(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049149
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
A63J 1/02 20060101AFI20240402BHJP
H05B 47/115 20200101ALI20240402BHJP
H05B 47/20 20200101ALI20240402BHJP
【FI】
A63J1/02
H05B47/115
H05B47/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155438
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 和章
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴之
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA05
3K273QA30
3K273QA36
3K273SA24
3K273SA37
3K273SA40
3K273SA50
3K273SA58
3K273SA60
3K273TA01
3K273TA28
3K273TA48
3K273VA04
(57)【要約】
【課題】バトンの下限位置の設定においてバトンを安全に下降させること。
【解決手段】実施形態に係る制御装置は、物体高さ検知部と、吊物高さ検知部と、決定部とを具備する。物体高さ検知部は、所定空間に設置された第1センサからの情報に基づいて、所定空間に配置された物体の高さを検知する。吊物高さ検知部は、所定空間に設置された第2センサからの情報に基づいて、昇降可能なバトンに吊り下げられた吊物の高さを検知する。決定部は、物体高さ検知部および吊物高さ検知部の検知結果に基づいて、バトンの可動範囲を決定する。
【選択図】
図3D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間に設置された第1センサからの情報に基づいて、前記所定空間に配置された物体の高さを検知する物体高さ検知部と;
前記所定空間に設置された第2センサからの情報に基づいて、昇降可能なバトンに吊り下げられた吊物の高さを検知する吊物高さ検知部と;
前記物体高さ検知部および前記吊物高さ検知部の検知結果に基づいて、前記バトンの可動範囲を決定する決定部と;
を具備する、制御装置。
【請求項2】
前記バトンの傾きを検知する傾き検知部が前記バトンの所定以上の傾きを検知した場合または前記バトンの衝撃を検知する衝撃検知部が前記バトンの所定以上の衝撃を検知した場合に、前記バトンの下降を停止させる停止指示部;
をさらに具備する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
所定空間に設置された第1センサからの情報に基づいて、前記所定空間に配置された物体の高さを検知する物体高さ検知工程と;
前記所定空間に設置された第2センサからの情報に基づいて、昇降可能なバトンに吊り下げられた吊物の高さを検知する吊物高さ検知工程と;
前記物体高さ検知工程および前記吊物高さ検知工程の検知結果に基づいて、前記バトンの可動範囲を決定する決定工程と;
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スタジオおよび舞台などでは、複数の照明装置などによる演出がなされている。そして、昇降可能なバトンに照明装置などの吊物が吊り下げられ、バトンの昇降に応じて、このような吊物を昇降させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、バトンを昇降操作するオペレータおよび安全確認者(以下、オペレータおよび安全確認者を「作業者」という)が目視で確認しながら、床面に設置された、舞台セット、音響装置および照明装置などの物体と吊物との接触を回避するように、バトンを下降させる。
【0005】
