(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004915
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】鉄道車両用の集音システム
(51)【国際特許分類】
B61D 37/00 20060101AFI20240110BHJP
B61K 13/04 20060101ALI20240110BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B61D37/00 G
B61K13/04
H04R3/00 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104817
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 充男
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】前門戸 俊文
(72)【発明者】
【氏名】平塚 友久
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220BA11
5D220BA14
5D220BB03
5D220BC02
(57)【要約】
【課題】鉄道車両内の音声を好適に聴取可能とする。
【解決手段】鉄道車両用の集音システムは、鉄道車両(1)の客室(3)に設けられた放送用のスピーカ(9)と、客室(3)に配置され、夫々が非常通報ボタン(13)と送話用マイク(12)と含んだ1又は2以上の非常通報装置(10)と、客室(3)の異常を検知する検知装置(21、22)と、非常通報ボタン(13)が押された場合、又は検知装置(21、22)で異常が検知された場合に、放送用のスピーカ(9)又は送話用マイク(12)を用いた集音の制御を開始する制御器(20)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の客室に設けられた放送用のスピーカと、
前記客室に配置され、夫々が非常通報ボタンを含んだ1又は2以上の非常通報装置と、
前記客室の異常を検知する検知装置と、
前記非常通報ボタンが押された場合、又は前記検知装置で異常が検知された場合に、前記放送用のスピーカを用いた集音の制御を開始する制御器と、
前記集音によって得られた音声の信号が接続される乗務員用のスピーカと
を備えた鉄道車両用の集音システム。
【請求項2】
鉄道車両の客室に設けられた放送用のスピーカと、
前記客室に配置され、夫々が非常通報ボタンと送話用マイクと含んだ1又は2以上の非常通報装置と、
前記客室の異常を検知する検知装置と、
前記非常通報ボタンが押された場合、又は前記検知装置で異常が検知された場合に、前記放送用のスピーカ又は前記送話用マイクを用いた集音の制御を開始する制御器と、
前記集音によって得られた音声の信号が接続される乗務員用のスピーカと
を備えた鉄道車両用の集音システム。
【請求項3】
前記制御器が、前記放送用のスピーカを用いた集音と、前記送話用マイクを用いた集音との一方を選択する
請求項2に記載の鉄道車両用の集音システム。
【請求項4】
前記検知装置は、前記客室で発生した異常音を検知する
請求項1又は2に記載の鉄道車両用の集音システム。
【請求項5】
前記検知装置は、前記客室で発生した異常音以外の異常を検知する
請求項1又は2に記載の鉄道車両用の集音システム。
【請求項6】
前記異常音以外の異常は、前記客室における発火、発煙、及び異臭の少なくとも一つを含む
請求項4に記載の鉄道車両用の集音システム。
【請求項7】
前記放送用のスピーカにより集音された信号から800Hz~2.5kHzの帯域の信号を抽出するフィルタ、
をさらに備える請求項1に記載の鉄道車両用の集音システム。
【請求項8】
前記放送用のスピーカ又は前記送話用マイクにより集音された信号から800Hz~2.5kHzの帯域の信号を抽出するフィルタ
をさらに備える請求項2に記載の鉄道車両用の集音システム。
【請求項9】
前記フィルタが、所定の音声明瞭度を有する信号を出力するように設定されている
