(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004910
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEP
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104812
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】522261525
【氏名又は名称】株式会社バイオマスレジンホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和久
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AB11
4F070AB23
4F070AC72
4F070AC75
4F070AC96
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
(57)【要約】
【課題】食品または食品残渣をバイオマス材料として使用しても、得られる樹脂組成物またはその成形品中の凝集物を低減させ、外観を向上させることができる新規な製造方法を提供すること。
【解決手段】含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工程と、を有し、前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、
前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工程と、
を有し、
前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記バイオマス材料を準備する工程が、前記セルロース系の食品系バイオマスを予め自然乾燥しておく工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記バイオマス材料を準備する工程が、前記セルロース系の食品系バイオマスを、含水率が15質量%以下の別のバイオマスと予め混合しておく工程を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記セルロース系の食品系バイオマスが、野菜、果実、コーヒー滓および茶殻からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記セルロース系の食品系バイオマスが、野菜および果実からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記別のバイオマスが、木質系バイオマスを含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記バイオマス材料の嵩密度が、0.1g/cm3以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記バイオマス材料の含水率が、50質量%未満である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂が、非生分解性樹脂または生分解性樹脂である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記非生分解性樹脂の融点が、120℃以下である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記混練物を乾燥装置において乾燥する工程をさらに有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項12】
前記乾燥装置は、前記混練物を収容可能な内部空間を設けたタンク、配管によって前記タンクと接続され、前記内部空間に流入する前記混練物を乾燥させる気体を発生可能な気体発生部、および前記タンクの前記内部空間に配置され、回転軸を中心に回転して前記内部空間を流通する前記混練物を撹拌させる撹拌翼を備える撹拌部と、
配管によって前記気体発生部からの気体が流通可能であり、前記気体発生部から流通する気体を圧縮する圧縮部と、を有する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1または12に記載の製造方法によって樹脂組成物を得、前記樹脂組成物を成形することを有する、成形品の製造方法。
【請求項14】
前記成形が、射出成形を含む、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、天然由来の澱粉、米粉、木粉、竹粉、紙粉といったバイオマス材料を配合した樹脂組成物の開発がなされている。
【0003】
樹脂に配合するバイオマス材料として、例えば、特許文献1では、米粉、あるいは、少なくとも有意量の米粉を含有するセルロース、リグノセルロース及びデンプンなどバイオマスを使用する知見が、特許文献2では、木粉を使用する知見が開示されている。
【0004】
特許文献3では、食品残渣(コーヒー搾りかす)をバイオマス材料として使用する取り組みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-89535号公報
【特許文献2】特開2020-158606号公報
【特許文献3】特開2011-57920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、食品残渣をバイオマス材料として使用した樹脂組成物の成形品は凝集物が多く外観が悪いことを見出した。
【0007】
よって発明が解決しようとする課題は、食品または食品残渣をバイオマス材料として使用しても、得られる樹脂組成物またはその成形品中の凝集物を低減させ、外観を向上させることができる新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための、本発明の一態様に係る製造方法は、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工程と、を有し、前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、食品または食品残渣をバイオマス材料として使用しても、得られる樹脂組成物またはその成形品中の凝集物を低減させ、外観を向上させることができる新規な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態における混練装置(製造装置)を示す斜視図である。
【
図4】
図1の混練装置(製造装置)を構成する第1収容部の第1収容空間を示す図である。
【
図5】
図1の混練装置(製造装置)を構成する第1収容部の第1収容空間に配置された複数の回転部材について示す図である。
【
図6】
図1の混練装置を構成する第1乾燥部の圧縮機を示す模式図である。
【
図7】
図1の混練装置を構成する第1乾燥部の気体発生部および樹脂組成物を乾燥させるタンク等を示す概略斜視図である。
【
図8】
図7に含まれる第1乾燥部のタンクの内部等を示す概略斜視図である。
【
図11】
図1の混練装置を構成する第2乾燥部の圧縮機を示す模式図である。
【
図12】
図1の混練装置を構成する第2乾燥部の気体発生部および樹脂組成物を乾燥させるタンク等を示す概略斜視図である。
【
図13】
図12に含まれる第2乾燥部のタンクの内部等を示す正面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法を示すフローチャートである。
【
図15】実施例1、比較例2および比較例3のプレスシートの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。よって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、使用方法および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0012】
また、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
本発明者らは、従前、食品残渣をバイオマス材料として使用した場合に、成形品(樹脂組成物)中の凝集物が多く、外観が悪い原因がどこにあるのか鋭意検討を行った。
【0014】
食品残渣は、通常、高い含水率を有する。このような高い含水率を有する原料と樹脂との複合化を検討する場合、通常、前処理として高い含水率を有する原料を乾燥機などで乾燥し、樹脂との複合化の直前の状態(混練設備に投入するタイミング)で含水率を極めて低い状態にする。その理由は、水が多い状態で樹脂と混合すると十分な剪断力を付与することができない(つまり十分な混練ができない)からである。現に、特許文献3 段落「0027」には、「サンプルCについては、含水率が高くミキサーによる粉末化が困難であり、また、スプーンなどの比較的小さな成形物を射出成形法にて成形する場合は、合成樹脂原料とサンプルCのコーヒー残渣物がうまく混合せず、ゲート位置に混合樹脂がつまり成形するのが極めて困難である結果となった」との開示もある。また、バイオマス材料の水が多い状態でそれを樹脂と混合すると、混練中に水分が突沸したりして原料の装置内での逆流現象も生じうるからである。
【0015】
本発明者らは、含水率を極めて低い状態にして複合化を行うことが上記の問題に繋がっていると考えた。
【0016】
そこで本発明の一態様の製造方法は、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を、水を排出する脱水部を備えるという特殊な混練装置において混練する混練工程を有する。このように含水率をある程度有するバイオマス材料と樹脂とを混練することによって、樹脂中のバイオマス材料を均一な状態にした上で脱水を行うことができ、それによりバイオマス材料の凝集を抑制することができる。また、乾燥しきった、あるいは、含水率が極度に低いバイオマス材料と比較し、このような含水率を有する(つまりセミウェット状態の)バイオマス材料は嵩高くないため、混練装置へ材料投入を容易にでき安定供給に資する。
【0017】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の一態様の製造方法は、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工程と、を有し、前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造方法である。かかる態様によれば、水分を多く含む食品残渣等をバイオマス材料として使用しても、得られる樹脂組成物またはその成形品中の凝集物を低減させ、外観を向上させることができる。
【0018】
(バイオマス材料を準備する工程)
本発明の一態様の製造方法は、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程を含み、前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む。なおセルロースはリグノセルロースの構成成分であってもよい。なお、食品系バイオマスの概念には、レストラン・食品工場等から出たフードロス;茶殻、抽出後のコーヒー滓;等の食品残渣が含まれる。
【0019】
