(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049066
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】医療機器、および該医療機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/018 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
A61B1/018 511
A61B1/018 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155307
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 慶太
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161FF43
4C161JJ03
4C161JJ06
(57)【要約】
【課題】短時間で準備でき、しかも体腔内へ搬送しやすく、湾曲させても内腔が潰れにくい医療機器を提供する。また、短時間で準備でき、しかも体腔内へ搬送しやすく、湾曲させても内腔が潰れにくい医療機器の製造方法を提供する。
【解決手段】近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡と、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、前記第1内視鏡の前記第1内腔内に提供される第2内視鏡と、を含む医療機器であって、前記第2内視鏡は、前記第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材が予め配されている医療機器。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡と、
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、前記第1内視鏡の前記第1内腔内に提供される第2内視鏡と、
を含む医療機器であって、
前記第2内視鏡は、前記第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材が予め配されている医療機器。
【請求項2】
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡における該第1内腔を挿通させて用いられ、十二指腸乳頭部挿入用または瘻孔挿入用の第2内視鏡であり、
前記第2内視鏡は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、該第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材が配されている医療機器。
【請求項3】
前記筒状部材の遠位端が、前記第2内視鏡の遠位端よりも遠位側に位置している請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記筒状部材の遠位端部が、近位側から遠位側に向かって外径が小さくなるテーパ部を有している請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項5】
前記筒状部材を構成する材料は、熱可塑性樹脂である請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項6】
前記第2内視鏡は、操作ワイヤを少なくとも2本有しており、該第2内視鏡の遠位端部における向きは、前記第1内視鏡の遠位端部における向きに対して、30度以上傾倒可能に構成されている請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項7】
前記第2内視鏡は、胆道鏡である請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項8】
前記第3内腔にガイドワイヤが配されている請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項9】
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有する第2内視鏡の該第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材を配する工程と、
前記第2内視鏡を、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡の該第1内腔に配する工程と、
を含む医療機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、および該医療機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、先端に対物レンズや照明レンズを備えており、人体内に搬送することにより体腔内を観察できる。また、内視鏡は、手元側から先端側に通じる処置具挿通チャンネルを有しており、該処置具挿通チャンネルを経由して体腔内を観察したり、体腔内で処置できる処置具を搬送し、体腔内を診断、治療できるため、内視鏡による診断、治療は低侵襲診療であり、患者に対する負担が少ない。近年では、胆管や膵管の疾患に対しても内視鏡による診断、治療が行われている。しかし、胆管や膵管は、十二指腸に対して急峻な角度で交わる方向に延在しているため、一般的な内視鏡は胆管や膵管へ搬送することができない。
