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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049090
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/30 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B65D77/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155346
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
(72)【発明者】
【氏名】國森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】末永 崇文
(72)【発明者】
【氏名】片山 亮
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067BA07A
3E067BA10A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA11
3E067EB11
3E067EB22
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】熱溶着の条件を調整しやすくなるように改良された、包装体を提供する。
【解決手段】本発明によれば、内容物を密封状態で保存するための包装体であって、前記包装体は、蓋部と容器とを備え、前記蓋部は、シーラント層と基材層と紙層とがこの順に重なったものであり、前記シーラント層が前記容器に熱溶着され、前記基材層は樹脂で形成され、前記基材層の融点は前記シーラント層の融点よりも高い、包装体が提供される。前記基材層の材料が有するMD方向のヤング率とTD方向のヤング率とのうち低い方が、800MPa以上であってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を密封状態で保存するための包装体であって、
前記包装体は、蓋部と容器とを備え、
前記蓋部は、シーラント層と基材層と紙層とがこの順に重なったものであり、
前記シーラント層が前記容器に熱溶着され、
前記基材層は、樹脂で形成され、
前記基材層の融点は前記シーラント層の融点よりも高い、包装体。
【請求項2】
請求項1に記載の包装体であって、
前記基材層が有するMD方向のヤング率とTD方向のヤング率とのうち低い方が、800MPa以上である、包装体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の包装体であって、
前記包装体は電子レンジ加熱用の包装体である、包装体。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の包装体であって、
前記基材層は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はオレフィン系樹脂で形成された、包装体。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の包装体であって、
前記容器は、紙素材層と容器樹脂層とが積層されて構成され、
前記シーラント層は前記容器樹脂層に熱溶着された、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓋部を容器に熱溶着することで内容物を密封保存する技術が開示されている。蓋部は、樹脂フィルムで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-106831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、樹脂フィルムに代えて紙製の蓋部を採用するために、シーラント層を介して紙製の蓋部を容器に熱溶着するという鋭意研究を行っている。しかしながら、このような熱溶着を実施する際に熱溶着の条件を適正に調整するのが困難であるという新たな問題が発生した。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、熱溶着の条件を調整しやすくなるように改良された、包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]内容物を密封状態で保存するための包装体であって、前記包装体は、蓋部と容器とを備え、前記蓋部は、シーラント層と基材層と紙層とがこの順に重なったものであり、前記シーラント層が前記容器に熱溶着され、前記基材層は樹脂で形成され、前記基材層の融点は前記シーラント層の融点よりも高い、包装体。
