと、
のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記走行制御手段は、
カメラによる環境の認識結果と、
前記車両の操舵制御子の操作レベル、前記車両の方向指示器の変化、又は前記車両の動的走行状態の変化と、
地図情報及び前記車両の位置情報と、
の少なくとも1つに基づいて、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折したことを判定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記走行制御手段は、前記再開条件を満たす場合に、中断前の設定速度を使用して前記速度制御機能の動作を再開する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記再開条件は、前記再開条件を満たすことによる前記速度制御機能の再開が前記速度制御機能の提供者によって許可されていることを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至7の何れか1項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
車両の制御方法であって、
前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する工程と、
前記速度制御機能の動作中に運転者によって前記車両の制動操作子が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断する工程と、
再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開する工程と、を有し、
前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子の操作レベルが所定の範囲内であることを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の速度を自動的に制御するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)と呼ばれる機能が実用化されている。ACCでは、先行車両があればそれに追従し、先行車両がなければ設定速度で走行するように車両の速度が制御される。先行車両の停車に応じて車両が停止した場合に、運転者からの指示に従って車両が発進する。特許文献1では、先行車両の発進前に車両の発進指示を運転者から取得することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4230385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
右折又は左折するために交差点の手前で運転者が車両を減速した場合に、速度の自動制御は中断される。従来技術では、速度の自動制御の再開は、運転者がボタンを操作することによって行われる。本発明の一部の側面は、右折又は左折後に車両の速度の自動制御を簡易な操作で再開するための技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の実施形態によれば、車両の制御装置であって、前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する走行制御手段を備え、前記走行制御手段は、前記速度制御機能の動作中に運転者によって前記車両の制動操作子が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断し、再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開し、前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子の操作レベルが所定の範囲内であることを含む、制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一部の実施形態によれば、右折又は左折後に車両の速度の自動制御を簡易な操作で再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一部の実施形態の車両の構成例を説明する模式図。
図2】一部の実施形態の速度制御機能の操作パネルを説明する模式図。
図3】一部の実施形態の速度制御機能の状態遷移例を説明するブロック図。
図4】一部の実施形態の速度制御機能の動作例を説明するフロー図。
図5】一部の実施形態の速度制御機能の動作例を説明するフロー図。
図6】一部の実施形態の再開条件例を説明する模式図。
図7】一部の実施形態の速度制御機能の動作例を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両1のブロック図である。図1において、車両1はその概略が平面図と側面図とで示されている。車両1は一例としてセダンタイプの四輪の乗用車である。車両1はこのような四輪車両であってもよいし、二輪車両や他のタイプの車両であってもよい。
【0010】
車両1は、車両1を制御する車両用制御装置2(以下、単に制御装置2と呼ぶ)を含む。制御装置2は車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU(Electronic Control Unit)20~29を含む。各ECUは、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ、半導体メモリ等のメモリ、外部デバイスとのインタフェース等を含む。メモリにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、メモリおよびインタフェース等を複数備えていてもよい。例えば、ECU20は、プロセッサ20aとメモリ20bとを備える。メモリ20bに格納されたプログラムが含む命令をプロセッサ20aが実行することによって、ECU20による処理が実行される。これに代えて、ECU20は、ECU20による処理を実行するためのASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用の集積回路を備えてもよい。他のECUについても同様である。
【0011】
以下、各ECU20~29が担当する機能等について説明する。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、統合したりすることが可能である。
【0012】
ECU20は、車両1の自動走行に関わる制御を実行する。自動運転においては、車両1の操舵と、加減速の少なくとも一方を自動制御する。ECU20による自動走行は、運転者による走行操作を必要としない自動走行(自動運転とも呼ばれうる)と、運転者による走行操作を支援するための自動走行(運転支援とも呼ばれうる)とを含んでもよい。
【0013】