請求項1又は2に記載の鉄道車両用の集音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の集音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両に搭載され、客室から乗務員へ非常通報を行う非常通報装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、鉄道車両内の音声を好適に聴取可能とする集音システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、鉄道車両の客室に設けられた放送用のスピーカと、前記客室に配置され、夫々が非常通報ボタンを含んだ1又は2以上の非常通報装置と、前記客室の異常を検知する検知装置と、前記非常通報ボタンが押された場合、又は前記検知装置で異常が検知された場合に、前記放送用のスピーカを用いた集音の制御を開始する制御器とを備えた鉄道車両用の集音システムである。
【0006】
また、本発明の一態様は、鉄道車両の客室に設けられた放送用のスピーカと、前記客室に配置され、夫々が非常通報ボタン及び送話用マイクを含んだ1又は2以上の非常通報装置と、前記客室の異常を検知する検知装置と、前記非常通報ボタンが押された場合、又は前記検知装置で異常が検知された場合に、前記放送用のスピーカ又は送話用マイクを用いた集音の制御を開始する制御器とを備えた鉄道車両用の集音システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉄道車両内の音声を好適に聴取可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、鉄道車両用の集音システムの一例を示す。
【
図2】
図2Aは、STI値の各周波数での重み付けの例を示し、
図2Bは、STI値による音声明瞭度の一例を示す。
【
図3】
図3は、通報制御器の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る鉄道車両用の集音システムについて説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0010】
図1は、鉄道車両1に備えられた集音システムの構成例を示す。
図1において、鉄道車両1は、乗務員室2と客室3とを備えている。集音システムは、車内音声として客室3内の音声を集音する。なお、
図1は一両編成の鉄道車両1を示すが、鉄道車両は、
図1に示す鉄道車両1に、客室3の構成を有する1以上の客車が連なる構成を有していてもよい。
【0011】
乗務員室2には、受報制御器20aと、受報制御器20aに接続された連絡受報器4と、連絡受報器4に接続された送受話器5と、放送装置6と、操作器31とが備えられている。一方、客室3には、1又は2以上の非常通報装置10と、通報制御器20と、異常音検知装置21と、異常検知装置22と、パワーアンプ8と、単数又は複数の放送用のスピーカ9と、スイッチ23と、アンプ24と、音声強調フィルタ25とが備えられている。
【0012】
非常通報装置10は、受話用のスピーカ11(「受話用スピーカ」の一例)と、送話用のマイク12(「送話用マイク」の一例)と、非常通報ボタン13とを含んでいる。非常通報ボタン13は、乗客が押すことが可能となっており、例えば、客室3内での悲鳴、怒号、発煙、発火、異臭などの異常を察した乗客によって押される。
【0013】
非常通報装置10は、配線(引き通し線)10aを介して通報制御器20(「制御器」の一例)に接続されている。非常通報ボタン13が押下されると、非常通報を示す信号が配線10a、通報制御器20、受報制御器20aを介して連絡受報器4に接続される。
【0014】
連絡受報器4は、非常通報を受けると、音声或いはランプの点灯等によって、乗務員に非常通報の発生を知らせる。送受話器5は、マイク及びスピーカを含んでおり、乗務員は、マイクをオンにする。このマイクから入力された音声の信号は、通報制御器20に接続される。
【0015】
通報制御器20は、非常通報の送信元の非常通報装置10に非常通報信号と乗務員室からの音声の信号を接続し、非常通報装置10は、スピーカ11から音声の信号に基づく音声を放音する。客室3内の音声は、マイク12から入力され、配線10b、通報制御器20、受報制御器20a、及び連絡受報器4を介して送受話器5のスピーカに接続される。非常通報信号を連絡受報器4が受信するとアラーム音が鳴動し操作器31の応答ボタンを乗務員押下する事により通信可能となる。これによって、客室3内の乗客等と、乗務員室2の乗務員とが通話を行うことができる。
【0016】
