(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049055
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】振り落とし装置
(51)【国際特許分類】
A01D 46/26 20060101AFI20240402BHJP
F16H 37/12 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A01D46/26
F16H37/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155290
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔二朗
【テーマコード(参考)】
2B075
3J062
【Fターム(参考)】
2B075JD19
2B075JD20
2B075JD30
2B075JF00
3J062AA60
3J062AB03
3J062AB29
3J062AC07
3J062BA12
3J062BA25
3J062CG82
3J062CG95
(57)【要約】
【課題】部品点数が少なく、簡単な構造でもって、往復運動部の慣性力に対して垂直方向の振動を発生させずに往復運動部に作用する慣性力を打ち消すことができる、小型かつ軽量の改良された振り落とし装置を提供する。
【解決手段】カウンターウェイト(44)と反転ギア(42)が第1の回転軸線(C)の周りの公転と第2の回転軸線(E)の周りの自転の回転運動を行うことにより、カウンターウェイト(44)と反転ギア(42)を含む反転部(52)の重心は、往復運動部(2)と同じ往復動軸線(A)に沿って往復運動する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源(8)によって駆動されるクランクシャフトユニット(12)と、
コネクティングロッド(10)と、
接触部(4)を有する往復運動部(2)であって、前記コネクティングロッド(10)を介して前記クランクシャフトユニット(12)によって前進位置と後退位置の間を往復動軸線(A)に沿って往復動される往復運動部(2)と、を備える振り落とし装置(1)であって、
前記クランクシャフトユニット(12)は、前記コネクティングロッド(10)に係合するクランクシャフト部(50)と、反転部(52)と、を含み、
前記クランクシャフト部(50)は、前記駆動源(8)によって第1の回転軸線(C)の周りを第1の回転方向(R1)に回転するように駆動される正転部材(22)を含み、
前記反転部(52)は、カウンターウェイト(44)が取り付けられるとともに、ケース(6)に固定されたインターナルギア(49)に噛み合い、前記正転部材(22)とともに前記第1の回転軸線(C)の周りを前記第1の回転方向(R1)に公転しつつ、前記第1の回転軸線(C)からオフセットされた第2の回転軸線(E)の周りを前記第1の回転方向(R1)と反対の第2の回転方向(R2)に自転するように駆動される反転ギア(42)を含み、
前記カウンターウェイト(44)と前記反転ギア(42)が前記第1の回転軸線(C)の周りの公転と前記第2の回転軸線(E)の周りの自転の回転運動を行うことにより、前記カウンターウェイト(44)と前記反転ギア(42)を含む前記反転部(52)の重心は、前記往復運動部(2)と同じ前記往復動軸線(A)に沿って往復運動することを特徴とする振り落とし装置(1)。
【請求項2】
前記反転ギア(42)の基準ピッチ円直径は、前記インターナルギア(49)の基準ピッチ円直径の半分に設定されることを特徴とする、請求項1に記載の振り落とし装置(1)。
【請求項3】
前記カウンターウェイト(44)と前記反転ギア(42)を含む前記反転部(52)の重心位置は、前記反転ギア(42)の基準ピッチ円上に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の振り落とし装置(1)。
【請求項4】
前記正転部材(22)と前記コネクティングロッド(10)との連結軸線と前記第2の回転軸線(E)は、前記第1の回転軸線(C)に対して反対側に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の振り落とし装置(1)。
【請求項5】