ECU21は、電動パワーステアリング装置3を制御する。電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31に対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。また、電動パワーステアリング装置3は操舵操作をアシストしたり、前輪を自動操舵したりするための駆動力を発揮するモータや、操舵角を検知するセンサ等を含む。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU21は、ECU20からの指示に対応して電動パワーステアリング装置3を自動制御し、車両1の進行方向を制御する。
【0014】
ECU22および23は、車両1の周囲状況を検知する検知ユニット41~43の制御および検知結果の情報処理を行う。検知ユニット41は、車両1の前方を撮影するカメラであり(以下、カメラ41と表記する場合がある。)、本実施形態の場合、車両1のルーフの前側でフロントウィンドウの車室内側に取り付けられる。カメラ41が撮影した画像の解析により、物標の輪郭や、道路上の車線の区画線(白線等)を抽出可能である。
【0015】
検知ユニット42は、ライダ(Light Detection and Ranging)であり(以下、ライダ42と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測定したりする。本実施形態の場合、ライダ42は5つ設けられており、車両1の前部の各隅部に1つずつ、後部中央に1つ、後部各側方に1つずつ設けられている。検知ユニット43は、ミリ波レーダであり(以下、レーダ43と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測定したりする。本実施形態の場合、レーダ43は5つ設けられており、車両1の前部中央に1つ、前部各隅部に1つずつ、後部各隅部に一つずつ設けられている。
【0016】
ECU22は、一方のカメラ41と、各ライダ42の制御および検知結果の情報処理を行う。ECU23は、他方のカメラ41と、各レーダ43の制御および検知結果の情報処理を行う。車両1の周囲状況を検知する装置を二組備えたことで、検知結果の信頼性を向上でき、また、カメラ、ライダ、レーダといった種類の異なる検知ユニットを備えたことで、車両1の周辺環境の解析を多面的に行うことができる。
【0017】
ECU24は、ジャイロセンサ5、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ24b、通信装置24cの制御および検知結果あるいは通信結果の情報処理を行う。ジャイロセンサ5は車両1の回転運動を検知する。ジャイロセンサ5の検知結果や、車輪速等により車両1の進路を判定することができる。GNSSセンサ24bは、車両1の現在位置を検知する。通信装置24cは、地図情報や交通情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。ECU24は、地図情報を格納したデータベース24aにアクセス可能であり、ECU24は現在地から目的地へのルート探索等を行う。ECU24、データベース24a、GNSSセンサ24bは、いわゆるナビゲーション装置を構成している。
【0018】
ECU25は、車車間通信用の通信装置25aを備える。通信装置25aは、周辺の他車両と無線通信を行い、車両間での情報交換を行う。
【0019】
ECU26は、パワープラント6を制御する。パワープラント6は車両1の駆動輪を回転させる駆動力を出力する機構であり、例えば、エンジンと変速機とを含む。ECU26は、例えば、アクセルペダル7Aに設けた操作検知センサ7aにより検知した運転者の運転操作(アクセル操作あるいは加速操作)に対応してエンジンの出力を制御したり、車速センサ7cが検知した車速等の情報に基づいて変速機の変速段を切り替えたりする。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU26は、ECU20からの指示に対応してパワープラント6を自動制御し、車両1の加減速を制御する。変速機は、シフトレバー32を用いて運転者により指定されたシフトポジションに従って、歯車の組み合わせを切り替える。シフトポジションは、例えばドライブ、ニュートラル、リバース、パーキングなどを含んでもよい。シフトポジションは、シフトレバー32に代えて他の装置、例えばシフトスイッチを用いて指定されてもよい。
【0020】
ECU27は、方向指示器8(ウィンカ)を含む灯火器(ヘッドライト、テールライト等)を制御する。図1の例の場合、方向指示器8は車両1の前部、ドアミラーおよび後部に設けられている。
【0021】
ECU28は、入出力装置9の制御を行う。入出力装置9は運転者に対する情報の出力と、運転者からの情報の入力の受け付けを行う。音声出力装置91は運転者に対して音声により情報を報知する。表示装置92は運転者に対して画像の表示により情報を報知する。表示装置92は例えば運転席表面に配置され、インストルメントパネル等を構成する。なお、ここでは、音声と表示を例示したが振動や光により情報を報知してもよい。また、音声、表示、振動または光のうちの複数を組み合わせて情報を報知してもよい。更に、報知すべき情報のレベル(例えば緊急度)に応じて、組み合わせを異ならせたり、報知態様を異ならせたりしてもよい。入力装置93は運転者が操作可能な位置に配置され、車両1に対する指示を行うスイッチ群であるが、音声入力装置も含まれてもよい。
【0022】
ECU29は、ブレーキ装置10やパーキングブレーキ(不図示)を制御する。ブレーキ装置10は例えばディスクブレーキ装置であり、車両1の各車輪に設けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両1を減速あるいは停止させる。ECU29は、例えば、ブレーキペダル7Bに設けた操作検知センサ7bにより検知した運転者の運転操作(ブレーキ操作)に対応してブレーキ装置10の作動を制御する。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU29は、ECU20からの指示に対応してブレーキ装置10を自動制御し、車両1の減速および停止を制御する。ブレーキ装置10やパーキングブレーキは車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。また、パワープラント6の変速機がパーキングロック機構を備える場合、これを車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。
【0023】
