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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049067
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240402BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155308
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 稔
(72)【発明者】
【氏名】楊 帆
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BA04
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA35
3E172EA44
3E172EA45
(57)【要約】
【課題】複数の充填口を有する同一車両に対し複数のガス供給経路を用いて充填を行うときに、一方の充填ノズルと他方の充填ノズルとの両方が届く範囲を広くする(複数のノズルを通じて充填を行うことが可能な車両停車範囲を広くする)。
【解決手段】水素ガス充填装置1を構成するディスペンサユニット3は、ディスペンサ筐体4を備えている。ディスペンサ筐体4は、第1筐体4Aと、第2筐体4Bと、を備えている。第1筐体4Aと第2筐体4Bは、第1ホース6Aが第1筐体4A外へと延出するための第1延出口41が設けられた側面4A3と、第2ホース6Bが第2筐体4B外へと延出するための第2延出口42が設けられた側面4B3とが向かい合って配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面と背面と側面とを有する第1筐体と、
前記第1筐体内に配設され、燃料ガスを供給する第1ガス供給経路と、
前記第1ガス供給経路の途中に設けられ、燃料ガスの流量を計測する第1流量計と、
前記第1ガス供給経路に接続された第1ホースと、
前記第1ホースの先端に設けられた第1ノズルと、
前記第1筐体の側面に設けられた第1ノズル掛けと、
前記第1筐体の側面に設けられ、前記第1ホースが筐体外へと延出するための第1延出口と、
前記第1筐体に隣接して配置され、正面と背面と側面とを有する第2筐体と、
前記第2筐体内に配設され、燃料ガスを供給する第2ガス供給経路と、
前記第2ガス供給経路の途中に設けられ、燃料ガスの流量を計測する第2流量計と、
前記第2ガス供給経路に接続された第2ホースと、
前記第2ホースの先端に設けられた第2ノズルと、
前記第2筐体の側面に設けられた第2ノズル掛けと、
前記第2筐体の側面に設けられ、前記第2ホースが筐体外へと延出するための第2延出口と、を備えたガス充填装置において、
前記第1筐体と前記第2筐体は、前記第1延出口が設けられた側面と前記第2延出口が設けられた側面とが向かい合って配置されていることを特徴とするガス充填装置。
【請求項2】
前記第1ノズルは、前記第2ノズル掛けに収められ、前記第2ノズルは、前記第1ノズル掛けに収められることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項3】
前記第1ノズル掛けは、前記第1ノズルが着脱される第1ノズル着脱部を備え、当該第1ノズル着脱部は、前記第1筐体の正面側と背面側とに回動可能であり、
前記第2ノズル掛けは、前記第2ノズルが着脱される第2ノズル着脱部を備え、当該第2ノズル着脱部は、前記第2筐体の正面側と背面側とに回動可能であることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項4】
前記第1筐体と前記第2筐体との間には、前記第1ガス供給経路と前記第2ガス供給経路とのうちの一方からの燃料ガスの充填を開始するシングル充填開始ボタンと、前記第1ガス供給経路と前記第2ガス供給経路との両方からの燃料ガスの充填を開始するダブル充填開始ボタンと、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項5】
前記第1ノズル掛けおよび前記第2ノズル掛けには、ノズルの有無を検知するノズル検知手段が設けられており、
前記ダブル充填開始ボタンが操作され、かつ、前記ノズル検知手段により前記第1ノズル掛けと前記第2ノズル掛けとの両方に前記ノズルが無いことが検知された場合に、前記第1ガス供給経路と前記第2ガス供給経路との両方からの燃料ガスの充填が開始されることを特徴とする請求項4に記載のガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両のタンク(燃料タンク、被充填タンク)に水素ガス等のガス(燃料ガス)を充填(供給)するガス充填装置(ガス供給装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両のタンクに水素ガスを充填する水素ガス充填装置が記載されている。この水素ガス充填装置は、筐体内に水素ガス供給経路、流量計等が設けられている。水素ガス供給経路には、筐体の外部へと延びる充填ホースが接続されており、充填ホースの端部には、充填ノズルが設けられている。水素ガス充填装置は、水素ガス供給経路、充填ホースおよび充填ノズルを通じて車両のタンクに水素ガスを充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-71171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水素ガス等の燃料ガスを車両のタンクに充填するガス充填装置において、「複数の充填口(例えば、2つの充填口)を有する同一車両に対して複数のガス供給経路を用いて充填」を行う場合を考える。この場合は、ガス充填装置を複数(例えば、2つ)設けることが考えられる。しかし、複数のガス充填装置を単に設けるだけでは、次のような不都合が考えられる。
【0005】
例えば、複数のガス充填装置の充填ノズルが互いに離れた位置にあると、即ち、充填ホースの筐体への接続口が互いに離れていると、それぞれのガス充填装置の充填ホースが届く範囲(充填可能な範囲)が狭くなる、または、それぞれの充填ホースが届く範囲(充填可能な範囲)がなくなる可能性がある。これにより、車両の停止位置によっては、一方のガス充填装置側の充填ノズルが車両に届いても、当該車両に他方のガス充填装置側の充填ノズルが届かないことが考えられる。この場合、同一車両に複数のガス充填装置を用いて充填を行うことができなくなってしまう。
【0006】
本発明の目的の一つは、複数の充填口を有する同一車両に対し複数のガス供給経路を用いて充填を行うときに、一方の充填ノズルと他方の充填ノズルとの両方が届く範囲を広くできる(複数のノズルを通じて充填を行うことが可能な車両停車範囲を広くできる)ガス充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、好ましくは、正面と背面と側面とを有する第1筐体と、前記第1筐体内に配設され、燃料ガスを供給する第1ガス供給経路と、前記第1ガス供給経路の途中に設けられ、燃料ガスの流量を計測する第1流量計と、前記第1ガス供給経路に接続された第1ホースと、前記第1ホースの先端に設けられた第1ノズルと、前記第1筐体の側面に設けられた第1ノズル掛けと、前記第1筐体の側面に設けられ、前記第1ホースが筐体外へと延出するための第1延出口と、前記第1筐体に隣接して配置され、正面と背面と側面とを有する第2筐体と、前記第2筐体内に配設され、燃料ガスを供給する第2ガス供給経路と、前記第2ガス供給経路の途中に設けられ、燃料ガスの流量を計測する第2流量計と、前記第2ガス供給経路に接続された第2ホースと、前記第2ホースの先端に設けられた第2ノズルと、前記第2筐体の側面に設けられた第2ノズル掛けと、前記第2筐体の側面に設けられ、前記第2ホースが筐体外へと延出するための第2延出口と、を備えたガス充填装置において、前記第1筐体と前記第2筐体は、前記第1延出口が設けられた側面と前記第2延出口が設けられた側面とが向かい合って配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の充填口を有する同一車両に対し複数のガス供給経路を用いて充填を行うときに、一方の充填ノズルと他方の充填ノズルとの両方が届く範囲を広くできる(複数のノズルを通じて充填を行うことが可能な車両停車範囲を広くできる)。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態によるガス充填装置を模式的に示す全体構成図である。
図2】ディスペンサユニットを示す斜視図である。
図3】ディスペンサユニットを示す正面図である。
図4】ディスペンサユニットを示す側面図(図3の左から見た側面図)である。
図5】ディスペンサユニットを示す平面図である。
図6】第1ノズル、第1ホース、第2ノズル、第2ホース、第1ノズル掛け、第2ノズル掛け等の位置関係を示す説明図(斜視図)である。
図7】A系統とB系統との両方の充填(ダブル充填)が行われるときの第1制御装置または第2制御装置による処理を示す流れ図である。
図8】A系統の充填(シングル充填)が行われるときの第1制御装置による処理を示す流れ図である。
図9】第1変形例によるノズル掛けを示す斜視図である。
図10】第2変形例による第1ノズル掛けと第2ノズル掛けとの位置関係を示す説明図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態によるガス充填装置として、車両に搭載されたタンク(燃料タンク、被充填タンク)に水素ガスを充填する車両用の水素ガス充填装置を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図7および図8に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0011】
図1ないし図8は、実施形態を示している。図1において、水素ガス充填装置1は、例えば燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両51の燃料タンク52(以下、タンク52という)に、圧縮状態の水素ガス(ガス)を充填(供給)する燃料ガス充填装置(燃料ガス供給装置)である。車両用のガス充填装置(ガス供給装置)である水素ガス充填装置1は、例えば、水素ガス供給ステーション(水素ステーション)と呼ばれる設備(燃料供給所)に設置されている。水素ガス充填装置1は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部(貯蔵タンク)としてのガス蓄圧器2A,2Bと、ガス蓄圧器2A,2Bからの水素ガスを車両51のタンク52に充填する充填機構としてのディスペンサユニット3と、ガス蓄圧器2A,2Bからディスペンサユニット3のディスペンサ筐体4内にわたって延びるガス供給管路5A,5Bとを含んで構成されている。
【0012】
実施形態では、ディスペンサユニット3は、2つのガス供給管路5A,5B、即ち、一方のガス供給系統(A系統)を構成する第1ガス供給管路5Aと、他方のガス供給系統(B系統)を構成する第2ガス供給管路5Bと、を備えている。そして、A系統のガス蓄圧器となる第1ガス蓄圧器2Aは、第1ガス供給経路としての第1ガス供給管路5Aに接続されている。また、B系統のガス蓄圧器となる第2ガス蓄圧器2Bは、第2ガス供給経路としての第2ガス供給管路5Bに接続されている。これにより、第1ガス蓄圧器2Aと第2ガス蓄圧器2Bは、ディスペンサユニット3のA系統(第1ガス供給管路5A)およびB系統(第2ガス供給管路5B)に個別に水素ガスを供給できる構成となっている。なお、図示は省略するが、単一のガス蓄圧器にA系統を構成する第1ガス供給管路とB系統を構成する第2ガス供給管路とを接続してもよい。
【0013】
