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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049080
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20240402BHJP
   A01F 12/56 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A01D41/12 B
A01F12/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155333
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】國松 翔太
(72)【発明者】
【氏名】有田 英司
【テーマコード(参考)】
2B074
2B092
【Fターム(参考)】
2B074AA05
2B074AB01
2B074AD05
2B074CC01
2B074DE03
2B074EA09
2B074EB10
2B074ED01
2B074ED05
2B092AA01
2B092BB01
2B092CA02
2B092CA81
2B092CC09
(57)【要約】
【課題】扱胴の変速設定の誤りを容易にかつ事前に判断することができ、扱胴の回転状態を収穫対象の作物に適した状態に制御することができるとともに、扱胴における不具合を速やかに検知することができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインであって、扱室内に扱胴軸により回転可能に支持された状態で設けられた扱胴と、扱胴軸に回転動力を伝達するための扱胴入力軸を有し、扱胴の回転速度を複数の変速段に変速設定可能に構成された変速装置と、扱胴回転センサ125と、制御部120と、モニタ128とを備え、制御部120は、あらかじめ作物の種類ごとに設定されたエンジン回転数とロータ回転数との対応関係に基づき、扱胴回転センサ125により検出された扱胴の回転速度が、モニタ128により設定された作物の種類に対応した対応関係に整合するか否かの判定を行い、判定の判定結果をモニタ128に表示する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部により刈り取った穀稈を搬送して脱穀部へと供給するコンバインであって、
前記脱穀部の扱室内に扱胴軸により回転可能に支持された状態で設けられた扱胴と、
駆動源からの動力の伝達を受けて回転し前記扱胴軸に回転動力を伝達するための扱胴入力軸を有し、前記扱胴の回転速度を複数の変速段に変速設定可能に構成された変速装置と、
前記扱胴の回転速度を検出する回転検出装置と、
前記回転検出装置の検出信号の入力を受ける制御部と、
前記制御部により表示内容が制御される表示装置と、
設定された作物の種類に関する情報を前記制御部に送る設定装置と、を備え、
前記制御部は、あらかじめ作物の種類ごとに設定された前記駆動源の回転数と前記扱胴の回転数との対応関係に基づき、前記回転検出装置により検出された前記扱胴の回転速度が、前記設定装置により設定された作物の種類に対応した前記対応関係に整合するか否かの判定を行い、前記判定の判定結果を前記表示装置に表示する
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御部は、
前記回転検出装置により検出された前記扱胴の回転速度が、前記設定装置により設定された作物の種類に対応した前記対応関係に整合する場合、設定された作物の種類を前記表示装置に表示し、
前記回転検出装置により検出された前記扱胴の回転速度が、前記設定装置により設定された作物の種類に対応した前記対応関係に整合しない場合、前記表示装置に警報を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記制御部は、前記回転検出装置により検出された前記扱胴の回転速度が、前記設定装置により設定された作物の種類に対応した前記対応関係に整合する場合、前記表示装置に前記作物の種類を点滅表示する
ことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記駆動源から前記扱胴軸に対する動力の伝達の断続を行うための脱穀クラッチを備え、
前記制御部は、前記脱穀クラッチが前記扱胴軸に対する動力の伝達が行われる入状態となった時から所定時間経過後に前記判定を行う
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転速度の変速ができる扱胴を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインにおいて、刈取部により刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部の扱室内に回転駆動可能に支持された扱胴と、扱胴の回転速度を変速させるための変速装置とを備え、収穫する作物の種類等に応じて、変速装置によって扱胴の回転速度を変速させる構成を備えたものがある。
【0003】
このような構成を備えたコンバインに関し、特許文献1には、扱胴の回転速度の変速状態が高速状態および低速状態のいずれであるのかを判定し、その結果を、運転席の前方に配置されたモニタに表示することが記載されている。具体的には、特許文献1には、扱胴の回転数を検出する回転センサの検出結果に基づいて判定した扱胴の変速状態と、操作具の操作によって設定された変速装置の変速状態とを比較し、両者が一致する場合はその変速状態をモニタに表示し、両者が相違する場合はその旨をモニタおよびブザーによりオペレータに報知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6647929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような従来の技術は、回転センサにより検出される扱胴の回転状態と変速装置で操作設定された変速状態との一致・不一致に基づいて扱胴の回転状態が高速状態または低速状態であることをモニタに表示するものである。
【0006】
このため、例えば、オペレータが、変速装置による変速状態の設定を把握しておらず、作業中でのモニタ表示の確認を怠った場合、扱胴の回転速度について、収穫対象の作物に適していない回転速度での作業が継続されてしまうおそれがある。扱胴の回転速度が収穫対象の作物に適していない速度であることは、扱室内における穀稈の詰まりや作物の損傷等を生じさせる原因となり得る。
【0007】
また、従来の技術によれば、例えば扱室内における穀稈の詰まりや扱胴のスリップ等の不具合に起因する扱胴の回転速度の変化が、変速装置で設定された変速状態との比較において扱胴の回転状態の異常として検知されない場合がある。このような場合、扱胴における不具合が即座に認識しにくくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、扱胴の変速設定の誤りを容易にかつ事前に判断することができ、扱胴の回転状態を収穫対象の作物に適した状態に制御することができるとともに、扱胴における不具合を速やかに検知することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンバインは、刈取部により刈り取った穀稈を搬送して脱穀部へと供給するコンバインであって、前記脱穀部の扱室内に扱胴軸により回転可能に支持された状態で設けられた扱胴と、駆動源からの動力の伝達を受けて回転し前記扱胴軸に回転動力を伝達するための扱胴入力軸を有し、前記扱胴の回転速度を複数の変速段に変速設定可能に構成された変速装置と、前記扱胴の回転速度を検出する回転検出装置と、前記回転検出装置の検出信号の入力を受ける制御部と、運転部に設けられ前記制御部により表示内容が制御される表示装置と、収穫対象の作物の種類を設定するための入力操作を受けて設定された作物の種類に関する情報を前記制御部に送る設定装置と、を備え、前記制御部は、あらかじめ作物の種類ごとに設定された前記駆動源の回転数と前記扱胴の回転数との対応関係に基づき、前記回転検出装置により検出された前記扱胴の回転速度が、前記設定装置により設定された作物の種類に対応した前記対応関係に整合するか否かの判定を行い、前記判定の判定結果を前記表示装置に表示するものである。
【0010】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御部は、前記回転検出装置により検出された前記扱胴の回転速度が、前記設定装置により設定された作物の種類に対応した前記対応関係に整合する場合、設定された作物の種類を前記表示装置に表示し、前記回転検出装置により検出された前記扱胴の回転速度が、前記設定装置により設定された作物の種類に対応した前記対応関係に整合しない場合、前記表示装置に警報を表示するものである。
【0011】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御部は、前記回転検出装置により検出された前記扱胴の回転速度が、前記設定装置により設定された作物の種類に対応した前記対応関係に整合する場合、前記表示装置に前記作物の種類を点滅表示するものである。
【0012】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記駆動源から前記扱胴軸に対する動力の伝達の断続を行うための脱穀クラッチを備え、前記制御部は、前記脱穀クラッチが前記扱胴軸に対する動力の伝達が行われる入状態となった時から所定時間経過後に前記判定を行うものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、扱胴の変速設定の誤りを容易にかつ事前に判断することができ、扱胴の回転状態を収穫対象の作物に適した状態に制御することができるとともに、扱胴における不具合を速やかに検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るコンバインにおける動力伝達構成を示す図(伝動機構図)である。
図5】本発明の一実施形態に係る脱穀変速装置の構成を示す図(図4の部分拡大図)である。
図6】本発明の一実施形態に係る脱穀変速装置の配置構成を示す平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る脱穀変速装置の動作についての説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係るコンバインが備える制御構成を示すブロック図である。
