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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049104
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240402BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F25B1/00 396B
F25B1/00 101Z
F25B1/00 321B
F25B1/00 385Z
F25B43/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155367
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岩田 育弘
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 英二
(57)【要約】
【課題】非共沸混合冷媒を用いる冷凍サイクル装置では、冷媒回路を循環する冷媒の組成がベース組成から乖離して、熱交換性能及び制御性が低下するおそれがある。
【解決手段】冷凍サイクル装置100は、圧縮機21と、利用側熱交換器31と、熱源側膨張弁25と、熱源側熱交換器23と、メイン冷媒回路10と、第1アキュームレータ26と、冷媒蒸発機構27とを備える。メイン冷媒回路10には、非共沸混合冷媒が封入される。第1アキュームレータ26は、熱源側熱交換器23と圧縮機21との間に設けられる。第1アキュームレータ26には、圧縮機21に吸入される前の混合冷媒が貯留される。冷媒蒸発機構27は、第1アキュームレータ26と圧縮機21との間に設けられる。冷媒蒸発機構27は、第1アキュームレータ26に貯留され第1アキュームレータ26から圧縮機21に向かって流れる液冷媒を蒸発させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)と、
凝縮器(31,23)と、
膨張機構(25)と、
蒸発器(23,31)と、
前記圧縮機、前記凝縮器、前記膨張機構、及び、前記蒸発器が環状に接続され、混合冷媒が封入される冷媒回路(10)と、
前記冷媒回路において前記蒸発器と前記圧縮機との間に設けられ、前記圧縮機に吸入される前の前記混合冷媒が貯留される第1容器(26)と、
前記冷媒回路において前記第1容器と前記圧縮機との間に設けられ、前記第1容器に貯留され前記第1容器から前記圧縮機に向かって流れる液冷媒を蒸発させる第1機構(27)と、
を備え、
前記混合冷媒は、非共沸混合冷媒である、
冷凍サイクル装置(100)。
【請求項2】
前記蒸発器は、前記第1容器に貯留される前の前記混合冷媒と、第1流体との間で熱交換を行い、
前記第1機構は、前記液冷媒と前記第1流体との間で熱交換を行い、前記液冷媒を加熱して蒸発させる、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記第1機構は、前記蒸発器と連結されている、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記第1機構は、前記蒸発器において前記混合冷媒と熱交換された前記第1流体と、前記液冷媒との間で熱交換を行う、
請求項2又は3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷媒回路において前記第1機構と前記圧縮機との間に設けられ、前記圧縮機に吸入される前の前記混合冷媒が貯留される第2容器(36)をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷媒回路において前記第1容器と前記圧縮機との間に設けられ、前記第1機構をバイパスするバイパス回路(60)と、
前記混合冷媒が前記バイパス回路を流れる第1状態と、前記混合冷媒が前記バイパス回路を流れない第2状態と、を切り替える切替機構(62)と、
をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記圧縮機に吸入される前記混合冷媒の過熱度に応じて、前記切替機構を制御して前記第1状態と前記第2状態とを切り替える制御部(70)をさらに備える、
請求項6に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記第1機構は、前記混合冷媒を加熱する加熱部(27a)を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記混合冷媒は、エチレン系フッ化炭化水素と、前記エチレン系フッ化炭化水素より沸点が高い冷媒とを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記エチレン系フッ化炭化水素は、R1132(E)又はR1123である、
請求項9に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記混合冷媒は、R1132(E)を10.0質量%以上含む、
請求項10に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非共沸混合冷媒を用いる冷凍サイクル装置が知られている。特許文献1(特開2015-200431号公報)には、圧縮機の吸入側に接続されるアキュームレータを備え、低沸点冷媒と高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒を用いる冷凍サイクル装置である空気調和装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような冷凍サイクル装置では、アキュームレータに溜まる余剰冷媒は、高沸点冷媒を多く含む液冷媒となり、冷凍サイクル装置の冷媒回路を循環する循環冷媒は、低沸点冷媒を多く含む冷媒となる傾向がある。そのため、循環冷媒の組成が、非共沸混合冷媒のベース組成から乖離して、冷凍サイクル装置の熱交換性能及び制御性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の冷凍サイクル装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、蒸発器と、冷媒回路と、第1容器と、第1機構と、を備える。冷媒回路には、圧縮機、凝縮器、膨張機構、及び、蒸発器が環状に接続される。冷媒回路には、混合冷媒が封入される。混合冷媒は、非共沸混合冷媒である。第1容器は、冷媒回路において蒸発器と圧縮機との間に設けられる。第1容器には、圧縮機に吸入される前の混合冷媒が貯留される。第1機構は、冷媒回路において第1容器と圧縮機との間に設けられる。第1機構は、第1容器に貯留され第1容器から圧縮機に向かって流れる液冷媒を蒸発させる。
