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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049116
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】照明器具および照明制御システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/16 20200101AFI20240402BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20240402BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20240402BHJP
   H05B 47/155 20200101ALI20240402BHJP
   H05B 47/195 20200101ALI20240402BHJP
   H05B 47/115 20200101ALI20240402BHJP
   H05B 47/11 20200101ALI20240402BHJP
   H05B 45/20 20200101ALI20240402BHJP
【FI】
H05B47/16
H05B47/105
H05B45/10
H05B47/155
H05B47/195
H05B47/115
H05B47/11
H05B45/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155381
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野坂 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】相場 明穂
(72)【発明者】
【氏名】大島 悠一
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA10
3K273QA04
3K273QA07
3K273QA11
3K273RA02
3K273RA05
3K273RA12
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA27
3K273TA46
3K273TA52
3K273TA54
3K273TA55
3K273TA62
3K273TA65
3K273UA17
3K273UA18
3K273UA22
(57)【要約】
【課題】本開示は照明器具に関し、照明をフェード動作させる際に、調光の見た目の品位を改善することのできる照明器具を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の照明器具は、ユーザが所望する調光条件およびフェード時間に関する信号を他の装置から受信し、シリアル通信により点灯回路へコマンドを送信する通信モジュールと、点灯回路と、光源とを備える。通信モジュールは、ユーザが所望する調光条件およびフェード時間に基づき、今回行なうコマンド送信の時刻から次回行なうコマンド送信の時刻までの、調光の変化率を示す第一データを備えるコマンドを点灯回路へ送信する処理を実行する。点灯回路は、コマンドを受信するたびに、第一データが示す調光の変化率が実現されるよう、光源の電力駆動を行う処理を実行する。通信モジュールは、フェード時間が経過するまで、コマンド送信処理を繰り返し実行するように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが所望する調光条件およびフェード時間を示す信号を他の装置から受信し、シリアル通信により点灯回路へコマンドを送信する通信モジュールと、
前記点灯回路と、
光源と、
を備え、
前記通信モジュールは、
ユーザが所望する前記調光条件および前記フェード時間に基づき、今回行なうコマンド送信の時刻から次回行なうコマンド送信の時刻までの、調光の変化率を示す第一データを備えるコマンドを前記点灯回路へ送信する、コマンド送信処理を実行し、
前記点灯回路は、
前記コマンドを受信するたびに、前記第一データが示す調光の変化率が実現されるよう、前記光源の電力駆動を行う、電力駆動処理を実行し、
前記通信モジュールは、
前記フェード時間が経過するまで、前記コマンド送信処理を繰り返し実行するように構成される、照明器具。
【請求項2】
互いに色温度の異なる前記光源を複数備え、
前記通信モジュールは、前記コマンド送信処理においては、
前記第一データと、
ユーザが所望する前記調光条件、前記フェード時間、および調色条件に基づき算出される、前記第一データが示す時間における調色の変化率を示す第二データと、
を備えるコマンドを前記点灯回路へ送信する処理を実行し、
前記点灯回路は、前記電力駆動処理においては、