[2][1]に記載の包装体であって、前記基材層の材料が有するMD方向のヤング率とTD方向のヤング率とのうち低い方が、800MPa以上である、包装体。
[3][1]又は[2]に記載の包装体であって、前記包装体は電子レンジ加熱用の包装体である、包装体。
[4][1]~[3]のいずれか1つに記載の包装体であって、前記基材層は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はオレフィン系樹脂で形成された、包装体。
[5][1]~[3]のいずれか1つに記載の包装体であって、前記容器は、紙素材層と容器樹脂層とが積層されて構成され、前記シーラント層は、前記容器樹脂層に熱溶着された、包装体。
【0007】
本発明者が鋭意研究を行ったところ、紙層とシーラント層との間にシーラント層より高い融点を持つ基材層を挟むことで、蓋部を熱溶着するときの条件を調整しやすくなることが判明し、本発明の完成に至った。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の電子レンジ用包装体1の斜視図である。図中の一点鎖線は、表面形状を構成する面の曲率が変化する境界線を表す。他の図についても同様である。
図2図2Aは、図1の包装体1の平面図であり、図2Bは、図2A中のB-B断面図であり、図2Cは、図2B中のJ破線領域を表した拡大断面図である。
図3図2中の領域Aの拡大図である。
図4図4Aは、紙素材層3aと容器樹脂層3bの剥離強度Qの測定方法の説明図であり、図4Bは、蒸気排出部7での蓋部2と容器3の間の剥離強度Pの測定方法の説明図である。
図5図5Aは、蒸気排出部7の近傍の部位を切り出した斜視図であり、図5Bは、包装体1の内圧上昇に伴って蒸気排出部7の近傍の領域7cが膨らんでいる状態を示す、図5Aに対応する図である。
図6】包装体1の製造方法を説明するための斜視図である。
図7図7Aは、図6中のシールバー9の斜視図であり、図7Bは、図7A中の領域Bの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.電子レンジ用包装体1の構成
図1図7に示すように、本発明の一実施形態の電子レンジ用包装体1は、内容物Fを密封状態で保存するために用いられる。この包装体1は、蓋部2と、蓋部2によって密封された容器3を備える。蓋部2は、薄い紙製シートである。内容物Fとしては、水分を含みかつ電子レンジで加熱又は調理可能な食品が挙げられ、例えばレトルト食品である。
【0011】
1.1.容器3の構成
容器3は、紙素材層3aと、これに接着された容器樹脂層3bが積層されて構成された紙素材製容器である。紙素材層3aは、パルプなどの紙素材で構成可能である。紙素材層3aは、パルプモールドであることが好ましい。パルプモールドとは、パルプ(木質繊維)を材料とする成形品であり、水中に分散させたパルプを金型で抄き上げた後、乾燥させることによって形成することができる。深絞り成形によって容器3を形成すると、フランジ部5に皺が形成されやすいが、パルプモールドでは、フランジ部5に皺がない容器3を形成することができるので、フランジ部5への蓋部2の溶着精度が高められる。容器樹脂層3bは、蓋部2との熱溶着が可能な任意の樹脂で構成可能であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂で構成することができる。使用する樹脂材料で容器樹脂層3bの融点が決まるが、一例として低融点のポリプロピレンを用いると143℃程度の融点となる。容器樹脂層3bは、接着剤で紙素材層3aに接着することができる。
【0012】
紙素材層3aの厚さは、例えば、300~1000μmであり、500~800μmが好ましい。この厚さは、具体的には例えば、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。容器樹脂層3bの厚さは、例えば、40~160μmであり、60~120μmが好ましい。この厚さは、具体的には例えば、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0013】
