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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049098
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ビードコア製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/48 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B29D30/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155361
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 亮佑
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP06
4F215AQ01
4F215VA11
4F215VD13
4F215VP09
4F215VQ01
4F501TA11
4F501TC12
4F501TE28
4F501TL09
4F501TQ01
4F501TR06
4F501TS01
4F501TV01
(57)【要約】
【課題】内周長の調整を容易かつ迅速に行うことができるビードコア製造装置を提供する。
【解決手段】ビードコア製造装置1は、複数のセグメント21が、径方向の位置を調整可能とされていることにより、内周長が異なるビードコアを形成可能なフォーマー2と、セグメント21の径方向の位置を調整するための調整具3と、セグメント21の位置に関する位置データーを検出するためのセンサー4と、位置データーと内周長とを関連付けた関数を記憶する記憶部5と、ユーザーから入力された内周長と、関数とに基づいて、入力された内周長のビードコアが形成されるようにセグメント21の径方向の位置を決定する演算部6とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのビードコアを製造するためのビードコア製造装置であって、
ビードワイヤーを巻付けて前記ビードコアを形成するためのフォーマーであって、周方向に分割された複数のセグメントを含み、前記複数のセグメントに形成された周溝により、前記ビードワイヤーを環状に巻き付けるための周方向溝が形成され、かつ、前記複数のセグメントが、それぞれ、径方向の位置を内外に調整可能とされていることにより、内周長が異なるビードコアを前記周方向溝上に形成可能な前記フォーマーと、
前記複数のセグメントを径方向に移動させて前記位置を調整するための調整具と、
前記複数のセグメントの前記径方向の位置に関する位置データーを検出するためのセンサーと、
前記位置データーと前記内周長とを関連付けた関数を記憶する記憶部と、
ユーザーから入力された前記内周長と、前記関数とに基づいて、入力された前記内周長のビードコアが形成されるように前記複数のセグメントの前記径方向の位置を決定する演算部とを含む、
ビードコア製造装置。
【請求項2】
前記調整具は、前記演算部によって決定された前記位置になるように、前記複数のセグメントを径方向の位置を調整する、請求項1記載のビードコア製造装置。
【請求項3】
前記位置データーは、前記周溝の底面の径方向の位置の実測値である、請求項1に記載のビードコア製造装置。
【請求項4】
前記関数は、
前記複数のセグメントを第1位置となるように調整したときの前記周方向溝の溝底の前記径方向の位置の実測値及び前記ビードコアの前記内周長の実測値と、
前記複数のセグメントを前記第1位置とは異なる第2位置となるように調整したときの前記周方向溝の溝底の前記径方向の位置の実測値及び前記内周長の実測値とに基づいて定められる、請求項3に記載のビードコア製造装置。
【請求項5】
前記第1位置は前記周方向溝の溝底径が最小となる位置であり、前記第2位置は前記溝底径が最大となる位置である、請求項4に記載のビードコア製造装置。
【請求項6】
前記関数は、前記複数のセグメントを前記第1位置及び前記第2位置とは異なる第3位置となるように調整したときの前記周方向溝の溝底の前記径方向の位置の実測値及び前記内周長の実測値とに基づいて定められる、請求項4に記載のビードコア製造装置。
【請求項7】
前記センサーは、光軸が前記周溝に向けて配されたレーザー変位センサーである、請求項3に記載のビードコア製造装置。
