(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049151
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/30 20060101AFI20240402BHJP
G21F 9/08 20060101ALI20240402BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20240402BHJP
G21F 9/32 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G21F9/30 501Z
G21F9/08 511F
G21F9/06 581H
G21F9/32 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155440
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰介
(72)【発明者】
【氏名】山村 朝雄
(72)【発明者】
【氏名】田端 千紘
(57)【要約】
【課題】マイナーアクチノイドをより安定な状態で固体にすることができる。
【解決手段】マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を含む放射性物質を抽出した液体にウランを供給するウラン供給部と、ウランが供給され、マイナーアクチノイド及びランタノイドを抽出した液体を加熱して一部の液体を蒸発させた後、さらに加熱して固化した固化体を作製する固化処理部と、生成した固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、マイナーアクチノイド及びランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化処理部と、を含み、安定化処理部は、固化体が、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質のモル量Xが、0≦X≦7である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を含む放射性物質を抽出した液体にウランを供給するウラン供給部と、
ウランが供給され、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を加熱して一部の液体を蒸発させた後、さらに加熱して固化した固化体を作製する固化処理部と、
生成した前記固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化処理部と、を含み、
前記安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量Xが、0<X≦7である高レベル放射性物質処理システム。
【請求項2】
前記安定化処理部は、ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、1.9≦Y≦12である請求項1に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項3】
前記安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量をXが、0<X≦6.3であり、安定化処理の温度が600℃以上1000℃以下である請求項1に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項4】
前記安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量Xが、0.1≦X≦0.5である請求項1に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項5】
前記安定化処理部は、ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、2.3≦Y≦3.2である請求項4に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項6】
前記安定化処理部は、安定化処理時に還元ガスを供給する還元ガス供給部を備え、還元ガスの供給量で酸素量を制御する請求項1に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項7】
有機溶媒の液体を用いて、高レベル放射性物質を含有する液体から前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを含む有機溶媒を抽出し、希釈液を供給して希釈した液体として生成する抽出装置を有し、
前記ウラン供給部は、前記有機溶媒に溶解するウランの錯体を、前記液体に添加する請求項1に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項8】
前記希釈液は、沸点が30℃以上100℃以下である請求項7に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項9】
前記希釈液は、引火点を有していないまたは引火点が抽出剤の分解温度以上である請求項7に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項10】
有機溶媒の液体を用いて、高レベル放射性物質を含有する液体から前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した後、抽出した前記有機溶媒と、液相の逆抽出剤を含んだ希釈液とを混合し、液相の逆抽出剤を含んだ希釈液に前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを移動させた液体を生成する抽出装置を有し、
前記ウラン供給部は、液相に溶解するウランイオンを、前記液体に添加する請求項1に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項11】
前記固化装置は、加熱処理によって固化体を作製する請求項10に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項12】
マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を含む放射性物質を抽出した液体にウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量Xが、0≦X≦7となる割合でウランを供給するステップと、
ウランが供給され、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を加熱して一部の液体を蒸発させた後、さらに加熱して固化した固化体を作製するステップと、