【0005】
第1観点の冷凍サイクル装置では、アキュームレータ(第1容器)内に貯留される液冷媒は、蒸発した後に圧縮機に吸入されて冷媒回路を循環する。これにより、冷媒回路を循環する冷媒の組成が、冷媒回路に封入される非共沸混合冷媒のベース組成から乖離することが抑制される。
【0006】
第2観点の冷凍サイクル装置は、第1観点の冷凍サイクル装置であって、蒸発器は、第1容器に貯留される前の混合冷媒と、第1流体との間で熱交換を行う。第1機構は、液冷媒と第1流体との間で熱交換を行い、液冷媒を加熱して蒸発させる。
【0007】
第2観点の冷凍サイクル装置では、蒸発器と同様の熱交換器(第1機構)を用いて、圧縮機に吸入される前の液冷媒を蒸発させることができる。
【0008】
第3観点の冷凍サイクル装置は、第2観点の冷凍サイクル装置であって、第1機構は、蒸発器と連結されている。
【0009】
第4観点の冷凍サイクル装置は、第2観点又は第3観点の冷凍サイクル装置であって、第1機構は、蒸発器において混合冷媒と熱交換された第1流体と、液冷媒との間で熱交換を行う。
【0010】
第5観点の冷凍サイクル装置は、第1乃至第4観点のいずれか1つの冷凍サイクル装置であって、第2容器をさらに備える。第2容器は、冷媒回路において第1機構と圧縮機との間に設けられ、圧縮機に吸入される前の混合冷媒が貯留される。
【0011】
第5観点の冷凍サイクル装置では、第1のアキュームレータ(第1容器)から圧縮機に向かって流れる液冷媒は、一部が蒸発した後、圧縮機に吸入される前に第2のアキュームレータ(第2容器)に貯留される。第2のアキュームレータ内のガス冷媒は、圧縮機に送られる。これにより、冷媒回路を循環する冷媒の組成がベース組成から乖離することが効果的に抑制される。
【0012】
第6観点の冷凍サイクル装置は、第1乃至第5観点のいずれか1つの冷凍サイクル装置であって、バイパス回路と、切替機構と、をさらに備える。バイパス回路は、冷媒回路において第1容器と圧縮機との間に設けられる。バイパス回路は、第1機構をバイパスする。切替機構は、混合冷媒がバイパス回路を流れる第1状態と、混合冷媒がバイパス回路を流れない第2状態と、を切り替える。
【0013】
第6観点の冷凍サイクル装置では、例えば、冷媒回路を循環する冷媒の量が少ない場合に、冷媒の過熱を抑制するために、バイパス回路に冷媒を流すことができる。
【0014】
第7観点の冷凍サイクル装置は、第6観点の冷凍サイクル装置であって、制御部をさらに備える。制御部は、圧縮機に吸入される混合冷媒の過熱度に応じて、切替機構を制御して第1状態と第2状態とを切り替える。
【0015】
第8観点の冷凍サイクル装置は、第1乃至第7観点のいずれか1つの冷凍サイクル装置であって、第1機構は、混合冷媒を加熱する加熱部を有する。
【0016】
第8観点の冷凍サイクル装置では、圧縮機に吸入される前の液冷媒を加熱して蒸発させることで、圧縮機に液冷媒が吸入されることが効果的に抑制される。
【0017】
第9観点の冷凍サイクル装置は、第1乃至第8観点のいずれか1つの冷凍サイクル装置であって、混合冷媒は、エチレン系フッ化炭化水素と、エチレン系フッ化炭化水素より沸点が高い冷媒とを含む。
【0018】
第10観点の冷凍サイクル装置は、第9観点の冷凍サイクル装置であって、エチレン系フッ化炭化水素は、R1132(E)又はR1123である。
【0019】
第11観点の冷凍サイクル装置は、第10観点の冷凍サイクル装置であって、混合冷媒は、R1132(E)を10.0質量%以上含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の冷凍サイクル装置100の全体構成の一例を示す図である。
図2】制御部70のブロック図である。
図3】第1アキュームレータ26の内部の概略的な構成を示す図である。
図4】第2実施形態の冷凍サイクル装置200の全体構成の一例を示す図である。
図5】第2実施形態の循環冷媒の状態を説明するためのモリエル線図である。
図6】第3実施形態の冷凍サイクル装置300の全体構成の一例を示す図である。
図7】第2アキュームレータ36の内部の概略的な構成を示す図である。
図8】第3実施形態の循環冷媒の状態を説明するためのモリエル線図である。
図9】変形例Cの冷凍サイクル装置200の全体構成の一例を示す図である。
図10】変形例Dの冷凍サイクル装置300の全体構成の一例を示す図である。
図11】変形例Eの冷凍サイクル装置400の全体構成の一例を示す図である。
図12】変形例Fの冷凍サイクル装置500の全体構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
(1)冷凍サイクル装置100の構成
本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、所定の空調対象空間の冷房運転及び暖房運転を行う空気調和装置である。
【0022】
図1に示されるように、冷凍サイクル装置100は、主として、熱源ユニット2と、利用ユニット3と、液側冷媒連絡配管6と、ガス側冷媒連絡配管7と、リモコン8と、制御部70と、を備える。冷凍サイクル装置100では、熱源ユニット2と利用ユニット3とが、液側冷媒連絡配管6及びガス側冷媒連絡配管7を介して接続されることで、冷媒が循環するメイン冷媒回路10が構成される。
【0023】
冷凍サイクル装置100では、メイン冷媒回路10内に封入される冷媒が、圧縮され、凝縮され、減圧され、蒸発された後に、再び圧縮される、という蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0024】
冷凍サイクル装置100は、複数台の利用ユニット3を備えてもよい。この場合、1台の熱源ユニット2に対して複数台の利用ユニット3が並列に接続されることで、メイン冷媒回路10が構成される。
【0025】
メイン冷媒回路10内に封入される冷媒は、非共沸混合冷媒である。非共沸混合冷媒は、沸点が互いに異なる複数種類の冷媒の混合物である。非共沸混合冷媒は、例えば、エチレン系フッ化炭化水素と、エチレン系フッ化炭化水素より沸点が高い冷媒と、を含む。エチレン系フッ化炭化水素は、例えば、R1132(E)又はR1123である。エチレン系フッ化炭化水素より沸点が高い冷媒は、例えば、R1234yfである。この場合、非共沸混合冷媒は、例えば、R1132(E)を10.0質量%以上含む混合冷媒である。
【0026】
(1-1)熱源ユニット2
熱源ユニット2は、空調対象空間を有する建物の外部等の屋外に設置される。図1に示されるように、熱源ユニット2は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、熱源側熱交換器23と、熱源側ファン24と、熱源側膨張弁25と、第1アキュームレータ26と、冷媒蒸発機構27と、液側閉鎖弁28と、ガス側閉鎖弁29と、を有する。