【請求項8】
前記フォーマーは、前記タイヤのリム径に応じて交換可能である、請求項1に記載のビードコア製造装置。
【請求項9】
前記関数は、前記フォーマー毎に定められる、請求項8に記載のビードコア製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのビードコアを製造するためのビードコア製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々のビードコア製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-74883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された装置では、周方向に分割された複数のセグメントを含むフォーマーを用いてビードコアが製造される。各セグメントを径方向に移動させることにより、ビードコアの内周長が調整される。
【0005】
しかしながら、各セグメントの移動に伴いフォーマーの外周は真円から とは限らないため、フォーマーの外周とビードコア製造装置から取り外されたビードコアの内周とは一致しない。このため、上記内周長の調整には熟練が要求され、複数回にわたる試行錯誤を必要とする場合もある。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、内周長の調整を容易かつ迅速に行うことができるビードコア製造装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤのビードコアを製造するためのビードコア製造装置であって、
ビードワイヤーを巻付けて前記ビードコアを形成するためのフォーマーであって、周方向に分割された複数のセグメントを含み、前記複数のセグメントに形成された周溝により、前記ビードワイヤーを環状に巻きつけるための周方向溝が形成され、かつ、前記複数のセグメントが、それぞれ、径方向の位置を内外に調整可能とされていることにより、内周長が異なるビードコアを前記周方向溝上に形成可能な前記フォーマーと、
前記複数のセグメントを径方向に移動させて前記位置を調整するための調整具と、
前記複数のセグメントの前記径方向の位置に関する位置データーを検出するためのセンサーと、
前記位置データーと前記内周長とを関連付けた関数を記憶する記憶部と、
ユーザーから入力された前記内周長と、前記関数とに基づいて、入力された前記内周長のビードコアが形成されるように前記複数のセグメントの前記径方向の位置を決定する演算部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明のビードコア製造装置では、ユーザーから入力された前記内周長と、前記記憶部に記憶された前記関数とに基づいて、前記演算部が前記複数のセグメントの前記径方向の位置を決定する。これにより、複数回にわたる試行錯誤を必要とすることなく、前記内周長の調整を容易かつ迅速に行うことが可能となり、ビードコアの生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のビードコア製造装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のフォーマーを示す斜視図である。
図3図1の調整具の一形態を示す正面図である。
図4図1の記憶部に記憶されている関数の一例を示す図である。
図5図4の関数の変形例である関数を示す展開図である。
図6図1のセンサーがセグメントの位置データーを検出する要領を示す図である。
図7図1のセンサーがセグメントの別の位置データーを検出する要領を示す図である。
図8】レーザー変位センサーを示す図である。
図9】タイヤのリム径に応じて製造されたセグメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のビードコア製造装置1のブロック図である。ビードコア製造装置1は、タイヤのビードコアを製造するための装置である。ビードコアは、タイヤのビード部に埋設される。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態のビードコア製造装置1は、フォーマー2と、調整具3と、センサー4と、記憶部5と、演算部6と、入出力部7とを含んでいる。
【0012】