【0003】
そこで、胆管や膵管には、内視鏡に設けられた処置具挿通チャンネルを経由して第2の内視鏡などの処置具が十二指腸乳頭から搬送され、胆管や膵管の診断、治療が行われている。第2の内視鏡は、外径が一般的な内視鏡よりも細径化された内視鏡であり、胆道鏡と呼ばれることがある。診断では、例えば、胆管狭窄、結石の有無、病変の確認、さらに生検の追加でより正確な診断が行われている。治療では、例えば、バスケット等で除石困難な総胆管結石症に対して、結石を確認しながら破砕を行う治療が行われている。また、例えば、特許文献1には、カプセルの形態であるカプセル内視鏡を目的部位に誘導するための処置具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内視鏡を用いて診断、治療する際に上述した第2の内視鏡を用いるには、内視鏡を2本準備する必要があり、準備に手間がかかる。そのため短時間で準備できることが望まれる。緊急時にはなおさら準備にかかる時間の短縮が求められる。
【0006】
ところで、胆管や膵管は非常に細いため、胆管や膵管に第2の内視鏡を搬送するには、第2の内視鏡の外径はできるだけ小さいことが望まれる。一方、診断、治療を行うには、第2の内視鏡の内腔はできるだけ広いことが望まれる。しかし、第2の内視鏡の内腔を広くするとガイドワイヤとの段差が生じるため、搬送時の第2の内視鏡にブレが生じ、胆管や膵管に搬送し難くなる。また、胆管や膵管は、十二指腸に対して急峻な角度で交わる方向に延在しているため、第2の内視鏡を搬送する際には、第2の内視鏡の先端部を十二指腸乳頭部から搬送するために、湾曲させる必要がある。しかし、第2の内視鏡の内腔を広くすると、第2の内視鏡を湾曲させたときに第2の内視鏡の内腔が潰れてしまうことがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、短時間で準備でき、しかも体腔内へ搬送しやすく、湾曲させても内腔が潰れにくい医療機器を提供することにある。また、本発明の他の目的は、短時間で準備でき、しかも体腔内へ搬送しやすく、湾曲させても内腔が潰れにくい医療機器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた本発明は、以下の通りである。
[1] 近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡と、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、前記第1内視鏡の前記第1内腔内に提供される第2内視鏡と、を含む医療機器であって、前記第2内視鏡は、前記第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材が予め配されている医療機器。
[2] 近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡における該第1内腔を挿通させて用いられ、十二指腸乳頭部挿入用または瘻孔挿入用の第2内視鏡であり、前記第2内視鏡は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、該第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材が配されている医療機器。
[3] 前記筒状部材の遠位端が、前記第2内視鏡の遠位端よりも遠位側に位置している[1]または[2]に記載の医療機器。
[4] 前記筒状部材の遠位端部が、近位側から遠位側に向かって外径が小さくなるテーパ部を有している[1]~[3]のいずれかに記載の医療機器。
[5] 前記筒状部材を構成する材料は、熱可塑性樹脂である[1]~[4]のいずれかに記載の医療機器。
[6] 前記第2内視鏡は、操作ワイヤを少なくとも2本有しており、該第2内視鏡の遠位端部における向きは、前記第1内視鏡の遠位端部における向きに対して、30度以上傾倒可能に構成されている[1]~[5]のいずれかに記載の医療機器。
[7] 前記第2内視鏡は、胆道鏡である[1]~[6]のいずれかに記載の医療機器。
[8] 前記第3内腔にガイドワイヤが配されている[1]~[7]のいずれかに記載の医療機器。
[9] 近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有する第2内視鏡の該第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材を配する工程と、前記第2内視鏡を、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡の該第1内腔に配する工程と、を含む医療機器の製造方法。