【0027】
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。圧縮機21は、ロータリ式又はスクロール式等の容積可変型の圧縮要素(図示せず)が圧縮機モータ21aによって回転駆動される密閉構造を有する。圧縮機モータ21aは、インバータにより運転周波数(圧縮機21の回転数)の制御が可能である。
【0028】
四路切換弁22は、メイン冷媒回路10の接続状態を切り換えることで、冷房運転接続状態と暖房運転接続状態とを相互に切り換える。冷房運転接続状態(図1の点線の状態)では、圧縮機21の吐出側と熱源側熱交換器23のガス側とが接続され、かつ、圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁29とが接続される。暖房運転接続状態(図1の実線の状態)では、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁29とが接続され、かつ、圧縮機21の吸入側と熱源側熱交換器23のガス側とが接続される。四路切換弁22の接続ポートの1つは、圧縮機21の吐出側と第1配管51を介して接続される。
【0029】
熱源側熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の放熱器(凝縮器)として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の吸熱器(蒸発器)として機能する。
【0030】
熱源側ファン24は、熱源ユニット2内に空調対象空間外の空気(外気等)を熱源側熱交換器23に供給し、熱源側熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、熱源ユニット2の外部に排出するための空気流れを生じさせる。熱源側ファン24は、熱源側ファンモータ24aによって回転駆動される。
【0031】
熱源側膨張弁25は、冷媒を減圧する機能を有する絞り機構である。熱源側膨張弁25は、熱源側熱交換器23の液側と、液側閉鎖弁28との間に設けられる。熱源側膨張弁25は、制御部70による制御により開度を調節可能な電動膨張弁である。
【0032】
第1アキュームレータ26は、圧縮機21の吸入側と、四路切換弁22の接続ポートの1つとの間に設けられる。暖房運転接続状態のメイン冷媒回路10において、第1アキュームレータ26は、圧縮機21と熱源側熱交換器23との間に設けられる。第1アキュームレータ26の内部には、圧縮機21の吸入側に接続される第2配管52の端部と、四路切換弁22の接続ポートの1つに接続される第3配管53の端部とが配置される。第2配管52と第3配管53とは、第1アキュームレータ26を介して互いに接続される。
【0033】
第1アキュームレータ26は、メイン冷媒回路10における余剰冷媒を液冷媒として一時的に貯留することが可能な冷媒容器である。メイン冷媒回路10を循環する冷媒は、第3配管53を流れて第1アキュームレータ26の内部に流入する。第1アキュームレータ26の内部に貯留される冷媒は、第2配管52を流れて第1アキュームレータ26から流出する。
【0034】
冷媒蒸発機構27は、圧縮機21の吸入側と、第1アキュームレータ26との間に設けられる。冷媒蒸発機構27は、第2配管52に設けられる。第2配管52は、冷媒蒸発機構27によって吐出側配管52aと吸入側配管52bとに分割される。吐出側配管52aは、第1アキュームレータ26と、冷媒蒸発機構27とを接続する。吸入側配管52bは、冷媒蒸発機構27と、圧縮機21の吸入側とを接続する。
【0035】
液側閉鎖弁28は、熱源ユニット2の、液側冷媒連絡配管6との接続部分に配置される手動弁である。
【0036】
ガス側閉鎖弁29は、熱源ユニット2の、ガス側冷媒連絡配管7との接続部分に配置される手動弁である。
【0037】
熱源ユニット2は、熱源ユニット2を構成する各部品の動作を制御する熱源ユニット制御部20を有する。熱源ユニット制御部20は、制御部70を構成する。熱源ユニット制御部20は、例えば、CPU及びメモリ等を含むマイクロコンピュータである。熱源ユニット制御部20は、利用ユニット3の利用ユニット制御部30と通信線を介して接続され、制御信号等の送受信を行う。
【0038】
(1-2)利用ユニット3
利用ユニット3は、空調対象空間である部屋等の壁及び天井等に設置される。図1に示されるように、利用ユニット3は、主として、利用側熱交換器31と、利用側ファン32と、を有する。
【0039】
利用側熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の吸熱器(蒸発器)として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の放熱器(凝縮器)として機能する。利用側熱交換器31の液側から延びる配管は、液側冷媒連絡配管6と接続される。利用側熱交換器31のガス側から延びる配管は、ガス側冷媒連絡配管7と接続される。これにより、メイン冷媒回路10には、圧縮機21、熱源側熱交換器23、熱源側膨張弁25、及び、利用側熱交換器31が環状に接続される。
【0040】
利用側ファン32は、利用ユニット3内に空調対象空間の空気を利用側熱交換器31に供給し、利用側熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、空調対象空間に排出するための空気流れを生じさせる。利用側ファン32は、利用側ファンモータ32aによって回転駆動される。
【0041】
利用ユニット3は、利用ユニット3を構成する各部品の動作を制御する利用ユニット制御部30を有する。利用ユニット制御部30は、制御部70を構成する。利用ユニット制御部30は、例えば、CPU及びメモリ等を含むマイクロコンピュータである。利用ユニット制御部30は、熱源ユニット2の熱源ユニット制御部20と通信線を介して接続され、制御信号等の送受信を行う。
【0042】
(1-3)リモコン8
リモコン8は、空調対象空間、又は、空調対象空間を有する建物内の特定の空間に配置される。リモコン8は、冷凍サイクル装置100のユーザが、冷凍サイクル装置100に各種指示を入力するための入力装置として機能する。ユーザは、例えば、リモコン8を操作して、冷凍サイクル装置100の運転状態(暖房運転又は冷房運転)を切り換えたり、空調対象空間の設定温度を調整したりする。リモコン8は、冷凍サイクル装置100の運転状態、及び、所定の報知情報を表示するための表示装置としても機能する。リモコン8は、熱源ユニット制御部20及び利用ユニット制御部30と通信線を介して接続され、相互に信号の送受信を行う。
