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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049092
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】湧水圧測定装置および湧水圧測定方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20240402BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E02D1/02
E21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155350
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊本 創
(72)【発明者】
【氏名】平塚 裕介
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA07
2D043AC01
2D043BB02
(57)【要約】
【課題】先進ボーリングの先端部における湧水圧の長期モニタリングに要する費用および手間を低減することを可能とする湧水圧測定装置および湧水圧測定方法を提案する。
【解決手段】先端部にパッカー21が設けられた二重管ロッド2と、二重管ロッド2の基端部に取り付けられる二重管ヘッド3と、二重管ヘッド3の基端部に設けられた圧力計4を備える湧水圧測定装置である。二重管ロッド2には、二重管ヘッド3からパッカー21に至るロッド内送水流路と、パッカー21よりも先端側において開口して二重管ヘッド3に至るロッド内湧水流路が設けられている。また、二重管ヘッド3には、ロッド内送水流路に接続する逆止弁付きのヘッド内送水流路と、ロッド内湧水流路に接続するヘッド内湧水流路が設けられている。二重管ロッド2および二重管ヘッド3は、ボーリング孔Hの削孔に用いる削孔管や湧水量の測定時に用いるロッド用プリベンダー等に挿通可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にパッカーが設けられた二重管ロッドと、
前記二重管ロッドの基端部に取り付けられる二重管ヘッドと、
前記二重管ヘッドの基端部に設けられた圧力計と、を備える湧水圧測定装置であって、
前記二重管ロッドには、前記二重管ヘッドから前記パッカーに至るロッド内送水流路と、前記パッカーよりも先端側において開口して前記二重管ヘッドに至るロッド内湧水流路と、が設けられており、
前記二重管ヘッドには、前記ロッド内送水流路に接続するヘッド内送水流路と、前記ロッド内湧水流路に接続するヘッド内湧水流路と、が設けられており、
前記ロッド内送水流路には、前記ロッド内送水流路側への水の流入のみを許容する逆止弁が設けられており、
前記二重管ロッドおよび前記二重管ヘッドは、ボーリング孔の削孔に用いる削孔管およびボーリング孔の孔口に設けられるプリベンダーに挿通可能であることを特徴とする、湧水圧測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の湧水圧測定装置を利用して、湧水圧を測定する湧水圧測定方法であって、
前記削孔管を利用して前記ボーリング孔を削孔する削孔工程と、
前記二重管ロッドを前記削孔管に挿通して、前記ボーリング孔の先端部に前記パッカーを配設するパッカー配設工程と、
前記二重管ロッドの基端部に前記二重管ヘッドを取り付ける二重管ヘッド取付工程と、
前記パッカーを拡張させるパッカー拡張工程と、
前記削孔管を回収する削孔管回収工程と、
前記ボーリング孔の孔口において、前記二重管ロッドを保持するロッド固定工程と、
前記ロッド内湧水流路および前記ヘッド内湧水流路により導水された前記ボーリング孔の先端部の湧水の湧水圧を前記圧力計により測定する測定工程と、を備えていることを特徴とする、湧水圧測定方法。
【請求項3】
前記ロッド固定工程では、前記ボーリング孔の孔口に設置したプリベンダーにより前記二重管ロッドを固定し、
前記測定工程では、前記プリベンダーに設けられた第二圧力計により、前記ボーリング孔内の水圧を測定することを特徴とする、請求項2に記載の湧水圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事において湧水圧の測定に使用する湧水圧測定装置および湧水圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、切羽前方の地質や湧水区間の状況を事前に把握することが、地山の安定性確保や工事の安全管理のうえで重要である。切羽前方の地質や地下水状況(水理特性等)の探査方法として、先進ボーリング(例えば、水平調査ボーリング)を行う場合がある。
