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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049128
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】特性取得装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20240402BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60T8/17 Z
B60T8/172 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155402
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】本山 航也
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA22
3D246HA38A
3D246HA42C
3D246HA43A
3D246HA44A
3D246JA12
3D246LA40Z
3D246LA41Z
3D246LA63Z
(57)【要約】
【課題】制動力の調整を行う機構において保持弁として用いられるリニア弁の作動特性を取得できるようにする。
【解決手段】特性取得装置は、リニア弁(182)への電流の供給を制御する給電制御部(242)と、加圧源とリニア弁とを接続する液路(14a)内の第1液圧を取得する第1取得部(244)と、リニア弁とホイールシリンダ(17A、17B)とを接続する液路(14b)内の第2液圧を取得する第2取得部(245)と、電流の値および第1液圧と第2液圧との液圧差に基づいて作動特性を算出する算出部(246)と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールシリンダと当該ホイールシリンダを加圧する加圧源とを接続する制動液の液路に設けられ、電流の供給を受けることにより、前記加圧源による前記ホイールシリンダへの加圧を抑制することができる常開型のリニア弁の作動特性を算出する特性取得装置であって、
前記リニア弁への電流の供給を制御する給電制御部と、
前記液路の一部を構成し、前記加圧源と前記リニア弁とを接続する第1液路内の第1液圧を取得する第1取得部と、
前記液路の一部を構成し、前記リニア弁と前記ホイールシリンダとを接続する第2液路内の第2液圧を取得する第2取得部と、
前記リニア弁へ供給した前記電流の値、および、前記第1取得部により取得した前記第1液圧と前記第2取得部により取得した前記第2液圧との液圧差、に基づいて、前記作動特性を算出する算出部と、
を備える、特性取得装置。
【請求項2】
前記加圧源を制御する加圧制御部を備え、
前記給電制御部は、
前記リニア弁に電流を供給することにより当該リニア弁を完全に閉弁させ、
前記リニア弁が完全に閉弁し、かつ前記第1液圧が所定値で一定になるよう前記加圧制御部が前記加圧源を制御している状態で、当該リニア弁へ供給していた前記電流を減少させていくよう構成されており、
前記給電制御部が前記電流を減少させている間に、前記電流の値を複数回取得する電流取得部を備え、
前記第1取得部は、前記電流取得部が前記電流の値を取得する度に、前記第1液圧を取得し、
前記第2取得部は、前記電流取得部が前記電流の値を取得する度に、前記第2液圧を取得し、
前記算出部は、前記電流取得部が複数回取得することにより得られた複数の前記電流の値、および、前記電流取得部が前記電流の値を取得する度に前記第1取得部が取得した前記第1液圧と前記第2取得部が取得した前記第2液圧との差の集合である複数の液圧差に基づいて、前記電流と前記液圧差との関係を、前記作動特性として算出する、
請求項1に記載の特性取得装置。
【請求項3】
前記第1取得部は、前記第1液路に配置された液圧センサの測定値を、前記第1液圧として検出するよう構成され、
前記加圧源は、シリンダと、電気モータの駆動によって前記シリンダ内を移動するピストンと、を備え、
前記第2取得部は、前記第1液圧、および前記シリンダに対する前記ピストンの変位量に基づいて、前記第2液圧を推定する、
請求項1または2に記載の特性取得装置。
【請求項4】
前記第2取得部は、
前記ピストンの変位量に基づいて、前記液路の消費液量である全体消費液量を算出し、
前記第1液路の消費液量特性、および前記第1液圧に基づいて第1消費液量を算出し、
前記全体消費液量から前記第1消費液量を減じた第2消費液量、および前記第2液路の消費液量特性に基づいて、前記第2液圧を推定する、
請求項3に記載の特性取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、アンチロックブレーキ制御を行う機構において、リニア型の電磁弁(以下、「リニア弁」と称する)を増圧弁(「保持弁」ともいう)として採用した液圧制御装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-315526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、アンチロックブレーキ制御等の制動力の調整を行う機構において保持弁として用いられるリニア弁の作動特性を取得する方法の確立が望まれている。
本発明の一態様は、制動力の調整を行う機構において保持弁として用いられるリニア弁の作動特性を取得できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る特性取得装置は、ホイールシリンダと当該ホイールシリンダを加圧する加圧源とを接続する制動液の液路に設けられ、電流の供給を受けることにより、前記加圧源による前記ホイールシリンダへの加圧を抑制することができる常開型のリニア弁の作動特性を算出する特性取得装置であって、前記リニア弁への電流の供給を制御する給電制御部と、前記液路の一部を構成し、前記加圧源と前記リニア弁とを接続する第1液路内の第1液圧を取得する第1取得部と、前記液路の一部を構成し、前記リニア弁と前記ホイールシリンダとを接続する第2液路内の第2液圧を取得する第2取得部と、前記リニア弁へ供給した前記電流の値、および、前記第1取得部により取得した前記第1液圧と前記第2取得部により取得した前記第2液圧との液圧差、に基づいて、前記作動特性を算出する算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、制動力の調整を行う機構において保持弁として用いられるリニア弁の作動特性を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る特性取得装置が作動特性を取得する対象となる保持弁を備える制動機構の概略構成を示す図である。