ガス蓄圧器2A,2Bは、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵する水素ガス供給源である。ガス蓄圧器2A,2Bは、ガス供給管路5A,5Bの上流側で、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部を構成している。ガス供給管路5A,5Bは、ガス蓄圧器2A,2Bからディスペンサユニット3に向けて延びると共に、ディスペンサユニット3のディスペンサ筐体4内に配設されている。ガス供給管路5A,5Bは、ディスペンサユニット3のホース6A,6Bおよびノズル7A,7Bを介して車両51のタンク52に接続される。図1の仮想線(二点鎖線)は、A系統を構成する第1ガス供給管路5Aが第1ホース6Aおよび第1ノズル7Aを介して車両51のタンク52に接続された状態を示している。
【0014】
第1ガス供給管路5Aと第1ホース6Aは、第1接続部を介して接続されており、当該第1接続部は、筐体側面上部に設けられている。即ち、第1筐体4A、第1ガス供給管路5Aおよび第1ホース6Aは、当該第1接続部を介し接続されており、当該第1接続部は、第1筐体4Aにおける第1ホース6Aの延出口である第1延出口41(図1)となっている。また、同様に、第2ガス供給管路5Bと第2ホース6Bは、第2接続部を介して接続されており、当該第2接続部は、筐体側面上部に設けられている。即ち、第2筐体4B、第2ガス供給管路5Bおよび第2ホース6Bは、当該第2接続部を介し接続されており、当該第2接続部は、第2筐体4Bにおける第2ホース6Bの延出口である第2延出口42(図1)となっている。なお、接続部は、筐体側面に設けたが、これに限らず、筐体内および筐体外に設けられても良く、その場合、筐体の延出口からはガス供給管路またはホースが延出される。
【0015】
ディスペンサユニット3は、ディスペンサ筐体4、第1ホース6A、第1ノズル7A、第1ノズル掛け8A、第1流量調整弁12A、第1遮断弁13A、第1流量計14A、第1熱交換器16A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21A、第1制御装置22Aを備えている。また、ディスペンサユニット3は、第2ホース6B、第2ノズル7B、第2ノズル掛け8B、第2流量調整弁12B、第2遮断弁13B、第2流量計14B、第2熱交換器16B、第2圧力センサ20B、第2温度センサ21B、第2制御装置22Bを備えている。
【0016】
ディスペンサ筐体4は、ディスペンサユニット3の外形をなす筐体(箱体)を構成している。図2ないし図5に示すように、ディスペンサ筐体4は、全体として水平方向に長尺な略直方体状(ボックス状)に形成されており、長さ方向の中央部が上方に突出している。これにより、ディスペンサ筐体4は、全体として凸字形状のボックス体となっている。ディスペンサ筐体4は、長さ方向の一方側に位置する第1筐体4Aと、長さ方向の他側に位置する第2筐体4Bと、これら第1筐体4Aと第2筐体4Bとの間に位置する接続筐体4Cと、を備えている。第1筐体4Aは、上下方向に長尺な直方体状(ボックス状)に形成されている。第2筐体4Bも、第1筐体4Aと同様に、上下方向に長尺な直方体状(ボックス状)に形成されている。この場合、第1筐体4Aと第2筐体4Bは、同じ形状に形成されており、正面(前面)と背面(後面)とが互いに逆に配置されている。
【0017】
即ち、第1筐体4Aは、正面4A1と背面4A2(図5)と一対の側面4A3,4A4と上面4A5とを有している。一対の側面4A3,4A4のうち第2筐体4Bと対向する側面4A3は、第1ノズル掛け8Aが設けられた側面4A3、即ち、ノズル掛け側面4A3となっている。図1および図6に示すように、第1筐体4Aのノズル掛け側面4A3には、第1ノズル掛け8Aが設けられていることに加えて、第1ホース6Aを案内する第1ホースガイド10Aも設けられている。また、図2図3および図5に示すように、第1筐体4Aの正面4A1には、充填量等の報知すべき情報を表示する第1表示器23Aが設けられている。
【0018】
一方、第2筐体4Bは、正面4B1(図4および図5)と背面4B2と一対の側面4B3,4B4と上面4B5とを有している。一対の側面4B3,4B4のうち第1筐体4Aと対向する側面4B3は、第2ノズル掛け8Bが設けられた側面4B3、即ち、ノズル掛け側面4B3となっている。図1および図6に示すように、第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3には、第2ノズル掛け8Bが設けられていることに加えて、第2ホース6Bを案内する第2ホースガイド10Bも設けられている。また、図4および図5に示すように、第2筐体4Bの正面4B1には、充填量等の報知すべき情報を表示する第2表示器23Bが設けられている。第2筐体4Bの正面4B1と背面4B2は、第1筐体4Aの正面4A1と背面4A2に対して逆(反対)に配置されている。
【0019】
また、第1筐体4Aのノズル掛け側面4A3と第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3は、接続筐体4Cを間に挟んで対面している。接続筐体4Cは、上下方向に長尺で第1筐体4Aおよび第2筐体4Bよりも高さ寸法が大きい直方体状(ボックス状)に形成されている。接続筐体4Cは、第1筐体4Aと第2筐体4Bとが連続したボックス体となるように、これら第1筐体4Aと第2筐体4Bとを接続している。接続筐体4Cは、第1筐体4Aの正面4A1側の面(換言すれば、第2筐体4Bの背面4B2側の面)となる第1正面4C1と、第2筐体4Bの正面4B1側の面(換言すれば、第1筐体4Aの背面4A2側の面)となる第2正面4C2(図4および図5)と、を有している。
【0020】
第1正面4C1には、第1筐体4Aのノズル掛け側面4A3および第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3を露出させるための開口4C3が設けられている。この開口4C3には、この開口4C3を開閉可能に塞ぐシャッタ4C4が設けられている。水素ガスの充填を行う作業者は、シャッタ4C4を開けることにより、第1筐体4Aの正面4A1側となる第1正面4C1側から、第1筐体4Aの第1ノズル掛け8A(ノズル掛け側面4A3)および第2筐体4Bの第2ノズル掛け8B(ノズル掛け側面4B3)にアクセスすることができる。
【0021】
さらに、第1正面4C1には、開口4C3よりも上側に位置して操作スイッチとなる操作ボタン24(例えば、シングル・ダブル切換ボタン24A、充填開始ボタン24B、充填停止ボタン24C)が設けられている。なお、図示は省略するが、第2正面4C2にも、第1筐体4Aのノズル掛け側面4A3および第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3を露出させるための開口が設けられている。この開口にも、この開口を開閉可能に塞ぐシャッタが設けられている。また、第2正面4C2にも、操作ボタン(例えば、シングル・ダブル切換ボタン、充填開始ボタン、充填停止ボタン)が設けられている。
【0022】
第1筐体4Aのノズル掛け側面4A3には、第1ノズル掛け8Aが設けられている。第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3には、第2ノズル掛け8Bが設けられている。ノズル掛け8A,8Bは、ノズル7A,7Bを保持する保持部に相当する。ノズル7A,7Bは、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)にノズル掛け8A,8Bに掛止めされる。即ち、ノズル掛け8A,8Bは、車両51のタンク52に水素ガスを充填するとき以外、ノズル7A,7Bを保持している。
【0023】
車両51のタンク52に水素ガスを充填するときは、充填作業の作業者により、ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bから取外される。実施形態では、第1ノズル掛け8Aには、第2ノズル7Bが取外し可能に収められる。第2ノズル掛け8Bには、第1ノズル7Aが取外し可能に収められる。即ち、実施形態では、第1筐体4Aの第1ノズル掛け8Aに第2ノズル7Bが収められ、第2筐体4Bの第2ノズル掛け8Bに第1ノズル7Aが収められる。しかし、これに限らず、第1ノズル掛け8Aに第1ノズル7Aを収め、第2ノズル掛け8Bに第2ノズル7Bを収めるようにしてもよい。
【0024】
図1に示すように、第1筐体4A内には、第1ガス供給管路5A、第1入口弁11A、第1流量調整弁12A、第1遮断弁13A、第1流量計14A、第1熱交換器16A、第1脱圧管路18A、第1脱圧弁19A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21A、第1制御装置22A等が収容されている。第2筐体4B内には、第2ガス供給管路5B、第2入口弁11B、第2流量調整弁12B、第2遮断弁13B、第2流量計14B、第2熱交換器16B、第2脱圧管路18B、第2脱圧弁19B、第2圧力センサ20B、第2温度センサ21B、第2制御装置22B等が収容されている。
【0025】
第1ガス供給管路5Aは、ディスペンサ筐体4の第1筐体4A内に配設され、加圧状態の水素ガスを第1ガス蓄圧器2Aから第1ホース6A側に向けて供給する。第2ガス供給管路5Bは、ディスペンサ筐体4の第2筐体4B内に配設され、加圧状態の水素ガスを第2ガス蓄圧器2Bから第2ホース6B側に向けて供給する。ガス供給管路5A,5Bは、ガス蓄圧器2A,2B側が上流側となり、ホース6A,6B側が下流側となっている。第1ガス供給管路5Aの下流側の端部には、第1筐体4Aのノズル掛け側面4A3側から外部へと延びるガス供給接続路としての第1ホース6Aが接続されている。第2ガス供給管路5Bの下流側の端部には、第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3側から外部へと延びるガス供給接続路としての第2ホース6Bが接続されている。
【0026】
ホース6A,6Bは、可撓性を有する水素ガス充填用ホースであり、例えば、耐圧ホースが用いられている。充填ホースであるホース6A,6Bは、基端側がガス供給管路5A,5Bの下流端に接続されている。この場合、図1および図6に示すように、第1ホース6Aの上流側の端部には、第1緊急離脱カップリング9Aが設けられている。第2ホース6Bの上流側の端部には、第2緊急離脱カップリング9Bが設けられている。緊急離脱カップリング9A,9Bは、例えば、ホース6A,6Bとガス供給管路5A,5Bとを接続しており、緊急時に分離する安全装置である。緊急離脱カップリング9A,9Bは、例えば、水素ガスの充填中または充填終了後に車両51が誤発進したときに、ホース6A,6Bが強い力で引っ張られることにより分離する。
【0027】
緊急離脱カップリング9A,9Bは、分離したときにホース6A,6Bから水素ガスが放出されることを阻止する弁体(遮断弁)が内部に設けられている。一方、ホース6A,6Bの先端には、タンク52の充填口52Aに連結されるノズル7A,7Bが設けられている。ホース6A,6Bは、ガス供給管路5A,5Bと共に、ガス充填経路(ガス供給経路)を構成している。ガス充填経路(ガス供給経路)は、ガス(水素ガス)を燃料として走行する車両51に搭載されたタンク52にガス(水素ガス)を充填(供給)するための経路(管路)である。
【0028】
充填ノズルであるノズル7A,7Bは、ホース6A,6Bの先端側に気密状態で接続されており、所謂充填カップリングを構成している。ノズル7A,7Bは、ホース6A,6Bによってガス供給管路5A,5Bと接続されている。ノズル7A,7Bには、開閉弁(図示せず)が内蔵されている。開閉弁は、水素ガスの流通を許可する「開位置」と水素ガスの流通を遮断する「閉位置」とに切換えられる。なお、ノズル7A,7Bには、開閉弁に代えて、または、開閉弁と共に、逆止弁を設けてもよい。逆止弁は、ノズル7A,7Bからタンク52への水素ガスの流通を許容し、タンク52からノズル7A,7Bへの水素ガスの流通を阻止する。
【0029】