前記カウンターウェイト(44)は、前記反転ギア(42)よりも前記往復動軸線(A)の近くに配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の振り落とし装置(1)。
【請求項6】
前記カウンターウェイト(44)と前記反転ギア(42)を含む前記反転部(52)の重心は、前記往復運動部(2)が前進位置にあるときに後退位置に位置決めされ、前記往復運動部(2)が後退位置にあるときに前進位置に位置決めされることを特徴とする、請求項1又は2に記載の振り落とし装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復運動するポールと、枝を振って例えばオリーブを落とすためにオリーブの枝などの枝に係合するように構成されたフックやプッシャーなどの接触部とを有する振り落とし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第2042020号明細書(特許文献1)は、往復運動するポールと、枝を振って例えばオリーブを落とすために枝に係合するように構成されたフックとを有する振り落とし装置を開示している。この振り落とし装置は、主回転軸と、主回転軸からオフセットされて主回転軸と反対の回転方向に回転する従動軸と、主回転軸に固定された第1のカウンターウェイトと、従動軸に固定された第2のカウンターウェイトとを有する。第1のカウンターウェイトと第2のカウンターウェイトは、ポールが前進位置にあるとき、後退位置に配置される。
【0003】
欧州特許第2625948号明細書(特許文献2)はまた、往復運動するポールと、枝を振って例えばオリーブを落とすために枝に係合するように構成されたフックとを有する振り落とし装置を開示している。この振り落とし装置は、第1のフライホイールを備えた主回転軸と、主回転軸の周りに回転可能に配置され、主回転軸と反対の回転方向に回転する第2のフライホイールを備えたスリーブと、第1のフライホイールに固定された第1のカウンターウェイトと、第2のフライホイールに固定された第2のカウンターウェイトとを有する。第1のカウンターウェイトと第2のカウンターウェイトは、ポールが前進位置にあるとき、後退位置に配置される。
【0004】
これらの振り落とし装置の各々では、ポールが前進位置に到達すると、後退側から前進側へ向かう方向の衝撃が操作者に伝達される。しかし、第1および第2のカウンターウェイトが同時に後退位置に到達するので、操作者に伝達されるこのような衝撃を軽減することができる。同様に、ポールが後退位置に到達すると、前進側から後退側へ向かう方向の衝撃が操作者に伝達される。しかし、第1および第2のカウンターウェイトが同時に前進位置に到達するので、操作者に伝達されるこのような衝撃を軽減することができる。
【0005】
さらに、ポールが前進位置から後退位置に移動する間に中間位置に到達すると、第1のカウンターウェイトは例えば下向きの力を発生させ、第2のカウンターウェイトは例えば上向きの力を発生させる。同様に、ポールが後退位置から前進位置に移動する間に反対の中間位置に到達すると、第1のカウンターウェイトは例えば上向きの力を発生させ、第2のカウンターウェイトは例えば下向きの力を発生させる。その結果、このような下向きおよび上向きの力は、少なくとも部分的に相殺され、これらの上向きおよび下向きの力によって発生する操作者に伝わる衝撃を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2042020号明細書
【特許文献1】欧州特許第2625948号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなフックを有するポールからなる往復運動部を備える振り落とし装置(例えば、オリーブの枝を振ってオリーブを落とすための装置は、オリーブシェーカーなどとも呼ばれる)においては、依然として運転時の振動が問題である。
【0008】
振動対策としては、前述の先行技術文献で開示されているように、往復運動部に作用する慣性力の反対方向に遠心力が働くように回転するカウンターウェイトを取り付けて慣性力を打ち消すことが考えられる。しかし、カウンターウェイトが単純な回転運動をするために、往復運動部の慣性力に対して垂直方向にも遠心力が働くことで別方向の振動が発生してしまう。
【0009】