本発明の一実施形態において、混練装置に投入するバイオマス材料の含水率は8質量%超60質量%未満である。含水率が8質量%以下あるいは60質量%以上であると、本発明の所期の効果を奏することができない虞がある(比較例1~4)。本発明の一実施形態において、バイオマス材料の含水率は、10質量%以上、12質量%以上、14質量%以上、16質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、22質量%以上、27質量%以上、32質量%以上、35質量%以上、37質量%以上、42質量%以上、あるいは、45質量%以上である。本発明の一実施形態において、バイオマス材料の含水率は、59質量%以下、57質量%以下、53質量%以下、51質量%以下、50質量%未満、49質量%以下、48質量%以下、45質量%以下、42質量%以下、38質量%以下、33質量%以下、28質量%以下、26質量%以下、あるいは、23質量%以下である。本発明の一実施形態において、含水率の測定は、水分測定装置(日東精工アナリテック株式会社社製 CA-310 電量滴定法 CAモード)を用いて、カールフィッシャー電量滴定法にて行うことができる。当該測定方法は、乾燥装置外での測定に適用されうる。
【0020】
本発明の一実施形態において、混練装置に投入するバイオマス材料を準備する工程が、バイオマスを予め自然乾燥しておく工程を有する。本発明の一実施形態において、自然乾燥は、屋外または室内において、天日や日陰で自然に乾燥させる方法でありうる。自然乾燥の際の気温(室温)は、5~40℃、13~35℃、15~30℃、あるいは、18~28℃が好ましい。自然乾燥の際の相対湿度は、20~80%RH、30~70%RH、あるいは、35~60%RHが好ましい。また、本発明の一実施形態において、自然乾燥の時間は、例えば、1~48時間、5~36時間、あるいは、10~30時間であるがこれに制限されない。本発明の一実施形態において、食品系バイオマス、後述の別のバイオマス、バイオマス材料の少なくとも一つの含水率を、自然乾燥によって、59質量%以下、57質量%以下、53質量%以下、51質量%以下、50質量%未満、49質量%以下、48質量%以下、45質量%以下、42質量%以下、38質量%以下、33質量%以下、28質量%以下、26質量%以下、あるいは、23質量%以下とする。本発明の一実施形態において、食品系バイオマス、後述の別のバイオマス、バイオマス材料の少なくとも一つの含水率を、自然乾燥によって、10質量%以上、15質量%以上、19質量%以上、22質量%以上、24質量%以上、29質量%以上、32質量%、あるいは、35質量%以上とする。
【0021】
本発明の一実施形態において、自然乾燥は、窓のない(あるいは窓を閉めた)室内にて無風状態で行ってもよいし、扇風機などで送風しながら室内にて通風乾燥してもよい。本発明の一実施形態において、自然乾燥は、上記で説明したような環境を再現した乾燥機を用いて行ってもよい。本発明の一実施形態において、自然乾燥にはヒーターや熱風発生器を使用しなくてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記セルロース系の食品系バイオマスが、野菜、果実、コーヒー滓および茶殻からなる群から選択される少なくとも1種を含む。本発明の一実施形態において、前記セルロース系の食品系バイオマスが、野菜および果実からなる群から選択される少なくとも1種を含む。ここで、野菜は苗を植えて1年~2年未満で収穫する草本植物を示してもよく、果樹は果実を食用とするものを言い、2年以上栽培する草本植物及び木本植物であってよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、野菜として、大根、人参、馬鈴薯、里芋、かぶ、牛蒡、蓮根、山の芋などの根菜類;白菜、キャベツ、ほうれん草、レタス、葱、玉葱、小松菜、青梗菜、ふき、三つ葉、春菊、水菜、セロリ、アスパラガス、カリフラワー、ブロッコリー、韮、大蒜などの葉茎菜類;きゅうり、茄子、トマト、ピーマン、南瓜、スイートコーン、さやいんげん、さやえんどう、グリーンピース、空豆、枝豆などの果菜類;生姜などの香辛野菜;メロン、いちご、スイカなどの果実的野菜を使用してもよいし、これらに限定されない。
【0024】
本発明の一実施形態において、果実として、かんきつ類(みかん、なつみかん、はっさく、いよかん、ネーブル)、りんご、なし(日本なし、西洋なし)、桃、黄桃、びわ、柿、栗、梅、キウイフルーツ、すもも、パインアップル、カシス、バナナ、ぶどう、アボカドなどでもよいし、これらに限定されない。
【0025】
本発明の一実施形態において、成形品(樹脂組成物)の外観を向上させる観点で、コーヒー滓、茶殻(例えば緑茶出し殻)などの繊維質が比較的硬く咀嚼して飲み込むことができないようなものより、キャベツ、いちごなどの繊維質が比較的柔らかいものが好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備するために用いる(乾燥前の)食品系バイオマスの含水率は、例えば、30~99質量%、40~96質量%、あるいは、50~93質量%である。
【0027】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備するために用いる食品系バイオマスの粒径は、混練装置中の投入部に入る大きさであれば特に制限はされないが、目安は目開き0.1~30mm、目開き1~27mm、あるいは、目開き5~25mmを通るサイズである。例えば食品系バイオマスの粒径は、目開き30mmの篩を通るもので構成されてもよく、目開き0.1mmの篩を通るもので構成されてもよい。
【0028】
本発明の一態様の製造方法において、バイオマス材料は、セルロース系の食品系バイオマスを含む。食品系バイオマスがデンプン系の食品系バイオマスから構成されると、デンプンが老化(ベータ化)したりして、凝集が発生して外観が悪化する虞がある。
【0029】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備する工程が、前記食品系バイオマスを、別のバイオマスと予め混合しておく工程を有する。本発明の一実施形態において、食品系バイオマスと別のバイオマスとの混合は、例えば公知のミキサー等を用いて行えばよい。本発明の一実施形態において、混合時間は、例えば、1~60分、あるいは、5~30分が好適である。
【0030】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備するために用いる別のバイオマスは、木質系バイオマスを含む。本発明の一実施形態において、前記バイオマス材料を準備するために用いる(食品系バイオマスと混合される)別のバイオマスの含水率は、1質量%以上30質量%未満、15質量%以下、3~15質量%、5~13質量%、あるいは、6~12質量%である。
【0031】
本発明の一実施形態において、セルロース系の食品系バイオマスと、別のバイオマスとを予め混合することを有して、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する。本発明の一実施形態において、セルロース系の食品系バイオマスの含水率が、別のバイオマスの含水率より高い。本発明の一実施形態において、別のバイオマスは、セルロース系の食品系バイオマスの含水率調整の用途で用いられうる。
【0032】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備するために用いる別のバイオマスの粒径も、混練装置中の投入部に入る大きさであれば特に制限はされないが、目安としては目開きが0.1~10mm、目開き0.3~7mm、あるいは、目開き0.5~5mmを通るサイズである。例えば別のバイオマス(例えば木粉系バイオマス)の粒径は、目開き10mmの篩を通るもので構成されてもよく、目開き0.1mmの篩を通るもので構成されてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマスは、木質系、草本系などの如何なるものであってもよく、木粉、竹粉、ワラ、紙粉、パルプなどの少なくとも1種が例示できる。ネピアグラス、ベージグラス、ササ、タケ、綿、トウヒ、カバ、稲わらなど;バガス、籾殻などを含む農業廃棄物;製材残材、林地残材、間伐材、廃建材、木くずなどを含む産業廃棄物;古紙などを含む生活系廃棄物などでもよい。
【0034】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマスの粒子径は、例えば、上限としては、60メッシュパス、70メッシュパス、80メッシュパス、あるいは、100メッシュパスのものなどが好適に使用できる。下限としては、200メッシュオン、150メッシュオンであってもよい。木質系バイオマスの市販品としては、LIGNOCEL(登録商標)C100、C200(以上、独国レッテンマイヤー社製)、KCフロックW-100GK、W-100F(以上、日本製紙株式会社製)等が好適である。
【0035】
本発明の一実施形態において、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料の嵩密度が、0.1g/cm3以上、0.2g/cm3以上、0.3g/cm3以上、0.4g/cm3以上、あるいは、0.5g/cm3以上である。本発明の一実施形態において、前記バイオマス材料の嵩密度が、0.6g/cm3以下である。
【0036】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料中のセルロース系の食品系バイオマスの質量の割合が、50質量%超、55質量%以上、あるいは60質量%以上である。本発明の一実施形態において、バイオマス材料中のセルロース系の食品系バイオマスの質量の割合が、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、あるいは70質量%以下である。
【0037】
本発明の一実施形態において、食品系バイオマス中のセルロース系の食品系バイオマスの質量の割合が、50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、96質量%以上、97質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、あるいは100質量%である。
【0038】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料中の別のバイオマス(例えば木粉)の質量の割合が、0質量%、10質量%以上、20質量%以上、あるいは、30%以上である。本発明の一実施形態において、バイオマス材料中の別のバイオマスの質量の割合が、50質量%未満、45質量%以下、あるいは40質量%以下である。
【0039】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料中のセルロース系食品系以外の食品系バイオマス(例えば、米、ふすま、小麦、豆などのデンプン系食品系バイオマス)の質量の割合が、50質量%未満、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、あるいは0質量%である。
【0040】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料の粒径も、混練装置中の投入部に入る大きさであれば特に制限はされない。バイオマス材料が食品系バイオマスから構成される場合は、上記で説明した食品系バイオマスの粒径と同じでありうるし、バイオマス材料がさらに別のバイオマスを含む場合は、バイオマス材料の粒径は、上記で説明した別のバイオマスの粒径と同じものを含みうる。これらの一部または全部が凝集するとそれに応じた粒径に変化しうるが混練装置中の投入部に入る大きさであれば特に制限はされない。バイオマス材料は、1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
(混練物を得る工程)