生成した前記固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化処理を1つの装置で実行するステップと、を含む高レベル放射性物質処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベル放射性廃棄物の処理として、高レベル放射性物質から放射性物質であるマイナーアクチノイドを抽出する方法がある(例えば特許文献1、特許文献2)。また、使用済み燃料を再生可能な形態で貯蔵する処理方法として固化する方法がある(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-63198号公報
【特許文献2】特開2019-15533号公報
【特許文献3】特許第6037168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高レベル放射性物質からマイナーアクチノイドを抽出することで、抽出したマイナーアクチノイドを高速増殖炉等の燃料として再利用することができる。また、マイナーアクチノイドを除去することで廃棄物の処理負荷を低減することが可能となる。ここで、マイナーアクチノイドを燃料として再利用するためにはマイナーアクチノイドの核変換技術が必要である。また、再利用の技術が実用化されていない状況では、分離したマイナーアクチノイドを安定に長期保管する必要がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、マイナーアクチノイドをより安定な状態で固体にすることができる高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、高レベル放射性物質処理装置であって、マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を含む放射性物質を抽出した液体にウランを供給するウラン供給部と、ウランが供給され、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を加熱して一部の液体を蒸発させた後、さらに加熱して固化した固化体を作製する固化処理部と、生成した前記固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化処理部と、を含み、前記安定化処理部は、固化体が、ウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量Xが、0<X≦7である。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、高レベル放射性物質処理方法であって、マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を含む放射性物質を抽出した液体にウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量Xが、0<X≦7となる割合でウランを供給するステップと、ウランが供給され、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を加熱して一部の液体を蒸発させた後、さらに加熱して固化した固化体を作製するステップと、生成した前記固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化処理を1つの装置で実行するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、マイナーアクチノイドをより安定な状態の固体にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、他の実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、1523K(1250℃)の三元系状態図を示す説明図である。
【
図4】
図4は、1273K(1000℃)の三元系状態図を示す説明図である。
【
図5】
図5は、1073K(800℃)の三元系状態図を示す説明図である。
【
図6】
図6は、923K(650℃)の三元系状態図を示す説明図である。
【
図7】
図7は、773K(500℃)の三元系状態図を示す説明図である。
【
図8】
図8は、623K(350℃)の三元系状態図を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示にかかる高レベル放射性物質処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本開示の高レベル放射性物質処理装置は、高レベル放射性物質からMA(マイナーアクチノイド)を抽出し、MAを抽出した廃棄物をガラス固化して安定化する。また、高レベル放射性物質処理装置は、高レベル放射性物質にランタノイドが含まれる場合、マイナーアクチノイドとともにランタノイドも抽出する。本開示において、「MA(マイナーアクチノイド)」とは、アクチノイドに属する超ウラン元素のうちPuを除いた元素である。「アクチノイド」とは、原子番号89から103までの元素の総称である。マイナーアクチノイドには、例えば、Np(ネプツニウム)、Am(アメリシウム)、Cm(キュリウム)が含まれる。「Ln(ランタノイド)」とは、原子番号57から71までの元素の総称である。
【0011】
図1は、本実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示す高レベル放射性物質処理装置(処理装置)10は、抽出装置12と、固化装置14と、安定化装置16と、保管装置18と、を含む。本実施形態の処理装置は、高レベル放射性物質として、高レベル放射性廃棄物(以下、「HALW」とも記す。)を用いた場合として説明する。廃液は、例えば、軽水炉から排出される使用済み核燃料の再処理で、使用済み核燃料の溶液からU(ウラン)及びPu(プルトニウム)を回収した後の液体である。廃液に含まれる高レベル放射性廃棄物には、核分裂生成物(以下、「FP」とも記す。)のほか、MA、ランタノイドが含まれる。高レベル放射性廃棄物(以下、「HALW」とも記す。)は、具体的には、ピューレックス(PUREX)法による再処理で生成する廃液が挙げられる。ピューレックス法では、UやPuを含む硝酸溶液と、トリブチルリン酸(TBP)と、ドデカン等の有機溶媒とを接触混合する。これにより、硝酸溶液中のUやPuがTBPと錯体を形成して有機溶媒側へ移動する。一方、FP、MA、Lnは硝酸溶液(廃液)側に残る。FP、MA、Lnを含有する硝酸溶液が、処理対象の廃液となる。
【0012】
