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  • 特開-鉄道車両の非常通報システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004911
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】鉄道車両の非常通報システム
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20240110BHJP
   H04H 20/59 20080101ALI20240110BHJP
   H04H 20/62 20080101ALI20240110BHJP
【FI】
B61D37/00 G
H04H20/59
H04H20/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104813
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 充男
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】前門戸 俊文
(72)【発明者】
【氏名】平塚 友久
(57)【要約】
【課題】非常通報操作が行われた非常通報装置の台数を好適に把握可能とする。
【解決手段】乗務員室(2)と客室(3)とを有する鉄道車両(1)の非常通報システムであって、鉄道車両(1)の客室(2)内に2以上配置される非常通報装置(10)と、非常通報装置10に対する非常通報操作が行われた場合に、客室(3)と乗務員室(2)との間に設けられた配線に対する所定電圧の印加を制御する制御器(20)とを備え、制御器(20)は、配線(10a)に対し、非常通報操作が行われた非常通報装置(10)の台数に応じた大きさの電圧を印加することを制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗務員室と客室とを有する鉄道車両の非常通報システムであって、
前記鉄道車両の客室内に2以上配置される非常通報装置と、
前記非常通報装置に対する非常通報操作が行われた場合に、前記客室と前記乗務員室との間に設けられた配線に対する所定電圧の印加を制御する制御器と
を備え、
前記制御器は、前記配線に対し、前記非常通報操作が行われた非常通報装置の台数に応じた大きさの電圧を印加することを制御する
ことを特徴とする鉄道車両の非常通報システム。
【請求項2】
前記制御器は、前記配線に所定電圧を印加する場合に、前記配線に印加されている電圧値を検出し、検出した電圧値より大きい電圧を印加する
請求項1に記載の鉄道車両の非常通報システム。
【請求項3】
前記制御器は、前記配線に印加されている電圧値から前記非常通報操作が行われた非常通報装置の台数を判定し、判定した台数に1を加えた台数に応じた電圧を印加する
請求項2に記載の鉄道車両の非常通報システム。
【請求項4】
前記非常通報操作に応じて鳴動するブザーをさらに含み、
前記ブザーの鳴動パターンが、前記非常通報操作が行われた非常通報装置の台数に応じて変動する
請求項1から3のいずれか1項に記載の非常通報システム。
【請求項5】
前記ブザーが、前記客室、前記乗務員室、又は、前記客室及び前記乗務員室の双方に配置されている
請求項4に記載の鉄道車両の非常通報システム。
【請求項6】
前記非常通報操作に応じて点灯又は点滅する1以上のランプをさらに含み、
前記1以上のランプの点灯又は点滅のパターンが、前記非常通報操作が行われた非常通報装置の台数に応じて変動する
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄道車両の非常通報システム。
【請求項7】
前記1以上のランプが、前記客室、前記乗務員室、又は、前記客室及び前記乗務員室の双方に配置されている
請求項6に記載の鉄道車両の非常通報システム。
【請求項8】
前記1以上のランプが車側灯である
請求項6に記載の鉄道車両の非常通報システム。
【請求項9】
前記非常通報装置に備えられた、非常通報の種類に応じた複数の非常通報ボタンと、
前記鉄道車両内に配置され、前記複数の非常通報ボタンのうち、押された非常通報ボタンに対応する非常通報の種類に応じたパターンで点灯または点滅する少なくとも一つのランプと、