第2内視鏡を体腔内に搬送する方法としては、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡と、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、且つ該第2内腔に近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材が予め配されている第2内視鏡と、を準備する工程と、前記第1内視鏡を体腔内に搬送する工程と、前記第1内視鏡の前記第1内腔にガイドワイヤを通す工程と、前記ガイドワイヤを前記筒状部材の前記第3内腔に通し、該ガイドワイヤに沿って前記第2内視鏡を前記体腔内に搬送する工程と、を含む方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有する第2内視鏡に対し、該第2内視鏡の該第2内腔に、第3内腔を有する筒状部材が予め配されている。これにより、使用者はパッケージから第2内視鏡を取り出して直ぐに、該第2内視鏡を第1内視鏡の第1内腔へ挿入させる手技を行うことができる。そのため、第2内視鏡を準備する時間を短縮でき、煩雑さを低減できる。また、本発明によれば、上記筒状部材が第2内視鏡の第2内腔に予め配されているため第2内視鏡の剛性が高くなり、体腔内へ搬送しやすく、湾曲させても内腔が潰れにくい医療機器を提供できる。また、本発明によれば、短時間で準備でき、しかも体腔内へ搬送しやすく、湾曲させても内腔が潰れにくい医療機器の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡と、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有する第2内視鏡と、を含む医療機器の斜視図である。
【
図2】
図2は、第1内視鏡の遠位端部を拡大した斜視図(一部断面図)を示している。
【
図3】
図3は、第2内視鏡の第2内腔と、該第2内腔に配されている筒状部材を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る医療機器について、実施形態に基づいてより具体的に説明するが、本発明は下記実施形態によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。また、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。以下では、近位側とは使用者(術者)の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側(すなわち処置対象側)を指す。また、長手方向とは近位側から遠位側への方向を指す。また、内視鏡の内方とは、内視鏡の径方向における内視鏡の長軸中心に向かう方向を指し、内視鏡の外方とは、内方とは反対の放射方向を指す。
【0012】
本発明に係る医療機器は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡と、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、前記第1内視鏡の前記第1内腔内に提供される第2内視鏡と、を含む医療機器であって、前記第2内視鏡は、前記第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材が予め配されている医療機器である。第3内腔を有する筒状部材が予め配されているとは、包材でパッケージされている状態において、第2内視鏡の第2内腔に上記筒状部材が配されていることを指す。
【0013】
第2内視鏡の第2内腔に筒状部材が配されていることにより、第2内視鏡の剛性を高めることができるため、第2内視鏡を湾曲させても第2内腔は潰れにくくなる。また、第2内視鏡の第2内腔に筒状部材が予め配されていない場合、第2内視鏡の剛性を高めるには、手術前に第2内視鏡の第2内腔に筒状部材を配することが考えられる。しかし、第2内視鏡の第2内腔に上記筒状部材を予め配しておくことにより、使用者は、パッケージから第2内視鏡を取り出して直ぐに第2内視鏡を使用できる。そのため、手術前の準備の手間が省け、短時間で準備できる。また、手術中に予定外で第2内視鏡を使用したり、第2内視鏡を別のものと交換する際にも、筒状部材が第2内視鏡の第2内腔に予め配されていることにより、速やかに使用できる。また、第2内視鏡の第2内腔に、筒状部材が配されていることにより、筒状部材の肉厚分だけ、ガイドワイヤとの段差を小さくすることができ、搬送時における第2内視鏡のブレを防止できる。その結果、医療機器を体腔内に容易に搬送できる。
【0014】
本発明の第2内視鏡は、十二指腸乳頭部から挿入して用いる内視鏡、または瘻孔から挿入して用いる内視鏡として用いることができる。
【0015】
十二指腸乳頭部とは、胆管と膵管が十二指腸に接続される位置であり、十二指腸乳頭部の開口から第2内視鏡を挿入することにより、十二指腸乳頭よりも肝臓側、胆嚢側、または膵臓側に位置している管腔組織を診断、治療できる。
【0016】
瘻孔とは、皮膚、粘膜、または臓器の組織に、炎症などによって生じた管状の孔であり、瘻孔から第2内視鏡を挿入することにより、瘻孔より奥側の組織の診断、治療が可能となる。
【0017】
本発明には、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡における該第1内腔を挿通させて用いられ、十二指腸乳頭部挿入用または瘻孔挿入用の第2内視鏡であり、前記第2内視鏡は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、該第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材が配されている医療機器も包含される。第2内視鏡の第2内腔に筒状部材が配されていることにより、第2内視鏡の剛性を高めることができるため、第2内視鏡を湾曲させても第2内腔は潰れにくくなる。また、第2内視鏡の第2内腔に筒状部材が予め配されていない場合、第2内視鏡の剛性を高めるには、手術前に第2内視鏡の第2内腔に筒状部材を配することが考えられる。しかし、第2内視鏡の第2内腔に筒状部材を予め配しておくことにより、使用者は、パッケージから第2内視鏡を取り出して直ぐに第2内視鏡を使用できる。そのため、手術前の準備の手間が省ける。また、手術中に予定外で第2内視鏡を使用したり、第2内視鏡を別のものと交換する際にも、筒状部材が第2内視鏡の第2内腔に予め配されていることにより、速やかに使用できる。また、第2内視鏡の第2内腔に、筒状部材が配されていることにより、筒状部材の肉厚分だけ、ガイドワイヤとの段差を小さくすることができ、搬送時における第2内視鏡のブレを防止できる。その結果、医療機器を体腔内に容易に搬送できる。以下、本発明に係る医療機器の構成について