抽出装置12は、廃液からMA成分を抽出する。抽出装置12は、廃液供給部22と、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、MA抽出液生成部28と、を含む。廃液供給部22は、液体の高レベル放射性廃棄物であるHALWを貯留し、MA抽出液生成部28に供給する。本実施形態では、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、を設けたが、抽出剤供給部24と希釈液供給部26とを1つの装置として、抽出剤が溶解した液相の有機溶媒を供給してもよい。
【0013】
抽出剤供給部24は、抽出剤をMA抽出液生成部28に供給する。抽出剤は、MA及びLnを捕捉する。また、抽出剤は、希釈液に移行、均一混合する液体である。抽出剤としては、例えば、MAやLnと錯体を形成する錯化剤を用いることができる。錯化剤は、選択的にMAと錯体を形成し、安価であることが好ましい。抽出剤の一例としては、n-オクチル(フェニル)-N,N’-ジイソブチルカルバモイルメチルフォスフィンオキシド-トリブチルリン酸混合物(CMPO-TBP混合物)、ジイソデシルリン酸、6,6’-ビス(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1,2,4-ベンゾトリアジン-3-イル)-2,2’-ビピリジン(BTBP)、N,N’-ジブチル-N,N’-ジメチルテトラデシルマロナミド(DMDBTDMA)がある。抽出剤としては、DGA系の材料(錯化剤)を用いることが好ましい。錯化剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(TODGA)、テトラ(2-エチルヘキシル)ジグリコールアミド(T2EHDGA)等が挙げられる。抽出剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
希釈液供給部26は、希釈液をMA抽出液生成部28に供給する。希釈液は、廃液の液体成分に不溶な有機相の材料(有機溶媒)である。有機溶媒は、使用する抽出剤に応じて適宜選定できる。有機溶媒は、再利用可能であること、安価であること、また、放射線劣化に耐性があることが望ましい。希釈液は、廃液の液体成分に不溶な有機相の材料である。希釈液は、廃液の液体から抽出剤を溶離する特性を備える。希釈液は、沸点が30℃以上100℃以下であることが好ましい。また、希釈液は、引火点を有していないまたは引火点が抽出剤の分解温度以上であることが好ましい。希釈液として、上記範囲を満たす液体を用いることで、固化処理部での処理負荷を低減することができる。また、希釈液は、再利用しても熱や放射線による劣化が少ない材料であることが好ましく、再利用しても熱や放射線による劣化が少ない炭化水素系の構造を有する溶媒であることが好ましい。ここで、再利用しても熱や放射線による劣化が少ないとは、熱や放射線のエネルギーを受けて、低分子量の構造になったとしても、金属イオンと錯体を形成し難い性質をもつことである。希釈液としては、例えば、フッ素系の材料であるハイドロフルオロカーボン(HFC)を用いることが好ましい。有機溶媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、希釈液は、固化装置14でMAから分離した後、再利用が可能な液体とすることが好ましい。
【0015】
MA抽出液生成部28は、廃液と抽出剤と希釈液が供給される。MA抽出液生成部28は、溶媒抽出法により、廃液中のMA及びLnと抽出剤とを接触すると、MA及びLnが抽出剤側に移行する。MA及びLnを捕捉した抽出剤は、希釈液に内包される。MA抽出液生成部28は、抽出処理後、廃液に対して、希釈液を分離することで、希釈液中にMA及びLnを捕集した抽出剤が内包されたMA抽出液を生成する。MA抽出液生成部28は、連続的に各材料が供給され、MA抽出液を生成する連続式でも、間欠的に各材料が供給され、MA抽出液を生成するバッチ式でもよい。また、MA抽出液生成部28は、抽出剤でMAを選択的に捕捉する、あるいは、MA及びLnを同時に捕捉して処理してもよい。
【0016】
固化装置14は、MA抽出液にウランを混合し、混合した液体の液体成分を除去し、固化体を生成する。固化装置14は、固化処理部40とウラン供給部44とを含む。ウラン供給部44は、固化処理部40のMA抽出液にウランを供給する。ウラン供給部44は、MA抽出液を構成する希釈液(有機溶媒)に対して均一溶解可能なウラン含有物質、例えば、有機U錯体、具体的には、ジピバロイルメタンのウラン錯体を供給する。有機U錯体中のウランは、4価や、6価の価数の状態で含有される。
【0017】
固化処理部40は、蒸留部45と、熱処理部46と、希釈液回収部47と、酸化ガス供給部48と、排ガス回収部49と、を備える。蒸留部45は、ウランが混合されたMA抽出液を例えば50℃から100℃に加熱し、希釈液を蒸発させる。熱処理部46は、蒸留部45と一体の装置で、希釈液を蒸発させた対象物をさらに加熱、例えば300℃に加熱して、残留物を熱分解、酸化物転換させる。希釈液回収部47は、蒸留部45と接続され、蒸留部45で蒸発された希釈液を回収する。希釈液回収部47は、回収した希釈液を希釈液供給部26に供給し、再利用する。酸化ガス供給部48は、熱処理部46に、酸化性ガス、例えば、酸素や空気を供給する。排ガス供給部49は、熱処理部46から排出される排ガスを回収する。
【0018】
固化処理部40は、蒸留部45でウランが混合されたMA抽出液を蒸留して、希釈液成分を除去する。固化処理部40は、希釈液を除去することで、抽出剤とMAとLnとウランを含む固化残留物が、錯体として残留する。また、固化処理部40は、蒸留部45での蒸留時に排出されるガスを希釈液回収部47で回収する。固化処理部40は、希釈液を蒸留した対象物を熱処理部46で酸化ガス供給部48から酸化性ガスを供給しながら加熱することで、抽出剤の成分、具体的には、C、H、O、N、成分を除去し、固化体を生成する。固化体は、酸化物となる。固化処理部40は、蒸留、熱処理としてバッチ式(回分式)、連続式(棚段塔や充填塔)等の公知の蒸発方式を用いることができる。蒸留部45は、処理温度をMA抽出液の希釈液の沸点を基準として、沸点-10℃以上沸点+20℃以下かつ引火点以下とすることが好ましい。熱処理部46は、熱分解処理、酸化物転換処理が発生する温度以上であり、例えば、300℃以上が例示される。
【0019】
安定化装置16は、固化体から炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去する安定化処理を行う。安定化装置16は、安定化処理部50を有する。
【0020】
安定化処理部50は、還元部52と、還元ガス供給部54と、排ガス回収部56と、を備える。還元部52は、固化体を還元性雰囲気で加熱し、か焼、焼結する。還元部52は、蒸留部45、熱処理部46と一体の装置である。還元ガス供給部54は、還元部52に還元性ガス、例えば水素を供給する。排ガス回収部56は、還元部52から排出される排ガスを回収する。また、安定化処理部50は、処理時に温度調整し水素還元を行うことで、UO3形態の発生を抑制しつつ、UO2形態を生成する。安定化処理部50は、処理時に水分を供給して水和還元を行うことで、UO3形態の発生を抑制しつつ、UO2形態を生成することもできる。