しかしながら、従来技術では、物体と吊物との接触回避を作業者の目視に頼るため、バトンの下限位置の設定においてバトンを下降させる場合に、物体および吊物の少なくともいずれかが作業者の死角に入っていたり作業者の確認不足があったりすると、物体と吊物とが接触(衝突)してしまうおそれがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、バトンの下限位置の設定においてバトンを安全に下降させることができる制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る制御装置は、物体高さ検知部と、吊物高さ検知部と、決定部とを具備する。物体高さ検知部は、所定空間に設置された第1センサからの情報に基づいて、所定空間に配置された物体の高さを検知する。吊物高さ検知部は、所定空間に設置された第2センサからの情報に基づいて、昇降可能なバトンに吊り下げられた吊物の高さを検知する。決定部は、物体高さ検知部および吊物高さ検知部の検知結果に基づいて、前記バトンの可動範囲を決定する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態に係る制御装置によれば、バトンの下限位置の設定においてバトンを安全に下降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る制御装置を備えるバトン昇降システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態に係る制御装置におけるバトンの下限位置を設置する場合の手順の一例を示す図(その1)である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態に係る制御装置におけるバトンの下限位置を設置する場合の手順の一例を示す図(その2)である。
【
図3C】
図3Cは、実施形態に係る制御装置におけるバトンの下限位置を設置する場合の手順の一例を示す図(その3)である。
【
図3D】
図3Dは、実施形態に係る制御装置におけるバトンの下限位置を設置する場合の手順の一例を示す図(その4)である。
【
図4】
図4は、変形例に係る制御装置を含むバトン昇降システムの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施形態に係る制御装置7は、物体高さ検知部73aと、吊物高さ検知部73bと、決定部74とを具備する。物体高さ検知部73aは、所定空間Sに設置された第1センサ51からの情報に基づいて、所定空間Sに配置された物体Oの高さH3を検知する。吊物高さ検知部73bは、所定空間Sに設置された第2センサ52からの情報に基づいて、昇降可能なバトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2を検知する。決定部74は、物体高さ検知部73aおよび吊物高さ検知部73bの検知結果に基づいて、バトン2の可動範囲Aを決定する。
【0011】
また、以下に説明する実施形態に係る制御装置7において、停止指示部76aをさらに具備する。停止指示部76aは、バトン2の傾きを検知する傾き検知部21がバトン2の所定以上の傾きを検知した場合またはバトン2の衝撃を検知する衝撃検知部22がバトン2の所定以上の衝撃を検知した場合に、バトン2の下降を停止させる。
【0012】
また、以下に説明する実施形態に係る制御方法は、物体高さ検知工程と、吊物高さ検知工程と、決定工程とを含む。物体高さ検知工程は、所定空間Sに設置された第1センサ51からの情報に基づいて、所定空間Sに配置された物体Oの高さH3を検知する。吊物高さ検知工程は、所定空間Sに設置された第2センサ52からの情報に基づいて、昇降可能なバトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2を検知する。決定工程は、物体高さ検知工程および吊物高さ検知工程の検知結果に基づいて、バトン2の可動範囲Aを決定する。
【0013】
以下、実施形態に係る制御装置および制御方法について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施形態)
まず、
図1および2を参照して実施形態に係る制御装置7を備えるバトン昇降システム1について説明する。
図1は、実施形態に係る制御装置7を備えるバトン昇降システム1の構成例を示す図である。
図2は、実施形態に係る制御装置7の構成例を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、バトン昇降システム1は、スタジオおよび舞台などの所定空間Sにおいて照明装置などの吊物8が取り付けられたバトン2を昇降させる。なお、所定空間Sの床面Fなどには、舞台セット、音響機器および照明器具などの物体Oが配置される。
