(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049099
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240402BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240402BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 300B
B60C11/12 A
B60C11/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155362
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 高士
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC33
3D131BC34
3D131EB24V
3D131EB24W
3D131EB24X
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB35V
3D131EB35W
3D131EB38V
3D131EB38W
3D131EB43V
3D131EB43W
3D131EB44V
3D131EB44W
3D131EB81V
3D131EB81W
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB97V
3D131EB97W
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】 ライフ性能と耐偏摩耗性能とを向上することができる。
【解決手段】 ジグザグ状に延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3のジグザグの頂部6の間を繋ぐ複数の横溝4と、周方向溝3と横溝4とで形成される複数の六角形状ブロック5とを含むトレッド部2を有する重荷重用タイヤ1である。周方向溝3の溝深さD1は、21mm以上である。六角形状ブロック5のそれぞれには、六角形状ブロック5を横断する3次元サイプ7が設けられている。横溝4は、横溝4の溝底4sが隆起することでタイヤ周方向に隣接する六角形状ブロック5を連結する隆起部9を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する重荷重用タイヤであって、
前記トレッド部は、ジグザグの頂部を形成するようにタイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向に隣接する前記周方向溝の前記ジグザグの頂部の間を繋ぐ複数の横溝と、タイヤ軸方向に隣接する前記周方向溝と前記複数の横溝とで形成される複数の六角形状ブロックとを含み、
前記複数の周方向溝の溝深さは、21mm以上であり、
前記複数の六角形状ブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向及びタイヤ半径方向にジグザグ状に延び、かつ、前記六角形状ブロックを横断する3次元サイプが設けられ、
前記複数の横溝のそれぞれは、前記横溝の溝底が隆起することでタイヤ周方向に隣接する前記六角形状ブロックを連結する隆起部を含む、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記複数の横溝のそれぞれにおいて、前記隆起部のタイヤ軸方向の長さは、前記横溝のタイヤ軸方向の長さよりも小さい、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記複数の横溝のそれぞれにおいて、前記隆起部のタイヤ軸方向の長さは、前記横溝のタイヤ軸方向の長さの0.4~0.6倍である、請求項2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記複数の横溝のそれぞれにおいて、前記隆起部での溝深さは、前記横溝が繋がる前記周方向溝の溝深さの0.5~0.8倍である、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記3次元サイプの深さは、前記3次元サイプが繋がる前記周方向溝の溝深さの0.5~0.8倍である、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記複数の横溝のそれぞれは、一対の溝壁と、前記一対の溝壁と前記六角形状ブロックの踏面とが交差する位置の一対の溝縁とを含み、
前記一対の溝壁のそれぞれは、前記一対の溝縁を通る前記踏面の法線に対して3~8度の角度で傾斜する、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記複数の横溝のそれぞれは、7~9mmの溝幅を有する、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項8】