本発明の一態様の製造方法は、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工程を有する。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記バイオマス材料の好適な配合量(固形分量)は、混練装置内に投入される、原料の固形分換算の全量(100質量部)において、1~70質量部、5~68質量部、10~62質量部、20~58質量部、あるいは、30~55質量部の範囲であることが適切である。
【0043】
本発明の一実施形態の原料は樹脂として非生分解性樹脂を含む。本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂は、生分解性を有さない樹脂である。ここで、生分解性とは、ISO 9408、ISO 9439、ISO 10707、JIS K 6950 2000年、JIS K 6951 2000年、JIS K 6953 2011年、および、JIS K 6955 2017年の少なくとも1つを満たすものである。つまり、非生分解性は、それらのいずれも満たさないものでありうる。
【0044】
本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂は、ポリオレフィンでありうる。本発明の一実施形態において、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)もしくはポリプロピレン(PP)が挙げられる。または、本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のエチレン系の共重合体でありうる。
【0045】
本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂はペレットの形態でありうる。本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂(特にペレットの形態)の平均粒径は、例えば、0.5~10mm、1~8mm、あるいは、2~6mmである。非生分解性樹脂(特にペレットの形態)の平均粒径の測定は、JIS B 7507:2016(ノギス)に準拠されうる。具体的には、複数のペレットから統計学的に信頼できる数(あるいは、10個、50個、100個、またはそれ以上)を任意に選び出す。選び出された各ペレットの最も長い径をそれぞれ測定する。それを相加平均する。
【0046】
本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂の融点の上限は、焦げ付きを防止するために、120℃以下、118℃以下、あるいは、116℃以下である。本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂の融点の下限は、混練を容易に行うことができる観点から、110℃以上であることが好ましく、111℃以上であることがより好ましく、112℃以上であることが特に好ましい。本発明の一実施形態において、融点の測定は、例えば株式会社 島津製作所社製の定試験力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(CFT-500EX)を用いて行うことができる。
【0047】
非生分解性樹脂は市販品を用いてもよく、具体的には、ウインテック(日本ポリプロピレン社製)、ノバテック(日本ポリプロピレン社製)、プライムポリプロ(プライムポリマー社製)、エボリュー(プライムポリマー社製)等が挙げられる。これら非生分解性樹脂のうちの1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂の好適な配合量は、混練装置内に投入される、原料の固形分換算の全量(100質量部)において、10~69質量部、22~67質量部、29~61質量部、34~57質量部、あるいは、40~54質量部の範囲であることが適切である。
【0049】
本発明の一実施形態の原料は樹脂として生分解性樹脂を含む。本発明の一実施形態において、生分解性樹脂は、生分解性を有する樹脂である。ここで、生分解性とは、ISO 9408、ISO 9439、ISO 10707、JIS K 6950 2000年、JIS K 6951 2000年、JIS K 6953 2011年または、JIS K 6955 2017年の少なくとも1つを満たすものである。なお、日本バイオプラスチック協会(JBPA)の生分解性プラポジティブリスト(PL)(分類番号B-3(滑剤))に列挙されている物質は、参照により全体として引用され、本明細書に組み込まれ、補正の適法な根拠となる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、生分解性の樹脂は、2価のカルボン酸と、2価のアルコールとの重縮合反応によって得られるものであってもよい。2価のカルボン酸としては、例えば、炭素数1~4あるいは2~3の脂肪族炭化水素における2つの水素がカルボキシ基に置換されたもの、あるいは、芳香族炭化水素における2つの水素がカルボキシ基に置換されたものがある。より詳しくは、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等が好適である。2種以上のものが適宜組み合わされてもよい。2価のアルコールとしては、炭素数2~6あるいは3~5の脂肪族炭化水素における2つの水素が水酸基に置換されたものがある。より詳しくは、例えば、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等が好適である。換言すれば、生分解性の樹脂は、2価のカルボン酸由来の構成単位と、2価のアルコールの構成単位とを含む。このような生分解性の樹脂として、例えば、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)等が好適である。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、生分解性の樹脂は、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート-co-アジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、PBAT・PLAコンパウンド、澱粉ポリエステル樹脂、酢酸セルロース、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、及び3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体(PHBH)からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。ここで、ポリ乳酸(PLA)を得る方法としては、例えば、ラクチド法、直接重合、あるいは溶融法などが知られている。ラクチド法は、乳酸を加熱脱水重合すると低分子量のポリ乳酸(オリゴマー)が得られ、このオリゴマーをさらに減圧下加熱分解することにより、乳酸の環状二量体であるラクチドが得られ、ラクチドは金属塩の触媒存在下で容易に重合し、ポリ乳酸を与える。触媒としては、オクタン酸スズが好適である。この他にアルミニウムやランタノイドのイソプロポキシド、亜鉛の塩なども重合活性がある。直接重合においては、ジフェニルエーテルなどの溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させることによって直接ポリ乳酸が得られる。
【0052】
本発明の一実施形態において、生分解性樹脂は市販品を用いてもよく、具体的には、三菱ケミカル社製のフォゼアス(登録商標)、トタルコービオン製のルミニー、ネイチャーワークス社製のインジオ、ユニチカ株式会社製のテラマック等が挙げられる。これら生分解性樹脂のうちの1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、生分解性樹脂はペレットの形態でありうる。本発明の一実施形態において、生分解性樹脂(特にペレットの形態)の平均粒径は、例えば、0.5~10mm、1~8mm、あるいは、2~6mmである。生分解性樹脂(特にペレットの形態)の平均粒径の測定は、JIS B 7507:2016(ノギス)に準拠されうる。具体的には、複数のペレットから統計学的に信頼できる数(あるいは、10個、50個、100個、またはそれ以上)を任意に選び出す。選び出された各ペレットの最も長い径をそれぞれ測定する。それを相加平均する。
【0054】
本発明の一実施形態において、生分解樹脂の融点の上限は、焦げ付きや、高温下におけるバイオマスの熱分解を防止するために、190℃以下、180℃以下、170℃以下、あるいは、160℃以下である。本発明の一実施形態において、生分解性樹脂の融点の下限は、混練中の脱水を容易に行うことができる観点から、100℃以上であることが好ましく105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが特に好ましい。本発明の一実施形態において、融点の測定は、例えば株式会社 島津製作所社製の定試験力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(CFT-500EX)を用いて行うことができる。
【0055】
本発明の一実施形態において、生分解性樹脂の好適な配合量は、混練装置内に投入される、原料の固形分換算の全量(100質量部)において、10~69質量部、22~67質量部、29~61質量部、34~57質量部、あるいは、40~54質量部の範囲であることが適切である。本発明の一実施形態において、樹脂は、生分解樹脂と非生分解性樹脂の混合物であってもよい。
【0056】
本発明の一態様の製造方法で用いられる原料は相溶化剤を含む。相溶化剤を含まないと原料の混練が不安定(つまりバイオマス材料と樹脂とが均一に相溶しない)なため、外観が悪い結果となる(比較例5)。
【0057】
本発明の一実施形態において、相溶化剤は、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸またはその誘導体が用いられうる。飽和カルボン酸としては、無水コハク酸、コハク酸、無水フタル酸、フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水アジピン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ソルビン酸、アクリル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等を使用することができる。また、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂を使用することができる。これは、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体と、ラジカル発生剤とを溶媒の存在下または不存在下に加熱混合することにより得られる。
【0058】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸またはその誘導体の付加量(変性量)は、0.1~15質量%、あるいは、1~10質量%である。相溶化剤としては、臭気が無く、酸性度が小さい不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリオレフィン樹脂が好適である。
【0059】
