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  • 特開-自操用電動車椅子 図1
  • 特開-自操用電動車椅子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049109
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】自操用電動車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20240402BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240402BHJP
   B62K 5/007 20130101ALI20240402BHJP
【FI】
A61G5/04 707
B60L1/00 L
B62K5/007
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155374
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】委細 尚史
【テーマコード(参考)】
3D011
5H125
【Fターム(参考)】
3D011AA07
3D011AD18
5H125AA16
5H125AC12
5H125BC25
5H125CC03
5H125CD03
5H125EE61
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量かつ低コストである上に生産性に優れる自操用電動車椅子を提供する。
【解決手段】自操用電動車椅子1であって、周囲の車両100からの信号を受信する受信機5と、受信機が受信した信号に基づいて自操用電動車椅子の動作を制御する制御器6と、を備え、信号を送信する送信機を備えていない、自操用電動車椅子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自操用電動車椅子であって、
周囲の車両からの信号を受信する受信機と、
前記受信機が受信した信号に基づいて前記自操用電動車椅子の動作を制御する制御器と、を備え、
信号を送信する送信機を備えていない、
自操用電動車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自操用電動車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、距離測定センサを備える自操用ハンドル形電動車椅子が開示されている。距離測定センサは、超音波送信部と超音波受信部とを備える。距離測定センサは、超音波送信部から超音波を送信した時と送信した超音波が障害物によって反射されて超音波受信部に受信された時との時間差に基づいて自操用ハンドル形電動車椅子から障害物までの距離を算出する。特許文献2には、特許文献1と同様の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-110209号公報
【特許文献2】特開2017-184358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の自操用ハンドル形電動車椅子は、送信部と受信部の両方を備えることでセンサが複雑になるため、軽量化し難く、生産コストを低減し難い上に、生産性を向上し難い。
【0005】
本発明の目的の一つは、軽量かつ低コストである上に生産性に優れる自操用電動車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る自操用電動車椅子は、
周囲の車両からの信号を受信する受信機と、
前記受信機が受信した信号に基づいて前記自操用電動車椅子の動作を制御する制御器と、を備え、
信号を送信する送信機を備えていない。
【発明の効果】
【0007】
上記自操用電動車椅子は、車両の信号を受信するだけで自操用電動車椅子の動作を制御できる。上記自操用電動車椅子は、送信機を備えていないため、送信機を備える場合に比較して、軽量かつ低コストである上に生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の自操用電動車椅子を示す概略側面図である。
図2図2は、実施形態の自操用電動車椅子に備わる制御器による制御手順のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《実施形態》
〔自操用電動車椅子〕
図1を参照して実施形態の自操用電動車椅子1を説明する。実施形態の自操用電動車椅子1は、図1に示されるように、図示が省略された乗員がハンドル部2を操作して利用する自操用ハンドル形電動車椅子(mobility scooter)を例に説明する。自操用ハンドル形電動車椅子はシニアカーとも呼ばれる。自操用電動車椅子1は受信機5と制御器6とを備える。受信機5は、周囲の車両100からの信号を受信する。制御器6は、自操用電動車椅子1の動作を制御する。実施形態の自操用電動車椅子1の特徴の一つは、周囲に信号を送信する送信機を備えていない点と、制御器6は受信機5が受信した信号に基づいて自操用電動車椅子1の動作を制御する点と、にある。
【0010】