タイヤ周方向で隣接する前記横溝と前記六角形状ブロックとのペアにおいて、前記横溝に形成された前記隆起部での溝深さは、前記六角形状ブロックに形成された前記3次元サイプの深さよりも小さい、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項9】
前記複数の周方向溝は、一対のクラウン周方向溝と、前記一対のクラウン周方向溝よりもタイヤ軸方向外側に配される一対のショルダー周方向溝とを含み、
前記複数の横溝は、前記一対のクラウン周方向溝を繋ぐ複数のクラウン横溝と、タイヤ軸方向で隣接する前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝との間を繋ぐ複数のミドル横溝とを含み、
前記隆起部は、前記クラウン横溝及び前記ミドル横溝にそれぞれ設けられたクラウン隆起部及びミドル隆起部を含み、
前記クラウン隆起部での溝深さは、前記ミドル隆起部での溝深さと同じである、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項10】
前記クラウン横溝の最大溝深さは、前記ミドル横溝の最大溝深さと同じである、請求項9に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項11】
前記六角形状ブロックは、前記一対のクラウン周方向溝の間に形成される複数のクラウンブロックと、タイヤ軸方向で隣接する前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝との間に形成される複数のミドルブロックとを含み、
前記3次元サイプは、前記複数のクラウンブロックにそれぞれ配されたクラウンサイプと、前記複数のミドルブロックにそれぞれ配されたミドルサイプとを含み、
前記ミドルサイプの最大の深さは、前記クラウンサイプの最大の深さよりも大きい、請求項9又は10に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に六角形ブロックが設けられたタイヤが記載されている。前記六角形ブロックには、3次元サイプが配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、重荷重用タイヤにおいて、例えば、60万~70万kmもの走行が可能なロングライフなタイヤが求められており、このようなタイヤでは、トレッド部に配された周方向溝の溝深さを大きくする必要がある。しかしながら、溝深さが大きなタイヤは、トレッド部のパターン剛性が小さくなり、耐偏摩耗性能が悪化し易いという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ライフ性能と耐偏摩耗性能とを向上することができる重荷重用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する重荷重用タイヤであって、前記トレッド部は、ジグザグの頂部を形成するようにタイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向に隣接する前記周方向溝の前記ジグザグの頂部の間を繋ぐ複数の横溝と、タイヤ軸方向に隣接する前記周方向溝と前記複数の横溝とで形成される複数の六角形状ブロックとを含み、前記複数の周方向溝の溝深さは、21mm以上であり、前記複数の六角形状ブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向及びタイヤ半径方向にジグザグ状に延び、かつ、前記六角形状ブロックを横断する3次元サイプが設けられ、前記複数の横溝のそれぞれは、前記横溝の溝底が隆起することでタイヤ周方向に隣接する前記六角形状ブロックを連結する隆起部を含む、重荷重用タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の重荷重用タイヤは、上記の構成を採用することで、ライフ性能と耐偏摩耗性能とを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の重荷重用タイヤの一実施形態を示すトレッド部の拡大平面図である。
【
図2】(A)は、
図1のA-A線断面図、(B)は、
図6のD-D線断面図である。
【
図3】3次元サイプを概念的に説明するための斜視図である。
【
図7】(A)は、
図6のE-E線断面図、(B)は、