欧州特許第2042020号明細書(特許文献1)および欧州特許第2625948号明細書(特許文献2)に開示された振り落とし装置では、第1の方向に回転するカウンターウェイトを備え、更に、このカウンターウェイトによって生じる垂直方向の遠心力を打ち消すために第1の方向に対して逆回転するカウンターウェイトを取り付けている。このため、部品点数が多く、構造も複雑になっている。また、欧州特許第2042020号明細書(特許文献1)に開示された振り落とし装置では、それぞれカウンターウェイトが取り付けられる主回転軸と従動軸が垂直方向にオフセットされており、振り落とし装置のケースのサイズが垂直方向に大型化する傾向がある。
【0010】
欧州特許第2625948号明細書(特許文献2)に開示された振り落とし装置では、主回転軸とスリーブが同軸であるため、振り落とし装置のケースのサイズは比較的小さい。一方、欧州特許第2625948号明細書(特許文献2)では、ポールが中間位置に到達すると、下向きおよび上向きの力によって、例えば、ポールの軸の周りに反時計回りのねじれ力が生じる可能性がある。同様に、ポールが反対の中間位置に到達すると、上向きおよび下向きの力によって、例えば、ポールの軸の周りに時計回りのねじれ力が生じる可能性がある。すなわち、反時計回りと時計回りのねじれ力が交互に繰り返し発生する。これらのねじれ力は、フライホイール、主回転軸、およびケースを介して操作者に伝わり、振り落とし装置の操作性に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、これらのねじれ力は、第1および第2のフライホイールのベベルピニオンとベベルギアの噛み合い関係に悪影響を及ぼし、第1および第2のフライホイールの回転が不安定になる可能性がある。
【0011】
そこで、かかる振り落とし装置において、重心が回転するのではなく往復運動部と反対方向に直線運動するカウンターウェイトができれば、往復運動部の慣性力に対して垂直方向の振動を発生させずに往復運動部に作用する慣性力を打ち消すことができると考えられる。
【0012】
したがって、本発明の目的は、部品点数が少なく、簡単な構造でもって、往復運動部の慣性力に対して垂直方向の振動を発生させずに往復運動部に作用する慣性力を打ち消すことができる、小型かつ軽量の改良された振り落とし装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る振り落とし装置は、駆動源によって駆動されるクランクシャフトユニットと、コネクティングロッドと、接触部を有する往復運動部であって、前記コネクティングロッドを介して前記クランクシャフトユニットによって前進位置と後退位置の間を往復動軸線に沿って往復動される往復運動部と、を備える振り落とし装置であって、前記クランクシャフトユニットは、前記コネクティングロッドに係合するクランクシャフト部と、反転部と、を含み、前記クランクシャフト部は、前記駆動源によって第1の回転軸線の周りを第1の回転方向に回転するように駆動される正転部材を含み、前記反転部は、カウンターウェイトが取り付けられるとともに、ケースに固定されたインターナルギアに噛み合い、前記正転部材とともに前記第1の回転軸線の周りを前記第1の回転方向に公転しつつ、前記第1の回転軸線からオフセットされた第2の回転軸線の周りを前記第1の回転方向と反対の第2の回転方向に自転するように駆動される反転ギアを含み、前記カウンターウェイトと前記反転ギアが前記第1の回転軸線の周りの公転と前記第2の回転軸線の周りの自転の回転運動を行うことにより、前記カウンターウェイトと前記反転ギアを含む前記反転部の重心は、前記往復運動部と同じ前記往復動軸線に沿って往復運動する。
【0014】
一態様では、前記反転ギアの基準ピッチ円直径は、前記インターナルギアの基準ピッチ円直径の半分に設定される。
【0015】
他の好ましい態様では、前記カウンターウェイトと前記反転ギアを含む前記反転部の重心位置は、前記反転ギアの基準ピッチ円上に配置される。
【0016】
他の好ましい態様では、前記正転部材と前記コネクティングロッドとの連結軸線と前記第2の回転軸線は、前記第1の回転軸線に対して反対側に設けられている。
【0017】
他の好ましい態様では、前記カウンターウェイトは、前記反転ギアよりも前記往復動軸線の近くに配置される。
【0018】
他の好ましい態様では、前記カウンターウェイトと前記反転ギアを含む前記反転部の重心は、前記往復運動部が前進位置にあるときに後退位置に位置決めされ、前記往復運動部が後退位置にあるときに前進位置に位置決めされる。