先進ボーリングにより地下水圧を測定する場合において、ボーリング孔先端の湧水区間の近傍においてパッカーを拡張することで他の区間と区切り、パッカーにより区切られた湧水区間において湧水の水圧等を測定する場合がある。
このような地下水圧測定方法として、例えば、特許文献1に開示された方法がある。特許文献1の地下水圧測定方法では、外側にアウタービット、内側にインナービットを備えた二重ビットで削孔を行った後、インナービットのみを回収して、アウタービットの内側からパッカーを挿入して測定を行う。
特許文献1の地下水圧測定方法では、長期的に湧水圧をモニタリングする場合においても、削孔管やアウタービットを残置させる必要がある。このように削孔管やアウタービットを長期間残置させると、損料がかかるとともに、孔壁崩壊によって回収できなくなるリスクもある。さらに、モニタリング終了後に削孔管やアウタービットを回収する際に、再度ボーリングマシンを設置する必要があり、手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-147751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、先進ボーリングの先端部における湧水圧の長期モニタリングに要する費用および手間を低減することを可能とする湧水圧測定装置および湧水圧測定方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の湧水圧測定装置は、先端部にパッカーが周設された二重管ロッドと、前記二重管ロッドの基端部に取り付けられる二重管ヘッドと、前記二重管ヘッドの基端部に設けられた圧力計とを備えている。前記二重管ロッドには、前記二重管ヘッドから前記パッカーに至るロッド内送水流路と、前記パッカーよりも先端側において開口して前記二重管ヘッドに至るロッド内湧水流路とが設けられている。また、前記二重管ヘッドには、前記ロッド内送水流路に接続するヘッド内送水流路と、前記ロッド内湧水流路に接続するヘッド内湧水流路とが設けられている。前記ロッド内送水流路には、前記ロッド内送水流路側への水の流入のみを許容する逆止弁が設けられている。さらに、前記二重管ロッドおよび前記二重管ヘッドは、ボーリング孔の削孔に用いる削孔管およびボーリング孔の孔口に設けられるプリベンダーに挿通可能である。
また、この湧水圧測定装置を利用した本発明の湧水圧測定方法は、前記削孔管を利用して前記ボーリング孔を削孔する削孔工程と、前記二重管ロッドを前記削孔管に挿通して前記ボーリング孔の先端部に前記パッカーを配設するパッカー配設工程と、前記二重管ロッドの基端部に前記二重管ヘッドを取り付ける二重管ヘッド取付工程と、前記パッカーを拡張させるパッカー拡張工程と、前記削孔管を回収する削孔管回収工程と、前記ボーリング孔の孔口において前記二重管ロッドを保持するロッド固定工程と、前記ロッド内湧水流路および前記ヘッド内湧水流路により導水された前記ボーリング孔の先端部の湧水の湧水圧を前記圧力計により測定する測定工程とを備えている。
【0006】
かかる湧水圧測定装置および湧水圧測定方法によれば、二重管ヘッドが、削孔管やプリベンダーに挿通可能な形状であるため、湧水圧測定装置をボーリング孔に設置した状態で、削孔管やプリベンダーを回収することができる。そのため、湧水圧測定装置を利用して、長期的に湧水圧測定を行う場合であっても、削孔管等の損料を支払う必要がなく経済的である。また、湧水圧測定後に、再度ボーリングマシンを設置して削孔管を回収する手間も要しない。また、二重管ヘッドが逆止弁を有しているため、送水を停止しても、パッカー圧が維持される。
なお、前記ロッド固定工程において前記ボーリング孔の孔口に設置したプリベンダーにより前記パッカー用二重管ロッドを固定する場合には、前記測定工程において、前記プリベンダーに設けられた圧力計により前記ボーリング孔内の水圧を測定するのが望ましい。ボーリング孔内の水圧を測定すれば、パッカー圧の変化を確認できるため、パッカーが正常に機能しているか否かを確認できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の湧水圧測定装置および湧水圧測定方法によれば、先進ボーリングの先端部における湧水圧の長期モニタリングに要する費用および手間を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る湧水圧測定装置を示す断面図である。
図2】二重管ロッドの概要を示す断面図である。
図3】二重管ヘッドを示す断面図である。
図4】本実施形態の湧水圧測定方法を示すフローチャートである。
図5】削孔工程の概要を示す断面図である。
図6】パッカー配設工程の概要を示す断面図である。