前記コマンドを受信するたびに、前記第一データが示す調光の変化率と、前記第二データが示す調色の変化率とが実現されるよう、前記光源の夫々を電力駆動する処理を実行する、請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記第一データは、
今回行なうコマンド送信の時刻から次回行なうコマンド送信の時刻までの時間を示す第三データと、
ユーザが所望する前記調光条件および前記フェード時間に基づき算出される、前記第三データが示す時間における調光の変化量を含む第四データと、
を含む、請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記第二データは、
今回行なうコマンド送信の時刻から次回行なうコマンド送信の時刻までの時間を示す第三データと、
ユーザが所望する前記調色条件および前記フェード時間に基づき算出される、前記第三データが示す時間における調色の変化量を示す第五データと、
を含む、請求項2に記載の照明器具。
【請求項5】
前記第一データが示す前記調光の変化率は、調光率の変化率である、請求項1に記載の照明器具。
【請求項6】
前記第二データが示す前記調色の変化率は、色比率の変化率である、請求項2に記載の照明器具。
【請求項7】
前記第三データが示す前記時間は、前記シリアル通信における信号間隔である、請求項3に記載の照明器具。
【請求項8】
前記第四データが示す前記調光の変化量は、調光率の変化量である、請求項3に記載の照明器具。
【請求項9】
前記第四データは、今回行なうコマンド送信の時刻に実現される調光率と、前記調光率の変化量の和を示す、請求項8に記載の照明器具。
【請求項10】
前記第五データが示す調色の変化量は、色比率の変化量である、請求項4に記載の照明器具。
【請求項11】
請求項1または2に記載の照明器具と、
ユーザが所望する調光条件およびフェード時間を含む情報を調光コントローラに通知する設定器と、
前記設定器から通知された前記情報を、前記照明器具に通知する前記調光コントローラと、
を備える照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明器具および照明制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通信モジュール、制御モジュール、光源、および光源を点灯制御する点灯回路を備える照明器具が開示されている。そこでは、シリアル通信により調光制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6492732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シリアル通信で用いる信号は離散時間信号であるため、上述の方法では、照明をフェード動作させる際に調光が途切れ途切れに変化してしまい、見た目の品位が良くないという問題があった。
【0005】
本開示は上述の問題を解決するため、照明をフェード動作させる際に、調光の見た目の品位を改善することのできる照明器具を提供することを第一の目的とする。
【0006】
また、本開示は、照明をフェード動作させる際に、調光の見た目の品位を改善することのできる照明制御システムを提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第一の態様は、ユーザが所望する調光条件およびフェード時間を示す信号を他の装置から受信し、シリアル通信により点灯回路へコマンドを送信する通信モジュールと、
前記点灯回路と、
光源と、
を備え、
前記通信モジュールは、
ユーザが所望する前記調光条件および前記フェード時間に基づき、今回行なうコマンド送信の時刻から次回行なうコマンド送信の時刻までの、調光の変化率を示す第一データを備えるコマンドを前記点灯回路へ送信する、コマンド送信処理を実行し、
前記点灯回路は、
前記コマンドを受信するたびに、前記第一データが示す調光の変化率が実現されるよう、前記光源の電力駆動を行う、電力駆動処理を実行し、
前記通信モジュールは、
前記フェード時間が経過するまで、前記コマンド送信処理を繰り返し実行するように構成される、照明器具であることが好ましい。
【0008】
本開示の第二の態様は、第一の態様に係る照明器具と、
ユーザが所望する調光条件およびフェード時間を含む情報を調光コントローラに通知する設定器と、
前記設定器から通知された前記情報を、前記照明器具に通知する前記調光コントローラと、
を備える照明制御システムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の第一から第二の態様によれば、照明をフェード動作させる際に、調光の見た目の品位を改善することのできる照明器具および照明制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態1に係る、照明制御システムのブロック図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る、調光コントローラの機能構成例を示すブロック図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る、照明器具の構成を示すブロック図である。