【0021】
安定化処理部50は、還元ガス供給部54から還元部52に還元ガスを供給しつつ、還元部52で固化体を加熱し、か焼、焼結することで、処理対象物から炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、蛍石構造で固化させる。具体的には、安定化処理部50は、固化体を焼結することで、脱硝、熱分解処理を行い、固化体中の不純物成分(有機物成分,硝酸成分,水分)つまり、CHON成分を除去し、その後焼結させる。焼結温度は、例えば、600℃以上1250℃以下、好ましくは600℃以上800℃以下である。
【0022】
安定化処理部50は、ウランが含有された固化体の不純物成分を除去し、その後、還元性雰囲気にて焼結すること、MAやLnを固溶した蛍石構造のウラン酸化物を得ることができる。一例としては、蒸留することで、固化体として、[M3+・(NO3
-)3・m(抽出剤)]+([U4+・(NO3
-)4・n(配位子)]または[M3+・(NO3
-)3・m(抽出剤)]+([UO2
2+・(NO3
-)2・n(配位子)]が生成される。ここで、Mは、MAまたはLnである。この固化体を熱処理し、CHON成分を除去することで、MaOb+U3O8+(αCO2+βH2O+γNOx)となり、(αCO2+βH2O+γNOx)が除去される。さらに、MaOb+U3O8を焼結することで、蛍石構造の酸化物となるUMRMOyが形成される。RMは、M(Ln or MA)/Uであり、Uに対するLn or MAの当量比である。安定化装置16は、保管時にガス化する可能性がある成分である炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、MAとLnを含有する二酸化ウランの蛍石構造とすることで、熱及び化学的安定性の高い固化体とする。
【0023】
保管装置18は、安定化処理した処理物を保管する。保管装置18は、保管部60を含む。保管部60は、安定化処理したMAを含む物質を固体の状態で保管する。保管部60は、例えば、金属の容器やキャスクである。保管部60は、安定化処理したMAを含む物質の崩壊熱を除去できればよい。また、保管部60を地中に設け、安定化処理した処理物を地中に埋設してもよい。
【0024】
処理システム10の保管部60で保管しているMAを含む物質は、原子力発電システムの燃料として使用することができる。MAを燃料として核変換させる場合、保管している蛍石構造の固化体を溶解させ、U、MA及びLnを含む溶液を生成する(固化体溶解)。次に、得られた溶液に対してU、MAの精製処理を行う(MA精製)。MA精製では、例えば、得られた溶液中のU及びMAとLnとを分離し、必要に応じてMAから高発熱性のMAを分離する。次に、得られたU及びMA(Np、Am等)をU、Puと混合し、混合酸化物を得ることにより、燃料を製造する(MA燃料製造)。得られた燃料は高速増殖炉等で燃焼させる(MA燃焼)。
【0025】
本実施形態の処理装置10は、抽出装置12で、廃液に、抽出剤、希釈液を投入し、混合することで、廃液からLnとともにMAを分離する分離処理を行い、MA抽出液を生成する。次に、処理装置10は、固化装置14で、MA抽出液から希釈液を蒸留し、かつ、Uを供給することで、UとMA及びLnを含有する固化体を生成する。次に、処理装置10は、安定化装置16で、MAを含有する固化体から、有機成分(CHON)を除去した蛍石構造を形成させる。処理装置10は、保管装置18で、蛍石構造の処理物を保管する。
【0026】
なお、処理装置10は、固化安定化装置13の熱処理を1つの装置で実行することが好ましい。これにより、装置構成を簡素化することができる。また、処理装置10は、1つの装置で複数の処理が実行できることで、放射性物質の搬送回数を減らすことができ、処理をより安全に行うことができる。
【0027】
また、希釈剤を沸点が30℃以上100℃以下、または、引火点を有していないまたは引火点が抽出剤の分解温度以上とすることで、固化処理で希釈剤を回収しやすくでき、また、必要なエネルギーも小さくできる。
【0028】
処理装置10は、LnとともにMAを分離し、固化し、安定化させる。これにより、液体の高レベル放射性廃棄物からMAを効率よく抽出することができ、廃棄物の処分負荷を小さくすることができ、固化することができる。また、MA及びLnを抽出し、安定化させた物質とすることで、MAを燃料として再利用するために保管する場合も、安定して保管することができる。また、再利用する場合、固化体を溶解する処理のみで、再利用可能な状態とすることができる。
【0029】
また、MAとLnを分離せずに処理することで、MAとLnとを分離する処理が不要になり、処理負荷を小さくすることができる。
【0030】
また、処理装置10は、抽出剤として、硝酸系の物質を含有する高放射性物質に対してMA抽出液を生成する際に、第三相を形成しない抽出剤を用いることが好ましい。具体的には、DGA系の材料を用いることが好ましい。一例としては、T2EHDGAがある。また、抽出剤は、安定化装置16での処理時に除去できる材料、具体的には、炭素,水素,窒素,酸素のみで構成された材料とすることが好ましい。また、抽出剤は、腐食性成分を含まないことが好ましい。
【0031】
また、処理装置10は、ウラン供給部44でMAとLnを含有する液体にウランを供給し、固化体を生成し、その後、安定化装置16で焼結することで、MA及びLnを固定化した二酸化ウランの蛍石構造とすることができる。これにより、安定化処理した後の固体として、長期安定な結晶構造とすることができ、MAを安定して保管することができる。具体的には、蛍石構造に、3価のMA及びLnを固溶することができ、MAとLnの混合またはどちらか一方のみの酸化物構造と比較して、安定した蛍石構造とすることができる。また、ウランを用いて、結晶構造を形成することで、MAを含有する固体を再処理して使用する場合、不要な成分、例えばSi、Na,Ca等が混入していない構造とすることができる。これにより、再処理時に使用しやすい状態で安定化した物質とすることができる。
【0032】
ウラン供給部44は、ウランを有機物質の錯体で供給することが好ましい。これにより、希釈液への溶解を容易にすることができる。ここで、有機U錯体に配位させる配位子は、炭素,水素,窒素,酸素のみで構成されたものを使用することが好ましい。また、有機U錯体に配位させる配位子は、安定化(熱分解)が容易かつ腐食性成分等が含まれていないことが好ましい。これにより、安定化処理時に好適に除去することができ、MAを含有した物質を安定化した物質とすることができ、安定して保管することができる。