をさらに含む請求項1に記載の鉄道車両の非常通報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の非常通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両に搭載され、客室から乗務員へ非常通報を行う非常通報装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-56921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、鉄道車両内の非常通報装置を用いた非常通報操作の回数を好適に把握可能とする鉄道車両の非常通報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、鉄道車両の非常通報システムであって、前記鉄道車両の前記客室内に2以上配置される非常通報装置と、前記非常通報装置に対する非常通報操作が行われた場合に、各客室と乗務員室との間に設けられた配線に対する所定電圧の印加を制御する制御器とを備え、前記制御器は、前記配線に対し、前記非常通報操作が行われた非常通報装置の台数に応じた大きさの電圧を印加することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一態様は、前記非常通報装置に備えられた、非常通報の種類に応じた複数の非常通報ボタンと、前記鉄道車両内の乗務員室に配置され、前記複数の非常通報ボタンのうち、押された非常通報ボタンに対応する非常通報の種類に応じたパターンで点灯または点滅する少なくとも一つのランプと、をさらに含む構成を採用してもよい。少なくとも一つのランプは、乗務員室に設けられていても、客室に設けられていても、乗務員室及び客室の双方に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉄道車両内の非常通報装置を用いた非常通報操作の回数を好適に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、参考例に係る鉄道車両の非常通報システムを示す図である。
図2図2は、実施形態に係る鉄道車両の非常通報システムのうち、主に客室側の構成例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る鉄道車両の非常通報システムのうち、主に乗務員室側の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る鉄道車両の非常通報システムについて説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0010】
<参考例>
【0011】
図1は、参考例に係る鉄道車両の非常通報システムを示す図である。図1において、鉄道車両1は、1又は2以上の車両からなる編成を構成する。車両は、先頭車両と、中間車両からなる。先頭車両は、編成をなす複数の車両のうち、先頭及び最後尾に配置される。但し、先頭のみに配置される場合もある。中間車両は、先頭車両の間に配置される。図1に示す例では、先頭車両のみが示されている。先頭車両は、乗務員室2及び客室3を備える。なお、中間車両は、客室3を備える。中間車両は客車ともいう。
【0012】
乗務員室2には、受報制御器20aと、受報制御器20aに接続された連絡受報器4と、連絡受報器4に接続されたマイク5及びスピーカ5bとが備えられている。連絡受報器4には、「確認」用のボタン31と、「保留」用のボタン32と、「リセット」用のボタン33と、「無線」を示すランプ34と、「通報」を示すランプ35と、「確認」を示すランプ36と、「保留」を示すランプ37と、ブザー用のスピーカ38とが接続されている。連絡受報器4は、ランプ34~37の点灯及び消灯を制御する。ランプ34は、無線の使用中に点灯する。ランプ35は、非常通報があった場合に点灯する。ランプ36は、「確認」ボタン31が押された場合に点灯する。ランプ37は、通話の保留のために「保留」ボタン33が押された場合(オンである場合)に点灯する。
【0013】
一方、鉄道車両1の各客室3には、1以上(図1の例では4つ)の非常通報装置10と、非常通報装置10の夫々が接続された通報制御器20とを備えている。非常通報装置10は、鉄道車両1の客室3に2以上配置される。「鉄道車両1の客室3に2以上配置される非常通報装置10」とは、鉄道車両1内に設けられた1つの客室3内に2以上の非常通報装置10が配置される場合と、鉄道車両1内に設けられた2以上の客室3の夫々に1以上の非常通報装置10が配置され、合計で2以上の非常通報装置10が配置される場合とを含む。
【0014】