ノズル7A,7Bの先端側は、接続カプラ7A1,7B1となっており、タンク52の接続口となる充填口52Aに着脱可能に接続される。即ち、ノズル7A,7Bの接続カプラ7A1,7B1は、ノズル7A,7B内の管路(図示せず)を通じて車両51のタンク52に水素ガスを供給するときに、タンク52の充填口52Aに気密状態で着脱可能に接続される。また、ノズル7A,7Bは、タンク52の充填口52Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。これにより、ノズル7A,7Bは、水素ガスの充填時に充填口52Aから不用意に外れることを抑制できる。
【0030】
ガス蓄圧器2A,2B内の高圧な水素ガスは、ノズル7A,7Bがタンク52の充填口52Aに対してロック機構によりロックされた状態で、ガス供給管路5A,5B、ホース6A,6Bおよびノズル7A,7Bを通じて車両51のタンク52に充填される。即ち、水素ガス充填装置1は、ノズル7A,7Bを備えており、このノズル7A,7Bを用いて車両51のタンク52へ水素ガスを充填する。
【0031】
図1に示すように、ガス供給管路5A,5Bの途中には、例えば、入口弁11A,11B、流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13Bが設けられている。入口弁11A,11Bは、流量調整弁12A,12Bの上流側に位置している。入口弁11A,11Bは、手動操作により開閉される。なお、入口弁11A,11Bは、必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを省略してもよい。
【0032】
流量調整弁12A,12Bは、入口弁11A,11Bの下流側に位置している。流量調整弁12A,12Bは、制御装置22A,22Bによって開弁、閉弁されることにより、ガス供給管路5A,5Bを流れる水素ガスの流量を調整可能に制御する。即ち、流量調整弁12A,12Bは、車両51のタンク52への水素ガスの流通を制御する。流量調整弁12A,12Bは、例えば電磁式の弁装置であり、制御装置22A,22Bからの信号に基づいて開弁制御される。この場合、流量調整弁12A,12Bは、制御装置22A,22Bの制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する。即ち、流量調整弁12A,12Bは、制御装置22A,22Bからの制御信号によって弁開度が制御されることにより、必要な開度に調整される。
【0033】
遮断弁13A,13Bは、流量調整弁12A,12Bよりも下流側に位置している。遮断弁13A,13Bは、制御装置22A,22Bによって開弁、閉弁されることにより、ガス供給管路5A,5B内の水素ガスの流通を許容または遮断する。即ち、遮断弁13A,13Bは、ガス供給管路5A,5Bの途中部位(例えば、熱交換器16A,16Bと温度センサ21A,21Bとの間)に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁13A,13Bは、制御装置22A,22Bからの制御信号に基づいて開閉されることにより、ガス供給管路5A,5B内で水素ガスの流通を許容または遮断する。
【0034】
流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13Bおよび脱圧弁19A,19Bは、ガス供給管路5A,5B内の水素ガスの流れ(流量、圧力)を制御する制御機器を構成している。一方、流量計14A,14B、圧力センサ20A,20B、温度センサ21A,21Bは、ガス供給管路5A,5Bを流れる水素ガスの状況(流量、圧力、温度)を計測する計測機器を構成している。なお、ガス供給管路5A,5Bの上流側から下流側に向けて設けられている流量計14A,14B、流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13Bの配置(順番)は、図1中に示した順番に限らない。
【0035】
流量計14A,14Bは、流量調整弁12A,12Bよりも上流側に位置している。流量計14A,14Bは、例えば、被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計である。流量計14A,14Bは、入口弁11A,11Bと流量調整弁12A,12Bとの間でガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測結果(検出信号)を制御装置22A,22Bへと出力する。制御装置22A,22Bは、車両51のタンク52への水素ガスの充填量を演算し、水素ガス燃料の払出し量を表示器23A,23B等に表示する。これにより、例えば顧客等に表示内容を報知する。
【0036】
冷却器15A,15Bは、ガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスを冷却するための冷却装置である。冷却器15A,15Bは、タンク52に充填される水素ガスの温度上昇を抑えるため、ガス供給管路5A,5Bの途中位置で水素ガスを冷却する。即ち、冷却器15A,15Bは、ガス供給管路5A,5Bを介して車両51(タンク52)に供給される水素ガスを冷却する。冷却器15A,15Bは、ガス供給管路5A,5Bの途中部位(流量調整弁12A,12Bと遮断弁13A,13Bとの間)に設けられた熱交換器16A,16Bと、熱交換器16A,16Bに冷媒管路を介して接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構(図示せず)を備えたチラーユニット17A,17Bと、を含んで構成されている。
【0037】
チラーユニット17A,17Bは、冷媒管路を介して熱交換器16A,16Bとの間に冷媒を循環させる。熱交換器16A,16Bは、ガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスと冷媒との間で熱交換を行う。これにより、冷却器15A,15Bは、ホース6A,6Bに向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、-33~-40℃)まで低下させる。
【0038】
ガス供給管路5A,5Bの遮断弁13A,13Bよりも下流側には、例えばホース6A,6B側からガス圧力を脱圧するための脱圧管路18A,18Bが分岐して設けられている。脱圧管路18A,18Bの途中には、例えば電磁式または空圧作動式の弁装置である脱圧弁19A,19Bが設けられている。脱圧弁19A,19Bは、ホース6A,6B(ノズル7A,7B)を用いた水素ガスの充填作業が完了し、遮断弁13A,13Bが閉弁されたときに、制御装置22A,22Bからの制御信号に基づいて開閉される。
【0039】
即ち、ノズル7A,7Bの接続カプラ7A1,7B1をタンク52の充填口52Aから取外す場合には、ホース6A,6B内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁19A,19Bを一時的に開弁して脱圧管路18A,18Bの先端側を大気に開放させる。これにより、ホース6A,6B側の水素ガスは、外部に放出されてホース6A,6B内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、ノズル7A,7Bの接続カプラ7A1,7B1は、タンク52の充填口52Aから取外し可能となる。
【0040】
圧力センサ20A,20Bは、遮断弁13A,13Bよりも下流側(即ち、ノズル7A,7B側)のガス供給管路5A,5Bに設けられている。圧力センサ20A,20Bは、ガス蓄圧器2A,2Bから供給される水素ガスの圧力(管路途中の圧力)を検知する。圧力センサ20A,20Bは、ノズル7A,7Bの近傍でガス供給管路5A,5B内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を制御装置22A,22Bへと出力する。
【0041】
温度センサ21A,21Bは、遮断弁13A,13Bと圧力センサ20A,20Bとの間に位置してガス供給管路5A,5Bの途中に設けられている。温度センサ21A,21Bは、ガス供給管路5A,5B内を流れる水素ガスの温度を検出し、その検出結果(検出信号)を制御装置22A,22Bへと出力する。なお、温度センサ21A,21Bと圧力センサ20A,20Bとの配置関係は、図1に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。
【0042】
制御装置22A,22Bは、流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13B、脱圧弁19A,19B、表示器23A,23B等を制御するコントローラ(コントロールユニット)を構成している。制御装置22A,22Bは、流量調整弁12A,12Bおよび遮断弁13A,13Bの制御を行うことにより充填対象となるタンク52への燃料供給を制御する。制御装置22A,22Bは、制御回路であり、例えば、CPU(演算装置)、メモリ22A1,22B1(記憶装置)、タイマ等を有するマイクロコンピュータにより構成されている。メモリ22A1,22B1には、例えば、後述の図7および図8に示す処理フローを実行するための処理プログラムが記憶(格納)されている。
【0043】
図1に示すように、制御装置22A,22Bの入力側には、流量計14A,14B、圧力センサ20A,20B、温度センサ21A,21B、湿度センサ(図示せず)、操作ボタン24(例えば、シングル・ダブル切換ボタン24A、充填開始ボタン24B、充填停止ボタン24C)、ノズル検知手段としてのノズル検出器25A,25B等が接続されている。一方、制御装置22A,22Bの出力側は、流量調整弁12A,12B、遮断弁13A,13B、脱圧弁19A,19B、表示器23A,23B等と接続されている。また、図示は省略するが、第1制御装置22Aと第2制御装置22Bは、互いに必要な信号(制御信号、指令信号、検出信号等)を送信、受信できるように接続されている。なお、図1では、A系統用の第1制御装置22AとB系統用の第2制御装置22Bとの2つの制御装置22A,22Bを有する構成とした場合を示しているが、例えば、A系統とB系統とで共通の1つの制御装置を有する構成としてもよい。即ち、第1制御装置22Aと第2制御装置22Bとを1つの制御装置で構成してもよい。
【0044】
表示器23A,23Bは、ディスペンサ筐体4に設けられている。この場合、第1表示器23Aは、第1筐体4Aの正面4A1側に設けられており、第2表示器23Bは、第2筐体4Bの正面4B1側に設けられている。表示器23A,23Bは、水素ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い高さ位置に配置され、水素ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。
【0045】
操作ボタン24は、ディスペンサ筐体4に設けられている。この場合、操作ボタン24は、接続筐体4Cの第1正面4C1と第2正面4C2とにそれぞれ設けられている。操作ボタン24は、例えば燃料供給所(水素ステーション)の作業者が手動操作可能なスイッチ(ボタンスイッチ)である。図1に示すように、操作ボタン24は、例えば、シングル・ダブル切換ボタン24Aと、充填開始ボタン24Bと、充填停止ボタン24Cと、を備えている。シングル・ダブル切換ボタン24Aは、シングル充填を行うかダブル充填を行うかを選択するボタン(スイッチ)である。シングル充填は、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとのうちの一方の供給管路を通じて水素ガスを充填するときに選択される。ダブル充填は、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの両方の供給管路を通じて水素ガスを充填するときに選択される。充填開始ボタン24Bは、水素ガスの充填を開始するときに操作される。充填停止ボタン24Cは、水素ガスの充填中に充填を停止するときに操作される。なお、操作ボタン24は、筐体4Cの第1正面4C1と第2正面4C2とにそれぞれ設けられた構成としたが、これに限らず、第1正面4C1と第2正面4C2との何れか一方に設けられる構成であってもよい。
