(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049081
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】半導体チップ、システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 5/48 20240101AFI20240402BHJP
【FI】
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155334
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】522485073
【氏名又は名称】株式会社Premo
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀典
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳太
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB03
5K012AC06
5K012BA07
(57)【要約】
【課題】無線通信が衝突した場合でも無線通信を成立させることができるようにする。
【解決手段】隣接する他の半導体チップのみと通信可能な無線通信を行う半導体チップであって、他の半導体チップからデータを受信する受信回路と、他の半導体チップにデータを送信する送信回路と、を備え、受信回路が衝突を検出した場合、送信回路が他の半導体チップに対してデータの再送リクエストを送信すること、を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する他の半導体チップのみと通信可能な無線通信を行う半導体チップであって、
前記他の半導体チップからデータを受信する受信回路と、
前記他の半導体チップにデータを送信する送信回路と、
を備え、
前記受信回路が衝突を検出した場合、前記送信回路が前記他の半導体チップに対して前記データの再送リクエストを送信すること、
を特徴とする半導体チップ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体チップであって、
前記他の半導体チップにはIDが設定され、
前記受信回路が前記衝突を検出した通信に係る通信先の前記他の半導体チップを特定できた場合、前記送信回路は、特定した前記他の半導体チップを示す前記IDを設定した前記再送リクエストを送信すること、
を特徴とする半導体チップ。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体チップであって、
前記送信回路は、前記再送リクエストに自身の前記IDを設定すること、
を特徴とする半導体チップ。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体チップであって、
前記半導体チップにはIDが設定され、
前記受信回路が前記衝突を検出した通信に係る通信先の前記他の半導体チップを特定できない場合、前記送信回路は、自身の前記IDを設定した前記再送リクエストを隣接した前記他の半導体チップに送信すること、
を特徴とする半導体チップ。
【請求項5】
第1及び第2の半導体チップを備えるシステムであって、
前記第1の半導体チップがデータを前記第2の半導体チップに送信し、
前記第2の半導体チップが前記データの受信に係る衝突を検出した場合に、前記第1の半導体チップに対して前記データの再送リクエストを送信すること、
を特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、
前記第2の半導体チップは、IDの値に応じた再送タイミングで、前記再送リクエストに応じたデータを再送すること、
を特徴とするシステム。
【請求項7】
データの通信方法であって、
第1の半導体チップがデータを第2の半導体チップに送信するステップと、
前記第2の半導体チップが前記データの受信に係る衝突を検出するステップと、
前記第2の半導体チップが、前記衝突を検出した場合に、前記第1の半導体チップに対して前記データの再送リクエストを送信するステップと、
を備える通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ、半導体チップを備えるシステム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水平方向に集積された半導体チップが、誘導結合を利用して互いに無線通信を行う情報処理装置が開示されている。そのため、特許文献1に記載の情報処理装置は、複数の半導体チップが互いに無線により通信を行うことができるため、物理的な通信線が不要となり、形状を自由に変形できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しなしながら、無線通信が衝突した場合であっても通信を成立させる具体的な手法については検討されておらず、無線通信が衝突した場合の対応策が課題となっていた。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、無線通信が衝突した場合でも無線通信を成立させることができる半導体チップ、システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、隣接する他の半導体チップのみと通信可能な無線通信を行う半導体チップであって、前記他の半導体チップからデータを受信する受信回路と、前記他の半導体チップにデータを送信する送信回路と、を備え、前記受信回路が衝突を検出した場合、前記送信回路が前記他の半導体チップに対して前記データの再送リクエストを送信すること、を特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線通信が衝突した場合でも無線通信を成立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】半導体チップを実現する一例を示す図である。