図6のF-F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の重荷重用タイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある)1のトレッド部2の拡大平面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、60万~70万kmもの走行が可能なロングライフタイヤとして好適に用いられる。
【0010】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、複数の周方向溝3と複数の横溝4と複数の六角形状ブロック5とを含んでいる。周方向溝3は、ジグザグの頂部6を形成するようにタイヤ周方向にジグザグ状に延びている。周方向溝3は、本実施形態では、タイヤ周方向に連続して延びている。ジグザグの頂部6とは、本実施形態では、タイヤ周方向に対する向きが異なる折れ曲がり部をいう。横溝4は、タイヤ軸方向に隣接する周方向溝3のジグザグの頂部6の間を繋いでいる。横溝4は、例えば、直線状に延びている。六角形状ブロック5は、タイヤ軸方向隣接する周方向溝3、3と複数の横溝4とで形成されている。六角形状ブロック5は、本実施形態では、タイヤ周方向の中間位置5cのブロック幅が、タイヤ周方向の両端5e、5e位置でのブロック幅よりも大きい樽形状で形成されている。
【0011】
図2(A)は、
図1のA-A線断面図であり、周方向溝3の横断面図である。
図2(A)に示されるように、複数の周方向溝3の溝深さD1は、21mm以上である。このような周方向溝3は、高いライフ性能を発揮する。ライフ性能と耐偏摩耗性能とをバランス良く高めるために、周方向溝3の溝深さD1は、22mm以上が望ましく、26mm以下が望ましい。
【0012】
図1に示されるように、六角形状ブロック5のそれぞれには、タイヤ軸方向及びタイヤ半径方向にジグザグ状に延び、かつ、六角形状ブロック5を横断する3次元サイプ7が設けられている。3次元サイプ7は、タイヤの接地時、そのサイプの壁面7a(
図3に示す)同士が相互に噛み合い、六角形状ブロック5の見かけの剛性を高く維持し、すべりを抑制するので、耐偏摩耗性能を向上する。また、3次元サイプ7は、六角形状ブロック5の見かけの剛性を高めるので、ライフ性能を向上する。3次元サイプ7は、本実施形態では、六角形状ブロック5のタイヤ周方向の中間位置5cに配されている。3次元サイプ7は、例えば、各周方向溝3のジグザグの頂部6間を延びている。
【0013】
図3は、3次元サイプ7を概念的に説明するための斜視図である。3次元サイプ7は、本実施形態では、タイヤ半径方向に沿ってサイプ長さ方向f及びサイプ幅方向wにジグザグ状に延びており、その壁面7aが、平行四辺形状の区画7tに分割された、いわゆる三浦折り状に形成されている。3次元サイプ7の壁面7aは、例えば、長方形状の区画に分割された態様でも良い(図示省略)。本明細書では、3次元サイプ7を含むサイプは、幅が1.5mm以下の切込み状の凹み部をいう。また、周方向溝3や横溝4を含む溝は、溝幅が1.5mmを超える溝状の凹み部をいう。
【0014】
図4は、
図1のB-B線断面図であり、横溝4の縦断面図である。
図1及び
図4に示されるように、複数の横溝4のそれぞれは、横溝4の溝底4sが隆起することでタイヤ周方向に隣接する六角形状ブロック5を連結する隆起部9を含んでいる。このような隆起部9は、六角形状ブロック5の接地時のすべりをさらに抑制する。したがって、本実施形態のタイヤ1は、ライフ性能と耐偏摩耗性能とを向上する。
【0015】
隆起部9は、本実施形態では、横溝4のタイヤ軸方向の中間位置に配されている。隆起部9は、横溝4のタイヤ軸方向の両端4e、4e(ジグザグの頂部6)には繋がっていない。換言すると、横溝4は、本実施形態では、隆起部9と、隆起部9よりも溝深さが大きく、かつ、隆起部9の両側に配される深底部10、10とで形成されている。深底部10は、ライフ性能の向上に役立つ。
【0016】
隆起部9の溝深さD3は、深底部10の溝深さD4の0.5倍以上が望ましく、0.55倍以上がさらに望ましく、0.7倍以下が望ましく、0.65倍以下がさらに望ましい。隆起部9の溝深さD3が深底部10の溝深さD4の0.5倍以上であるので、横溝4に求められる基本的な性能であるウェット性能が維持される。隆起部9の溝深さD3が深底部10の溝深さD4の0.7倍以下であるので、六角形状ブロック5の接地時のすべりが効果的に抑制される。
【0017】
複数の横溝4のそれぞれにおいて、隆起部9のタイヤ軸方向の長さLbは、横溝4のタイヤ軸方向の長さLaよりも小さいのが望ましい。これにより、横溝4の深底部10が形成されて、ライフ性能の向上が図られる。また、横溝4の溝容積が確保されて、ウェット性能が維持される。他方、隆起部9の長さLbが横溝4の長さLaよりも過度に小さいと、六角形状ブロック5の接地時のすべりを抑制できないおそれがある。このような観点より、隆起部9の長さLbは、横溝4の長さLaの0.4倍以上がさらに望ましく、0.45倍以上が、一層望ましく、0.6倍以下がさらに望ましく、0.55倍以下が、一層望ましい。
