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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049155
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車輪駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240402BHJP
   B60B 35/18 20060101ALI20240402BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20240402BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F16J15/10 K
B60B35/18 C
F16C33/78 Z
F16C19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155448
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊秋
【テーマコード(参考)】
3J040
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J040BA03
3J040BA05
3J040EA01
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA42
3J040FA01
3J040FA05
3J216AA02
3J216AA03
3J216AA14
3J216AB03
3J216BA01
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB06
3J216CB07
3J216CB18
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC33
3J216CC70
3J216DA01
3J216DA11
3J216EA09
3J701AA02
3J701AA16
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA73
3J701EA03
3J701FA31
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】水分や塵芥などの異物が、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部に、該係合部の径方向内側から侵入することを防止できる構造を実現する。
【解決手段】シール部材5は、ハブ7と結合部材4との間部分のうち、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部よりも軸方向外側に位置する部分に配置され、かつ、径方向の締め代を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を含む外輪と、外周面に複列の内輪軌道を含み、中心部に軸方向に貫通する中心孔を含み、かつ、軸方向内側の端面にハブ側フェイススプラインを含むハブと、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に複数個ずつ転動自在に配置された転動体とを有するハブユニット軸受と、
軸方向外側面に、前記ハブ側フェイススプラインと係合するジョイント側フェイススプラインを含むジョイント外輪を有する等速ジョイントと、
前記中心孔に挿通される軸部を有し、前記ハブと前記ジョイント外輪とを結合する結合部材と、
前記ハブと前記結合部材との間部分のうち、前記ハブ側フェイススプラインと前記ジョイント側フェイススプラインとの係合部よりも軸方向外側に位置する部分に配置され、かつ、径方向の締め代を有するシール部材と、
を備える、車輪駆動ユニット。
【請求項2】
前記シール部材が、前記結合部材の外周面に摺接するリップ部を有する、
請求項1に記載の車輪駆動ユニット。
【請求項3】
前記結合部材が、外周面に円筒面部を含む頭部と、該頭部の軸方向内側面から軸方向内側に向けて突出する前記軸部とを有しており、
前記リップ部が、前記円筒面部に摺接している、
請求項2に記載の車輪駆動ユニット。
【請求項4】
前記結合部材が、外周面に円筒面部を含み、前記軸部の軸方向外側の端部に螺合されたナットを有しており、
前記リップ部が、前記円筒面部に摺接している、
請求項2に記載の車輪駆動ユニット。
【請求項5】
前記シール部材が、前記軸部の外周面に摺接する2つの前記リップ部と、前記中心孔の内周面に摺接する2つの外径側リップ部とを含むXリングを有する、
請求項2に記載の車輪駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の駆動輪を懸架装置に対して回転自在に支持し、かつ、該駆動輪を回転駆動するために利用される車輪駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
独立懸架式のサスペンションに対して駆動輪を支持し、かつ、該駆動輪を回転駆動するために、車輪駆動ユニットが使用されている。車輪駆動ユニットは、ハブユニット軸受と等速ジョイント(CVJ)とを結合部材により組み合わせてなる。
【0003】
ハブユニット軸受は、外輪と、ハブと、複数個の転動体とを備え、駆動輪を懸架装置に対して回転自在に支持する。
【0004】
外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有し、懸架装置に対して支持固定される。
【0005】
ハブは、外周面に複列の内輪軌道を有し、中心部に軸方向に貫通する中心孔を有し、かつ、軸方向内側の端面にハブ側フェイススプラインを有する。ハブには、車輪が結合固定される。
【0006】
複数個の転動体は、複列の外輪軌道と複列の内輪軌道との間に転動自在に配置される。
【0007】
等速ジョイントは、ジョイント外輪と、ジョイント内輪と、複数個のボールとを備え、駆動軸の回転トルクをハブに伝達する。
【0008】
ジョイント外輪は、軸方向外側面に、ハブ側フェイススプラインと係合するジョイント側フェイススプラインを有し、かつ、内周面の円周方向複数箇所に、軸方向に伸長する外径側係合溝を有する。