図7】二重管ヘッド取付工程の概要を示す断面図である。
図8】パッカー拡張工程の概要を示す断面図である。
図9】第一測定工程の概要を示す断面図である。
図10】削孔管回収工程の概要を示す断面図である。
図11】ロッド固定工程の概要を示す断面図である。
図12】第二測定工程の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、湧水が予想されるトンネル工事において、事前に地山Gの湧水状況を把握することを目的として、切羽前方の湧水圧を測定する湧水圧測定装置1およびこれを使用した湧水圧測定方法について説明する。本実施形態では、湧水圧測定装置1をボーリング孔Hに残置させることで湧水圧の長期的に計測する。
図1は、本実施形態の湧水圧測定装置1を示す断面図である。図1に示すように、湧水圧測定装置1は、二重管ロッド2と、二重管ヘッド3と、圧力計4とを備えている。
【0010】
図2に二重管ロッド2を示す。図2に示すように、二重管ロッド2は、外管24と外管24に内挿された内管25との二重管構造であり、先端部にパッカー21が周設されている。二重管ロッド2の先端は、パッカー21よりも突出している。外管24の内面と内管25の外面との隙間は、ロッド内送水流路22として機能する。ロッド内送水流路22(外管と内管の隙間)は、二重管ロッド2の基端において開口している。また、外管24には、パッカー21の位置に対応して通水孔241が形成されていて、ロッド内送水流路22は二重管ロッド2の先端部においてパッカー21に通じている。すなわち、ロッド内送水流路22は、二重管ロッド2の基端から供給された水をパッカー21に誘導する。なお、外管24と内管25の隙間は、二重管ロッド2に先端において蓋材26により遮蔽されている。内管25の内空部分は、ロッド内湧水流路23として機能する。内管25は、二重管ロッド2の両端において開口している。すなわち、ロッド内湧水流路23は、二重管ロッド2の先端から基端部に至るように設けられており、二重管ロッド2の先端においてボーリング孔H内に浸透した地下水を取り込んで、基端側に導水する。パッカー21は、ロッド内送水流路22を介して送水された水により拡張する。パッカー21は、拡張した際に、ボーリング孔Hの孔壁に当接する形状を有している。なお、二重管ロッド2は、ボーリング孔Hの削孔に用いる削孔管5に挿通可能である。すなわち、二重管ロッド2の外径は、削孔管5の内径よりも小さい。
【0011】
図1に示すように、二重管ヘッド3は、二重管ロッド2の基端部に取り付けられる。図3に二重管ヘッド3を示す。図3に示すように、二重管ヘッド3には、ロッド内送水流路22に接続するヘッド内送水流路32と、ロッド内湧水流路23に接続するヘッド内湧水流路33とが設けられている。ヘッド内送水流路32の基端には、供給口34が形成されている。供給口34には、パッカー21に供給する水の送水配管35が接続される。また、ヘッド内送水流路32の先端は、二重管ヘッド3の先端において開口していて、二重管ヘッド3を二重管ロッド2に取り付けた状態では、ロッド内送水流路22に接続される。さらに、ヘッド内送水流路32には、逆止弁31が設けられている。逆止弁31は、ヘッド内送水流路32を介して送水した水の逆流を防止するものであり、ヘッド内送水流路32側への水の流入のみを許容する。
ヘッド内湧水流路33の基端には、排水口36が形成されている。排水口36は、二重管ヘッド3の基端において開口している。排水口36には、圧力計4が取り付けられるとともに、排水配管37が接続される。また、ヘッド内湧水流路33の先端は、二重管ヘッド3の先端において開口していて、二重管ヘッド3を二重管ロッド2に取り付けた状態では、ロッド内湧水流路23に接続される。なお、二重管ヘッド3は、ボーリング孔Hの削孔に用いる削孔管5に挿通可能な外形を有している。
【0012】
圧力計4は、二重管ヘッド3の基端部に設けられていて、ロッド内湧水流路23およびヘッド内湧水流路33により導水されたボーリング孔H先端部の湧水の湧水圧を測定する。本実施形態の圧力計4は、図3に示すように、排水配管37を介して二重管ヘッド3の排水口36に取り付けられている。
【0013】
図面を参照して、湧水圧測定装置1を利用した湧水圧測定方法について説明する。湧水圧測定方法は、例えば、トンネルの切羽から水平ボーリングを行い、ボーリング孔H内の湧水圧を確認することで、切羽前方での地山状況を確認する場合に使用する。図4は、本実施形態の湧水圧測定方法のフローチャートである。本実施形態の湧水圧測定方法は、図4に示すように、削孔工程S1と、パッカー配設工程S2と、二重管ヘッド取付工程S3と、パッカー拡張工程S4と、第一測定工程S5と、削孔管回収工程S6と、ロッド固定工程S7と、第二測定工程S8を備えている。