【0018】
また、複数の横溝4のそれぞれにおいて、隆起部9での溝深さD3は、横溝4が繋がる周方向溝3の溝深さD1(
図2(A)に示す)の0.45倍以上が望ましく、0.5倍以上がさらに望ましく、0.8倍以下が望ましく、0.7倍以下がさらに望ましい。隆起部9での溝深さD3が周方向溝3の溝深さD1の0.5倍以上であるので、ライフ性能の向上効果が維持されるほか、ウェット性能も高く維持される。隆起部9での溝深さD3が周方向溝3の溝深さD1の0.8倍以下であるので、六角形状ブロック5のすべりが効果的に抑制される。
【0019】
図5は、
図1のC-C線断面図であり、横溝4の横断面図である。
図5に示されるように、複数の横溝4のそれぞれは、一対の溝壁4aと、一対の溝壁4aと六角形状ブロック5の踏面5aとが交差する位置の一対の溝縁4bとを含んでいる。そして、一対の溝壁4aのそれぞれは、一対の溝縁4bを通る踏面5aの法線nに対して3~8度の角度θ1で傾斜しているのが望ましい。角度θ1が3度以上であるので、六角形状ブロック5の倒れ込みが抑えられ耐偏摩耗性能が維持される。角度θ1が8度以下であるので、六角形状ブロック5のブロック容積が維持されて、ブロック剛性の低下が抑制されるため、耐偏摩耗性能及びライフ性能が高く維持される。また、横溝4の溝容積が維持されるので、ウェット性能の低下が抑えられる。このような作用を効果的に発揮させるために、角度θ1は、4度以上がさらに望ましく、7度以下がさらに望ましい。角度θ1を有する溝壁4aは、例えば、隆起部9及び深底部10に形成される。
【0020】
複数の横溝4のそれぞれの溝幅W2(
図1に示す)は、7mm以上が望ましく、7.5mm以上がさらに望ましく、9mm以下が望ましく、8.5mm以下がさらに望ましい。横溝4の溝幅W2が7mm以上であるので、基本的なウェット性能が高く維持される。横溝4の溝幅W2が9mm以下であるので、トレッド部2のパターン剛性の低下を抑えることができる。
【0021】
図3に示されるように、3次元サイプ7の深さD5は、3次元サイプ7が繋がる周方向溝3の溝深さD1の0.5倍以上が望ましく、0.6倍以上がさらに望ましく、0.8倍以下が望ましく、0.7倍以下がさらに望ましい。3次元サイプ7の深さD5が、3次元サイプ7が繋がる周方向溝3の溝深さD1の0.5倍以上であるので、3次元サイプ7による見かけの剛性を高く維持する作用が効果的に発揮される。3次元サイプ7の深さD5が、3次元サイプ7が繋がる周方向溝3の溝深さD1の0.8倍以下であるので、六角形状ブロック5のブロック剛性を高く維持できるので、耐偏摩耗性能を向上することができる。
【0022】
図1に示されるように、タイヤ周方向で隣接する横溝4と六角形状ブロック5とのペアPにおいて、横溝4に形成された隆起部9での溝深さD3(
図4に示す)は、六角形状ブロック5に形成された3次元サイプ7の深さD5(
図3に示す)よりも小さい。これにより、隆起部9による六角形状ブロック5のタイヤ周方向のすべりの抑制効果が大きく発揮される。また、旋回走行時の横力に対して、3次元サイプ7の壁面7aの噛み合う効果が大きく発揮される。このため、耐偏摩耗性能が一層向上する。隆起部9での溝深さD3が3次元サイプ7の深さD5よりも過度に小さいと、ウェット性能が低下するおそれがある。このような作用を効果的に発揮させるために、隆起部9での溝深さD3は、3次元サイプ7の深さD5の0.65倍以上が望ましく、0.7倍以上がさらに望ましく、0.95倍以下が望ましく、0.9倍以下がさらに望ましい。
【0023】
六角形状ブロック5は、そのタイヤ軸方向の最大幅Wmが、そのタイヤ周方向の最大長さLmよりも小さく形成されている。このような六角形状ブロック5は、タイヤ周方向の剛性が大きく、加速時や減速時に生じる大きなすべりを抑制することができる。このような作用と、旋回時に生じるすべりを抑える作用とをバランス良く発揮するために、六角形状ブロック5の最大幅Wmと最大長さLmとの比(Wm/Lm)は、0.75以上が望ましく、0.8以上がさらに望ましく、0.9以下が望ましく、0.85以下がさらに望ましい。
【0024】
図6は、上述された本発明の周方向溝3、横溝4及び六角形状ブロック5等を含むトレッド部2のトレッド端Te、Te間の平面図である。なお、
図6は、本発明の一実施形態を示すものであり、このような態様に限定されるものではない。
【0025】
前記「トレッド端Te」は、本明細書では、正規状態のタイヤ1に正規荷重を負荷しかつキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を意味する。両側のトレッド端Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWである。
【0026】