【0019】
本発明によれば、カウンターウェイトと反転ギアを含む反転部の重心が回転するのではなく往復運動部と同じ往復動軸線に沿って往復運動(直線運動)するので、部品点数が少なく、簡単な構造でもって、往復運動部の慣性力に対して垂直方向の振動を発生させずに往復運動部に作用する慣性力を打ち消すことができる、小型かつ軽量の改良された振り落とし装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る振り落とし装置の概略正面図である。
【
図2】
図1の振り落とし装置のケースを省略した部分斜視図である。
【
図3】
図1の振り落とし装置の部分断面下面図である。
【
図4A】
図1の振り落とし装置のクランクシャフトユニットの、コネクティングロッドが前進位置にあるとき(ベベルギア:0°)の部分正面図である。
【
図4B】
図1の振り落とし装置のクランクシャフトユニットの、コネクティングロッドが中間位置にあるとき(ベベルギア:45°)の部分正面図である。
【
図4C】
図1の振り落とし装置のクランクシャフトユニットの、コネクティングロッドが中間位置にあるとき(ベベルギア:90°)の部分正面図である。
【
図4D】
図1の振り落とし装置のクランクシャフトユニットの、コネクティングロッドが中間位置にあるとき(ベベルギア:135°)の部分正面図である。
【
図4E】
図1の振り落とし装置のクランクシャフトユニットの、コネクティングロッドが後退位置にあるとき(ベベルギア:180°)の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態に係る振り落とし装置について説明する。
【0022】
図1に示すように、振り落とし装置1は、ポール2と、ポール2の基端部を収容するケース6と、ケース6に取り付けられたエンジン8とを備えている。ポール2は、ポール2の先端2bにフックやプッシャーなどの接触部4を有し、ケース6に対して往復動軸線Aに沿って直線往復動する。接触部4は、枝を振って例えばオリーブを落とすためにオリーブの枝などの枝に係合するように構成されている。ケース6は、全体として偏平に形成された二分割構造であって、往復動軸線Aの第1の側(
図1で見えない奥側)に配置された第1の側壁6a(
図3)と、往復動軸線Aの第1の側と反対の第2の側(
図1で見える手前側)に配置された第2の側壁6bとを有する。
【0023】
図2および
図3に示すように、振り落とし装置1はまた、エンジン8によって駆動され、ベベルピニオン(以下、単にピニオンと記載する場合がある)20を有する駆動軸18と、ピニオン20によって駆動されるクランクシャフトユニット12と、コネクティングロッド10とを含む。ポール2は、ピニオン20によってクランクシャフトユニット12およびコネクティングロッド10を介して駆動される。駆動軸18、クランクシャフトユニット12、およびコネクティングロッド10は、ケース6内に収容される。駆動軸18は、好ましくは往復動軸線Aと一直線に並んでいる駆動軸線Bに沿って延びる。
【0024】
図3を参照すると、エンジン8は好ましくは内燃エンジンであるが、電気または空気圧エンジンであってもよい。駆動軸18は、例えば遠心クラッチ(図示せず)を介してエンジン8の出力軸(図示せず)に連結されている。したがって、駆動軸18は、エンジン8によって駆動軸線Bの周りに回転されるように構成されている。
【0025】
図2および
図3に示すように、クランクシャフトユニット12は、コネクティングロッド10に係合するクランクシャフト部50と、後述する反転部52とを含む。クランクシャフト部50は、ピニオン20によって駆動される正転ギア(正転部材)としてのベベルギア22と、第1のクランクシャフト24と、第2のクランクシャフト26とを含む。
【0026】
ベベルギア22は、エンジン8の回転を伝達する駆動軸18の先端のベベルピニオン20と噛み合い、駆動軸18の回転を減速している。ベベルギア22は、ピニオン20によって駆動され、回転軸線Cの周りを第1または通常の回転方向R1で回転(自転)するように構成されている(
図4A~