非常通報装置10の夫々は、非常時に乗務員と通話するためのスピーカ11及びマイク12と、非常通報ボタン13と、「通話可」を示すランプ14と、リセットボタン15と、ブザー用のスピーカ16とを有している。また、車両の両側面には、車側灯28a、28bが取り付けられている。通報制御器20は、鉄道車両1の編成が2以上の車両からなる場合、車両毎に設けられる。この場合、音声線10aとして、車両間に亘って引き通された引き通し線を適用することができる。
【0015】
参考例における非常通報装置10を用いた非常通報は、以下のように行われる。客室3内で有事の際に、乗客等は、非常通報操作として、非常通報装置10の非常通報ボタン13を押下することができる。非常通報操作により非常通報時の処理が開始される。
【0016】
非常通報ボタン13が押下されると、非常通報装置10は、スピーカ16からブザー音を放音させて、客室3内でブザーを鳴動させる。また、非常通報装置10は、非常通報ボタン13の押下を示す信号を非常通報信号として通報制御器20に入力する。非常通報装置10からの非常通報信号を受けた通報制御器20は、スイッチS1をオンにして、電圧源V1からの所定の電圧(例えば100V)のバイアス電圧を、通報制御器20と、受報制御器20aとを接続する非常通報客室音声ライン(音声線)10aに印加(加圧)する。なお、加圧対象の配線は、音声線とは別に、加圧用の専用の配線(専用の通報ライン)が設けられていてもよい。換言すれば、加圧対象の配線は、音声線であっても、専用の通報ラインであってもよく、加圧による影響が生じない限りにおいて、音声線以外の既存の配線が加圧に用いられてもよい。音声線、専用の通報ライン、及び既存の配線は「(加圧対象の)配線」の一例である。以下、加圧対象の配線が音声線10aである場合について説明する。
【0017】
また、非常通報ボタン13が押された車両では、バイアス電圧の印加を受けて車側灯2
8a及び29bが点灯し、鉄道車両1の外側から、非常通報がなされた車両を視認することができる。また、鉄道車両1に列車情報管理装置(モニタ装置ともいう)が搭載されている場合には、非常通報ボタン13の押下はモニタ装置に通知される。モニタ装置は、鉄道車両1の状態を示す情報を収集及び管理する装置である。鉄道車両1においてはモニタ装置が搭載されていない場合もある。
【0018】
受報制御器20aは、音声線10aへの加圧を検出し、加圧の検出を示す信号を非常通報信号として連絡受報器4に入力する。受報制御器20aからの非常通報信号を受けた連絡受報器4は、スピーカ38からブザー音を放音させるとともに、「通報」のランプ35を点灯させる。乗務員は、ブザーの鳴動と、ランプ35の点灯から、非常通報の発生を把握することができる。乗務員は、連絡受報器4の受話器(マイク5a及びスピーカ5bを具備)を取り、「確認」ボタン31を押下する。又受話器はマイクとスピーカが別々の仕組みでも良い。連絡受報器4は、ボタン31の押下を検出すると、スピーカ38からのブザー音の放音を停止させる。また、連絡受報器4は、ランプ35を消灯させ、「確認」を示すランプ36を点灯させる。
【0019】
連絡受報器4は、「確認」ボタン31が押されたことを示す信号(確認信号と称する)を受報制御器20aに送る。確認信号は、音声線10a、通報制御器20を介してボタン13が押された非常通報装置10に入力される。確認信号を受けた非常通報装置10は、スピーカ16からのブザー音の放音を停止させるとともに、スピーカ11及びマイク12をオンにして、乗務員室2の乗務員との通話を可能にする。このとき、非常通報装置10は、「通話可」のランプ14を点灯させる。その後、乗務員側から通話を終了する場合には、乗務員がリセットボタン33を押す。また、リセットボタン15の押下によって、乗客側から通話を終了することもできる。
【0020】
なお、複数の(n台の)非常通報装置10の非常通報ボタン13が押された場合は、押されたタイミングにより振る舞いが異なる。或る非常通報装置10の非常通報ボタン13が押され、音声線10aが加圧され乗務員室2で「確認」ボタン31が押されるまでの間に、或る非常通報装置10を含めたn台(2以上の)の非常通報装置10の非常通報ボタン13が押された場合には、「確認」ボタン31の押下により、非常通報ボタン13が押された非常通報装置10の夫々に確認信号が伝達され、n台の非常通報装置10と乗務員
との同時通話が可能となる。その後、他の非常通報装置10の非常通報ボタン13が押された場合には、非常通報信号が連絡受報器4へ伝達され、乗務員が「確認」ボタン31を押すと、確認信号が他の非常通報装置10に送られ、同時通話可能な状態となる。2以上の非常通報装置10を用いた同時通話は、1つの車両内で行われる場合もあれば、複数台の車両にわたって行われる場合もある。
【0021】