前記「正規状態」とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0027】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば"標準リム"、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"である。
【0028】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0029】
前記「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"である。
【0030】
図6に示されるように、複数の周方向溝3は、本実施形態では、一対のクラウン周方向溝11と、一対のクラウン周方向溝11よりもタイヤ軸方向外側に配される一対のショルダー周方向溝12とを含んでいる。一対のクラウン周方向溝11は、例えば、タイヤ赤道Cの両側にそれぞれ、配されている。
【0031】
図2(A)は、詳しくは、クラウン周方向溝11の横断面図である。
図2(B)は、
図6のD-D線断面図であり、ショルダー周方向溝12の横断面図である。
図2(A)に示されるように、クラウン周方向溝11の溝壁11aのそれぞれは、例えば、溝底11sから円弧状に立ち上がる円弧部11rと、円弧部11rと六角形状ブロック5の踏面5aとを繋いで直線状に延びる直線部11tとで形成される。
図2(B)に示されるように、ショルダー周方向溝12の溝壁12aのそれぞれは、例えば、溝底12sから円弧状に立ち上がる円弧部12rと、円弧部12rに繋がる第1直線部12tと、第1直線部12tに繋がる第2直線部12uとで形成される。第2直線部12uは、第1直線部12tよりも踏面5aに対して緩やかな角度で傾斜し、かつ、ショルダー周方向溝12の溝深さの略中間で第1直線部12tと繋がっている。このような第2直線部12uは、旋回走行時に大きな横力の作用するショルダー周方向溝12の両側のブロック(後述するミドルブロック18及びショルダーブロック19)のすべりを効果的に抑制する。
【0032】
図6に示されるように、クラウン周方向溝11の溝幅Wcは、例えば、ショルダー周方向溝12の溝幅Wsよりも小さく形成されている。これにより、大きな接地圧の作用するタイヤ赤道C付近のトレッド剛性を高く維持することができる。クラウン周方向溝11の溝幅Wcは、ショルダー周方向溝12の溝幅Wsの0.55倍以上が望ましく、0.6倍以上がさらに望ましく、0.75倍以下が望ましく、0.7倍以下がさらに望ましい。ショルダー周方向溝12の溝幅Wsは、トレッド幅TWの2%以上が望ましく、3%以上がさらに望ましく、6%以下が望ましく、5%以下がさらに望ましい。
【0033】
複数の横溝4は、本実施形態では、一対のクラウン周方向溝11を繋ぐ複数のクラウン横溝14と、タイヤ軸方向で隣接するクラウン周方向溝11とショルダー周方向溝12との間を繋ぐ複数のミドル横溝15とを含んでいる。
【0034】
六角形状ブロック5は、例えば、一対のクラウン周方向溝11の間に形成される複数のクラウンブロック17と、タイヤ軸方向で隣接するクラウン周方向溝11とショルダー周方向溝12との間に形成される複数のミドルブロック18とを含んでいる。各クラウンブロック17は、本実施形態では、タイヤ赤道C上に位置している。各ミドルブロック18は、例えば、タイヤ赤道Cの両側に位置している。
【0035】
また、トレッド部2は、例えば、ショルダー周方向溝12とトレッド端Teとを繋いでいる複数のショルダー浅横溝16を含んでいる。これにより、トレッド部2は、ショルダー周方向溝12とトレッド端Teとショルダー浅横溝16とで区分される複数のショルダーブロック19を含んでいる。ショルダー浅横溝16は、例えば、複数の横溝4よりも小さい溝深さで形成されている。
【0036】
六角形状ブロック5を形成するトレッド部2のトレッドゴム(図示省略)の損失正接tanδは、0.1以下が望ましく、0.09以下がさらに望ましい。損失正接tanδが0.1以下であるので、トレッドゴムの発熱を抑えることができ、トレッドゴムの変形を抑制することができる。これにより偏摩耗の発生を抑えることができる。トレッドゴムは、ショルダーブロック19も形成している。損失正接tanδは、「JIS K 6394」の規定に準拠して、以下の条件下で測定される。
測定装置 :粘弾性試験機
初期歪み :10%
動歪み :1%
周波数 :10Hz
変形モード:伸長
測定温度 :70℃
【0037】
3次元サイプ7は、複数のクラウンブロック17にそれぞれ配されたクラウンサイプ21と、複数のミドルブロック18にそれぞれ配されたミドルサイプ22とを含んでいる。クラウンサイプ21及びミドルサイプ22は、それぞれ、周方向溝3のジグザグの頂部6の間を延びている。
【0038】