図9】本発明の一実施形態に係るモニタの配置構成を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係るモニタにより表示されるメイン画面の一例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係るモニタにより表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係るモニタにより表示される作業情報設定画面の一例を示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係るモニタにより表示される作物切替画面の一例を示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係るモニタにより表示される設定終了画面の一例を示す図である。
図15】本発明の一実施形態に係る作物の種類ごとのエンジン回転数とロータ回転数との関係の一例を示す図である。
図16】本発明の一実施形態に係るモニタにより表示される警報画面の一例を示す図である。
図17】本発明の一実施形態に係るモニタにより表示されるメイン画面における作物名表示部の表示態様の一例を示す図である。
図18】本発明の一実施形態に係る制御部による制御態様の一例を示すフローチャートである。
図19】本発明の一実施形態に係る作物の種類ごとのエンジン回転数とロータ回転数との関係の一例を示す図である。
図20】本発明の一実施形態に係るモニタにより表示されるロータ詰まり警報画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、収穫対象の作物の種類に応じた回転速度に設定可能とされた扱胴の回転速度について、駆動源の回転数との対応関係に基づき、検出される扱胴の回転速度が収穫対象の作物の種類に応じた回転速度となっているか否かを判定し、その判定結果を表示装置に表示するものである。このような構成により、本発明は、扱胴の変速設定の誤りや扱胴における不具合等を速やかに把握することを可能にしようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
[コンバインの全体構成]
まず、図1から図4を用いて、本実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、コンバイン1の前方に向かって左側(図3における下側)および右側(図3における上側)を、それぞれコンバイン1における左側および右側とする。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るコンバイン1は、刈り取った圃場の作物を機体内に掻き込み、脱穀・選別・穀粒貯留し、適宜機外に搬出可能とした収穫機としての普通型コンバインである。コンバイン1は、自走可能な走行機体2と、走行機体2の前端部に設けられた刈取部3を有する。刈取部3は、稲や麦等の未刈り穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置として構成されたものであり、走行機体2に対して昇降可能に取り付けられている。
【0018】
走行機体2は、左右一対のクローラ部5,5を有するクローラ式の走行装置として構成された走行部4を備える。左右のクローラ部5,5間には、機体フレーム6が架設されている。各クローラ部5は、その前端部に設けられた駆動スプロケット5aおよびクローラ部5の後端部に設けられたテンションローラ5bを含む複数の回転体と、これらの回転体に巻回された履帯5cとを有する。クローラ部5を構成する複数の回転体は、走行機体2の下面側に設けられたトラックフレーム5dに設けられている。また、駆動スプロケット5aは、コンバイン1が備える駆動源であるエンジン25の動力の伝達を受けて回転駆動する。
【0019】
機体フレーム6上の左側には、刈取部3により刈り取られて供給された穀稈を脱穀する脱穀部7と、脱穀部7により脱穀された穀粒を選別する選別部8とが設けられている。脱穀部7および選別部8は、脱穀部7を上段、選別部8を下段とした態様で配設されている。
【0020】
機体フレーム6上において、脱穀部7および選別部8の右方には、選別部8で選別された穀粒(清粒)を貯留するグレンタンク10を有する穀粒貯留部9が設けられている。グレンタンク10内には、グレンタンク10の排出口に向けて貯溜穀粒を搬送する下部排出コンベヤ11が設けられている(図4参照)。グレンタンク10の排出口に連通するように、縦搬送コンベヤ12が上下方向に沿って立設されている。縦搬送コンベヤ12の上端部には、穀粒排出コンベヤ13が連設されている。穀粒排出コンベヤ13は、水平方向に旋回可能かつ水平軸回りに上下揺動可能に設けられている。これらのコンベヤにより、グレンタンク10内の穀粒が搬送され、穀粒排出コンベヤ13の先端部に設けられた籾投口14からトラックの荷台やコンテナ等に排出される。
【0021】
また、機体フレーム6上において、穀粒貯留部9の前方の位置、つまり機体フレーム6上における右側前部の位置には、オペレータが搭乗する運転部15が設けられている。運転部15は、キャビン16により覆われている。運転部15には、運転座席17、運転座席17の前方に配置された操縦ハンドル18、主変速レバー21、副変速レバー22、作業クラッチレバー23等が設けられている。作業クラッチレバー23は、脱穀クラッチ57および刈取クラッチ75(図4参照)を入り切り操作するための作業操作具である。主変速レバー21、副変速レバー22、および作業クラッチレバー23は、運転座席17の左側に設けられたレバーコラム24に配設されている。
【0022】
走行機体2上における穀粒貯留部9の後方には、駆動源としてのエンジン25が設けられている。エンジン25は、ディーゼルエンジンであり、排気ガス浄化装置であるディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)26を搭載している。DPF26は、エンジン25から排出される排気ガス中の黒煙を主体とする粒子状物質等を捕集する。エンジン25は、その排気ガスをDPF26中に通過させることで、排気ガスを浄化するようにしている。
【0023】
刈取部3について説明する。刈取部3は、搬送装置としてのフィーダ30と、穀物ヘッダ(プラットホーム)31と、刈刃装置32と、左右一対の分草体33,33と、掻込リール34とを有する。
【0024】
フィーダ30は、刈取部3にて刈り取られた穀稈を搬送して脱穀部7へと供給する搬送装置である。フィーダ30は、ハウジングとしてのフィーダハウス35と、フィーダハウス35内に設けられた穀稈搬送用のコンベヤ36とを有する。フィーダ30は、キャビン16の左方に位置し、平面視で長手方向を前後方向とする略四角筒状に構成されたフィーダハウス35の後端開口部を脱穀部7の前側の扱口7aに連通させた状態で設けられている。
【0025】
穀物ヘッダ31は、横長バケット状に構成され、フィーダハウス35の前端開口部に連通するように、フィーダ30の前側に連設されている。穀物ヘッダ31内には、掻込オーガ(プラットホームオーガ)37が設けられている。掻込オーガ37は、左右方向を回転軸方向として回転可能に軸架されている。
【0026】
刈刃装置32は、穀物ヘッダ31の前下端縁部に設けられており、バリカン状に構成されている。左右一対の分草体33,33は、穀物ヘッダ31の前側の左右側部から前方へ突出するように設けられている。掻込リール34は、タインバー付きのリールであり、掻込オーガ37の前上方の位置に設けられている。掻込リール34は、穀物ヘッダ31に基端部が枢支された左右一対のリール支持アーム34a,34aの先端部間に、左右方向を回転軸方向として回転可能に支持されている。掻込リール34は、回転しながら連続的に穀稈の着莢部に作用し、穀稈の着莢部を掻込オーガ37側へ掻き込む。刈取部3の各部の動作には、各種伝動機構を介して伝達されるエンジン25の動力が用いられる。
【0027】
フィーダハウス35内のコンベヤ36は、その送り終端側を軸支する駆動軸として、脱穀部7の前部に設けられ左右方向を軸方向とする刈取入力軸(フィーダハウスコンベヤ軸)38を有する。フィーダ30の後端部は、刈取入力軸38により、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。また、フィーダハウス35の下面部と機体フレーム6との間には、昇降用シリンダ39が介設されている。昇降用シリンダ39の伸縮動作により、刈取部3が刈取入力軸38を回動支軸として昇降する。刈取部3の昇降動作は、運転部15に設けられた所定の操作部により操作される。
【0028】
脱穀部7および選別部8について説明する。脱穀部7は、扱口7aを前側に開口させた扱室40内に設けられた扱胴41と、扱胴41の下方に配置された受網42とを有する。扱胴41は、扱室40内に前後方向を軸方向とする扱胴軸41aにより回転可能に支持された状態で設けられている。
【0029】
扱胴41は、扱胴軸41aを中心軸に沿わせた円筒状の本体部を有し、本体部の外周面には、螺旋状の羽根が設けられている。扱胴41の上側には、扱室40内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を調節するための複数の送塵弁が角度調節可能に設けられている。受網42は、穀粒を漏下させるものであり、扱胴41の下部の外周面に沿うように設けられている。
【0030】
選別部8は、受網42の下方に配置された揺動部としての揺動選別盤43と、駆動源からの回転動力によって揺動選別盤43を揺動させる揺動軸44aを含む揺動機構44と、一番コンベヤ45と、二番コンベヤ46と、唐箕47とを有する。図4に示すように、唐箕47の前方には、プレファン71が設けられており、唐箕47の後方には、セカンドファン72が設けられている。
【0031】
揺動選別盤43は、フィードパン、フィードパンの後方に配置され穀粒漏下量を調節するチャフシーブ、チャフシーブの下方に配置されたグレンシーブ等の比重選別用の構成を有する。一番コンベヤ45は、一番穀粒を集約するように機体幅方向に延びる一番樋内に配置されている。二番コンベヤ46は、一番コンベヤ45の後方の位置において、二番穀粒を集約するように機体幅方向に延びる二番樋内に配置されている。唐箕47は、揺動選別盤43に対して前下方から後上方へ抜ける選別風を送風する。
【0032】
また、脱穀部7および選別部8の配設部分の機体左側方には、還元コンベヤ48が設けられている。還元コンベヤ48は、下端部を二番コンベヤ46近傍に位置させて二番コンベヤ46に連設されるとともに、上端部を扱胴41の前端部の近傍に位置させ、前上がりの傾斜状に延設されている。また、還元コンベヤ48の上端部には、扱胴41の前方において左右方向に延びる上コンベヤ49(図4参照)が設けられている。
【0033】
以上のような構成を備えたコンバイン1は、圃場において、刈取入力軸38を支軸としたフィーダ30の昇降動作により刈取部3を地上に対して所望の高さ(収穫作物である穀稈の刈取高さ)となるまで上昇させ、非作業状態から作業状態となり、その状態で走行機体2により走行する。これにより、コンバイン1は、収穫作物を左右の分草体33,33により刈取対象と非刈取対象とに分草し、刈取対象の穀稈の穂先側の着莢部を掻込リール34により掻き込みながら刈刃装置32により穀稈の着莢部を刈り取る。
【0034】