図2】同機構が備える調整ユニットの詳細を示す図である。
図3】同ユニットの一部を拡大して示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る特性取得装置の構成を示すブロック図である。
図5】同装置が作動特性を取得する際の、第1、第2液圧の経時変化を示すグラフ、およびリニア弁へ供給される電流の経時変化を示すグラフである。
図6】同装置が算出したリニア弁の作動特性を示すグラフである。
図7】本発明の第2実施形態に係る特性取得装置の構成を示すブロック図である。
図8】同装置による第2液圧の推定方法を説明する図である。
図9】同実施形態の変形例に係る特性取得装置による第2液圧の推定に必要な第2液量特性の推定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、詳細に説明する。
【0009】
[制動機構]
本実施形態に係る特性取得装置2の説明に入る前に、制動機構1の一例について説明する。この制動機構1は、車両に備えられるもので、保持弁182を備えている。この保持弁182は、特性取得装置2が作動特性を取得する対象である。
【0010】
{制動機構の構成}
制動機構1は、車両が備える複数の車輪FL,FR,RL,RRに対し、制動力を付与する。制動機構1は、図1に示すように、加圧ユニット1Aと、調整ユニット1Bと、駆動回路1C(図4参照)と、図示しない制御装置と、を備える。駆動回路1Cは、加圧ユニット1Aとおよび調整ユニット1Bへ電流を供給する。制御装置は、加圧ユニット1A、調整ユニット1B、および駆動回路1Cを制御する。なお、図1は、各部の位置が制動操作を受ける前の初期位置にあるときの状態を示している。
【0011】
〔加圧ユニット〕
加圧ユニット1Aは、制動液を貯留するマスタリザーバ11と、マスタシリンダ12と、ストロークシミュレータ13と、複数の液路14A、14B、14Cおよび14Dと、第1開閉弁15Aと、第2開閉弁15Bと、電動シリンダ16と、前輪ホイールシリンダ17Aと、後輪ホイールシリンダ17Bと、出力圧センサScと、を備えている。以下、各部について、図1における左方を加圧ユニット1Aにおける前方とし、図1における右方を加圧ユニット1Aにおける後方として説明する。
【0012】
(マスタシリンダ)
マスタシリンダ12は、調整ユニット1Bに制動液を供給する。マスタシリンダ12は、メインシリンダ121と、入力シリンダ122と、マスタピストン123と、入力ピストン124と、マスタばね125と、入力ばね126と、を備えている。
【0013】
メインシリンダ121は、底壁121aと、第1周壁121bと、第2周壁121cと、第1環状壁121dと、を有している。底壁121aは、略円板状をなす。第1周壁121bは、底壁121aから底壁121aの軸線Lに沿って延びる円筒状をなす。第2周壁121cは、第1周壁121bの後端から第1周壁121bの軸線Lに沿って延びる円筒状をなす。第2周壁121cの内径は第1周壁121bの内径よりも大きくなっている。第1環状壁121dは、第2周壁121cの後端から第2周壁121cの軸線Lに向かって延びる。第1環状壁121dは円環状をなしている。
【0014】
入力シリンダ122は、第3周壁122aと、第2環状壁122bと、を有している。第3周壁122aは、円筒状をなす。第3周壁122aは、メインシリンダ121の第2周壁121cと軸線Lが一致するように、第1環状壁121dに接合されている。第2環状壁122bは、第3周壁122aの後端から第3周壁122aの軸線Lに向かって延びる円筒状をなす。
【0015】
マスタピストン123は、メインシリンダ121の第1周壁121bの内周面、第2周壁121cの内周面および第1環状壁121dの内周面に面接触する状態で、マスタシリンダ12に収容されている。マスタピストン123の後端部は、第1環状壁121dよりも後方に突出し、入力シリンダ122内に位置している。マスタピストン123がこのよ
うに配置されることにより、メインシリンダ121内には、マスタ室Ra、第1液室Rb、およびサーボ室Rcが形成される。マスタ室Raは、マスタシリンダ12の前端寄りの位置において、底壁121aと第1周壁121bとマスタピストン123とによって区画される液室である。マスタ室Raは、マスタリザーバ11と接続されている。詳しくは、第1周壁121bにおけるマスタ室Raの後端寄りの箇所に形成されるポートを介してマスタリザーバ11と接続されている。第1液室Rbは、マスタ室Raよりも後方において、第2周壁121cとマスタピストン123とによって区画される液室である。サーボ室Rcは、第1液室Rbよりも後方において、第2周壁121cと第1環状壁121dとマスタピストン123とによって区画される液室である。また、サーボ室Rcは、その受圧面積が、マスタ室Raの受圧面積と等しく設定されている。マスタ室Raと第1液室Rbは、互いに接続されていない、すなわち制動液を授受しない。また、第1液室Rbとサーボ室Rcは互いに接続されていない。
【0016】
マスタピストン123は、メインシリンダ121および入力シリンダ122に対して移動可能となっている。移動する際、マスタピストン123は、第1周壁121bの内周面、第2周壁121cの内周面および第1環状壁121dの内周面を摺動する。また、マスタピストン123が図1に示した初期位置から前方に移動すると、マスタ室Raとマスタリザーバ11とがマスタピストン123によって遮断される。その結果、マスタピストン123が前方へ移動するのに伴い、マスタ室Raの液圧が増大していく。
【0017】
入力ピストン124は、入力シリンダ122の第3周壁122aの内周面および第2環状壁122bの内周面に面接触する状態で、マスタシリンダ12に収容されている。入力ピストン124の後端部は、第2環状壁122bよりも後方に突出し、ブレーキペダル124aに連結されている。また、入力ピストン124の前端は、マスタピストン123の後端と離間している。入力ピストン124がこのように配置されることにより、入力シリンダ122内には、第2液室Rd、および第3液室Reが形成される。第2液室Rdは、メインシリンダ121の第1環状壁121dとマスタピストン123と第3周壁122aと入力ピストン124とによって区画される液室である。第3液室Reは、第2液室Rdよりも後方において、第3周壁122aと第2環状壁122bと入力ピストン124とによって区画される液室である。第3液室Reは、マスタリザーバ11と接続されている。第2液室Rdと第3液室Reは、互いに接続していない。
【0018】