【0046】
例えば、接続筐体4Cの第1正面4C1側(即ち、第1筐体4Aの正面4A1側)のシングル・ダブル切換ボタン24Aによりシングル充填を選択する。この場合に、第1正面4C1側の充填開始ボタン24Bを操作すると、第1正面4C1側に停車した車両51のタンク52にA系統(第1ガス供給管路5A、第1ホース6Aおよび第1ノズル7A)を通じて水素ガスを充填することができる。一方、接続筐体4Cの第2正面4C2側(即ち、第2筐体4Bの正面4B1側)のシングル・ダブル切換ボタン(図示せず)によりシングル充填を選択する。この場合に、第2正面4C2側の充填開始ボタン(図示せず)を操作すると、第2正面4C2側に停車した車両のタンクにB系統(第2ガス供給管路5B、第2ホース6Bおよび第2ノズル7B)を通じて水素ガスを充填することができる。
【0047】
また、第1正面4C1側のシングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填を選択する。この場合に、第1正面4C1側の充填開始ボタン24Bを操作すると、第1正面4C1側に停車した2つの充填口を有する車両のタンクにA系統とB系統との両方を通じて水素ガスを充填することができる。一方、第2正面4C2側のシングル・ダブル切換ボタンによりダブル充填を選択する。この場合に、第2正面4C2側の充填開始ボタンを操作すると、第2正面4C2側に停車した2つの充填口を有する車両のタンクに、A系統とB系統との両方を通じて水素ガスを充填することができる。操作ボタン24(シングル・ダブル切換ボタン24A、充填開始ボタン24B、充填停止ボタン24C)は、操作状態に応じた信号を制御装置22A,22Bにそれぞれ出力する。これにより、制御装置22A,22Bは、これらの信号に応じて、遮断弁13A,13Bを開弁または閉弁させる。
【0048】
図1に示すように、ノズル検出器25A,25Bは、ノズル掛け8A,8Bに設けられている。ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bが掛止めされたか否かを検出する。ノズル検出器25A,25Bは、スイッチ(ノズルスイッチ)、例えば2位置切換型のスイッチにより構成されており、制御装置22A,22Bに接続されている。ノズル検出器25A,25Bは、例えば、ノズル7A,7Bをノズル掛け8A,8Bに掛止めすると、ノズル7A,7Bによって押動され、オフ(OFF)からオン(ON)状態に切換わる。ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bから取出される(または取外される)と、オン(ON)からオフ(OFF)状態に切換わる。
【0049】
ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bに掛止めされたか否かに対応する検出信号(OFF信号またはON信号)を、制御装置22A,22Bに出力する。なお、ノズル検出器25A,25Bは、ディスペンサ筐体4側のノズル掛け8A,8Bに設けるものに限らず、ノズル7A,7B側に設けてもよい。いずれの場合も、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)は、ディスペンサユニット3のノズル掛け8A,8Bにノズル7A,7Bが保持される。即ち、車両51のタンク52に水素ガスを充填する充填作業が終了すると、ノズル7A,7Bは、ノズル掛け8A,8Bに戻され、収納状態に保持される。
【0050】
水素ガスを燃料として走行駆動される車両51は、例えば図1に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両51は、例えば燃料電池と電動モータとを含んで構成される駆動装置(図示せず)、図1中に点線で示すタンク52等を備えている。タンク52は、水素ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成され、例えば車両51の後部側に搭載されている。なお、タンク52は、車両51の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。タンク52には、ノズル7A(またはノズル7B)の接続カプラ7A1(または接続カプラ7B1)が着脱可能に取付けられる充填口52A(レセプタクル)が設けられている。
【0051】
図1では、1つの充填口52Aを有する車両51を例示している。そして、図1では、この1つの充填口52Aに第1ノズル7Aが接続された状態を二点鎖線で示している。これに対して、図示は省略するが、2つの充填口を有する車両の場合は、2つの充填口に第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとを接続して充填を行うことができる。いずれの場合も、車両51のタンク52内には、ノズル7Aおよび/またはノズル7Bが充填口52Aに気密に連結(接続)された状態で水素ガスの充填が行われる。このとき、ノズル7Aおよび/またはノズル7Bは、ロック機構により充填口52Aに対して不用意に外れることがないようにロックされる。ディスペンサユニット3は、冷却された水素ガスを車両51のタンク52に差圧を利用して充填する。なお、充填口52Aには内部に逆止弁が設けられている。この逆止弁は、ノズル7A,7Bから車両51のタンク52側への水素ガスの流通を許容し、タンク52からノズル7A,7B側への水素ガスの流通を阻止する。
【0052】
ところで、従来のディスペンサユニットは、ディスペンサ筐体の両側面または片側面にホースおよびノズルが設置されている。一方、例えば、燃料電池自動車として構成された大型トラック(FC専用大型トラック)に搭載されるMFタイプのタンクは、2つの充填口が近接して設けられている。このような2つの充填口を有するタンクに充填を行う場合は、2つの充填口にそれぞれノズルを接続し、2つのガス供給経路を用いて充填を行うことにより、充填に要する時間を短縮することができる。しかし、ディスペンサ筐体の両側面にホースおよびノズルが設置されている構成の場合も、ディスペンサ筐体の片側面にホースおよびノズルが設置されている構成の場合も、2つの充填口に2つのノズルを接続させるためには、例えば「ホースの長さを長くする」および/または「ホースの長さを調整する」必要がある。しかも、車両の停車位置(充填口の位置)とノズル掛けおよび操作ボタンの位置とが離れている場合は、充填作業を行うときに作業者が移動しなければならない距離が長くなる。
【0053】
そこで、実施形態では、ホース6A,6B、ノズル7A,7Bおよびノズル掛け8A,8Bをディスペンサ筐体4の中央部に設置している。これにより、実施形態では、ホースの長さを長くしなくても、最適なホース6A,6Bの長さで充填が可能となっている。また、対となるホース6A,6Bの長さを同寸にできるため、ディスペンサ筐体4の正面側からも背面側からも充填を容易に行うことができる。しかも、充填に必要な機器、即ち、ノズル7A,7B、ノズル掛け8A,8B、操作ボタン24(シングル・ダブル切換ボタン24A、充填開始ボタン24B、充填停止ボタン24C)等をディスペンサ筐体4の中央部に纏めて設置している。このため、ホース6A,6Bを踏み付けること、ホース6A,6Bを引っ掛けることを抑制できる。以下、これらの点について、詳しく説明する。
【0054】
図1ないし図6に示すように、水素ガス充填装置1を構成するディスペンサユニット3は、ディスペンサ筐体4と、第1ガス供給経路である第1ガス供給管路5Aと、第1流量計14Aと、第1ホース6Aと、第1ノズル7Aと、第1ノズル掛け8Aと、第1延出口41と、第2ガス供給経路である第2ガス供給管路5Bと、第2流量計14Bと、第2ホース6Bと、第2ノズル7Bと、第2ノズル掛け8Bと、第2延出口42と、を備えている。ディスペンサ筐体4は、第1筐体4Aと、第2筐体4Bと、を備えている。第1筐体4Aと第2筐体4Bとは、離間して配置されており、これら第1筐体4Aと第2筐体4Bとの間は、接続筐体4Cで連結されている。
【0055】
第1筐体4Aは、正面4A1と、背面4A2と、第1ノズル掛け8Aが設けられた側面であるノズル掛け側面4A3と、を有している。第1ガス供給管路5Aは、第1筐体4A内に配設されている。第1ガス供給管路5Aは、燃料ガスとなる水素ガスを供給する。第1流量計14Aは、第1ガス供給管路5Aの途中に設けられている。第1流量計14Aは、燃料ガスとなる水素ガスの流量を計測する。第1ホース6Aは、第1ガス供給管路5Aに接続されている。第1ノズル7Aは、第1ホース6Aの先端に設けられている。第1ノズル掛け8Aは、第1筐体4Aの側面であるノズル掛け側面4A3に設けられている。第1延出口41は、第1筐体4Aの側面、より具体的には、ノズル掛け側面4A3に設けられている。第1延出口41は、第1ホース6Aがディスペンサ筐体4外(より具体的には、第1筐体4A外)へと延出するための延出口に対応する。換言すれば、第1延出口41は、ディスペンサ筐体4(より具体的には、第1筐体4A)から第1ガス供給管路5Aまたは第1ホース6Aが外部に出る部位となる出口(第1出口)に対応する。
【0056】
第2筐体4Bは、第1筐体4Aに隣接して配置されている。第2筐体4Bも、正面4B1と、背面4B2と、第2ノズル掛け8Bが設けられた側面であるノズル掛け側面4B3と、を有している。第2ガス供給管路5Bは、第2筐体4B内に配設されている。第2ガス供給管路5Bは、燃料ガスとなる水素ガスを供給する。第2流量計14Bは、第2ガス供給管路5Bの途中に設けられている。第2流量計14Bは、燃料ガスとなる水素ガスの流量を計測する。第2ホース6Bは、第2ガス供給管路5Bに接続されている。第2ノズル7Bは、第2ホース6Bの先端に設けられている。第2ノズル掛け8Bは、第2筐体4Bの側面であるノズル掛け側面4B3に設けられている。第2延出口42は、第2筐体4Bの側面、より具体的には、ノズル掛け側面4B3に設けられている。第2延出口42は、第2ホース6Bがディスペンサ筐体4外(より具体的には、第2筐体4B外)へと延出するための延出口に対応する。換言すれば、第2延出口42は、ディスペンサ筐体4(より具体的には、第2筐体4B)から第2ガス供給管路5Bまたは第2ホース6Bが外部に出る部位となる出口(第2出口)に対応する。
【0057】
この上で、第1筐体4Aと第2筐体4Bは、第1延出口41が設けられた側面に対応するノズル掛け側面4A3と第2延出口42が設けられた側面に対応するノズル掛け側面4B3とが向かい合って配置されている。即ち、第1筐体4Aと第2筐体4Bは、第1ノズル掛け8Aが設けられたノズル掛け側面4A3と第2ノズル掛け8Bが設けられたノズル掛け側面4B3とが向かい合って配置されている。この場合、第1筐体4Aのノズル掛け側面4B3には、第1延出口41と第1ノズル掛け8Aとが設けられており、第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3には、第2延出口42と第2ノズル掛け8Bとが設けられている。これに加えて、接続筐体4Cの第1正面4C1と第2正面4C2とには、それぞれ開口4C3が設けられている。これにより、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bは、第1筐体4Aの正面4A1側からも背面4A2側からも取り出し可能であり、かつ、第2筐体4Bの正面4B1側からも背面4B2側からも取り出し可能となっている。なお、第1延出口41(第1接続口)と第2延出口42(第2接続口)との間の距離、即ち、第1筐体4Aと第2筐体4Bとの互いに対向する側面4A3,4B3の間の距離は、小さい程よい。この場合、この距離は、最も小さくした場合でも、充填作業の作業者が筐体4A,4Bの正面4A1,4B1側からも背面4A2,4B2からも両方のノズル掛け8A,8Bに手が届き、かつ、両方のノズル掛け8A,8Bから余裕を持って両方のノズル7A,7Bを取り外せる距離とすることが好ましい。