所望の刈取位置で刈り取られた穀稈の着莢部は、回転駆動する掻込オーガ37により穀物ヘッダ31内に掻き込まれるとともに、穀物ヘッダ31の左右中央部のフィーダハウス35の入口付近に集められ、フィーダハウス35内のコンベヤ36によりフィーダハウス35内を通って扱口7aに投入され、脱穀部7に供給される。このように、コンバイン1は、刈取部3により刈り取った穀稈を搬送して脱穀部7へと供給するように構成されている。
【0035】
脱穀部7に供給された穀稈の着莢部は、脱穀部7により脱穀処理される。具体的には、脱穀部7に供給された穀稈は、回転する扱胴41により後方に向けて搬送されながら、主に扱胴41と受網42との間で脱穀される。受網42の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は、受網42から漏下する。受網42から漏下しない藁屑等は、扱胴41の搬送作用によって、選別部8の後部に設けられた排塵口から圃場に排出される。
【0036】
一方、脱穀部7で脱穀処理され受網42から漏下した穀粒は、選別部8により選別処理される。具体的には、扱胴41にて脱穀されて受網42から漏下した脱穀物は、揺動選別盤43による比重選別作用と、唐箕47による風選別作用とにより、精粒等の穀粒(一番物)と、枝梗付き穀粒等の穀粒と藁の混合物(二番物)と、藁屑等とに選別されて取出される。
【0037】
選別部8における選別により揺動選別盤43から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ45とこれに連設された揚穀コンベヤ(図示略)とによってグレンタンク10へ搬送される。二番物は、二番コンベヤ46とこれに連設された還元コンベヤ48および上コンベヤ49とによって扱胴41の脱穀始端側に戻され、再度脱穀処理を受ける。藁屑等は、選別部8の後部に設けられた排塵口から圃場に排出される。
【0038】
次に、本実施形態に係るコンバイン1の動力伝達構成について、図4を用いて説明する。コンバイン1は、エンジン25の回転動力により、刈取部3、走行部4、脱穀部7、選別部8、および穀粒貯留部9を駆動させる。
【0039】
エンジン25の出力軸25aの回転動力は、出力軸25aと第1カウンタ軸51との間に設けられた第1ベルト伝動機構52により第1カウンタ軸51に伝達される。一方、エンジン25の回転動力は、オーガクラッチ53を介して、下部排出コンベヤ11、縦搬送コンベヤ12および穀粒排出コンベヤ13に伝達される。なお、エンジン25は、昇降用シリンダ39等を作動させるチャージポンプ54を駆動させる作業機ポンプ軸25bを有する。
【0040】
エンジン25の出力軸25aから第1カウンタ軸51に伝達された回転動力は、脱穀部7への動力伝達系と、走行部4、選別部8および刈取部3への動力伝達系とに分岐する。
【0041】
脱穀部7への動力伝達系に関し、第1カウンタ軸51の回転動力は、第2ベルト伝動機構55により第1ロータ駆動軸56に伝達される。第2ベルト伝動機構55には、第1カウンタ軸51の回転動力を第1ロータ駆動軸56に任意に断続して伝える脱穀クラッチ57が設けられている。
【0042】
第1ロータ駆動軸56の回転動力は、脱穀変速装置58を介してロータ駆動軸である扱胴入力軸59に伝達される。扱胴入力軸59の回転動力は、第3ベルト伝動機構60を介して扱胴軸41aに伝達される。このように、コンバイン1は、エンジン25から扱胴軸41aに対する動力の伝達の断続を行うための脱穀クラッチ57を備えている。
【0043】
このような構成により、エンジン25の駆動力が、脱穀部7へと伝達される。そして、作業クラッチレバー23の操作により、脱穀クラッチ57がON/OFFされ、脱穀部7への動力伝達の断続が行われる。
【0044】
走行部4への動力伝達系に関し、第1カウンタ軸51の回転動力は、第4ベルト伝動機構61により第2カウンタ軸62に伝達される。第2カウンタ軸62の回転動力は、第5ベルト伝動機構63を介してHST入力軸64に伝達され、HST入力軸64により、走行用HSTおよび旋回用HSTを含むトランスミッション65に入力される。ここで、「HST」とは、油圧ポンプを駆動させることで発生させた油圧を油圧モータで再び回転力に変換する方式を採用した油圧式無段変速装置である。トランスミッション65の駆動力により、走行部4を構成するクローラ部5の駆動スプロケット5aが回転駆動させられる。
【0045】
選別部8への動力伝達系に関し、第2カウンタ軸62の回転動力は、第6ベルト伝動機構66により第1PTO駆動軸67に伝達され、第1PTO駆動軸67の回転動力は、ギヤ等を含む伝動機構68を介して第2PTO駆動軸69に伝達される。第2PTO駆動軸69の回転動力は、所定の伝動機構により、プレファン71を回転させるプレファン軸71a、唐箕47を回転させる唐箕軸47a、および一番コンベヤ45を回転させる一番コンベヤ軸45aにそれぞれ伝達される。また、第2PTO駆動軸69の回転動力は、一番コンベヤ軸45aを介して揺動機構44の揺動軸44aに伝達される。また、一番コンベヤ軸45aの回転動力は、所定の伝動機構により、セカンドファン72を回転させるセカンドファン軸72aに伝達される。
【0046】
揺動軸44aの回転動力は、所定の伝動機構により二番コンベヤ46を回転させる二番コンベヤ軸46aに伝達される。二番コンベヤ軸46aの回転動力は、所定の伝動機構により還元コンベヤ48を回転させる縦コンベヤ軸48aに伝達され、縦コンベヤ軸48aの回転動力は、所定の伝動機構により上コンベヤ49を回転させる横コンベヤ軸49aに伝達される。
【0047】
刈取部3への動力伝達系に関し、第2PTO駆動軸69の回転動力は、第7ベルト伝動機構73により刈取入力軸38に伝達される。刈取入力軸38の回転駆動により、フィーダハウス35内のコンベヤ36が作動する。第7ベルト伝動機構73には、第2PTO駆動軸69の回転動力を刈取入力軸38に任意に断続して伝える刈取クラッチ75が設けられている。
【0048】
刈取入力軸38の回転動力は、第1チェン伝動機構76によりPF駆動軸77に伝達される。PF駆動軸77の回転動力は、第2チェン伝動機構78を介して掻込オーガ37を回転させるPFオーガ軸37aに伝達される。また、PF駆動軸77の回転動力は、第8ベルト伝動機構80を介して刈刃装置32を駆動させる刈刃駆動軸32aに伝達される。また、PF駆動軸77の回転動力は、第1リールカウンタ軸81および第2リールカウンタ軸82を含む動力伝達機構により、掻込リール34を回転させるリール軸34bに伝達される。
【0049】
このような構成により、エンジン25の駆動力が、刈取部3へと伝達される。そして、作業クラッチレバー23の操作により、刈取クラッチ75がON/OFFされ、刈取部3への動力伝達の断続が行われる。
【0050】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るコンバイン1は、変速装置としての脱穀変速装置58による扱胴41の回転速度の変速制御に関し、以下のような構成を備えている。
【0051】
まず、脱穀変速装置58について、図5から図7を用いて説明する。脱穀変速装置58は、エンジン25からの動力の伝達を受けて回転し扱胴軸41aに回転動力を伝達するための扱胴入力軸59を有し、扱胴41の回転速度を複数の変速段に変速設定可能に構成された変速装置である。脱穀変速装置58は、低速ギヤ列、中速ギヤ列および高速ギヤ列を有する3段式の構成を備え、扱胴41の回転速度を低速段、中速段および高速段の3つの変速段に変速設定可能に構成されている。
【0052】
図5に示すように、脱穀変速装置58は、機体前後方向を軸方向として配された扱胴入力軸59と、扱胴入力軸59の下方において扱胴入力軸59と平行に設けられたカウンタ軸90とを有する。カウンタ軸90は、機体左右方向を軸方向として設けられた第1ロータ駆動軸56の左側の端部に固設された第1ベベルギヤ91、およびカウンタ軸90の前端部に固設され第1ベベルギヤ91に噛合した第2ベベルギヤ92を介して、第1ロータ駆動軸56の回転動力の伝達を受ける。
【0053】
なお、第1ロータ駆動軸56の右側の端部には、脱穀クラッチ57を配置した第2ベルト伝動機構55(図4参照)を構成するプーリ94が固設されている。また、扱胴入力軸59および扱胴軸41aそれぞれの後端部には、第3ベルト伝動機構60を構成するプーリ85,86が固設されている。
【0054】
図5に示すように、脱穀変速装置58は、カウンタ軸90と扱胴入力軸59との間に、各軸に対して支持され互いに噛合可能に設けられた一対のギヤの組合せとして、低速ギヤ列をなす低速用ギヤ(101,102)、中速ギヤ列をなす中速用ギヤ(103,104)、および高速ギヤ列をなす高速用ギヤ(105,106)を有する。これらのギヤ列は、前側から後側にかけて、低速ギヤ列、中速ギヤ列および高速ギヤ列の順に設けられている。脱穀変速装置58を構成する各種ギヤ等は、脱穀変速装置58のハウジング95(図6参照)内に収容されている。
【0055】
一対の低速用ギヤのうち、カウンタ軸90側の低速用ギヤである第1低速用ギヤ101は、カウンタ軸90に固設されている。扱胴入力軸59側の低速用ギヤである第2低速用ギヤ102は、扱胴入力軸59に対して軸方向について位置決めされた状態で相対回転可能に支持されている。第1低速用ギヤ101および第2低速用ギヤ102は、常時噛合状態にある。
【0056】
一対の中速用ギヤのうち、カウンタ軸90側の中速用ギヤであって第1低速用ギヤ101より大径の第1中速用ギヤ103は、カウンタ軸90に固設されている。一対の高速用ギヤのうち、カウンタ軸90側の高速用ギヤであって第1中速用ギヤ103より大径の第1高速用ギヤ105は、カウンタ軸90に固設されている。
【0057】
一方、扱胴入力軸59側に設けられた中速用ギヤであって第2低速用ギヤ102より小径の第2中速用ギヤ104、および扱胴入力軸59側に設けられた高速用ギヤであって第2中速用ギヤ104より小径の第2高速用ギヤ106は、扱胴入力軸59に対して設けられた一体のスライダギヤ107を構成している。スライダギヤ107の前部に、第2中速用ギヤ104が設けられており、スライダギヤ107の後部に、第2高速用ギヤ106が設けられている。スライダギヤ107は、スプライン嵌合等により、扱胴入力軸59に対して軸方向にスライド移動可能かつ相対回転不能に支持されている。
【0058】
スライダギヤ107は、扱胴入力軸59の軸上を移動して第2低速用ギヤ102に係合することで、第2低速用ギヤ102の回転を扱胴入力軸59に伝達する。スライダギヤ107は、前側に、第2低速用ギヤ102に係合するための外周ギヤ部107aを有する。一方、第2低速用ギヤ102は、後側に、外周ギヤ部107aに噛合する内周ギヤ部102aを有する。外周ギヤ部107aは、スライダギヤ107の前方へのスライド移動により、内周ギヤ部102aに嵌合した態様で噛合する。
【0059】
図6に示すように、脱穀変速装置58は、操作具である脱穀変速レバー110の操作により、スライダギヤ107を扱胴入力軸59の軸方向に移動させ、変速動作を行うように構成されている。脱穀変速レバー110は、略前後方向に延伸した略直線棒状の部材であり、一側の端部である前端部を、回動操作アーム111の先端部に回動可能に連結させている。回動操作アーム111の基端部は、脱穀変速装置58のハウジング95から上方に突出した操作軸112に連結されている。回動操作アーム111は、操作軸112を回動軸として操作軸112と一体的に回動する。