【
図3】半導体チップ1が層構造である場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<システムの概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。本実施形態の情報処理システムは、複数の半導体チップ(1a,1b)を含んで構成される。半導体チップ1は、他の半導体チップ1との相対位置の関係などを計測することができる装置である。複数の半導体チップ1は、計測対象4の表面又は内部に配置され、他の半導体チップ1との相対位置の関係を計測することで、計測対象4の状態(例えば、計測対象の動作状態、変形、温度、振動、圧力、電磁波、音量、湿度など)を計測することができる。計測対象4は、例えば、ドアやモーターなどの物体が移動又は変形する装置であっても良いし、盛土やコンクリートなどの土木や建設の材料であっても良いし、あるいは、水や空気などであってもよい。
【0011】
半導体チップ1は、プロセッサ10とコイル30とを備え、プロセッサ10はメモリ20を備える。メモリ20の少なくとも一部には、不揮発性の記憶デバイスを含め、プロセッサ10により実行するプログラム等を格納することができる。
【0012】
コイル30は、他の半導体チップと通信をする際の通信アンテナとして機能することができ、隣接して配置される他の半導体チップ1のコイル30と近接場電磁界を介した近接場通信方式やその他の誘導結合による通信、またはその他の通信方式により信号を送受信することができる。本実施形態では、コイル30を介した通信の届く距離は半導体チップ1の縦及び横の長さよりも短いことを想定する。即ち、半導体チップ1は、隣接する半導体チップ1と通信することはできるものの、隣接する半導体チップに隣接する他の半導体チップ1(自身を除く)とは直接的な通信はできないことを想定する。
【0013】
なお、コイル30を介した通信は、半導体チップ1の平面上で隣接する他の半導体チップ1との間で行うことが可能であるとともに、半導体チップ1の平面に垂直方向に離間して隣接している他の半導体チップ1との間でも行うことができる。
【0014】
コイル30は、他の半導体チップから受信する通信信号の電圧値や電圧振幅などを検出する計測部として機能することもできる。さらに、コイル30は、半導体チップの外部の給電装置40から給電される電力の受電部として機能することもできる。
【0015】
<ハードウェア>
図2は、半導体チップを実現する一例を示す図である。
図2の例は、半導体チップ1内のプロセッサ及び電気回路部100の外周にコイル30を設け、更に、送信回路50と受信回路60を含む電気回路部100を設けたハード構成例を示す。
図2に示す例では、半導体チップ1aと半導体チップ1bをペアで用いた例を示しており、半導体チップ1は、プロセッサ(10a,10b)と、プロセッサ内に設けられたメモリ(20a,20b)と、半導体チップの外周に設けられた配線などで構成されるコイル(30a,30b)と、プロセッサ10と通信可能に接続され、コイル(30a,30b)に送信する電圧信号を生成する送信回路(50a,50b)と、コイル(30a,30b)の電圧信号を検出する受信回路(60a,60b)と、コイル(30a,30b)に流れる電力を取得する電力取得回路(70a,70b)と、を備えている。
【0016】
図2では、コイルは単一の配線で構成される例を示すが、複数の配線でコイルを構成しても良い。また
図2に示す例では、コイル30が形成されたエリアの内側にプロセッサ及び電気回路部100が設けられ、プロセッサ及び電気回路部100の外側を囲むようにコイル30を設ける例を示しているが、コイルの位置はこれに限られず、他の例として、プロセッサ及び電気回路部100の一方又は両方がコイルで覆われたエリアの内側ではなく、コイルの外側に設けられるように構成することも可能である。
また、
図3は、半導体チップ1が層構造である場合を示す図である。
図3に示すように、半導体チップ1の構造が複数の層を有する層構造である場合に、コイル30をプロセッサ10と電気回路100の少なくともいずれかとは異なる層に設けられる構造としても良い。
図3に示す半導体チップ1は、上側の層と下側の層を有する単一チップで構成しても良く、上側の層と下側の層が電気的に接続された別々の半導体チップとして構成しても良い。
【0017】
送信回路50は、隣接する他の半導体チップ1にデータを送信する。送信回路50は、送信するデータをメモリ20に記録しておくことができる。送信回路50は、送信したデータを、送信から所定時間経過後にメモリ20から削除することができる。
【0018】
受信回路60は、隣接する他の半導体チップ1からデータを受信する。受信回路60は、例えば、電圧が上昇したにも拘わらずデータを復調できなかったことなどにより衝突を検出することができる。