【0016】
図1および2に示すように、バトン昇降システム1は、バトン2と、巻上機3と、高さ検知部4と、第1センサ51と、第2センサ52と、操作部6と、制御装置7とを備える。
【0017】
バトン2は、複数設けられる。なお、バトン2は、1つであってもよい。バトン2には、複数の照明装置などの吊物8が取り付け可能である。なお、吊物8は、照明装置以外の器具であってよい。バトン2は、ワイヤロープ9によって天井に吊り下げられる。たとえば、バトン2は、グリッド天井10からワイヤロープ9によって吊り下げられる。
【0018】
また、
図2に示すように、バトン2には、傾き検知部21と、衝撃検知部22とが設けられる。傾き検知部21は、バトン2の傾きを検知する。衝撃検知部22は、バトン2が受けた衝撃を検知する。
【0019】
図1および2に示すように、巻上機3は、たとえば、グリッド天井10に設けられる。巻上機3は、ワイヤロープ9を介してバトン2を昇降する。巻上機3は、たとえば、モータによってドラム3aを回転させて、バトン2を昇降する。ドラム3aには、ワイヤロープ9が取り付けられる。
【0020】
巻上機3は、ドラム3aの回転方向を切り替えることで、ワイヤロープ9の繰り出し、ワイヤロープ9の巻き上げを切り替えて、バトン2を昇降する。巻上機3は、制御装置7から送信される制御信号に基づいて、ドラム3aを回転させる。ワイヤロープ9は、滑車3bに巻き掛けられる。
【0021】
図2に示すように、高さ検知部4は、バトン2の高さを検知する。高さ検知部4は、たとえば、巻上機3に取り付けられるエンコーダを含む。高さ検知部4は、エンコーダによってドラム3aの回転を計測することで、バトン2の高さを検知する。なお、高さ検知部4は、バトン2の高さを検知可能なカメラ装置などであってもよい。
【0022】
図1に示すように、第1センサ51は、所定空間Sに配置された物体Oを検知する3D測距センサである。第1センサ51には、たとえば、LiDAR(Light Detection and Ranging)が採用される。第1センサ51は、所定空間Sにおいて、たとえば、グリッド天井10に吊り下げられることで、所定の高さに設置され、投光面を下方へ向けて設けられる。第1センサ51は、制御装置7へ3Dデータを送信する。
【0023】
第2センサ52は、バトン2に取り付けられた吊物8を検知する3D測距センサである。第2センサ52には、たとえば、LiDARが採用される。第2センサ52は、所定空間Sにおいて、所定の高さに設置され、投光面を上方へ向けて設けられる。第2センサ52は、制御装置7へ3Dデータを送信する。
【0024】
図2に示すように、操作部6は、バトン2の昇降操作などを受け付ける。操作部6は、たとえば、ボタンおよびレバーを含む。また、操作部6は、たとえば、バトン2の状態を表示する表示部を備えてもよい。操作部6は、制御装置7の通信部(図示せず)を介して、制御装置7と相互に通信可能に設けられる。なお、操作部6は、制御装置7に組み込んで設けられてもよい。
【0025】
制御装置7は、バトン2の昇降制御を行う。次に、
図2を参照して制御装置7について説明する。
【0026】
図2に示すように、制御装置7は、巻上機3を制御することで、バトン2の昇降を制御する。制御装置7は、通信部(図示せず)と、記憶部(図示せず)と、制御部71とを備える。通信部は、たとえば、所定の通信回路などによって実現される。たとえば、通信部は、イーサネット(登録商標)およびLANなどのネットワークを介して、巻上機3、高さ検知部4、第1センサ51、第2センサ52および操作部6などとの間の通信を中継する。
【0027】
記憶部は、制御部71による制御を実現するためのプログラムなどを記憶する。記憶部は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子またはハードディスク、光ディスクなどの記憶装置によって実現される。
【0028】
制御部71は、各種の情報処理を実行する演算装置であり、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を採用できる。制御部71は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部71は、各種のプログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。