【0058】
また、第1ノズル7Aは、第2筐体4B側の第2ノズル掛け8B(即ち、自身のガス供給経路(第1ガス供給管路5A)を収容する第1筐体4Aに対面する第2筐体4Bの第2ノズル掛け8B)に収められる。また、第2ノズル7Bは、第1筐体4A側の第1ノズル掛け8A(即ち、自身のガス供給経路(第2ガス供給管路5B)を収容する第2筐体4Bに対面する第1筐体4Aの第1ノズル掛け8A)に収められる。さらに、第1筐体4Aと第2筐体4Bとの間、換言すれば、接続筐体4Cの第1正面4C1と第2正面4C2とには、それぞれ操作ボタン24が設けられている。この場合、操作ボタン24は、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとのうちの一方からの水素ガスの充填を開始する「シングル充填開始ボタン」と、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの両方からの水素ガスの充填を開始する「ダブル充填開始ボタン」と、を有している。「シングル充填開始ボタン」は、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりシングル充填が選択されているときの充填開始ボタン24Bに対応する。「ダブル充填開始ボタン」は、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択されているときの充填開始ボタン24Bに対応する。
【0059】
また、第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bには、ノズル7A,7Bの有無を検知するノズル検知手段としてのノズル検出器25A,25Bが設けられている。ノズル検出器25A,25Bは、制御装置22A,22Bに接続されている。制御装置22A,22Bは、「ダブル充填開始ボタン」が操作され、かつ、ノズル検出器25A,25Bにより第1ノズル掛け8Aと第2ノズル掛け8Bとの両方にノズルが無いことが検知された場合に、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの両方からの水素ガスの充填を開始する。即ち、制御装置22A,22Bは、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択された状態で充填開始ボタン24Bが操作された場合に、「ダブル充填開始ボタン」が操作されたと判定する。このとき、制御装置22A,22Bは、ノズル検出器25A,25Bからの信号に基づいて両方のノズルが取り外されていると判定した場合に、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの両方からの水素ガスの充填を開始する。
【0060】
図6に示すように、第1ノズル掛け8Aは、第1ブラケット8A1と、第1ノズル着脱部8A2と、第1閉塞部8A3と、を含んで構成されている。第2ノズル掛け8Bは、第2ブラケット8B1と、第2ノズル着脱部8B2と、第2閉塞部8B3と、を含んで構成されている。ブラケット8A1,8B1は、ノズル掛け8A,8Bのノズル着脱部8A2,8B2を筐体4A,4Bに取付けるためのベースを構成している。ノズル着脱部8A2,8B2は、ノズル7A,7Bを取付け、取外し可能に保持する。即ち、ノズル着脱部8A2,8B2は、ノズル7A,7Bが着脱される。閉塞部8A3,8B3は、ノズル7A,7Bの接続口となる接続カプラ7A1,7B1を開放可能に閉塞する。即ち、閉塞部8A3,8B3は、ノズル着脱部8A2,8B2にノズル7A,7Bが保持された状態で、上方に向いたノズル7A,7Bの先端側から塵埃、雨水等の異物が入り込まないようにノズル7A,7B(接続カプラ7A1,7B1)を覆う。
【0061】
前述したように、実施形態のディスペンサユニット3は、図3を正面図とした場合に、正面に向かって右側となる第1筐体4A内にA系統の機器を有しており、左側となる第2筐体4B内にB系統の機器を有している。そして、ディスペンサ筐体4の中央部、即ち、第1筐体4Aと第2筐体4Bとの間には、緊急離脱カップリング9A,9B、ホース6A,6B、ノズル7A,7Bおよびノズル掛け8A,8Bが配置されている。また、図6に示すように、第1筐体4Aと第2筐体4Bとの間には、ホース6A,6Bを案内(ガイド)するホースガイド10A,10Bも設けられている。ホース6A,6B、ノズル7A,7B、ノズル掛け8A,8Bおよびホースガイド10A,10Bは、ディスペンサ筐体4の正面側と背面側(換言すれば、接続筐体4Cの第1正面4C1と第2正面4C2)とにそれぞれ設けられたシャッタ4C4の内に収容されている。
【0062】
このように、ホース6A,6Bは、装置中央部、即ち、ディスペンサユニット3(ディスペンサ筐体4)の中央部に設けられている。このため、ディスペンサユニット3(ディスペンサ筐体4)の正面側と背面側との両方で最適なホース6A,6Bの長さで充填が可能となっている。また、シャッタ4C4の上方には、シングル充填とダブル充填とを切換えるための操作ボタン24(シングル・ダブル切換ボタン24A)が設けられている。この場合、ディスペンサ筐体4の正面(即ち、第1筐体4Aの正面4A1側となる接続筐体4Cの第1正面4C1)には、A系統用の操作ボタン24(シングル・ダブル切換ボタン24A、充填開始ボタン24B、充填停止ボタン24C)が設けられている。これに対して、図示は省略するが、ディスペンサ筐体4の背面(即ち、第2筐体4Bの正面4B1側となる接続筐体4Cの第2正面4C2)には、B系統用の操作ボタン(シングル・ダブル切換ボタン、充填開始ボタン、充填停止ボタン)が設けられている。
【0063】
なお、A系統側の表示器となる第1表示器23Aは、第1筐体4Aの正面4A1に設けられており、B系統側の表示器となる第2表示器23Bは、第2筐体4Bの正面4B1に設けられている。即ち、ディスペンサユニット3(ディスペンサ筐体4)の正面側には、A系統の第1表示器23Aが設けられており、同じく背面側には、B系統の第2表示器23Bが設けられている。例えば、ダブル充填が行われているときは、第1表示器23Aと第2表示器23Bとの両方に、A系統(第1ガス供給管路5A)とB系統(第2ガス供給管路5B)との両方を通じて供給された水素ガスの合算値が表示される。
【0064】
図6は、ディスペンサユニット3(ディスペンサ筐体4)の中央部(装置中央部)に設置される機器類を示している。A系統側の筐体となる第1筐体4Aのノズル掛け側面4A3には、A系統側の第1緊急離脱カップリング9Aおよび第1ホースガイド10Aが設けられている。また、第1筐体4Aのノズル掛け側面4A3には、B系統側の第2ノズル7Bが保持される第1ノズル掛け8Aが設けられている。一方、B系統側の筐体となる第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3には、B系統側の第2緊急離脱カップリング9Bおよび第2ホースガイド10Bが設けられている。また、第2筐体4Bのノズル掛け側面4B3には、A系統側の第1ノズル7Aが保持される第2ノズル掛け8Bが設けられている。
【0065】
このように、実施形態では、第1ノズル7Aは、第2筐体4B側の第2ノズル掛け8Bに収められる。また、第2ノズル7Bは、第1筐体4A側の第1ノズル掛け8Aに収められる。この場合、A系統側の第1ノズル7Aおよびこの第1ノズル7Aが保持される第2ノズル掛け8Bには、A系統側であることを示すための「A」のラベルが表示されている。また、B系統側の第2ノズル7Bおよびこの第2ノズル7Bが保持される第1ノズル掛け8Aには、B系統側であることを示すための「B」のラベルが表示されている。これにより、充填を行う作業者は、手にしたノズル7A,7Bをいずれのノズル掛け8A,8Bに収めればよいかを識別することができる。
【0066】
また、第1緊急離脱カップリング9Aおよび第1ホースガイド10Aは、第1ノズル掛け8Aよりも第2筐体4B側に設けられている。第2緊急離脱カップリング9Bおよび第2ホースガイド10Bも、第2ノズル掛け8Bよりも第1筐体4A側に設けられている。これにより、ノズル掛け8A,8Bからノズル7A,7Bを外し、車両51へノズル7A,7Bを接続させる際に、ホース6A,6Bがノズル掛け8A,8Bに干渉させないようにすることができる。また、緊急離脱カップリング9A,9Bの取り出し方向(分離方向)は、正面側と背面側とのいずれの側からも充填を可能とするために、ノズル掛け側面4A3,4B3に向かって正面側とする。緊急離脱カップリング9A,9Bは、ホース6A,6Bが引っ張られたとき、即ち、ノズル7A,7Bが車両51に接続されたまま車両51が動き出したときに、ホース6A,6Bと分離する。緊急離脱カップリング9A,9Bは、緊急離脱カップリング9A,9Bから分離したホース6A,6Bがノズル掛け8A,8Bと干渉しない位置に設置する。
【0067】
次に、図7および図8に示す流れ図(フローチャート)について説明する。図7は、A系統の制御装置である第1制御装置22AまたはB系統の制御装置である第2制御装置22Bで行われるダブル充填の場合の制御処理を示す流れ図(フローチャート)である。図8は、A系統の制御装置である第1制御装置22Aで行われるシングル充填の場合の制御処理を示す流れ図(フローチャート)である。なお、B系統の制御装置である第2制御装置22Bで行われるシングル充填の場合の制御処理については、系統が異なる以外A系統と同様であるため、説明は省略する。図7および図8の処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0068】
まず、ダブル充填のときに制御装置22A,22Bで行われる処理について、図7を参照しつつ説明する。ダブル充填は、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択されており、かつ、第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方が第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bから外れているときに、充填開始ボタン24Bが操作されることにより開始される。第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方が第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bから外れたことは、第1ノズル検出器25Aおよび第2ノズル検出器25Bにより検出することができる。制御装置22A,22Bは、ノズルスイッチである第1ノズル検出器25Aおよび第2ノズル検出器25Bの両方が作動したときに、第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方が第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bから外れたと判定することができる。ダブル充填のときは、第1表示器23Aと第2表示器23Bとの両方に、A系統(第1ガス供給管路5A)とB系統(第2ガス供給管路5B)との両方を通じて供給された水素ガスの合算値がそれぞれ表示される。これにより、第1表示器23Aと第2表示器23Bとの何れかを確認することで、作業者はダブル充填を行っている車両への総充填量を把握することができる。
【0069】
例えば、制御装置22A,22Bへの通電により、制御装置22A,22Bが起動すると、図7の制御処理が開始される。制御装置22A,22Bは、S1で、切換スイッチがダブル充填に設定されたか否かを判定する。即ち、S1では、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択されているか否かを判定する。S1で「NO」、即ち、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択されていないと判定された場合は、リターンする。例えば、図7のリターンを介して図8のスタートに進み、図8の処理を開始する。