【0060】
操作軸112は、上下方向を軸方向として回動可能に設けられている。操作軸112は、ハウジング95内において、アーム等の連結操作部材を介してシフトフォーク(図示略)に連動連結されている。シフトフォークは、スライダギヤ107に係合した状態で前後方向に移動可能に設けられており、スライダギヤ107と一体的に前後方向に移動する。操作軸112の回動動作が、連結操作部材およびシフトフォークを介して、スライダギヤ107の扱胴入力軸59上のスライド移動として伝達される。
【0061】
図6に示すように、脱穀変速装置58は、扱胴41を収容した扱室40をなす右側の側壁部40aの後部の右方に配置されている。脱穀変速装置58のハウジング95内には、扱胴入力軸59の前部およびカウンタ軸90が上下に平行状に配置され、軸受を介して回動可能に支持されている。ハウジング95の前側には、第1ベベルギヤ91および第2ベベルギヤ92並びにこれらを支持する軸部を収容したベベルケース96が設けられている。ベベルケース96から右方に向けて第1ロータ駆動軸56の右端部が突出しており、この第1ロータ駆動軸56の突出部分にプーリ94が固設されている。また、ハウジング95の後側には、ハウジング95内から後方に延出した扱胴入力軸59を内装した円筒状の軸ケース97が設けられている。軸ケース97から後方に向けて扱胴入力軸59の後端部が突出しており、この扱胴入力軸59の突出部分にプーリ85が固設されている。
【0062】
回動操作アーム111は、脱穀変速レバー110の連結を受ける先端部を、操作軸112から左側に位置させるように延出している。回動操作アーム111の先端部に対して、脱穀変速レバー110の前端部が、軸支部113により上下方向を軸方向として回動可能に連結されている。脱穀変速レバー110は、前端部を左側に向けて直角状に屈曲させた屈曲部110aとしている。脱穀変速レバー110は、左右方向について、前端部分を操作軸112と軸支部113との間に位置させ、屈曲部110aの先端部を、軸支部113により回動操作アーム111の先端部に軸支させている。
【0063】
脱穀変速レバー110は、略前後方向に沿うように機体後方に向けて延設されており、他側の端部である後端部を、前後方向について扱室40の後側に位置する第3ベルト伝動機構60よりも後方に位置させている。脱穀変速レバー110は、後端部を例えば上側に向けて直角状に屈曲させ、把持部110bとしている。
【0064】
脱穀変速装置58に対する変速操作としては、脱穀変速レバー110に対し、把持部110bを把持した状態で前後に押し引きする操作が行われる(図6、矢印A1参照)。脱穀変速レバー110が前後に押し引き操作されることで、操作軸112よりも左側に位置する回動操作アーム111が先端部を前後に移動させるように操作軸112と一体的に回動する(図6、矢印A2参照)。これにより、脱穀変速装置58においてスライダギヤ107がスライド移動し、脱穀変速装置58の変速動作が行われる。
【0065】
本実施形態に係る脱穀変速レバー110の配設態様によれば、脱穀変速レバー110に対する操作は、走行機体2の後側から行われることになる。なお、脱穀変速レバー110の配設態様は限定されるものではなく、脱穀変速レバー110の配置により、脱穀変速装置58の変速操作が可能となる位置を適宜変更することができる。
【0066】
図6に示すように、脱穀変速装置58による3つの変速段のうち、回動操作アーム111の回動位置について、回動操作アーム111が先端部を最も前側に位置させる回動位置である第1回動位置P1が、低速段の変速状態(以下「低速状態」とする。)に対応している。第1回動位置P1は、回動操作アーム111の延伸方向が左右方向(図6における上下方向)に対してなす前側への角度を略50°とする位置である。
【0067】
また、3つの変速段のうち、回動操作アーム111の回動位置について、回動操作アーム111が先端部を操作軸112よりも前側であって第1回動位置P1よりも後側に位置させる回動位置である第2回動位置P2が、中速段の変速状態(以下「中速状態」とする。)に対応している。第2回動位置P2は、回動操作アーム111の延伸方向が左右方向に対してなす前側への角度を略20°とする位置である。なお、図6において、回動操作アーム111が第2回動位置P2に位置する状態を一点鎖線で示している。
【0068】
また、3つの変速段のうち、回動操作アーム111の回動位置について、回動操作アーム111が先端部を操作軸112よりも後側に位置させる回動位置である第3回動位置P3が、高速段の変速状態(以下「高速状態」とする。)に対応している。第3回動位置P3は、回動操作アーム111の延伸方向が左右方向に対してなす後側への角度を略20°とする位置である。なお、図6において、回動操作アーム111が第3回動位置P3に位置する状態を二点鎖線で示している。
【0069】
脱穀変速装置58の各変速状態での動力伝達経路は、次のとおりである。図7Aに示すように、低速状態の脱穀変速装置58においては、スライダギヤ107が、扱胴入力軸59上を前方に移動し、外周ギヤ部107aを内周ギヤ部102aに噛合させることで、第2低速用ギヤ102に係合する。これにより、カウンタ軸90の回転動力が、第1低速用ギヤ101、第2低速用ギヤ102、およびスライダギヤ107を介して扱胴入力軸59に伝達される(矢印B1参照)。ここで、スライダギヤ107は、第2低速用ギヤ102を扱胴入力軸59に対して軸回転方向について固定させ、第2低速用ギヤ102の回転を扱胴入力軸59に伝達させるように機能する。
【0070】
図7Bに示すように、中速状態の脱穀変速装置58においては、スライダギヤ107が、第2低速用ギヤ102に対する係合を解除した状態で、扱胴入力軸59上において前後中間部に位置し、第2中速用ギヤ104を第1中速用ギヤ103に噛合させる。これにより、カウンタ軸90の回転動力が、第1中速用ギヤ103および第2中速用ギヤ104を介して扱胴入力軸59に伝達される(矢印B2参照)。
【0071】
図7Cに示すように、高速状態の脱穀変速装置58においては、スライダギヤ107が、扱胴入力軸59上において中速状態よりも後側に位置し、第2高速用ギヤ106を第1高速用ギヤ105に噛合させる。これにより、カウンタ軸90の回転動力が、第1高速用ギヤ105および第2高速用ギヤ106を介して扱胴入力軸59に伝達される(矢印B3参照)。
【0072】
脱穀変速装置58による扱胴41の各変速状態と、コンバイン1による収穫対象の作物の種類との対応関係の一例は、次のとおりである。すなわち、低速状態は、収穫対象の作物が比較的大きな穀物である大豆の場合に用いられ、中速状態は、収穫対象の作物が比較的小さな穀物であるコーンの場合に用いられ、高速状態は、収穫対象の作物がさらに小さな穀物である稲・麦の場合に用いられる。ただし、脱穀変速装置58による変速状態と作物の種類との対応関係は特に限定されるものではない。
【0073】
続いて、コンバイン1が備える制御構成について、図8を用いて説明する。図8に示すように、コンバイン1は、制御部120を備える。制御部120は、コンバイン1が備える各種センサ等からの入力信号に基づき、コンバイン1が備える各部を制御する。
【0074】
制御部120は、各種演算処理や制御を実行する演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置により構成された記憶部121、データ入出力用の入出力インターフェイス等の入出力装置(入出力回路)、クロック回路等の周辺回路等をバス等により接続した構成を備えた制御装置により構成されている。制御部120のCPUは、記憶部121に記憶された各種のプログラムに従って演算処理を行う。また、制御部120は、時間を計測するためのタイマ122を有する。
【0075】
図8に示すように、コンバイン1は、制御部120の入力装置(入力回路)に電気的に接続された構成として、エンジン25の回転数を検出するエンジン回転センサ124と、扱胴41の回転速度を検出する回転検出装置としての扱胴回転センサ125と、脱穀クラッチ57の入切の状態を検出する脱穀クラッチセンサ126とを有する。制御部120は、これらのセンサ等からの信号の入力を受け、これらの信号に基づいて制御信号を生成する。
【0076】
制御部120は、エンジン回転センサ124の検出信号の入力を受け、エンジン25の回転数であるエンジン回転数を検知する。制御部120は、扱胴回転センサ125からの検出信号の入力を受け、扱胴41の回転数である扱胴回転数を検知する。
【0077】
コンバイン1は、制御部120の出力装置(出力回路)に電気的に接続された構成として、表示装置および設定装置として機能するモニタ128と、報知音を発生するブザー129とを有する。制御部120は、その生成した制御信号に基づき、モニタ128およびブザー129を制御する。制御部120は、機能部として、モニタ128を制御するモニタ制御部と、ブザー129を制御するブザー制御部とを有する。
【0078】
また、モニタ128は、オペレータにより操作される表示操作部として機能する。このため、モニタ128は、制御部120の入力装置(入力回路)に電気的に接続されおり、制御部120は、モニタ128からの信号の入力を受け、その信号に基づいて制御信号を生成する。
【0079】
モニタ128は、キャビン16内の運転部15に設けられている。図3および図9に示すように、モニタ128は、運転部15において、運転座席17の前方に配置された操縦ハンドル18の配設部分に設けられている。具体的には、図9に示すように、操縦ハンドル18は、環状のハンドル本体部18Aを有し、ハンドル本体部18Aの内側の中央部に、モニタ128が設けられている。なお、モニタ128は、ハンドル本体部18Aの回動操作等の操縦ハンドル18の操作にかかわらず表示向きを一定とするように固定位置に設けられている。
【0080】
モニタ128は、タッチパネル機能を有する液晶モニタであり、制御部120により表示内容が制御される。モニタ128は、コンバイン1の各種状況をオペレータ等に対して表示する表示部である。図9に示すように、モニタ128は、矩形状の表示画面である液晶パネル131と、操作ボタンとしての複数のコマンドボタン132とを有する。
【0081】
液晶パネル131は、モニタ128の正面中央に配置されており、モニタ128の正面の大部分を表示領域とするように設けられている。液晶パネル131は、制御部120からの指示等に基づいて各種画面を表示する。液晶パネル131は、画面に触れることで操作可能なタッチパネル式の操作画面である。なお、液晶パネル131は、タッチパネルでなくてもよい。
【0082】
複数のコマンドボタン132は、モニタ128の正面において、モニタ128の周囲の領域に配置されている。図9に示す例では、5つのコマンドボタン132が、液晶パネル131の下側に横並びに所定の間隔で一列に配置されている。これらのコマンドボタン132は、液晶パネル131の表示内容についての操作に用いられる。
【0083】