図4】本開示の比較例に係る、コマンドのデータ構成を示す模式図である。
図5】本開示の比較例に係る、コマンドの具体例である。
図6】本開示の比較例に係る、従来のコマンドを用いた場合の、照明器具の調光率の時間変化を示す図である。
図7】本開示の実施の形態1に係る、コマンドのデータ構成を示す模式図である。
図8】本開示の実施の形態1に係る、コマンドの具体例である。
図9】本開示の実施の形態1に係る、通信モジュールがコマンドにより点灯回路に伝えるデータの詳細を説明する図である。
図10】本開示の実施の形態1に係る、照明器具の調光率を低い値からフェード動作させる場合の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
図1は、本開示の実施の形態1に係る、照明制御システムのブロック図である。この照明制御システム100は、設定器10、調光コントローラ20、及び照明器具30を備えている。
【0012】
設定器10は、ユーザが所望の照明条件を設定するために操作する装置である。設定器10においてユーザが設定することのできる照明条件は、調光条件、調色条件、およびフェード時間を含む。ただし、フェード時間とは、調光において、現在の明るさから所望の明るさに照明を変化させるまでにかける時間のことである。もしくは、調色において、現在の照明色から所望の照明色に変化させるまでにかける時間のことである。さらには、調光と調色の組合せを所望の組合せに変化させるまでの時間である。設定器10は、ユーザにより設定されたこれらの照明条件の情報を、赤外線通信40を介して調光コントローラ20に通知する処理をさらに実行する。
【0013】
調光コントローラ20は、設定器10から通知された、ユーザの所望の照明条件の情報を、信号線50を介して、照明器具30に通知する。照明器具30は、ユーザが設定した照明条件が実現するよう、調光および調色の条件を決定する。さらに、決定した条件に基づき、ユーザが設定したフェード時間に従って調光と調色を行う。
【0014】
図2は、本開示の実施の形態1に係る、調光コントローラの機能構成例を示すブロック図である。調光コントローラ20は、制御部21、通信部22、赤外線通信部23、人検知センサ部24、明るさセンサ部25、LED状態表示部26を有する。
【0015】
制御部21は、赤外線通信部23、人検知センサ部24、明るさセンサ部25から受信した情報に基づき、調光コントローラ20の機能を実現するための演算、および照明器具30の制御に必要な演算を実施する。また、制御部21は、これらの演算結果、およびユーザが設定した所望の照明条件の情報を、通信部22を介して照明器具30に通知する。
【0016】
通信部22は信号線50を介して照明器具30と通信を行う。赤外線通信部23は、設定器10との間で赤外線通信40を行い、設定器10から通知された、ユーザの所望の照明条件の情報を制御部21に通知する。
【0017】
人検知センサ部24は人の存在の有無を検出して、検出した情報を制御部21に送信する。明るさセンサ部25は、明るさを検出して、検出した情報を制御部21に送信する。
【0018】
LED状態表示部26は、制御部21からの制御に基づき、例えば、調光コントローラ20の状態をLEDで表示する。
【0019】
図3は、本開示の実施の形態1に係る、照明器具の構成を示すブロック図である。照明器具30は、通信モジュール31、点灯回路32、および第一LEDモジュール33、第二LEDモジュール34を有する。
【0020】
通信モジュール31は、調光コントローラ20から通知されたユーザの所望の照明条件の情報に基づき、その所望の照明条件が実現するよう、調光および調色の条件を決定する。さらには、決定した調光および調色の条件、およびユーザが設定したフェード時間の情報を含むコマンドを、シリアル通信を用いて点灯回路32に伝送する。
【0021】
点灯回路32は、通信モジュール31から伝送されたシリアル通信のコマンドに基づき、第一LEDモジュール33、および第二LEDモジュール34を駆動する電力をそれぞれ制御する。
【0022】
第一LEDモジュール33、第二LEDモジュール34は、光源であり、互いに異なる色温度の光源を有する。
【0023】
以上図1から3を用いて説明したように、本実施形態の照明制御システム100においては、照明器具30は、通信モジュール31から送信されるコマンドに基づき、点灯回路32において光源への駆動電力を制御する。これにより、ユーザが設定したフェード時間に従ってユーザが所望する調光と調色へと変化させることができる。
【0024】
なお、図1から図3においては、調光コントローラ20と、照明器具30が信号線50で有線接続されている場合を説明した。しかしながら、信号の送受信の方法は無線であってもよい。調光コントローラ20の使用用途に合わせて、通信モジュール31が好適なインターフェースを備えることで、本開示の照明制御システム100は多種多様なシステムに対応することが可能となる。