なお、非常通報装置10、通報制御器20、受報制御器20a、及び連絡受報器4の夫々は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ及びメモリを備え、プロセ
ッサのソフトウェア処理(メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行する処理)によって上述した処理を行うことができる。ソフトウェア処理は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)或いはFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェア(集積回路などの半導体装置)を用いた処理によって実行することもできる。
【0022】
傷害、火災など重大な事件が発生した場合、複数の非常通報ボタン13が押されたか否かは、乗務員と複数の乗客との同時通話が成立する場合、乗務員は複数の非常通報ボタン13が押されたことを把握することができる。しかし、非常通報ボタン13を押した乗客が車両から待避してしまった場合、その乗客との通話は成立しない。この場合、通話対象の乗客が一人であると、乗務員は、会話する乗客の数から、複数の非常通報ボタン13が
押されたか否かを判定することができなかった。また、モニタ装置かは、各車両における非常通報ボタン13の押下が通知されるので、会話する乗客が一人の場合でも、複数の車両からの非常通報があったことを判定できる。しかし、モニタ装置が搭載されていない鉄道車両では、そのような判定はできない。さらに、車側灯28a及び28bは、車両単位で点灯するため、乗務員が各車両の車側灯28a及び28bを視認できれば、複数の車両で非常通報がなされたかを判定できる。しかし、このような視認ができず、複数の非常通報ボタン13が押されたか否かを乗務員が把握することができなかった。以下に説明する実施形態では、このような問題を解決し、鉄道車両内の非常通報装置を用いた非常通報操作の回数を好適に把握可能とする。
【0023】
<実施形態>
【0024】
図2は、実施形態に係る鉄道車両1の非常通報システムのうち、主に客室側の構成例を示す図である。図3は、実施形態に係る鉄道車両1の非常通報システムのうち、主に乗務員室側の構成例を示す図である。実施形態に係る非常通報システムは、参考例と共通な構成を有するので、参考例と同様の構成に関しては、同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0025】
図2において、実施形態に係る非常通報システムは、参考例と以下の点で異なっている。第1に、通報制御器20が、音声線(引き通し線)10aに対し、異なる2種類以上の電圧を加圧可能となっている。図2に示す例では、電圧源V1からの第1の電圧(例えば、電圧値90V)を印加するスイッチS1と、電圧源V2からの第2の電圧(例えば、電圧値100V)を印加するスイッチS2とが備えられている。電圧値の種類(数)は、2より多い数であってもよく、電圧値の大きさは適宜設定可能である。例えば、第1の電圧値25V、第2の電圧値50V、第3の電圧値75V、及び第4の電圧値100V、などである。例えば、電圧値の数に応じて、音声線10aに印加する電圧の電圧源及びスイッチが用意される。なお、図2中のD1、D2、Dは逆流防止用のダイオードである。
【0026】
通報制御器20は、音声線10aに対し、非常通報ボタン13が押された回数、すなわち、非常通報ボタンが押された(非常通報操作がなされた)非常通報装置10の台数に応じた大きさ(電圧値)の電圧を音声線10aに印加する。図2に示す例では、通報制御器20は、非常通報ボタン13が押された非常通報装置10の台数が1台の場合は、スイッチS1をオンにして、電圧値90Vの電圧を音声線10aに印加する。これに対し、通報制御器20は、非常通報ボタン13が押された非常通報装置10の台数が2以上の場合は、スイッチS2をオンにして、電圧値100Vの電圧を音声線10aに印加する。
【0027】
通報制御器20は、例えば、各非常通報装置10からの非常通報信号の受信を契機に、音声線10aに印加されている電圧値を検出することができる。電圧値の検出は、スイッチS1、S2のオンオフ状態を示す情報(S1オン→90Vと判定)を用いて行うことができる。或いは、音声線10aの電圧の測定により電圧値を検出してもよい。通報制御器20は、非常通報信号を受けた場合に、音声線10aに印加された電圧値を検出し、印加済の電圧値を検出した場合、その電圧値より1段階大きい電圧値を音声線10aに印加する。例えば、通報制御器20は、電圧値90V(或いは25V)を検出した場合、それより1段階大きい電圧値100V(50V)を音声線10aに印加する。