ブザー129は、電子音を発生する音発生部である。ブザー129は、電子音を発する部分として、スピーカ等の出力部を備える。ブザー129の動作、つまり電子音の発生動作は、制御部120により制御される。
【0084】
図10に、モニタ128の液晶パネル131における表示画面の一つであるメイン画面140の一例を示す。メイン画面140は、コンバイン1の各種状況を表示する各種表示部を有する。
【0085】
図10に示すように、メイン画面140の中央部には、コンバイン1の走行速度を表示する表示部である速度メータ141が配置されている。速度メータ141の周囲を囲むように、エンジン25の回転数を表示する表示部であるタコメータ142が略円形状の表示部として配置されている。
【0086】
タコメータ142の左方には、燃料の残量を表示する表示部である燃料計143、および尿素の残量を表示する表示部である尿素水計144が配置されている。なお、尿素水計144により表示される尿素の残量は、コンバイン1が備える排気ガス浄化装置(図示略)がDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)ケースとともに有する選択触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)のシステムに対して供給される尿素水を貯溜する尿素水タンクにおける尿素水の残量である。タコメータ142の右方には、グレンタンク10の穀粒の貯留量を表示する表示部であるグレンタンクモニタ145が配置されている。グレンタンクモニタ145の下方には、作物の収穫量(kg)、作業時間(h)、現在の日時を表示する各種表示部が配置されている。
【0087】
タコメータ142の左下方であってメイン画面140の左下部には、現在設定されている作物の種類(作物名)を表示する表示部である作物名表示部147が配置されている。作物名表示部147には、オペレータにより選択された作物の種類が表示される。図10に示す例では、作物名表示部147には「大豆」の文字が表示されている。なお、作物の種類の設定については後述する。
【0088】
液晶パネル131の表示画面の下縁部には、各コマンドボタン132に対応した操作用の表示部として、左側から順に第1操作表示部151、第2操作表示部152、第3操作表示部153、第4操作表示部154および第5操作表示部155が配置されている。これらの操作表示部は、5つのコマンドボタン132の配置に対応して5つに区切られた領域部分として表示されている。
【0089】
各操作表示部151~155には、液晶パネル131の表示画面の種類に応じて、表示操作用の文字や記号等が適宜表示される。図10に示す例では、第1操作表示部151には「メニュー」の文字が表示されており、第1操作表示部151に対応したコマンドボタン132または第1操作表示部151を押圧操作することにより、液晶パネル131の画面表示がメニュー画面160(図11参照)へと遷移する。以下では、各操作表示部151~155に対応したコマンドボタン132の押圧操作または各操作表示部151~155自体の押圧操作をまとめてその操作表示部の操作とする。
【0090】
モニタ128による作物の種類の設定について、図11から図14を用いて説明する。作物の種類は、オペレータによるモニタ128の操作によって設定される。すなわち、作物の種類の設定に関し、モニタ128は、収穫対象の作物の種類を設定するための入力操作を受けて設定された作物の種類に関する情報を制御部120に送る設定装置として機能する。
【0091】
図11は、モニタ128の液晶パネル131における表示画面の一つであるメニュー画面160の一例を示している。液晶パネル131の表示画面の上縁部には、その画面の表示内容を表示した表示部として、画面内容表示部157が配置されている。メニュー画面160においては、画面内容表示部157に「メニュー」の文字が表示されている。
【0092】
図11に示すように、メニュー画面160は、コンバイン1の制御等に関する各種設定項目を表示した表示部である複数の設定項目表示部(161,162,163)を有する。図11に示す例では、設定項目表示部として、上から順に、「コンバイン設定」の文字を表示した第1設定項目表示部161、「基本設定」の文字を表示した第2設定項目表示部162、および「作業情報設定」の文字を表示した第3設定項目表示部163が配置されている。これらの設定項目表示部は、それぞれ液晶パネル131の画面の左右方向の略全体にわたる範囲の帯状の表示部として設けられている。
【0093】
メニュー画面160において、第1操作表示部151には「戻る」の文字が表示されている。第1操作表示部151の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示がメイン画面140(図10参照)へと遷移する。
【0094】
メニュー画面160において、複数の設定項目表示部(161,162,163)のうちいずれか1つの設定項目表示部が選択される。図11に示す例では、第3設定項目表示部163が選択された状態が示されている。液晶パネル131は、非選択状態の設定項目表示部に対し、設定項目表示部の選択状態を、明るい表示部分としたり着色部分としたり枠で囲んだりすることで区別して認識させるように表示する。図11に示す例では、非選択状態の設定項目表示部が無色であるのに対し、設定項目表示部の選択状態が着色部分として表示されている。
【0095】
メニュー画面160において、設定項目表示部の選択は、「↑」の記号を表示した第3操作表示部153、および「↓」の記号を表示した第4操作表示部154の操作により行われる。第3操作表示部153の操作によって選択状態の表示が上に移動し、第4操作表示部154の操作によって選択状態の表示が下に移動する。
【0096】
作物の種類の設定操作では、メニュー画面160において「作物情報設定」の第3設定項目表示部163が選択される。設定項目表示部の選択の決定は、「決定」の文字を表示した第5操作表示部155の操作により行われる。メニュー画面160において第5操作表示部155の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示が作業情報設定画面170(図12参照)へと遷移する。
【0097】
図12は、モニタ128の液晶パネル131における表示画面の一つである作業情報設定画面170の一例を示している。作業情報設定画面170においては、画面内容表示部157に「作業情報設定」の文字が表示されている。
【0098】
図12に示すように、作業情報設定画面170は、コンバイン1の制御等に関する各種作業情報の設定項目を表示した表示部である複数の作業情報設定項目表示部(171,172,173)を有する。図12に示す例では、作業情報設定項目表示部として、上から順に、「作物切替」の文字を表示した第1作業情報設定項目表示部171、「センサ設定」の文字を表示した第2作業情報設定項目表示部172、および「収穫量センサゼロ点校正」の文字を表示した第3作業情報設定項目表示部173が配置されている。これらの作業情報設定項目表示部は、メニュー画面160における複数の設定項目表示部と同様の態様で表示されている。
【0099】
作業情報設定画面170において、第1操作表示部151には「戻る」の文字が表示されている。第1操作表示部151の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示がメニュー画面160(図11参照)へと遷移する。
【0100】
作業情報設定画面170において、複数の作業情報設定項目表示部(171,172,173)のうちいずれか1つの作業情報設定項目表示部が選択される。作業情報設定項目表示部の選択状態は、メニュー画面160と同様の態様で表示されている。また、作業情報設定項目表示部の選択についても、メニュー画面160の場合と同様に、第3操作表示部153および第4操作表示部154の操作により行われる。
【0101】
作物の種類の設定操作では、作業情報設定画面170において「作物切替」の第1作業情報設定項目表示部171が選択される。作業情報設定項目表示部の選択の決定は、メニュー画面160と同様に第5操作表示部155の操作により行われる。作業情報設定画面170において第5操作表示部155の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示が作物切替画面180(図13参照)へと遷移する。
【0102】
図13は、モニタ128の液晶パネル131における表示画面の一つである作物切替画面180の一例を示している。作物切替画面180においては、画面内容表示部157に「作物切替」の文字が表示されている。
【0103】
図13に示すように、作物切替画面180は、コンバイン1の収穫対象となる各種作物の設定項目を表示した表示部である複数の設定作物表示部(181~185)を有する。図13に示す例では、設定作物表示部として、上から順に、「稲」の文字を表示した第1設定作物表示部181、「小麦」の文字を表示した第2設定作物表示部182、「コーン」の文字を表示した第3設定作物表示部183、「大豆」の文字を表示した第4設定作物表示部184、および「その他」の文字を表示した第5設定作物表示部185が配置されている。これらの設定作物表示部は、メニュー画面160における複数の設定項目表示部と同様の態様で表示されている。
【0104】
作物切替画面180において、第1操作表示部151には「戻る」の文字が表示されている。第1操作表示部151の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示が作業情報設定画面170(図12参照)へと遷移する。
【0105】
作物切替画面180において、複数の設定作物表示部(181~185)のうちいずれか1つの設定作物表示部が選択される。設定作物表示部の選択状態は、メニュー画面160と同様の態様で表示されている。また、設定作物表示部の選択についても、メニュー画面160の場合と同様に、第3操作表示部153および第4操作表示部154の操作により行われる。
【0106】
作物切替画面180において、収穫対象となる作物の種類が選択される。設定作物表示部の選択の決定は、メニュー画面160と同様に第5操作表示部155の操作により行われる。作物切替画面180において第5操作表示部155の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示が、作物の種類の設定が完了したことを示す設定終了画面190(図14参照)へと遷移する。ここでは、第4設定作物表示部184により「大豆」が選択された場合について説明する。
【0107】
なお、作物切替画面180において選択対象となる作物の種類や数は限定されるものではない。図13に示す例では、「稲」、「小麦」、「コーン」および「大豆」の4種類の作物が表示されているが、例えば、「稲」、「小麦」、「大豆」の3種類であってもよい。また、作物切替画面180において「その他」の第5設定作物表示部185を選択した場合、「その他」に含まれる複数種類の作物の選択を可能とする第2の作物切替画面を表示するように構成してもよい。
【0108】