入力ピストン124は、入力シリンダ122に対して移動可能となっている。このため、入力ピストン124は、ブレーキペダル124aが操作される、すなわち踏まれると、その操作量に応じて、前方、すなわち、マスタピストン123に接近する方向に移動する。その際、入力ピストン124が第3周壁122aの内周面および第2環状壁122bの内周面を摺動する。また、入力ピストン124が前方に移動する際、マスタリザーバ11から第3液室Reに制動液が供給される。また、入力ピストン124は、ブレーキペダル124aの操作が解除されると、後方に移動する。その際、第3液室Reからマスタリザーバ11に制動液が排出される。
【0019】
マスタばね125は、メインシリンダ121内であって、マスタ室Ra、詳しくは、メインシリンダ121の底壁121aとマスタピストン123との間に配置される。そして、マスタばね125は、マスタピストン123を後方、すなわちマスタ室Raの容積を拡大する方向に付勢する。つまり、マスタばね125は、マスタピストン123が前方に移動すると、弾性的に圧縮される。マスタピストン123を移動させる力が低下すると、マスタばね125はマスタピストン123を押し戻す。
【0020】
入力ばね126は、入力シリンダ122内であって、入力シリンダ122の第2液室Rd、詳しくは、メインシリンダ121の第1環状壁121dと入力ピストン124との間
に配置される。入力ばね126は、入力ピストン124を後方、すなわち第2液室Rdの容積を拡大する方向に付勢する。つまり、入力ばね126は、入力ピストン124が前方に移動すると、弾性的に圧縮される。入力ピストン124を移動させる力が低下すると、入力ばね126は入力ピストン124を押し戻す。
【0021】
(液路)
液路14Aは、調整ユニット1Bを介して、マスタシリンダ12のマスタ室Raと前輪ホイールシリンダ17Aとを接続する。液路14Bは、第1液室Rbと第2液室Rdとを接続する。液路14Cは、マスタリザーバ11と液路14Bとを接続する。液路14Dは、調整ユニット1Bを介して、マスタシリンダ12のサーボ室Rcと後輪ホイールシリンダ17Bとを接続する。
【0022】
(第1開閉弁および第2開閉弁)
第1開閉弁15Aは、液路14Bにおける、液路14Cとの接続点よりも第2液室Rd側に設けられる。第2開閉弁15Bは、液路14Cにおける、液路14Bとの接続点と電動シリンダ16との接続点との間に設けられる。第1開閉弁15Aおよび第2開閉弁15Bは、共に常閉型の電磁弁である。制動時、第1開閉弁15Aおよび第2開閉弁15Bには、それぞれ電流が供給される。このとき、第1開閉弁15Aが開弁して、第1液室Rbおよび第2液室Rdがストロークシミュレータ13に接続される。また、このとき、第2開閉弁が閉弁して、第1液室Rbおよび第2液室Rdがマスタリザーバ11から遮断される。そして、ストロークシミュレータ13がブレーキペダル114aの操作量に応じた反力を発生させる。
【0023】
(電動シリンダ)
電動シリンダ16は、マスタシリンダ12および調整ユニット1Bに制動液を供給する加圧源である。電動シリンダ16は、後輪ホイールシリンダ17B、およびマスタシリンダ12のサーボ室Rcと接続されている。即ち、電動シリンダ16は、後輪ホイールシリンダ17B、およびサーボ室Rcに制動液を供給可能である。電動シリンダ16は、ブレーキペダル124aの操作量(以下、操作変位量Ss)に応じた出力圧Pc(第1液圧)に加圧された制動液を出力ポート16aから液路14Dへ吐出する。具体的には、操作変位量Ssに基づいて、図示しない制御装置が目標圧Ptを算出する。そして、制御装置が、出力圧Pcが目標圧Ptと一致するよう電動シリンダ16の電気モータ163を制御する。出力圧Pcは、出力圧センサScによって検出される。ここで、出力圧センサScは、出力圧Pcを測定する液圧センサである。また、操作変位量Ssは、例えば、ブレーキペダル124aに備えられたストロークセンサSSによって測定することができる。
【0024】
電動シリンダ16から出力された液圧Pcの制動液は、液路14Dを通って、サーボ室Rcおよび調整ユニット1Bにそれぞれ供給される。サーボ室Rcに制動液が供給されることで、マスタピストン123は前方、すなわちマスタ室Raの容積が減少する方向に移動し、マスタ圧Pmを発生させる。つまり、マスタピストン123の移動に伴い、マスタ室Raから液路14Aに、液圧Pmに加圧された制動液が吐出される。液路14Aに吐出された液圧Pm(=Pc)の制動液は、調整ユニット1Bを経由して前輪ホイールシリンダ17Aに供給される。すなわち、前輪ホイールシリンダ17Aは、マスタシリンダ12を介して電動シリンダ16(加圧源)と接続されているとも言える。上述したように、本実施形態に係るマスタシリンダ12は、マスタ室Raの受圧面積が、サーボ室Rcの受圧面積と等しく設定されている。このため、出力圧Pcはマスタ圧Pmと等しい。
【0025】
以上、電動シリンダ16(加圧源)について説明してきたが、本実施形態に係る加圧ユニット1Aにおいて、加圧源の構成は特に限定されない。すなわち、加圧ユニット1Aは、アキュムレータ型の加圧源(特開2013-107561号公報等を参照)を備えてい
てもよいし、還流型の加圧源(特開2019-059294号公報等を参照)を備えていてもよい。これは、本実施形態に係る制動機構1が、ホイール圧センサSwを用いてホイール圧Pwを測定するためである。
【0026】
(ホイールシリンダ)
ホイールシリンダ17A、17Bは、制動液が供給されると、図示しないブレーキパッドを移動させる。移動したブレーキパッドは、車輪FL,FR,RL,RRと一体に回転する図示しない回転板に押し付けられる。これにより、車輪FL,FR,RL,RRに対し、制動力が付与される。ホイールシリンダ17A、17Bは、ホイールシリンダ17A、17B内の液圧であるホイール圧Pw(第2液圧)が高いほど、ブレーキパッドを回転板に強く押し付ける。つまり、ホイール圧Pwが高いほど、車輪FL,FR,RL,RRが発生する制動力が大きくなる。
【0027】
〔調整ユニット〕
図2に示したように、調整ユニット1Bは、車両挙動を安定化する横滑り防止制御を行うためのものである。調整ユニット1Bは、各ホイールシリンダ17A、17Bのホイール圧Pwを個別に調整して、車輪FL、FR、RLおよびRRの制動力を個別に調整する。調整ユニット1Bは、前輪液圧調整部18Aと、後輪液圧調整部18Bと、を備えている。前輪液圧調整部18Aおよび後輪液圧調整部18Bは、液圧回路上、互いに独立している。このため、調整ユニット1Bは、前輪ホイールシリンダ17Aに作用するホイール圧と、後輪ホイールシリンダ17Bに作用するホイール圧を独立して調圧することができる。以下、調整ユニット1Bについて、加圧ユニット1A側を上流、ホイールシリンダ17A、17B側を下流として説明する。また、前輪液圧調整部18Aと後輪液圧調整部18Bは多くの構成が共通しているため、まずは前輪液圧調整部18Aの各構成について説明し、後輪液圧調整部18Bについては、前輪液圧調整部18Aとの差異についてのみ説明する。
