(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049054
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】作業補助装置
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
A62B35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155288
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】中村 知行
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 浩之
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA04
2E184KA11
2E184MA05
(57)【要約】
【課題】フルハーネス型安全帯を着用した作業者の作業を補助することができるとともに、装着時の着心地が良い作業補助装置を提供する。
【解決手段】作業補助装置10は、作業者の背面側において互いに連結する左右の肩ベルトB1と、作業者の左右の腿部に巻回される左右の腿ベルトB5と、を有する安全帯B1に装着して用いられる。肩ベルトB1と腿ベルトB5との間に介在する接続ケーブル22と、接続ケーブル22を変位させることによって肩ベルトB1と腿ベルトB5との間の距離が短くなるように変化させる駆動制御モジュール11と、を備え、駆動制御モジュール11は、左右に延出する右延出部11b及び左延出部11cを有し、右延出部11b及び左延出部11cが前左右の肩ベルトB1に装着される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の左右の肩部にそれぞれ巻回されるとともに背中側において互いに連結する左右の肩ベルトと、前記作業者の左右の腿部にそれぞれ巻回される左右の腿ベルトと、を有する安全帯に装着して用いられる作業補助装置であって、
前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間に介在する接続部材と、
前記接続部材を変位させることによって前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離を短くなるように変化させる駆動制御モジュールと、を備え、
前記駆動制御モジュールは、左右に延出する延出部を有し、
該延出部が、左右の前記肩ベルトの各々に連結されることを特徴とする作業補助装置。
【請求項2】
前記駆動制御モジュールは、前記接続部材を巻き取ることによって前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離を短くなるように変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項3】
前記作業補助装置は、左右の前記肩ベルト及び左右の前記延出部のそれぞれに巻回されて、前記肩ベルトと前記延出部とを互いに連結する左右の肩部連結ベルトを備えることを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項4】
前記作業補助装置は、左右の前記腿ベルトに巻回されて、前記接続部材と着脱可能に連結する左右の腿部連結ベルトを備えることを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項5】
前記駆動制御モジュールは、左右の前記肩ベルトが連結する位置に取り付けられて、墜落制止用ロープと係合する環状部材と前後方向に重ならないように左右の前記肩ベルトに連結されることを特徴する請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項6】
前記作業補助装置は、前記作業者が起立姿勢にある時の前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離に基づいて、前記作業者が前屈姿勢にある時の前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離を制御することを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【請求項7】
前記作業補助装置は、前記作業者の前屈角度を検知し、前屈角度信号を出力する姿勢センサを備え、