図14は、モニタ128の液晶パネル131における表示画面の一つである設定終了画面190の一例を示している。設定終了画面190においては、画面内容表示部157に「正常終了」の文字が表示されている。
【0109】
図14に示すように、設定終了画面190は、作物の種類の設定に関するメッセージを表示するメッセージ表示部191を有する。図14に示す例では、メッセージ表示部191には、作物の種類が「大豆」に切り替えられたこと、つまり作物の種類として「大豆」が設定されたことを報知する表示として、「作物を大豆に切り替えました。」の文字が表示されている。
【0110】
設定終了画面190において、第1操作表示部151には「戻る」の文字が表示されている。第1操作表示部151の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示が作物切替画面180(図13参照)へと遷移し、再度作物の種類の選択を行うことが可能となる。また、設定終了画面190において、第2操作表示部152には「メータへ」の文字が表示されている。第2操作表示部152の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示がメイン画面140(図10参照)へと遷移する。
【0111】
以上のようにして、モニタ128による作物の種類の設定が行われる。設定された作物の種類についての情報は、制御部120に送られ、記憶部121に記憶されるとともに、メイン画面140の作物名表示部147に表示される(図10参照)。図10に示す例では、「大豆」の選択状態が示されている。例えば、モニタ128による作物の種類の設定により「小麦」が設定された場合、つまり作物切替画面180において第2設定作物表示部182が選択された場合、作物名表示部147に「小麦」の文字が表示されることになる。
【0112】
制御部120は、モニタ128により設定された作物の種類についての情報を用い、扱胴41の回転に関する制御(以下「扱胴回転制御」という。)を行う。制御部120は、扱胴回転制御において、あらかじめ作物の種類ごとに設定されたエンジン25の回転数(以下「エンジン回転数」という。)と扱胴41の回転数(以下「ロータ回転数」という。)との対応関係を用いる。
【0113】
図15に、稲・麦、コーン、大豆の各作物の種類について設定されたエンジン回転数とロータ回転数との対応関係(以下「回転数対応関係」という。)の一例を示す。図15に示すグラフにおいて、横軸がエンジン回転数(rpm)であり、縦軸がロータ回転数(rpm)である。図15において、実線で表した第1グラフG1が、稲・麦について設定された回転数対応関係であり、破線で示した第2グラフG2が、コーンについて設定された回転数対応関係であり、一点鎖線で示した第3グラフG3が、大豆について設定された回転数対応関係である。
【0114】
制御部120は、回転数対応関係に基づき、扱胴回転センサ125(図8参照)により検出された扱胴41の回転速度であるロータ回転数が、モニタ128により設定された作物の種類(以下「モニタ設定作物」という。)に対応した回転数対応関係に整合するか否かの判定(以下「回転数整合判定」という。)を行い、回転数整合判定の判定結果をモニタ128に表示する制御を行う。つまり、本実施形態において、制御部120は、回転数整合判定を行いその判定結果をモニタ128に表示する判定手段として機能する。
【0115】
回転数整合判定の制御で用いられる回転数対応関係は、3つのグラフ(G1,G2,G3)のうち、エンジン回転数が比較的安定する第1回転数E1から第2回転数E2までの範囲である第1回転数範囲D1の範囲の部分である。第1回転数範囲D1において、3つのグラフ(G1,G2,G3)は、いずれも比例関係を示しており、稲・麦の第1グラフG1、コーンの第2グラフG2、および大豆の第3グラフG3の順に、ロータ回転数の値および傾きの値は小さくなっている。
【0116】
図12に示す回転数対応関係についての具体的な数値例は次のとおりである。第1回転数E1は1300(rpm)であり、第2回転数E2は2500(rpm)である。また、第1回転数E1に対応したロータ回転数の値は、稲・麦の第1グラフG1で369(rpm)、コーンの第2グラフG2で273(rpm)、大豆の第3グラフG3で162(rpm)である。また、第2回転数E2に対応したロータ回転数の値は、稲・麦の第1グラフG1で710(rpm)、コーンの第2グラフG2で525(rpm)、大豆の第3グラフG3で311(rpm)である。
【0117】
図12に示すような回転数対応関係が、制御部120の記憶部121においてあらかじめ設定され記憶される。なお、第1回転数範囲D1の下限値および上限値の値や、下限値および上限値に対応する作物の種類ごとのロータ回転数の値は限定されるものではない。
【0118】
回転数整合判定に関し、モニタ設定作物が「大豆」である場合について説明する。この場合、図15に示すように、本来であれば、エンジン回転数が2000(rpm)の時には、第3グラフG3に基づき、ロータ回転数は回転数F1(rpm)となる(点P1参照)。しかし、エンジン回転数が2000(rpm)の時において、扱胴回転センサ125により検出されるロータ回転数が第1グラフG1上の回転数F2(rpm)であった場合、回転数整合判定の判定結果は「不整合」となる。一方、エンジン回転数が2000(rpm)の時において、扱胴回転センサ125により検出されるロータ回転数が第3グラフG3上の回転数F1(rpm)であった場合、回転数整合判定の判定結果は「整合」となる。なお、回転数F1は約250(rpm)であり、回転数F2は約575(rpm)である。
【0119】
回転数整合判定の判定結果が「不整合」となることは、モニタ設定作物が、脱穀変速レバー110(図6参照)の操作による扱胴41の変速状態に対応する作物の種類と異なることに起因する。上述の例は、モニタ設定作物が「大豆」であるのに対し、脱穀変速装置58による扱胴41の変速状態が稲・麦に用いられる高速状態に設定されている場合の例である。
【0120】
回転数整合判定の判定結果のモニタ128への表示に関し、制御部120は、扱胴回転センサ125により検出されたロータ回転数が、モニタ設定作物に対応した回転数対応関係に整合しない場合、つまり回転数整合判定の判定結果が「不整合」の場合、モニタ128に警報を表示する。
【0121】
具体的には、制御部120は、回転数整合判定の判定結果が「不整合」の場合、モニタ128の液晶パネル131に、例えば図16に示すような警報画面200を表示する。図16は、液晶パネル131における表示画面の一つである警報画面200の一例を示している。警報画面200においては、画面内容表示部157に「警報」の文字が表示されている。
【0122】
図16に示すように、警報画面200は、回転数整合判定の判定結果としての警報のメッセージを表示する警報メッセージ表示部201を有する。図16に示す例では、警報メッセージ表示部201には、回転数整合判定の判定結果が「不整合」であることを報知する表示として、「現在設定されている作物が扱胴の変速状態と一致しません。」の文字が表示されている。なお、警報メッセージ表示部201の表示内容は特に限定されない。設定終了画面190において、「戻る」の文字を表示した第1操作表示部151の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示がメイン画面140(図10参照)へと遷移する。
【0123】
また、制御部120は、回転数整合判定の判定結果が「不整合」の場合、ブザー129により報知音を発生させるように、ブザー129に対して制御信号を送る。つまり、制御部120は、回転数整合判定の判定結果が「不整合」の場合、液晶パネル131に警報画面200を表示するとともに、ブザー129による警報音を発生させる。これにより、オペレータに注意を喚起する。「不整合」の判定結果を認識したオペレータは、例えば脱穀変速レバー110の操作による脱穀変速装置58の変速状態を、モニタ設定作物に対応した変速状態に設定し直すことを行う。
【0124】
一方、回転数整合判定の判定結果が「整合」の場合に関し、制御部120により液晶パネル131にその旨を表示するように構成してもよい。判定結果が「整合」の場合の液晶パネル131の表示としては、例えば、図10に示すように、メイン画面140における所定の場所に「整合」の文字の表示が行われる。図10に示す例では、作物名表示部147の上方の近傍に、「整合」の文字を表示する整合結果表示部148が配置されている。
【0125】
また、判定結果が「整合」の場合の液晶パネル131の表示として、制御部120は、図10に示すように、設定された作物の種類(作物名)をモニタ128に表示する。図10に示す例では、作物名表示部147に、モニタ設定作物の種類である「大豆」の文字が表示されている。すなわち、回転数整合判定の判定結果が「整合」の場合、モニタ設定作物を表示する作物名表示部147における作物名の表示が保持されることになる。
【0126】
また、回転数整合判定の判定結果が「整合」の場合、モニタ128に作物名を点滅表示してもよい。すなわち、判定結果が「整合」の場合の液晶パネル131の表示制御として、図17Aおよび図17Bに示すように、作物名表示部147における作物名の表示を点滅させるようにしてもよい。図17Aは、作物名表示部147として、「大豆」の文字を消滅させた状態の作物名表示部147Aを示しており、図17Bは、作物名表示部147として、「大豆」の文字を点灯させた状態の作物名表示部147Bを示している。作物名表示部147における作物名の点滅表示の態様は特に限定されるものではない。例えば、作物名表示部147における背景部分を点滅させることで、「大豆」の文字を点滅表示させてもよい。
【0127】
なお、回転数整合判定の判定結果が「整合」の場合は、扱胴41の回転が正常な状態に対応することから、液晶パネル131の表示内容の制御として、液晶パネル131に回転数整合判定の判定結果についての表示を行わない制御を行ってもよい。つまり、回転数整合判定については、判定結果が「不整合」の場合のみ、その旨を液晶パネル131に表示する制御を行ってもよい。
【0128】
また、回転数整合判定の制御に関し、制御部120は、脱穀クラッチ57が扱胴軸41aに対する動力の伝達が行われる入状態となった時から所定時間経過後に回転数整合判定を行う。
【0129】
制御部120は、脱穀クラッチ57が入状態であることを、脱穀クラッチセンサ126の検出信号に基づいて検知する。制御部120は、脱穀クラッチセンサ126の検出信号の入力を受け、脱穀クラッチ57が入状態であることを検知した時からの経過時間を、タイマ122により計測する。タイマ122により計測される経過時間が所定時間(例えば数秒から数十秒)となったことを条件として、回転数整合判定の制御を行う。この所定時間は、制御部120の記憶部121においてあらかじめ設定され記憶される。
【0130】
制御部120による制御態様の一例について、図18に示すフローチャートを用いて説明する。図18は、制御部120による回転数整合判定の制御態様の一例を示すフローチャートである。以下に説明する制御は、制御部120のCPUが記憶部121のRAM等に記憶された所定の制御プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0131】