【0033】
上記実施形態では、抽出装置12で、有機溶媒で抽出したMA抽出液を生成し、固化処理したが、これに限定されない。処理装置は、液相にMAを抽出した逆抽出液を生成し、固化し、安定化してもよい。
【0034】
図2は、他の実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。
図2に示す高レベル放射性物質処理装置(処理装置)10Aは、抽出装置12Aと、固化装置14Aと、安定化装置16Aと、保管装置18と、を含む。本実施形態の処理装置10Aは、処理装置10と同様に高レベル放射性物質として、高レベル放射性廃棄物(以下、「HALW」とも記す。)を用いた場合として説明する。
【0035】
抽出装置12Aは、廃液からMA成分を抽出する。抽出装置12Aは、廃液供給部22と、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、MA抽出液生成部28と、MA逆抽出液生成部30と、逆抽出剤供給部32と、希釈液供給部34と、を含む。廃液供給部22は、液体の高レベル放射性廃棄物であるHALWを貯留し、MA抽出液生成部28に供給する。
【0036】
抽出剤供給部24は、抽出剤をMA抽出液生成部28に供給する。抽出剤は、MA及びLnを捕捉する。また、抽出剤は、希釈液に移行する液体である。抽出剤としては、例えば、MAやLnと錯体を形成する錯化剤を用いることができる。錯化剤は、選択的にMAと錯体を形成する錯化剤に比べて安価であることが好ましい。抽出剤の一例としては、n-オクチル(フェニル)-N,N’-ジイソブチルカルバモイルメチルフォスフィンオキシド-トリブチルリン酸混合物(CMPO-TBP混合物)、ジイソデシルリン酸、6,6’-ビス(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1,2,4-ベンゾトリアジン-3-イル)-2,2’-ビピリジン(BTBP)、N,N’-ジブチル-N,N’-ジメチルテトラデシルマロナミド(DMDBTDMA)がある。抽出剤としては、DGA系の材料(錯化剤)を用いることが好ましい。錯化剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(TODGA)、テトラ(2-エチルヘキシル)ジグリコールアミド(T2EHDGA)等が挙げられる。抽出剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
希釈液供給部26は、希釈液をMA抽出液生成部28に供給する。希釈液は、廃液の液体成分に不溶な有機相の材料(有機溶媒)である。有機溶媒は、使用する抽出剤に応じて適宜選定できる。有機溶媒は、再利用可能であること、安価であること、また、放射線劣化に耐性があることが望ましい。有機溶媒の具体例としては、例えばn-ドデカンが挙げられる。有機溶媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、希釈液は、MA逆抽出液生成部30でMAから分離した後、再利用が可能な液体とすることが好ましい。
【0038】
MA抽出液生成部28は、廃液と抽出剤と希釈液とが供給される。MA抽出液生成部28は、溶媒抽出法により、廃液中のMA及びLnと抽出剤とを接触すると、MA及びLnが抽出剤側に移行する。また、抽出剤は、希釈液側に移行する。MA抽出液生成部28は、抽出処理後、廃液に対して、希釈液を分離することで、MA及びLnを捕集した抽出剤であるMA抽出液を生成する。MA抽出液生成部28は、連続的に各材料が供給され、MA抽出液を生成する連続式でも、間欠的に各材料が供給され、MA抽出液を生成するバッチ式でもよい。本実施形態では、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、を設けたが、抽出剤供給部24と希釈液供給部26とを1つの装置として、抽出剤が溶解した液相の有機溶媒を供給してもよい。
【0039】
MA逆抽出液生成部30は、MA抽出液生成部28から、MA抽出液が供給され、逆抽出剤供給部32から逆抽出剤が供給される。
【0040】
逆抽出剤供給部32は、MA抽出液から液相にMA及びLnを移動させる物質を、逆抽出剤として供給する。逆抽出剤は、例えば、硝酸である。逆抽出剤は、液相の希釈液、例えば水で希釈されている。水熱処理促進剤供給部34は、水熱処理促進剤をMA逆抽出液生成部30に供給する。水熱処理促進剤は、中性から塩基性の液体であり、CNOHで構成された還元剤、例えば、アルデヒド化合物、アミン化合物等である。ここで、MA抽出剤と逆抽出剤と水熱処理促進剤との混合の準備は、本実施形態に限定されない。水熱処理促進剤供給部34は、MA抽出液に逆抽出剤を供給して、MA逆抽出液に対して、水熱処理促進剤を供給してもよい。
【0041】
MA逆抽出液生成部30は、MA抽出液と、逆抽出剤を含む希釈液と、を接触させ、有機相のMA抽出液に含まれるMAとLnを、逆抽出剤を含む希釈液側に移行させる。抽出装置12Aは、処理後の、MA抽出液中の有機溶媒(抽出剤及び希釈液)を、再利用するようにしてもよい。MA逆抽出液生成部30は、固化処理14Aでの処理時の成分比を所定の比とするために、液体の酸濃度、逆抽出剤の量を制御する。
【0042】
固化装置14Aは、MA逆抽出液にウランを供給し、混合した液体の液体成分を除去し、固化体を生成する。固化装置14Aは、固化処理部40Aとウラン供給部44Aとを含む。ウラン供給部44Aは、固化処理部40AのMA逆抽出液にウランを供給する。ウラン供給部44Aは、MA逆抽出液を構成する液相の溶媒に対して均一溶解可能なウラン含有物質を供給する。ウランは、4価や、6価の価数の状態で液相に溶解する。
【0043】
固化処理部40Aは、水熱処理部45Aと、熱処理部46Aと、排ガス回収部47Aと、酸化ガス供給部48Aと、排ガス回収部49Aと、を備える。水熱処理部45Aは、ウランが混合されたMA逆抽出液を例えば80℃から150℃に加熱し、水熱処理、酸化物転換処理を発生させ、液体成分を蒸発させる。液体成分には、水熱処理促進剤も含まれる。熱処理部46Aは、水熱処理部45Aと一体の装置で、液体を蒸発させた対象物をさらに加熱、例えば300℃に加熱して、残留物を熱分解させる。排ガス回収部47Aは、水熱処理部45Aと接続され、水熱処理部45Aで蒸発された排ガスを回収する。酸化ガス供給部48Aは、熱処理部46Aに、酸化性ガス、例えば、酸素や空気を供給する。排ガス供給部49Aは、熱処理部46Aから排出される排ガスを回収する。
【0044】