図2は、フォーマー2を示している。フォーマー2は、ビードワイヤーWを巻き付けてビードコアを形成するために、円柱状に形成されている。
【0013】
フォーマー2は、周方向に分割された複数のセグメント21を含んでいる。各セグメント21には周溝22が形成されている。各周溝22がフォーマー2の周方向に配列されることにより、ビードワイヤーWを環状に巻き付けるための周方向溝23が断続的に形成される。フォーマー2は回転軸20を有する。ビードワイヤーWを巻き付ける際に、フォーマー2は回転軸20の廻りに回転される。周方向溝23内でビードワイヤーWが、多列多段に巻き付けられることにより、ビードコアが形成される。ビードワイヤーWは、例えば、断面が4角形状または6角形状となるように、巻き付けられる。このため、周溝22は、ビードワイヤーWの巻付け形状に対応する断面となるように形成されている。図1では、断面が4角形状のビードコアを製造するための周溝22が示されている。
【0014】
フォーマー2は、タイヤのリム径に応じて準備され、交換可能に構成されている。リム径が異なるタイヤには、異なるフォーマー2によって製造されたビードコアが用いられる。
【0015】
タイヤのビードコアの廻りには、カーカスプライ及びその他の補強材が巻き回される。補強材の構成によっては、同一リム径のタイヤであっても異なる内周長のビードコアが適用される。本実施形態のフォーマー2は、異なる内周長のビードコアを製造できるように構成されている。
【0016】
より具体的には、複数のセグメント21は、それぞれ、径方向の位置を内外に調整可能とされている。各セグメント21の位置調整は、ビードワイヤーWを巻き付ける前に実行される。各セグメント21が径方向に移動することにより、内周長が異なるビードコアを周方向溝23上に形成することが可能となる。
【0017】
調整具3は、複数のセグメント21を径方向に移動させて位置を調整する。調整具3によって、フォーマー2の回転軸20に対する各セグメント21の径方向の位置は、同じとなるように調整される。
【0018】
センサー4は、複数のセグメント21の径方向の位置に関する位置データーを検出する。位置データーは、セグメント21内の任意の測定箇所の径方向の位置である。
【0019】
記憶部5は、位置データーと内周長とを関連付けた関数を記憶する。記憶部5には、不揮発性メモリ、ハードディスクの他、種々の記憶媒体が適用される。
【0020】
記憶部5が記憶する上記関数の変数として用いられる内周長は、ビードコアの内周長そのものの他、ビードコアの内周長に関するデーターであってもよい。ビードコアの内周長に関するデーターの一例としては、例えば、特開2012-150013号公報に示される移動距離Lが挙げられる。記憶部5が記憶する上記関数は、後述する演算部6によって活用される。
【0021】
演算部6は、入力された内周長のビードコアが形成されるように複数のセグメント21の径方向の位置を決定する。演算部6には、CPU(Central Processing Unit)等の各種のプロセッサが適用される。
【0022】
入出力部7は、ビードコア製造装置1の動作に関する各種の情報を入力または出力するために用いられる。入出力部7には、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)とタッチセンサーとを組み合わせたタッチパネル等が適用される。
【0023】
ビードコア製造装置1のユーザーは、入出力部7を用いて製造したいビードコアの内周長(目標値)を入力する。入力された内周長は、記憶部5に記憶され、演算部6によって活用される。また、記憶部5が記憶する上記関数は、入出力部7を介してビードコア製造装置1に入力されていてもよい。
【0024】
上記構成のビードコア製造装置1において、演算部6は、ユーザーから入力された内周長と、記憶部5に記憶された関数とに基づいて、入力された内周長のビードコアが形成されるように複数のセグメント21の径方向の位置を決定する。これにより、複数回にわたる試行錯誤を必要とすることなく、複数のセグメント21の適正な径方向の位置が取得される。
【0025】
演算部6が決定した複数のセグメント21の径方向の位置に関するデーターは、例えば、入出力部7に表示される。ユーザーは入出力部7に表示されたデーターを参照し、調整具3を操作して複数のセグメント21の径方向の位置を調整する。これにより、複数回にわたる試行錯誤を必要とすることなく、内周長の調整を容易かつ迅速に行うことが可能となり、ビードコアの生産性が向上する。