【0025】
また図3においては、照明器具30がLEDモジュールを2個備える場合を説明したが、LEDモジュールは2個以上あってもよい。もしくは、照明器具30の調色を実施する必要がない等の場合においては、LEDモジュールは1個でもよい。
【0026】
なお、ユーザが設定した所望の照明条件を実現するために、通信モジュール31が決定する調光の条件とは、例えば調光率のことである。ここで、調光率とは、照明の最大の明るさを100とした場合の、明るさの百分率値のことである。本開示のように2個の光源を備える場合は、2個の光源の調光率の合計であらわされる量である。
【0027】
同様に、通信モジュール31が決定する調色の条件とは、例えば色比率のことである。ただし、色比率とは、互いに色温度の異なる第一LEDモジュール33と第二LEDモジュール34の光源を用いて、ある混色した色温度を表現するのに必要な、第一LEDモジュール33と第二LEDモジュール34それぞれの色温度の比率である。調光率と色比率は、第一LEDモジュール33と第二LEDモジュール34を駆動する電力を制御することで、どちらも制御することが可能である。
【0028】
次に、本開示の照明制御システム100の効果を説明するため、先に比較例について説明する。図4は、本開示の比較例に係る、コマンドのデータ構成を示す模式図である。スタートコマンドSTXには、データの開始位置を示す制御コードが入力される。次に、識別コマンドCMには、データの内容を示す識別子が入力される。さらに、データコマンドD1およびD2には、識別コマンドCMで指定される識別子の数値を示すデータが入力される。
【0029】
図5は、本開示の比較例に係る、コマンドの具体例である。ただし、スタートコマンドSTXは省略している。ここでは、識別コマンドCMに、調光、調色であることを示す識別子が入力されている。また、データコマンドD1およびD2に、調光および調色の条件を示すデータがそれぞれ入力されている。なお、調光の条件は、例えば調光率であり、調色の条件は、例えば色比率である。以降では、特に明示しない限り、データコマンドD1には調光率を示すデータが入力されているとする。同様にデータコマンドD2には色比率を示すデータが入力されているとする。
【0030】
このように、従来技術においては、コマンドに含まれるデータは、調光と調色に関する情報のみであった。すなわち、通信モジュール31から点灯回路32に対してフェード時間の情報は伝送されなかった。従来技術では、通信モジュール31は、ユーザが設定したフェード時間で調光と調色が変化するよう、調光と調色の条件を変化させたコマンドを点灯回路32に送信していた。
【0031】
ここでも引き続き比較例について説明する。図6は、本開示の比較例に係る、従来のコマンドを用いた場合の、照明器具の調光率の時間変化を示す図である。ここでは、フェード開始時刻Tsにおける調光率の初期値をDnとする。さらに、ユーザの所望の調光条件から決定される調光率Dtと、ユーザが設定したフェード時間Tfは既知であるとし、時刻Tsからフェードが開始された場合の調光率の時間変化を示す。
【0032】
図6において、上向きの片矢印は、通信モジュール31がコマンドにより点灯回路32に指令した調光率の値を示す。また実線は、コマンドが指令した調光率を実現するために点灯回路32が電力駆動を実施し、照明器具30の調光率を変化させた結果を示す。
【0033】
図6では、片矢印で示される調光率の指令値はある時間間隔ΔTごとに離散的な変化をしている。それに応じて、実線で示される照明器具30の調光率も、ある時間間隔ΔTで階段状に変化している。このような応答は、シリアル通信が離散間信号であり、通信モジュール31から点灯回路32へのコマンド入力と、点灯回路32における電力駆動とが同期してしまうことに起因する。
【0034】
すなわち、図6における時間間隔ΔTは、通信モジュール31が行うシリアル通信における信号間隔を表している。このように時間間隔ΔTで調光率が階段状に変化すると、ユーザには途切れ途切れに調光されていくように見えるため、見た目の品位が良くないという問題が生じる。
【0035】
上記の対策として、シリアル通信の通信速度を上げて、時間間隔ΔTを小さくすることで、階段をより滑らかにすることはできる。しかしながら、通信速度を上げるとノイズの影響を受けやすくなる等、他の問題が発生してしまう。また、通信モジュール31と点灯回路32間のシリアル通信は、調光、調色のデータ通信以外にも、例えば、点灯回路の状態をモニタするためにも用いられる。したがって、調光、調色のデータ容量が増えると、他の情報に係る通信が遅延するという問題も生じる。
【0036】
以上説明したように、従来技術においては、シリアル通信が離散時間信号であることに起因して、照明をフェードさせた際の調光率が階段状に変化してしまっていた。
【0037】