【0070】
これに対して、S1で「YES」、即ち、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択されたと判定された場合は、S2に進む。S2では、A系統の充填ノズルである第1ノズル7AとB系統の充填ノズルである第2ノズル7Bとの両方が外されたか否かを判定する。この判定は、第1ノズル検出器25Aおよび第2ノズル検出器25Bの検出信号(ON信号、OFF信号)に基づいて行うことができる。S2で「NO」、即ち、第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方が外されていないと判定された場合は、S2の処理を繰り返す。これに対して、S2で「YES」、即ち、第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方が外されたと判定された場合は、S3に進む。S3では、充填を開始すると共に、充填制御処理を行う。即ち、S3では、充填開始ボタン24Bが操作されることにより、ダブル充填が開始され、ダブル充填の制御処理が行われる。具体的には、第1流量調整弁12A、第2流量調整弁12B、第1遮断弁13Aおよび第2遮断弁13Bを開弁し、水素ガスの充填を行う。
【0071】
S3に続くS4では、充填が終了したか否かを判定する。即ち、S4では、充填を終了する圧力として設定された設定圧力(充填終了圧力)に達したか否か、および、充填停止ボタン24Cが操作されたか否かを判定する。圧力は、圧力センサ20A,20Bにより検出される。S4で「NO」、即ち、充填が終了していないと判定された場合は、ダブル充填の制御を継続しつつS4の処理を繰り返す。圧力センサ20A,20Bにより検出される圧力が設定圧力(充填終了圧力)に達しておらず、かつ、充填停止ボタン24Cが操作されていない場合は、ダブル充填が継続される。
【0072】
一方、S4で「YES」、即ち、充填が終了したと判定された場合は、S5に進む。この場合は、圧力センサ20A,20Bにより検出される圧力が設定圧力(充填終了圧力)に達した場合、または、充填停止ボタン24Cが操作された場合に対応する。S5では、ダブル充填の終了制御の処理を行う。即ち、第1流量調整弁12A、第2流量調整弁12B、第1遮断弁13Aおよび第2遮断弁13Bを閉弁すると共に、第1脱圧弁19Aおよび第2脱圧弁19Bを開弁し、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bの圧力を大気圧レベルに減圧する。
【0073】
S5に続くS6では、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bが第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bに戻されたか否かを判定する。S6で「NO」、即ち、第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方が第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bに戻されていないと判定された場合は、S6の処理を繰り返す。一方、S6で「YES」、即ち、第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方が第1ノズル掛け8Aおよび第2ノズル掛け8Bに戻されたと判定された場合は、リターンする(例えば、図8のスタートに進む)。
【0074】
次に、シングル充填のときに第1制御装置22Aで行われる処理について、図8を参照しつつ説明する。シングル充填は、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりシングル充填が選択されており、かつ、第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bから外れているときに、充填開始ボタン24Bが操作されることにより開始される。この場合に、例えば、A系統のシングル・ダブル切換ボタン24Aによりシングル充填が選択されているときに、B系統のノズルである第2ノズル7Bが取り外された(第1ノズル検出器25Aが作動した)場合を考える。この場合は、「B系統のノズルである第2ノズル7Bが第1ノズル掛け8Aから誤って取り外された」可能性、または、「第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとがノズル掛け8A,8Bに入れ代って収納されている」可能性がある。そこで、このような場合には、表示器23A,23Bにエラー表示を行い、作業者にノズル7A,7Bの収納状態を確認するように促す。
【0075】
例えば、図7の処理でリターンに進むと、図8の制御処理が開始される。第1制御装置22Aは、S11で、切換スイッチがA系統充填(A系統のシングル充填)に設定されたか否かを判定する。即ち、S11では、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりシングル充填(A系統のシングル充填)が選択されているか否かを判定する。S11で「NO」、即ち、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりシングル充填が選択されていないと判定された場合は、リターンする。例えば、図8のリターンを介して図7のスタートに進み、図7の処理を開始する。
【0076】
これに対して、S11で「YES」、即ち、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりシングル充填(A系統のシングル充填)が選択されたと判定された場合は、S12に進む。S12では、A系統の充填ノズルである第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bから外されたか否かを判定する。この判定は、第2ノズル検出器25Bの検出信号(ON信号、OFF信号)に基づいて行うことができる。S12で「YES」、即ち、第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bから外されたと判定された場合は、S13に進む。S13では、A系統の充填(シングル充填)を開始すると共に、充填制御処理を行う。即ち、S13では、A系統の充填開始ボタン24Bが操作されることにより、A系統の充填が開始され、A系統の充填の制御処理が行われる。具体的には、第1流量調整弁12Aおよび第1遮断弁13Aを開弁し、水素ガスの充填を行う。
【0077】
S13に続くS14では、充填が終了したか否かを判定する。即ち、S14では、充填を終了する圧力として設定された設定圧力(充填終了圧力)に達したか否か、および、A系統の充填停止ボタン24Cが操作されたか否かを判定する。圧力は、第1圧力センサ20Aにより検出される。S14で「NO」、即ち、A系統の充填が終了していないと判定された場合は、A系統の充填制御を継続しつつS14の処理を繰り返す。第1圧力センサ20Aにより検出される圧力が設定圧力(充填終了圧力)に達しておらず、かつ、充填停止ボタン24Cが操作されていない場合は、A系統のシングル充填が継続される。
【0078】
一方、S14で「YES」、即ち、充填が終了したと判定された場合は、S15に進む。この場合は、第1圧力センサ20Aにより検出される圧力が設定圧力(充填終了圧力)に達した場合、または、A系統の充填停止ボタン24Cが操作された場合に対応する。S15では、シングル充填の終了制御の処理を行う。即ち、第1流量調整弁12Aおよび第1遮断弁13Aを閉弁すると共に、第1脱圧弁19Aを開弁し、第1ノズル7Aの圧力を大気圧レベルに減圧する。
【0079】
S15に続くS16では、第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bに戻されたか否かを判定する。S16で「NO」、即ち、第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bに戻されていないと判定された場合は、S16の処理を繰り返す。一方、S16で「YES」、即ち、第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bに戻されたと判定された場合は、リターンする。例えば、図8のリターンを介して図7のスタートに進み、図7の処理を開始する。
【0080】
一方、S12で「NO」、即ち、第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bから外されていないと判定された場合は、S17に進む。S17では、B系統の充填ノズルである第2ノズル7Bが第1ノズル掛け8Aから外されたか否かを判定する。この判定は、第1ノズル検出器25Aの検出信号(ON信号、OFF信号)に基づいて行うことができる。S17で「NO」、即ち、第2ノズル7Bが第1ノズル掛け8Aから外されていないと判定された場合は、S12の前に戻り、S12以降の処理を繰り返す。これに対して、S17で「YES」、即ち、第2ノズル7Bが第1ノズル掛け8Aから外されたと判定された場合は、S18に進む。S18では、第1表示器23Aにエラー表示を行う。
【0081】
即ち、この場合は、「B系統のノズルである第2ノズル7Bが第1ノズル掛け8Aから誤って取り外された」可能性、または、「第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとがノズル掛け8A,8Bに入れ代って収納されている」可能性が考えられる。そこで、S18では、「B系統の第2ノズル7Bが誤って取り外された、または、第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとがそれぞれ逆のノズル掛け8A,8Bに収納されている」旨を表示する。S18でエラー表示を行ったら、リターンする。
【0082】
実施形態による水素ガス充填装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、水素ガス充填装置1による水素ガスの充填作業について説明する。
【0083】
まず、シングル充填の充填作業を説明する。例えば、1つの充填口52Aを有する車両51が、ディスペンサユニット3(ディスペンサ筐体4)の正面側、即ち、第1筐体4Aの正面4A1側に停車する。充填作業を行う作業者は、A系統の第1ノズル7Aを第2筐体4B側の第2ノズル掛け8Bから取外す。そして、図1中に二点鎖線で示すように、第1ノズル7Aをタンク52の充填口52Aに接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が、接続筐体4Cの第1正面4C1側のシングル・ダブル切換ボタン24Aを操作することによりシングル充填を選択し、さらに、充填開始ボタン24BをON操作すると、第1制御装置22Aは、第1流量調整弁12Aと第1遮断弁13Aに開弁信号を出力する。即ち、第1制御装置22Aは、第1流量調整弁12Aおよび遮断弁13Aを開弁させる。
【0084】
これにより、第1ガス蓄圧器2A内の水素ガスは、A系統、即ち、第1ガス供給管路5A、第1ホース6Aおよびノズル7Aを通じて車両51のタンク52に充填される。第1制御装置22Aは、例えば第1流量計14A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21Aの測定結果を監視しつつ、第1流量調整弁12Aの開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これにより、第1ガス供給管路5A内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0085】