車両1の制御装置2(例えば、ECU20)は、速度制御機能を提供してもよい。速度制御機能とは、車両1の速度を自動的に制御する機能である。制御装置2は、設定速度又は先行車両の速度に基づいて車両1の速度を自動的に制御してもよい。具体的に、制御装置2は、車両1の先行車両の速度が設定速度以下であれば先行車両に追従するように車両1の速度を自動的に制御する。制御装置2は、先行車両がいなければ、設定速度となるように車両1の速度を自動的に制御する。このような速度制御機能は、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)とも呼ばれうる。車両1の速度の自動制御は、制御装置2が車両1の駆動及び制動を自動的に制御することによって行われてもよい。速度制御機能を実行中の車両1の操舵は、運転者がステアリングホイール31を操作することによって行われてもよい。
【0024】
図2を参照して、制御装置2が速度制御機能に関する指示を運転者から取得するためのハードウェアについて説明する。車両1は、速度制御機能に関する指示を受け取るための操作パネル200を有してもよい。操作パネル200は、例えば車両1のインストルメントパネルに搭載されてもよいし、ステアリングホイール31に搭載されてもよい。操作パネル200は、起動ボタン201と、設定ボタン202と、再開ボタン203とを有する。操作パネル200は、他のボタンを有してもよい。図2の例では、速度制御機能に関する指示がボタンによって取得される。これに代えて、速度制御機能に関する指示は、他のハートウェア、例えばレバーや、タッチパネル上の仮想ボタンによって取得されてもよい。
【0025】
起動ボタン201は、速度制御機能のオン・オフを切り替えるためのボタンである。制御装置2は、速度制御機能がオフの状態で起動ボタン201が押下された場合に、速度制御機能をオンにする(すなわち、速度制御機能を起動する)。制御装置2は、速度制御機能がオンの状態で起動ボタン201が押下された場合に、速度制御機能をオフにする(すなわち、速度制御機能を停止する)。操作パネル200の例では、1つの起動ボタン201で速度制御機能のオン・オフが切り替わる。これに代えて、操作パネル200は、速度制御機能をオンにするためのボタンと速度制御機能をオフにするためのボタンとが別個に有してもよい。
【0026】
設定ボタン202は、設定速度を新たに設定して速度制御機能を動作状態に切り替えるためのボタンである。制御装置2は、速度制御機能がオンである状態で設定ボタン202が押下された場合に、車両1のその時点の速度を設定速度として使用して、車両1の速度を自動的に制御することを開始する。
【0027】
再開ボタン203は、設定速度を新たに設定せずに速度制御機能を動作状態に切り替えるためのボタンである。制御装置2は、速度制御機能がオンである状態で再開ボタン203が押下された場合に、以前の設定速度を使用して、車両1の速度を自動的に制御することを開始する。
【0028】
図3を参照して、速度制御機能の状態遷移について説明する。図3(a)に示されるように、速度制御機能は、オフ状態301と、スタンバイ状態302と、動作状態303と、判定状態304とを取りうる。速度制御機能は、他の状態を取ってもよい。スタンバイ状態302と、動作状態303と、判定状態304とを合わせてオン状態とみなしてもよい。
【0029】
オフ状態301とは、速度制御機能がオフの状態である。速度制御機能がオフ状態301である場合に、制御装置2は、車両1の速度を自動的に制御する動作を行わない。速度制御機能がオフ状態301である場合に、制御装置2は、設定ボタン202及び再開ボタン203による操作を受け付けず、起動ボタン201による操作を受け付ける。
【0030】
スタンバイ状態302とは、速度制御機能の動作開始を待機している状態である。速度制御機能がスタンバイ状態302である場合に、制御装置2は、車両1の速度を自動的に制御する動作を行わない。速度制御機能がスタンバイ状態302である場合に、制御装置2は、起動ボタン201、設定ボタン202及び再開ボタン203による何れの操作も受け付ける。
【0031】
動作状態303とは、速度制御機能が動作中である状態である。速度制御機能が動作状態303である場合に、制御装置2は、車両1の速度を自動的に制御している。速度制御機能が動作状態303である場合に、制御装置2は、起動ボタン201、設定ボタン202及び再開ボタン203による何れの操作も受け付ける。
【0032】
判定状態304とは、速度制御機能の動作を再開するかどうかを判定中の状態である。以下、速度制御機能の動作を再開するかどうかを判定するために使用される条件を、再開条件と表す。再開条件は、運転者が車両1を交差点で右折又は左折した後の運転者による車両1のアクセルペダル7Aの操作レベルが所定の範囲内であることを含んでもよい。交差点は、十字路であってもよいし、丁字路であってもよいし、多差路であってもよい。アクセルペダル7Aは、運転者が車両1の駆動力を制御するために使用される駆動操作子の一例である。アクセルペダル7Aの代わりに他の駆動操作子が使用されてもよい。速度制御機能が判定状態304である場合に、制御装置2は、車両1の速度を自動的に制御する動作を行わない。速度制御機能が判定状態304である場合に、制御装置2は、起動ボタン201、設定ボタン202及び再開ボタン203による何れの操作も受け付ける。
【0033】
続いて、速度制御機能における状態間の遷移について説明する。矢印311で示されるように、速度制御機能がオフ状態301である間に起動ボタン201が押下された場合に、速度制御機能はスタンバイ状態302に遷移する。矢印312で示されるように、速度制御機能がスタンバイ状態302である間に起動ボタン201が押下された場合に、速度制御機能はオフ状態301に遷移する。矢印313で示されるように、速度制御機能がスタンバイ状態302である間に設定ボタン202又は再開ボタン203が押下された場合に、速度制御機能は動作状態303に遷移する。
【0034】
矢印314で示されるように、速度制御機能が動作状態303である間にブレーキペダル7Bが運転者によって操作された場合に、速度制御機能はスタンバイ状態302に遷移する。ブレーキペダル7Bは、運転者が車両1の制動力を制御するために使用される制動操作子の一例である。ブレーキペダル7Bの代わりに他の制動操作子が使用されてもよい。
【0035】
矢印315で示されるように、速度制御機能がスタンバイ状態302である間に運転者が車両1を交差点で右折又は左折した場合に、速度制御機能は判定状態304に遷移する。矢印316で示されるように、再開条件が満たされない場合に、速度制御機能はスタンバイ状態302に遷移する。
【0036】
矢印317で示されるように、速度制御機能が判定状態304である間に起動ボタン201が押下された場合に、速度制御機能はオフ状態301に遷移する。矢印318で示されるように、再開条件が満たされる場合に、速度制御機能は動作状態303に遷移する。矢印319で示されるように、速度制御機能が動作状態303である間に起動ボタン201が押下された場合に、速度制御機能はオフ状態301に遷移する。
【0037】
続いて、図3(b)を参照して、動作状態303における速度制御機能の状態遷移について説明する。図3(b)に示されるように、動作状態303における速度制御機能は、定速走行状態321と、停止状態322と、追従走行状態323と、オーバーライド状態324とを取りうる。速度制御機能は、動作状態303において他の状態を取ってもよい。