隆起部9は、クラウン横溝14に設けられたクラウン隆起部24、及び、ミドル横溝15に設けられたミドル隆起部26を含んでいる。このように、クラウン横溝14は、クラウン隆起部24と、クラウン隆起部24の両側に配されるクラウン深底部25、25とを含んでいる。ミドル横溝15は、ミドル隆起部26と、ミドル隆起部26の両側に配されるミドル深底部27、27とを含んでいる。
【0039】
図7(A)は、
図6のE-E線断面図であり、クラウンサイプ21及びクラウン横溝14の横断面図である。
図7(B)は、
図6のF-F線断面図であり、ミドルサイプ22及びミドル横溝15の横断面図である。
図7に示されるように、ミドルサイプ22の最大の深さD5bは、クラウンサイプ21の最大の深さD5aよりも大きく形成されている。これにより、旋回走行時、クラウンブロック17よりも大きな横力の作用するミドルブロック18において、ミドルサイプ22の壁面22a同士の噛み合う力が大きくなり、ミドルブロック18の見かけの剛性がより高められるので、より一層、すべりが抑制される。特に限定されるものではないが、ミドルサイプ22の最大の深さD5bは、クラウンサイプ21の最大の深さD5aの1.1倍以上が望ましく、1.15倍以上がさらに望ましく、1.3以下が望ましく、1.25以下がさらに望ましい。
【0040】
クラウン隆起部24での溝深さD3aは、例えば、ミドル隆起部26での溝深さD3bと同じである。これにより、クラウンブロック17及びミドルブロック18のすべりをバランス良く抑えることができる。溝深さ3aと溝深さ3bとが同じであるとは、本明細書では、溝深さD3aと溝深さD3bとの差の絶対値が0mmであるのは勿論、2mm以下の態様を含むものとする。
【0041】
上述の作用を効果的に発揮させるために、クラウン横溝14の最大溝深さ(クラウン深底部25での溝深さ)D4aは、ミドル横溝15の最大溝深さ(ミドル深底部27での溝深さ)D4bと同じであるのがより望ましい。最大溝深さD4aと最大溝深さD4bとが同じであるとは、本明細書では、最大溝深さD4aと最大溝深さD4bとの差の絶対値が0mmであるのは勿論、2mm以下の態様を含むものとする。
【0042】
クラウンサイプ21の最大の深さD5aとクラウン隆起部24の溝深さD3aとの差(D5a-D3a)は、例えば、ミドルサイプ22の最大の深さD5bとミドル隆起部26の溝深さD3bとの差(D5b-D3b)よりも小さく形成されている。これにより、大きな接地圧の作用するクラウンブロック17のタイヤ周方向の剛性が高く維持されて、タイヤ周方向へのすべりを大きく抑制することができる。差(D5a-D3a)が差(D5b-D3b)よりも過度に小さい場合、クラウンブロック17とミドルブロック18との剛性のバランスが低下し、耐偏摩耗性能が悪化するおそれがある。このような観点より、差(D5a-D3a)は、差(D5b-D3b)の0.25倍以上が望ましく、0.3倍以上がさらに望ましく、0.45倍以下が望ましく、0.4倍以下がさらに望ましい。
【0043】
以上、本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0044】
図6の基本パターンを有するタイヤが、表1~表6の仕様に基づき試作され、ライフ性能、耐偏摩耗性能及びウェット性能についてテストがなされた。共通仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
サイズ:295/75R22.5
リム:8.25×22.5
内圧:750kPa
【0045】
<ライフ性能・耐偏摩耗性能>
テストドライバーが、全輪にテストタイヤが装着されたテスト車両を、アスファルト路面のテストコースにて走行させた。そして、走行後の後輪(駆動輪)タイヤにおける、クラウン周方向溝の摩耗量1mm当りの走行距離が計測された。結果は、各表の比較例の摩耗量1mm当りの走行距離を100とする指数で示されている。数値が大きい程、走行距離が大きく、ライフ性能が優れていることを示す。また、走行後、ヒールアンドトゥ摩耗等の偏摩耗の発生状態がテストドライバーによって確認された。
テスト車両:10t積トラック、荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載
走行距離:10000Km
【0046】
<ウェット性能>
テストドライバーが、上記テスト車両を用いて、水深3mmのウェットアスファルト路面にて走行させた。このとき、停車状態からテスト車両を加速させて一定の距離を走行させたときの走行時間が測定された。結果は、各表の比較例の走行時間を100とする指数で示されている。数値が小さい程、走行時間が短く、ウェット性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1ないし表6に示される。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比して、少なくともライフ性能が向上していることが理解される。