図4Aに示すように、紙素材層3aと容器樹脂層3bの剥離強度Qは、容器3の平坦になっている部位から幅W(mm)×100mmのサイズで切り出し、端から長さ50mmの部位において紙素材層3aと容器樹脂層3bを剥離して試験片12を作成し、試験片12の剥離した部位のうち、紙素材層3aと容器樹脂層3bのそれぞれに対応する部位12a,12bを治具11a,11bで把持し、治具11aを固定した状態で治具11bを上方向に300mm/minで移動させたときに測定される荷重の最大値を試験片の幅Wで除することによって求めることができる。Wは、例えば5~15mmであり、具体的には例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。剥離強度Qは、例えば5~20gf/mmであり、具体的には例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20gf/mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
容器3は、凹状に形成され内容物Fを収容可能な容器本体4と、容器本体4の上端4aから外方に延出するように設けられた環状のフランジ部5を有する。フランジ部5には、フランジ部5と蓋部2が熱溶着された熱溶着部6が設けられている。熱溶着部6は、環状であり、フランジ部5の全周に渡って設けられる。このため、熱溶着部6においてフランジ部5と蓋部2が熱溶着されることによって、内容物Fが包装体1内に密閉される。
【0015】
熱溶着部6は、内容物Fを電子レンジで加熱することによって発生する蒸気を排出するための蒸気排出部7を備える。蒸気排出部7は、熱溶着部6のその他の部位6aよりも剥離されやすくなっている部位であり、内容物Fの加熱に伴って包装体1の内圧が高まると蒸気排出部7において蓋部2とフランジ部5が優先的に剥離することによって、蒸気排出部7を通じた蒸気の排出が可能になっている。このような構成によれば、意図しない部位から蒸気が漏れ出したり、蒸気が排出されずに包装体1が破裂してしまったりすることが抑制される。
【0016】
蒸気排出部7は、熱溶着部6の一部をフランジ部5の内縁5a方向に湾曲させて構成されることが好ましい。この場合、蒸気排出部7は、略V字形状を有する。このような形状によれば、包装体1の内圧上昇に伴って発生する剥離力が蒸気排出部7の先端Aに集中されやすいので、蒸気排出部7での剥離が一層容易になる。
【0017】
蒸気排出部7での蓋部2と容器3の間の剥離強度Pは、100~250kgfが好ましく、120~220kgfがさらに好ましい。剥離強度Pが低すぎると、電子レンジで加熱した際に蒸気排出部7で剥離が生じるタイミングが早くなりすぎて、内容物の加熱効果が高まりにくく、つまり加熱性が悪くなる場合がある。剥離強度Pが高すぎると、蒸気排出部7で剥離が生じるまでに包装体1の内圧が高くなりすぎて、容器3が変形してしまったり、蒸気排出部7で剥離が生じた後に蓋部2を開封する際に、紙素材層3aと容器樹脂層3bが剥離してしまい、開封性が悪くなってしまったりしやすい。剥離強度Pは、好ましくは120~220kgfである。剥離強度Pは、具体的には例えば、100、105、110、115、120、125、130、133、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、207、210、215、220、225、230、235、240、242、245、250kgfであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
剥離強度Pは、蒸気排出部7の先端Aと、蒸気排出部7の内縁側の一対の根本7aを結ぶ一対の線分S1によって規定される、蒸気排出部7側の角の二等分線7gを中心とする10mm幅の部位7hを、フランジ部5の内縁5aと外縁5cの間の部位を含むように10mm×100mmのサイズで切り出して試験片10を作成し、図4Bに示すように、試験片10のうち、容器3と蓋部2のそれぞれの容器内側に対応する部位10a,10bを治具11a,11bで把持し、治具11aを固定した状態で治具11bを上方向に300mm/minで移動させたときに測定される荷重の最大値から求めることができる。この際、先端A側から蒸気排出部7の剥離が進行する。
【0019】
図3に示すように、一対の根本7aを結ぶ第1線分7eよりも先端A側の部位が蒸気排出部7である。二等分線7gと第1線分7eの交点Cと先端Aの間の距離は、例えば、4~10mmであり(本実施形態では6.4mm)、具体的には例えば、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