【0026】
調整具3は、演算部6によって決定された位置になるように、複数のセグメント21を径方向の位置を調整するために用いられる。
【0027】
図3は、調整具3の一形態を示している。調整具3は、複数のセグメント21を駆動するために、フォーマー2の回転軸20の方向に移動する主軸31と、主軸31の軸方向の動きを径方向に変換して複数のセグメント21を径方向の外側または内側に駆動する変換機構32と、主軸31の軸方向の外側への動きを規制するストッパー33とを含んでいる。
【0028】
主軸31は、原動機によって駆動されてフォーマー2の回転軸20の方向に移動する。 主軸31は、フォーマー2を回転駆動可能に構成されていてもよい。変換機構32は、主軸31と複数のセグメント21とを連結し、主軸31の動きを複数のセグメント21に伝達する。変換機構32には、例えば、リンク、カム等の各種の機械機構が適用される。ストッパー33は、主軸31に当接可能に配されている。軸方向に移動する主軸31がストッパー33に当接することにより主軸31が停止し、複数のセグメント21の径方向の移動が規制される。
【0029】
複数のセグメント21の径方向の位置の調整は、主軸31の軸方向の移動量、すなわちストッパー33の軸方向の位置を調整することによりなされる。従って、演算部6は、ユーザーから入力された内周長のビードコアを製造するためのストッパー33の軸方向の位置を決定する。
【0030】
ストッパー33の軸方向の位置は、ユーザーによって調整される。ユーザーは、演算部6が決定した複数のセグメント21の径方向の位置に関するデーターに基づいて、ストッパー33の位置を調整する。演算部6によってストッパー33が制御されるように構成されていてもよい。この場合、演算部6は、複数のセグメント21の径方向の位置に関するデーターに基づいてストッパー33の位置を調整する。
【0031】
ビードワイヤーWは、複数のセグメント21が径方向の外側に移動した状態で、周方向溝23に巻き付けられる。巻付けが完了したビードワイヤーWは、複数のセグメント21が径方向の内側に移動することにより、フォーマー2から取り外される。
【0032】
図4は、記憶部5に記憶されている関数10の一例を示している。本実施形態の関数10では、複数のセグメント21の位置データーとして、複数のセグメント21を第1位置及び第2位置となるように調整したときの周溝22の溝底の位置の実測値d1及びd2が適用されている。
【0033】
複数のセグメント21の第1位置とは、例えば、周方向溝23が第1溝底径D1となるように調整された複数のセグメント21の径方向の位置である。第2位置とは、例えば、周方向溝23が第1溝底径D1より大きい第2溝底径D2となるように調整された複数のセグメント21の径方向の位置である。
【0034】
周溝22の溝底の位置は、周上の複数箇所で測定される(後述する図6参照)。これにより、各セグメント21の摩耗や偏心が反映された位置データーが得られる。
【0035】
また、内周長には、周方向溝23が第1位置及び第2位置となるように調整されたフォーマー2を用いて製造され、その後、フォーマー2から取り外されて実測されたビードコアの内周長(実測値)L1及びL2が適用される。既に述べたように、内周長は、ビードコアの内周長そのものの他、ビードコアの内周長に関するデーターであってもよい。
【0036】
関数10は、複数のセグメント21が第1位置となるように調整されたフォーマー2で製造されたビードコアの内周長L1と、複数のセグメント21が第2位置となるように調整されたフォーマー2で製造されたビードコアの内周長L2とに基づいて定められる。
【0037】
図4に示されるように、複数のセグメント21が第1位置となるように調整されたフォーマー2での位置データーd1及びそれに対応する内周長L1と、複数のセグメント21が第2位置となるように調整されたフォーマー2での位置データーd2及びそれに対応する内周長L2とによって線形の関数10が得られ、記憶部5に記憶される。そして、演算部6は、線形の関数10を用いて、ユーザーから入力された内周長Lに対応する周方向溝23の溝底径、すなわち、複数のセグメント21の周溝22の溝底の位置dを計算する。従って、簡素な計算で、複数のセグメント21の周溝22の溝底の位置dを計算することが可能となる。
【0038】
上記主軸31の移動範囲は有限であるので、複数のセグメント21の径方向の移動範囲も有限である。このため、周方向溝23の溝底径も、最小から最大の範囲で調整可能である。