【0038】
定速走行状態321とは、設定速度となるように制御装置2が車両1の速度を自動的に制御している状態である。停止状態322とは、運転者によるブレーキペダル7Bの操作なしに制御装置2が自動的に制動力を印加することによって車両1が停止している状態である。
【0039】
追従走行状態323とは、先行車両に追従するように制御装置2が車両1の速度を自動的に制御している状態である。車両1が先行車両に追従するとは、先行車両との車間距離が所定の車間距離となるように車両1が走行することである。所定の車間距離は、事前に設定された値であってもよいし、運転者によって変更可能であってもよい。所定の車間距離は、一定値であってもよいし、先行車両の速度に応じた値であってもよい。
【0040】
オーバーライド状態324とは、運転者によるアクセルペダル7Aの操作量に応じて車両1が走行している状態である。典型的に、オーバーライド状態324における車両1の速度は、設定速度よりも高い。動作状態303において設定ボタン202が押下された場合に、設定速度は車両1のその時点の速度に更新される。
【0041】
続いて、動作状態303における状態間の遷移について説明する。矢印331で示されるように、速度制御機能が定速走行状態321である間に車両1の前方に先行車両が現れた場合に、速度制御機能は追従走行状態323に遷移する。速度制御機能における先行車両とは、車両1の前方を所定の車間距離以内で走行している車両のことである。例えば、他の車両が他の車線から車両1の前方に車線変更した場合や、車両1の前方を走行中の他の車両に車両1が追いついた場合に、速度制御機能は定速走行状態321から追従走行状態323に遷移する。
【0042】
矢印332で示されるように、速度制御機能が定速走行状態321である間に運転者がアクセルペダル7Aの操作を開始した場合に、速度制御機能はオーバーライド状態324に遷移する。矢印333で示されるように、速度制御機能が停止状態322である間に運転者が発進指示を行った場合に、先行車両が存在しないならば、速度制御機能は定速走行状態321に遷移する。運転者による発進指示は、アクセルペダル7Aの操作であってもよいし、再開ボタン203の押下であってもよいし、音声による指示であってもよい。矢印334で示されるように、速度制御機能が停止状態322である間に運転者が発進指示を行った場合に、先行車両が存在すれば、速度制御機能は追従走行状態323に遷移する。運転者による発進指示は、アクセルペダル7Aの操作であってもよいし、再開ボタン203の押下であってもよいし、音声による指示であってもよい。このように、制御装置2は、速度制御機能によって車両1の停止状態を維持している場合に、運転者からの指示に基づいて車両1を発進する。
【0043】
矢印335で示されるように、速度制御機能が追従走行状態323である間に運転者がアクセルペダル7Aの操作を開始した場合に、速度制御機能はオーバーライド状態324に遷移する。矢印336で示されるように、速度制御機能が追従走行状態323である間に先行車両が存在しなくなった場合に、速度制御機能は定速走行状態321に遷移する。例えば、先行車両が他の車線に車線変更した場合や、先行車両の速度が設定速度よりも速くなった場合に、速度制御機能は、追従走行状態323から定速走行状態321に遷移する。
【0044】
矢印337で示されるように、速度制御機能が追従走行状態323である間に車両1が停止した場合に、速度制御機能は停止状態322に遷移する。例えば、先行車両が停止した場合に、それに応じて車両1も停止する。矢印338で示されるように、速度制御機能がオーバーライド状態324である間に運転者がアクセルペダル7Aの操作を終了した場合に、先行車両が存在しないならば、速度制御機能は定速走行状態321に遷移する。矢印339で示されるように、速度制御機能がオーバーライド状態324である間に運転者がアクセルペダル7Aの操作を終了した場合に、先行車両が存在するならば、速度制御機能は追従走行状態323に遷移する。
【0045】
図4を参照して、図3(a)の矢印313で示される遷移における制御装置2の詳細な動作例について説明する。図4の各ステップは、制御装置2のプロセッサ(例えば、プロセッサ20a)が制御装置2のメモリ(例えば、メモリ20b)に記憶されたプログラムを実行することによって行われてもよい。これに代えて、図4の各ステップは、特定用途向け集積回路(ASIC)のような専用回路によって行われてもよい。後述する図5の各ステップについても同様である。図4の動作は、速度制御機能がスタンバイ状態302に遷移したことに応じて開始されてもよい。速度制御機能がスタンバイ状態302である間に、図4に説明される動作と並行して、図3(a)を参照して説明された状態遷移が行われる。
【0046】
S401で、制御装置2は、新たな設定速度で速度制御機能の動作を開始することの指示を受けたかどうかを判定する。制御装置2は、新たな設定速度で速度制御機能の動作を開始することの指示を受けたと判定された場合(S401で「YES」)に処理をS402に遷移し、それ以外の場合(S401で「NO」)に処理をS403に遷移する。新たな設定速度で速度制御機能の動作を開始することを指示は、例えば設定ボタン202を押下することによって行われてもよい。S402で、制御装置2は、速度制御機能の動作を開始することの指示を受けた時点の車両1の速度を設定速度としてメモリ(例えば、メモリ20b)に記憶する。すでに設定速度がメモリに記憶されている場合に、制御装置2は、過去の設定速度を上書きしてもよい。速度制御機能の動作を開始することの指示を受けた時点の車両1の速度が閾値以下(例えば、時速30km以下)である場合に、制御装置2は、デフォルト値(例えば、時速30km)を設定速度として記憶してもよい。
【0047】
S403で、制御装置2は、以前の設定速度で速度制御機能の動作を開始することの指示を受けたかどうかを判定する。制御装置2は、以前の設定速度で速度制御機能の動作を開始することの指示を受けたと判定された場合(S403で「YES」)に処理をS404に遷移し、それ以外の場合(S403で「NO」)に処理をS401に遷移する。以前の設定速度で速度制御機能の動作を開始することを指示は、例えば再開ボタン203を押下することによって行われてもよい。図4の動作でS403がS401よりも後に実行されるように説明されるが、これらのステップは逆の順番で実行されてもよい。
【0048】
S404で、制御装置2は、設定速度がメモリに記憶されているかどうかを判定する。制御装置2は、設定速度がメモリに記憶されていると判定された場合(S404で「YES」)に処理をS405に遷移し、それ以外の場合(S404で「NO」)に処理をS401に遷移する。設定速度がメモリに記憶されていない場合に、制御装置2は、以前の設定速度で速度制御機能の動作を開始することができない。そのため、制御装置2は、処理をS401に戻して運転者からの新たな指示を待機する。この際に、制御装置2は、運転者に対して、設定速度が記憶されていないために速度制御機能を再開できないことを通知してもよい。制御装置2は、S404において処理をS401に遷移する代わりに、処理をS402に遷移してもよい。この場合に、運転者が再開ボタン203ではなく設定ボタン202を押下したものとして処理が行われる。