【0029】
制御部71は、取得部72と、検知部73と、決定部74と、設定部75と、昇降制御部76とを備える。取得部72は、通信部を介して、高さ検知部4からバトン2の高さH1(
図3B参照)情報を取得する。なお、取得部72は、高さ検知部4から得られる情報に基づいて、バトン2の高さH1を検出してもよい。
【0030】
また、取得部72は、通信部を介して、第1センサ51から、所定空間S(
図1参照)に存在する物体O(
図1参照)を含む情報(3Dデータ)を取得する。また、取得部72は、第2センサ52から、バトン2に吊り下げられた吊物8を含む情報(3Dデータ)を取得する。なお、取得部72によって取得したバトン2の高さ情報、物体Oの情報および吊物8の情報は、記憶部に記憶される。
【0031】
また、取得部72は、通信部を介して、傾き検知部21からバトン2の傾き情報を取得する。また、取得部72は、通信部を介して、衝撃検知部22からバトン2の衝撃情報を取得する。なお、取得部72によって取得したバトン2の傾き情報およびバトン2の衝撃情報は、記憶部に記憶されてもよい。
【0032】
検知部73は、物体高さ検知部73aと、吊物高さ検知部73bとを備える。物体高さ検知部73aは、所定空間Sに配置された物体Oの高さを検知する。物体高さ検知部73aは、第1センサ51からの情報(3Dデータ)に基づいて、平面座標上の物体Oの床面Fからの高さH3(
図3D参照)を検知(測定)する。物体高さ検知部73aでは、物体Oにおいて最も高い部分をこの物体Oの高さH3として検知する。なお、物体高さ検知部73aの検知結果は、記憶部に記憶される。
【0033】
吊物高さ検知部73bは、バトン2に取り付けられた吊物8の高さを検知する。吊物高さ検知部73bは、第2センサ52からの情報(3Dデータ)に基づいて、平面座標上の吊物8の高さH2(
図3Bおよび3D参照)を検知(測定)する。なお、吊物高さ検知部73bの検知結果は、記憶部に記憶される。
【0034】
決定部74は、後述するバトン2の下限位置を設定する場合に、バトン2の可動範囲A(
図3D参照)を設定する。決定部74は、物体高さ検知部71aおよび吊物高さ検知部71bの検知結果に基づいて、バトン2の可動範囲Aを決定する。バトン2の可動範囲Aについては、
図3A~3Dを用いて後述する。
【0035】
設定部75は、操作部6における操作に基づいて、バトン2の上限位置および下限位置を設定する。バトン2の上限位置とは、バトン2を上昇させる場合にバトン2が上昇可能なリミット位置である。バトン2の下限位置とは、バトン2を下降させる場合にバトン2が下降可能なリミット位置である。
【0036】
昇降制御部76は、巻上機3を制御して、バトン2の昇降を制御する。昇降制御部76は、操作部6における操作に基づいて、巻上機3のモータを制御するための制御信号を生成する。生成された制御信号は、通信部を介して巻上機3に送信される。
【0037】
また、昇降制御部76は、停止指示部76aを備える。停止指示部76aは、バトン2の下限位置の設定において、バトン2の後述する可動範囲Aよりもバトン2が下降しようとすると、バトンの下降を停止させる指示信号を巻上機3へ送信する。これにより、バトン2を可動範囲Aで下降させることができる。
【0038】
また、停止指示部76aは、バトン2の下限位置の設定において、傾き検知部21がバトン2の所定以上の傾きを検知した場合に、バトン2の下降を停止させる指示信号を巻上機3へ送信する。また、停止指示部76aは、バトン2の下限位置の設定において、衝撃検知部22がバトン2の所定以上の衝撃を検知した場合にも、バトン2の下降を停止させる指示信号を巻上機3へ送信する。
【0039】
次に、
図3A~3Dを参照して実施形態に係る制御装置7におけるバトン2の下限位置を設置する場合の手順について説明する。
図3A~3Dは、実施形態に係る制御装置7におけるバトン2の下限位置を設定する場合の手順の一例を示す図である。
【0040】
図3Aに示すように、バトン2の下限位置を設置する場合には、まず、所定空間Sに物体O(
図3Cおよび3D参照)が配置される前に、バトン2を下降させて、バトン2に吊物8を取り付ける。なお、バトン2の下限位置の設定は、たとえば、バトン2を昇降操作するオペレータなどの作業者Wが行う。