【0043】
(1-4)制御部70
冷凍サイクル装置100では、熱源ユニット制御部20と利用ユニット制御部30とが通信線を介して接続されることで、冷凍サイクル装置100の動作を制御するハードウェアである制御部70が構成される。制御部70による制御は、熱源ユニット制御部20及び利用ユニット制御部30が一体的に動作することにより実現される。
【0044】
図2に示されるように、制御部70は、熱源ユニット2に含まれるアクチュエータと電気的に接続される。熱源ユニット2に含まれるアクチュエータは、具体的には、圧縮機21の圧縮機モータ21a、熱源側膨張弁25、及び、熱源側ファン24の熱源側ファンモータ24aである。制御部70は、リモコン8、及び、利用ユニット3に含まれるアクチュエータとも電気的に接続される。利用ユニット3に含まれるアクチュエータは、具体的には、利用側ファン32の利用側ファンモータ32aである。
【0045】
図2に示されるように、制御部70は、主として、記憶部71と、通信部72と、モード制御部73と、アクチュエータ制御部74と、表示制御部75とを有する。これらの各要素は、制御部70の特定の機能を実現する。制御部70は、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等に記憶された制御プログラムを実行することで、これらの機能を実行する。
【0046】
記憶部71は、制御部70の他の要素からの依頼を受けて、所定の情報を所定の記憶領域に格納する。所定の情報とは、例えば、制御部70が実行する演算の結果、及び、リモコン8に入力されるコマンドである。
【0047】
通信部72は、制御部70に接続される各機器と、信号の送受信を行うための通信インターフェースとして機能する。通信部72は、アクチュエータ制御部74からの依頼を受けて、指定されたアクチュエータに所定の信号を送信する。通信部72は、リモコン8等から出力された信号を受信して、所定の記憶領域に格納するよう記憶部71に依頼する。
【0048】
モード制御部73は、冷凍サイクル装置100の運転モードの切り替え等を行う。
【0049】
アクチュエータ制御部74は、制御プログラムに基づいて、冷凍サイクル装置100に含まれる各アクチュエータの動作を制御する。例えば、アクチュエータ制御部74は、設定温度等に応じて、圧縮機21の回転数、熱源側膨張弁25の開度、熱源側ファン24の回転数、及び、利用側ファン32の回転数等をリアルタイムに制御する。
【0050】
表示制御部75は、表示装置としてのリモコン8の動作を制御する機能部である。表示制御部75は、冷凍サイクル装置100の運転状態及び状況に係る情報等をユーザに通知するために、リモコン8に所定の情報を出力させる。例えば、表示制御部75は、運転モード及び設定温度等の情報をリモコン8のディスプレイに表示させる。
【0051】
(2)冷凍サイクル装置100の運転モード
空気調和装置である冷凍サイクル装置100は、冷房運転モード又は暖房運転モードで運転して、空調対象空間の空気の温度及び湿度を調整する。制御部70は、ユーザによってリモコン8に入力された指示に基づいて、冷房運転モード及び暖房運転モードのいずれの運転モードで運転すべきかを判断する。
【0052】
(2-1)冷房運転モード
冷房運転モードでは、制御部70は、四路切換弁22を冷房運転接続状態にして、空調対象空間における冷房運転を実行する。冷房運転モードでは、制御部70は、例えば、メイン冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度になるように、圧縮機21の回転数を制御する。
【0053】
冷房運転モードでは、熱源ユニット2の圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、第1配管51及び四路切換弁22を通過して、熱源側熱交換器23を流れる。熱源側熱交換器23を流れる冷媒は、屋外の空気と熱交換することにより放熱又は凝縮した後、熱源側膨張弁25に向かって流れる。制御部70は、熱源側熱交換器23の過冷却度、及び、利用側熱交換器31の過熱度が所定の目標値になる等の条件が満たされるように、熱源側熱交換器23と利用側熱交換器31との間に位置する熱源側膨張弁25の開度を制御する。
【0054】
熱源側膨張弁25で減圧された冷媒は、液側閉鎖弁28及び液側冷媒連絡配管6を通過して利用ユニット3に流入し、利用側熱交換器31を流れる。利用側熱交換器31を流れる冷媒は、空調対象空間の空気と熱交換することで吸熱又は蒸発した後、ガス側冷媒連絡配管7を流れて、ガス側閉鎖弁29から熱源ユニット2に流入する。熱源ユニット2に流入した冷媒は、四路切換弁22、第3配管53、第1アキュームレータ26及び第2配管52を経て、再び、圧縮機21に吸入される。第1アキュームレータ26では、利用側熱交換器31で蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
【0055】
(2-2)暖房運転モード
暖房運転モードでは、制御部70は、四路切換弁22を暖房運転接続状態にして、空調対象空間における暖房運転を実行する。暖房運転モードでは、制御部70は、例えば、メイン冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が目標凝縮温度になるように、圧縮機21の回転数を制御する。
【0056】
暖房運転モードでは、熱源ユニット2の圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、第1配管51、四路切換弁22、ガス側閉鎖弁29及びガス側冷媒連絡配管7を通過して利用ユニット3に流入し、利用側熱交換器31を流れる。利用側熱交換器31を流れる冷媒は、空調対象空間の空気と熱交換することで放熱又は凝縮した後、液側冷媒連絡配管6を流れて、液側閉鎖弁28から熱源ユニット2に流入する。熱源ユニット2に流入した冷媒は、熱源側膨張弁25で減圧される。制御部70は、利用側熱交換器31の過冷却度、及び、熱源側熱交換器23の過熱度が所定の目標値になる等の条件が満たされるように、利用側熱交換器31と熱源側熱交換器23との間に位置する熱源側膨張弁25の開度を制御する。
【0057】
熱源側膨張弁25で減圧された冷媒は、熱源側熱交換器23を流れる。熱源側熱交換器23を流れる冷媒は、屋外の空気と熱交換することにより吸熱又は蒸発した後、四路切換弁22、第3配管53、第1アキュームレータ26及び第2配管52を経て、再び、圧縮機21に吸入される。第1アキュームレータ26では、熱源側熱交換器23において蒸発しきれなかった液冷媒が余剰冷媒として貯留される。
【0058】
(3)詳細構成
(3-1)第1アキュームレータ26