固化処理部40Aは、水熱処理部45Aでウランが混合されたMA逆抽出液を水熱合成して、MA、ウランを含む固化物が形成される。固化体と希釈液成分を固液分離することで、液体成分を除去する。また、水熱処理促進剤を添加することで、水熱反応を促進させることができる。固化処理部40Aは、液体除去し、酸化させた対象物を熱処理部46Aで酸化ガス供給部48Aから酸化性ガスを供給しながら加熱することで、抽出剤の成分、具体的には、C、N、O、H、成分を除去し、固化体を生成する。固化体は、U,MA,Lnを含有する。具体的には、固化物は、UO2及びM酸化物前駆体を含む。M酸化物前駆体は、MOOH、M(OH)3等である。Mは、MA及びLnの少なくとも一方である。水熱処理部45Aは、水熱処理の処理温度として、80℃以上150℃以下、処理時間として、0.5h以上20h以下が、例示される。熱処理部46は、熱分解処理が発生する温度以上の温度であり、例えば、300℃以上が例示される。
【0045】
安定化装置16Aは、固化体から炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、蛍石構造の固化体を生成する安定化処理を行う。安定化装置16Aは、安定化処理部50Aを有する。
【0046】
安定化処理部50Aは、還元部52Aと、還元ガス供給部54Aと、排ガス回収部56Aと、を備える。還元部52Aは、固化体を還元性雰囲気で加熱し、か焼、焼結する。還元部52Aは、蒸留部45A、熱処理部46Aと一体の装置である。還元ガス供給部54Aは、還元部52Aに還元性ガス、例えば水素を供給する。排ガス回収部56Aは、還元部52から排出される排ガスを回収する。
【0047】
安定化処理部50Aは、還元ガス供給部54から還元部52Aに還元ガスを供給しつつ、還元部52Aで固化体を加熱し、か焼、焼結することで、処理対象物を蛍石構造で固化させる。具体的には、安定化処理部50Aは、固化体を焼結することで、脱硝、熱分解処理を行い、固化体中の不純物成分(有機物成分,硝酸成分,水分)つまり、CHON成分を除去し、その後焼結させる。焼結温度は、例えば、600℃以上800℃以下である。
【0048】
安定化処理部50Aは、ウランが含有された固化体の不純物成分を除去し、その後、焼結することで、MAやLnを固溶した蛍石構造のウラン酸化物を得ることができる。安定化装置16Aは、保管時にガス化する可能性がある成分である炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、MAとLnを含有する二酸化ウランの蛍石構造とすることで、熱及び化学的安定性の高い固化体とする。
【0049】
保管装置18は、安定化処理した処理物を保管する。保管装置18は、保管部60を含む。保管部60は、安定化処理したMAを含む物質を固体の状態で保管する。保管部60は、例えば、キャスクである。また、保管部60を地中に設け、安定化処理した処理物を地中に埋設してもよい。
【0050】
本実施形態の処理装置10Aは、抽出装置12Aで、抽出及び逆抽出を行い、MAを液相に含有させた溶液を処理し、ウランを供給し、安定化装置16AでMA及びLnを固定化した二酸化ウランの蛍石構造とすることができる。
【0051】
処理装置10Aは、固化安定化装置13の熱処理を1つの装置で実行することが好ましい。これにより、装置構成を簡単にすることができる。また、処理装置10Aは、1つの装置で複数の実行できることで、放射性物質の搬送を減らすことができ、処理をより安全に行うことができる。
【0052】
また、逆抽出を行う場合も、蛍石構造とすることで、安定化処理した後の固体として、長期安定な結晶構造とすることができ、MAを安定して保管することができる。具体的には、蛍石構造に、3価のMA及びLnを固溶することができ、安定した蛍石構造をより安定した構造とすることができる。また、ウランを用いて、結晶構造を形成することで、MAを含有する固体を再処理して使用する場合、不要な成分、例えばSi、Na,Ca等が混入していない構造とすることができる。これにより、再処理時に使用しやすい状態で安定化した物質とすることができる。また、処理装置10Aは、処理装置10と同様の各種効果を得ることができる。
【0053】
処理装置10、10Aのウラン供給部44は、抽出装置で抽出された液体に含まれるマイナーアクチノイドとランタノイドとの総モル量の等モル量以上のウランを供給することが好ましい。これにより、保管時の固体物の蛍石構造より安定した構造とすることができる。
【0054】
上述したように、処理装置10、10Aは、MAを長期安定な結晶構造、好ましくは蛍石構造とすることで、MAを長期安定して保管することができる。処理装置10、10Aで生成するMAを含む物質は、安定化処理時の条件、保管時の条件を所定の条件とすることで、より安定な状態とすることができる。具体的には、MAとUとO(酸素)のモル比を所定のバランスとすることで、より安定した状態とすることができる。MAとUとO(酸素)のモル比は、安定化処理時は、MAに対して投入するUの量と、処理時の雰囲気を調整することで、所定の範囲とすることができる。
【0055】
次に、
図3から
図8を用いて、処理装置10での処理方法の好適な条件について説明する。
図3は、1523K(1250℃)の三元系状態図を示す説明図である。
図4は、1273K(1000℃)の三元系状態図を示す説明図である。
図5は、1073K(800℃)の三元系状態図を示す説明図である。
図6は、923K(650℃)の三元系状態図を示す説明図である。
図7は、773K(500℃)の三元系状態図を示す説明図である。
図8は、623K(350℃)の三元系状態図を示す説明図である。
【0056】
図3から
図8は、1気圧(1atm)、各温度での、酸素(O)とネオジム(Nd)とウラン(U)の三元素のモル比で形成される結晶構造を示す図である。ニオブがマイナーアクチノイドを模擬した模擬MAとなる。つまり、Ndと同じ量のMAで処理を行うことで、
図3から
図8に示す結晶構造が作製できる。
図3から
図8では、水素を微量成分含んだ不活性ガスの供給を制御して雰囲気条件を調整した。
【0057】
図3に示すように、温度が1523K、つまり1250℃の場合、領域104Aのモル比とすることで、蛍石構造を含む結晶を作製することができる。具体的には、領域104Aは、蛍石構造とU
3O
8や菱面体等が混在した物質が生成される。また、温度が1523K、つまり1250℃の場合、領域104Aとすることで、安定化した結晶構造とすることができる。具体的には、領域104Aは、蛍石構造に加え、ウラン単体、菱面体が混在した物質が生成される。
【0058】
図3に示すように、温度が1523K、つまり1250℃の場合、領域104Aの条件とすることが好ましい。一例として、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質のモル量Xが、0<X≦7であることが好ましい。また、ウランのモル量を1とした場合の酸素(O)のモル量Yが、1.9≦Y≦12であることが好ましい。
【0059】
図4に示すように、温度が1273K、つまり1000℃の場合、領域100Bのモル比とすることで、蛍石構造のみの物質を作製することができる。領域100Bは、含まれる結晶が全て蛍石構造となる。また、