このとき、第1制御装置22Aは、第1流量計14Aからの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算し、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または第1圧力センサ20Aにより検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力(目標充填圧)に達したか否かを判定する。目標とする充填量(圧力)に達したと判定したときには、第1制御装置22Aからの信号により第1流量調整弁12Aおよび第1遮断弁13Aが閉弁され、タンク52への水素ガスの充填が終了される。なお、作業者が充填停止ボタン24Cを操作した場合にも、充填作業は終了される。
【0086】
充填作業が終了すると、第1制御装置22Aは充填終了制御処理を実行する。この充填終了制御処理では、第1制御装置22Aからの信号により第1脱圧弁19Aを閉弁状態から開弁するように制御する。そして、第1脱圧弁19Aが開弁したときには、第1脱圧管路18Aが大気に開放されることにより、第1ノズル7A側のガスが外部に放出されて第1ノズル7Aの圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者は第1ノズル7Aの接続カプラ7A1をタンク52の充填口52Aから取外すことができる。
【0087】
タンク52の充填口52Aから取外された第1ノズル7Aは、作業者によって第2筐体4B側の第2ノズル掛け8Bに戻され、手動操作により掛止めされる。第2ノズル掛け8Bに設けられた第2ノズル検出器25Bは、第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bに戻されたか否かを検出する。第1ノズル7Aが第2ノズル掛け8Bに戻されて掛止めされると、第2ノズル検出器25Bからの検出信号が第2制御装置22Bを介して第1制御装置22Aに出力される。これにより、第1制御装置22Aは、第1ノズル7Aによる充填作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。
【0088】
なお、このようなシングル充填は、ディスペンサユニット3(ディスペンサ筐体4)の正面側に停車した車両51だけでなく、ディスペンサユニット3の背面側に停車した車両に対しても行うことができる。この場合は、ディスペンサユニット3の背面側、即ち、第2筐体4Bの正面4B1側に停車した車両に対して、B系統となる第2ガス供給管路5B、第2ホース6Bおよび第2ノズル7Bを通じてシングル充填を行うことができる。シングル充填は、ディスペンサユニット3の正面側と背面側との両方に停車した車両51に対して同時に行うことができる。
【0089】
次に、ダブル充填の充填作業を説明する。例えば、2つの充填口を有する車両が、ディスペンサユニット3(ディスペンサ筐体4)の正面側、即ち、第1筐体4Aの正面4A1側に停車する。充填作業を行う作業者は、第1ノズル7Aを第2筐体4B側の第2ノズル掛け8Bから取外す。また、第2ノズル7Bを第1筐体4A側の第1ノズル掛け8Aから取外す。そして、第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bを車両の2つの充填口に接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が、接続筐体4Cの第1正面4C1側のシングル・ダブル切換ボタン24Aを操作することによりダブル充填を選択し、さらに、充填開始ボタン24BをON操作すると、第1制御装置22Aおよび第2制御装置22Bは、第1流量調整弁12A、第2流量調整弁12B、第1遮断弁13Aおよび第2遮断弁13Bに開弁信号を出力する。即ち、第1制御装置22Aおよび第2制御装置22Bは、第1流量調整弁12A、第2流量調整弁12B、第1遮断弁13Aおよび第2遮断弁13Bを開弁させる。
【0090】
これにより、第1ガス蓄圧器2A内の水素ガスは、A系統、即ち、第1ガス供給管路5A、第1ホース6Aおよびノズル7Aを通じて車両のタンクに充填され、かつ、第2ガス蓄圧器2B内の水素ガスは、B系統、即ち、第2ガス供給管路5B、第2ホース6Bおよびノズル7Bを通じて車両のタンクに充填される。第1制御装置22Aは、例えば第1流量計14A、第1圧力センサ20A、第1温度センサ21Aの測定結果を監視しつつ、第1流量調整弁12Aの開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これと共に、第2制御装置22Bは、例えば第2流量計14B、第2圧力センサ20B、第2温度センサ21Bの測定結果を監視しつつ、第2流量調整弁12Bの開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これにより、第1ガス供給管路5A内および第2ガス供給管路5B内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0091】
このとき、第1制御装置22Aおよび第2制御装置22Bは、第1流量計14Aおよび第2流量計14Bからの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算し、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または第1圧力センサ20Aおよび第2圧力センサ20Bにより検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力(目標充填圧)に達したか否かを判定する。目標とする充填量(圧力)に達したと判定したときには、第1制御装置22Aおよび第2制御装置22Bからの信号により第1流量調整弁12A、第2流量調整弁12B、第1遮断弁13Aおよび第2遮断弁13Bが閉弁され、タンクへの水素ガスの充填が終了される。なお、作業者が充填停止ボタン24Cを操作した場合にも、充填作業は終了される。
【0092】
充填作業が終了すると、第1制御装置22Aおよび第2制御装置22Bは充填終了制御処理を実行する。この充填終了制御処理では、第1制御装置22Aからの信号により第1脱圧弁19Aを閉弁状態から開弁するように制御する。また、これと共に、第2制御装置22Bからの信号により第2脱圧弁19Bを閉弁状態から開弁するように制御する。そして、第1脱圧弁19Aが開弁したときには、第1脱圧管路18Aが大気に開放されることにより、第1ノズル7A側のガスが外部に放出されて第1ノズル7Aの圧力が大気圧レベルに減圧される。また、第2脱圧弁19Bが開弁したときには、第2脱圧管路18Bが大気に開放されることにより、第2ノズル7B側のガスが外部に放出されて第2ノズル7Bの圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者は第1ノズル7Aの接続カプラ7A1および第2ノズル7Bの接続カプラ7B1をタンクの充填口から取外すことができる。
【0093】
タンクの充填口から取外された第1ノズル7Aは、作業者によって第2筐体4B側の第2ノズル掛け8Bに戻され、手動操作により掛止めされる。また、タンクの充填口から取外された第2ノズル7Bは、作業者によって第1筐体4A側の第1ノズル掛け8Aに戻され、手動操作により掛止めされる。ノズル検出器25A,25Bは、ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bに戻されたか否かを検出する。ノズル7A,7Bがノズル掛け8A,8Bに戻されて掛止めされると、ノズル検出器25A,25Bからの検出信号が制御装置22A,22Bに出力される。これにより、制御装置22A,22Bは、ノズル7A,7Bによるダブル充填の作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。なお、このようなダブル充填は、ディスペンサユニット3(ディスペンサ筐体4)の背面側に停車した車両に対しても行うことができる。
【0094】
以上のように、実施形態によれば、第1筐体4Aと第2筐体4Bは、第1延出口41が設けられた側面4A3と第2延出口42が設けられた側面4B3とが向かい合って配置されている。このため、第1延出口41と第2延出口42とを近付けて配置することができる。これにより、第1ホース6Aを介して第1延出口41に通じる「第1ノズル7A」と第2ホース6Bを介して第2延出口42に通じる「第2ノズル7B」との両方が届く範囲を広くできる。即ち、第1筐体4Aと第2筐体4Bは、第1延出口41および第1ノズル掛け8Aが設けられたノズル掛け側面4A3と第2延出口42および第2ノズル掛け8Bが設けられたノズル掛け側面4B3とが向かい合って配置されている。このため、向かい合って配置された2つのノズル掛け8A,8Bから外された第1ノズル7Aおよび第2ノズル7Bを通じて、2つの充填口を有する同一車両に対し第1ガス供給管路5Aおよび第2ガス供給管路5Bを用いて水素ガスの充填を行うことができる。このため、2つの充填口を有する同一車両に対し1つの充填口を通じて充填を行う場合と比較して、充填に要する時間を短くできる。この場合に、第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方が届く範囲を広くできるため、2つの充填口を有する車両に第1ノズル7Aと第2ノズル7Bとの両方を用いて充填を行うことが可能な停車範囲(ダブル充填可能な車両停車範囲)を広くできる。
【0095】
実施形態によれば、第1ノズル7Aは第2ノズル掛け8Bに収められ、第2ノズル7Bは第1ノズル掛け8Aに収められる。このため、非充填状態(待機状態)のときに、それぞれのノズル7A,7Bは、「当該ノズル7A,7Bのガス供給管路5A,5Bを有する筐体4A,4B」と対面する「反対側の筐体4A,4B」のノズル掛け8A,8Bに収められる。即ち、非充填状態(待機状態)のときに、第1ノズル7Aは、「第1ガス供給管路5Aを有する第1筐体4A」と対面する「第2筐体4B」の第2ノズル掛け8Bに収められる。
【0096】
また、第2ノズル7Bは、「第2ガス供給管路5B経路を有する第2筐体4B」と対面する「第1筐体4A」の第1ノズル掛け8Aに収められる。これにより、それぞれのノズル7A,7Bを「自身のガス供給管路5A,5Bを有する筐体4A,4B」のノズル掛け8A,8Bに収める場合と比較して、ノズル7A,7Bをノズル掛け8A,8Bに収めた状態で、ホース6A,6Bの曲げ角度を大きくすること(ホース6A,6Bの曲げを緩やかにすること)ができる。この結果、ホース6A,6Bの曲げによるホース6A,6Bの強度低下を抑制できる。
【0097】
実施形態によれば、第1筐体4Aと第2筐体4Bとの間には、「シングル充填開始ボタン」と「ダブル充填開始ボタン」とが設けられている。より具体的には、「シングル充填開始ボタン」と「ダブル充填開始ボタン」とに対応するボタンとして、シングル・ダブル切換ボタン24Aおよび充填開始ボタン24Bが設けられている。このため、車両51に水素ガスの充填を行う作業者は、1つの充填口52Aを有する車両51に対するシングル充填を開始するときも、2つの充填口を有する同一車両に対するダブル充填を開始するときも、第1筐体4Aと第2筐体4Bとの間の中央部付近からシングル・ダブル切換ボタン24Aおよび充填開始ボタン24Bを操作することができる。これにより、作業者の操作に関する作業性を向上できる。
【0098】
実施形態によれば、「ダブル充填開始ボタン」が操作され、かつ、ノズル検出器25A,25Bにより第1ノズル掛け8Aと第2ノズル掛け8Bとの両方にノズル7A,7Bが無いことが検知された場合に、ダブル充填が開始される。即ち、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択されており、ノズル検出器25A,25Bによりノズル掛け8A,8Bにノズル7A,7Bが無いことが検知された状態で、充填開始ボタン24Bが操作されると、ダブル充填が開始される。このため、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択された状態で充填開始ボタン24Bが操作されても、第1ノズル掛け8Aと第2ノズル掛け8Bとの少なくとも一方にノズル7A,7Bが有るときは、ダブル充填が開始されない。このため、シングル・ダブル切換ボタン24Aによりダブル充填が選択された状態で充填開始ボタン24Bが誤って操作された場合に、そのままダブル充填が開始されてしまうことを抑制できる。