図1~
図3を用いて説明する。
【0018】
図1は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡11と、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有する第2内視鏡21と、を含む医療機器の斜視図である。
図1は、第2内視鏡21が、第1内視鏡11の第1内腔に配されている状態を示している。第1内視鏡11の遠位端部には、対物レンズ12、ライト13a、13bが配されている。また、第1内視鏡11は、第1内腔とは別に、送気、送水用の内腔を有しており、第1内視鏡11の遠位端部には、送気、送水ノズル14が配されている。第2内視鏡21の遠位端部には、対物レンズ、ライトが配されている(図示せず)。
図2は、第1内視鏡11の遠位端部を拡大した斜視図を示しており、第2内視鏡21は断面図で示している。
図3は、第2内視鏡21の第2内腔21aと、該第2内腔21aに配されている筒状部材31を説明するための断面図であり、説明の便宜上、筒状部材の一部を省略して示している。
【0019】
第2内視鏡21は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔11aを有する第1内視鏡11における該第1内腔11aを挿通させて用いられる。第2内視鏡21は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔21aを有し、該第2内腔21aに、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔31aを有する筒状部材31が配されている。
【0020】
筒状部材31としては、樹脂チューブ、線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体、またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0021】
樹脂チューブを構成する材料としては、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン12、ナイロン12エラストマー、ナイロン6、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン等のポリウレタン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、取り扱いが容易であることより、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリアミド系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0023】
樹脂チューブは、例えば、押出成形によって押出されたものを用いることができる。
【0024】
線材が特定のパターンで配置された筒状体としては、例えば、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが示される。網目構造の種類は特に制限されず、線材の巻き数や密度も特に制限されない。線材は、軸方向の全体にわたって一定の密度で巻回されていてもよく、軸方向の位置によって異なる密度で巻回されていてもよい。
【0025】
線材を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、Ni-Ti合金、Co-Cr合金等から構成されている単線または撚線の金属線材であってもよい。また、線材を構成する材料は、例えば、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等の繊維材料であってもよい。繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。
【0026】
筒状部材31は、単層で構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよい。筒状部材31は、一部が単層で構成されており、他部が複数層で構成されていてもよい。複数層の筒状部材31としては、例えば、樹脂チューブと、線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体とを組み合わせたものが挙げられる。例えば、外筒部材が樹脂チューブであり、内筒部材が線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体である積層構造の筒状部材31が挙げられる。また、外筒部材と内筒部材がそれぞれ異なる種類の樹脂チューブで構成されている積層構造の筒状部材31であってもよい。
【0027】
筒状部材31の肉厚は、例えば、100μm~1.5mmが好ましい。これにより、第2内視鏡21の剛性を高めることができる。筒状部材31の肉厚は、300μm以上がより好ましく、更に好ましくは500μm以上であり、1.3mm以下がより好ましく、更に好ましくは1mm以下である。即ち、筒状部材31の肉厚は、300μm~1.3mmがより好ましく、更に好ましくは500μm~1mmである。