【0028】
(第1液圧出力部)
前輪液圧調整部18Aは、上流側からのマスタ圧Pmを基に、前輪ホイールシリンダ17Aのホイール圧Pwを加圧することが可能に構成されている。また、前輪液圧調整部18Aは、前輪ホイールシリンダ17Aのホイール圧Pwを調圧可能に構成されている。前輪液圧調整部18Aは、加圧ユニット1Aのマスタシリンダ12と前輪ホイールシリンダ17Aとの間に設けられる。
【0029】
前輪液圧調整部18Aには、加圧ユニット1Aのマスタシリンダ12から制動液が供給される。前輪液圧調整部18Aは、加圧ユニット1Aが発生させた基礎液圧を基に、前輪ホイールシリンダ17Aの液圧を増大可能に構成されている。前輪液圧調整部18Aは、入力された液圧と前輪ホイールシリンダ17Aの液圧との間に差圧を発生させることで前輪ホイールシリンダ17Aを加圧するように構成されている。
【0030】
前輪液圧調整部18Aは、液路14Aと、増圧弁181と、チェックバルブ181aと、保持弁182と、チェックバルブ182aと、減圧液路183aと、減圧弁183と、ポンプ液路184aと、ポンプ184と、電気モータ185と、還流液路186aと、低圧リザーバ186と、マスタ圧センサSmと、ホイール圧センサSwと、を備えている。
【0031】
液路14Aは、加圧ユニット1Aのマスタシリンダ12と前輪ホイールシリンダ17Aとを接続する制動液の液路である。本実施形態に係る液路14Aは、分岐部Xで、右側の前輪ホイールシリンダ17Aに接続する右側の液路14Aと、左側の前輪ホイールシリンダ17Aに接続する左側の液路14Aとに分岐する。左右の各液路14Aに設けられる構成、すなわち保持弁182、チェックバルブ182a、減圧液路183a、減圧弁183
、およびホイール圧センサSwは、左右で同様の構成となっている。このため、以下、左右の各液路14Aにそれぞれ設けられる構成については、右側の構成についてのみ説明し、左側の構成についてはその説明を省略する。
【0032】
増圧弁181は、液路14Aにおいて、分岐部Xとマスタ圧センサSmとの間に設けられた常開型のリニア弁、すなわちノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブである。増圧弁181の開度が制御されることで、増圧弁181を挟んだ上下流間に差圧を発生させることができる。なお、後輪液圧調整部18Bにおける増圧弁181は、分岐部Xと加圧ユニット1Aとの間に設けられる。これは、後輪液圧調整部18Bがマスタ圧センサSmを備えていないためである。
【0033】
チェックバルブ181aは、増圧弁181に対して並列に設けられている。チェックバルブ181aは、上流側から下流側に向けての制動液の流通のみを許可するよう構成されている。
【0034】
保持弁182は、ホイールシリンダ17Aと当該ホイールシリンダ17Aを加圧する加圧源とを接続する制動液の液路14Aに設けられている。また、保持弁182は、電流の供給を受けることにより、加圧源によるホイールシリンダ17Aへの加圧を抑制することができる常開型のリニア弁、すなわちノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブである。つまり、保持弁182は、液路14Aにおいて、電動シリンダ16によって制動液が供給される位置(分岐部X)よりもホイールシリンダ17A側に設けられている。保持弁182に電流が供給されない場合には、保持弁182は全開状態である。保持弁182に電流が供給される場合には、電流の値に応じて、その開弁量が減少される。従って、所定の差圧を維持するためには、所定の電流が供給される。
【0035】
ここで、上記増圧弁181と、ここまで説明してきた保持弁182との差異について説明する。電気モータ185が駆動されると、ポンプ184が、増圧弁181の上流側から制動液を吸引し、それを増圧弁181の下流側(分岐部X)に吐出する。これにより、増圧弁181を通る制動液の循環流が発生する。増圧弁181が備えるソレノイド181bの推力は、図3に示したように、循環流、すなわち分岐部Xから上流側へ向かう制動液の流れに対抗するように作用する。この推力によって弁座181cと弁体181dと隙間が狭められると、オリフィス効果によって、増圧弁181と保持弁182との間の液路14Aの液圧である調整圧Ppが、マスタ圧Pmよりも大きくなる。なお、後述する特性取得装置2によって保持弁182の作動特性が取得される際の増圧弁181には、電流が供給されない。このため、このときの増圧弁181は、完全に開弁している。
【0036】
一方、保持弁182が備えるソレノイド182bの推力は、分岐部Xから前輪ホイールシリンダ17Aへ向かう制動液の流れに対抗するように作用する。この推力によって弁座182cと弁体182dとの隙間が狭められると、保持弁182は、調整圧Ppが、前輪ホイールシリンダ17Aに伝達されるのを阻止することができる。ホイール圧Pwの増加が必要な場合には、保持弁182が開弁され、ホイールシリンダ17Aに作用する液圧が調整圧Ppと等しくなる。
【0037】
上述したように、マスタ室Raの受圧面積とサーボ室Rcの受圧面積が等しく設定されることで、出力圧Pcはマスタ圧Pmと等しくなっている。また、後述する特性取得装置2によって保持弁182の作動特性が取得される際の増圧弁181は、完全に開弁している。このため、このときのマスタ圧Pmは調整圧Ppと等しい。従って、作動特性が取得される際の、出力圧Pc、マスタ圧Pmおよび調整圧Ppは全て等しい。すなわち、作動特性が取得される際の保持弁182には、出力圧Pcと等しい液圧が作用する。
【0038】
チェックバルブ182aは、図2に示したように、保持弁182に対して並列に設けられている。チェックバルブ182aは下流側から上流側に向けての制動液の流通のみを許可するように構成されている。
【0039】
減圧液路183aは、液路14Aにおける、保持弁182とホイールシリンダ17Aとの間と、低圧リザーバ186とを接続する液路である。減圧液路183a上に、減圧弁183が設けられている。減圧弁183は、減圧液路183aに設けられた常閉型(ノーマルクローズ型)の電磁弁である。減圧弁183が開弁状態の場合、ホイールシリンダ17A内の制動液は減圧液路183aを介して低圧リザーバ186に流入可能である。したがって、減圧弁183を開弁させることで、ホイールシリンダ17Aの圧力を減圧可能である。
【0040】
ポンプ液路184aは、減圧液路183aにおける、減圧弁183と低圧リザーバ186との間と、液路14Aの分岐部Xと、を接続する液路である。ポンプ液路184aにはポンプ184が設けられている。
【0041】