図3に示されるように、第1アキュームレータ26は、冷媒が貯留される容器である第1ケーシング26aを有する。第2配管52(吐出側配管52a)及び第3配管53は、第1ケーシング26aの上面を貫通した状態で第1ケーシング26aに固定されている。第1ケーシング26aの内部において、第2配管52及び第3配管53は鉛直方向に沿って延びている。
【0059】
第1ケーシング26aの内部において、第2配管52の下端52mは、第3配管53の下端53mよりも下方に位置している。第2配管52の下端52mの高さ位置は、冷凍サイクル装置100の運転中に第1ケーシング26aの内部に貯留される液冷媒の液面の高さ位置26bよりも下方となるように設定されている。例えば、第2配管52の下端52mの高さ位置は、第1ケーシング26aの鉛直方向中心の高さ位置よりも下方となるように設定されている。そのため、第1ケーシング26aの内部に貯留される液冷媒は、第2配管52の下端52mから第2配管52に流入し、第1ケーシング26aの外部に流出する。
【0060】
(3-2)冷媒蒸発機構27
冷媒蒸発機構27は、第1アキュームレータ26内に貯留され第1アキュームレータ26から圧縮機21に向かって流れる液冷媒を蒸発させる。第1アキュームレータ26から流出して吐出側配管52aを流れる液冷媒は、冷媒蒸発機構27に流入する。冷媒蒸発機構27において、流入した液冷媒の少なくとも一部が蒸発してガス冷媒となる。冷媒蒸発機構27から流出した冷媒は、吸入側配管52bを流れて、圧縮機21に吸入される。
【0061】
冷媒蒸発機構27は、液冷媒の少なくとも一部を蒸発させることができる機構を有するものであれば、その具体的態様は限定されない。本実施形態では、図1に示されるように、冷媒蒸発機構27は、加熱部27aを有する。加熱部27aは、例えば、冷媒蒸発機構27を通過する冷媒を加熱するヒータである。この場合、制御部70は、加熱部27aの出力を調整して、冷媒蒸発機構27を通過する冷媒に付与される熱量を制御する機能を有してもよい。冷媒蒸発機構27は、吐出側配管52aから流入する液冷媒を全て蒸発させることが好ましい。この場合、吸入側配管52bには、液冷媒が蒸発して生成されたガス冷媒のみが流れる。
【0062】
(4)特徴
(4-1)
メイン冷媒回路10を循環する冷媒のうち、蒸発器(熱源側熱交換器23又は利用側熱交換器31)において蒸発しきれなかった液冷媒は、余剰冷媒として第1アキュームレータ26内に貯留される。通常、熱源側熱交換器23の容積は、利用側熱交換器31の容積よりも大きい。そのため、熱源側熱交換器23が凝縮器として機能する冷房運転モードにおける必要冷媒量は、利用側熱交換器31が凝縮器として機能する暖房運転モードにおける必要冷媒量よりも多い。そのため、冷房運転モードにおける必要冷媒量の冷媒がメイン冷媒回路10に封入される場合、暖房運転モードにおいて余剰冷媒が生成されやすい。以下、メイン冷媒回路10は暖房運転接続状態であるとする。
【0063】
メイン冷媒回路10内に封入される冷媒は、低沸点冷媒と高沸点冷媒との混合物である非共沸混合冷媒である。高沸点冷媒の沸点は、低沸点冷媒の沸点よりも高い。そのため、第1アキュームレータ26内に貯留される液冷媒は、低沸点冷媒の含有量よりも高沸点冷媒の含有量が高い組成を有する。一方、第1アキュームレータ26内に貯留されるガス冷媒は、高沸点冷媒の含有量よりも低沸点冷媒の含有量が高い組成を有する。そのため、第1アキュームレータ26内に貯留されるガス冷媒を、メイン冷媒回路10を循環する循環冷媒としてメイン冷媒回路10に供給すると、第1アキュームレータ26内に高沸点冷媒が徐々に貯留される。その結果、循環冷媒の高沸点冷媒の含有量が低下して、循環冷媒の組成がベース組成から乖離するおそれがある。ベース組成とは、メイン冷媒回路10に封入される時における非共沸混合冷媒の組成である。
【0064】
本実施形態の冷凍サイクル装置100では、第1アキュームレータ26内に貯留される余剰冷媒である液冷媒は、吐出側配管52aに流入して冷媒蒸発機構27に供給される。冷媒蒸発機構27では、吐出側配管52aから供給された液冷媒が蒸発してガス冷媒が生成される。ガス冷媒は、吸入側配管52bに流入して圧縮機21に吸入される。そのため、冷凍サイクル装置100では、圧縮機21には、第1アキュームレータ26内に貯留される液冷媒が蒸発して生成されたガス冷媒が吸入される。
【0065】
従って、冷凍サイクル装置100では、低沸点冷媒の含有量よりも高沸点冷媒の含有量が高い液冷媒から生成されたガス冷媒がメイン冷媒回路10を循環することで、循環冷媒の高沸点冷媒の含有量の低下が抑制される。これにより、高沸点冷媒を多く含む液冷媒が第1アキュームレータ26内に徐々に貯留されて、循環冷媒の組成がベース組成から乖離することが抑制される。循環冷媒の組成がベース組成から乖離すると、冷凍サイクル装置100の熱交換性能及び制御性が低下するおそれがある。そのため、冷凍サイクル装置100は、暖房運転モードにおいて第1アキュームレータ26内に多量の余剰冷媒が貯留されても、熱交換性能及び制御性の低下を抑制することができる。
【0066】
(4-2)
冷凍サイクル装置100では、冷媒蒸発機構27は、吐出側配管52aから供給された液冷媒を蒸発させてガス冷媒を生成する。冷媒蒸発機構27で生成されたガス冷媒は、吸入側配管52bを流れて圧縮機21に吸入される。そのため、冷媒蒸発機構27において、吐出側配管52aから供給された液冷媒が全て蒸発する場合、圧縮機21に液冷媒が吸入されることが抑制される。従って、冷凍サイクル装置100は、圧縮機21に液冷媒が吸入されることによる圧縮機21等の不具合の発生を抑制することができる。
【0067】
(4-3)
冷凍サイクル装置100では、メイン冷媒回路10内に非共沸混合冷媒が封入される。非共沸混合冷媒は、例えば、低沸点冷媒として、R1123等のエチレン系フッ化炭化水素を含む。R1123は、ラジカルを生成した場合、不均化反応により別の化合物に変化する場合がある。不均化反応は多量の熱放出を伴う。そのため、循環冷媒の低沸点冷媒の含有量が増加すると、冷凍サイクル装置100の信頼性が低下するおそれがある。
【0068】
冷凍サイクル装置100では、冷媒蒸発機構27によって循環冷媒の組成がベース組成から乖離することが抑制されるので、循環冷媒の低沸点冷媒の含有量の増加が抑えられる。従って、冷凍サイクル装置100は、冷媒の不均化反応に起因する信頼性の低下を抑制することができる。
【0069】
<第2実施形態>