【0019】
図4は、半導体チップ1の機能例を示す図である。
図4に示すように、半導体チップ1は、ID設定部11と、ID記憶部13と、隣接ID記憶部14とを備える。ID記憶部13及び隣接ID記憶部14は、メモリ20が提供する記憶領域の一部として実現され、ID設定部11は、例えば、メモリ20に記憶されているプログラムをプロセッサ10が実行することにより実現されうる。
【0020】
ID記憶部13は、半導体チップ1に設定された半導体チップ1の識別番号(ID)を記憶する。
【0021】
隣接ID記憶部14は、半導体チップ1に隣接する他の半導体チップ1(即ち、半導体チップ1が通信可能な他の半導体チップ1)を示すIDを記憶する。
【0022】
ID設定部11は、半導体チップ1のIDを設定することができる。ID設定部11は、例えば、ランダムな値を生成し、生成した値をIDとしてID記憶部13に書き込むことができる。ID設定部11は、例えば、IDを生成する他の半導体チップ1から送信されるIDを受信し、受信したIDをID記憶部13に書き込むようにしてもよい。
【0023】
送信回路50は、フレーム(パケット)の形式でデータを送出することができる。フレームには、宛先となる半導体チップ1のID、送信元となる半導体チップ1のIDが設定されうる。送信回路50は、フレームの送信元に、ID記憶部13に記憶されているIDを設定して、他の半導体チップ1に対してフレームを送出することができる。
【0024】
受信回路60は、受信したフレームに設定されている送信元のIDを隣接ID記憶部14に登録することができる。受信回路60は、例えば、送信元のIDが隣接ID記憶部14に記憶されていない場合に、当該送信元のIDを隣接ID記憶部14に登録することができる。受信回路60は、例えば、特定のデータが設定されているフレームを受信した場合にのみ、送信元のIDを隣接ID記憶部14に登録するようにしてもよい。
【0025】
受信回路60は、通信の衝突を検出した場合、送信回路50は、隣接する他の半導体チップ1に対して(即ち、隣接ID記憶部14に記憶されているIDを宛先として)データの再送を依頼する再送リクエスト(例えば、ヘッダやペイロードに再送を指示する旨の値を設定したフレームとすることができる。)を送信することができる。
【0026】
受信回路60が再送リクエストの設定されたフレームを受信した場合には、送信回路50はデータを再送することができる。例えば、送信回路50は、メモリ20に記録しておいたデータを再度送信することができる。
【0027】
受信回路60が衝突を検出した場合に、衝突した通信に係る通信先の他の半導体チップ1を特定できたときには、送信回路50は、特定した他の半導体チップ1を示すIDを宛先に設定した再送リクエストを送信することができる。この場合にも、送信回路50は、送信元に自身のID(ID記憶部13に記憶されているID)を設定することができる。
【0028】
送信回路50は、再送リクエストに応じてデータを再送する場合に、IDに応じたタイミングでデータを再送することができる。例えば、ID設定部11は、素数の中からランダムにIDを設定することができ、IDの数字分の長さ(例えば、ID×1msなど)のインターバルを設けて再送を行うことができる。
【0029】
<動作>
図5は、半導体チップの動作を説明する図である。
図5では、説明を簡単にするため、2つの半導体チップ1(半導体チップA及び半導体チップB)との間で通信が行われている様子を説明するが、3つ以上の半導体チップ1の間での動作についても、各半導体チップ1間での通信に適用しうる。
【0030】
半導体チップAは、半導体チップBに対して送信するデータをメモリ20に記憶し(S301)、半導体チップBのIDを宛先とし、半導体チップAのIDを送信元としたフレームにデータを設定して送出する(S302)。
【0031】
半導体チップBは、データが設定されたフレームを受信し(S303)、その際に衝突を検出した場合には(S304:YES)、再送リクエストを送信する(S305)。ここで、半導体チップBは、衝突の生じたフレームの送信元を確認できた場合には、その送信元を宛先とした再送リクエストを送出することができる。一方で、衝突の生じたフレームの送信元を確認できなかった場合には、宛先を指定せずに(又は、隣接する半導体チップすべてを宛先として、もしくは、隣接する半導体チップのそれぞれを宛先とした複数のフレームを準備して)再送リクエストを送出することができる。
【0032】
半導体チップAは、再送リクエストを受信すると(S306)、ID記憶部13に記憶されている自身のIDに応じた時間待機し(S307)、メモリ20に記憶しておいたデータをフレームに設定して半導体チップBを宛先として再度送出する(S308)。
【0033】
半導体チップAは、S301においてデータをメモリ20に記憶してから所定時間が経過した場合には(S309:YES)、当該データをメモリ20から削除することができる。
【0034】
以上のようにして、本実施形態の情報処理システムによれば、送受信回路のレベル、即ちデータリンク層において、衝突を検出した場合に再送を試行することができる。これにより、上位の例えばネットワーク層において再送等の処理を行う可能性を低減することができる。
【0035】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 半導体チップ
11 受信回路
12 送信回路
13 ID記憶部