ポンプ184は、電気モータ185の駆動に応じて作動するポンプであり、例えば周知のピストンポンプまたはギアポンプである。ポンプ184の吸入側は低圧リザーバ186と接続されていて、ポンプ184の吐出側は分岐部Xに接続されている。ポンプ184が作動すると、低圧リザーバ186内の制動液を吸入して、分岐部Xに制動液を供給する。例えば各保持弁182を閉じポンプ184の駆動により低圧リザーバ186内の制動液を汲み上げようとすると、ポンプ184が吐出した制動液は、分岐部Xを介して加圧ユニット1Aのマスタシリンダ12に供給される。なお、後輪液圧調整部18Bの場合、ポンプ184が吐出した制動液は、分岐部Xを介して加圧ユニット1Aの電動シリンダ16に供給される。
【0042】
低圧リザーバ186は制動液を貯留する周知の調圧リザーバであり、減圧液路183aおよび還流液路186aと接続されている。還流液路186aは、液路14Aにおける、増圧弁181よりも上流側と低圧リザーバ186とを接続する液路である。低圧リザーバ186内の制動液は、ポンプ184の作動により吸入される。低圧リザーバ186内の制動液量が減少すると、低圧リザーバ186内の弁が開弁し、液路14Aから還流液路186aを介して低圧リザーバ186に制動液が供給される。
【0043】
マスタ圧センサSmは、マスタ圧Pmを測定する液圧センサである。マスタ圧Pmは、第1液路14aにおける制動液の液圧であり、第1液圧の一種である。第1液路14aは、液路14Aの一部を構成し、加圧ユニット1Aの電動シリンダ16(加圧源)と保持弁182とをマスタシリンダ12を介して接続する。マスタ圧センサSmは、液路14Aにおいて増圧弁181よりも加圧ユニット1A側に設けられている。マスタ圧センサSmが測定したマスタ圧Pmのデータは特性取得装置2へ出力される。なお、後輪液圧調整部18Bにおける第1液路14aは、電動シリンダ16と保持弁182とを直接接続する。
【0044】
ホイール圧センサSwは、第2液圧をホイール圧Pwとして測定する液圧センサである。第2液圧は、第2液路14bにおける制動液の液圧である。第2液路14bは、液路14Aの一部を構成し、保持弁182と前輪ホイールシリンダ17Aとを接続する。ホイール圧センサSwは、液路14Aにおいて保持弁182よりも前輪ホイールシリンダ17A側に設けられている。ホイール圧センサSwが測定したホイール圧Pwのデータは特性取得装置2へ出力される。本実施形態に係るホイール圧センサSwは、各液路14Aにそれぞれ(計2つ、後述する後輪と合わせた場合は計4つ)配置される。このため、本実施形態に係る調整ユニット1Bは、4つのホイール圧Pwが同時に測定し、一度に特性取得装置2へ出力することができる。
【0045】
(第2液圧出力部)
後輪液圧調整部18Bは、前輪液圧調整部18Aと同様、上流側からの出力圧Pcを基に、増圧弁181等によって、後輪ホイールシリンダ17Bのホイール圧Pwを加圧することが可能に構成されている。また、後輪液圧調整部18Bは、保持弁182等によって、ホイールシリンダ17Bを調圧可能に構成されている。後輪液圧調整部18Bは、電動シリンダ16と後輪のホイールシリンダ17Bとの間に設けられる。後輪液圧調整部18Bは、マスタ圧センサSmを備えていない点を除き、前輪液圧調整部18Aと同様に構成されている。
【0046】
[特性取得装置]
次に、特性取得装置2について説明する。特性取得装置2は、上記調整ユニット1Bの保持弁182の作動特性を算出するものである。なお、「作動特性(IP特性)」とは、保持弁182へ供給される電流Iaと保持弁182によって発生される差圧ΔPとの関係を指す。なお、この作動特性には、個々の保持弁182毎に個体差がある。
【0047】
{特性取得装置の構成}
図4に示したように、特性取得装置2は、入力部21と、記憶部22と、出力部23と、制御部24と、を備える。
【0048】
〔入力部〕
入力部21には、出力圧Pc、マスタ圧Pm、およびホイール圧Pwが入力される。また、入力部21には、保持弁182等へ供給される電流の値が入力される。制動機構1(即ち、加圧ユニット1A、調整ユニット1B、駆動回路1C)は、電流センサSi、出力圧センサSc、マスタ圧センサSmおよびホイール圧センサSwを備えている。このため、入力部21は、電流センサSi、出力圧センサScおよびホイール圧センサSwが接続される端子で構成されている。
【0049】
〔出力部〕
出力部23は、制御部24による演算結果を出力する。
【0050】
〔記憶部〕
記憶部22は、各種データを記憶する。各種データには、例えば、センサの測定値のデータ、制御部24の演算結果等が含まれる。なお、記憶部22が各種データを記憶しなくても済む場合、例えば、制御部24内、または車両内のメモリで記憶させる場合等、特性取得装置2は、記憶部22を備えていなくてもよい。
【0051】
〔制御部〕
制御部24は、加圧制御部241と、給電制御部242と、電流取得部243と、第1取得部244と、第2取得部245と、算出部246と、出力制御部247と、を備える。
【0052】
(加圧制御部)
加圧制御部241は、上記加圧ユニット1Aの電動シリンダ16(加圧源)を制御する。なお、電動シリンダ16の具体的制御については後述する。
【0053】
(給電制御部)
給電制御部242は、保持弁182への電流の供給を制御する。なお、具体的な給電制御については後述する。
【0054】
(電流取得部)
電流取得部243は、任意のタイミングで保持弁182に供給されている電流の値Iaを取得する。電流取得部243は、電流センサSiの測定値を、電流の値Iaとして取得する。電流センサSiは、駆動回路1C、または駆動回路1Cと保持弁182との間に設けられる。また、電流取得部243は、取得した電流の値を記憶部22に記憶させる。
【0055】
(第1取得部)
第1取得部244は、出力圧Pc、すなわち第1液路14a内の第1液圧を取得する。第1取得部244は、電流取得部243が電流の値を取得する度に、入力部21を介して出力圧Pcを取得する。より具体的には、第1取得部244は、電流取得部243が電流の値を取得するのと同時に出力圧Pcを取得する。なお、第1取得部244が出力圧Pcを取得するタイミングは、電流取得部243が電流の値を取得するタイミングから多少ずれていてもよい。
【0056】
(第2取得部)
第2取得部245は、ホイール圧Pw、すなわち第2液路14b内の第2液圧を取得する。第2取得部245は、電流取得部243が電流の値を取得する度に、入力部21を介してホイール圧Pwを取得する。より具体的には、第2取得部245は、電流取得部243が電流の値を取得するのと同時にホイール圧Pwを取得する。なお、第2取得部245がホイール圧Pwを取得するタイミングは、電流取得部243が電流の値を取得するタイミングから多少ずれていてもよい。
【0057】
(算出部)