蒸気排出部7の平均線幅は、熱溶着部6のその他の部位6aの平均線幅よりも小さいことが好ましい。蒸気排出部7の平均線幅は、第1線分7eよりも先端A側の部位の面積を、蒸気排出部7の長手方向の長さで除することによって算出される。その他の部位6aの平均線幅は、根本7aよりも先端Aから離れた側の部位の面積をその他の部位6aの長手方向の長さで除することで算出される。長手方向の長さとは、言い換えると、線幅方向の中央線の長さである。{蒸気排出部7の平均線幅/その他の部位6aの平均線幅}の値は、例えば、0.01~0.9(本実施形態では0.20)であり、0.05~0.5が好ましく、0.1~0.4がさらに好ましい。この値は、具体的には例えば、0.01、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。
【0021】
蒸気排出部7の平均線幅は、例えば、0.5~2.0mmであり(本実施形態では1mm)、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
図3に示すように、一対の根本7aを結ぶ第1線分7eの長さをL1とし、先端Aを通り且つ第1線分7eに平行な直線が熱溶着部6の内縁に到達する点をBとし、先端Aと点Bを結ぶ第2線分7fの長さをL2とすると、L2/L1≧1.0(本実施形態で1.3)である。L2/L1≧1.0の値が大きいほど、図5A図5Bに示すように、蒸気排出部7に隣接した領域7cが、内容物Fからの蒸気による内圧で膨らみやすくなり、その結果、包装体1の内圧上昇に伴って発生する剥離力が蒸気排出部7の先端Aに集中されやすくなり、蒸気排出部7での剥離が一層容易になる。L2/L1は、例えば、1.0~3.0であり、1.1~1.8が好ましく、1.2~1.6がさらに好ましい。この値は、具体的には例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0023】
図3に示すように、先端Aと根本7aを結ぶ線分S1と、根本7aと点Bを結ぶ線分S2がなす角度は、91~120度(本実施形態では102度)が好ましい。この場合に、包装体1の内圧上昇に伴って発生する剥離力が蒸気排出部7の先端Aに集中されやすくなり、蒸気排出部7での剥離が一層容易になる。この角度は、具体的には例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
先端Aと根本7aを結ぶ一対の線分S1の間の角度(本実施形態では90度)は、60~120度が好ましく、80~110度がさらに好ましい。この角度は、具体的には例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
蒸気排出部7は、先端Aと根本7aの間の部位7bが、蒸気排出部7の外縁7d側に向かって凸となるように湾曲していることが好ましい。この場合、先端A近傍において、一対の部位7bの間の間隔が狭まるとともに、一対の根本7aの間の間隔が広がるので、先端A近傍において蒸気排出部7での剥離が一層容易になるとともに、剥離後の蒸気排出路が広くなる。
【0026】
蒸気排出部7の先端Aは、尖っていることが好ましい。この場合、先端Aでの剥離が一層容易になる。
【0027】
熱溶着部6は、蒸気排出部7に隣接した位置に、蒸気排出部7に向かって線幅が徐々に細くなる移行部8を備えることが好ましい。移行部8は、移行部8の内縁がフランジ部5の外縁に近づくことによって形成されることが好ましい。この場合、蒸気排出部7に隣接した領域7cが広くなるので、蒸気排出部7での剥離が一層容易になる。なお、移行部8は、その他の部位6aの一部である。
【0028】
移行部8の外縁と内縁の間の角度の最大値は、例えば、5~30度(本実施形態では12度)であり、8~15度が好ましい。この最大値は、具体的には例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
熱溶着部6は、フランジ部5の平坦面に設けられることが好ましい。容器3は、パルプなどの紙素材を含有する材料で形成されるが、このような材料は、樹脂に比べて成形性が良好でなく、フランジ部5にリブを精度良く形成することが困難な場合がある。このため、フランジ部5の平坦面に熱溶着部6を設けることによって、容器3を構成する材料に関わらず、熱溶着部6を精度良く形成することが可能になる。
【0030】