図4Eを参照)。ベベルギア22は、ベベルギア22におけるポール2の往復動軸線Aに面する側から第1のクランクシャフト24(の第1のクランクピン24a)が圧入される第1の開口22aと、ベベルギア22におけるポール2の往復動軸線Aに面する側とは反対側から第2のクランクシャフト26(の第2のクランクピン26a)が圧入される第2の開口22bと、周方向に配列された複数の(図示例では、4つの略扇形の)穴22cとを有する。第1の開口22aと第2の開口22bは、回転軸線Cからオフセットされ、回転軸線Cに対して反対側に設けられている。つまり、第1の開口22aに圧入される第1のクランクシャフト24(の第1のクランクピン24a)と第2の開口22bに圧入される第2のクランクシャフト26(の第2のクランクピン26a)は、位相が180°ずれている。言い換えると、ベベルギア22は、ベベルギア22におけるポール2の往復動軸線Aに面する側にピニオン20と噛み合うギアが形成された円環部22Cと、ベベルギア22の中央で(回転軸線C上で)交差する第1の架橋部22Aおよび第2の架橋部22Bとを有する。第1の架橋部22Aと第2の架橋部22Bの一方(図示例では、第1の架橋部22A)に、回転軸線Cからオフセットされ、回転軸線Cを挟んで(反対側に)第1の開口22aと第2の開口22bが開設され、第1の架橋部22Aと第2の架橋部22Bの間(4箇所)は略扇形の穴22cとなっている。
【0027】
ベベルギア22は、第1の側壁6aと第2の側壁6bによって密閉された空間内に配置(収容)される。第1の開口22aに圧入される第1のクランクシャフト24の第1のクランクピン24aは、ベベルギア22(の第1の開口22a)から第1の側壁6aに向かってオフセット軸線D(回転軸線Cと平行かつ回転軸線Cからオフセットされている)に沿って延びる。第1のクランクシャフト24の第1の主軸24bは、第1のクランクピン24aから第1の側壁6aに向かって回転軸線Cに沿って延び、第1の側壁6a(の凹部6c)に取り付けられた第1のベアリング30によって回転軸線Cの周りに回転可能に支持されている。第2の開口22bに圧入される第2のクランクシャフト26の第2のクランクピン26aは、ベベルギア22(の第2の開口22b)から第2の側壁6bに向かってオフセット軸線E(回転軸線Cと平行かつ回転軸線Cからオフセットされている)に沿って延びる。第2のクランクシャフト26の第2の主軸26bは、第2のクランクピン26aから第2の側壁6bに向かって回転軸線Cに沿って延び、第2の側壁6b(の凹部6d)に取り付けられた第2のベアリング32によって回転軸線Cの周りに回転可能に支持されている。これにより、クランクシャフト部50は、回転軸線Cを中心として回転方向R1に回転するように構成されている。
【0028】
図3に示すように、コネクティングロッド10は、第1のクランクシャフト24の第1のクランクピン24aに第1のニードルベアリング34を介して枢着された後端10aと、ポール2の後端2aに枢着された前端10bとを有する。ポール2は、ポール2を往復動軸線Aに沿って直線移動させるためにケース6に固定されたポールガイド16によって案内されるように構成されている。ポール2は、
図4Aに示す最も延びた前進位置と
図4Eに示す最も引っ込んだ後退位置との間で往復動するように構成されている。
【0029】
図2および
図3に示すように、クランクシャフトユニット12の反転部52は、反転ギア(以下、単にギアと記載する場合がある)42と、ギア42に取り付けられたカウンターウェイト44とを含む。カウンターウェイト44は、ベベルギア22(の往復動軸線Aに面する側とは反対側の面)に隣接して配置されている。カウンターウェイト44は、偏平に形成され、装着部46と、例えば扇形のウェイト部48とを有する。カウンターウェイト44の装着部46は、第2のニードルベアリング36を介して第2のクランクシャフト26の第2のクランクピン26aが回転可能に挿入される開口46aを有する。言い換えると、カウンターウェイト44は、第2のクランクシャフト26の第2のクランクピン26aに第2のニードルベアリング36を介して枢着された装着部46と、装着部46に一体的に形成されたウェイト部48とを有する。
【0030】
ギア42は、カウンターウェイト44の装着部46の開口46aの往復動軸線Aに面する側とは反対側の面から突出した筒状部46bが挿入される中央開口42aを有する。ギア42は、2本のボルト43によってカウンターウェイト44(の往復動軸線Aに面する側とは反対側の面)に一体的に動作可能に取り付けられている。なお、ギア42とカウンターウェイト44の固定方法は、ボルト固定に限定されない。また、ギア42とカウンターウェイト44を一体成形によって形成してもよい。ギア42は、ケース6(の段差部6e)に固定されたインターナルギア49に噛み合うように構成されている。図示例では、インターナルギア49は、ベベルギア22と略同径に設定されている。