前記駆動制御モジュールは、前記前屈角度信号に基づいて、前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離を短くなるように前記接続部材を変位させることを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業補助装置に係り、特にフルハーネス型の安全帯に装着して用いられる作業補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業を行う作業者には、高所からの墜落を防止するために、フルハーネス型の安全帯の着用が義務づけられている。フルハーネス型の安全帯は、肩ベルト及び腿ベルト等を備えており、ランヤードと呼ばれる係留ロープを背中の環状金具に係留することによって、安全帯を装着した作業者の墜落を制止することができる。フルハーネス型の安全帯は、腰ベルトのみで作業者の墜落を制止する腰ベルト型の安全帯と比較して、吊り下げ状態における作業者の姿勢を安定させることができ、これにより墜落制止効果の向上を図ることができる。
【0003】
また近年、作業者によって着用されて、作業者が重量物を持ち上げる作業を補助する作業補助装置が注目されている。特許文献1には、上体装着ベルトと、腰部ベルトと、大腿アームと、人工筋肉を有する人体サポート装置が開示されている。人体サポート装置は、人工筋肉を制御することによって着用者の上体を引き起こすとともに、大腿アームを回動させて屈曲した作業者の足が伸びるように作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された人体サポート装置を着用することによって、重量物を持ち上げる作業が補助され、作業者の腰部の負担を軽減することができる。しかしながら、高所作業を行う作業者にとって、フルハーネス型の安全帯とともに人体サポート装置を「重ね着」する必要があるため、着心地を悪化させることとなる。換言すると、従来の作業補助装置は、フルハーネス型の安全帯とともに利用することを想定した検討が十分に行われていなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、フルハーネス型の安全帯を着用した作業者の作業を補助することができるとともに、装着時の着心地が良い作業補助装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、安全性及び作業性の両立を図ることが可能な作業補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の作業補助装置によれば、作業者の左右の肩部にそれぞれ巻回されるとともに背中側において互いに連結する左右の肩ベルトと、前記作業者の左右の腿部にそれぞれ巻回される左右の腿ベルトと、を有する安全帯に装着して用いられる作業補助装置であって、前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間に介在する接続部材と、前記接続部材を変位させることによって前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離を短くなるように変化させる駆動制御モジュールと、を備え、前記駆動制御モジュールは、左右に延出する延出部を有し、該延出部が、左右の前記肩ベルトの各々に連結されることにより解決される。
【0008】
上記構成によれば、駆動制御モジュールは、接続部材を変位させることによって肩ベルトと腿ベルトとの間の距離が短くなるように変化させるため、作業者が重量物を持ち上げる作業を支援することができる。また、駆動制御モジュールは、フルハーネス型安全帯の肩ベルトに対して装着されるため、フルハーネス型安全帯と作業補助装置を「重ね着」する必要がない。そのため、作業補助装置を装着することによって着心地が悪化してしまうことを抑制することが可能となる。また、駆動制御モジュールを肩ベルトに対して装着することにより、作業者の両腕、腰部等の可動部分と駆動制御モジュールが当接することが抑制されるため、作業性の低下を防止することができる。
また、作業補助装置を「重ね着」しないため、安全帯が有する墜落制止機能を確保しつつ、作業性の向上を図ることが可能となり、安全性及び作業性の両立を図ることが可能となる。
【0009】
また、前記駆動制御モジュールは、前記接続部材を巻き取ることによって前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離を短くなるように変化させるとよい。
上記構成によれば、接続部材を巻き取るシンプルな構造によって、作業者による重量物の持ち上げ作業を補助することが可能となり、作業補助装置のコスト増加を抑制することが可能となる。
【0010】
また、前記作業補助装置は、左右の前記肩ベルト及び左右の前記延出部のそれぞれに巻回されて、前記肩ベルトと前記延出部とを互いに連結する左右の肩部連結ベルトを備えるとよい。
上記構成によれば、肩部連結ベルトを連結することによって、作業補助装置を肩ベルトに対して簡単に連結することが可能となる。
【0011】
また、前記作業補助装置は、左右の前記腿ベルトに巻回されて、前記接続部材と着脱可能に連結する左右の腿部連結ベルトを備えるとよい。
上記構成によれば、腿部連結ベルトを巻回することによって、作業補助装置を腿ベルトに対して簡単に装着及び脱着することが可能となる。
【0012】