回転数整合判定の制御に際しては、脱穀変速レバー110の操作による扱胴41の変速状態の設定と、モニタ128による作物の種類の設定とが事前に行われる。
【0132】
図18に示すように、まず、脱穀クラッチセンサ126により検出される脱穀クラッチ57の入り切り状態について、脱穀クラッチ57が入状態となった時から所定時間Δt経過したか否かの判断が行われる(S10)。このステップS10は、扱胴41の回転が安定するまでの時間を確保するためのものである。
【0133】
ステップS10において、脱穀クラッチ57の入りのタイミングから所定時間Δtが経過したと判断された場合(S10、Yes)、扱胴41の回転が安定したものとして、エンジン回転センサ124により検出されるエンジン回転数が第1回転数範囲D1(図15参照)の範囲内の値であるか否かの判断が行われる(S20)。回転数整合判定の制御で用いられる回転数対応関係のエンジン回転数の範囲が第1回転数範囲D1であることから、回転数整合判定の制御に際し、エンジン回転数が第1回転数範囲D1の範囲内の値であることが条件となる。一方、ステップS10において、脱穀クラッチ57の入りのタイミングから所定時間Δtが経過しない限り(S10、No)、扱胴41の回転が安定していないものとして、ステップS20の判断は行われない。
【0134】
ステップS20において、エンジン回転数が第1回転数範囲D1の範囲内の値であると判断された場合(S20、Yes)、エンジン25の回転が安定しているものとして、扱胴回転センサ125により検出されるロータ回転数がモニタ設定作物に対応した回転数対応関係に整合するか否かの判定が行われる(S30)。このステップでは、例えばモニタ設定作物が「稲・麦」である場合、扱胴回転センサ125により検出されるロータ回転数が、「稲・麦」についての回転数対応関係である第1グラフG1(図15参照)のグラフ上の値となっているか否かが判定される。一方、ステップS20において、エンジン回転数が第1回転数範囲D1の範囲内の値でない限り(S20、No)、エンジン25の回転が安定していないものとして、ステップS30の判定は行われない。
【0135】
ステップS30において、ロータ回転数がモニタ設定作物に対応した回転数対応関係に整合していると判定された場合(S30、Yes)、その判定結果のモニタ表示が行われる(S40)。この場合、回転数整合判定の判定結果が「整合」となり、モニタ表示として、例えば図10に示すように、液晶パネル131に表示されているメイン画面140の整合結果表示部148に「整合」の文字が表示される。また、この場合、作物名表示部147におけるモニタ設定作物の名称の表示が保持され、作物名表示部147における作物名の表示については、点滅表示が行われてもよい(図17A図17B参照)。
【0136】
一方、ステップS30において、ロータ回転数がモニタ設定作物に対応した回転数対応関係に整合していると判定されなかった場合(S30、No)、警報表示および警報音発生が行われる(S50)。この場合、回転数整合判定の判定結果が「不整合」となり、モニタ128の液晶パネル131に例えば図16に示すような警報画面200が表示されるとともに、ブザー129による警報音が発せられる。
【0137】
ステップS30において回転数整合判定の判定結果が「不整合」となる場合、ロータ回転数は、脱穀変速レバー110の操作による扱胴41の変速状態の設定に応じて、モニタ設定作物に対応したグラフ以外の2つのグラフのいずれかのグラフ上の値となる。つまり、上述のとおりモニタ設定作物が「稲・麦」である場合の例では、扱胴41の変速状態に応じて、扱胴回転センサ125により検出されるロータ回転数が、「コーン」に対応した第2グラフG2または「大豆」に対応した第3グラフG3のいずれかのグラフ上の値となる。
【0138】
また、制御部120は、回転数対応関係を用いた扱胴回転制御として、上述した回転数整合判定の制御に加えて、ロータ回転詰まり制御を行う。
【0139】
制御部120は、ロータ回転詰まり制御として、回転数対応関係に基づき、扱胴回転センサ125(図8参照)により検出された扱胴41の回転速度であるロータ回転数が、あらかじめ作物の種類ごとに設定された閾値以下となった場合に、モニタ128に警報を表示する制御を行う。
【0140】
ロータ回転詰まり制御で用いられる回転数対応関係は、図19に示すように、3つのグラフ(G1,G2,G3)のうち、第1回転数範囲D1よりもエンジン回転数の値が小さい範囲である第2回転数範囲D2の範囲の部分である。第2回転数範囲D2は、第3回転数E3から第1回転数E1までの範囲である。第2回転数範囲D2において、3つのグラフ(G1,G2,G3)は、いずれも比例関係を示しており、稲・麦の第1グラフG1、コーンの第2グラフG2、および大豆の第3グラフG3の順に、ロータ回転数の値および傾きの値は小さくなっている。
【0141】
第2回転数範囲D2における3つのグラフ(G1,G2,G3)の傾きは、いずれも第1回転数範囲D1における傾きより大きい。したがって、3つのグラフ(G1,G2,G3)は、いずれも第1回転数E1の位置で屈曲した態様のグラフとなっている。図19に示す例において、第3回転数E3は1000(rpm)である。なお、第2回転数範囲D2の下限値および上限値の値は限定されるものではない。
【0142】
ロータ回転詰まり制御に用いられるロータ回転数の閾値としては、第2回転数範囲D2の範囲内におけるグラフ(G1,G2,G3)上の所定のロータ回転数の値が作物の種類ごとに設定される。すなわち、図19に示すように、稲・麦についての閾値である第1グラフG1上の第1閾値H1(点P01参照)と、コーンについての閾値である第2グラフG2上の第2閾値H2(点P02参照)と、大豆についての閾値である第3グラフG3上の第3閾値H3(点P03参照)とが設定される。
【0143】
閾値の大きさは、第1閾値H1、第2閾値H2および第3閾値H3の順に小さくなっている。稲・麦についての第1閾値H1は、例えば249(rpm)であり、コーンについての第2閾値H2は、例えば200(rpm)であり、大豆についての第3閾値H3は、例えば150(rpm)である。
【0144】
また、ロータ回転詰まり制御においては、ロータ回転数が閾値以下になることによる警報の発生状態を解除させるロータ回転数の値である警報解除値が設定される。警報解除値は、第2回転数範囲D2の範囲内におけるグラフ(G1,G2,G3)上の所定のロータ回転数の値として作物の種類ごとに設定される。
【0145】
警報解除値の大きさは、上述した閾値と同様に、稲・麦、コーン及び大豆の順に小さくなっている。稲・麦についての警報解除値は、例えば269(rpm)であり、コーンについての警報解除値は、例えば225(rpm)であり、大豆についての警報解除値は、例えば180(rpm)である。
【0146】
ロータ回転詰まり制御に関して作物の種類ごとのロータ回転数の閾値および警報解除値は、制御部120の記憶部121においてあらかじめ設定され記憶される。なお、ロータ回転数の閾値および警報解除値の値は上述した例に限定されるものではない。
【0147】
ロータ回転詰まり制御において、ロータ回転数の閾値および警報解除値は、モニタ設定作物に対応して設定される。すなわち、例えば、モニタ設定作物が「稲・麦」である場合、ロータ回転詰まり制御では、閾値として第1閾値H1が用いられ、警報解除値として稲・麦についての警報解除値が用いられる。したがって、モニタ設定作物が切り替えられることに連動して、ロータ回転詰まり制御で用いられる閾値および警報解除値が、モニタ設定作物に対応した閾値および警報解除値に切り替えられる。
【0148】
ロータ回転詰まり制御に関し、モニタ設定作物が「稲・麦」である場合について説明する。この場合、脱穀作業中において、脱穀作業用の回転数まで一旦上昇したロータ回転数が、第1閾値H1(例えば249(rpm))以下の回転数に下がることで、制御部120は、モニタ128に警報を表示する。
【0149】
脱穀作業中にロータ回転数が第1閾値H1以下に下がることは、扱室40内において穀稈の詰まり等の不具合が生じていることに起因する。そこで、制御部120は、ロータ回転数が第1閾値H1以下となった場合、詰まり警報を発する。
【0150】
具体的には、制御部120は、詰まり警報として、モニタ128の液晶パネル131に、例えば図20に示すようなロータ詰まり警報画面210を表示する。図20は、液晶パネル131における表示画面の一つであるロータ詰まり警報画面210の一例を示している。ロータ詰まり警報画面210においては、画面内容表示部157に「ロータ詰まり警報」の文字が表示されている。
【0151】
図20に示すように、ロータ詰まり警報画面210は、ロータ詰まりの警報のメッセージを表示する警報メッセージ表示部211を有する。図20に示す例では、警報メッセージ表示部211には、扱胴41の回転数が通常よりも低下していることを報知する表示として、「ロータの回転数が低下しています。速度を落としてください。」の文字が表示されている。なお、警報メッセージ表示部211の表示内容は特に限定されない。ロータ詰まり警報画面210において、「戻る」の文字を表示した第1操作表示部151の操作を行うことにより、液晶パネル131の画面表示がメイン画面140(図10参照)へと遷移する。
【0152】
また、制御部120は、詰まり警報としてブザー129により報知音を発生させるように、ブザー129に対して制御信号を送る。つまり、制御部120は、ロータ回転数が閾値以下になった場合、液晶パネル131にロータ詰まり警報画面210を表示するとともに、ブザー129による警報音を発生させる。これにより、オペレータに注意を喚起する。
【0153】
ロータ回転詰まり制御における警報の発生状態は、扱胴回転センサ125により検出されるロータ回転数が警報解除値を上回ることによって解除される。具体的には、上述した例にならい、モニタ設定作物が「稲・麦」である場合において、ロータ回転数が稲・麦について設定された警報解除値(例えば269(rpm))を上回ったときは、液晶パネル131におけるロータ詰まり警報画面210の表示およびブザー129による警報音が停止させられる。
【0154】
また、ロータ回転詰まり制御に関し、制御部120は、回転数整合判定の制御の場合と同様に、脱穀クラッチ57が入状態となった時から所定時間経過後に回転数整合判定を行ってもよい。この場合、制御部120は、脱穀クラッチ57が入状態であることを検知した時からの経過時間が所定時間(例えば数秒から数十秒)となったことを条件として、ロータ回転詰まり制御を行う。
【0155】
また、制御部120は、モニタ設定作物を用いた制御として、モニタ設定作物に応じて唐箕47の風量を変更する唐箕風量制御を行う。唐箕風量制御は、唐箕47の風量調節用の操作具により複数段階で調節される唐箕47の風量調節について、各段階の風量の大きさを、モニタ設定作物の種類に応じて変化させる制御である。
【0156】