【0031】
これにより、反転部52は、ピニオン20によって駆動されてクランクシャフト部50が回転軸線Cの周りを回転方向R1に回転すると、クランクシャフト部50とともに(一緒に)回転軸線Cの周りを第1または通常の回転方向R1に回転(公転)するとともに、ギア42とインターナルギア49との噛み合いによりオフセット軸線(回転軸線)Eの周りを(第1または通常の回転方向R1と反対の)第2または逆の回転方向R2に回転(自転)するように構成されている。
【0032】
本実施形態においては、上記のように、第1のクランクシャフト24(の第1のクランクピン24a)と第2のクランクシャフト26(の第2のクランクピン26a)は、回転軸線Cの周りで位相が180°ずれている。言い換えると、ベベルギア22とコネクティングロッド10との連結軸線(オフセット軸線D)とオフセット軸線(回転軸線)Eは、回転軸線Cに対して反対側に設けられている(位相が180°ずれている)。カウンターウェイト44とギア42を合わせた反転部52の重心位置は、ギア42の基準ピッチ円上になるように調整されている(
図4A~
図4Eを参照)。ギア42の基準ピッチ円直径(歯数)は、インターナルギア49の基準ピッチ円直径(歯数)の半分に設定されている。
【0033】
したがって、カウンターウェイト44とギア42を合わせた反転部52の重心は、ポール2が前進位置にあるとき、
図4Aに示すように(往復動軸線A上の)後退位置に位置し、ポール2が後退位置にあるとき、
図4Eに示すように(往復動軸線A上の)前進位置に位置するように配置されている。このように、反転部52の重心がポール2の動きに相反する位置を取ることで、前後方向に発生して操作者に伝達される振動を緩和する。また、
図4A~
図4Eに示すように、ポール2が前進位置から後退位置までの途中の中間位置にあるとき、反転部52の重心は、往復運動部であるポール2と同じ往復動軸線A上を、ポール2の移動方向と反対方向に移動する。また、反転部52の重心は、全体として、往復動軸線A上を直線往復動するように配置されている。このように構成されたカウンターウェイト44においては、従来のカウンターウェイトのような回転による垂直方向の遠心力は発生しない。
【0034】
また、反転部52は、単一のカウンターウェイト44のみを用いて構成できる。従来構造のように回転するカウンターウェイトでは、その遠心力を打ち消すために逆回転するカウンターウェイトを要したところ、本実施形態のカウンターウェイト44では遠心力を発生しないことによる。したがって、ケース6の回転軸線Cの方向の厚さを小さくできる。また、反転部52のカウンターウェイト44はギア42よりも(回転軸線Cの方向で)往復動軸線Aの近くに配置されており、往復動軸線Aとカウンターウェイト44の間の距離は小さいので、往復動軸線Aに対してカウンターウェイト44によって発生するねじれ力を、従来のカウンターウェイトをフライホイール軸を中心に回転させる構成に比べて、極めて小さくできる。
【0035】
図4A~
図4Eを参照して、振り落とし装置1の動作について説明する。
【0036】
駆動軸18は、エンジン8の出力軸(図示せず)および遠心クラッチ(図示せず)を介してエンジン8によって回転される。ベベルギア22は、ベベルピニオン20によって回転軸線Cの周りを第1の回転方向R1に回転される。回転軸線Cの方向は、通常、操作者が作業部を向く方向を前方としたときの左右方向である。
【0037】
第1のクランクシャフト24は、ベベルギア22とともに回転され、ポール2は、コネクティングロッド10を介して往復動軸線Aに沿って直線往復動する。ポール2の往復動動作によって、往復動軸線Aの方向に振動する接触部4が例えばオリーブを落とすことができる。
【0038】
第2のクランクシャフト26は、ベベルギア22とともに回転され、反転部52は、ベベルギア22と一緒に回転軸線Cの周りを第1の回転方向R1に回転(公転)する。一方、反転部52のギア42は、ケース6に固定されたインターナルギア49と噛み合っているため、反転部52は、オフセット軸線(回転軸線)Eの周りを第1の回転方向R1とは反対の第2の回転方向R2に回転(自転)する。
【0039】