また、前記駆動制御モジュールは、左右の前記肩ベルトが連結する位置に取り付けられて、墜落制止用ロープと係合する環状部材と前後方向に重ならないように左右の前記肩ベルトに連結されるとよい。
上記構成によれば、駆動制御モジュールが墜落制止用ロープと係合する環状部材と前後方向に重ならない位置で肩ベルトに装着されるため、駆動制御モジュールが墜落制止用ロープと干渉することが防止され、安全性及び作業性の両立を図ることが可能となる。
【0013】
また、前記作業補助装置は、前記作業者が起立姿勢にあるときの前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離に基づいて、前記作業者が前屈姿勢にあるときの前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離を制御するとよい。
上記構成によれば、作業者の体格に応じて、適切に作業補助を行うことが可能となる。
【0014】
また、前記作業補助装置は、前記作業者の前屈角度を検知し、前屈角度信号を出力する姿勢センサを備え、前記駆動制御モジュールは、前記前屈角度信号に基づいて、前記肩ベルトと前記腿ベルトとの間の距離が短くなるように前記接続部材を変位させるとよい。
上記構成によれば、作業者の姿勢に応じて、適切に重量物の持ち上げ作業を補助することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の作業補助装置によれば、フルハーネス型の安全帯を着用した作業者の作業を補助することができるとともに、装着時の着心地が良い作業補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】フルハーネス型安全帯を着用した作業者の正面図である。
【
図2】フルハーネス型安全帯を着用した作業者の背面図である。
【
図3】ランヤードと環状部を説明するための模式図である。
【
図4】作業補助装置を装着した作業者の背面図である。
【
図6】駆動制御モジュールの部品配置を説明するための模式図である。
【
図7A】作業補助装置を装着した作業者が起立した状態を示す図である。
【
図7B】作業補助装置を装着した作業者が前屈した状態を示す図である。
【
図8】変形例に係る駆動制御モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図7Bを参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る作業補助装置10について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0018】
本発明の作業補助装置は、フルハーネス型の安全帯に装着されて、重量物を持ち上げる作業を補助するために用いられ、着心地が良く、作業者の安全性と作業性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
<フルハーネス型安全帯>
図1及び
図2は、フルハーネス型の安全帯Bを着用した作業者の正面図及び背面図である。
図1及び
図2に示すように、安全帯Bは、左右の肩ベルトB1と、胸ベルトB2と、胴ベルトB3と、左右の腿ベルトB5と、接続ベルトB4と、を主な構成として有している。
【0020】
肩ベルトB1は、作業者の左右の肩部に巻回される。肩ベルトB1は、ベルト本体B11と、ベルト本体B11の長さを調節するためのアジャスタB12と、肩ベルトB1の着用性を向上させるためのサポータB13と、を有している。作業者は、アジャスタB12を操作することによって、作業者の体格に適した長さに肩ベルトB1を調整することが可能となる。
【0021】
左右の肩ベルトB1は、作業者の背部において互いに連結している(
図2を参照)。より詳細には、作業者の背中に当接する背面サポータB6が設けられており、左右の肩ベルトB1は背面サポータB6において連結されている。
また、背面サポータB6には、ランヤードLと呼ばれる係留ロープ(命綱)を係合するためのD環B8が取り付けられている。D環B8は環状部材に相当し、ランヤードLは墜落制止用ロープに相当する。ランヤードL及びD環B8については後述する。
【0022】
図1に戻り、左右の肩ベルトB1の間には、胸ベルトB2が介在している。胸ベルトB2は、ベルト本体B21と、左右のベルト本体B21を連結するためのバックルB22と、を有している。
図1には図示されていないものの、胸ベルトB2は、さらにアジャスタを有していてもよい。胸ベルトB2は、上述した背面サポータB6を作業者の背中に密着させるために用いられる。より詳細には、胸ベルトB2は、肩ベルトB1を適度な緊張状態とさせ、これによって背面サポータB6が作業者の背中に当接することとなり、安全ベルトの装着感及び安全性の向上を図ることが可能となる。
【0023】
胸ベルトB2の下方には、胴ベルトB3が作業者の腰部に巻回されている。胴ベルトB3は、ベルト本体B31と、胴ベルトB3を連結させて装着状態とするためのバックルB32と、を有している。
図1には図示されていないものの、胴ベルトB3は、さらにアジャスタを有していてもよい。