【0028】
実施形態において、非常通報装置10は、複数の(2以上の)ランプ14を有している。図2に示す例では、非常通報装置10は、複数のランプ14(図2の例では3つのランプ14a、14b、14c)を有している。ランプ14の数は、2以上であれば適宜の数を採用することができる。通報制御器20は、音声線10aに印加している電圧値を示す信号を、非常通報ボタン13が押された非常通報装置10に送り、非常通報装置10は、
電圧値に応じた点灯又は点滅パターン(点灯と点滅との組み合わせパターンを含む)でランプ14を点灯させる。これによって、乗客は、非常通報装置10の台数を把握することができる。なお、ランプ14の数が1つである場合でも、電圧値に応じた点滅パターンでランプ14を点滅させることで、非常通報装置10の台数を把握することができる。
【0029】
また、車側灯28a及び29bについても、通報制御器20が、音声線10aに印加されている電圧値に応じた点滅パターンで車側灯28a及び28bの点滅を制御することにより、非常通報装置10の台数を鉄道車両1の外部から把握することができる。なお、車両の片側に設ける車側灯28の数を2以上にして、電圧値に応じた点灯又は点灯パターン(点灯と点滅との組み合わせパターンを含む)で車側灯28の点灯又は点滅が制御されるようにしてもよい。
【0030】
図3において、実施形態に係る受報制御器20aは、音声線10aに印加された電圧値を測定などによって検出し、検出した電圧値を示す信号を連絡受報器4に入力する。連絡受報器4には、複数のランプ35(35a、35b及び35c)が接続されている。連絡受報器4は、複数のランプ35の少なくとも1つを用いて、電圧値に応じた点灯または点滅パターン(点灯と点滅との組み合わせパターンを含む)で、ランプ35の点灯又は点滅を制御する。これによって、乗務員が非常通報装置10の台数を把握することができる。
【0031】
図2に戻って、実施形態に係る非常通報装置10は、複数の非常通報ボタン13(図2に示す例では13a、13b及び13c)を有している。非常通報ボタン13a、13b、13cは、客室3で起こった異常事態の種類(カテゴリ)に対応づけて設けられている。例えば、客室内での煙や火災発生時は、非常通報ボタン13aを押し、傷害等の発生時は非常通報ボタン13bを押し、これら以外の異常事態(急病人発生等)については非常通報ボタン13cを押す。但し、非常通報ボタン13の数及び各ボタン13に割り当てられる異常事態の種類は適宜設定可能である。
【0032】
押された非常通報ボタン13を示す情報(信号)は、音声線10a、受報制御器20aを介して連絡受報器4に入力される。連絡受報器4は、スピーカ38から出力されるブザーの鳴動パターンを、非常通報ボタン13が押された非常通報装置10の台数に応じて変動させる(異ならせる)ことができる。
【0033】
また、連絡受報器4は、非常通報ボタン13を示す情報に対応する、ランプ35a、35b及び35cのいずれかを点灯させる。本実施形態では、ランプ35aは、非常通報ボタン13aと対応づけられ、ランプ35bは非常通報ボタン13bと対応づけられ、ランプ35cは非常通報ボタン13cと対応づけられている。このため、非常通報ボタン13を示す情報がボタン13aを示す場合、連絡受報器4は、ランプ35aを点灯させる。非常通報ボタン13を示す情報がボタン13bを示す場合、連絡受報器4は、ランプ35aを点灯させる。非常通報ボタン13を示す情報がボタン13cを示す場合、連絡受報器4は、ランプ35cを点灯させる。
【0034】
乗務員は、ランプ35a、35b、35cの点灯又は消灯状態を把握することで、客室3で起こった異常事態の種類を把握することができる。なお、ボタン13とランプ35の対応づけは一例であり、ランプ35の点灯又は点滅パターンから、押されたボタン13(異常事態の種類)を把握できるようになっていればよい。このとき、点灯又は点滅パターンから、非常通報装置10の台数が把握できるようにすする。なお、異常事態の種類に応じて複数のボタン13及びランプ35を設けることはオプションであり、必須の構成要件ではない。ボタン13及びランプ35は、それぞれ1つずつであってもよい。この場合でも、上述したように、電圧値に応じた点滅パターンによって、非常通報ボタン13が押された非常通報装置10の台数を把握することができる。
【0035】
なお、ランプ14、車側灯28、及びランプ35の光源は、電球であっても発光ダイオード(LED)であっても有機ELであってもよい。
【0036】