【0014】
削孔工程S1では、削孔管を利用してボーリング孔Hを削孔する。
図5は、削孔工程S1の概要を示す断面図である。図5に示すように、削孔工程S1は、地山Gを削孔してボーリング孔Hを形成するとともに、当該ボーリング孔Hに削孔管5を配設する工程である。本実施形態の削孔管5の先端には、削孔ビット51が固定されている。削孔ビット51は、削孔管5の先端に固定された環状のビットである。削孔工程S1では、削孔ビット51の内空部にインナービット52を取り付けた状態で削孔を行う。ボーリング孔Hの削孔箇所には、予め口元管53および削孔管用プリベンダー61が設けられている。削孔工程S1では、削孔管用プリベンダー61を挿通させた削孔管5を図示しないボーリングマシンの動力により中心軸を中心に回転させながら打撃することで、削孔ビット51およびインナービット52により地山Gを全断面切削する。本実施形態のボーリング孔Hは、略水平(基端側よりも先端側が高い状態も含む)に形成する。尚、ボーリング孔Hの削孔方向は略水平方向に限定されるものではなく、例えば下向き、上向き、縦向き(鉛直方向)に削孔してもよい。所定の長さ(深さ)のボーリング孔Hを形成したら、インナービット52を回収する。削孔管5の基端は、削孔管用プリベンダー61により保持する(図6参照)。
【0015】
パッカー配設工程S2では、二重管ロッド2を削孔管5に挿通して、ボーリング孔Hの先端部にパッカー21を配設する。図6にパッカー配設工程S2の概要を示す。パッカー配設工程S2では、まず、削孔管5を後退させて、削孔管5の先端とボーリング孔Hの先端面(底)との間に隙間をあける。すなわち、ボーリング孔Hの先端部は、地山Gが露出した状態となる(図6参照)。
次に、二重管ロッド2を延長させながら、削孔管5に挿通させて、パッカー21をボーリング孔Hの先端部に配設する。本実施形態の二重管ロッド2は、図6に示すように、複数のロッド構成材27,27,…を継ぎ足すことにより延長させる。二重管ロッド2は、パッカー21がボーリング孔Hの先端に位置するまで延長させる(図7参照)。
【0016】
二重管ヘッド取付工程S3では、図7に示すように、二重管ロッド2の基端部に二重管ヘッド3を取り付ける。図7は、二重管ヘッド取付工程S3の概要を示す断面図である。二重管ロッド2の基端は、ロッド用プリベンダー62を介して削孔管5の基端に固定する。
【0017】
パッカー拡張工程S4では、パッカー21をボーリング孔Hの先端部で拡張させる。図8にパッカー拡張工程S4を示す。パッカー21の拡張は、パッカー21へ水を送水することにより行う。パッカー拡張工程S4では、図8に示すように、二重管ヘッド3の供給口34に接続した送水配管35から水を供給する。送水配管35から供給された水は、ヘッド内送水流路32およびロッド内送水流路22を通じてパッカー21内へ圧入される。パッカー21は、圧入された水により拡張して、ボーリング孔Hの内壁に密着する。ヘッド内送水流路32には、逆止弁31が設けられているため、パッカー21に送水された水が逆流することが防止され、送水を停止してもパッカー圧(パッカー21の拡張)が維持される。
【0018】
第一測定工程S5では、図9に示すように、パッカー21よりも奥(ボーリング孔Hの先端部)からロッド内湧水流路23およびヘッド内湧水流路33により導水された湧水の湧水圧を圧力計4により測定する。図9は第一測定工程を示す断面図である。湧水圧の測定は、排水配管37を閉塞した状態で、排水口36の設けられた圧力計4により測定する。パッカー21がボーリング孔Hの内壁に密着しており、ボーリング孔Hの先端部に発生した湧水Wがパッカー21の後方に流出することが防止されているため、二重管ロッド2へと湧水Wが誘導される。二重管ロッド2の先端から取り込まれた湧水Wは、ロッド内湧水流路23を通って、ヘッド内湧水流路33に取り込まれて、排水口36へと誘導される(図3参照)。排水口36では、圧力計4により、湧水圧の測定を行う。排水配管37に設けたバルブを開放し、湧水量を測定する。
【0019】
削孔管回収工程S6では、ボーリング孔Hから削孔管を回収する。図10に削孔管回収工程S5の概要を示す。削孔管回収工程S6では、まず、ボーリング孔Hの口元付属物(削孔管用プリベンダー61,ロッド用プリベンダー62等)を撤去する。次に、図10に示すように、ボーリング孔Hから削孔管5および削孔ビット51を抜き出す(回収する)。このとき、二重管ヘッド3は、ボーリング孔Hに残置された二重管ロッド2の基端部に取り付けられたままである。削孔管5およびロッド用プリベンダー62は、二重管ロッド2および二重管ヘッド3を挿通可能な内径を有しているため、二重管ロッド2および二重管3をボーリング孔Hに残置させたままボーリング孔Hから抜き出すことができる。
【0020】