【0049】
S405で、制御装置2は、運転者がアクセルペダル7Aを操作しているかどうかを判定する。制御装置2は、運転者がアクセルペダル7Aを操作していると判定された場合(S405で「YES」)に処理をS406に遷移し、それ以外の場合(S405で「NO」)に処理をS407に遷移する。S406で、制御装置2は、速度制御機能をオーバーライド状態324に遷移する。この遷移によって、スタンバイ状態302における動作は終了する。
【0050】
S407で、制御装置2は、車両1が停止しているかどうかを判定する。制御装置2は、車両1が停止していると判定された場合(S407で「YES」)に処理をS408に遷移し、それ以外の場合(S407で「NO」)に処理をS409に遷移する。S408で、制御装置2は、車両1に制動力を印加した後、運転者がブレーキペダル7Bの操作を終了したことに応じて、速度制御機能を停止状態322に遷移する。この遷移によって、スタンバイ状態302における動作は終了する。
【0051】
S409で、制御装置2は、先行車両が存在するかどうかを判定する。制御装置2は、先行車両が存在すると判定された場合(S409で「YES」)に処理をS410に遷移し、それ以外の場合(S409で「NO」)に処理をS411に遷移する。S410で、制御装置2は、速度制御機能を追従走行状態323に遷移する。S411で、制御装置2は、速度制御機能を定速走行状態321に遷移する。これらの遷移によって、スタンバイ状態302における動作は終了する。
【0052】
図5を参照して、速度制御機能が動作状態303である間の制御装置2の動作例について説明する。図5の動作は、速度制御機能が動作状態303に遷移したことに応じて開始されてもよい。上述のように、動作状態303への遷移は、スタンバイ状態302である間に設定ボタン202又は再開ボタン203が押下されること、及び判定状態304である間に再開条件が満たされることによって行われてもよい。速度制御機能が動作状態303である間に、以下に説明される動作に並行して、図3(a)及び図3(b)を参照して説明された状態遷移が行われる。
【0053】
S501で、制御装置2は、運転者がブレーキペダル7Bを操作したかどうかを判定する。制御装置2は、運転者がブレーキペダル7Bを操作したと判定された場合(S501で「YES」)に処理をS502に遷移し、それ以外の場合(S501で「NO」)にS501を繰り返す。S502で、制御装置2は、速度制御機能をスタンバイ状態302に遷移する。このように、制御装置2は、速度制御機能の動作中に運転者によって車両1のブレーキペダル7Bが操作されたことに応じて速度制御機能の動作を中断する。以降のステップでは、速度制御機能がスタンバイ状態302であるため、以下に説明される動作に並行して、図3(a)を参照して説明された状態遷移及び図4を参照して説明された動作が行われる。
【0054】
S503で、制御装置2は、速度制御機能がスタンバイ状態以外の状態に遷移したかどうかを判定する。制御装置2は、速度制御機能がスタンバイ状態以外の状態に遷移したと判定された場合(S503で「YES」)に処理を終了し、それ以外の場合(S503で「NO」)に処理をS504に遷移する。図5の動作を並行して行われる図3(a)の状態遷移によって、速度制御機能がオフ状態301又は動作状態303に遷移することがある。この場合に、制御装置2は、図5の処理を終了する。この場合に、制御装置2は、後述する再開提案(S506)を行わない。
【0055】
S504で、制御装置2は、運転者が車両1を交差点で右折又は左折したかどうかを判定する。制御装置2は、運転者が車両1を交差点で右折又は左折したと判定された場合(S504で「YES」)に処理をS505に遷移し、それ以外の場合(S504で「NO」)に処理をS503に遷移する。制御装置2は、運転者が車両1を交差点で右折又は左折したかどうかを何れの方法で判定してもよい。以下、この判定の具体例について説明する。制御装置2は、以下に説明する方法を組み合わせて運転者が車両1を交差点で右折又は左折したかどうかを判定してもよい。以下では運転者が車両1を左折する場合について説明するが、右折する場合も同様に判定できる。
【0056】
制御装置2は、カメラ41による環境の認識結果に基づいて、運転者が車両1を左折したかどうかを判定してもよい。例えば、制御装置2は、カメラ41による車両1の前方の画像が左方向に90度回転したことに基づいて、運転者が車両1を左折したと判定してもよい。
【0057】
制御装置2は、車両1のステアリングホイール31の操作レベル、車両1の方向指示器8の変化、又は車両1の動的走行状態の変化に基づいて、運転者が車両1を右折又は左折したかどうかを判定してもよい。ステアリングホイール31は、運転者が車両1を操舵するために使用される操舵操作子の一例である。ステアリングホイール31の操作レベルとは、ステアリングホイール31の操作量のことであってもよいし、ステアリングホイール31の操作時間のことであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。例えば、制御装置2は、ステアリングホイール31が所定量だけ左回転し、その後同じ量だけ右回転したことに基づいて、運転者が車両1を左折したと判定してもよい。例えば、制御装置2は、運転者の操作によって方向指示器8が左方向を指示し、その後に運転者の操作によらずに方向指示器8が消灯したことに基づいて、運転者が車両1を左折したと判定してもよい。例えば、制御装置2は、車両1の動的走行状態、例えば車両1の速度、加速度及びヨーレートの変化に基づいて車両1の軌道を算出し、この軌道に基づいて、運転者が車両1を左折したと判定してもよい。
【0058】
制御装置2は、地図情報及び車両1の位置情報に基づいて、運転者が車両1を左折したかどうかを判定してもよい。例えば、制御装置2は、GNSSセンサ24bを用いて測定された車両1の位置を記憶し、車両1の移動経路と地図とを比較することによって、運転者が車両1を左折したと判定してもよい。
【0059】
S505で、制御装置2は、速度制御機能を判定状態304に遷移する。S506で、制御装置2は、再開条件を満たすかどうかを判定する。制御装置2は、再開条件を満たすと判定された場合(S506で「YES」)に処理をS507に遷移し、それ以外の場合(S506で「NO」)に処理を終了する。S507で、制御装置2は、速度制御機能を動作状態303に遷移することによって、速度制御機能の動作を再開する。この場合に、制御装置2は、中断前の設定速度(すなわち、メモリに記憶されている設定速度)を使用して速度制御機能の動作を再開する。制御装置2は、速度制御機能の動作を再開したことを運転者に通知してもよい。
【0060】