本実施形態の冷凍サイクル装置200の基本的な構成及び動作は、第1実施形態の冷凍サイクル装置100と同じである。以下、本実施形態の冷凍サイクル装置200と、第1実施形態の冷凍サイクル装置100との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施形態では、図4に示されるように、冷媒蒸発機構27は、熱源側熱交換器23の近傍に設置される熱交換器である。暖房運転モードにおいて、熱源側熱交換器23は、第1アキュームレータ26に貯留される前の冷媒と、熱交換流体との間で熱交換を行う。熱交換流体は、外気等の空気である。冷媒蒸発機構27は、第1アキュームレータ26内に貯留される液冷媒と、熱源側熱交換器23で熱交換される熱交換流体との間で熱交換を行う。熱交換流体は、熱源側ファン24によって熱源側熱交換器23に供給される。
【0071】
冷媒蒸発機構27は、液冷媒と熱交換流体との間で熱交換を行うことができる機構を有するものであれば、その具体的態様は限定されない。例えば、冷媒蒸発機構27は、熱源側熱交換器23と同様の構成を有する熱交換機であってもよい。このように、冷凍サイクル装置200では、熱源側熱交換器23と同様の熱交換器を冷媒蒸発機構27として使用することができる。
【0072】
冷媒蒸発機構27は、液冷媒と熱交換流体との間で熱交換を行うことで、液冷媒を加熱して蒸発させる。冷媒蒸発機構27は、吐出側配管52aから供給された液冷媒を全て蒸発させて、吸入側配管52bにガス冷媒のみを供給することが好ましい。
【0073】
次に、図5に示されるモリエル線図を用いて、暖房運転モードにおいて、冷凍サイクル装置200のメイン冷媒回路10を循環する冷媒の状態及び組成の変化について説明する。図5には、冷媒の飽和液線L1、乾き飽和蒸気線L2および臨界点CPが描かれている。臨界点CPは、飽和液線L1および乾き飽和蒸気線L2の高圧側の端点である。冷媒のベース組成は、50質量%のR1132(E)と50質量%のR1234yfとから構成される。この場合、R1132(E)は低沸点冷媒であり、R1234yfは高沸点冷媒である。以下、ベース組成と同じ、又は、ベース組成とほぼ同じ組成を有する冷媒を「ベース組成の冷媒」と呼ぶ。
【0074】
冷凍サイクル装置200が起動すると、ベース組成の低圧ガス冷媒(図5に示されるP1。以下同様。)は、圧縮機21に吸入される。圧縮機21に吸入されたガス冷媒は圧縮されて、ベース組成の高圧ガス冷媒となる(P1→P2)。ベース組成の高圧ガス冷媒は、利用側熱交換器31において空調対象空間の空気と熱交換することで凝縮して、ベース組成の液冷媒となる(P2→P3)。ベース組成の液冷媒は、熱源側膨張弁25で減圧されて、ベース組成の気液二相冷媒となる(P3→P4)。ベース組成の気液二相冷媒に含まれる液冷媒の一部は、熱源側熱交換器23において外気と熱交換することで蒸発する(P4→P5)。蒸発後の気液二相冷媒は、第1アキュームレータ26内に貯留される(P5→P6)。第1アキュームレータ26内には液冷媒(P7)及びガス冷媒(P8)が貯留される。第1アキュームレータ26内の液冷媒(P7)は、R1234yfの含有量がR1132(E)の含有量よりも多い組成を有する。第1アキュームレータ26内のガス冷媒(P8)は、R1132(E)の含有量がR1234yfの含有量よりも多い組成を有する。第1アキュームレータ26内の液冷媒(P7)は、冷媒蒸発機構27において外気と熱交換することで蒸発してガス冷媒となる(P7→P9)。ガス冷媒(P9)は、R1234yfの含有量がR1132(E)の含有量よりも多い組成を有する。ガス冷媒(P9)は、再度、圧縮機21に吸入される(P9→P1)。
【0075】
以上のプロセスにより、冷凍サイクル装置200では、循環冷媒の組成は、高沸点冷媒(R1234yf)の含有量が低沸点冷媒(R1132(E))の含有量よりも多い状態で安定化する。そのため、冷凍サイクル装置200は、R1132(E)等の低沸点冷媒の不均化反応に起因する信頼性の低下を抑制することができる。
【0076】
<第3実施形態>
本実施形態の冷凍サイクル装置300の基本的な構成及び動作は、第2実施形態の冷凍サイクル装置200と同じである。以下、本実施形態の冷凍サイクル装置300と、第2実施形態の冷凍サイクル装置200との相違点を中心に説明する。
【0077】
本実施形態では、図6に示されるように、冷凍サイクル装置300は、冷媒蒸発機構27を備える。冷媒蒸発機構27は、第2実施形態の冷凍サイクル装置200の冷媒蒸発機構27と同じ機能及び構成を有する。
【0078】
図6に示されるように、冷凍サイクル装置300は、第2アキュームレータ36をさらに備える。メイン冷媒回路10において、第2アキュームレータ36は、圧縮機21と冷媒蒸発機構27との間に設けられる。第2アキュームレータ36には、冷媒蒸発機構27によって熱交換され、圧縮機21に吸入される前の冷媒が貯留される。
【0079】
本実施形態では、吸入側配管52bは、第2アキュームレータ36によって第1吸入側配管52b1と第2吸入側配管52b2とに分割される。第1吸入側配管52b1は、冷媒蒸発機構27と、第2アキュームレータ36とを接続する。第2吸入側配管52b2は、第2アキュームレータ36と、圧縮機21の吸入側とを接続する。第1吸入側配管52b1と第2吸入側配管52b2とは、第2アキュームレータ36を介して互いに接続される。
【0080】
第2アキュームレータ36は、冷媒蒸発機構27を通過して冷媒蒸発機構27から圧縮機21に向かって流れる冷媒を一時的に貯留することが可能な冷媒容器である。冷媒蒸発機構27を通過して第1吸入側配管52b1を流れる冷媒は、第2アキュームレータ36に流入する。第2アキュームレータ36内に貯留される冷媒は、第2吸入側配管52b2を流れて第2アキュームレータ36から流出する。第2アキュームレータ36から流出した冷媒は、第2吸入側配管52b2を流れて、圧縮機21に吸入される。
【0081】
図7に示されるように、第2アキュームレータ36は、冷媒が貯留される容器である第2ケーシング36aを有する。第1吸入側配管52b1及び第2吸入側配管52b2は、第2ケーシング36aの上面を貫通した状態で第2ケーシング36aに固定されている。第2ケーシング36aの内部において、第1吸入側配管52b1及び第2吸入側配管52b2は鉛直方向に沿って延びている。
【0082】
第2ケーシング36aの内部において、第1吸入側配管52b1の下端52m1は、第2吸入側配管52b2の下端52m2とほぼ同じ高さ位置にある。第1吸入側配管52b1の下端52m1、及び、第2吸入側配管52b2の下端52m2は、冷凍サイクル装置100の運転中に第2ケーシング36aの内部に貯留される液冷媒の液面の高さ位置36bよりも上方となるように設定されている。例えば、第1吸入側配管52b1の下端52m1、及び、第2吸入側配管52b2の下端52m2は、第2アキュームレータ36の内部において、第2ケーシング36aの上端部近傍に位置している。そのため、第2ケーシング36aの内部に貯留される液冷媒が、第2吸入側配管52b2の下端52m2から第2吸入側配管52b2に流入し、第2ケーシング36aの外部に流出することが抑制される。