[受信機]
受信機5は、上述したように周囲の車両100からの信号を受信する。車両100からの信号とは、車両100が送信する信号であって、例えば電磁波または音波である。電磁波には電波および光が含まれる。電波にはミリ波が含まれる。光にはレーザーが含まれる。音波には超音波が含まれる。車両100からの信号は、例えば車両100の予防安全装置から送信される信号である。予防安全装置は、例えば、衝突被害軽減ブレーキまたは定速走行・車間距離制御装置である。予防安全装置は、例えば、ミリ波レーダまたは赤外線レーザーセンサを備える。受信機5は、例えばミリ波、レーザー、および超音波のいずれかを受信できるものであればよい。受信機5が信号を受信したことは制御器6に入力される。受信機5の配置箇所は特に限定されない。図1では、受信機5は自操用電動車椅子1のシート31を支持するリヤボディ41の内部に配置されている例が示されている。
【0011】
図示は省略されているものの図1に示す例とは異なり、受信機5は、例えば、ハンドル部2の基部21またはフロントボディ42の内部に配置されていてもよい。ハンドル部2は、基部21と、乗員が掴むグリップ部22と、図示が省略されているアクセルレバーおよび手動ブレーキレバーなどを有する。基部21は、例えば、図示が省略されているパネル、1つ以上のスイッチ、1つ以上のボタンなどを有する。パネルは、バッテリー残量などを表示する。スイッチには、例えば、速度を切り替えるスイッチ、前進と後進とを切り替えるスイッチなどが含まれている。ボタンには、例えば、音声案内の入および切を切り替えるボタン、警報音を発するボタン、図示が省略されているヘッドライトを点灯および消灯するボタン、図示が省略されているターンシグナルランプを点灯および消灯するボタン、後述する後続車用のランプ35を点灯および消灯するボタンなどが含まれている。フロントボディ42は、ハンドル部2の下方に設けられている。フロントボディ42は、ステアリングシャフト43を収納している。ステアリングシャフト43はハンドル部2に接続されている。
【0012】
[制御器]
制御器6は、上述したように受信機5が受信した信号に基づいて自操用電動車椅子1の動作を制御する。制御器6による制御は、図示が省略されているものの、代表的には、1または複数のプロセッサと1または複数のメモリとを含む処理回路(Circuitry)により実現される。メモリは、上記制御を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記制御を実行する。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。自操用電動車椅子1の動作とは、例えば、後続車用のランプ35の点灯と消灯、図示が省略されている乗員用のランプの点灯と消灯、ハンドル部2の操舵、および自操用電動車椅子1の制動の少なくとも一つである。
【0013】
後続車用のランプ35は、自操用電動車椅子1の後方の車両100の乗員にその車両100の前方に自操用電動車椅子1が居ることを知らせる。後続車用のランプ35は、例えば、バックサポート32の背面に設けられている。制御器6が後続車用のランプ35を点灯させるとは、後続車用のランプ35を消灯状態から点灯状態に切り替えることをいう。後続車用のランプ35が点灯すると、自操用電動車椅子1の後方が照らされる。後続車用のランプ35は、前進から後退に切り替えられた際に点灯する後退灯とは別のランプである。乗員用のランプは、自操用電動車椅子1の近くに車両100が存在することを自操用電動車椅子1の乗員に視覚的に知らせる。乗員用のランプは、例えば、ハンドル部2の基部21に設けられていてもよい。制御器6が乗員用のランプを点灯させるとは、乗員用のランプを消灯状態から点灯状態に切り替えることをいう。乗員用のランプは、例えば自操用電動車椅子1の後方から車両100が近づいた場合に点灯する。制御器6がハンドル部2を操舵するとは、操舵用の電動モータ46に通電してステアリングシャフト43を回動させることをいう。操舵用の電動モータ46はステアリングシャフト43に設けられている。制御器6がハンドル部2を操舵することで、自操用電動車椅子1と自操用電動車椅子1の近くの車両100との接触を回避できる。制御器6が自操用電動車椅子1を制動するとは、例えば電磁ブレーキ47に通電すること、あるいは走行用の電動モータ48への通電電流を低減または通電を停止することで、自操用電動車椅子1を減速または停止させることをいう。電磁ブレーキ47は前輪44および後輪45に設けられている。電動モータ48はリヤボディ41に設けられている。制御器6が自操用電動車椅子1を制動することで、自操用電動車椅子1の前方の車両と自操用電動車椅子1との接触を回避できる。
【0014】
制御器6は、第一判定部61および第二判定部62を有する。第一判定部61は、受信機5が周囲の車両100からの信号を受信したか否かを判定する。第二判定部62は、本実施形態では後述するGPS(Global Positioning System)を含むカーナビゲーションシステム7が取得した位置情報に基づいて自操用電動車椅子1が走行中の道が細道か否かをも判定する。ここでいう細道とは、自操用電動車椅子1が路肩に寄った際に車両100が自操用電動車椅子1を追い越せる程度の幅の道をいう。細道の幅は、例えば4m以下である。