【0024】
また、左右の肩ベルトB1及び胴ベルトB3には、仮止め環B9が取り付けられており、作業工具、又はランヤードLを引っ掛けて吊り下げることができる。
【0025】
作業者の左右の腿には、腿ベルトB5が巻回されている。腿ベルトB5は、ベルト本体B51と、バックルB52と、サポータB53と、を有している。腿ベルトB5は、さらにアジャスタを有していてもよい。
【0026】
腿ベルトB5は、接続ベルトB4を介して胴ベルトB3と接続されている。より詳細には、接続ベルトB4は、作業者の腰部の左右において、前方接続部B41と後方接続部B42によって胴ベルトB3と腿ベルトB5を接続している。
左右の後方接続部B42の間には、座骨ベルトB43が架け渡されている。座骨ベルトB43は、後述するように、作業員がランヤードLで宙づり状態となった際に、作業者の座骨を支持することによって作業者の肩、腰、及び腿にかかる負担を軽減する役割を担う。
【0027】
次に、
図3を参照して、ランヤードLについて説明する。ランヤードLは、高所作業を行う作業者の墜落を制止するために用いられる安全ロープである。
図3に示すように、ランヤードLは、一方の先端部にフックL1を有し、作業者の背後に配設されたD環B8に対して掛け止められる。ロープL2の他方の端部に取り付けられたフック(不図示)は、仮設足場の手摺等の構造物に対して取り付けられる。これにより、高所作業を行う作業者の墜落を制止することが可能となる。D環B8は、環状部材に相当する。
【0028】
作業者が足を踏み外す等の理由によって墜落する危険性が生じた場合、作業者は、ランヤードLが掛け止められたD環B8を介して宙づり状態となる。このとき作業者は、上述した肩ベルトB1、胴ベルトB3、及び腿ベルトB5によって直立姿勢の状態を維持することができるとともに、座骨ベルトB43によって下方から支持される。そのため、フルハーネス型の安全帯Bは、腰ベルト型の安全帯と比較すると、救援を待つ作業者の負担を軽減することが可能となる。
【0029】
<作業補助装置10の概要>
次に、作業補助装置10について説明する。
図4は、作業補助装置10を安全帯Bに装着した状態を示してる。作業補助装置10は、安全帯Bと別体に構成されており、高所作業を行う作業者が着用する安全帯Bの背部に装着されて利用される。
【0030】
図4に示すように作業補助装置10は、駆動制御モジュール11と、肩部連結ベルト20と、腿部連結ベルト21と、接続ケーブル22と、を主な構成として有している。
駆動制御モジュール11は、肩ベルトB1と腿ベルトB5との間に介在する接続ケーブル22を変位させて、肩ベルトB1と腿ベルトB5との間の距離が短くなるように制御する。これにより、前屈姿勢にある作業者が、重量物を持ち上げるため起立姿勢へと姿勢を変更することを補助することが可能となる。接続ケーブル22は、接続部材に相当する。
【0031】
駆動制御モジュール11は、中央部11aと、右延出部11bと、左延出部11cと、を有している。右延出部11bは、作業者の右肩の周囲に巻回された肩ベルトB1とともに肩部連結ベルト20によって連結されている。同様に、左延出部11cは、作業者の左肩の周囲に巻回された肩ベルトB1とともに、肩部連結ベルト20によって連結されている。このように、駆動制御モジュール11は、肩ベルトB1を介して安全帯Bに対して連結される。そのため、肩部連結ベルト20を巻回するという単純な作業によって、駆動制御モジュール11を安全帯Bに対して簡単に装着することができる。
【0032】
ここで、フルハーネス型の安全帯Bは、
図2に示すように、肩ベルトB1が作業者の背面でX字状に交差するタイプと、Y字状に連結するタイプとが普及している。そのため、駆動制御モジュール11を肩ベルトB1に対して取り付けることとすることによって、肩ベルトB1がX字状に交差するタイプと、Y字状に連結するタイプのいずれにも装着することが可能となり、作業補助装置10の汎用性を高めることが可能となる。
また、水平方向に延出する駆動制御モジュール11を肩ベルトB1に対して連結することによって、作業者の両腕又は腰部等の可動部分が駆動制御モジュール11に干渉し、作業性が低下することを抑制することが可能となる。
以上のように、作業者は、作業補助装置10をフルハーネス型の安全帯Bとともに重ね着する必要がないため、装着時の着心地の悪化を抑制することが可能となる。
【0033】
また、駆動制御モジュール11は、D環B8と前後方向に重ならない位置で左右の肩ベルトB1に連結されると好適である。これにより、作業補助装置10がD環B8及びD環B8と係合するランヤードLと干渉することが抑制されるため、安全性と作業性の両立を図ることが可能となる。
【0034】
図5は、駆動制御モジュール11の斜視図を示している。
図4及び
図5に示すように、駆動制御モジュール11は、左右に延出した形状を有している。これにより、上下方向の寸法を小さくすることができ、重量物を持ちあげる際に、前屈姿勢にある作業者の腰部が駆動制御モジュール11に押圧されて作業性が低下することを抑制することが可能となる。