ロッド固定工程S7は、ボーリング孔Hの孔口において、二重管ロッド2を保持する工程である。図11にロッド固定工程S6を示す。図11に示すように、本実施形態では、ボーリング孔Hの孔口に設置したプリベンダー6により二重管ロッド2の基端部を固定する。プリベンダー6は、ボーリング孔Hの口元管53に固定する。なお、本実施形態のプリベンダー6は、中央にロッド貫通孔を有する中空部材により構成されていて、内部に水を圧入することで、ロッド貫通孔が縮径されて、ロッド貫通孔を貫通した二重管ロッド2と密着して止水する。プリベンダー6には、ボーリング孔H内の水圧を測定可能な第二圧力計41が設けられている。
【0021】
第二測定工程S8では、ロッド内湧水流路23およびヘッド内湧水流路33により導水されたボーリング孔Hの先端部の湧水の湧水圧を圧力計4により測定する。図12は、第二測定工程S7の概要を示す断面図である。図12に示すように、測定工程S8では、ボーリング孔H内に流入する湧水Wを二重管ロッド2の先端から回収して、二重管ヘッド3に設置された圧力計4により湧水Wの圧力を測定する。パッカー21がボーリング孔Hの内壁に密着しており、ボーリング孔Hの先端部に発生した湧水Wがパッカー21の後方に流出することが防止されているため、二重管ロッド2へと湧水Wが誘導される。二重管ロッド2の先端から取り込まれた湧水Wは、ロッド内湧水流路23を通って、ヘッド内湧水流路33に取り込まれて、排水口36へと誘導される(図3参照)。排水口36では、圧力計4により、湧水圧の測定を行う。排水配管37に設けたバルブを開放し、湧水量を測定する。
また、本実施形態では、プリベンダー6に設けられた第二圧力計41を利用してパッカー21よりも基端側(孔口側)におけるボーリング孔H内の水圧を測定する。パッカー21よりも基端側(孔口側)におけるボーリング孔H内の水圧の変化を確認することで、パッカー21による止水性の変化(パッカー21の縮径)を確認できる。パッカー圧の低下が確認された場合には、パッカー21に水を圧入する。
【0022】
以上、本実施形態の湧水圧測定装置1およびこの湧水圧測定装置1を利用した湧水圧測定方法によれば、二重管ヘッド3が、削孔管5およびロッド用プリベンダー62に挿通可能な形状であるため、湧水圧測定装置1をボーリング孔Hに設置した状態で、削孔管5およびロッド用プリベンダーを回収することができる。そのため、湧水圧測定装置1を利用して、長期的に湧水圧測定を行う場合であっても、削孔管5等の損料を支払う必要がなく経済的である。
また、長期的なモニタリングを行う場合において、削孔管5は湧水圧測定装置1の設置後に回収するため、モニタリング終了後にボーリングマシンを再度設置して削孔管5を回収する手間を要しない。すなわち、長期的なモニタリングを実施する場合であっても、複数回にわたってボーリングマシンを設置する必要がない。
二重管ヘッド3が逆止弁31を有しているため、送水を停止しても、パッカー圧が維持される。なお、湧水圧測定装置1を回収する際は、二重管ヘッド3を二重管ロッド2から取り外すことでパッカー21を収縮させて、二重管ロッド2を引き抜けばよい。
プリベンダー6に設けられた第二圧力計41によりボーリング孔H内の水圧を測定することで、パッカー圧の変化を確認できるため、パッカー21が正常に機能しているか否かを確認できる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、湧水圧測定装置1を利用して、長期的に湧水圧のモニタリングを行う場合について説明したが、湧水圧測定装置1は、短期的に湧水圧を測定する際に使用してもよい。
第二圧力計41によるボーリング孔H内の水圧の測定は、必要に応じて行えばよい。
前記実施形態では、二重管ロッド2に環状のパッカー21が周設されている場合について説明したが、二重管ロッド2の先端に球状あるいは円筒状のパッカーを取り付けてもよい。
第一測定工程S5は省略してもよい。また、長期的なモニタリングを行わない場合には、第二測定工程S7を省略する。
前記実施形態では、削孔ビット51にインナービット52を取り付けた状態で全断面切削する場合について説明したが、ボーリングコアを採取する場合には、インナービット52を取り外した状態で削孔を行ってもよい。このとき、削孔ビット51には、インナービット52に代えてコアバレルを取り付けるのが望ましい。
【符号の説明】
【0024】
1 湧水圧測定装置
2 二重管ロッド
21 パッカー
22 ロッド内送水流路
23 ロッド内湧水流路
3 二重管ヘッド
31 逆止弁
32 ヘッド内送水流路
33 ヘッド内湧水流路
4 圧力計
41 第二圧力計
5 削孔管
6 プリベンダー
H ボーリング孔
G 地山
湧水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12