本発明の一実施形態において、相溶化剤は、生分解性を有している。本発明の一実施形態の相溶化剤は、グリセロール、ポリグリセロール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、グリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0060】
上記のグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステルの3種が挙げられ、より具体的には、例えば、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化グリセライド(ジアセチル脂肪酸モノグリセリド)、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレートが挙げられる。一実施形態によれば、ジアセチル脂肪酸モノグリセリドは、炭素数が8~15、9~14、あるいは、10~13のアルキル基を有する。
【0061】
一実施形態によれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、以下の構造を有し、nは、例えば、2~6、あるいは、2~5であり、Rは、炭素数が11~20、13~19、あるいは、15~18のアルキル基である。
【0062】
【0063】
本発明の一実施形態において、相溶化剤の好適な配合量は、混練装置内に投入される、原料の固形分換算の全量(100質量部)において、0.2~20質量部、0.5~10質量部、あるいは、1~5質量部の範囲であることが適切である。
【0064】
相溶化剤は市販品を用いてもよく、具体的には、リケエイドMG-440P(理研ビタミン株式会社社製)、MG-441P(理研ビタミン株式会社製)、MG-250P(理研ビタミン株式会社製)、ポエム J-4081V(理研ビタミン株式会社製)、ユーメックス1001(株式会社三洋化成工業製)ユーメックス1010(株式会社三洋化成工業製)、チラバゾールVR-01(太陽化学株式会社製)、チラバゾールVR-07(太陽化学株式会社製)等が挙げられる。これら相溶化剤のうちの1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
(混練装置)
本発明の一実施形態の混練装置は、二軸混練装置である。以下、好ましい二軸混練装置の実施形態を説明する。
【0066】
二軸混練装置1は、第1収容部10と、投入部20と、回転部30と、脱水部50と、第1脱気部60と、第2脱気部70と、排出部80と、冷却部90と、切断部110と、を有する。二軸混練装置1は、さらに選別部120と、第1乾燥部130および第2乾燥部160(乾燥装置に相当)と、を有する。なお、二軸混練装置1の説明にあたり、図面には直交座標系を表記している。Xは後述する回転部30の回転軸の延在する方向であり、長手方向Xとする。Yは長手方向Xと交差する第1収容部10の幅方向に相当し、幅方向Yとする。Zは長手方向X及び幅方向Yと交差する方向であり、高さ方向Zとする。以下、詳述する。
【0067】
(第1収容部10)
第1収容部10は、バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤を収容する第1収容空間S1を形成する。第1収容部10は、二軸混練装置1を設置する空間の長手方向Xに延在するように長尺に構成している。
【0068】
第1収容部10は、回転部30を構成する複数の回転部材31、32、33、34、35、36、37、38、39、41、42を収容する第1収容空間S1を形成するように構成している。第1収容部10によって形成される第1収容空間S1は投入部20の直下から第2脱気部70と接続される部位まで一続きになるように構成している。第1収容空間S1は、本実施形態において回転部30の回転部材の回転軸を二軸設けるように、
図4に示すように断面の内周部分を、2つの円弧を合わせたような形状に構成している。第1収容部10には第1収容空間S1の温度を調整するためのヒーター等の加熱装置(図示省略)を設けることができる。上述したヒーターは第1収容部10の第1収容空間S1の長手方向Xにおいて後述する回転部材の特定の区間毎に温度を調整できるように例えば長手方向Xに複数配置することができる。
【0069】
(投入部20)
投入部20は、
図4に示すように第1収容空間S1に上述したバイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤を投入可能なホッパー(フィーダー)を備える。投入部20のホッパーは、漏斗状に形成している。
【0070】
本発明の一実施形態において、第1収容空間S1における投入部に相当する部位の温度は、バイオマス材料に含まれる水分の突沸抑制の観点で、例えば40~90℃、50~85℃、あるいは、70~82℃である。
【0071】
(回転部30)
回転部30は、第1収容空間S1において回転可能に配置される。回転部30は、複数の回転部材31~39、41、42を長手方向Xに平行な方向を回転軸として回転軸に沿って並べて配置するように構成している。回転部材31~39、41、42は、
図5に示すように幅方向Yに沿って2軸並べて設けている。回転部材31は、本明細書において第1スクリュー、回転部材32は第1パドル、回転部材33は第2スクリュー、回転部材34は第2パドル、回転部材35は第4スクリュー、回転部材41は第6スクリュー、回転部材42は第7スクリューに相当する。以下に各々の回転部材について詳述する。
【0072】
(回転部材31)
回転部材31は、第1収容部10の第1収容空間S1において投入部20のホッパーの直下に配置している。回転部材31は、スクリューを形成するように構成している。本明細書において回転部材31が配置される第1収容空間S1の部位はバイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料が投入される原料投入部と称する。
【0073】
(回転部材32、33)
回転部材32は、
図5に示すように第1収容空間S1の回転部材31よりも下流側において回転部材31に隣接して設けている。回転部材32は、板状部材を回転軸に沿って並べて配置するように構成している。回転部材32は、回転部材31と回転部材33との間に配置している。
【0074】
回転部材33は、第1収容空間S1の回転部材32よりも下流側において回転部材32に隣接して設けている。回転部材33は、回転部材31と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材33は、回転部材31よりも螺旋の溝を浅く形成している。回転部材33は、回転部材31よりも螺旋の径方向における最外周と最内周の差が大きくなるように構成している。回転部材33は、回転部材31と最外周の大きさが同等で、最内周が回転部材31よりも小さくなるように構成している。回転部材32、33が配置される第1収容空間S1の部位は、投入部20から投入された樹脂を溶解させる樹脂溶解部と称することができる。
【0075】
(回転部材34)
回転部材34は、回転部材32と同様に板状部材を回転軸に沿って複数並べるように配置しており、第1収容空間S1において回転部材33よりも回転軸の下流側に配置するように構成している。回転部材34は、
図5において板状部材の板厚が一種類となるように図示しているが、一種類でなくてもよい。回転部材34は、回転部材32よりも薄く形成することによってせん断応力をより発揮させて原料を分散させるとともに均一な撹拌を行うように構成している。回転部材34が配置される第1収容空間S1の部位は、投入部20から投入された原料を混練する混練部と称することができる。回転部材33と回転部材34との境界近傍には、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料に由来する水等を排出するために脱水部50を接続するように構成している。詳細は後述する。
【0076】
(回転部材35)
回転部材35は、第1収容空間S1において回転部材34よりも下流側において回転部材34に隣接して設けている。回転部材35は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材35は、螺旋の溝の深さが回転部材33と同等になるように構成している。回転部材35は、第1収容空間S1において混練された原料を脱気する第1脱気部60と接続される。詳しくは後述する。
【0077】
(回転部材36~39)
回転部材36、37は、第1収容空間S1の回転部材35の下流側において回転部材35に隣接して設けている。回転部材36、37は、回転部材32と同様に板状部材を並べるように構成している。回転部材36、37には起伏の小さい螺旋を形成しており、回転部材36と回転部材37の螺旋の回転方向は異なるように構成している。
【0078】
回転部材38、39は、第1収容空間S1の回転部材37よりも下流側において回転部材37に隣接して設けている。回転部材38、39は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材38、39のスクリューは螺旋の溝の深さを回転部材33と同様に構成している。回転部材38と回転部材39は螺旋の回転方向が逆転するように構成している。
【0079】
このように回転部材36、38と回転部材37、39の螺旋の回転方向を逆転させることによって、回転部材35から送られる原料は回転部材37、39で回転軸の上流側に一時的に押し返されるようにしたうえで下流側に移動する。これにより、原料が回転部材36~39に比較的長く滞留し、原料の密度が向上するように圧縮が行われる。回転部材36~39が配置される第1収容空間S1の部位は原料の圧縮を行う圧縮部と称することができる。
【0080】
(回転部材41、42)
回転部材41は、第1収容空間S1の回転部材35、39よりも下流側において回転部材39に隣接して設けている。回転部材42は、第1収容空間S1の回転部材41よりも下流側において回転部材41に隣接して設けている。回転部材41、42は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成しており、回転部材42は回転部材41よりも螺旋のピッチが短くなるように構成している。回転部材41、42は第1収容空間S1に収容された原料の脱気を行う第2脱気部70と接続される。
【0081】
このように、回転部材31~39、41、42は、螺旋形状を備え、投入部20の直下に配置された回転部材31と、回転部材31よりも回転軸の下流側に配置され、回転部材31よりも螺旋の溝が浅く形成された回転部材33を備える。このように構成することによって、原料の少なくとも一部が通常、二軸混練装置ではスクリューによって下流側に送られ難くても、回転部材31によって原料の少なくとも一部を下流側に送るようにして混練を行うことによって樹脂組成物を効率的に製造することができる。
【0082】
また、回転部材31~39、41、42は、第1収容空間S1において回転部材34よりも下流側に設けられる回転部材35を備える。回転部材35の近傍には、第1脱気部60を接続している。第1脱気部60は、スクリュー61と、第3収容部62と、を備える。スクリュー61は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に平行な方向を回転軸として回転し、対になるように構成している。第3収容部62は、スクリュー61を収容する第3収容空間S3を備えるとともに第1収容部10と接続され、第1収容空間S1で発生した気体を吸引により排出可能なポンプなどと接続される。このように構成することによって、脱水部50と同様に原料の固形成分を第1収容空間S1に残しつつ、原料に含まれる不要な水分をさらに排出するようにできる。
【0083】