【0039】
本ビードコア製造装置1では、第1溝底径D1は周方向溝23の最小の溝底径であり、第2溝底径D2は周方向溝の最大の溝底径である、のが望ましい。これにより、適正な関数10が得られ、ユーザーから入力された内周長Lに対応する複数のセグメント21の周溝22の溝底の位置を正確に計算することが可能となる。
【0040】
図5は、記憶部5に記憶されている関数10の変形例である関数10Aを示している。関数10Aは、第1位置、第2位置及び第3位置となるように調整したときの周溝22の溝底の位置の実測値d1、d2及びd3並びに内周長の実測値L1、L2及びL3とに基づいて定められる。
【0041】
複数のセグメント21の第3位置とは、例えば、周方向溝23が第3溝底径D3となるように調整された複数のセグメント21の径方向の位置である。ここで、第3溝底径D3は、第1溝底径D1よりも大きく第2溝底径D2よりも小さい周方向溝23の溝底径である。
【0042】
関数10Aは、線形であってもよく非線形であってもよい。複数のセグメント21の周溝22の溝底の位置を計算に関数10Aを用いることにより、ユーザーから入力された内周長Lに対応する複数のセグメント21の周溝22の溝底の位置をより一層正確に計算することが可能となる。
【0043】
図6、7は、関数10および関数10Aを定義するにあたって、センサー4がセグメント21の位置データーを検出する要領を示している。センサー4は、フォーマー2の周方向溝23の底面、すなわち、複数のセグメント21の周溝22の溝底の径方向の位置を複数の測定箇所24(例えば、同図では24箇所)にわたって検出する。なお、測定箇所24は、等間隔に配置されてなくてもよい。
【0044】
図6に示されるように、まず、位置データーの検出にあたっては、ストッパー33の軸方向の位置が調整され、複数のセグメント21の径方向の位置が第1溝底径D1に設定される。そして、フォーマー2を回転させることにより、周溝22の溝底が複数箇所にわたってセンサー4に順次向けられる。これにより、複数の位置データーが検出される。複数の位置データーを平均化することにより、第1溝底径D1に対応する一つの位置データーd1が得られる。
【0045】
その後、図7に示されるように、ストッパー33の軸方向の位置を変更し(図3参照)、複数のセグメント21の径方向の位置を第2溝底径D2に設定し、上記の測定を繰り返すことにより、第2溝底径D2に対応する別の位置データーd2が得られる。第3溝底径D3に対応する位置データーd3も同様に測定される。
【0046】
複数のセグメント21の位置データーには、測定箇所24の径方向の位置の実測値及び隣り合う測定箇所24間の偏角θから算出された周溝22の溝底周長が適用されてもよい。
【0047】
本実施形態のビードコア製造装置1において、センサー4として、レーザー変位センサー41が適用されるのが望ましい。
【0048】
図8は、レーザー変位センサー41を示している。レーザー変位センサー41は、測定対象物にレーザー光LSを照射して、その反射光を検出することにより、測定対象物の形状及び変位を検出する。
【0049】
レーザー変位センサー41は、その光軸42が周方向溝23を介してフォーマー2の回転軸20に向くように配されている。レーザー変位センサー41は、測定基準位置43が回転軸20から距離Zを隔てるように配されている。レーザー変位センサー41は、回転するフォーマー2において周溝22の溝底の変位、すなわち、測定基準位置43から周溝22の溝底までの距離Yを測定する。上記距離Zから上記距離Yを減じることにより周溝22の溝底の径方向の位置Xが測定される。
【0050】
センサー4として、レーザー変位センサー41が適用されることにより、複数のセグメント21の位置データーを迅速かつ正確に検出可能である。
【0051】
図9は、タイヤのリム径に応じて製造されたセグメント21A、21B及び21Cを示している。例えば、セグメント21Aは、14インチ径のタイヤに埋設されるビードコアの製造に適用され、セグメント21Bは、16インチ径のタイヤに埋設されるビードコアの製造に適用され、セグメント21Cは、18インチ径のタイヤに埋設されるビードコアの製造に適用される。
【0052】
セグメント21A、21Bまたは21Cによって構成されるフォーマー2は、タイヤのリム径に応じて準備され、交換可能である。これにより、複数のサイズのリム径のビードコアを容易に製造することが可能となる。