ところが、客室3内で起こった異常により、乗客が客室3から退避してしまうと、乗務員室2からの乗務員の呼びかけに応答する者がいなくなるため、乗務員が客室3での状況、すなわち異常事態を把握することができなくなる問題があった。また、非常通報装置10が、受話用スピーカ及び送話用マイクを有しない場合があり、そのような場合において、非常通報ボタンが押された際の客室3内の音声を聴取できるのが好ましい。実施形態に係る集音システムは、このような問題を解決するためになされたものである。
【0017】
鉄道車両1は、車内外への放送システムを備えている。放送システムは、乗務員室2に備えられた放送装置6と、放送音声信号の伝達経路7(配線又は無線)と、パワーアンプ(PA)8と、配線9aと、夫々が配線9aに接続された複数の放送用のスピーカ9とを含んでいる。放送装置6は、乗務員の肉声を入力するマイクと、鉄道車両1の走行位置に応じて次駅の案内などの自動放送音声を発生させる自動放送装置を含むことができる。マイクに入力された音声或いは自動放送装置から出力された音声の信号は、伝達経路7を介してPA8に接続され、増幅された後にスイッチ23を介して配線9aに接続される。そして、配線9aに接続されたスピーカ9の夫々から、音声の信号に応じた音声が放音される。複数のスピーカ9は、例えば、1両の長さが18~20mである鉄道車両1に対して、所定の間隔(例えば2~2.5m)をあけて配置される。
【0018】
集音システムでは、複数のスピーカ9を、客室3内の集音装置として利用する。このため、スイッチ23と、アンプ24と、音声強調フィルタ25とが設けられており、音声強調フィルタ25は、通報制御器20に接続されている。
【0019】
スイッチ23は、PA8とアンプ24との一方を配線9aに接続するスイッチであり、その動作(接続先)は、通報制御器20又はそれ以外によって制御される。放送が行われる場合、スイッチ23はPA8と配線9a(複数のスピーカ9)とを接続する。これに対し、複数のスピーカ9を用いた集音が行われる場合、スイッチ23は配線9aとアンプ24とを接続する。
【0020】
アンプ24は、配線9aを通じて入力される信号を増幅する。音声強調フィルタ25は、入力された信号のうち、800Hz~2.5kHzの帯域の信号を通過させる。通過帯域は以下の理由により設定されている。複数のスピーカ9を用いた集音にあたり、問題となるのは実際に集音したい音以外のノイズである。ノイズは例えば列車走行音、車内空調音などがある。これらのノイズは人の声の帯域1kHz近辺ではなく、比較的低い周波数の500Hz以下に多くのエネルギー成分がある。また一般的に250Hz~8kHzと言われている人の声の帯域も、何を話しているかを判断するだけであれば、この帯域幅は不要であり、800Hz~2.5kHz程度の帯域があれば十分である。これより、音声強調フィルタの通過帯域をこの帯域幅に設定している。
【0021】
音声明瞭度は、STI(Speech Transmission Index)値で表すことができる。例えば、
車内で所定条件下でテスト音声の再生を行い、複数のスピーカ9を用いた受信側でテスト音声をどのぐらい再現できたかで音声明瞭度を表すことができる。
【0022】
図2Aは、STI値の各周波数での重み付けの例を示し、
図2Bは、STI値による音声明瞭度の一例を示す。音声明瞭度が所定の値(例えば、0.60が目標値であるが、0.45は許容値となる)となるように、音声強調フィルタ25の特性が決定される。音声強調フィルタ25は、所望の音声明瞭度を有する音声信号を出力できる限りにおいて、アナログのバンドパスフィルタ、ディジタルのノイズキャンセラなどを用いて構成することができる。
【0023】
車内音声の集音は、複数のスピーカ9の利用の代わりに、1又は2以上の非常通報装置10のマイク12を用いて行うことができる。非常通報装置10のマイク12で集音された音声は、配線10bを介して伝達される。
図1に示すように、配線10bには、アンプ24及び音声強調フィルタ25が挿入されており、所望の音声明瞭度を有する音声信号が通報制御器20に接続されるようになっている。
【0024】
通報制御器20は、複数のスピーカ9からの音声信号と、1又は2以上のマイク12からの音声信号との一方を選択し、受報制御器20a(連絡受報器4)に接続することができる。初期設定により、いずれか一方を選択するようにされているが、操作器31を用いた切り替え操作によって選択先を変更することができる。例えば、乗務員は、営業時間外などの所定のタイミングで、複数のスピーカ9からの音声信号、及び、1又は2以上のマイク12からの音声信号についてSTI値を求め、STI値が良好な方を選択する設定を通報制御器20に操作器31を用いて施すことができる。またSTI値は、集音する環境や周囲のノイズにより明瞭度が向上する音声強調フィルタ特性が異なる。選択したスピーカ9からの入力又はマイク12からの信号によりそのフィルタ特性を状況により変化させ、より音声明瞭度があがるよう自動的にフィルタ特性を適宜選択する仕組みでも良い。