フランジ部5には、幅広部5bが設けられていることが好ましい。幅広部5bは、その幅(フランジ部5の内縁と外縁の間の間隔)がフランジ部5全体の平均値よりも広い部位である。蒸気排出部7は、幅広部5bに設けられることが好ましい。フランジ部5全体の幅を蒸気排出部7に合わせて広くしたり、フランジ部5の内縁5aを容器3の内側に向かって突出させたりすることなく、蒸気排出部7を設けることが可能になる。また、フランジ部5の外縁5cは、平面視で角部が面取りされていてもよい長方形状になっていることが好ましく、幅広部5bは、長方形の隅部に設けることが好ましい。なお、平面視とは、電子レンジ用包装体1を垂直方向上方から見ることを意味する。
【0031】
フランジ部5には、フランジ部5の外縁5cに沿って、フランジ部5の下方に向かって傾斜する傾斜部5eが設けられることが好ましい。傾斜部5eを設けることによって、フランジ部5の剛性が高められると共に、容器3の容器樹脂層3bが紙素材層3aから剥離することが抑制される。
【0032】
1.2.蓋部2の構成
蓋部2は、フランジ部5の外縁とほぼ同じ大きさの外縁をもつ紙製の薄いシートで構成されることが好ましい。蓋部2は、紙層2aと基材層2bとシーラント層2cとを備え、これらがこの順に重なったものである。蒸気排出部7から蒸気が放出された後に、蒸気排出部7において蓋部2とフランジ部5が密着すると、包装体1が冷めたときに包装体1の内部が減圧状態になって包装体1が変形してしまう場合があるが、蓋部2が熱収縮性を有する場合、蓋部2が収縮することによって、蓋部2とフランジ部5が密着しにくくなることに加えて、蓋部2の収縮力によってフランジ部5を反らせて蓋部2とフランジ部5の密着を抑制することが可能になる。
【0033】
蓋部2を紙製とすることで環境負荷低減などのニーズに応えることができる。紙層2aを構成する紙素材の材質およびその製法に限定はなく、各種の包装用紙素材を利用できる。紙層2aは、例えば厚さ55μm前後の薄い紙製シートでもよい。紙層2aの外側表面に、印刷層などの外層を積層してもよい。
【0034】
基材層2bは、樹脂で形成される。具体的には、基材層2bの材質としては、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、例えばナイロン6などのポリアミド系樹脂、又は、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂などの樹脂を用いることができる。樹脂材料の種類に応じて基材層2bの融点が決まり、もし混合樹脂とする場合はその割合で融点が決まる。
【0035】
シーラント層2cは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂で形成することができ、より具体的には、無延伸ポリプロピレンや直鎖状低密度ポリエチレンを用いることができる。より好ましくは、ポチエチレンとポリプロピレンとを所定の比率で混合したイージーピールシーラントとしてもよい。このようにすることで、蓋部2をフランジ部5から剥がすのが容易となる。
【0036】
ここで、混合する樹脂の比率を変えることで、剥離強度を調整することも可能である。例えば、容器本体4がポリプロピレンである場合、混合樹脂に含まれるポリプロピレンの割合を多くすれば接着力を大きくすることができ、逆に少なくすれば剥離性を高めることができる。一例として、割合をPP:PE=3:1としてもよいが、これに限られない。PEを1倍としてPPをそのM倍で表したときに(PP:PE=M:1)、このMは例えば0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5又は10であり、このMはここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内にある値でもよい。樹脂材料の種類やその混合割合に応じてシーラント層2cの融点が決まる。
【0037】
基材層2bの融点は、シーラント層2cの融点よりも高い。このように、紙層2aとシーラント層2cとの間にシーラント層2cより高い融点を持つ基材層2bを挟むことで、蓋部2を熱溶着するときの条件を調整しやすくなることがわかった。基材層2bによって紙層2aが溶着に関与することが抑制され、紙層2aの破れが抑制される。
【0038】
基材層2bの融点とシーラント層2cの融点との差をΔTMPとすると、このΔTMPは例えば、10~150℃であり、20~140℃が好ましく、より好ましくは40~110℃が好ましい。ΔTMPは、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
一例としてナイロンを用いたときの基材層2bの融点は、約221℃である。シーラント層2cをPEとPPとの混合樹脂層とし、一例として混合比をPP:PE=3:1としたときには、シーラント層2cの融点は約154℃である。この場合のΔTMPは、約67℃である。