また、回転部材31~39、41、42は、第1収容空間S1において回転部材35よりも下流側に設けられる回転部材41と、回転部材41に隣接して設けられる回転部材42と、を備える。回転部材41の近傍には、第2脱気部70を接続している。第2脱気部70は、スクリュー71と、第4収容部72と、を備える。スクリュー71は、回転部材41の回転軸と交差する方向に平行な方向を回転軸として回転し、対になるように構成している。第4収容部72は、スクリュー71を収容する第4収容空間S4を備えるとともに第1収容部10と接続され、第1収容空間S1で発生した気体を吸引により排出可能なポンプと接続される。このように構成することによって、第1脱気部60と同様に材料の固形成分を第1収容空間S1に残しつつ、原料の不要な水分をさらに排出することができる。また、第2脱気部70を回転部材42ではなく、螺旋のピッチが比較的大きい回転部材41の近傍で接続することによって、不要な水分を第1収容空間S1から排出し易くすることができる。
【0084】
なお、回転部材31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32、34の比率(すなわち、ニーディングブロック比率)は、例えば、18~32%、あるいは、22~27%でありうる。
【0085】
(脱水部50)
脱水部50は、第1収容部10で混練される原料由来の水分等を排出(脱水)するように構成している。脱水部50は、
図5に示すように回転部材33と回転部材34との境界近傍において回転部材33、34の回転軸と交差する方向から第1収容部10に接続している。第1収容空間S1における回転部材33と回転部材34の境界付近では、少なくとも混練の際の第1収容空間S1における内部圧力が飽和蒸気圧となるように構成できる。
【0086】
脱水部50は、
図5に示すようにスクリュー51(第3スクリューに相当)と、第2収容部52と、駆動部53と、を備える。スクリュー51は、回転部材31~39、41、42と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部53は、スクリュー51を回転させるモーターを備えるように構成している。第2収容部52は、
図5に示すように第1収容部10と接続され、スクリュー51を収容する第2収容空間S2を設けた筐体などを備える。第2収容部52は、第2収容空間S2から水分を排出する。第2収容部52には水分を排出可能な開口部(図示省略)を設けている。開口部は、第2収容部52の上部等に設けることができる。
【0087】
上述のとおり、回転部材31~39、41、42は、回転部材31と回転部材33の間に配置され、板状部材を回転軸に並べて配置した回転部材32と、回転部材33よりも回転軸の下流側に配置される板状の回転部材34と、を備える。回転部材33と回転部材34の近傍には、脱水部50を接続している。脱水部50は、スクリュー51と、第2収容部52と、を備える。スクリュー51は、回転軸と交差する幅方向Yに平行な方向を回転軸として回転し、対となるように構成している。第2収容部52は、スクリュー51を収容する第2収容空間S2を備えるとともに第1収容部10と接続され水分を排出可能な開口部を設けている。このように構成することによって、原料に含まれる固形成分を第1収容部10の第1収容空間S1に残しつつ、原料に含まれる不要な水分等を取り除くことができる。脱水部50を設けないと水分過剰となり、剪断応力が不十分で混練不足となり、ダイヘッド80から水分が突沸して扱いが難しく、また得られる樹脂組成物中に水分由来の気泡、鬆が入り、外観が悪い結果となりうる(比較例6)。
【0088】
(第1脱気部60)
第1脱気部60は、第1収容部10において回転部材35が配置される近傍に接続するように構成している。第1脱気部60は、
図5に示すようにスクリュー61(第5スクリューに相当)と、第3収容部62と、駆動部63と、を備える。スクリュー61は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部63は、脱水部50と同様にスクリュー61を回転駆動させるモーターなどを備えるように構成している。第3収容部62は、回転部材35の近傍で第1収容部10と接続され、スクリュー61を収容する第3収容空間S3を設けた筐体などを備える。第3収容部62は、第3収容空間S3を介して水分を吸引可能な真空ポンプなどと接続している。
【0089】
(第2脱気部70)
第2脱気部70は、第1収容部10において回転部材41が配置される近傍において接続するように構成している。第2脱気部70は、
図5に示すようにスクリュー71(第8スクリューに相当)と、第4収容部72と、駆動部73と、を、備える。スクリュー71は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部73は、第1脱気部60と同様にスクリュー71を回転駆動させるモーターなどを備えるように構成している。第4収容部72は、回転部材41の近傍で第1収容部10と接続され、スクリュー71を収容する第4収容空間S4を設けた筐体などを備える。脱水部50のスクリュー51と第1脱気部60のスクリュー61と第2脱気部70のスクリュー71は、回転部材31~39、41、42の動作を妨げない程度に幅方向Yに沿って回転部材31~39、41、42に接近するように延在している。
【0090】
第4収容部72は、第4収容空間S4を介して水分を吸引可能な真空ポンプなどと接続している。なお、第2収容部52、第3収容部62、第4収容部72は、
図5において便宜上、簡略化して図示している。
【0091】
このように、二軸混練装置1が2つの脱気部として第1脱気部60と第2脱気部70を備えるように構成することによって、含水率が高い原料を用いて混練を行った際に、第1脱気部60と第2脱気部70によって更に効率的に脱水を行うことができ混練物(樹脂組成物)に不要な水分等を取り除くことができる。
【0092】
(排出部80)
排出部80は、
図1等に示すように第1収容部10の下流側における外側に隣接して設けている。排出部80は、第1収容部10の第1収容空間S1において作製された混練物を紐状に形成するために設けられる。排出部80は、本実施形態において第1収容部10の長手方向Xにおける端部であって第1収容部10の第1収容空間S1と外部とを繋ぐ部位に設けた複数の穴形状を設けた部材を備えるように構成している。排出部80は、第1収容部10に配置された回転部材31~39、41、42などと同様にヒーターなどの加熱装置を設けることによって加温することができる。
【0093】
(冷却部90)
冷却部90は、第1収容部10から排出された紐状の混練物を冷却するために設けられる。冷却部90は、
図1に示すようにコンベヤー91と、液体供給部92と、気体供給部93と、を備える。
【0094】
コンベヤー91は、排出部80に隣接して設けている。コンベヤー91は、
図2に示すように排出部80から排出された混練物を切断部110まで搬送するように構成している。コンベヤー91は、本実施形態において
図2に示すように長手方向Xから高さ方向Zの正の方向に向かって傾斜した斜め方向に沿って延在するように構成している。ただし、コンベヤー91の延在方向は一例であって混練物を切断部110に搬送できれば、コンベヤーの具体的な搬送方向は
図2等に限定されない。
【0095】
液体供給部92は、コンベヤー91上で搬送される混練物に比較的温度の低い冷却水を供給するように構成している。液体供給部92は、ホース等によって冷却水の供給源と接続された噴射ノズルをコンベヤー91の搬送方向に複数配置することによって構成している。
【0096】
気体供給部93は、所定の温度に調整された空気等の気体をコンベヤー91上で搬送される混練物に供給するように構成している。気体供給部93は、不図示のダクトと、ダクトに接続され、気体をコンベヤー91上の混練物に向けて噴射可能なブロワーを備えるように構成している。
【0097】
(切断部110)
切断部110は、排出部80から排出され、冷却部90において冷却された混練物を所定の長さに切断するように構成している。切断部110は、
図1に示すように混練物を送る送りローラー111と、送られた混練物を切断する刃物を備えた切断ローラー112と、を備えることができる。また、冷却された混練物は、乾燥を行うチャンバー等の設備(乾燥部と呼ぶことができる)において乾燥工程を実施することができる。詳細については後述する。
【0098】
よって、本発明の一実施形態では、第1収容空間を形成する第1収容部と、前記第1収容空間に含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を投入可能な投入部と、前記第1収容空間において回転可能に配置され複数の回転部材を前記回転部材の回転軸に沿って並べて配置した回転部と、を有し、前記回転部は、複数の前記回転部材が回転する前記回転軸を2軸設けており、複数の前記回転部材は、螺旋形状を備え、前記投入部の直下に配置された第1スクリューと、前記第1スクリューよりも前記回転軸の下流に配置され前記第1スクリューよりも螺旋の溝が浅く形成された第2スクリューと、を備え、複数の前記回転部材は、前記第1スクリューと前記第2スクリューの間に配置され板状部材を前記回転軸に並べて配置した第1パドルと、前記第2スクリューよりも前記回転軸の下流側に配置される板状の第2パドルと、を備え、前記第2スクリューと前記第2パドルの近傍には、前記回転軸と交差する方向に回転する一対の第3スクリューと、前記第3スクリューを収容する第2収容空間を備えるとともに前記第1収容部と接続され、前記第1収容空間で発生した水分を排出可能な開口部を設けた第2収容部と、を備える脱水部が接続される、二軸混練装置が提供される。
【0099】
(選別部120)
選別部120は、
図1等に示すようにスロープ121と、受けタンク122と、を備える。スロープ121は、切断部110から排出された混練物を載置できるように配置している。スロープ121は、切断部110から受けタンク122に向かって下がるように長手方向Xに対して傾斜して形成している。スロープ121には振動を付与するように構成しており、これにより切断部110から流通する混練物を受けタンク122に向けて流通するように構成している。スロープ121の受けタンク122における直上には無数の穴部が設けられ、これにより、所定以下のサイズの材料が受けタンク122に落下するように構成している。
【0100】
受けタンク122に落下した混練物は、配管p1を通じて吸引により第1乾燥部130に流通する。受けタンク122は、本実施形態において上部が開口した中空の略直方体に構成しているが、スロープ121から流通する材料を受け止めることができれば具体的な形状は直方体に限定されない。
【0101】
(第1乾燥部130)
第1乾燥部130は、
図3、
図7、
図8等に示すように気体発生部131と、除湿部132と、圧縮機133と、撹拌部146と、検出部155と、を備える。気体発生部131と撹拌部146は、合わせてホッパードライヤと呼ばれ得る。以下、詳述する。
【0102】
気体発生部131は、配管p2、p3、p4、p5によって後述する撹拌部146のタンク149と接続され、タンク149の内部空間に流入する混練物を乾燥させる気体を発生可能に構成している。気体発生部131は、ファンなどを含み、上述したペレットの状態の混練物を乾燥させる気体を発生可能に構成している。
【0103】
除湿部132は、配管p2によって気体発生部131と接続され、気体発生部131から流通する気体を除湿するために設けられる。除湿部132は、気体を除湿する空間と、当該空間に配置され、デシカント方式等のように気体中に含まれる水分を吸着する吸着剤等を含むように構成できる。
【0104】
圧縮機133は、