【0015】
制御器6の配置箇所は特に限定されない。図1では、制御器6はリヤボディ41の内部に配置されている例が示されている。図示は省略されているものの図1に示す例とは異なり、制御器6は、例えば、ハンドル部2の基部21またはフロントボディ42の内部に設けられていてもよい。
【0016】
[その他]
自操用電動車椅子1は、例えばGPSを含むカーナビゲーションシステム7を更に備えていてもよい。自操用電動車椅子1がカーナビゲーションシステム7を備えるとは、図1に示されるように自操用電動車椅子1自体にカーナビゲーションシステム7が設けられている場合と、図示が省略されているものの自操用電動車椅子1の乗員がカーナビゲーションシステム7と同様の機能を有する携帯機器を備えている場合とを含む。携帯機器は例えばスマートフォンである。携帯機器は無線または有線によって制御器6に接続されるとよい。カーナビゲーションシステム7が取得した自操用電動車椅子1の現在地の位置情報は制御器6に出力される。
【0017】
[制御手順]
図2を参照して制御機の制御手順の一例を説明する。ここでは、図1に示されるように走行中の自操用電動車椅子1の後方を車両100が走行している場合を例に説明する。
【0018】
ステップS1では、第一判定部61は後方の車両100から送信された信号を受信機5が受信したか否かを判定する。第一判定部61によって受信機5が信号を受信したと判定された場合、ステップS2では、第二判定部62はカーナビゲーションシステム7が取得した位置情報に基づいて自操用電動車椅子1が走行中の道が細道か否かを判定する。第二判定部62によって自操用電動車椅子1が走行中の道が細道であると判定された場合、ステップS3では、制御器6が後続車用のランプ35を点灯させる。ステップS4では、第一判定部61が受信していた信号を受信機5が受信しなくなったか否かを判定する。第一判定部61によって受信機5が信号を受信しなくなったと判定された場合、ステップS5では、制御器6が後続車用のランプ35を消灯させる。ステップS1では第一判定部61によって受信機5が信号を受信していないと判定された場合、およびステップS2では第二判定部62によって自操用電動車椅子1が走行中の道が細道ではないと判定された場合には、ステップS1に戻る。ステップS4において、第一判定部61によって受信機5が信号を受信していると判定された場合、ステップS4に戻る。ステップS5において、制御器6が後続車用のランプ35を消灯させたら、ステップS1に戻る。ステップS1からステップS5の一連の処理は、自操用電動車椅子1の電源がオフとなるまで繰り返して行われる。
【0019】
自操用電動車椅子1は、車両100の信号を受信するだけで後続車用のランプ35を点灯させることができるので、車両100の乗員にその車両100の前方に自操用電動車椅子1が居ることを知らせることができる。自操用電動車椅子1は、送信機を備えていないため、送信機を備える場合に比較して、軽量かつ低コストである上に生産性に優れる。
【0020】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
例えば、ステップS3では、制御器がハンドル部を操舵することで自操用電動車椅子を路肩に寄せて走行を続けてもよい。または、ステップS3では、制御器がハンドル部を操舵することで自操用電動車椅子を路肩に寄せて、自操用電動車椅子を制動することで減速または停止させてもよい。
【0022】
例えば、制御器は、後続車用のランプまたは乗員用のランプを常時点灯させるのではなく、一定間隔で点滅させてもよい。
【0023】
例えば、制御器は、自操用電動車椅子と車両との間隔が小さいほど乗員用のランプの点滅速度を早くしてもよい。また、自操用電動車椅子は、乗員用ランプの代わりに自操用電動車椅子と後方の車両との間隔が小さいほど点灯領域が広がるインジケータ式のランプを備えていてもよい。自操用電動車椅子と後方の車両との間隔が変わることにより受信機が受信する車両からの信号の強度などが変わることを利用して、制御器は点滅速度を変えたり点灯領域を変えたりしてもよい。
【0024】
例えば、受信機はマイクロフォンであってもよい。マイクロフォンで車両のエンジン音を集音し、エンジン音の大きさが閾値を超えた際に制御器は後続車用のランプまたは乗員用のランプを常時点灯、あるいは後続車用のランプまたは乗員用のランプを一定間隔で点滅させてもよい。エンジン音が大きいほど、制御器は乗員用のランプの点滅速度を早くしたりインジケータ式のランプでの点灯領域を広くしてもよい。
【0025】
例えば、自操用電動車椅子は、乗員がジョイスティックを操作して利用する自操用標準形電動車椅子であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 自操用電動車椅子
2 ハンドル部
21 基部
22 グリップ部
31 シート
32 バックサポート
35 後続車用のランプ
41 リヤボディ
42 フロントボディ
43 ステアリングシャフト
44 前輪
45 後輪
46 操舵用の電動モータ
47 電磁ブレーキ
48 走行用の電動モータ
5 受信機
6 制御器
61 第一判定部
62 第二判定部
7 カーナビゲーションシステム
100 車両
図1
図2