再開条件について具体的に説明する。再開条件は、速度制御機能の動作の再開を運転者が希望していると考えられる状況において満たされる条件であってもよい。上述のように、再開提案は、運転者が車両1を交差点で右折又は左折した後の運転者による車両1のアクセスペダル7Aの操作レベルが所定の範囲内であることを含んでもよい。アクセルペダル7Aの操作レベルとは、アクセルペダル7Aの操作量のことであってもよいし、アクセルペダル7Aの操作時間のことであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。アクセスペダル7Aの操作レベルが所定の範囲内であることは、運転者が車両1を右折又は左折した後の所定の期間(例えば、右折又は左折してから3秒後に開始し10秒後に終了する期間)に判定されてもよい。制御装置2は、この期間にわたって速度制御機能を判定状態304にする。制御装置2は、この期間中であっても、運転者の指示などの他の要因によって判定状態304を別の状態に遷移してもよい。
【0061】
図6に示されるように、速度制御機能が動作中に運転者が車両1を交差点601で左折するとする。この場合に、運転者は車両1を減速するために交差点601の手前でブレーキペダル7Bを操作し、それに応じて速度制御機能の動作が中断される。運転者は、交差点601を左折後に、加速するためのアクセルペダル7Aを踏み込む。左折後の交通環境が左折前と同様であれば、運転者は速度制御機能の動作の再開を望んでいると考えられる。そこで、制御装置2は、速度制御機能の動作を再開する。一方、左折後に運転者によるアクセルペダル7Aの操作レベルが所定の範囲よりも低い場合に、運転者が慎重に運転していると考えられる。そのため、このような場合に、制御装置2は、速度制御機能の動作を再開しない。また、左折後に運転者によるアクセルペダル7Aの操作レベルが所定の範囲よりも大きい場合に、運転者が積極的に車両1を加速したがっていると考えられる。そのため、このような場合に、制御装置2は、速度制御機能の動作を再開しない。制御装置2は、速度制御機能が判定状態304である間に、車両1の加速を制限してもよい。例えば、制御装置2は、速度制御機能が判定状態304である間に、アクセルペダル7Aの操作レベルが所定の範囲よりも大きくても、アクセルペダル7Aの操作レベルが所定の範囲内(例えば、その上限)であった場合と同様に車両1を加速してもよい。
【0062】
再開条件は、速度制御機能の動作が中断されてからの経過時間が閾値以下(例えば、10~30秒以下)であることを含んでもよい。この経過時間の終点は、S506における判定時であってもよいし、車両1が交差点で左折又は右折後に運転者がアクセルペダル7Aの操作を開始した時点であってもよい。例えば、速度制御機能の動作が中断されてからの経過時間が閾値よりも長い場合に、運転者は交差点での右折又は左折とは関係なく速度制御機能の動作を中断したと考えられる。そのため、このような場合に、制御装置2は、速度制御機能の動作を再開しない。
【0063】
再開条件は、S501で速度制御機能の動作が中断される前の車両1の状態に基づいてもよい。例えば、再開条件は、速度制御機能の動作が中断される前に、速度制御機能の動作が閾値以上継続していることを含んでもよい。この閾値は、時間(例えば、30秒)であってもよいし、距離(例えば、100m)であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。例えば、速度制御機能の動作が中断される前の速度制御機能の動作時間が短い場合に、運転者は、誤って速度制御機能の動作を開始した可能性が高い。このような場合に、運転者は、速度制御機能の動作を再開することを望まないかもしれない。そのため、このような場合に、再開条件が満たされず、制御装置2は、速度制御機能の動作を再開しなくてもよい。
【0064】
再開条件は、S501で速度制御機能の動作が中断されてから、S504で運転者が車両1を右折又は左折し終わるまでの期間中の車両1の状態に基づいてもよい。以下の説明において、S501で速度制御機能の動作が中断されてから、S504で運転者が車両1を右折又は左折し終わるまでの期間を進路変更期間と表す。以下に説明する進路変更期間は、運転者が車両1を右折又は左折し始めてから右折又は左折し終わるまでの期間であってもよいし、S501で速度制御機能の動作が中断されてから運転者が車両1を右折又は左折し始めるまでの期間であってもよい。
【0065】
再開条件は、進路変更期間中の車両1のアクセルペダル7Aの操作レベルが閾値以下であることを含んでもよい。アクセルペダル7Aの操作レベルの閾値はゼロであってもよい。すなわち、再開条件は、進路変更期間中に運転者がアクセルペダル7Aを操作していないことであってもよい。進路変更期間中の車両1のアクセルペダル7Aの操作レベルが閾値よりも大きい場合に、運転者が速度制御機能の動作を終了して自分で車両1を運転しようとしている可能性が高い。そのため、このような場合に、再開条件が満たされず、制御装置2は速度制御機能の動作を再開しなくてもよい。
【0066】
再開条件は、進路変更期間中の車両1のブレーキペダル7Bの操作レベルが閾値以下であることを含んでもよい。ブレーキペダル7Bの操作レベルとは、ブレーキペダル7Bの操作量のことであってもよいし、ブレーキペダル7Bの操作時間のことであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。ブレーキペダル7Bの操作レベルの閾値は、通常の走行時の操作レベルの上限に設定されてもよい。進路変更期間中の車両1のブレーキペダル7Bの操作レベルが閾値よりも大きい場合に、運転者が急ブレーキによって車両1を停止した可能性が高い。このような場合に、運転者は、速度制御機能の動作を再開するのではなく、周囲の安全を確認しながら自身で走行することを望むかもしれない。そのため、このような場合に、再開条件が満たされず、制御装置2は速度制御機能の動作を再開しなくてもよい。同様の観点から、再開条件は、進路変更期間中に衝突軽減ブレーキ機能が作動していないことを含んでもよい。
【0067】
再開条件は、進路変更期間中の車両1の加減速が閾値以下であることを含んでもよい。進路変更期間中の車両1の加減速が閾値よりも大きい場合に、運転者が急加速又は急ブレーキした可能性が高い。このような場合に、運転者は、速度制御機能の動作を再開するのではなく、周囲の安全を確認しながら自身で走行することを望むかもしれない。そのため、このような場合に、再開条件が満たされず、制御装置2は速度制御機能の動作を再開しなくてもよい。
【0068】
以上において、再開条件として様々な条件が説明された。これらの条件は組み合わせて使用されてもよい。これらの条件は、論理積で組み合わされてもよいし、論理和で組み合わされてもよいし、他の論理演算で組み合わされてもよい。以上のように、適切な再開条件で速度制御機能の動作を再開することによって、速度制御機能の動作が不要に再開されることを抑制できる。
【0069】