次に、本実施形態の照明制御システム100が実施するシリアル通信を説明する。図7は、本開示の実施の形態1に係る、コマンドのデータ構成を示す模式図である。図7においては、図4で説明した従来技術のデータ構成に加えて、データコマンドD3が追加されている。
【0038】
図8は、本開示の実施の形態1に係る、コマンドの具体例である。ただし、スタートコマンドSTXは省略している。図8においては、データコマンドD3に、フェード時間差分の数値を示すデータが入力されている。ここで、フェード時間差分とは、通信モジュール31が今回行なうコマンド送信の時刻から、次回行うコマンド送信の時刻までの時間のことである。以降では、特に明示しない限り、フェード時間差分は、シリアル通信における信号間隔ΔTに等しいとする。
【0039】
このように、本開示のコマンドには、調光と調色に関するデータに加えて、フェード時間差分ΔTに関するデータが含まれている。これにより、通信モジュール31から点灯回路32に対して、次回のコマンド送信までにかかる時間を伝えることができる。
【0040】
図9は、本開示の実施の形態1に係る、通信モジュールがコマンドにより点灯回路に伝えるデータの詳細を説明する図である。ここでは、図6の比較例と同様に、フェード開始時刻Tsにおける調光率の初期値をDnとする。また、ユーザの所望の調光条件から決定される調光率Dtと、色比率Rt、フェード時間Tfは設定されているものとする。ただし、説明を簡単にするため、色比率については初期値Rn(=Rt)から変化させる必要がないとして、詳細は省略する。
【0041】
通信モジュール31は、フェード開始時刻Tsにおいて、データコマンドD1に調光率(Dn+ΔD)、データコマンドD2に色比率Rt、データコマンドD3にフェード時間差分ΔTをそれぞれ入力したコマンドを、点灯回路32に送信する。ここで、ΔDとは、今回行なうコマンド送信の時刻、すなわち時刻Tsから、次回行うコマンド送信の時刻(Ts+ΔT)までの時間ΔTにおける、調光率の変化量である。
【0042】
ΔDは、ユーザの所望の調光条件、およびフェード時間に基づき算出される量である。たとえば、図9においては、時刻Tsにおける調光率の初期値Dnを表す点Aと、フェード時間Tf経過後の時刻(Ts+Tf)における調光率Dtを表す点Bを結ぶ直線の、フェード時間差分ΔTにおける変化量がΔDである。
【0043】
通信モジュール31から送信されたコマンドを受信した点灯回路32は、コマンドで指定された調光率(Dn+ΔD)になるまで、フェード時間差分ΔTの時間をかけて第一LEDモジュール33および第二LEDモジュール34をそれぞれ電力駆動する。
【0044】
さらに、時刻(Ts+ΔT)において、通信モジュール31は、データコマンドD1に調光率{(Dn+ΔD)+ΔD}、データコマンドD2に色比率Rt、データコマンドD3にフェード差分ΔTをそれぞれ入力したコマンドを、点灯回路32に送信する。ここで、調光率(Dn+ΔD)とは今回行なうコマンド送信の時刻(Ts+ΔT)に実現される調光率である。すなわち、データコマンドD1には、今回行なうコマンド送信の時刻に実現される調光率(Dn+ΔD)と調光率の変化量ΔDの和が入力されている。
【0045】
このように、通信モジュール31は、ユーザの所望の調光条件、およびフェード時間に基づき、調光率の変化量ΔDを計算する。さらに、今回行なうコマンド送信の時刻に実現される調光率と、調光率の変化量ΔDの和として、データコマンドD1に代入する。さらに、データコマンドD2に色比率Rt、データコマンドD3にフェード時間差分ΔTをそれぞれ入力したコマンドを、点灯回路32に送信する。この処理を、フェード時間Tfが経過するまで、すなわち時刻(Ts+Tf)になるまで繰り返し実行する。
【0046】
点灯回路32は、コマンドを受信するたびに、データコマンドで指示された調光率になるまで、指定されたフェード時間差分ΔTの時間をかけて第一LEDモジュール33および第二LEDモジュール34をそれぞれ電力駆動する。すなわち、通信モジュール31からコマンドが送信されない時間ΔTの間に、点灯回路32が照明器具30のフェードを実施する。このことにより、次回コマンドが更新されるまでの調光率を補完することができる。
【0047】
図9においても、片矢印で示される調光率の指令値がある時間間隔ΔTごとに離散的な変化をしている点は、図6の比較例と同様である。しかしながら、本開示では、点灯回路32による調光率の補完の効果により、実線で示したように、照明器具30の調光率は連続的な関数となる。したがって、ユーザには連続的に調光されていくように見え、見た目の品位を改善することができる。
【0048】
以上説明したように、本開示の照明制御システム100においては、通信モジュール31からコマンドが送信されない時間ΔTの間も、点灯回路32が照明器具30のフェードを実施し、調光率を補完することができる。そのうえ、通信モジュール31と点灯回路32の間をシリアル通信において、シリアル通信の通信速度を上げることなく、改善することができる。