算出部246は、保持弁182へ供給した電流の値、および、第1取得部244により取得した出力圧Pcと第2取得部245により取得したホイール圧Pwとの液圧差、に基づいて、作動特性を算出する。算出部246は、算出した結果(液圧差、作動特性等)を記憶部22に記憶させる。なお、作動特性の具体的な算出方法については後述する。
【0058】
(出力制御部)
出力制御部247は、算出部246による算出結果(作動特性等)を、出力部23に出力させる。
【0059】
{特性取得の流れ}
特性取得装置2は、保持弁182の作動特性を以下のようにして取得する。
【0060】
制動機構1に接続された特性取得装置2の動作開始条件が満たされる(例えば、特性取得装置2に所定の取得開始操作がなされる、制動機構1と接続されてから所定時間経過する等)と、図5(b)に示したように、まず、給電制御部242が、保持弁182に大きさi0の電流を供給することにより当該保持弁182を完全に閉弁させる。上述したように、保持弁182は常開型のリニア弁である。このため、電流を供給し続けることにより、保持弁182が次第に閉弁し始める。その後も保持弁182は閉弁動作を続け、やがて完全に閉弁する。
【0061】
保持弁182が完全に閉弁した後、加圧制御部241が、出力圧Pcが所定値で一定になるよう加圧制御部241が電動シリンダ16を制御する。具体的には、加圧制御部241は、当初0(大気圧)であった加圧ユニット1Aからの出力圧Pcが、図5(a)に示したように、予め設定された所定値p0となるよう電動シリンダ16を制御する(t1~t2)。出力圧Pcが所定値p0に達した後、加圧制御部241は、出力圧Pcを変動させる要素が作用しても出力圧Pcが所定値p0に保たれるようフィードバック制御を行う。なお、このとき、保持弁182が完全に閉弁しているため、ホイール圧Pwは、当初の
出力圧と同じ0(大気圧)である。
【0062】
保持弁182が完全に閉弁し、かつ出力圧Pcが所定値p0で一定になるよう加圧制御部241が電動シリンダ16を制御している状態で、図5(b)に示したように、給電制御部242が、当該保持弁182へ供給していた電流を減少させていく(t3~)。給電制御部242は、電流を、それまでの大きさi0から一定速度で、すなわち時刻と電流の値の関係が線形となるよう、0になるまで徐々に減少させていく。保持弁182は、供給される電流が減少に伴って、ソレノイド182b(図3参照)の推力を低下させていく。ソレノイド182bの推力が出力圧Pc以下になると、出力圧Pcに抗しきれずに開弁していく。その結果、ホイール圧Pwが上昇し始め(t4)、やがて出力圧Pcと等しくなる(t8)。
【0063】
給電制御部242が電流を減少させている間(t3~)に、電流取得部243は、保持弁182に供給されている電流の値i1、i2・・inを複数回取得する(t5、t6・・t7)。本実施形態に係る電流取得部243は、給電制御部242が電流を減少させ始めた後の、ホイール圧Pwが上昇している間に電流の値i1、i2・・inを取得する。なお、電流取得部243が電流の値i1、i2・・inを取得する周期は、一定であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0064】
電流取得部243が電流の値i1、i2・・inを取得するのと同時に、第1取得部244がその時点の出力圧Pcを取得する(t5、t6・・t7)。これにより、電流取得部243が取得した複数の電流の値とそれぞれ対応する複数の出力圧Pcが取得される。また、電流取得部243が電流の値を取得するのと同時に、第2取得部245がその時点のホイール圧Pwを取得する(t5、t6・・t7)。これにより、電流取得部243が取得した複数の電流の値とそれぞれ対応する複数のホイール圧Pwが取得される。
【0065】
第1取得部244、第2取得部245が出力圧Pc、ホイール圧Pwを取得する度に、データ取得の終了後、算出部246は、液圧差Δp1、Δp2・・Δpnを算出する。液圧差Δp1、Δp2・・Δpnは、各タイミングで取得された出力圧Pcとホイール圧Pwの差である。そして、算出部246は、算出した液圧差Δp1、Δp2・・Δpnを記憶部22に記憶させる。本実施形態に係る算出部246は、電流取得部243が複数回取得することにより得られた複数の電流の値i1、i2・・in、および、複数の液圧差Δp1、Δp2・・Δpnに基づいて、電流と液圧差との関係を示す関数を、作動特性として算出する。「複数の液圧差」は、電流取得部243が電流の値を取得する度に第1取得部244が取得した出力圧Pcと第2取得部245が取得したホイール圧Pwとの差の集合である。具体的には、算出部246は、得られた複数の電流の値i1、i2・・in、および複数の液圧差Δp1、Δp2・・Δpnの関係を多項式(例えば二次関数)で近似する。この演算を可視化すると、例えば図6に示したように、横軸を差圧ΔP、縦軸を電流Iaとする平面上に、各タイミングにおける電流の値i1、i2・・inと液圧差Δp1、Δp2・・Δpnの関係をプロットし、各点を滑らかに結んだ緩やかな曲線を描くことになる。なお、電流と液圧差との関係を、特性マップとして決定してもよい。例えば、特性マップでは、各点間の値は線形補完によって得られる。
【0066】
第1取得部244は、出力圧センサScによって出力圧Pcを取得したが、マスタ圧センサSmの測定値(マスタ圧Pm)を出力圧Pcとして取得してもよい。従って、算出部246は、出力圧センサScおよびマスタ圧センサSmのうちの少なくとも1つの検出値に基づいて液圧差ΔPを算出する。
【0067】
{特性取得装置の作用効果}
以上説明してきた特性取得装置2によれば、制動力の調整を行う機構において保持弁1
82として用いられるリニア弁の作動特性を、電動シリンダ16によってホイールシリンダを加圧することで取得することができる。
【0068】
また、本実施形態では、加圧ユニット1Aの出力圧Pcを出力圧センサScから、複数(4つ)のホイールシリンダ17A、17Bに作用するホイール圧Pwを複数のホイール圧センサSwからそれぞれ取得して作動特性を算出する。このため、本実施形態に係る特性取得装置2は、複数の保持弁182の作動特性を一度に取得することができる。
【0069】
また、例えば、保持弁182の開弁状態から、その開弁量を減少させる方法、すなわち保持弁182への電流を「0」から増加する方法を用いて作動特性を取得しようとすると、ホイール圧Pwを取得する度に、次回取得のために、ホイール圧Pwを減少しなければならない。しかし、本実施形態に係る特性取得装置2によれば、保持弁182を完全に閉弁した状態から、その開弁量を漸増するため、ホイール圧Pwを減少させる必要がない。このため、作動特性を、一連の動作で効率的に算出することができる。