【0041】
次いで、
図3Bに示すように、吊物8の取り付けが完了すると、バトン2を所定の高さH1まで上昇させる。なお、バトン2を上昇させる高さH1は任意である。また、この場合のバトン2の高さH1は、グリッド天井10からの距離である。
【0042】
バトン2を所定の高さH1まで上昇させると、制御装置7の吊物高さ検知部73b(
図2参照)において、第2センサ52からの情報(3Dデータ)に基づいて、平面座標上の吊物8の高さH2を検知(測定)し、測定値およびバトン2の高さH1から、バトン単位でバトン2と吊物8との距離を算出する。算出した距離情報は、記憶部に記憶される。
【0043】
次いで、
図3Cに示すように、所定空間Sの床面Fに物体Oを配置する。床面Fに物体Oの配置が完了すると、制御装置7の吊物高さ検知部73bにおいて、第1センサ51からの情報(3Dデータ)に基づいて、平面座標上の物体Oの床面Fからの高さH3を検知(測定)する。
【0044】
次いで、
図3Dに示すように、バトン2を下降させて、バトン2の下限位置を設定する。このとき、制御装置7において、高さ検知部4(
図2参照)で検知したバトン2の高さH1、吊物8の高さH2およびバトン2周辺の物体Oの高さH3から、物体Oと吊物8との距離D1を算出する。
【0045】
制御装置7は、算出した物体Oと吊物8との距離D1の情報に基づいて、物体Oおよび吊物8の距離D1以上の接近を禁止するようにバトン2の可動範囲Aを設定する。すなわち、下降しているバトン2の自動停止位置P1を設定する。なお、制御装置7は、複数のバトン2のそれぞれの吊物8に対して、それぞれ可動範囲Aを設定する。
【0046】
なお、吊物8の障害物となる物体Oは、吊物8に対して3次元的に検知される。このため、吊物8の側方に物体Oが存在する場合でもバトン2が下降することで物体Oおよび吊物8の距離D1以上の接近する場合には、吊物8の側方の物体Oにも対応するように可動範囲Aを設定する。
【0047】
このように、制御装置7は、物体高さ検知工程と、吊物高さ検知工程と、決定工程とを含む制御方法によってバトン2の可動範囲Aを設定する。制御装置7は、物体高さ検知工程では、物体高さ検知部73a(
図2参照)において、第1センサ51からの情報(3Dデータ)に基づいて、物体Oの高さH3を検知(測定)する。
【0048】
制御装置7は、吊物高さ検知工程では、吊物高さ検知部73b(
図2参照)において、第2センサ52からの情報(3Dデータ)に基づいて、バトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2を検知(測定)する。制御装置7は、決定工程では、決定部74(
図2参照)において、物体高さ検知工程で検知した物体Oの高さH3、吊物高さ検知工程で検知した吊物8の高さH2に基づいて、バトン2の可動範囲Aを決定し、バトン2の可動範囲Aの設定が完了する。
【0049】
また、制御装置7は、停止指示部76a(
図2参照)において、傾き検知部21(
図2参照)がバトン2の所定以上の傾きを検知した場合にはバトン2の下降を停止させる指示信号を巻上機3へ送信し、バトン2の下降を停止させる。
【0050】
また、制御装置7は、停止指示部76aにおいて、衝撃検知部22(
図2参照)がバトン2の所定以上の衝撃を検知した場合にはバトン2の下降を停止させる指示信号を巻上機3へ送信し、バトン2の下降を停止させる。
【0051】
そして、
図3Dに戻り、バトン2の下限位置の設定が完了すると、演出にあわせてバトン2の位置を調製する。
【0052】
以上説明したように、実施形態に係る制御装置7は、物体高さ検知部73aと、吊物高さ検知部73bと、決定部74とを具備する。物体高さ検知部73aは、所定空間Sに設置された第1センサ51からの情報に基づいて、所定空間Sに配置された物体Oの高さH3を検知する。吊物高さ検知部73bは、所定空間Sに設置された第2センサ52からの情報に基づいて、昇降可能なバトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2を検知する。決定部74は、物体高さ検知部73aおよび吊物高さ検知部73bの検知結果に基づいて、バトン2の可動範囲Aを決定する。
【0053】