【0028】
筒状部材31の遠位端は、長手方向に対して、第2内視鏡21の遠位端と同じ位置であるか、第2内視鏡21の遠位端よりも近位側に位置していてもよいが、第2内視鏡21の遠位端よりも遠位側に位置していることが好ましい。これにより、第2内視鏡21の遠位端から筒状部材31が突き出た状態となるため、第2内視鏡21よりも遠位側においては、第2内視鏡21の外径よりも外径が小さくなるため、十二指腸乳頭部や瘻孔などから挿入しやすくなる。
【0029】
筒状部材31の遠位端部は、近位側と遠位側で外径が変化せず、一定の大きさでもよいが、
図2、
図3に示すように、近位側から遠位側に向かって外径D3が小さくなるテーパ部を有することが好ましい。これにより、筒状部材31の遠位端における外径D3が小さくなるため、十二指腸乳頭部や瘻孔などから挿入しやすくなる。また、筒状部材31の第3内腔31aに挿通させるガイドワイヤとの段差を一層小さくすることができるため、十二指腸乳頭部や瘻孔などから挿入しやすくなる。
【0030】
筒状部材31のうち第2内視鏡21の第2内腔21aに配されている部分の外径D3は、第2内腔21aの内径d2よりも小さい。一方、筒状部材31の外径D3は、第2内腔21aの内径d2に対して、例えば、0.9倍以上が好ましい。これにより、第2内視鏡21と筒状部材31との隙間が少なくなるため、筒状部材31を配することにより第2内視鏡21の剛性を高めることができる。また、第2内視鏡21の第2内腔21a内において、筒状部材31がブレにくくなる。筒状部材31の外径D3は、第2内腔21の内径d2に対して、0.93倍以上がより好ましく、更に好ましくは0.95倍以上である。
【0031】
筒状部材31の第3内腔31aの内径d3は、近位側から遠位側に向かって内径d3が小さくなるテーパ部を有してもよいが、近位側と遠位側で内径d3が変化せず、一定の大きさであってもよい。これにより、筒状部材31の第3内腔31aにガイドワイヤを挿通させやすくなる。
【0032】
筒状部材31の第3内腔31aの内径d3は、筒状部材31の遠位端部における外径D3が、近位側から遠位側に向かって小さくなるテーパ部を有している場合において、近位側と遠位側で内径が変化せず、一定の大きさであることが好ましい。筒状部材31の外径D3を近位側から遠位側に向けて小さくすることにより、筒状部材31を十二指腸乳頭部や瘻孔などから挿入しやすくなり、筒状部材31の内径d3は近位側と遠位側で一定の大きさであることにより、筒状部材31の第3内腔31aにガイドワイヤを挿通させやすくなる。
【0033】
筒状部材31の第3内腔31aには、ガイドワイヤが配されていてもよい。これにより、ガイドワイヤに沿って、筒状部材31、第2内視鏡21、および第1内視鏡11を体腔内へ容易に搬送できる。
【0034】
第2内視鏡21のうち第1内視鏡11の第1内腔11aに配されている部分の外径D2は、第1内腔11aの内径d1よりも小さければよく、例えば、第1内腔11aの内径d1に対して、例えば、0.7倍以下が好ましい。これにより、第1内視鏡11の第1内腔11aに、第2内視鏡21を挿通させやすくなる。第2内視鏡21のうち第1内視鏡11の第1内腔11aに配されている部分の外径D3の上限は、第1内腔11aの内径d1に対して、0.6倍以下がより好ましく、更に好ましくは0.5倍以下である。第2内視鏡21のうち第1内視鏡11の第1内腔11aに配されている部分の外径D2の下限は特に限定されないが、第1内腔11aの内径d1に対して、例えば、0.2倍以上が好ましい。第2内視鏡21のうち第1内視鏡11の第1内腔11aに配されている部分の外径D2の下限は、第1内腔11aの内径d1に対して、0.3倍以上がより好ましく、更に好ましくは0.4倍以上である。即ち、第2内視鏡21の外径D2は、第1内腔11aの内径d1に対して、0.2~0.7倍が好ましく、より好ましくは0.3~0.6倍であり、更に好ましくは0.4~0.5倍である。
【0035】
第2内視鏡21の第2内腔21aの内径d2は、例えば、1.5mm以上、4mm以下であってもよい。これにより、第2内視鏡21の第2内腔21aに筒状部材31を配しても、該筒状部材31の第3内腔31aの空間を充分に確保できるため、第3内腔31aにガイドワイヤを挿通させやすくなる。第2内視鏡21の第2内腔21aの内径は、1.8mm以上がより好ましく、更に好ましくは2mm以上であり、3.8mm以下がより好ましく、更に好ましくは3.6mm以下である。即ち、第2内視鏡21の内径d2は、1.8~3.8mmがより好ましく、更に好ましくは2~3.6mmである。
【0036】
第2内視鏡21は、十二指腸乳頭部または瘻孔からの挿入用として用いることができ、十二指腸乳頭部からの挿入用として用いることが好ましい。即ち、第2内視鏡21は、胆道鏡であることが好ましい。
【0037】
第2内視鏡21は、操作ワイヤを少なくとも2本有しており、該第2内視鏡21の遠位端部における向き21bが、前記第1内視鏡11の遠位端部における向き11bに対して、傾倒可能に構成されていることが好ましい。操作ワイヤは、第2内視鏡21の遠位端部に固定されており、該操作ワイヤの近位端部は、使用者の手元のハンドルに固定されていることが好ましい。
【0038】
第2内視鏡21の遠位端部における向き21bとは、第2内視鏡21の遠位端における、該第2内視鏡21の軸方向を指す。第1内視鏡11の遠位端部における向き11bとは、第1内視鏡11の遠位端における、該第1内視鏡11の軸方向を指す。第1内視鏡11の向き11bと、第2内視鏡21の向き21bとのなす角度θは、0度から180度までの値で表される。