【0035】
図6は、駆動制御モジュール11を構成する部品を説明するための部品配置図を示している。
図5及び
図6に示すように、駆動制御モジュール11は、ベース板12と、制御装置13と、姿勢センサ14と、電動モータ15と、減速機16と、巻取器17と、電池ユニット18と、を主な構成として有している。
【0036】
ベース板12は、2枚のベースプレートによって構成されている。すなわち、ベース板12は、上層を形成する第一ベースプレート12aと、下層を形成して作業者の背面に当接する第二ベースプレート12bと、を有している。第一ベースプレート12aと第二ベースプレート12bの間には、複数のスペーサ19が介在し、第一ベースプレート12aと第二ベースプレート12bとを所定の間隔で離隔させている。ベース板12を2層構造とすることによって、駆動制御モジュール11の構成部品を効率的に配置することが可能となる。
ベース板12の形状は、
図4から
図6に示す形状に限定されない。また、第一ベースプレート12aと第二ベースプレート12bが、互いに異なる寸法、形状を有していてもよい。
【0037】
制御装置13は、プロセッサと、揮発性メモリと、不揮発性メモリを有している。制御装置13は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを揮発性メモリにロードして、順次実行することにより、作業補助装置10の制御を司る。制御装置13によって実行される処理の詳細については後述する。
【0038】
姿勢センサ14は、作業補助装置10を装着する作業者の姿勢を検知する。より具体的には、姿勢センサ14は、重量物を持ち上げるために前屈姿勢をとる作業者の前屈角度θを検知する(
図7Bを参照)。姿勢センサ14は、加速度センサであるが、これに限定されない。姿勢センサ14は、ジャイロセンサであってもよい。
【0039】
電動モータ15は、後述する電池ユニット18から供給される電気エネルギーを、機械エネルギーに変換し、後述する減速機16及び巻取器17を回転駆動する。電動モータ15は、公知の電動機を採用することができる。
【0040】
減速機16は、減速歯車からなり、電動モータ15の出力軸に連結されて、大きな回転トルクを生成するために用いられる。
巻取器17は、減速機16の出力軸に連結されて、後述する接続ケーブル22を巻き取って変位させるために用いられる。
【0041】
電池ユニット18は、駆動制御モジュール11の構成部品に対して、電気エネルギーを供給する。電池ユニット18は、二次電池であって、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池を採用することができるが、これに限定されない。電池ユニット18は、交換可能な一次電池であってもよい。
【0042】
図4に戻って、肩ベルトB1と腿ベルトB5の間には、接続ケーブル22が介在している。より詳細に説明すると、接続ケーブル22の一方の端部が、肩ベルトB1に装着された駆動制御モジュール11の巻取器17に接続されており、他方の端部が腿ベルトB5に連結された腿部連結ベルト21と接続されている。そして、上述した巻取器17が接続ケーブル22を巻き取ると、肩ベルトB1及び腿ベルトB5の間の距離を変更することができる。詳細は後述するが、肩ベルトB1と腿ベルトB5の間の距離が短くなるように変化させることによって、作業補助装置10を装着する作業者が重量物を持ち上げる作業を補助することができる。
【0043】
腿部連結ベルト21は、腿ベルトB5に巻回されて、腿ベルトB5と接続ケーブル22を着脱可能に連結する。腿部連結ベルト21と接続ケーブル22は、接続ケーブル22の下端に取り付けられたカラビナ等の環状金具を介して連結されている。
【0044】
<<作業補助処理>>
次に、駆動制御モジュール11の制御装置13によって実行される作業補助処理について説明する。制御装置13は、作業補助装置10を装着する作業者が重量物を持ち上げる際に、重量物を把持した際の前屈姿勢から、重量物を持ち上げて起立した姿勢へと変化させることを支援することによって、作業補助を行う。
【0045】
図7Aは、作業者が起立した状態を示している。
図7Bは、作業者が前屈した状態を示している。最初に、制御装置13は、作業者が起立した状態における接続ケーブル22の長さを取得し、これをL1として揮発性メモリ又は不揮発性メモリに記憶する。ここで、起立状態における接続ケーブル22の長さL1は、巻取器17の巻取角度に基づいて取得することができるが、これに限定されない。起立状態における接続ケーブル22の長さL1は、予め作業者が計測を行い、設定値として記憶させることとしてもよい。
【0046】
次に、制御装置13は、作業者が前屈した状態における接続ケーブル22の長さを取得し、これをL2として揮発性メモリ又は不揮発性メモリに記憶する。
図7Bに示すように、前屈した状態において、接続ケーブル22は、作業者の背中から、腰、及び臀部を跨って延びる。そのため、L1<L2となる。
【0047】