【0040】
蓋部2の厚さに限定はなく、蓋部2を構成する各層の厚さにも限定はない。蓋部2の全体重量のうち半分を紙が占めるようにすると、蓋部2が全体として紙材として扱われる。一例として蓋部2全体が100g/mである場合、紙層2aには50~80g/mの紙素材を用いることが好ましい。例えば紙層2aの厚さが蓋部2の厚さの50%以上を占めてもよい。
【0041】
紙層2aの厚さは、例えば、10~100μmであり、40~60μmが好ましい。この厚さは、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
基材層2bの厚さは、例えば、5~80μmであり、10~40μmが好ましい。基材層2bの厚さは、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0043】
シーラント層2cの厚さは、例えば、5~80μmであり、10~40μmが好ましい。シーラント層2cの厚さは、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0044】
蓋部2の破れ防止のために、基材層2bのヤング率がある程度高いことが好ましい。基材層2bのヤング率については、具体的には、一例として、基材層2bが有するMD方向のヤング率とTD方向のヤング率とのうち低い方が、800MPa以上であることが好ましい。この低い方のヤング率は、例えば、400~5000Mpaであり、600~3000Mpaが好ましい。この低い方のヤング率は、具体的には例えば、400、600、800、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3200、3400、3600、3800、4000、4200、4400、4600、4800、5000Mpaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0045】
2.電子レンジ用包装体1の製造方法
電子レンジ用包装体1は、図6に示すように、容器3内に内容物Fを充填した状態でフランジ部5上に蓋部2を配置し、その状態で蓋部2にシールバー9を押し付けて熱溶着部6を形成することによって製造することができる。蓋部2は任意の製造方法で事前に準備しておくものとし、例えば各々の層を構成するシート又はフィルムを例えばドライラミネート等で接着して所定寸法にカットするなどにより準備してもよい。
【0046】
図7に示すように、シールバー9には、熱溶着部6の形状に対応した形状の突出部9aが設けられている。加熱された状態の突出部9aを蓋部2に押し付ける。これにより蓋部2のシーラント層2cとフランジ部5を熱溶着させることができる。この溶着工程時の押し付けを行う温度および時間等の各種条件は、良好なシール状態が得られるように予め設定しておく。基材層2bがあることでシール温度が高めであったりシール時間が長めであったりしても蓋部2と容器3とが溶着しすぎない効果があるので、溶着時の条件調整をしやすくなる利点がある。
【0047】
変形例として、容器3は、紙製ではなく、樹脂製のものでもよい。他の変形例として、蒸気排出部7が設けられなくともよい。その場合、一例として、蓋部2を部分的に剥がして容器3内を外気に通じるようにしてから電子レンジで包装体1を加熱してもよい。なお、包装体1およびその変形例が電子レンジ加熱用ではない用途で提供されてもよい。
【実施例0048】
1.実施例サンプルおよび比較例サンプルの製造
蓋部2が基材層2bを有する点を除いて、実施例サンプルおよび比較例サンプルは同じ構造および製法で作製された。両サンプルは、図6に示す形状の紙素材製の容器3(寸法:110mm×180mm×30mm)内に、1.5gの紙シートと、8.5gの水を入れた後に、表1に示す複数のシール条件(温度および時間)で、容器3のフランジ部5に蓋部2を溶着して、図1図5に示す形状を有する包装体1を得た。蓋部2の溶着は、図6図7に示すシールバー9を用いて行った。
【0049】
実施例サンプルでは、容器3及び蓋部2の層構成は以下の通りである。
容器3:紙素材層3a(パルプ:650μm)/容器樹脂層3b(PP:80μm)
蓋部2:紙層55μm/DL/基材層(Ny:15μm)/DL/シーラント層(PEとPPの混合樹脂:30μm)
【0050】