図4に示すように、温度が1273K、つまり1000℃の場合、領域104Bとすることで、安定化した蛍石構造を含む物質を作製することができる。
【0060】
図4に示すように、温度が1273K、つまり1000℃の場合、領域104Bの領域の条件とすることが好ましく、領域100Bの条件とすることがより好ましい。一例として、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質のモル量Xが、0<X≦7であることが好ましく、0.08≦X≦0.5であることがより好ましい。また、ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、1.9≦Y≦12であることが好ましく,2.2≦Y≦3.2であることがより好ましい。
【0061】
図5に示すように、温度が1073K、つまり800℃の場合、領域100Cのモル比とすることで、蛍石構造のみの物質を作製することができ、領域104Cのモル比とすることで、安定化した蛍石構造を含む物質を作製することができる。
【0062】
図5に示すように、温度が1073K、つまり800℃の場合、領域104Cの領域の条件とすることが好ましく、領域100Cの条件とすることがより好ましい。一例として、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質のモル量Xが、0<X≦7であることが好ましく、0<X≦0.6であることがより好ましい。また,ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、1.9≦Y≦12であることが好ましく,2.0≦Y≦3.2であることがより好ましい。
【0063】
図6に示すように、温度が923K、つまり650℃の場合、領域100Dのモル比とすることで、蛍石構造のみの物質を作製することができ、領域104Dのモル比とすることで、安定化した蛍石構造を含む物質を作製することができる。
【0064】
図6に示すように、温度が923K、つまり650℃の場合、領域104Dの領域の条件とすることが好ましく、領域100Cの条件とすることがより好ましい。一例として、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質のモル量Xが、0<X≦6.3であることが好ましく、0.05≦X≦0.5であることがより好ましい。また,ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、1.9≦Y≦12であることが好ましく、2.2≦Y≦3.2であることがより好ましい。
【0065】
図7に示すように、温度が773K、つまり500℃の場合、領域100Eのモル比とすることで、蛍石構造のみの物質を作製することができ、領域104Eのモル比とすることで、安定化した蛍石構造を含む物質を作製することができる。
【0066】
図7に示すように、温度が773K、つまり500℃の場合、領域104Eの領域の条件とすることが好ましく、領域100Eの条件とすることがより好ましい。一例として、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質のモル量Xが、0<X≦6.3であることが好ましく、0.1≦X≦0.5であることがより好ましい。また,ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、1.9≦Y≦12であることが好ましく、2.3≦Y≦3.2であることがより好ましい。
【0067】
図8に示すように、温度が623K、つまり350℃の場合、領域100Fのモル比とすることで、蛍石構造のみの物質を作製することができ、領域104Fのモル比とすることで、安定化した蛍石構造を含む物質を作製することができる。
【0068】
図8に示すように、温度が623K、つまり350℃の場合、領域104Fの領域の条件とすることが好ましく、領域100Fの条件とすることがより好ましい。一例として、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質のモル量Xが、0<X≦6.3であることが好ましく、0.2≦X≦0.4であることがより好ましい。また,ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、1.9≦Y≦12であることが好ましく、2.3≦Y≦3であることがより好ましい。
【0069】
以上より、処理装置は、安定化処理部の処理時に、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質(MA)のモル量をXとした場合、0<X≦7であることが好ましく、0<X≦6.3あることがさらに好ましい。ウランと、MAとのモル比を上記範囲とすることで、領域104Aから領域104Fの安定化した蛍石構造を含む物質を作製することができ、結晶を安定化することができる。また、処理装置10、10Aは、領域104Fの条件を満足する結晶を作製することで、長期保管時に結晶の状態が変化することを抑制できる。また、安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質(MA)のモル量Xが、0<X≦7であり、かつ、ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、1.9≦Y≦12であることが好ましい。ウランと、MAと、酸素のモル比を上記範囲とすることで、領域104Aから領域104Fの安定化した蛍石構造を含む物質を作製することができ、結晶を安定化することができる。
【0070】
また、安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質(MA)のモル量をXとした場合、0<X≦6.3とし、安定化処理の温度を600℃以上1000℃以下であることがより好ましい。これにより、安定化処理時に安定した結晶を高い確率で形成することができる。安定化処理部は、安定化処理の温度を600℃以上1000℃以下である場合、0.08≦X≦0.5とすることがさらに好ましい。また、3元系の範囲が、500℃の状態の条件で蛍石構造のみが形成される条件を満足する割合とすることで、安定化処理の温度を600℃以上1000℃以下とした場合も長期保存が可能な結晶とすることができる。また、蛍石構造のみの物質とできることで、保管温度が500℃まで上昇した場合でも安定して、保管することができる。
【0071】
安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質(MA)のモル量Xが、0<X≦7であることが好ましく、0<X≦6.3であることがより好ましく、0.1≦X≦0.5であることがさらに好ましい。さらに、具体的には、安定化処理部は、