図6に示すように概して加熱部134と、圧縮部139と、を備える。加熱部134は、流入口135と、加熱チャンバ136と、ヒーター137と、流出口138と、を備える。
【0105】
流入口135は、加熱チャンバ136に設けられ、配管p3を通じて除湿部132と連通するように構成している。加熱チャンバ136は、除湿部132から流通する気体が加熱される箇所として構成している。加熱チャンバ136の形状についても特に限定されないが、例示すれば中空の直方体などの形状を採用できる。
【0106】
ヒーター137は、タンク149に流入する混練物を加熱可能に構成している。ヒーター137は、加熱チャンバ136に設置され、電流などのエネルギーの供給によって加熱チャンバ136内に熱エネルギーを発生可能に構成している。ヒーター137は加熱チャンバ136内に熱エネルギーを発生可能な公知のヒーターを採用できる。ヒーター137は、加熱チャンバ136内部の上面や側面などに設置できる。流出口138は、加熱チャンバ136に設けられ、配管p4を通じて加熱された流体を下流側に流出可能に構成している。流入口135および流出口138は、気体を流通できれば具体的な形状は限定されないが、例示として筒状に構成できる。
【0107】
圧縮部139は、配管p2、p3、p4によって気体発生部131からの気体が流通可能であり、気体発生部131から流通する気体を圧縮可能に構成している。圧縮部139は、
図6に示すように流入口141と、圧縮チャンバ142と、圧縮弁143と、排水部144と、流出口145と、を備える。
【0108】
流入口141は、圧縮チャンバ142に設けられ、配管p4を介して加熱チャンバ136の流出口138と連通するように構成している。圧縮チャンバ142は、加熱チャンバ136から流通する気体を圧縮弁143により圧縮する空間となるように構成している。圧縮チャンバ142は、
図6に示すように円筒と円錐を組み合わせた中空形状に構成できる。
【0109】
圧縮弁143は、圧縮チャンバ142に設けられ、加熱チャンバ136から流入する気体の圧力を調整することによって室内の気体を圧縮可能に構成している。圧縮弁143は、静圧を高める機構により、後述する撹拌部146のタンク149の内部空間を通常の乾燥機に比べて例えば2~5倍に加圧できる。これにより、乾燥対象であるペレット状の混練物への熱の浸透が促進され、乾燥時間の短縮を図るとともに、混練物の内部の水分やガスの放出を多くすることができる。
【0110】
排水部144は圧縮チャンバ142の下部において液化した成分を圧縮チャンバ142から排出可能に構成している。加熱部134において高温となった気体は圧縮チャンバ142において冷却される。その結果、気体中に含まれる油分は液化し、圧縮チャンバ142の下部に溜まり、ドレンにより排出可能になる。ここで、規定の圧力を超えた気体は外部に排出され、配管を通じて循環しないように構成している。
【0111】
流出口145は、配管p5を介して圧縮チャンバ142において圧縮された流体を撹拌部146のタンク149に流出可能に構成している。流入口141および流出口145は、流入口135等と同様に筒状に構成できる。
【0112】
撹拌部146は、
図7~
図10に示すように流入口147、148と、タンク149と、回転軸151と、撹拌翼152と、流出口153、154と、を含む。流入口147は、
図7に示すようにタンク149の上部に設けられ、配管p5を介して圧縮部139の流出口145と連通するように構成している。流入口148は、流入口147と別にタンク149の上部に設けられ、配管p1を介して乾燥対象となる混練物を流通可能に構成している。
【0113】
タンク149は、乾燥対象となる混練物と圧縮部139から流通する気体を流通させる空間として構成している。タンク149は、混練物を収容可能な内部空間を設けるように構成している。タンク149は圧縮機133と同様にタンク149の内部空間に流通する流体を加熱するヒーター(図示省略)を設置することができる。また、タンク149には配管p1を介して乾燥対象となる混練物をタンク149の内部空間に吸引する吸引ブロワなどを設置することができる。また、タンク149は、本実施形態において
図9などに示すように円筒と円錐台を組み合わせたような形状として構成している。ただし、混練物を含む気体を下流に流通できれば、タンクの具体的な形状は上記に限定されない。
【0114】
回転軸151は、タンク149の内部空間を流通する混練物を撹拌させる撹拌翼152の軸として構成している。回転軸151は、本実施形態においてモーターMと接続されて垂直方向(高さ方向Z)に沿うように構成しており、垂直方向を中心に回転可能に設置している。
【0115】
撹拌翼152は、タンク149の内部空間において回転軸151と一体に配置しており、これにより回転軸151を中心に回転してタンク149の内部空間を流通する混練物を撹拌可能に構成している。撹拌翼152は、本実施形態において
図8から
図10に示すように平面視した際に略均等な角度間隔で高さ方向Zにおける位置を異ならせるように配置している。ただし、タンクの内部空間を流通する混練物を撹拌できれば、撹拌翼の個数や具体的な配置は
図8から
図10に限定されない。
【0116】
一般的に、樹脂とバイオマス材料とを含む組成物(混練物)を乾燥する際、乾燥温度を高く設定すると、混練物中の樹脂同士が融着または接着し、それが互着という現象として現れうる。そのため、乾燥温度を高く設定することが難しく、その分、製造工程において乾燥のためのスペースを比較的広く取る必要がある。これに対して、撹拌翼を備える乾燥装置で混錬物を乾燥させることによって、乾燥温度を高く設定しても、混練物内部に含まれている微量な水分も揮発させつつ、樹脂同士の互着を防止または抑制することができる。また、樹脂同士の互着を防止または抑制することによって、乾燥を行うタンク内の温度を互着が比較的起こりやすい状況と比べて高く設定することができる。また、樹脂組成物の製造工程において必要な乾燥スペースが大きくなることを抑制できる。
【0117】
流出口153は、配管p6を介してタンク149と気体発生部131と連通するように構成している。気体発生部131から発生した気体は、配管p2を介して除湿部132に流通し、配管p3を介して圧縮機133の加熱部134に流通し、配管p4を介して圧縮部139に流通し、配管p5を介してタンク149に流通し、配管p6を介して気体発生部131に戻る。このように気体発生部131から発生した気体は、除湿部132、加熱部134、圧縮部139、タンク149を循環する。
【0118】
流出口154はタンク149に設けられ、タンク149の内部空間に流入した混練物を含む気体を下流側に流通させるように構成している。流出口154は、本実施形態において
図9に示すようにタンク149の下部に設けるように構成している。流入口147、148、および流出口153、154は流入口135などと同様に筒状に構成できる。
【0119】
検出部155は、第1乾燥部130を構成する撹拌部156の下流側において流出口154に隣接して配置され、撹拌部156によって撹拌・乾燥した樹脂組成物となる混練物の含水率を測定可能に構成している。検出部155は流通する樹脂組成物の含水率を測定できれば特に限定されないが、例示すればスイス ブライエアープロコン社製のBRYSCANTMセンサーシリーズMoisture MinderTM M100等の近赤外線を照射することで含水率を測定する機器を利用できる。
【0120】
(第2乾燥部160)
第2乾燥部160は、第1乾燥部130よりも下流側に設置している。第2乾燥部160は、
図3、
図13に示すように気体発生部161と、除湿部162と、圧縮機163と、撹拌部170と、検出部178と、を備える。
【0121】
気体発生部161は、配管p8、p9、p10、p11によって後述する撹拌部170のタンク173と接続され、タンク173の内部空間に流入する混練物を乾燥させる気体を発生可能に構成している。気体発生部161のその他の内容は気体発生部131と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0122】
除湿部162は、配管p8、p9によって気体発生部161と接続され、気体発生部161から流通する気体を除湿するように設けている。除湿部162のその他の内容は除湿部132と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0123】
圧縮機163は、
図11に示すように圧縮機133と比較して加熱部134を備えない一方で、圧縮部164を備える。圧縮部164は、配管p8、p9、p10によって気体発生部161からの気体が流通可能であり、気体発生部161から流通する気体を圧縮可能に構成している。圧縮部164は、流入口165と、圧縮チャンバ166と、圧縮弁167と、排水部168と、流出口169と、を備える。
【0124】
流入口165は、圧縮チャンバ166に設けられ、配管p10を介して除湿部162と連通するように構成している。圧縮チャンバ166は、除湿部162から流通する気体が圧縮弁167により圧縮される空間として構成している。圧縮弁167は、圧縮チャンバ166に設けられ、除湿部162から流入する気体の圧力を調整することによって室内の気体を圧縮可能に構成している。排水部168は、圧縮チャンバ166の下部において液化した成分を圧縮チャンバ166から排出可能に構成している。流出口169は、配管p11を介して圧縮チャンバ166において圧縮された気体を撹拌部170のタンク173に流出可能に構成している。流入口165、圧縮チャンバ166、および流出口169の形状などは、第1乾燥部130の流入口141、圧縮チャンバ142、流出口145の各々と同様に構成できる。
【0125】
撹拌部170は、
図12、
図13に示すように流入口171、172と、タンク173と、回転軸174と、撹拌翼175と、流出口176、177と、を含む。撹拌部170は、撹拌部146と異なり、ヒーターを備えない以外の構成は撹拌部146と同様である。
【0126】
すなわち、流入口171はタンク173の上部に設けられ、配管p11を介して圧縮部164の流出口169と連通するように構成している。流入口172は、流入口171と別にタンク173の上部に設けられ、配管p7を介して第1乾燥部130からの混練物をタンク173に流通可能に構成している。
【0127】
タンク173は、乾燥対象となる混練物と圧縮部164から流通する気体を流通させる空間として構成している。タンク173は、樹脂組成物となる混練物を収容可能な内部空間を設けるように構成している。また、タンク173は、タンク149と同様に配管p7を介して乾燥対象となる混練物をタンク173の内部空間に吸引する吸引ブロワなどを設置することができる。タンク173は、タンク149と同様に円筒と円錐台を組み合わせたような形状として構成しているが、混練物を含む気体を流通できれば具体的な形状は上記に限定されない。
【0128】
回転軸174は、タンク173の内部空間を流通する混練物を撹拌させる撹拌翼175の軸として構成している。撹拌翼175は、タンク173の内部空間に配置され、回転軸174を中心に回転して内部空間を流通する混練物を乾燥させるように構成している。回転軸174と撹拌翼175は、第1乾燥部130の回転軸151と撹拌翼152と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0129】
流出口176は、配管p12を介してタンク173と気体発生部161を連通するように構成している。流出口177は、タンク173の下部に設けられ、タンク173の内部空間に流入した混練物を含む気体を下流側に流通させるように構成している。
【0130】