【0025】
通報制御器20によって選択された音声信号が、受報制御器20a及び連絡受報器4を介して送受話器5のスピーカに接続される。また、送受話器5のスピーカに接続される音声は、録音装置によって録音されるようにしてもよい。なお、通報制御器20による選択は、複数のスピーカ9による集音と、1又は2以上のマイク12による集音の一方をオンにして他方をオフにする制御であっても、複数のスピーカ9による集音と、1又は2以上のマイク12による集音の双方をオンにし、いずれか一方の音声信号のみを送受話器5に
接続する構成であってもよい。
【0026】
複数のスピーカ9、或いは1又は2以上の非常通報装置10のマイク12を用いた集音は、非常通報ボタン13の押下をトリガとして行われる。但し、トリガはこれに限られず、異常音検知装置21又は異常検知装置22による異常の検知もトリガとされる。異常音検知装置21は、悲鳴や怒号などの異常音を検知するセンサである。異常音検知装置21の客室3における配置位置及びその数は、適宜設定可能であり、非常通報装置10から独立した位置(離れた位置)であっても、非常通報装置10に収容又は接触擦る位置や、非常通報装置10に隣接、近接する位置であってもよい。
図1に示す例では、異常音検知装置21は、非常通報装置10の夫々に設けられるとともに、非常通報装置10から離れた位置に配置されている。異常音検知装置21が作動した場合は直ちに客室3内の集音を開始し、乗務員がその状況を確認することが可能となる。
【0027】
異常検知装置22は、発煙、発火、異臭などを含む異常音以外の所望の異常を検出するものであり、煙センサ、温度センサ、臭いセンサなどの組み合わせによって構成される。なお、異常検知装置22の客室3内への配置位置及びその数も適宜設定可能である。なお、異常音検知装置21及び異常検知装置22は、「検知装置」の一例である。異常音検知装置21及び異常検知装置22はいずれか一方を備えればよく、これらの双方を備えることは必須でない。また、異常検知装置22が検知可能な異常は、発煙、発火、異臭のうちの少なくとも一つであっても、これら以外の異常であってもよい。
【0028】
図3は、通報制御器20の処理例を示すフローチャートである。フローチャートに示す処理は、通報制御器20が備えるCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ
及びメモリを用いたソフトウェア処理(メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行する処理)によって行うことができる。或いは、通報制御器20が備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)或いはFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェア(半導体装置)を用いた処理によって実行することができる。
【0029】
ステップS001では、通報制御器20は、非常通報装置10の非常通報ボタン13が押されたか否かを判定する。このとき、非常通報ボタン13が押されたと判定される場合は処理がステップS003に進み、そうでない場合には、処理がステップS002に進む。
【0030】
ステップS002では、通報制御器20は、異常音検知装置21又は異常検知装置22によって異常が検知されたか否かを判定する。異常が検知されたと判定される場合、処理がステップS003に進み、そうでない場合には、処理がステップS001に進む。
【0031】
ステップS003では、通報制御器20は、集音制御を行う。例えば、通報制御器20は、現時点で施されている設定に従って、複数のスピーカ9による集音とマイク12による集音との少なくとも一方を開始する(オンにする)、例えば、複数のスピーカ9による集音が設定されている場合には、通報制御器20は、スイッチ23を用いて配線9aとアンプ24とを接続し、複数のスピーカ9による集音を開始する。このとき、例えば、マイク12による集音はオフにする。通報制御器20は、集音によって入力されてくる音声信号を、受報制御器20aに接続し、受報制御器20aは、音声信号を連絡受報器4を介して送受話器5に接続する。なお、操作器31の操作などによってマイク12による集音を行う設定が施されている場合には、例えば、複数のスピーカ9を用いた集音は行われず、通報制御器20は、マイク12による集音によって入力される音声信号を受報制御器20aを介して連絡受報器4に接続する。音声信号の接続によって、乗務員は送受話器5から客室3の音声を聴取することができる。また、当該音声を録音することもできる。なお、スイッチ23は、通常時は配線9aとアンプ24とを接続し、放送時にアンプ8と配線9