【0099】
なお、実施形態では、ノズル掛け8A,8Bとして、ノズル着脱部8A2,8B2およびブラケット8A1,8B1がノズル掛け側面4A3,4B3に対して回動しない構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図9に示す第1変形例のように、ノズル掛け8A,8Bのブラケット8A1,8B1をノズル掛け側面4A3,4B3に対して回動可能に構成してもよい。即ち、第1変形例では、ブラケット8A1,8B1は、ノズル掛け側面4A3,4B3に固定される回転支持部材31に対して回転軸32を介して回動可能に取付けられている。これにより、第1変形例では、第1ノズル掛け8Aは、(第1)ノズル着脱部8A2が第1筐体4Aの正面4A1側と背面4A2側とに回動可能となり、第2ノズル掛け8Bは、(第2)ノズル着脱部8B2が第2筐体4Bの正面4B1側と背面4B2側とに回動可能となっている。
【0100】
即ち、第1ノズル掛け8Aは、第1ノズル7Aが着脱される第1ノズル着脱部8A2を備えている。そして、第1ノズル着脱部8A2は、第1筐体4Aの正面4A1側と背面4A2側とに回動可能である。また、第2ノズル掛け8Bは、第2ノズル7Bが着脱される第2ノズル着脱部8B2を備えている。そして、第2ノズル着脱部8B2は、第2筐体4Bの正面4B1側と背面4B2側とに回動可能である。このような構成の場合、例えば、ブラケット8A1,8B1と回転支持部材31との間には、ノズル着脱部8A2,8B2およびブラケット8A1,8B1を所定の位置で仮固定するためのラッチ機構(図示せず)を設けることができる。このラッチ機構としては、ブラケット8A1,8B1に設けた湾曲凸面状の凸部(図示せず)と、回転支持部材31に設けられた湾曲凹面状の凹部(図示せず)と、により構成することができる。
【0101】
例えば、ブラケット8A1,8B1の上面33のうち回転支持部材31の下面34と対向する部位には、ばね(図示せず)により上方に向けて付勢される凸部を設ける。一方、回転支持部材31の下面34の3個所位置、具体的には、「ノズル着脱部8A2,8B2が正面側に回動したときに凸部と対応する位置」と「ノズル着脱部8A2,8B2が背面側に回動したときに凸部と対応する位置」と「ノズル着脱部8A2,8B2が正面側と背面側との間の中央に回動させたときに凸部と対応する位置」との3個所位置には、ブラケット8A1,8B1側の凸部と係合する凹部(図示せず)を設ける。
【0102】
ノズル着脱部8A2,8B2がブラケット8A1,8B1と共に回動すると、ブラケット8A1,8B1の上面33に設けた凸部が回転支持部材31の下面34に設けられたいずれかの凹部に係合する。これにより、ノズル着脱部8A2,8B2は、凸部と凹部とが係合した状態で回転支持部材31に対し仮固定される。ノズル着脱部8A2,8B2およびブラケット8A1,8B1は、凸部と凹部との係合が解除される力で回動させることにより、仮固定された位置から別の位置に回動させることができる。このような第1変形例によれば、車両に水素ガスを充填するときに、ディスペンサ筐体4(第1筐体4A、第2筐体4B)の正面側からも背面側からも、ノズル7A,7Bをノズル掛け8A,8B(ノズル着脱部8A2,8B2)から容易に取り外すことができる。
【0103】
実施形態では、緊急離脱カップリング9A,9Bとホースガイド10A,10Aとノズル掛け8A,8Bとを上下方向に一直線に並べた構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図10に示す第2変形例のように、緊急離脱カップリング9A,9Bおよびホースガイド10A,10Aとノズル掛け8A,8Bとをオフセットさせてもよい。なお、図10は、第1筐体4Aと第2筐体4Bとの間を上側から見た説明図(平面図)に対応する。このように、第2変形例では、緊急離脱カップリング9A,9Bおよびホースガイド10A,10Aは、ノズル掛け8A,8Bと上下方向に干渉しないオフセットした位置としている。
【0104】
実施形態では、第1ノズル7Aを第2ノズル掛け8Bに収め、第2ノズル7Bを第1ノズル掛け8Aに収める構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第1ノズル7Aを第1ノズル掛け8Aに収め、第2ノズル7Bを第2ノズル掛け8Bに収める構成としてもよい。
【0105】
実施形態では、「シングル充填開始ボタン」および「ダブル充填開始ボタン」として、シングル・ダブル切換ボタン24Aおよび充填開始ボタン24Bを備える構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、実施形態では、操作ボタン24として、「シングル・ダブル切換ボタン24A」と「充填開始ボタン24B」と「充填停止ボタン24C」とを備える構成としている。しかし、これに限らず、操作ボタンは、例えば、シングル・ダブル切換ボタンを省略し、「シングル充填開始ボタン」と「ダブル充填開始ボタン」と「充填停止ボタン」とを備える構成としてもよい。
【0106】
実施形態では、図6に示すように、第1ノズル7Aおよび第2ノズル掛け8BにA系統側であることを示す「A」のラベルを表示すると共に、第2ノズル7Bおよび第1ノズル掛け8AにB系統側であることを示す「B」のラベルを表示する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、A系統であるかB系統であるかを区別する印として、例えば、「白」、「青」等の色別テープを用いてもよい。また、A系統であるかB系統であるかを区別する方法として、充填を行う系統に合わせてランプを表示する方法、音声により案内する方法を採用してもよい。さらに、ノズルおよびノズル掛けの識別に合わせたラベル、色分けを、筐体のベース部分やホース保護用のカバーに表示してもよい。
【0107】
実施形態では、表示器23A,23Bをディスペンサ筐体4の正面側と背面側との両方に設けると共に、ダブル充填の場合に、両方の表示器23A,23Bに合算値が表示される構成とした場合を例に挙げて説明した。このような構成によれば、充填が行われていない側に位置する作業者(充填者)が、ダブル充填が行われていること(充填ができないこと)を把握することができる。一方、表示器は、例えば、供給系統ごとに設けられた専用の表示器としてもよい。この場合は、供給系統に関わらず、例えば、ノズルが取り外されたときのノズル掛けの回転方向から充填方向(正面側または背面側)を判定し、当該方向にある表示器に流量を表示させる構成としてもよい。
【0108】
実施形態では、タンク52が搭載された車両51として自動車を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、車両は、フォークリフト等の作業車両としてもよい。また、自動車としては、例えば、バス等の乗合自動車でもよいし、トラック等の貨物自動車でもよい。
【0109】
実施形態では、車両51のタンク52に水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両以外の被充填タンク(タンク、容器等)に水素ガスを充填するときに用いることもできる。また、水素ガス充填装置1のディスペンサユニット3は、他の場所に水素ガスを給送するための管路(水素給送管路)の途中に設置させてもよい。さらに、ガス(燃料ガス)として水素ガスを例に挙げて説明したが、天然ガス(NG)、プロパンガス(LPG)等の水素ガス以外のガス(燃料ガス)を用いる構成(ガス充填装置)としてもよい。
【0110】
実施形態では、複数のガス供給経路として、第1ガス供給管路5Aと第2ガス供給管路5Bとの2つの系統(経路)を備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、3つ以上のガス供給経路を備える構成としてもよい。
【0111】
以上説明した実施形態および/または変形例(以下、単に「実施形態」という)によれば、第1筐体と第2筐体は、第1延出口が設けられた側面と第2延出口が設けられた側面とが向かい合って配置されている。このため、第1延出口と第2延出口とを近付けて配置することができる。これにより、「第1ホースを介して第1延出口に通じる第1ノズル」と「第2ホースを介して第2延出口に通じる第2ノズル」との両方が届く範囲を広くできる。即ち、第1ノズルと第2ノズルとの両方を通じて充填を行うことが可能な車両停車範囲を広くできる。
【0112】
実施形態によれば、第1ノズルは第2ノズル掛けに収められ、第2ノズルは第1ノズル掛けに収められる。このため、非充填状態(待機状態)のときに、それぞれのノズルは、「当該ノズルのガス供給経路を有する筐体」と対面する「反対側の筐体」のノズル掛けに収められる。即ち、非充填状態(待機状態)のときに、第1ノズルは、「第1ガス供給経路を有する第1筐体」と対面する「第2筐体」の第2ノズル掛けに収められる。また、第2ノズルは、「第2ガス供給経路を有する第2筐体」と対面する「第1筐体」の第1ノズル掛けに収められる。これにより、それぞれのノズルを自身のガス供給経路を有する筐体のノズル掛けに収める場合と比較して、ノズルをノズル掛けに収めた状態で、ホースの曲げ角度を大きくすること(ホースの曲げを緩やかにすること)ができる。この結果、ホースの曲げによるホースの強度低下を抑制できる。
【0113】
実施形態によれば、第1ノズル掛けの第1ノズル着脱部は、第1筐体の正面側と背面側とに回動可能である。また、第2ノズル掛けの第2ノズル着脱部は、第2筐体の正面側と背面側とに回動可能である。このため、車両に燃料ガスを充填するときに、筐体の正面側からも背面側からも、ノズルをノズル掛けから容易に取り外すことができる。
【0114】
実施形態によれば、第1筐体と第2筐体との間には、「シングル充填開始ボタン」と「ダブル充填開始ボタン」とが設けられている。このため、車両に燃料ガスの充填を行う作業者は、1つの充填口を有する車両に対するシングル充填を開始するときも、2つの充填口を有する同一車両に対するダブル充填を開始するときも、第1筐体と第2筐体との間の中央部付近から「シングル充填開始ボタン」または「ダブル充填開始ボタン」を操作することができる。これにより、作業者の操作に関する作業性を向上できる。
【0115】
実施形態によれば、「ダブル充填開始ボタン」が操作され、かつ、ノズル検知手段により第1ノズル掛けと第2ノズル掛けとの両方にノズルが無いことが検知された場合に、ダブル充填が開始される。このため、「ダブル充填開始ボタン」が操作されても、第1ノズル掛けと第2ノズル掛けとの少なくとも一方にノズルが有るときは、ダブル充填が開始されない。このため、「ダブル充填開始ボタン」が誤って操作された場合に、そのままダブル充填が開始されてしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0116】
1 水素ガス充填装置(ガス充填装置)
3 ディスペンサユニット(充填機構)
4A 第1筐体
4A1 正面
4A2 背面
4A3 ノズル掛け側面(側面)
4B 第2筐体
4B1 正面
4B2 背面
4B3 ノズル掛け側面(側面)
5A 第1ガス供給管路(第1ガス供給経路)
5B 第2ガス供給管路(第1ガス供給経路)
6A 第1ホース
6B 第2ホース
7A 第1ノズル
7B 第2ノズル
8A 第1ノズル掛け
8A2 第1ノズル着脱部
8B2 第2ノズル着脱部
8B 第2ノズル掛け
14A 第1流量計
14B 第2流量計
24A シングル・ダブル切換ボタン
24B 充填開始ボタン(シングル充填開始ボタン、ダブル充填開始ボタン)
25A 第1ノズル検出器(ノズル検知手段)
25B 第2ノズル検出器(ノズル検知手段)
41 第1延出口
42 第2延出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10