検出部178は、第2乾燥部160を構成する撹拌部170の下流側において流出口177に隣接して配置され、撹拌部170によって撹拌・乾燥した樹脂組成物となる混練物の含水率を測定可能に構成している。検出部178は、第1乾燥部130の検出部155と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0131】
第2乾燥部160には、第1乾燥部130から流通し、樹脂組成物となる混練物を冷却する冷却部179を設けている。冷却部179は、
図3に示すように、混練物を乾燥させる気体の流路で見て、気体発生部131と除湿部132の間に配置している。冷却部179は、配管p8を通じて気体発生部131からの気体を流通させる流入口と、内部空間と、内部空間に設けられる熱交換器と、配管p9を通じて冷却された材料を含む気体を除湿部162に排出する流出口などを含む公知の冷却機を採用できる。冷却部179を流通する気体は、配管p8~p12を通じて気体発生部161、冷却部179、除湿部162、圧縮機163、撹拌部170を循環するように構成している。
【0132】
第2乾燥部160の気体発生部161で発生した気体は配管p8を経て冷却部179で冷却され、配管p9を経て除湿部162において除湿され、配管p10を経て圧縮機163により圧縮され、配管p11を経て撹拌部170のタンク173の内部空間に流通する。
【0133】
(二軸混練装置100を用いた樹脂組成物の製造方法)
図14のフローチャートを参照しながら、二軸混練装置1を用いた場合の樹脂組成物の製造方法について具体的に説明する。
【0134】
まず、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料と、を投入する(ST1)。この時点で第1収容部10の第1収容空間S1に配置された回転部材31~39、41、42は所定の温度に加温した状態(例えば、120~190℃)に設定することができる。回転部材31~39、41、42の温度は全て同じでも行っていてもよい。
【0135】
次に、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とは、投入部20のホッパーから投入される。バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料は、回転部材31に送られて樹脂溶解部に相当する回転部材32、33に搬送される。本発明の一実施形態において、第1収容空間S1における樹脂溶解部に相当する部位の温度は、樹脂を溶融させる観点で、例えば120~190℃、130~170℃、132~165℃、あるいは、135~150℃である。このように加温された状態において、回転部材32、33によって上述した原料が混練され、樹脂が溶解する(ST2)。
【0136】
そして、投入された原料由来の物は混練部に相当する回転部材34へと送られ、混練が行われる(ST3)。混練部に相当する回転部材34では、上述のように回転部材34が樹脂溶解部に相当する回転部材32よりも薄く構成されることによって分散と撹拌が促進される。回転部材34を通過し、さらに回転部材35に送られる。
【0137】
なお、本発明の一実施形態において、第1収容空間S1における混練部に相当する部位の温度は、効率的に混練する観点で、例えば130~195℃、150~190℃、あるいは、160~185℃である。
【0138】
また、回転部材33から回転部材34へ送られる際に水分は脱水部50によって脱水される。このとき、スクリュー51が脱水部50の入り口付近で回転することによって原料由来の固形成分は第1収容空間S1に残ったまま下流側に送られ、水分等が第2収容部52の開口部からある程度排出される。
【0139】
回転部材35では、投入された原料由来の物が回転部材35によって下流側に送られつつ、第1脱気部60によって水分がさらに排出される(ST4)。第1脱気部60は、ポンプ等に接続されて原料に含まれる水分が吸引される一方で、スクリュー61によって原料の固形成分は第1収容空間S1に残り、圧縮部に相当する回転部材36~39に送られる。
【0140】
圧縮部に相当する回転部材36~39では回転部材37、39の位置において上記原料が上流側に送り戻されたうえで下流側に送られることによって、原料の密度が高くなるように圧縮の工程が行われる(ST5)。本発明の一実施形態において、第1収容空間S1における圧縮部に相当する部位の温度は、効率的に圧縮する観点で、例えば125~193℃、145~188℃、あるいは、155~182℃である。
【0141】
回転部材36~39を通過した原料由来の物は、回転部材41、42において排出部80に向けてさらに送られる。第2脱気部70では、ピッチの異なる回転部材41、42のうち、回転部材41の位置においてポンプ等によって水分がさらに吸引されて脱気される(ST6)。原料は、回転部材42によって回転部材41よりも送り速度が上昇しつつ、排出部80において複数の紐形状の混練物となって第1収容空間S1の外部に排出される。本発明の一実施形態において、排出部に相当する部位の温度は、効率的に排出する観点で、例えば125~193℃、145~188℃、あるいは、155~182℃である。
【0142】
本発明の一実施形態において、回転部材31~39、41、42の回転数は、100~300rpm、150~295rpm、あるいは、200~290rpmである。
【0143】
冷却部90では、紐状の混練物がコンベヤー91によって切断部110に向けて搬送される。この間に混練物は、液体供給部92によって冷却水を吹きかけられて冷却され、その後、気体供給部93において冷却風に曝されることによって冷却される(ST7)。
【0144】
冷却部90を経た紐状の混練物は、送りローラー111によって搬送され、切断ローラー112によって所定の長さに切断される(ST8)。切断部110によってペレット状に切断された混練物は平面状に引き延ばし、乾燥工程(ST9)を経る。
【0145】
ペレット状に切断された混練物は、乾燥工程(ST9)において、選別部120で所定の大きさ以下のものに選別され、吸引ブロワ等の機械によって吸引されて配管p1を通じて第1乾燥部130に流通する。第1乾燥部130では気体発生部131、除湿部132、圧縮機133、撹拌部146のタンク149を循環する気体によってペレット状に切断された混練物がタンク149の内部空間において除湿・加熱・撹拌・乾燥され、吸引ブロワ等によって配管p7を通じて第2乾燥部160に流通する。第1乾燥部130ではタンク149内の温度がおよそ60~120℃程度で、1~3時間程度で乾燥が行われる。
【0146】
第2乾燥部160では気体発生部161、冷却部179、除湿部162、圧縮機163、撹拌部170のタンク173を循環する気体によって混練物がタンク173の内部空間において除湿・冷却・撹拌・乾燥される。第2乾燥部160において除湿・冷却・撹拌・乾燥された気体は、配管(図示省略)を通じて最終的に樹脂組成物を収容する容器(ストックタンク)に収容される。第2乾燥部160からストックタンクまでにおいても第1乾燥部130のタンク149等と同様に吸引ブロワ等を配管に接続して樹脂組成物を流通させることができる。第2乾燥部160ではタンク173内の温度がおよそ25~50℃程度、1~3時間程度で乾燥が行われる。
【0147】
本発明の一実施形態において、第1乾燥部130および第2乾燥部160を含む乾燥装置を用いて前記混練物を乾燥する工程をさらに有する。本発明の一実施形態において、第1乾燥部130はタンク149と、気体発生部131と、撹拌翼152と、を備える撹拌部146と、圧縮部139と、を備える。第2乾燥部160は、タンク173と、気体発生部161と、撹拌翼175と、を備える撹拌部170と、圧縮部164と、を備える。
【0148】
(樹脂組成物のメルトフローレイト)
本発明の一実施形態において、樹脂組成物のメルトフローレイト(JIS K7210:1999、温度190℃、荷重10.0kgf;MFRともいう)は、加工性の観点から10g/10min~30g/10minであることが好ましい。
【0149】
<成形品の製造方法>
本発明の一態様は、上記の製造方法によって樹脂組成物を得、当該樹脂組成物を成形することを有する、成形品の製造方法である。当該樹脂組成物を成形することにより、湾曲部や凹凸部を有する複雑な形状の成形品を成形することが容易となる。
【0150】
成形を行う際の温度は、得られる成形品の退色抑制と強度とを両立する観点から、120~190℃であることが好ましく、140~180℃であることが好適である。
【0151】
本発明の一実施形態に係る成形品の用途としては、例えば、電子機器や家電製品などの筐体、補強材、建材用部品、自動車部品、二輪車用部品、航空機用部品、鉄道車両用部品、日用雑貨品、等が挙げられる。
【0152】
本発明の一実施形態において、前記成形は、ブロー成形、射出成形などの種々の方法が挙げられる。
【0153】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0154】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
【0155】
1.含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工程と、を有し、前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造方法。
【0156】
2.前記バイオマス材料を準備する工程が、前記食品系バイオマスを予め自然乾燥しておく工程を有する、上記1.に記載の製造方法。
【0157】
3.前記バイオマス材料を準備する工程が、前記食品系バイオマスを含水率が15質量%以下の別のバイオマスと予め混合しておく工程を有する、上記1.または2.に記載の製造方法。
【0158】
4.前記食品系バイオマスが、野菜、果実、コーヒー滓および茶殻からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記1.~3.のいずれかに記載の製造方法。
【0159】
5.前記食品系バイオマスが、野菜および果実からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記4.に記載の製造方法。
【0160】
6.前記別のバイオマスが、木質系バイオマス、穀物系バイオマスおよび籾殻からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記3.に記載の製造方法。
【0161】
7.前記バイオマス材料の嵩密度が、0.1g/cm3以上である、上記1.~6.のいずれかに記載の製造方法。
【0162】
8.前記バイオマス材料の含水率が、50質量%未満である、上記1.~7.のいずれか記載の製造方法。
【0163】
9.前記樹脂が、非生分解性樹脂または生分解性樹脂である、上記1.~8.のいずれかに記載の製造方法。
【0164】
10.前記樹脂の融点が、120℃以下である、上記1.~9.のいずれかに記載の製造方法。
【0165】
11.前記混練物を乾燥装置において乾燥する工程をさらに有する、上記1.~10.のいずれかに記載の製造方法。
【0166】
12.前記乾燥装置が、内部に撹拌機能と圧力調整機能を有する、上記11.に記載の製造方法。
【0167】
13.上記1.~12.のいずれかに記載の製造方法によって樹脂組成物を得、前記樹脂組成物を成形することを有する、成形品の製造方法。
【0168】
14.前記成形が、射出成形を含む、上記13.に記載の製造方法。
【実施例0169】
(実施例1)