【0070】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記第1実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0071】
[制動機構]
まず、本実施形態に係る制動機構1の、第1実施形態に係る制動機構1との相違点について説明する。
【0072】
上記第1実施形態に係る制動機構1は、ホイール圧センサSwを備えていた。これに対し、本実施形態に係る制動機構1は、ホイール圧センサSwに相当する構成を備えていない。
【0073】
また、上記第1実施形態に係る制動機構1は、加圧源の構成に特段の限定はなかった。これに対し、本実施形態に係る加圧ユニット1Aの加圧源は、電動シリンダ16に限られている。すなわち、本実施形態に係る電動シリンダ16は、図1に示した第1実施形態に係る電動シリンダ16と同様、シリンダ161と、ピストン162と、を備えている。ピストン162は、電気モータ163の駆動によってシリンダ内を移動する。ただし、電動シリンダは、上記第1実施形態のように、出力圧Pcをマスタシリンダ12を介して前輪ホイールシリンダ17Aへ伝達するよう構成されている必要はない。すなわち、電動シリンダは、例えば特開2022-052375号公報等に示されているように、出力圧Pcを、前輪ホイールシリンダ17Aへ直接供給するよう構成されていてもよい。
【0074】
[特性取得装置]
【0075】
{特性取得装置の構成の相違点}
図7に示したように、本実施形態に係る特性取得装置2Aは、上記第1実施形態に係る特性取得装置2と同様の入力部21、記憶部22、および出力部23の他、制御部24Aを備えている。
【0076】
〔制御部〕
制御部24Aは、上記第1実施形態に係る特性取得装置2と同様の加圧制御部241、給電制御部242、電流取得部243、算出部246、および出力制御部247の他、第1取得部244Aと、第2取得部245Aと、を備えている。
【0077】
(第1取得部)
第1取得部244Aは、第1液路14aに配置されたマスタ圧センサSmの測定値(マスタ圧Pm)を、出力圧Pcとして検出するよう構成されている。また、第1取得部244Aは、出力圧センサScの測定値(出力圧Pc)も検出するよう構成されている。
【0078】
(第2取得部)
第2取得部245Aは、出力圧Pc、およびシリンダ161に対するピストン162の変位量に基づいて、ホイール圧Pwを推定する。ホイール圧Pwの具体的な推定方法については後述する。
【0079】
{特性取得の流れの相違点}
上記第1実施形態に係る特性取得装置2は、ホイール圧センサSwが測定したホイール圧Pwを用いて作動特性を算出した。これに対し、本実施形態に係る特性取得装置2Aは、以下のようにして第2取得部245Aが推定したホイール圧Pwを用いて作動特性を算出する。作動特性の算出方法は、上記第1実施形態と同様である。以下、保持弁182が完全に閉弁し、かつ出力圧Pcが所定値p0で一定になるよう加圧制御部241が電動シリンダ16(加圧源)を制御している状態でホイール圧Pwを推定する方法について説明する。このホイール圧Pwの推定は、ホイールシリンダ17A、17B毎に行う。
【0080】
まず、第2取得部245Aが、ピストン162の変位量Spに基づいて、全体消費液量qaを算出する。全体消費液量qaは、ホイールシリンダ17A、17B、液路14A、14D等で消費される制動液の液量である。ピストン162の変位量Spは、例えば、電動シリンダ16の電気モータ163に備えられた回転角センサSkが測定したモータ回転角に基づいて算出することができる。また、全体消費液量qaは、電動シリンダ16から吐出された制動液の液量でもある。第2取得部245Aは、ピストン162の受圧面積に、ピストン162の変位量Spを乗じることにより全体消費液量qaを算出する。
【0081】
全体消費液量qaを算出した後、または全体消費液量qaの算出と並行して、第2取得部245Aが、第1液量特性Zc、および出力圧Pcに基づいて第1消費液量Qcを算出する。第1消費液量Qcは、全ての保持弁182が完全に閉弁された状態で、出力圧Pcを発生させるために必要な制動液の液量である。すなわち、第1消費液量Qcは、出力圧Pcを発生させる際に、電動シリンダ16、マスタシリンダ12、および第1液路14aによって消費される制動液の液量である。この第1消費液量Qcは、マスタシリンダ12、電動シリンダ16、および第1液路14aの剛性(ばね定数)によって定まる。第1液量特性Zcは、第1液路14aの消費液量特性、すなわち出力圧Pcと第1消費液量Qcとの関係であり、グラフにすると図8に示したような曲線を描く。この第1液量特性Zcは、予め実験によって求めることができる。本実施形態に係る特性取得装置2Aは、第1液量特性Zcを記憶部22に記憶している。本実施形態に係る第2取得部245Aは、この第1液量特性Zcを示すグラフ(例えば、数式)に、出力圧Pcの値p0を当てはめることにより、そのときの第1消費液量q0を算出する。
【0082】
全体消費液量qaおよび第1消費液量q0を算出した後、第2取得部245Aが、第2消費液量Qwを算出する。第2消費液量Qwは、第2液路14bによって消費される制動液の液量である。また、第2消費液量Qwは、ホイール圧Pwの増加に寄与する制動液の液量である。第2消費液量Qwは、保持弁182が完全に閉弁し、かつ出力圧Pcが所定値p0で一定になるよう電動シリンダ16を制御していると仮定した状況において、ホイール圧Pwを発生せるために必要な制動液の液量である。すなわち、第2消費液量Qwは、ホイール圧Pwを発生させる際に、保持弁182、ホイールシリンダ17A、17Bおよび第2液路14bによって消費される制動液の液量である。この第2消費液量Qwは、ブレーキキャリパ、ブレーキパッド、および第2液路14bの剛性(ばね定数)によって
定まる。第2取得部245Aは、全体消費液量qaから第1消費液量q0を減じることにより第2消費液量Qwを算出する。
【0083】
第2消費液量を算出した後、第2取得部245Aが、第2消費液量、および第2液量特性Zwに基づいて、ホイール圧Pwを推定する。第2液量特性Zwは、各第2液路14bの消費液量特性、すなわちホイール圧Pwと第2消費液量Qwとの関係であり、グラフにすると図8に示したような曲線を描く。この第2液量特性Zwは、予め実験によって求めることができる。本実施形態に係る特性取得装置2Aは、第2液量特性Zwを記憶部22に記憶している。本実施形態に係る第2取得部245Aは、第2液量特性Zwを参照して、第2消費液量Qw(値qa-q0)に対応する液圧pxを算出する。この液圧pxが、上記状況(出力圧Pc=p0、電流の値Ia=ia)におけるホイール圧Pwの推定値である。そして、上記状況での差圧ΔPは、出力圧センサScの測定値(出力圧Pc)、または出力圧Pcとして検出したマスタ圧センサSmの測定値(マスタ圧Pm)から、この推定値pxを減じた値となる。