【0083】
次に、図8に示されるモリエル線図を用いて、暖房運転モードにおいて、冷凍サイクル装置300のメイン冷媒回路10を循環する冷媒の状態及び組成の変化について説明する。冷媒は、第2実施形態の冷凍サイクル装置200のメイン冷媒回路10を循環する冷媒と同じ組成を有する。
【0084】
冷凍サイクル装置200が起動すると、ベース組成の低圧ガス冷媒(図8に示されるP1。以下同様。)は、圧縮機21に吸入される。圧縮機21に吸入されたガス冷媒は圧縮されて、ベース組成の高圧ガス冷媒となる(P1→P2)。ベース組成の高圧ガス冷媒は、利用側熱交換器31において空調対象空間の空気と熱交換することで凝縮して、ベース組成の液冷媒となる(P2→P3)。ベース組成の液冷媒は、熱源側膨張弁25で減圧されて、ベース組成の気液二相冷媒となる(P3→P4)。ベース組成の気液二相冷媒に含まれる液冷媒の一部は、熱源側熱交換器23において外気と熱交換することで蒸発する(P4→P5)。蒸発後の気液二相冷媒は、第1アキュームレータ26内に貯留される(P5→P6)。第1アキュームレータ26内には液冷媒(P7)及びガス冷媒(P8)が貯留される。第1アキュームレータ26内の液冷媒(P7)は、R1234yfの含有量がR1132(E)の含有量よりも多い組成を有する。第1アキュームレータ26内のガス冷媒(P8)は、R1132(E)の含有量がR1234yfの含有量よりも多い組成を有する。第1アキュームレータ26内の液冷媒(P7)の一部は、冷媒蒸発機構27において外気と熱交換することで蒸発してガス冷媒となる。これにより、冷媒蒸発機構27では、第1アキュームレータ26内の液冷媒(P7)が気液二相冷媒となる(P7→P9)。冷媒蒸発機構27において生成された気液二相冷媒は、第2アキュームレータ36内に貯留される(P9→P10)。第2アキュームレータ36内には液冷媒(P11)及びガス冷媒(P12)が貯留される。第2アキュームレータ36内の液冷媒(P11)及びガス冷媒(P12)は、R1234yfの含有量がR1132(E)の含有量よりも多い組成を有する。ただし、第2アキュームレータ36内のガス冷媒(P12)のR1234yfの含有量は、液冷媒(P11)のR1234yfの含有量よりも少ない。そのため、第2アキュームレータ36内のガス冷媒(P12)は、液冷媒(P11)よりもベース組成に近い組成を有する。ガス冷媒(P12)は、再度、圧縮機21に吸入される(P12→P1)。
【0085】
以上のプロセスにより、冷凍サイクル装置300では、循環冷媒の組成は、高沸点冷媒(R1234yf)の含有量が低沸点冷媒(R1132(E))の含有量よりも多い状態で安定化する。そのため、冷凍サイクル装置300は、R1132(E)等の低沸点冷媒の不均化反応に起因する信頼性の低下を抑制することができる。
【0086】
また、冷凍サイクル装置300では、第2実施形態の冷凍サイクル装置200と比較して、循環冷媒はベース組成により近い組成を有する。そのため、冷凍サイクル装置300は、循環冷媒の組成がベース組成から乖離することを効果的に抑制できる。
【0087】
<変形例>
(1)変形例A
第2実施形態及び第3実施形態において、冷媒蒸発機構27は、熱源側熱交換器23に連結されてもよい。具体的には、冷媒蒸発機構27は、熱源側熱交換器23と一体化している熱交換器でもよい。また、冷媒蒸発機構27は、熱源側熱交換器23から独立している熱交換器であるが、熱源側熱交換器23と物理的に連結される熱交換器でもよい。
【0088】
(2)変形例B
第2実施形態及び第3実施形態において、冷媒蒸発機構27は、熱源側熱交換器23において冷媒と熱交換された熱交換流体と、液冷媒との間で熱交換を行うように設けられてもよい。具体的には、熱交換流体が流れる方向において、冷媒蒸発機構27は、熱源側熱交換器23の下流側に設けられてもよい。
【0089】
(3)変形例C
第2実施形態の冷凍サイクル装置200は、図9に示されるように、バイパス回路60と、切替機構62と、をさらに備えてもよい。バイパス回路60は、メイン冷媒回路10において第1アキュームレータ26と圧縮機21との間に設けられる。バイパス回路60は、冷媒蒸発機構27をバイパスする。図9では、バイパス回路60は点線で示されている。
【0090】
切替機構62は、冷媒がバイパス回路60を流れる第1状態と、冷媒がバイパス回路60を流れない第2状態と、を切り替える。第1状態では、吐出側配管52aを流れる冷媒は、バイパス回路60を通過することで冷媒蒸発機構27をバイパスして、吸入側配管52bに流入する。第2状態では、吐出側配管52aを流れる冷媒は、バイパス回路60を通過せずに冷媒蒸発機構27を通過して、吸入側配管52bに流入する。
【0091】
切替機構62は、第1流路調整弁62a及び第2流路調整弁62bの少なくとも一方を含む。第1流路調整弁62aは、バイパス回路60に設けられる電磁弁である。第2流路調整弁62bは、メイン冷媒回路10からバイパス回路60が分岐する箇所と、冷媒蒸発機構27との間に設けられる電磁弁である。第1状態では、第1流路調整弁62aは開状態であり、第2流路調整弁62bは閉状態である。第2状態では、第1流路調整弁62aは閉状態であり、第2流路調整弁62bは開状態である。
【0092】
制御部70は、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度に応じて、切替機構62を制御して第1状態と第2状態とを切り替える。具体的には、制御部70は、第1流路調整弁62a及び第2流路調整弁62bの開閉状態を変更することで、第1状態と第2状態とを切り替える。
【0093】
冷凍サイクル装置200は、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度を検知するためのセンサ64をさらに備えてもよい。センサ64は、冷媒蒸発機構27の出口の近傍に取り付けられる。センサ64は、例えば、吸入側配管52bを流れる冷媒の温度を測定する。
【0094】
冷凍サイクル装置200が第2状態にある場合、圧縮機21に吸入される前の冷媒は冷媒蒸発機構27によって加熱される。そのため、循環冷媒の量が少ない場合、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が大きくなり、圧縮機21の圧縮効率が低下するおそれがある。そのため、制御部70は、センサ64によって検知された冷媒の過熱度が所定の値以上となった場合に、第2状態から第1状態に切り替える制御を行う。これにより、圧縮機21に吸入される前の冷媒はバイパス回路60を流れるので、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が低下する。