食品加工工場から出たキャベツの芯残渣(サイズ:10~20mm 粗粉砕物、含水率90質量%)と、ヒノキ間伐材木粉(サイズ:1~2mm 粗粉砕物、含水率10質量%)とを質量比2:1で秤取り、非加熱簡易ミキサー(コンクリートミキサー)で20分間撹拌・混合したのちに、風のない室内のシートの上に拡散して緩やかな条件(室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件)で一昼夜(つまり24時間)かけて食品残渣・木粉混合物中の水分を低減させる自然乾燥を行った。
【0170】
一昼夜後の食品残渣・木粉混合物(バイオマス材料)の含水率は、40質量%であり、嵩密度は0.5g/cm3であった。
【0171】
続いて、PP(日本ポリプロピレン ウインテック WSX03 サイズ:4mm 融点 114℃ 47質量部と、上記の食品残渣・木粉混合物50質量部(水を除いた固形分の換算量。水の量を考慮すると約83.3質量部)と、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(理研ビタミン MG-441P)3質量部(MAPP3wt%/全量(固形物換算))とを、フィード20を通じて二軸混練装置1に投入した。
【0172】
含水率の測定は、水分測定装置(日東精工アナリテック株式会社社製 CA-310 電量滴定法 CAモード)を用いて、カールフィッシャー電量滴定法にて行った。また融点の測定は、株式会社 島津製作所社製の定試験力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(CFT-500EX)を用いて行った。
【0173】
なお、二軸混練装置1における回転部材のL/D(
図5中の(x方向のスクリュー全体長さ)÷(スクリュー1つの断面直径長さ))は50とした。
【0174】
回転部30の回転部材は上述した回転部材31~39、41、42を用いた。回転部材31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32、34の比率(ニーディングブロック比率)は25%とした。
【0175】
回転部材31~39、41、42の回転数は、280rpmとした。そして、第1収容空間S1における投入部に相当する部位を80℃、樹脂溶解部に相当する部位を140℃、混練部に相当する部位を180℃に加温した。なお材料が回転部材33から回転部材34へ送られる際に材料に含まれる水分を脱水部50によって脱水した。
【0176】
また、第1収容空間S1における第1脱気部60と第2脱気部70との接続部を160℃、圧縮部に相当する部位を170℃、排出部80を170℃に加温し、混練物を得た。
【0177】
得られた混練物を、
図6、
図7、
図11、
図12に示すような撹拌部146と圧縮部139を備える第1乾燥部130および撹拌部170と圧縮部164とを備える第2乾燥部160に係る高効率乾燥設備を用いて乾燥を行った。第1乾燥部130ではタンク149の内部空間を105℃に設定して混練物の乾燥を2時間実施し、第2乾燥部160での乾燥を40℃2時間実施して実施例1に係る樹脂組成物を得た。
【0178】
(実施例2~10および比較例)
他の実施例においては、a)主たる食品残渣(食品系バイオマス)、それとは別のバイオマスであるb)含水率調整用フィラー、それらの混合比を表1に示されるように変更し、含水率を必要に応じて自然乾燥の時間を変更することで調整した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を得た。なお実施例10については、実施例1においてb)含水率調整用フィラーを添加せず、また、実施例1における自然乾燥の条件を以下のように変更した。すなわち、実施例1と同様のキャベツの芯残渣を、気温20~25℃、相対湿度40~50%RHの条件で、上部のみが解放された囲いの中に入れ、キャベツの芯残渣に1時間日光を当てた。なお、実施例および比較例ともにa)食品残渣(食品系バイオマス)と、b)含水率調整用フィラーとの合計量は全て同じにした。
【0179】
比較例においては、比較例1ではb)含水率調整用フィラーを添加せず、比較例2では自然乾燥を行わず、比較例3、4では自然乾燥の代わりに送風乾燥機(ヤマト科学社製 型番DNG810)による120℃8時間での乾燥に変更し、比較例5では相溶化剤を添加しない以外は実施例1と同様に樹脂組成物を作製した。また、比較例6では脱水部50を備えない以外は実施例1と同様の二軸混練装置を用いて、実施例1と同様に樹脂組成物を得た。
【0180】
(実施例11)
食品加工工場から出たキャベツの芯残渣(サイズ:10~20mm 粗粉砕物、含水率90質量%)と、ヒノキ間伐材木粉(サイズ:1~2mm 粗粉砕物、含水率10質量%)とを質量比2:1で秤取り、非加熱簡易ミキサー(コンクリートミキサー)で20分間撹拌・混合したのちに、風のない室内のシートの上に拡散して緩やかな条件(室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件)で一昼夜(つまり24時間)かけて食品残渣・木粉混合物中の水分を低減させる自然乾燥を行った。
【0181】
一昼夜後の食品残渣・木粉混合物(バイオマス材料)の含水率は、40質量%であり、嵩密度は0.5g/cm3であった。
【0182】
続いて、PLA(トタルコービオン社製ルミニー L130 サイズ:4mm 融点 159℃) 47質量部と、上記の食品残渣・木粉混合物50質量部(水を除いた固形分の換算量。水の量を考慮すると約83.3質量部)と、ポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン ポエム J-4081V)3質量部(PGFE 3wt%/全量(固形物換算))とを、フィード20を通じて二軸混練装置1に投入した。
【0183】
含水率の測定は、水分測定装置(日東精工アナリテック株式会社社製 CA-310 電量滴定法 CAモード)を用いて、カールフィッシャー電量滴定法にて行った。また融点の測定は、株式会社 島津製作所社製の定試験力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(CFT-500EX)を用いて行った。
【0184】
なお、二軸混練装置1における回転部材のL/D(
図5中の(x方向のスクリュー全体長さ)÷(スクリュー1つの断面直径長さ))は50とした。
【0185】
回転部30の回転部材は上述した回転部材31~39、41、42を用いた。回転部材31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32、34の比率(ニーディングブロック比率)は25%とした。
【0186】
回転部材31~39、41、42の回転数は、260rpmとした。そして、第1収容空間S1における投入部に相当する部位を80℃、樹脂溶解部に相当する部位を160℃、混練部に相当する部位を180℃に加温した。なお材料が回転部材33から回転部材34へ送られる際に材料に含まれる水分を脱水部50によって脱水した。
【0187】
また、第1収容空間S1における第1脱気部60と第2脱気部70との接続部を160℃、圧縮部に相当する部位を180℃、排出部80を180℃に加温し、混練物を得た。
【0188】
得られた混練物を、
図6、
図7、
図11、
図12に示すような撹拌部146と圧縮部139を備える第1乾燥部130および撹拌部170と圧縮部164とを備える第2乾燥部160に係る高効率乾燥設備を用いて乾燥を行った。第1乾燥部130ではタンク149の内部空間を110℃に設定して混練物の乾燥を3時間実施し、第2乾燥部160での乾燥を40℃2時間実施して実施例1に係る樹脂組成物を得た。
【0189】
<プレスシートの製造>
実施例、比較例の樹脂組成物を170℃ 15MPaで熱圧プレスし、プレスシートを製造した。プレスシートをサンプルとして作製しそれを評価することは、樹脂組成物を成形することによりなる成形品の評価を行うことと同視できる。
【0190】
以下、各樹脂組成物を作製するに際しての混練複合化が適正であったかの評価と、得られたプレスシートの外観評価とを行った。各基準は以下のとおりである。
【0191】
<混練複合化適性の規準>
良好:安定的に混練複合化できる。
【0192】
やや良好:混練はできるが、脱水量が多い為に、生産処理能力を低下させる必要がある。
【0193】
不安定:混練はできるが、樹脂組成物が均一に複合化されていない、または、溶融粘度が高く安定生産に不向き。
【0194】
不適:過剰水分、脱水不足により水の影響を大きく受け混練による複合化が難しく、材料が均一に混ざらない。
【0195】
<組成物の外観の規準>
良好:a)およびb)の少なくとも一方に由来する物の凝集物が殆どない。
【0196】
やや良好:a)およびb)の少なくとも一方に由来する物の凝集物が若干観察される。
【0197】
不良:a)およびb)の少なくとも一方に由来する物の凝集が多く観察される。
【0198】
なお、
図15に、実施例1、比較例2および比較例3のプレスシートの写真を示した。
図15の下の定規に示される数値はセンチメートルを示している。
【0199】
【0200】
<考察>
実施例では、混練複合化適性の評価、外観評価ともに、良好またはやや良好との結果を得ることができた。
【0201】
実施例の全体から評価すると、食品系バイオマスとしては、コーヒー滓や緑茶出し殻よりも、キャベツやいちごのような野菜や果実(果実的野菜)が良好であることが示唆された。コーヒー滓や、緑茶出し殻は、繊維質が比較的固いため(茶葉の場合、特に茎部、コーヒー滓であれば豆の一部が固い)、それが一部表面凝集として現れた結果と考えられる。また、実施例1~6の比較から、混練複合化適性の観点で、バイオマス材料の含水率は50質量%未満であることが好適であると示唆される。実施例10では直射日光によりバイオマスの表面のみが局所的に乾燥されてその局所的に乾燥された部分起因と思われる凝集がやや発生し外観の悪化が少し観察された。
【0202】
一方、比較例では、混練複合化適性の評価においては、不適または不安定であり、外観評価も不良であった。
【0203】
比較例1、2は、水分過剰であるため、剪断応力が不十分で混練不足となり、ダイヘッド(符番:80)から水分が突沸して扱いが難しく、また得られた樹脂組成物中に水分由来の気泡、鬆が入り、外観が悪い結果であった。
【0204】
比較例3、4は、水分過少であるため、材料投入が不安定で、得られた樹脂組成物中に凝集が存在し、外観が悪い結果であった。
【0205】
比較例5では、相溶化剤が入っていないので、混練が不安定(バイオマス材料と樹脂とが均一に相溶していない)ため、悪い結果となり、MFRが1g/10minと低い結果となった。
【0206】
比較例6では、混練装置中に脱水部がないため、水分過剰となり、比較例1、2と同様の結果となった。
【0207】
なお、自然乾燥のみで比較例3、4のように含水率を8質量%にすることも試みたが、長時間放置により食品系バイオマスの腐敗・劣化が進み、バイオマス材料として不適切となると判断した。
前記バイオマス材料を準備する工程が、前記セルロース系の食品系バイオマスを、含水率が15質量%以下の別のバイオマスと予め混合しておく工程を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
前記乾燥装置は、前記混練物を収容可能な内部空間を設けたタンク、配管によって前記タンクと接続され、前記内部空間に流入する前記混練物を乾燥させる気体を発生可能な気体発生部、および前記タンクの前記内部空間に配置され、回転軸を中心に回転して前記内部空間を流通する前記混練物を撹拌させる撹拌翼を備える撹拌部と、
配管によって前記気体発生部からの気体が流通可能であり、前記気体発生部から流通する気体を圧縮する圧縮部と、を有する、請求項10に記載の製造方法。