【0039】
第2内視鏡21の向き21bが、第1内視鏡11の向き11bに対して、傾倒可能に構成されていることにより、第2内視鏡21を所定の位置に搬送、挿入しやすくなる。
【0040】
第2内視鏡21の向き21bは、第1内視鏡11の向き11bに対して、30度以上傾倒可能に構成されていることが好ましい。第1内視鏡11の向き11bに対して、傾倒させることができる角度が大きいほど、体腔の湾曲状態に沿って第2内視鏡21を進退させやすくなるため、手技時間を短縮でき、術者への負担も軽減できる。第2内視鏡21の向き21bは、第1内視鏡11の向き11bに対して、60度以上傾倒可能に構成されていることがより好ましく、更に好ましくは90度以上、特に好ましくは120度以上である。
【0041】
次に、本発明に係る医療機器の製造方法について説明する。本発明に係る医療機器は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有する第2内視鏡の該第2内腔に、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔を有する筒状部材を配する工程(以下、筒状部材配置工程とよぶことがある)と、前記第2内視鏡を、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有する第1内視鏡の該第1内腔に配する工程(以下、第2内視鏡配置工程とよぶことがある)と、を経ることによって製造できる。
【0042】
[筒状部材配置工程]
筒状部材配置工程では、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔21aを有する第2内視鏡21の該第2内腔21aに、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔31aを有する筒状部材31を配置する。
【0043】
筒状部材31は、第2内視鏡21に対して非固定であり、長手方向に移動可能であることが好ましい。これにより、第2内視鏡21を体腔内へ搬送した後、該第2内視鏡21の第2内腔21aから筒状部材31を抜去することができる。筒状部材31を抜去することにより、第2内腔21aにおいて筒状部材31の肉厚分の空間を空けることができるため、第2内視鏡21に処置具を挿入し、体腔内で処置できる。
【0044】
[第2内視鏡配置工程]
第2内視鏡配置工程では、第2内腔21aに筒状部材31を配した上記第2内視鏡21を、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔11aを有する第1内視鏡11の該第1内腔11aに配置する。第2内視鏡21を第1内視鏡11の第1内腔11aに配することにより、第1内視鏡11と第2内視鏡21の両方を同時に体腔内へ搬送できる。
【0045】
次に、第2内視鏡21を体腔内へ搬送する方法について説明する。第2内視鏡21は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔11aを有する第1内視鏡11と、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔21aを有し、且つ該第2内腔21aに近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔31aを有する筒状部材31が予め配されている第2内視鏡21と、を準備する工程(以下、準備工程とよぶことがある)と、前記第1内視鏡11を体腔内に搬送する工程(以下、第1内視鏡搬送工程とよぶことがある)と、前記第1内視鏡11の前記第1内腔11aにガイドワイヤを通す工程(以下、ガイドワイヤ挿通工程とよぶことがある)と、前記ガイドワイヤを前記筒状部材31の前記第3内腔31aに通し、該ガイドワイヤに沿って前記第2内視鏡21を前記体腔内に搬送する工程(以下、第2内視鏡搬送工程とよぶことがある)と、を経ることにより体腔内へ搬送できる。
【0046】
[準備工程]
準備工程では、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔11aを有する第1内視鏡11と、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔21aを有し、且つ該第2内腔21aに近位側から遠位側へ長手方向に延在している第3内腔31aを有する筒状部材31が予め配されている第2内視鏡21と、を準備する。第1内視鏡11としては、市販されている内視鏡を用いることができる。第2内視鏡21としては、該第2内視鏡21の第2内腔21aに、筒状部材31が予め配されているものを準備する。これにより使用者は、第2内視鏡21をパッケージから取り出して直ぐに後述する第2内視鏡搬送工程に移ることができる。
【0047】
[第1内視鏡搬送工程]
第1内視鏡搬送工程では、前記第1内視鏡11を体腔内に搬送する。
【0048】
[ガイドワイヤ挿通工程]
ガイドワイヤ挿通工程では、前記第1内視鏡11の前記第1内腔11aにガイドワイヤを通す。
【0049】
[第2内視鏡搬送工程]
第2内視鏡搬送工程では、前記ガイドワイヤを前記筒状部材31の前記第3内腔31aに通し、該ガイドワイヤに沿って前記第2内視鏡21を前記体腔内に搬送する。
【符号の説明】
【0050】
11 第1内視鏡
11a 第1内腔
12 対物レンズ
13a、13b ライト
14 送気、送水ノズル
21 第2内視鏡
21a 第2内腔
31 筒状部材
31a 第3内腔