図4Aに示すように、ポール2が前進位置に向かって移動するとき、後側から前側へ向かう方向の衝撃(慣性力Fp)が発生する。しかし、反転部52の重心Gが同時に後退位置に到達し、反転部52には前側から後側へ向かう方向の慣性力Fgが発生するので、操作者に伝わる前述のような衝撃を軽減することができる。
【0040】
図4B、
図4C、
図4Dに示すように、ポール2が前進位置から後退位置に移動する間の中間位置に到達するとき、上記のように反転部52が回転軸線Cを中心とした第1の回転方向R1の公転とオフセット軸線(回転軸線)Eを中心とした第2の回転方向R2の自転の2種類の回転運動を行うことにより、反転部52の重心Gは、ポール2(往復運動部)と同じ往復動軸線A上を、ポール2(往復運動部)と反対方向に往復動し、上下方向の成分を伴わない。結果として、往復動軸線Aに対して垂直な方向(操作者に対して上下の方向)の力(衝撃)は発生しない。
【0041】
図4Eに示すように、ポール2が後退位置に向かって移動するとき、前側から後側に向かう方向の衝撃(慣性力Fp)が発生する。しかし、反転部52の重心Gが同時に前進位置に到達し、反転部52には後側から前側へ向かう方向の慣性力Fgが発生するので、作業者に伝わる前述のような衝撃を軽減することができる。
【0042】
図示は省略するが、ポール2が後退位置から前進位置に移動する間の中間位置に到達するときも同様に、反転部52の重心Gは、ポール2(往復運動部)と同じ往復動軸線A上を、ポール2(往復運動部)と反対方向に往復動し、上下方向の成分を伴わない。結果として、往復動軸線Aに対して垂直な方向(操作者に対して上下の方向)の力(衝撃)は発生しない。
【0043】
以上で説明したように、本実施形態の振り落とし装置1は、駆動源(エンジン8)によって駆動されるクランクシャフトユニット(12)と、コネクティングロッド(10)と、接触部(4)を有する往復運動部(ポール2)であって、前記コネクティングロッド(10)を介して前記クランクシャフトユニット(12)によって前進位置と後退位置の間を往復動軸線(A)に沿って往復動される往復運動部(ポール2)と、を備える振り落とし装置(1)であって、前記クランクシャフトユニット(12)は、前記コネクティングロッド(10)に係合するクランクシャフト部(50)と、反転部(52)と、を含み、前記クランクシャフト部(50)は、前記駆動源(エンジン8)によって第1の回転軸線(C)の周りを第1の回転方向(R1)に回転(自転)するように駆動される正転部材(ベベルギア22)を含み、前記反転部(52)は、カウンターウェイト(44)が取り付けられるとともに、ケース(6)に固定されたインターナルギア(49)に噛み合い、前記正転部材(ベベルギア22)とともに(一緒に)前記第1の回転軸線(C)の周りを前記第1の回転方向(R1)に公転しつつ、前記第1の回転軸線(C)から(平行に)オフセットされた第2の回転軸線(E)の周りを前記第1の回転方向(R1)と反対の第2の回転方向(R2)に自転するように駆動される反転ギア(42)を含み、前記カウンターウェイト(44)と前記反転ギア(42)が前記第1の回転軸線(C)の周りの公転と前記第2の回転軸線(E)の周りの自転の(2種類の)回転運動を行うことにより、前記カウンターウェイト(44)と前記反転ギア(42)を含む前記反転部(52)の重心は、前記往復運動部(ポール2)と同じ前記往復動軸線(A)に沿って往復運動する。
【0044】
また、前記反転ギア(42)の基準ピッチ円直径(歯数)は、前記インターナルギア(49)の基準ピッチ円直径(歯数)の半分に設定される。この構成によれば、ベベルギア(22)が半回転する間に反転ギア(42)は1回転することになるため、反転ギア(42)が前進位置と後退位置に達するタイミングでカウンターウェイト(44)を外側に向けることができ、カウンターウェイト(44)に作用する慣性力を最大限利用できる。
【0045】
また、前記カウンターウェイト(44)と前記反転ギア(42)を含む前記反転部(52)の重心位置は、前記反転ギア(42)の基準ピッチ円上に配置されるように構成するのが好ましい。この構成によれば、往復運動時の反転部(52)の重心位置が、往復動軸線(A)に一致し、垂直方向の振動成分を最も減らすことができる。しかし、往復運動時の反転部(52)の重心位置が往復動軸線(A)上から外れて垂直方向にも振動成分が発生したとしても、往復動軸線(A)に対して垂直な方向のストロークは往復動軸線(A)方向のストロークに比べて十分小さいことから、従来のカウンターウェイトをフライホイール軸を中心に回転させる構成よりも往復動軸線(A)に対して垂直方向の力は小さくなる。