また、図2に示すように、乗務員室2には、放送装置6が配置され、放送装置6は、放送用の音声信号の伝達経路(信号線)7を介して出力増幅器(アンプ)8に接続される。出力増幅器8から出力される音声信号は、スイッチ23及び配線9aを介して、配線9aに夫々接続されたスピーカ9に接続され、スピーカ9の夫々から音声信号に応じた音声が放音される。このようにして、放送装置6によって生成された自動放送用の音声信号、マイクから入力された乗務員の音声信号が、スピーカ9に接続されて客室3内に放送される。
【0037】
実施形態では、スイッチ23には、マイクアンプ24、フィルタ25、ラインアンプ26の直列回路が接続されており、ラインアンプ26の出力が、音声線10aに設けられたスイッチ27に接続される。スイッチ23及びスイッチ27の動作は、例えば通報制御器20によって制御される。通報制御器20は、非常通報装置10の非常通報ボタン13の押下を検知すると、配線9aとマイクアンプ24とが接続されるようにスイッチ23を制御し、ラインアンプ26が音声線10aに接続されるようにスイッチ27を制御する。これによって、非常通報ボタン13の押下を契機に、スピーカ9を用いて集音した客室3内の音声を連絡受報器4へ送り、スピーカ5bを用いて乗務員が聴取したり、録音装置を用いて音声を録音したりすることができる。聴取により、乗務員は客室3内の様子を把握することができる。
【0038】
実施形態では、乗務員室2と客室3とを有する鉄道車両1の非常通報システムは、以下を備える。すなわち、鉄道車両1の客室3内に2以上配置される非常通報装置10と、非常通報装置10に対する非常通報操作(ボタン13の押下、これ以外でもよい)が行われた場合に、客室3と乗務員室2との間に設けられた音声線10a(配線の一例)に対する所定電圧の印加を制御する通報制御器20(制御器の一例、通報制御器20以外でもよい)とを備える。通報制御器20は、音声線10aに対し、非常通報操作が行われた非常通報装置10の台数に応じた大きさの電圧を印加することを制御する。実施形態によれば、電圧の大きさから非常通報装置の台数を把握することが可能となる。
【0039】
通報制御器20は、音声線10aに所定電圧を印加する場合に、音声線10aに印加されている電圧値を検出し、検出した電圧値より大きい電圧を印加することができる。また、通報制御器20は、音声線10aに印加されている電圧値から非常通報操作が行われた非常通報装置10の台数を判定し、判定した台数に1を加えた台数に応じた電圧(現在の電圧値より1段階大きい電圧)を印加することができる。
【0040】
実施形態に係る非常通報システムは、非常通報操作に応じて鳴動するブザー(スピーカ16、38)をさらに含み、ブザーの鳴動パターンが、非常通報操作が行われた非常通報装置10の台数に応じて変動する構成を採用することができる。実施形態では、ブザー(スピーカ16、38)が、客室3及び乗務員室2の双方に配置されているが、ブザーは、客室3及び乗務員室2の少なくとも一方に配置されるようにしてもよい。
【0041】
また、実施形態に係る非常通報システムでは、非常通報操作に応じて点灯又は点滅する1以上のランプ(ランプ14、車側灯28、ランプ35)をさらに含み、1以上のランプの点灯又は点滅のパターンが、非常通報操作が行われた非常通報装置10の台数に応じて変動する(異なる)ように構成することができる。1以上のランプは、客室3、乗務員室2、又は、客室3及び乗務員室2の双方に配置されているように構成することができる。
【0042】
また、実施形態に係る非常通報システムでは、非常通報装置10に備えられた、非常通報の種類に応じた複数の非常通報ボタン13a、13b、13cと、複数の非常通報ボタン13a、13b、13cのうち、押された非常通報ボタン13に対応する非常通報の種類に応じたパターンで点灯または点滅する少なくとも一つのランプとをさらに含む構成を採用してもよい。少なくとも一つのランプとして、実施形態では、ランプ14及び35を例示したが、ランプ14及び35の少なくとも一方を少なくとも一つのランプとして採用することができる。これにより、非常通報の種類の把握が容易となる(好適な把握が可能となる)。以上説明した実施形態の構成は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・鉄道車両
2・・・乗務員室
3・・・客室
4・・・連絡受報器
5・・・送受話器
6・・・放送装置
7・・・放送音声信号の伝達経路
8・・・パワーアンプ
9・・・スピーカ
9a・・・配線
10a・・・音声線
10・・・非常通報装置
11・・・受話用スピーカ
12・・・送話用マイク
13・・・非常通報ボタン
14,35・・・ランプ
20・・・通報制御器
20a・・・受報制御器
図1
図2
図3