図7に示す773K(500℃)の三元系状態図の領域104Eを満足する条件とすることが好ましく、領域100Eを満足する条件とすることがより好ましい。これにより、長期保存時に、製造した物質の温度が500℃まで上昇した場合も結晶構造が変化することを抑制でき、安定して長期保管することができる。安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の放射性物質(MA)のモル量Xが、0.1≦X≦0.5であり、かつ、ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、2.3≦Y≦3.2であることが好ましい。これにより、好適に蛍石構造のみを作製することができる。
【0072】
以上、本発明について、実施形態を示して説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0073】
本開示は、以下の発明を開示している。なお、下記に限定されない。
(1)マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を含む放射性物質を抽出した液体にウランを供給するウラン供給部と、
ウランが供給され、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を加熱して一部の液体を蒸発させた後、さらに加熱して固化した固化体を作製する固化処理部と、
生成した前記固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化処理部と、を含み、
前記安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量Xが、0<X≦7である高レベル放射性物質処理システム。
【0074】
(2)前記安定化処理部は、ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、1.9≦Y≦12である(1)に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0075】
(3)前記安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量Xが、0<X≦6.3であり、安定化処理の温度が600℃以上1000℃以下である(1)または(2)に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0076】
(4)前記安定化処理部は、固化体の、ウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量をXが、0.1≦X≦0.5である(1)から(3)のいずれかに記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0077】
(5)前記安定化処理部は、ウランのモル量を1とした場合の酸素のモル量Yが、2.3≦Y≦3.2である(4)に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0078】
(6)前記安定化処理部は、安定化処理時に還元ガスを供給する還元ガス供給部を備え、還元ガスの供給量で酸素量を制御する(1)から(5)のいずれかに記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0079】
(7)有機溶媒の液体を用いて、高レベル放射性物質を含有する液体から前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを含む有機溶媒を抽出し、希釈液を供給して希釈した液体として生成する抽出装置を有し、前記ウラン供給部は、前記有機溶媒に溶解するウランの錯体を、前記液体に添加する(1)から(6)のいずれかに記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0080】
(8)前記希釈液は、沸点が30℃以上100℃以下である(7)に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0081】
(9)前記希釈液は、引火点を有していないまたは引火点が抽出剤の分解温度以上である(7)または(8)に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0082】
(10)有機溶媒の液体を用いて、高レベル放射性物質を含有する液体から前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した後、抽出した前記有機溶媒と、液相の逆抽出剤を含んだ希釈液とを混合し、液相の逆抽出剤を含んだ希釈液に前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを移動させた液体を生成する抽出装置を有し、
前記ウラン供給部は、液相に溶解するウランイオンを、前記液体に添加する(1)から(6)のいずれかに記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0083】
(11)前記固化装置は、加熱処理によって固化体を作製する(10)に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【0084】
(12)マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を含む放射性物質を抽出した液体にウランのモル量を1とした場合の前記放射性物質のモル量をXが、0<X≦7となる割合でウランを供給するステップと、
ウランが供給され、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を加熱して一部の液体を蒸発させた後、さらに加熱して固化した固化体を作製するステップと、
生成した前記固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化処理を1つの装置で実行するステップと、を含む高レベル放射性物質処理方法。
【符号の説明】
【0085】
10、10A 処理システム(高レベル放射性物質処理システム)
12、12A 抽出装置
14、14A 固化装置
16、16A 安定化装置
18 保管装置
22 廃液供給部
24 抽出剤供給部
26 希釈液供給部
28 MA抽出液生成部
30 MA逆抽出液生成部
34 水熱処理促進剤供給部
40、40A 固化処理部
44、44A ウラン供給部
45、45A 蒸留部
46、46A 熱処理部
47、47A 希釈液回収部
48、48A 酸化ガス供給部
49、49A 排ガス回収部
50、50A 安定化処理部
52、52A 還元部
54、54A 還元ガス供給部
56、56A 排ガス回収部
60 保管部