【0046】
また、前記正転部材(ベベルギア22)と前記コネクティングロッド(10)との連結軸線と前記第2の回転軸線(E)は、前記第1の回転軸線(C)に対して反対側に設けられているように構成するのが好ましい。この構成によれば、往復運動部(ポール2)とカウンターウェイト(44)は互いに反対方向に向かって動くことになり、往復運動部(ポール2)に作用する慣性力をカウンターウェイト(44)の慣性力で相殺することができる。また、回転軸線(C)に対して両側に第1のクランクピン24aと第2のクランクピン26aを配置することによってクランクシャフトユニット(12)の重心位置は回転軸線(C)に近くなり、運転時に回転軸線(C)の周りに発生する余計な遠心力を軽減することができる。
【0047】
また、前記カウンターウェイト(44)は、前記反転ギア(42)よりも前記往復動軸線(A)(あるいはベベルギア22)の近くに配置されるように構成するのが好ましい。この構成によれば、反転部(52)の重心位置が往復運動部(ポール2)の往復動軸線(A)に近づくことにより、往復動軸線(A)に対してカウンターウェイト(44)によって発生するねじれ力を小さくすることができる。
【0048】
また、前記カウンターウェイト(44)と前記反転ギア(42)を含む前記反転部(52)の重心は、前記往復運動部(ポール2)が前進位置にあるときに後退位置に位置決めされ、前記往復運動部(ポール2)が後退位置にあるときに前進位置に位置決めされる。前記往復運動部(ポール2)が前進位置と後退位置の間を移動するときは、前記反転部(52)の重心は、前記往復運動部(ポール2)の移動方向とは反対方向に後退位置と前進位置との間を往復動軸線(A)に沿って移動する。
【0049】
本実施形態によれば、カウンターウェイト(44)と反転ギア(42)を含む反転部(52)の重心が回転するのではなく往復運動部(ポール2)と同じ往復動軸線(A)に沿って往復運動(直線運動)するので、部品点数が少なく、簡単な構造でもって、往復運動部の慣性力に対して垂直方向の振動を発生させずに往復運動部に作用する慣性力を打ち消すことができる、小型かつ軽量の改良された振り落とし装置(1)を提供することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、エンジン8を駆動源として使用しているが、モータを用いても良い。また、上記実施形態では、ベベルピニオン20によってベベルギア22を回転軸線Cの周りを第1の回転方向R1に回転駆動しているが、回転軸線Cの周りを第1の回転方向R1に回転する正転部材としては、ベベルギア22以外の任意の部材を使用することができる。例えば、駆動軸18を回転させるのではなく、第1のクランクシャフト24の第1の主軸24bや第2のクランクシャフト26の第2の主軸26bにモータを接続して正転部材を回転させる構造にすることも可能である。
【0051】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 振り落とし装置
2 ポール(往復運動部)
2a 後端
2b 先端
4 接触部
6 ケース
6a 第1の側壁
6b 第2の側壁
8 エンジン(駆動源)
10 コネクティングロッド
10a 後端
10b 前端
12 クランクシャフトユニット
16 ポールガイド
18 駆動軸
20 ベベルピニオン
22 ベベルギア(正転部材)
22a 第1の開口
22b 第2の開口
22c 穴
22A 第1の架橋部
22B 第2の架橋部
22C 円環部
24 第1のクランクシャフト
24a 第1のクランクピン
24b 第1の主軸
26 第2のクランクシャフト
26a 第2のクランクピン
26b 第2の主軸
30 第1のベアリング
32 第2のベアリング
34 第1のニードルベアリング
36 第2のニードルベアリング
42 反転ギア
42a 中央開口
43 ボルト
44 カウンターウェイト
46 装着部
46a 開口
46b 筒状部
48 ウェイト部
49 インターナルギア
50 クランクシャフト部
52 反転部
A 往復動軸線
B 駆動軸線
C 回転軸線(第1の回転軸線)
D オフセット軸線
E オフセット軸線(第2の回転軸線)
R1 第1の回転方向
R2 第2の回転方向