唐箕47の風量調節については、運転部15のレバーコラム24等に、唐箕47の風量調節用の操作具として、回動操作可能なダイヤル部を含む風量調節ダイヤル300が設けられている(図8参照)。風量調節ダイヤル300は、センサ部を介して制御部120に接続されており、風量調節ダイヤル300のダイヤル部の回動操作角度がセンサ部により検出される。センサ部は、ダイヤル部の回動操作角度についての検出信号を制御部120へと入力する。風量調節ダイヤル300によれば、ダイヤル部の回動操作により例えば5段階等の複数段階での唐箕47の風量調節が可能となる。
【0157】
唐箕47は、左右方向を回転軸方向とした回転軸である唐箕軸47aと、複数の羽根体とを有し、扱胴41の前部の下方に配置されている(図1参照)。唐箕47に対しては、唐箕47の風量を調節するための風量調節装置(図示略)が設けられる。風量調節装置としては、例えば、唐箕軸47aの回転数を変更するための割プーリと、割プーリの幅を変更するためのカム機構と、カム機構を作動させる唐箕アクチュエータ301と、カム機構と唐箕アクチュエータ301との間に配設される伝動機構とを備えた公知の構成のものが用いられる。唐箕アクチュエータ301は、電動式モータで構成され、制御部120に接続されており、その動作が制御部120により制御される(図8参照)。
【0158】
風量調節装置によれば、唐箕アクチュエータ301の駆動にともなうカム機構の動作によって割りプーリのベルト溝幅が広がることで、割りプーリに巻回されるベルトの回転半径が小さくなる。これにより、唐箕軸47aの回転数、即ち唐箕47の回転数が大きくなり、唐箕47の風量が増大する。一方、唐箕アクチュエータ301の駆動にともなうカム機構の動作によって割りプーリのベルト溝幅が狭まることで、割りプーリに巻回されるベルトの回転半径が大きくなる。これにより、唐箕軸47aの回転数、即ち唐箕47の回転数が小さくなり、唐箕47の風量が減少増大する。
【0159】
このような唐箕アクチュエータ301の駆動による唐箕47の風量の調節が、風量調節ダイヤル300の操作に基づいて制御部120により行われる。そこで、制御部120は、モニタ設定作物を用いた唐箕風量制御として、風量調節ダイヤル300の各段階での唐箕47の風量をモニタ設定作物の種類に応じて変化させる制御を行う。
【0160】
唐箕風量制御によれば、風量調節ダイヤル300の各段階での唐箕47の風量について、モニタ設定作物が大きい作物であるほど、唐箕47の風量が大きくなるように調整される。すなわち、モニタ設定作物が「稲・麦」、「コーン」、「大豆」の順に、風量調節ダイヤル300により調節される各段階での風量が大きくなるように調整される。
【0161】
具体的には、例えば、風量調節ダイヤル300による風量の調節が風量「1」(弱)~「5」(強)までの5段階で行われる構成においては、5つの各段階での風量が、モニタ設定作物によって、「稲・麦」、「コーン」、「大豆」の順に大きくなるように変更される。
【0162】
したがって、制御部120は、モニタ設定作物が切り替わることにより、風量調節ダイヤル300の操作にともなうセンサ部からの検出信号に基づく各段階での唐箕アクチュエータ301の制御量を、現在のモニタ設定作物に応じた量とする。制御部120は、例えば、唐箕47の風量について、モニタ設定作物が「稲・麦」の場合は標準風量とし、モニタ設定作物が「コーン」の場合は標準風量よりも強い第1の強風量とし、モニタ設定作物が「大豆」の場合は第1の強風量よりも強い第2の強風量とする。
【0163】
唐箕47風量の変更態様の一例としては、「コーン」に対応する第1の強風量において風量調節ダイヤル300により調節される風量「1」、「2」、「3」の風量が、「稲・麦」に対応する標準風量において風量調節ダイヤル300により調節される風量「2」、「3」、「4」に相当する風量となるように制御される。また、「大豆」に対応する第2の強風量において風量調節ダイヤル300により調節される風量「1」、「2」、「3」の風量が、「稲・麦」に対応する標準風量において風量調節ダイヤル300により調節される風量「3」、「4」、「5」に相当する風量となるように制御される。
【0164】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るコンバイン1によれば、扱胴41の変速設定の誤りを容易にかつ事前に判断することができ、扱胴41の回転状態を収穫対象の作物に適した状態に制御することができるとともに、扱胴41における不具合を速やかに検知することができる。
【0165】
制御部120は、モニタ設定作物および回転数対応関係を用いて、回転数整合判定を行い、その判定結果をモニタ128に表示するように構成されている。このような構成によれば、脱穀変速レバー110による脱穀変速装置58の操作によって設定された扱胴41の変速状態がモニタ設定作物と異なる場合、モニタ128の表示により報知される。このため、オペレータは、収穫作業に際してモニタ128による作物の種類の設定操作を予め行うことにより、扱胴41における変速設定の誤りを容易にかつ事前に認識することができる。
【0166】
これにより、例えば、オペレータが脱穀変速装置58による変速状態の設定を把握していない場合であっても、扱胴41の回転速度について収穫対象の作物に適していない回転速度での作業が継続されることを防止することができ、扱室40内における穀稈の詰まりや作物の損傷等を予防することができる。また、扱胴41における変速設定の誤りを事前に認識できることから、例えば扱室40内における穀稈の詰まりや扱胴のスリップ等の不具合に起因する扱胴41の回転速度の変化を、扱胴41の回転状態の異常として速やかに検知することができる。これにより、扱胴41における不具合を即座に認識することが可能となる。
【0167】
また、コンバイン1による収穫作業中に、例えば脱穀変速レバー110に外力が作用する等の何らかの原因で脱穀変速装置58による扱胴41の変速状態が不意に変更されることが想定される。このような場合、回転数整合判定の制御により、モニタ設定作物と扱胴41の変速状態との不整合が検出されることになるため、扱胴41の変速状態の意図せぬ切替えを検知することが可能となる。
【0168】
また、制御部120は、回転数整合判定の制御において、判定結果が「整合」の場合、モニタ128にモニタ設定作物の名称を表示し、判定結果が「不整合」の場合、モニタ128の表示等による警報を発するように構成されている。このような構成によれば、オペレータに対して回転数整合判定の判定結果を確実に知らせることができる。
【0169】
また、回転数整合判定の制御の判定結果が「整合」の場合における表示制御として、液晶パネル131におけるモニタ設定作物の名称の表示を点滅表示させる制御を行ってもよい。このような構成によれば、液晶パネル131におけるモニタ設定作物の名称の表示の視認性を向上させることができ、作業中のオペレータに対して判定結果が「整合」であることを確実に知らせることができる。
【0170】
また、制御部120は、回転数整合判定の制御において、判定結果が「不整合」の場合のみ、モニタ128の表示等による警報を発するように構成してもよい。このような構成によれば、扱胴41の変速設定の誤りを報知することができるとともに、判定結果が「整合」の場合、つまり収穫対象の作物との関係において扱胴41の変速設定が正しい場合は、回転数整合判定の制御によるオペレータへの影響を無くすことができる。これにより、扱胴41の変速設定の誤りをオペレータに対して確実に報知することができ、回転数整合判定の制御によるオペレータへの報知の精度を高めることができる。
【0171】
また、制御部120は、脱穀クラッチ57が入状態となった時から所定時間経過後に回転数整合判定を行うように構成されている。このような構成によれば、扱胴41の回転数が安定した状態で回転数整合判定を行うことができるので、回転数整合判定による判定精度を向上させることができ、扱胴41の変速設定の誤りを確実に認識することが可能となる。
【0172】
また、回転数整合判定の制御を行う構成によれば、「整合」の判定結果が得られるようにモニタ128によって作物の種類を設定することにより、脱穀変速装置58の変速段を認識することが可能となる。これにより、脱穀変速装置58の変速段を検出するためのセンサを別途設けることなく、しかもオペレータは脱穀変速レバー110のレバー位置を確認することなくキャビン16内に居ながら、間接的に脱穀変速装置58の変速段、つまり扱胴41の変速状態を把握することが可能となる。
【0173】
また、制御部120は、モニタ設定作物および回転数対応関係を用いてロータ回転詰まり制御を行うように構成されている。このような構成によれば、扱胴41の変速状態に応じてロータ回転数が一定以上低下した場合、モニタ128等により警報が発せられる。このため、収穫対象の作物の種類に応じて、ロータ回転の詰まりを精度良く検知することが可能となる。また、制御部120は、脱穀クラッチ57が入状態となった時から所定時間経過後にロータ回転詰まり制御を行う構成によれば、ロータ回転詰まり制御によるロータ回転の詰まりをより精度良く検知することが可能となる。
【0174】
また、制御部120は、モニタ設定作物を用いて唐箕47の風量を変更する唐箕風量制御を行うように構成されている。このような構成によれば、風量調節ダイヤル300による唐箕47の風量の調節に関し、収穫対象の作物に適した風量の調節を行うことができるので、選別部8における穀粒の選別精度を向上させることができる。
【0175】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るコンバインは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0176】
上述した実施形態では、モニタ128が、本発明に係る表示装置および設定装置を兼ねた構成となっているが、表示装置および設定装置を互いに独立した構成として備えた構成であってもよい。
【0177】
また、上述した実施形態では、脱穀変速装置58は、3つの変速段に変速設定可能な構成を備えたものであるが、脱穀変速装置58による変速段の数は限定されない。脱穀変速装置58は、2段変速の構成を備えたものであったり、4つ以上の変速段を有する構成のものであったりしてもよい。脱穀変速装置58の変速段の数に応じて、回転数整合判定の制御ややロータ回転詰まり制御等の制御部120による制御におけるモニタ128により選択可能な作物の種類の数や回転数対応関係の数が設定される。本技術は、3つ以上の変速段を有する脱穀変速装置58を備えた構成において好適に用いられる。
【符号の説明】
【0178】
1 コンバイン
3 刈取部
7 脱穀部
8 選別部
15 運転部
25 エンジン(駆動源)
40 扱室
41 扱胴
41a 扱胴軸
47 唐箕
57 脱穀クラッチ
58 脱穀変速装置(変速装置)
59 扱胴入力軸
120 制御部
124 エンジン回転センサ
125 扱胴回転センサ(回転検出装置)
126 脱穀クラッチセンサ
128 モニタ(表示装置、設定装置)
129 ブザー
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