作業者が作業を開始すると、制御装置13は、作業者の前屈角度θをリアルタイムに取得する。具体的には、制御装置13は、姿勢センサ14が出力する前屈角度信号を取得する。そして、制御装置13は、電動モータ15に対して制御信号を送信することによって巻取器17を回転させて、接続ケーブル22の長さがL1+A×θとなるように変化させる。ここで、Aは予め設定される係数である。詳細に説明すると、制御装置13は、作業者が起立した状態(θ=0)において、接続ケーブル22の長さがL1となるように制御する。また、制御装置13は、作業者が前屈した状態(θ>0)において、接続ケーブル22の長さが前屈角度θに所定の係数Aを乗算して得られる長さとなるように制御する。このように、予め作業者が作業補助装置10を装着した状態で取得された長さL1に基づいて接続ケーブル22の長さが制御されるため、接続ケーブル22を、作業者の体格に応じた適切な長さに制御することが可能となる。
【0048】
また、制御装置13は、前屈角度θに基づいて、接続ケーブル22の長さが適切な長さとなるように制御する。これにより、作業者が前屈した際に、背中から腰及び腿に跨って延びる接続ケーブル22を介して、作業者が重量物を持ち上げて起立姿勢に戻ることを適切に補助することが可能となる。
【0049】
また、制御装置13は、接続ケーブル22の長さが、L2を超えないように制御してもよい。これにより、作業者が重量物を持ち上げる際に、過度に腰部を屈強させてしまうことを防止することができるため、作業中の怪我を抑制することが可能となる。
【0050】
<<第一変形例>>
以上、本発明の一実施形態に係る床パネル1について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
上述した実施形態では、駆動制御モジュール11は、肩部連結ベルト20によって肩ベルトB1に対して連結されることとして説明したが、これに限定されない。駆動制御モジュール11は、安全帯Bの肩ベルトB1とは別体の背負いベルト123に取り付けられていてもよい。
【0051】
図8は、背負いベルト123に取り付けられた状態の駆動制御モジュール11を示している。
図8に示すように、駆動制御モジュール11は、背負いベルト123に取り付けられているため、作業者は、背負いベルト123を両肩に担ぐことによって駆動制御モジュール11を簡単に装着することがでる。このため、作業補助装置10の装着に要する手間を軽減することが可能となる。
【0052】
<<第二変形例>>
また、上述した実施形態は、駆動制御モジュール11の制御装置13は、姿勢センサ14が出力する前屈角度θに基づいて接続ケーブル22の長さを制御することとして説明したが、これに限定されない。制御装置13は、接続ケーブル22の長さ、又は接続ケーブル22に印加される張力に基づいて、接続ケーブル22の長さを制御することとしてもよい。具体的には、制御装置13は、巻取器17の巻取角度を取得することによって接続ケーブル22の長さを算出し、接続ケーブル22の長さに基づいて作業者の姿勢を推定することができる。ここで制御装置13は、接続ケーブル22に印加される張力に基づいて作業者の姿勢を推定することとしてもよい。続いて、制御装置13は、推定結果に基づいて、接続ケーブル22の長さを制御することができる。これによって、上述した実施形態と同様に、作業者の安全性と作業性の向上を図ることが可能となる。
【0053】
また、上述した実施形態では、肩ベルトB1と腿ベルトB5の間を、接続ケーブル22が介在していることとして説明したが、これに限定されない。駆動制御モジュール11によって肩ベルトB1と腿ベルトB5の間の距離を変更することことができればよく、伸縮性を有する弾性チューブであってもよい。
また、上述した実施形態では、駆動制御モジュール11の巻取器17が接続ケーブル22を巻き取ることとして説明したが、これに限定されない。アクチュエータ等によって接続ケーブル22を上方に引き上げることとしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 作業補助装置
11 駆動制御モジュール
11a 中央部
11b 右延出部
11c 左延出部
12 ベース板
12a 第一ベースプレート
12b 第二ベースプレート
13 制御装置
14 姿勢センサ
15 電動モータ
16 減速機
17 巻取器
18 電池ユニット
19 スペーサ
20 肩部連結ベルト
21 腿部連結ベルト
22 接続ケーブル(接続部材)
123 背負いベルト
B 安全帯
B1 肩ベルト
B11 ベルト本体
B12 アジャスタ
B13 サポータ
B2 胸ベルト
B21 ベルト本体
B22 バックル
B3 胴ベルト
B31 ベルト本体
B32 バックル
B4 接続ベルト
B41 前方接続部
B42 後方接続部
B43 座骨ベルト
B5 腿ベルト
B51 ベルト本体
B52 バックル
B53 サポータ
B6 背面サポータ
B8 D環(環状部材)
B9 仮止め環
L ランヤード(墜落制止用ロープ)
L1 フック
L2 ロープ