再開条件は、上述の再開条件を満たすことによる速度制御機能の再開が、速度制御機能の提供者(例えば、自動車メーカ)によって許可されていることを含んでもよい。例えば、上述の速度制御機能の再開は、ACCのオプション機能として提供されてもよい。車両1の所有者は、自動車メーカからオプション機能の使用許可を得ることによって、制御装置2が上述の速度制御機能の再開を実行可能な状態にしてもよい。例えば、所有者は、車両1の入力装置を通じてライセンスコードを入力してもよいし、車両1の通信装置24cを通じて外部のサーバから使用許可を受信してもよい。
【0070】
図7を参照して、図5の動作の変形例について説明する。図7の動作は、S505の代わりにS701及びS702を含む点で図5の動作と異なる。S701で、制御装置2は、提案条件を満たすかどうかを判定する。制御装置2は、提案条件を満たすと判定された場合(S701で「YES」)に処理をS702に遷移し、それ以外の場合(S701で「NO」)に処理を終了する。S702で、制御装置2は、再開提案を行い、速度制御機能を判定状態304に遷移する。
【0071】
再開提案とは、速度制御機能の動作を再開することの提案のことである。提案条件とは、再開提案を運転者に提供するための条件のことである。図5の動作例では、制御装置2は、再開条件を満たす場合に速度制御機能の動作を自動的に再開する。図7の動作例では、制御装置2は、再開条件を満たすかどうかを判定する前に運転者に対して速度制御機能の動作の再開を提案する。例えば、再開提案は、アクセルペダル7Aの操作レベルが所定の範囲であれば速度制御機能を動作状態303に遷移できることのメッセージを表示装置92に表示することであってもよい。これに代えて又はこれに加えて、再開提案は、当該メッセージを音声によって運転者に提供することであってもよい。
【0072】
S701の提案条件の判定は、運転者が車両1を右折又は左折してから所定の時間が経過後(例えば、右折又は左折してから3秒後)に行われてもよい。提案条件は、この時点までに判定可能な再開条件と同じであってもよい。例えば、提案条件は、再開条件と同様に、速度制御機能の動作が中断されてからの経過時間が閾値以下(例えば、10~30秒以下)であることを含んでもよい。提案条件は、再開条件と同様に、S501で速度制御機能の動作が中断される前の車両1の状態に基づいてもよい。提案条件は、再開条件と同様に、S501で速度制御機能の動作が中断されてから、S504で運転者が車両1を右折又は左折し終わるまでの期間中の車両1の状態に基づいてもよい。提案条件は、再開条件と同様に、再開提案を行うことが速度制御機能の提供者(例えば、自動車メーカ)によって許可されていることを含んでもよい。上述の様々な提案条件は組み合わせて使用されてもよい。これらの条件は、論理積で組み合わされてもよいし、論理和で組み合わされてもよいし、他の論理演算で組み合わされてもよい。以上のように、適切な提案条件で速度制御機能の動作を再開することによって、不要な提案が運転者に提供されることを抑制できる。
【0073】
上述の説明では、設定速度又は先行車両の速度に基づいて車両1の速度を自動的に制御するACCの観点で実施形態が説明された。これに代えて、上述の技術は、設定速度の速度に基づいて車両1の速度を自動的に制御する機能、いわゆる通常のクルーズ・コントロールにも適用可能である。
【0074】
<実施形態のまとめ>
<項目1>
車両(1)の制御装置(2)であって、
前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する走行制御手段(20)を備え、
前記走行制御手段は、
前記速度制御機能の動作中に運転者によって前記車両の制動操作子(7B)が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断し、
再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開し、
前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点(601)で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子(7A)の操作レベルが所定の範囲内であることを含む、制御装置。
この項目によれば、右折又は左折後に車両の速度の自動制御を簡易な操作で再開できる。
<項目2>
前記再開条件は、前記速度制御機能の動作が中断されてからの経過時間が閾値以下であることを含む、項目1に記載の制御装置。
この項目によれば、速度制御機能の動作が不要に再開されることを抑制できる。
<項目3>
前記速度制御機能の動作の中断中に前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後に、前記速度制御機能の動作を再開することの再開提案を前記運転者に提供する提案手段(28)をさらに備え、
前記走行制御手段は、前記再開提案が前記運転者に提供された後に、前記再開条件を満たすかどうかを判定する、項目1に記載の制御装置。
この項目によれば、速度制御機能の動作を再開可能であることを運転者が把握できる。
<項目4>
前記提案手段は、提案条件を満たす場合に前記再開提案を前記運転者に提供し、
前記提案条件は、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記駆動操作子の操作レベルが閾値以下であることと、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記制動操作子の操作レベルが閾値以下であることと、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記車両の加減速が閾値以下であることと、
のうちの1つ以上を含む、項目3に記載の制御装置。
この項目によれば、運転者に不要な案内が提供されることを抑制できる。
<項目5>
前記走行制御手段は、
カメラによる環境の認識結果と、
前記車両の操舵制御子の操作レベル、前記車両の方向指示器の変化、又は前記車両の動的走行状態の変化と、
地図情報及び前記車両の位置情報と、
の少なくとも1つに基づいて、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折したことを判定する、項目1に記載の制御装置。
この項目によれば、運転者が車両を右折又は左折したことを適切に判定できる。
<項目6>
前記走行制御手段は、前記再開条件を満たす場合に、中断前の設定速度を使用して前記速度制御機能の動作を再開する、項目1に記載の制御装置。
この項目によれば、速度制御機能の動作を中断する前の設定速度で速度制御機能を再開できる。
<項目7>
前記再開条件は、前記再開条件を満たすことによる前記速度制御機能の再開が前記速度制御機能の提供者によって許可されていることを含む、項目1に記載の制御装置。
この項目によれば、上述の再開を望むユーザに対して当該機能を提供できる。
<項目8>
コンピュータを項目1乃至7の何れか1項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