このような構成によれば、所定空間Sに配置された物体Oの高さH3およびバトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2に応じてバトン2の可動範囲Aを決定することで、物体Oと吊物8とが接触しないよう安全にバトン2を下降させることができる。これにより、バトン2の下降操作に伴う物体Oと吊物8との接触をより確実に回避することができ、安全性を向上させることができる。また、スタジオおよび舞台などの仕込み作業において、物体Oと吊物8とが接触しないようにバトン2の下限位置を設定する作業を容易化することができる。
【0054】
また、実施形態に係る制御装置7において、停止指示部76aをさらに具備する。停止指示部76aは、バトン2の傾きを検知する傾き検知部21がバトン2の所定以上の傾きを検知した場合またはバトン2の衝撃を検知する衝撃検知部22がバトン2の所定以上の衝撃を検知した場合に、バトン2の下降を停止させる。
【0055】
このような構成によれば、バトン2が所定以上傾いている場合にはバトン2の下降を停止するため、物体Oと吊物8との接触を抑制することができる。また、バトン2が所定以上の衝撃を受けた場合にはバトン2の下降を停止するため、物体Oと吊物8とが接触したとしても、この接触による被害を軽減することができる。
【0056】
また、実施形態に係る制御方法は、物体高さ検知工程と、吊物高さ検知工程と、決定工程とを含む。物体高さ検知工程は、所定空間Sに設置された第1センサ51からの情報に基づいて、所定空間Sに配置された物体Oの高さH3を検知する。吊物高さ検知工程は、所定空間Sに設置された第2センサ52からの情報に基づいて、昇降可能なバトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2を検知する。決定工程は、物体高さ検知工程および吊物高さ検知工程の検知結果に基づいて、バトン2の可動範囲Aを決定する。
【0057】
このような方法によれば、所定空間Sに配置された物体Oの高さH3およびバトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2に応じてバトン2の可動範囲Aを決定することで、物体Oと吊物8とが接触しないよう安全にバトン2を下降させることができる。これにより、バトン2の下降操作に伴う物体Oと吊物8との接触をより確実に回避することができ、安全性を向上させることができる。また、スタジオおよび舞台などの仕込み作業において、物体Oと吊物8とが接触しないようにバトン2の下限位置を設定する作業を容易化することができる。
【0058】
(変形例)
次に、
図4および5を参照して制御装置7の変形例(制御装置70)について説明する。
図4は、変形例に係る制御装置70を含むバトン昇降システム1の構成例を示す図である。
図5は、変形例に係る制御装置70の構成例を示すブロック図である。なお、以下の変形例においては、実質的に同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略している。
【0059】
図4に示すように、変形例に係る制御装置70を備えるバトン昇降システム1においても、スタジオおよび舞台などの所定空間Sにおいて照明装置などの吊物8が取り付けられたバトン2を昇降させる。所定空間Sの床面Fなどには、舞台セット、音響機器および照明器具などの物体Oが配置される。
【0060】
なお、変形例に係る制御装置70は、昇降制御部76が停止指示部76a(
図2参照)に代えて減速指示部76bを備える点において上記した実施形態と異なる。
【0061】
図5に示すように、昇降制御部76は、減速指示部76bを備える。減速指示部76bは、バトン2の下限位置の設定において、減速位置P2よりもバトン2が下降しようとすると、バトンの下降速度を減速させる指示信号を巻上機3へ送信する。すなわち、バトン2は、減速位置P2までは、たとえば、設定部75で設定された通常速度で下降され、減速位置P2よりも下降する場合には、通常速度よりも減速された速度で下降される。なお、変形例においては、減速位置P2までを可動範囲Aというが、厳密には、この可動範囲Aは、バトン2が通常速度で下降する範囲をいう。
【0062】
また、減速指示部76bは、バトン2の下限位置の設定において、傾き検知部21がバトン2の所定以上の傾きを検知した場合に、バトン2の下降速度を減速させる指示信号を巻上機3へ送信する。また、減速指示部76bは、バトン2の下限位置の設定において、衝撃検知部22がバトン2の所定以上の衝撃を検知した場合にも、バトン2の下降速度を減速させる指示信号を巻上機3へ送信する。