【0084】
(変形例)
上記第2実施形態に係る特性取得装置2Aは、事前に実験的に得られた第1液量特性Zc、および第2液量特性Zwを用いてホイール圧Pwを推定した。しかし、特性取得装置2Aは、第1液量特性Zc、および第2液量特性Zwを、出力圧Pc、および電動シリンダのピストン162の変位量Spに基づいて決定するよう構成されていてもよい。
【0085】
第1液量特性Zcを決定する際、変形例に係る特性取得装置2Aは、まず、給電制御部242が、複数の保持弁182に大きさi0の電流を供給することにより当該保持弁182を完全に閉弁させる。次に、保持弁182を完全に閉弁させた状態のまま、電動シリンダを制御して、出力圧Pcを増加させていく。その際、第2取得部245Aが、電動シリンダのピストン162の変位量Spを取得する。変位量Spの取得は、1回でもよいし複数回行ってもよい。また、第2取得部245Aが、取得した変位量Spを、第1消費液量q0に変換する。そして、第2取得部245Aは、変位量Spを得たときの出力圧Pc、および第1消費液量q0の関係から第1液量特性Zcを求める。具体的には、例えば、出力圧の値pb、およびそのときの第1消費液量qcの関係を多項式(例えば二次関数)で近似する。この多項式で近似する場合の演算を可視化すると、例えば図9に示したように、横軸を出力圧Pc、縦軸を消費液量Qc、Qwとする平面上に、出力圧の値pbと第1消費液量qcの関係をプロットし、プロットした点を通る緩やかな曲線を描くことになる。
【0086】
また、第2液量特性Zwを決定する際、変形例に係る特性取得装置2Aは、まず、保持弁182を開弁させた状態で電動シリンダを制御して、出力圧Pcを増加させていく。その際、第2取得部245Aが、電動シリンダのピストン162の変位量Spを取得する。変位量Spの取得は、1回でもよいし複数回行ってもよい。また、第2取得部245Aが、取得した変位量Spを、全体消費液量qaに変換する。そして、第2取得部245Aは、変位量Spを得たときの出力圧Pc、および全体消費液量qaの関係から全体液量特性Zzを求める。具体的には、例えば、出力圧の値pb、およびそのときの全体消費液量qaの関係を多項式(例えば二次関数)で近似する。この多項式で近似する場合の演算を可視化すると、例えば図9に示したように、横軸を出力圧Pc、縦軸を消費液量Qc、Qwとする平面上に、出力圧Pcと全体消費液量qaの関係をプロットし、プロットした点を通る緩やかな曲線を描くことになる。
【0087】
次に、得られた全体液量特性Zz及び第1液量特性Zcに基づいて、第2液量特性Zwを決定する。具体的には、第2取得部245Aが、全体液量特性Zzを参照して任意の液圧Pcにおける全体消費液量qaを算出する。また、第2取得部245Aが、第1液量特
性Zcを参照して同液圧Pcにおける第1消費液量q0を算出する。そして、第2取得部245Aが、算出した全体消費液量qaから第1消費液量q0を減じ、同液圧Pcにおける第2消費液量として決定する。例えば、図9に示したように、液圧値pbにおける全体消費液量qzから、同液圧値pbにおける第1消費液量q0を減じ、同液圧値pbにおける第2消費液量qb(=qz-qc、「液量差」ともいう)を決定する。この演算は、一の液圧Pcについてのみ行ってもよいし、複数の液圧値pbについて行ってもよい。また、第2取得部245Aが、液圧Pcと、得られた第2消費液量qbとの関係から第2液量特性Zwを求める。具体的には、例えば、液圧Pc、および第2消費液量qbの関係を多項式(例えば二次関数)で近似する。この多項式が、第2液量特性Zwとなる。なお、第2液量特性Zwは、各保持弁182それぞれについて取得する。
【0088】
{特性取得装置の作用効果}
以上説明してきた特性取得装置2Aによれば、第1実施形態に係る特性取得装置2と同様、制動力の調整を行う機構において保持弁182として用いられるリニア弁の作動特性を、電動シリンダ16によってホイールシリンダ17A、17Bを加圧することで取得することができる。
【0089】
また、第2取得部245Aによってホイール圧Pwを推定することにより、第2液路14bにホイール圧Pwを測定するための液圧センサを設ける必要が無くなる。それゆえ、該液圧センサを備えない液圧制御装置にも、特性取得装置2Aを適用することが可能となる。
【0090】
<実施形態その他>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0091】
例えば、上記第1、第2実施形態では、横滑り防止制御を行う調整ユニット1Bが備える保持弁182の作動特性を取得する場合について説明した。しかし、本発明が作動特性を取得する対象とする保持弁は、横滑り防止制御を行う機構が備えるものに限られない。例えば、アンチロックブレーキ制御を行う機構等、制動力の調整を行う機構が備える保持弁全般を対象とすることができる。
【0092】
また、上記第1実施形態では、全てのホイールシリンダ17A、17Bのホイール圧Pwをホイール圧センサSwで測定し、上記第2実施形態では、全てのホイール圧Pwを第2取得部245Aにより推定した。しかし、全てのホイールシリンダ17A、17Bのうちの一部のホイールシリンダのホイール圧Pwをホイール圧センサSwで測定し、残りのホイール圧Pwを推定してもよい。
【0093】
また、特性取得装置2および2A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置として制御部24、24Aを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部24、24Aに含まれる各部)として制御部24、24Aを機能させるためのプログラムにより実現することができる。この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有している。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0094】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロ
ックの機能を実現することも可能である。
【符号の説明】
【0095】
1、1A 制動機構
1A 加圧ユニット
16 電動シリンダ(加圧源)
1B 調整ユニット
182 保持弁(リニア弁)
2、2A 特性取得装置
21 入力部
22 記憶部
23 出力部
24、24A 制御部
241 加圧制御部
242 給電制御部
243 電流取得部
244、244A 第1取得部
245、245A 第2取得部
246 算出部
247 出力制御部
Si 電流センサ
Sk 回転角センサ
Sm マスタ圧センサ
図1
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図9