aとを接続する構成であってもよい。
【0032】
ステップS004では、通報制御器20は、所定の集音の終了条件が満たされたか否かを判定する。終了条件が満たされたと判定される場合、
図3の処理が終了し、そうでない場合には、ステップS003の処理が継続される。
【0033】
実施形態に係る集音システムは、鉄道車両1の客室3に設けられた放送用のスピーカ9と、客室3に配置され、夫々が非常通報ボタン13及び送話用マイク12を含んだ1又は2以上の非常通報装置10とを含む。集音システムは、さらに、客室3の異常を検知する異常音検知装置21及び異常検知装置22の少なくとも一方(検知装置)と、非常通報ボタン13が押された場合、又は異常音検知装置21又は異常検知装置22で異常が検知された場合に、放送用のスピーカ9を用いた集音を制御する通報制御器20(制御器)と、集音によって得られた音声の信号が接続される乗務員用のスピーカ(送受話器5)とを備える。
【0034】
集音システムによれば、非常通報時(非常通報ボタン押下時)又は異常検知時における客室3内の音声を直ちに乗務員に送ることができる。当該音声は、乗務員室等に設けられた通信装置を用いて指令所に送ることもできる。これにより、従来の非常通報装置における、非常通報ボタン13が押下され乗務員が応答したときに初めて通話可能(マイクがオン)となり、乗客経由で状況を知ることができる仕組みにおける問題を解決することができる。すなわち、従来では、乗客が非常通報ボタン13を押下した後に待避してしまった場合、乗務員が乗客と会話できず状況を把握することができなかった。
【0035】
これに対し、実施形態に係る集音システムによれば、既設の客室スピーカ(放送用のスピーカ9)、又は、非常通報装置10のマイク12を用いて集音された非常通報時又は異常検知時における音声を乗務員が聴取することで、有事(異常)が発生した車両の状況を把握することができ、その際の初動に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
非常通報装置が会話機能(受話用スピーカ及び送話用マイク)を有しない場合、実施形態に係る集音システムは、非常通報ボタン13が押された場合、又は異常音検知装置21又は異常検知装置22で異常が検知された場合に、通報制御器20が放送用のスピーカ9を用いた集音の制御を開始する構成とすることができる。このように、非常通報装置に会話機能がない場合でも、放送用のスピーカ9を用いて、非常通報時又は異常検知時における音声を聴取可能とすることができる。このように、マイク12又はスピーカ9を用いて、主に客室内の音声を集音できる。但し、マイク12及びスピーカ9が集音する限りにおいて、車外の音声も集音することができる。
【0037】
実施形態に係る集音システムでは、スピーカ9又はマイク12により集音された信号から800Hz~2.5kHzの帯域の信号を抽出するフィルタとを備える構成として、ノイズが除去された(聞き取り易い)音声を乗務員が聴取することができる。フィルタ25によって、所望の音声明瞭度(STI値)を有する音声信号を得ることができる。
【0038】
また、実施形態に係る集音システムでは、スピーカ9を用いた集音とマイク12を用いた集音との一方を選択可能であり、例えばSTI値に基づいて一方を選択することができる。異常は、悲鳴や怒号などの異常音、発火、発煙、異臭などの異常音以外の異常を検知することができる。以上説明した実施形態の構成は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・鉄道車両
2・・・乗務員室
3・・・客室
4・・・連絡受報器
5・・・送受話器
6・・・放送装置
7・・・放送音声信号の伝達経路
8・・・パワーアンプ
9・・・スピーカ
9a,10a,10b・・・配線
10・・・非常通報装置
11・・・受話用スピーカ
12・・・送話用マイク
13・・・非常通報ボタン
20・・・通報制御器
20a・・・受報制御器
21・・・異常音検知装置
22・・・異常検知装置
23・・・スイッチ
24・・・アンプ
25・・・音声強調フィルタ
31・・・操作器