実施例サンプルでは、蓋部2の3層構造がドライラミネート(DL)で接着されていて、DLの層厚は無視できる程度である。基材層2bの材料はナイロン(三菱ケミカル社製、グレードST)であり、その融点は220.7℃である。シーラント層2cは、三井化学東セロ社製のCMPS(登録商標)であり、PEとPPとの混合樹脂である。シーラント層2cの融点は153.95℃である。この値は、PPの融点162.4℃とPEの融点125.0℃とに基づき、PP:PE=3:1の混合割合であるものとして計算されている。基材層2bの融点とシーラント層2cの融点との差ΔTMPは、66.75℃である。シーラント層2cよりも、基材層2bのほうが60℃以上高い融点を有する。
【0051】
比較例サンプルでは、容器3及び蓋部2の層構成は以下の通りである。蓋部2から基材層を取り除いた点を除き、実施例サンプルと同じである。
容器3:紙素材層3a(パルプ:650μm)/容器樹脂層3b(PP:80μm)
蓋部2:紙層55μm/シーラント層(PEとPPの混合樹脂:30μm)
【0052】
表1に示すシール条件を説明すると、サンプルNo.1~6の条件は、シール時間を一定(1.5秒)にしてシール温度を相違させたものである。これとは逆に、サンプルNo.7~12の条件は、シール温度を一定(150℃)にしてシール時間を相違させたものである。表1において、実施例サンプルはNo.1~3およびNo.7~9であり、比較例サンプルはNo.4~6およびNo.10~12である。
【0053】
【表1】
【0054】
2.開封試験
加熱試験後のサンプルを電子レンジから取り出し、室温で1分間放置した後に、蒸気排出部7が設けられている幅広部5bにおいて蓋部2を把持して、蓋部2をゆっくりと剥がしたときの状態を目視で観察する試験を行った。12個のサンプルについて同様の試験を行い、その結果に基づいて、以下の基準で各サンプルにスコアを付け、三段階で開封性を評価した。
【0055】
スコアの基準は下記のとおりである。
1:全くシールされていなかった。
2:少しのシールがされていた。
3:良好にシールがされていた。
4:接着面が白化した。
5:蓋材が破れた。
【0056】
各スコアは下記の三段階評価に対応する。
○:良好なシールである(スコア3)。
△:弱いがシールはされている(スコア2)。
×:シールが強すぎる又は全くシールされていない(スコア1、4、5)。
【0057】
まず、サンプルNo.1~6についてみると、実施例ではシール温度が高温のサンプルNo.3でも評価○が得られた。しかし比較例ではシール温度が高温(160℃)のサンプルNo.6で評価×となった。次に、サンプルNo.7~12についてみると、実施例ではシール時間が長めのサンプルNo.9でも評価○が得られた。しかし比較例ではシール時間が長め(2.0秒)のサンプルNo.12で評価×となった。このように、実施例では、シール温度が高めであったりシール時間が長めであったりしても蓋部2と容器3とが溶着しすぎずに、開封時に接着面の白化や蓋材の破れが起きずに済んだ。
【0058】
また、実施例サンプルNo.1およびNo.7を見ると、シール時間が低め(140℃)であったりシール時間が短め(1.0)であったりしたサンプルでも、比較例と同等の評価△が得られた。実施例の構成によれば、基材層2bがあることで層構成が増えているにもかかわらず、シール温度が低めであったりシール時間が短めであったりしても比較例と同等の溶着を実施できることがわかった。
【0059】
以上の通り、実施例によれば熱溶着時の条件調整をしやすくなる利点が得られた。
【0060】
3.破裂強さ試験
全体の半分まで開封した蓋部2を未開封側に向かって引っ張ったときのシール強度を測定した。シール幅は3mmであった。シール温度が高くなるほど、且つシール時間が長くなるほど、高いシール強度が得られた。電子レンジ加熱用途を想定してシール強度が弱すぎないように、シール強度は2.0N以上であることが好ましい。
【符号の説明】
【0061】
1 :電子レンジ用包装体
2 :蓋部
2a :紙層
2b :基材層
2c :シーラント層
3 :容器
3a :紙素材層
3b :容器樹脂層
4 :容器本体
4a :上端
5 :フランジ部
5a :内縁
5b :幅広部
5c :外縁
5e :傾斜部
6 :熱溶着部
6a :部位
7 :蒸気排出部
7a :根本
7b :部位
7c :領域
7d :外縁
7e :第1線分
7f :第2線分
7g :二等分線
7h :部位
8 :移行部
9 :シールバー
9a :突出部
10 :試験片
10a :部位
10b :部位
11a :治具
11b :治具
12 :試験片
12a :部位
12b :部位
A :先端
C :交点
F :内容物
S1 :線分
S2 :線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7