【0063】
図4に示すように、制御装置70は、バトン2の下限位置を設置する場合には、物体Oと吊物8との距離D1の情報に基づいて、物体Oおよび吊物8の距離D1以上の通常速度での接近を禁止するように、すなわち、減速して接近するように減速位置P2を設定する。なお、制御装置7は、複数のバトン2のそれぞれの吊物8に対して、それぞれ減速位置P2を設定する。
【0064】
なお、吊物8の障害物となる物体Oは、吊物8に対して3次元的に検知される。このため、吊物8の側方に物体Oが存在する場合でもバトン2が下降することで物体Oおよび吊物8の距離D1以上の接近する場合には、吊物8の側方の物体Oに対しても減速位置P2を設定する。
【0065】
このように、制御装置70は、物体高さ検知工程と、吊物高さ検知工程と、決定工程とを含む制御方法によってバトン2の減速位置P2を設定する。制御装置70は、物体高さ検知工程では、物体高さ検知部73a(
図2参照)において、第1センサ51からの情報(3Dデータ)に基づいて、物体Oの高さH3を検知(測定)する。
【0066】
制御装置70は、吊物高さ検知工程では、吊物高さ検知部73b(
図2参照)において、第2センサ52からの情報(3Dデータ)に基づいて、バトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2を検知(測定)する。制御装置7は、決定工程では、決定部74(
図2参照)において、物体高さ検知工程で検知した物体Oの高さH3、吊物高さ検知工程で検知した吊物8の高さH2に基づいて、バトン2の減速位置P2を決定し、バトン2の減速位置P2の設定が完了する。
【0067】
また、制御装置70は、減速指示部76b(
図2参照)において、傾き検知部21(
図2参照)がバトン2の所定以上の傾きを検知した場合にはバトン2の下降速度を減速させる指示信号を巻上機3へ送信し、バトン2の下降速度を減速させる。
【0068】
また、制御装置70は、減速指示部76bにおいて、衝撃検知部22(
図2参照)がバトン2の所定以上の衝撃を検知した場合にはバトン2の下降速度を減速させる指示信号を巻上機3へ送信し、バトン2の下降速度を減速させる。
【0069】
変形例に係る制御装置70の構成によれば、所定空間Sに配置された物体Oの高さH3およびバトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2に応じてバトン2の下降速度を減速させる減速位置P2を決定することで、物体Oと吊物8とが接触したとしても、接触時の衝撃が緩和されるため、安全にバトン2を下降させることができる。これにより、たとえば、バトン2の下降操作時に物体Oと吊物8とが接触(衝突)したとしても、接触時の衝撃が緩和されることから、安全性を向上させることができる。
【0070】
また、変形例に係る制御装置70の構成によれば、バトン2が所定以上傾いている場合にはバトン2の下降速度を減速させるため、物体Oと吊物8とが接触したとしても、接触時の被害を軽減することができる。また、バトン2が所定以上の衝撃を受けた場合にはバトン2の下降速度を減速させるため、物体Oと吊物8とが接触したとしても、この接触による被害を軽減することができる。
【0071】
また、変形例に係る制御装置70における制御方法によれば、所定空間Sに配置された物体Oの高さH3およびバトン2に吊り下げられた吊物8の高さH2に応じてバトン2の下降速度を減速させる減速位置P2を決定することで、物体Oと吊物8とが接触したとしても、接触時の衝撃が緩和されるため、安全にバトン2を下降させることができる。これにより、たとえば、バトン2の下降操作時に物体Oと吊物8とが接触(衝突)したとしても、接触時の衝撃が緩和されることから、安全性を向上させることができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
2 バトン
7 制御装置
8 吊物
21 傾き検知部
22 衝撃検知部
51 第1センサ
52 第2センサ
73a 物体高さ検知部
73b 吊物高さ検知部
74 決定部
76a 停止指示部
A 可動範囲
H2 (吊物の)高さ
H3 (物体の)高さ
O 物体
S 所定空間