【0053】
関数10、10Aは、タイヤのリム径に応じて準備されたフォーマー2毎に定められる、のが望ましい。例えば、関数10の傾き及び切片は、フォーマー2毎に定められるのが望ましい。これにより、タイヤのリム径に応じて最適化された関数10等を用いて、複数のセグメント21の周溝22の溝底の位置をより一層正確に計算することが可能となる。
【0054】
以上、本発明のビードコア製造装置1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例0055】
図4、5に示される関数を用いることなく作業者の勘と経験により、所望の内周長のビードコアを形成するための複数のセグメントの位置調整に要した時間は、約7.5分であった。
【0056】
一方、図4、5に示される関数を用いて、所望の内周長のビードコアを形成するための複数のセグメントの位置調整に要した時間は、約3分であった。
【0057】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0058】
[本発明1]
タイヤのビードコアを製造するためのビードコア製造装置であって、
ビードワイヤーを巻付けて前記ビードコアを形成するためのフォーマーであって、周方向に分割された複数のセグメントを含み、前記複数のセグメントに形成された周溝により、前記ビードワイヤーを環状に巻き付けるための周方向溝が形成され、かつ、前記複数のセグメントが、それぞれ、径方向の位置を内外に調整可能とされていることにより、内周長が異なるビードコアを前記周方向溝上に形成可能な前記フォーマーと、
前記複数のセグメントを径方向に移動させて前記位置を調整するための調整具と、
前記複数のセグメントの前記径方向の位置に関する位置データーを検出するためのセンサーと、
前記位置データーと前記内周長とを関連付けた関数を記憶する記憶部と、
ユーザーから入力された前記内周長と、前記関数とに基づいて、入力された前記内周長のビードコアが形成されるように前記複数のセグメントの前記径方向の位置を決定する演算部とを含む、
ビードコア製造装置。
[本発明2]
前記調整具は、前記演算部によって決定された前記位置になるように、前記複数のセグメントを径方向の位置を調整する、本発明1記載のビードコア製造装置。
[本発明3]
前記位置データーは、前記周溝の底面の径方向の位置の実測値である、本発明1に記載のビードコア製造装置。
[本発明4]
前記関数は、
前記複数のセグメントを第1位置となるように調整したときの前記周方向溝の溝底の前記径方向の位置の実測値及び前記ビードコアの前記内周長の実測値と、
前記複数のセグメントを前記第1位置とは異なる第2位置となるように調整したときの前記周方向溝の溝底の前記径方向の位置の実測値及び前記内周長の実測値とに基づいて定められる、本発明3に記載のビードコア製造装置。
[本発明5]
前記第1位置は前記周方向溝の溝底径が最小となる位置であり、前記第2位置は前記溝底径が最大となる位置である、本発明4に記載のビードコア製造装置。
[本発明6]
前記関数は、前記複数のセグメントを前記第1位置及び前記第2位置とは異なる第3位置となるように調整したときの前記周方向溝の溝底の前記径方向の位置の実測値及び前記内周長の実測値とに基づいて定められる、本発明4に記載のビードコア製造装置。
[本発明7]
前記センサーは、光軸が前記周溝に向けて配されたレーザー変位センサーである、本発明3に記載のビードコア製造装置。
[本発明8]
前記フォーマーは、前記タイヤのリム径に応じて交換可能である、本発明1に記載のビードコア製造装置。
[本発明9]
前記関数は、前記フォーマー毎に定められる、本発明8に記載のビードコア製造装置。
【符号の説明】
【0059】
1 :ビードコア製造装置
2 :フォーマー
3 :調整具
4 :センサー
5 :記憶部
6 :演算部
10 :関数
10A :関数
21 :セグメント
21A :セグメント
21B :セグメント
21C :セグメント
22 :周溝
23 :周方向溝
41 :レーザー変位センサー
42 :光軸
L :内周長
L1 :内周長
L1 :実測値
L2 :実測値
L2 :内周長
d1 :位置データー
d1 :実測値
d2 :位置データー
d2 :実測値
d3 :位置データー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9