【0049】
なお、図9においてはフェード時間差分ΔTがシリアル通信における信号間隔ΔTに常に等しいとして説明を行ったが、フェード時間差分ΔTはシリアル通信の通信速度を超えない範囲で自由に設定することができる。また、フェードの途中で設定を変更することも可能である。
【0050】
また、図9においては色比率については初期値Rn(=Rt)から変化させる必要がないとして、説明を行った。ユーザが所望の調色条件を設定し、色比率を変化させる必要がある場合、通信モジュール31は、ユーザの所望の調色条件、およびフェード時間に基づき、色比率の変化量ΔRを計算する処理をさらに行う。また、今回行なうコマンド送信の時刻に実現される色比率と、色比率の変化量ΔRの和として、データコマンドD2に代入する。さらに、データコマンドD1、D3にも上述の入力処理を行ったコマンドを、点灯回路32に送信する。
【0051】
点灯回路32は、コマンドを受信するたびに、データコマンドD1、D2が示す調光率および色比率が実現するよう、指定されたフェード時間差分ΔTの時間をかけて第一LEDモジュール33および第二LEDモジュール34をそれぞれ電力駆動する。
【0052】
このように、本開示の照明制御システム100においては、点灯回路32により調光と調色を補完し、調色と調光の見た目の品位を改善することができる。
【0053】
図10は、本開示の実施の形態1に係る、照明器具の調光率を低い値からフェード動作させる場合の時間変化を示す図である。図10図9で説明した場合に比べて、時刻Tsにおける調光率の初期値Dnが低い値である場合を示している。このように調光率が小さい場合には、より細かく調光制御を実施してフェード動作させることが珍しくない。本開示の照明制御システム100の場合は、通信モジュール31においてフェード時間差分ΔTをより小さい値に変更する、もしくはより通信速度の高い通信モジュール31に置き換えることで、容易に対応可能である。
【0054】
図10に示す通り、本開示では、点灯回路32による調光率の補完機能により、調光率が小さい場合においても連続的なフェードを行うことができる。このことは、フェード時間差分ΔTを小さくし、シリアル通信における通信速度を上げるに値する、大きな効果であるといえる。
【0055】
以上説明したように、本開示の照明制御システム100では、調光率が小さい場合においてもフェード時間差分ΔTを小さくして連続的なフェードを行うことができる。
【0056】
なお、フェード時間差分ΔTを自由に設定できることに伴い、本開示の照明制御システム100では従来技術にはないさらに別の効果を生みだすことができる。
【0057】
例えば、フェード中にユーザから異なる調光、調色の設定が行われると、現在のフェードを停止するだけでなく、通信モジュール31と点灯回路32における調光と調色の条件を合わせる必要が生じる。しかしながら、従来技術においては、フェード時間差分ΔTを自由に設定できないことから、シリアル通信の信号間隔が長く設定されている場合には、上述の条件合わせに時間を要していた。
【0058】
本開示においては、フェード時間差分ΔTを大きくしたフェードの実施中にユーザから新たな調光、調色設定が行われたとしても、条件合わせのためのコマンドにおいてはΔTを短く設定することで、直ちに完了することができる。これにより、従来技術のように遅延が発生することなく、最新の調光調色制御に移行することができる。
【0059】
以上説明したように、本開示によれば、照明をフェード動作させる際に、調光の見た目の品位を改善することのできる照明器具および照明制御システムを提供することができる。
【0060】
<変形例>
なお、本開示で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。もしくは本開示の技術的特徴を抽出し、本開示とは別の新たな照明器具および照明制御システムを提供してもよい。たとえば、本開示の照明器具および照明制御システムにおいて、調色のフェード制御は行わず、調光のみフェード制御する照明器具および照明制御システムを提供してもよい。
【0061】
また、本開示の説明においては、通信モジュール31が、今回行なうコマンド送信の時刻に実現される調光率と、調光率の変化量ΔDの和として、データコマンドD1に代入する。また、データコマンドD3にフェード時間差分ΔTをそれぞれ入力することを説明した。しかしながら、データコマンドD1とデータコマンドD3を一つに統合し、調光率の変化率(ΔD/ΔT)を入力するデータコマンドD13を使用してもよい。色比率についても同様に、データコマンドD2とデータコマンドD3を統合し、色比率の変化率(ΔD/ΔT)を入力するデータコマンドD23を使用してもよい。この方法においても、本開示と同じ効果を得ることができる。
【0062】