この項目によれば、プログラムの形態で上記項目が提供される。
<項目9>
車両の制御方法であって、
前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する工程と、
前記速度制御機能の動作中に運転者によって前記車両の制動操作子が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断する工程と、
再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開する工程と、を有し、
前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子の操作レベルが所定の範囲内であることを含む、制御方法。
この項目によれば、右折又は左折後に車両の速度の自動制御を簡易な操作で再開できる。
【0075】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 車両、2 制御装置、301 オフ状態、302 スタンバイ状態、303 動作状態、304 同意待機状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置であって、
前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する走行制御手段を備え、
前記走行制御手段は、
前記速度制御機能の動作中に運転者によって前記車両の制動操作子が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断し、
再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開し、
前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子の操作レベルが閾値以下であることを含む、制御装置。
【請求項2】
前記再開条件は、前記速度制御機能の動作が中断されてからの経過時間が閾値以下であることを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記速度制御機能の動作の中断中に前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後に、前記速度制御機能の動作を再開することの再開提案を前記運転者に提供する提案手段をさらに備え、
前記走行制御手段は、前記再開提案が前記運転者に提供された後に、前記再開条件を満たすかどうかを判定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記提案手段は、提案条件を満たす場合に前記再開提案を前記運転者に提供し、
前記提案条件は、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記駆動操作子の操作レベルが閾値以下であることと、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記制動操作子の操作レベルが閾値以下であることと、
前記速度制御機能の動作が中断された後の前記車両の加減速が閾値以下であることと、
のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記走行制御手段は、
カメラによる環境の認識結果と、
前記車両の操舵制御子の操作レベル、前記車両の方向指示器の変化、又は前記車両の動的走行状態の変化と、
地図情報及び前記車両の位置情報と、
の少なくとも1つに基づいて、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折したことを判定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記走行制御手段は、前記再開条件を満たす場合に、中断前の設定速度を使用して前記速度制御機能の動作を再開する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記再開条件は、前記再開条件を満たすことによる前記速度制御機能の再開が前記速度制御機能の提供者によって許可されていることを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
車両の制御装置であって、
前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する走行制御手段と、
前記速度制御機能の動作の中断中に運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後に、前記速度制御機能の動作を再開することの再開提案を前記運転者に提供する提案手段と、
を備え、
前記走行制御手段は、
前記速度制御機能の動作中に前記運転者によって前記車両の制動操作子が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断し、
前記再開提案が前記運転者に提供された後に、再開条件を満たすかどうかを判定し、
前記再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開し、
前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子の操作レベルが所定の範囲内であることを含む、制御装置。
【請求項9】
コンピュータを請求項1乃至の何れか1項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
車両の制御方法であって、
前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する工程と、
前記速度制御機能の動作中に運転者によって前記車両の制動操作子が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断する工程と、
再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開する工程と、を有し、
前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子の操作レベルが閾値以下であることを含む、制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
一部の実施形態によれば、車両の制御装置であって、前記車両の速度を自動的に制御する速度制御機能を提供する走行制御手段を備え、前記走行制御手段は、前記速度制御機能の動作中に運転者によって前記車両の制動操作子が操作されたことに応じて前記速度制御機能の動作を中断し、再開条件を満たす場合に前記速度制御機能の動作を再開し、前記再開条件は、前記運転者が前記車両を交差点で右折又は左折した後の前記運転者による前記車両の駆動操作子の操作レベルが閾値以下であることを含む、制御装置が提供される。