【0054】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0055】
[本発明1]
トレッド部を有する重荷重用タイヤであって、
前記トレッド部は、ジグザグの頂部を形成するようにタイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向に隣接する前記周方向溝の前記ジグザグの頂部の間を繋ぐ複数の横溝と、タイヤ軸方向に隣接する前記周方向溝と前記複数の横溝とで形成される複数の六角形状ブロックとを含み、
前記複数の周方向溝の溝深さは、21mm以上であり、
前記複数の六角形状ブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向及びタイヤ半径方向にジグザグ状に延び、かつ、前記六角形状ブロックを横断する3次元サイプが設けられ、
前記複数の横溝のそれぞれは、前記横溝の溝底が隆起することでタイヤ周方向に隣接する前記六角形状ブロックを連結する隆起部を含む、
重荷重用タイヤ。
[本発明2]
前記複数の横溝のそれぞれにおいて、前記隆起部のタイヤ軸方向の長さは、前記横溝のタイヤ軸方向の長さよりも小さい、本発明1に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明3]
前記複数の横溝のそれぞれにおいて、前記隆起部のタイヤ軸方向の長さは、前記横溝のタイヤ軸方向の長さの0.4~0.6倍である、本発明2に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明4]
前記複数の横溝のそれぞれにおいて、前記隆起部での溝深さは、前記横溝が繋がる前記周方向溝の溝深さの0.5~0.8倍である、本発明1に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明5]
前記3次元サイプの深さは、前記3次元サイプが繋がる前記周方向溝の溝深さの0.5~0.8倍である、本発明1に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明6]
前記複数の横溝のそれぞれは、一対の溝壁と、前記一対の溝壁と前記六角形状ブロックの踏面とが交差する位置の一対の溝縁とを含み、
前記一対の溝壁のそれぞれは、前記一対の溝縁を通る前記踏面の法線に対して3~8度の角度で傾斜する、本発明1に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明7]
前記複数の横溝のそれぞれは、7~9mmの溝幅を有する、本発明1に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明8]
タイヤ周方向で隣接する前記横溝と前記六角形状ブロックとのペアにおいて、前記横溝に形成された前記隆起部での溝深さは、前記六角形状ブロックに形成された前記3次元サイプの深さよりも小さい、本発明1に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明9]
前記複数の周方向溝は、一対のクラウン周方向溝と、前記一対のクラウン周方向溝よりもタイヤ軸方向外側に配される一対のショルダー周方向溝とを含み、
前記複数の横溝は、前記一対のクラウン周方向溝を繋ぐ複数のクラウン横溝と、タイヤ軸方向で隣接する前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝との間を繋ぐ複数のミドル横溝とを含み、
前記隆起部は、前記クラウン横溝及び前記ミドル横溝にそれぞれ設けられたクラウン隆起部及びミドル隆起部を含み、
前記クラウン隆起部での溝深さは、前記ミドル隆起部での溝深さと同じである、本発明1に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明10]
前記クラウン横溝の最大溝深さは、前記ミドル横溝の最大溝深さと同じである、本発明9に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明11]
前記六角形状ブロックは、前記一対のクラウン周方向溝の間に形成される複数のクラウンブロックと、タイヤ軸方向で隣接する前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝との間に形成される複数のミドルブロックとを含み、
前記3次元サイプは、前記複数のクラウンブロックにそれぞれ配されたクラウンサイプと、前記複数のミドルブロックにそれぞれ配されたミドルサイプとを含み、
前記ミドルサイプの最大の深さは、前記クラウンサイプの最大の深さよりも大きい、本発明9又は10に記載の重荷重用タイヤ。