【0095】
また、制御部70は、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が所定の範囲内になるように、第1流路調整弁62a及び第2流路調整弁62bの開度を制御してもよい。例えば、制御部70は、メイン冷媒回路10を流れる冷媒の一部が冷媒蒸発機構27をバイパスし、残りが冷媒蒸発機構27を通過するように、第1流路調整弁62a及び第2流路調整弁62bの開度を制御してもよい。
【0096】
(4)変形例D
第3実施形態の冷凍サイクル装置300は、図10に示されるように、バイパス回路60と、切替機構62と、をさらに備えてもよい。バイパス回路60は、メイン冷媒回路10において第1アキュームレータ26と第2アキュームレータ36との間に設けられる。バイパス回路60は、冷媒蒸発機構27をバイパスする。図10では、バイパス回路60は点線で示されている。
【0097】
切替機構62は、冷媒がバイパス回路60を流れる第1状態と、冷媒がバイパス回路60を流れない第2状態と、を切り替える。第1状態では、吐出側配管52aを流れる冷媒は、バイパス回路60を通過することで冷媒蒸発機構27をバイパスして、第1吸入側配管52b1に流入する。第2状態では、吐出側配管52aを流れる冷媒は、バイパス回路60を通過せずに冷媒蒸発機構27を通過して、第1吸入側配管52b1に流入する。
【0098】
切替機構62は、第1流路調整弁62a及び第2流路調整弁62bの少なくとも一方を含む。第1流路調整弁62aは、バイパス回路60に設けられる電磁弁である。第2流路調整弁62bは、メイン冷媒回路10からバイパス回路60が分岐する箇所と、冷媒蒸発機構27との間に設けられる電磁弁である。第1状態では、第1流路調整弁62aは開状態であり、第2流路調整弁62bは閉状態である。第2状態では、第1流路調整弁62aは閉状態であり、第2流路調整弁62bは開状態である。
【0099】
制御部70は、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度に応じて、切替機構62を制御して第1状態と第2状態とを切り替える。具体的には、制御部70は、第1流路調整弁62a及び第2流路調整弁62bの開閉状態を変更することで、第1状態と第2状態とを切り替える。
【0100】
冷凍サイクル装置300は、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度を検知するためのセンサ64をさらに備えてもよい。センサ64は、冷媒蒸発機構27の出口の近傍に取り付けられる。センサ64は、例えば、第1吸入側配管52b1を流れる冷媒の温度を測定する。
【0101】
冷凍サイクル装置300が第2状態にある場合、圧縮機21に吸入される前の冷媒は冷媒蒸発機構27によって加熱される。そのため、循環冷媒の量が少ない場合、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が大きくなり、圧縮機21の圧縮効率が低下するおそれがある。そのため、制御部70は、センサ64によって検知された冷媒の過熱度が所定の値以上となった場合に、第2状態から第1状態に切り替える制御を行う。これにより、圧縮機21に吸入される前の冷媒はバイパス回路60を流れるので、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が低下する。
【0102】
また、制御部70は、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が所定の範囲内になるように、第1流路調整弁62a及び第2流路調整弁62bの開度を制御してもよい。例えば、制御部70は、メイン冷媒回路10を流れる冷媒の一部が冷媒蒸発機構27をバイパスし、残りが冷媒蒸発機構27を通過するように、第1流路調整弁62a及び第2流路調整弁62bの開度を制御してもよい。
【0103】
(5)変形例E
本変形例の冷凍サイクル装置400の基本的な構成及び動作は、第1実施形態の冷凍サイクル装置100と同じである。以下、本変形例の冷凍サイクル装置400と、第1実施形態の冷凍サイクル装置100との相違点を中心に説明する。
【0104】
冷凍サイクル装置400は、図11に示されるように、熱源ユニット2の内部に設けられる冷媒蒸発機構27を備える。冷媒蒸発機構27は、第1アキュームレータ26から流出して吐出側配管52aを流れる液冷媒と、熱源側熱交換器23において熱交換流体と熱交換される前の冷媒との間で熱交換を行う。これにより、冷媒蒸発機構27は、吐出側配管52aを流れる液冷媒の少なくとも一部を蒸発させて吸入側配管52bに供給する。
【0105】
(6)変形例F
本変形例の冷凍サイクル装置500の基本的な構成及び動作は、第1実施形態の冷凍サイクル装置100と同じである。以下、本変形例の冷凍サイクル装置500と、第1実施形態の冷凍サイクル装置100との相違点を中心に説明する。
【0106】
冷凍サイクル装置500は、図12に示されるように、熱源ユニット2の内部に設けられる冷媒蒸発機構27を備える。冷媒蒸発機構27は、第1アキュームレータ26から流出して吐出側配管52aを流れる液冷媒と、圧縮機21で圧縮された直後のガス冷媒との間で熱交換を行う。これにより、冷媒蒸発機構27は、吐出側配管52aを流れる液冷媒の少なくとも一部を蒸発させて吸入側配管52bに供給する。
【0107】
(7)変形例G
変形例Cの冷凍サイクル装置200、及び、変形例Dの冷凍サイクル装置300は、バイパス回路60と、切替機構62と、をさらに備える。バイパス回路60及び切替機構62は、第1実施形態の冷凍サイクル装置100、変形例Eの冷凍サイクル装置400、及び、変形例Fの冷凍サイクル装置500に適用されてもよい。
【0108】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0109】
10 :メイン冷媒回路(冷媒回路)
21 :圧縮機
23 :熱源側熱交換器(蒸発器,凝縮器)
25 :熱源側膨張弁(膨張機構)
26 :第1アキュームレータ(第1容器)
27 :冷媒蒸発機構(第1機構)
27a :加熱部
31 :利用側熱交換器(凝縮器、蒸発器)
36 :第2アキュームレータ(第2容器)
60 :バイパス回路
62 :切替機構
70 :制御部
100 :冷凍サイクル装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特開2015-200431号公報
図1
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図5
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図11
図12