なお、本開示の説明においては、ユーザが設定することのできる照明条件は、調光、調色、およびフェード時間を含むことを説明した。しかしながら、フェード時間に代えて、フェードレートであってもよい。ここで、フェードレートとは、調光において、照明の明るさの変化量を、現在の明るさから所望の明るさに変化させるまでの時間に対する割合で示したものである。例えば、等しい割合で最小の明るさ(調光率0%)から最大の明るさ(調光率100%)に変化させるために10秒の時間を要する場合、明るさを10%変化させるためのフェード時間は1秒であり、明るさを50%変化させるためのフェード時間は5秒である。また、調色において、照明色の変化量を、現在の照明色から所望の照明色に変化させるまでの時間に対する割合で示したものである。さらには、調光と調色の組合せの変化量を、現在の組合せから所望の組合せに変化させるまでの時間に対する割合で示したものある。
【0063】
<請求項で使用する用語との対応>
本開示で説明した、データコマンドD13に入力されるデータを第一データと呼ぶ。同様に、データコマンドD23に入力されるデータを第二データと呼ぶ。また、データコマンドD3に入力されるデータを第三データと呼ぶ。また、データコマンドD1に入力されるデータを第四データと呼ぶ。また、データコマンドD2に入力されるデータを第五データと呼ぶ。
【0064】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
ユーザが所望する調光条件およびフェード時間を示す信号を他の装置から受信し、シリアル通信により点灯回路へコマンドを送信する通信モジュールと、
前記点灯回路と、
光源と、
を備え、
前記通信モジュールは、
ユーザが所望する前記調光条件および前記フェード時間に基づき、今回行なうコマンド送信の時刻から次回行なうコマンド送信の時刻までの、調光の変化率を示す第一データを備えるコマンドを前記点灯回路へ送信する、コマンド送信処理を実行し、
前記点灯回路は、
前記コマンドを受信するたびに、前記第一データが示す調光の変化率が実現されるよう、前記光源の電力駆動を行う、電力駆動処理を実行し、
前記通信モジュールは、
前記フェード時間が経過するまで、前記コマンド送信処理を繰り返し実行するように構成される、照明器具。
(付記2)
互いに色温度の異なる前記光源を複数備え、
前記通信モジュールは、前記コマンド送信処理においては、
前記第一データと、
ユーザが所望する前記調光条件、前記フェード時間、および調色条件に基づき算出される、前記第一データが示す時間における調色の変化率を示す第二データと、
を備えるコマンドを前記点灯回路へ送信する処理を実行し、
前記点灯回路は、前記電力駆動処理においては、
前記コマンドを受信するたびに、前記第一データが示す調光の変化率と、前記第二データが示す調色の変化率とが実現されるよう、前記光源の夫々を電力駆動する処理を実行する、付記1に記載の照明器具。
(付記3)
前記第一データは、
今回行なうコマンド送信の時刻から次回行なうコマンド送信の時刻までの時間を示す第三データと、
ユーザが所望する前記調光条件および前記フェード時間に基づき算出される、前記第三データが示す時間における調光の変化量を含む第四データと、
を含む、付記1または2に記載の照明器具。
(付記4)
前記第二データは、
今回行なうコマンド送信の時刻から次回行なうコマンド送信の時刻までの時間を示す第三データと、
ユーザが所望する前記調色条件および前記フェード時間に基づき算出される、前記第三データが示す時間における調色の変化量を示す第五データと、
を含む、付記2に記載の照明器具。
(付記5)
前記第一データが示す前記調光の変化率は、調光率の変化率である、付記1に記載の照明器具。
(付記6)
前記第二データが示す前記調色の変化率は、色比率の変化率である、付記2に記載の照明器具。
(付記7)
前記第三データが示す前記時間は、前記シリアル通信における信号間隔である、付記3または4に記載の照明器具。
(付記8)
前記第四データが示す前記調光の変化量は、調光率の変化量である、付記3に記載の照明器具。
(付記9)
前記第四データは、今回行なうコマンド送信の時刻に実現される調光率と、前記調光率の変化量の和を示す、付記8に記載の照明器具。
(付記10)
前記第五データが示す調色の変化量は、色比率の変化量である、付記4に記載の照明器具。
(付記11)
付記1から10のいずれかに記載の照明器具と、
ユーザが所望する調光条件およびフェード時間を含む情報を調光コントローラに通知する設定器と、
前記設定器から通知され前記情報を、前記照明器具に通知する前記調光コントローラと、
を備える照明制御システム。
【符号の説明】
【0065】
10 設定器
20 調光コントローラ
21 制御部
22 通信部
23 赤外線通信部
24 人検知センサ部
25 明るさセンサ部
26 LED状態表示部
30 照明器具
31 通信モジュール
32 点灯回路
33 第一LEDモジュール
34 第二LEDモジュール
40 赤外線通信
50 信号線
100 照明制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10