【0009】
ジョイント内輪は、外周面の円周方向複数箇所に、軸方向に伸長する内径側係合溝を有し、駆動軸に外嵌される。
【0010】
複数個のボールは、外径側係合溝と内径側係合溝との間に配置される。
【0011】
結合部材は、ハブとジョイント外輪とを結合する。たとえば、結合部材は、ボルトとナットとを備える。
【0012】
ボルトは、ジョイント外輪の側壁部に備えられた貫通孔と、ハブの中心孔とに軸方向内側から挿通される。
【0013】
ナットは、ボルトの先端部に螺合される。
【0014】
すなわち、ボルトの頭部とナットとにより、ハブとジョイント外輪の側壁部とを軸方向に挟持することで、ハブとジョイント外輪とを互いに結合固定する。
【0015】
駆動軸の回転に伴い、ジョイント内輪が回転すると、ジョイント内輪の回転は、複数個のボールを介して、ジョイント外輪に伝達される。そして、ジョイント外輪の回転が、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部(噛み合い部)を通じて、ハブに伝達されることにより、ハブに支持固定された駆動輪が回転駆動される。
【0016】
ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部には、該係合部を潤滑するためのグリースが塗布されている。このようなグリースが、遠心力により外部に漏洩すると、係合部を潤滑するグリースが不足して潤滑不良を生じ、摩耗や発錆に伴う肉痩せが発生する可能性がある。また、錆は、外部空間から、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部に、水分や塵芥などの異物が侵入することによっても生じ得る。
【0017】
ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部で肉痩せが発生すると、ハブユニット軸受の予圧が低下して、転がり疲れ寿命や耐久性が低下したり、異音が発生したりする可能性がある。また、結合部材を構成するボルトとナットとの締め付けが緩んだり、ボルトおよび/またはナットが破損したりする可能性がある。
【0018】
特開2009-79675号公報には、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部(両サイドフェーススプライン)の径方向外側を覆う筒状のシール部材を備える車輪駆動ユニット(車輪支持装置)が記載されている。特開2009-79675号公報に記載の従来の車輪駆動ユニットによれば、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部の径方向外側にグリースが漏洩したり、該係合部の径方向外側から異物が浸入したりすることを、シール部材により防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009-79675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特開2009-79675号公報に記載の従来の車輪駆動ユニットは、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部での肉痩せの発生を確実に防止する面からは、さらなる改良の余地がある。
【0021】
すなわち、従来の車輪駆動ユニットでは、結合部材を構成するナットと、ハブとの間部分が密封されていない。このため、当該部分から侵入した異物が、ボルトの外周面と、ハブの中心孔の内周面との間の隙間を通じて、ハブユニット軸受の軸方向内側まで移動し、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部の径方向内側から該係合部に侵入してしまう可能性がある。この結果、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部に錆が生じ、肉痩せが発生する可能性がある。
【0022】
本発明は、水分や塵芥などの異物が、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部に、該係合部の径方向内側から侵入することを防止できる、車輪駆動ユニットの構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一態様の車輪駆動ユニットは、ハブユニット軸受と、等速ジョイントと、結合部材と、シール部材とを備える。
【0024】
前記ハブユニット軸受は、外輪と、ハブと、複数個の転動体とを備える。
【0025】
前記外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有する。
【0026】
前記ハブは、外周面に複列の内輪軌道を有し、中心部に軸方向に貫通する中心孔を有し、かつ、軸方向内側の端面にハブ側フェイススプラインを有する。
【0027】
前記複数個の転動体は、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に複数個ずつ転動自在に配置される。
【0028】
前記等速ジョイントは、ジョイント外輪を有する。
【0029】
前記ジョイント外輪は、軸方向外側面に、前記ハブ側フェイススプラインと係合するジョイント側フェイススプラインを有する。
【0030】
前記結合部材は、前記中心孔に挿通される軸部を有し、前記ハブと前記ジョイント外輪とを結合する。
【0031】
前記シール部材は、前記ハブと前記結合部材との間部分のうち、前記ハブ側フェイススプラインと前記ジョイント側フェイススプラインとの係合部よりも軸方向外側に位置する部分に配置され、かつ、径方向の締め代を有する。
【0032】
本発明の一態様の車輪駆動ユニットでは、前記シール部材は、前記結合部材の外周面に摺接するリップ部を有することができる。
【0033】
本発明の一態様の車輪駆動ユニットでは、前記結合部材は、外周面に円筒面部を含む頭部と、該頭部の軸方向内側面から軸方向内側に向けて突出する前記軸部とを有することができ、かつ、前記リップ部を、前記円筒面部に摺接させることができる。
この場合、前記頭部は、前記円周面部の軸方向内側に隣接する部分に、軸方向外側に向かうほど外径が大きくなる傾斜面部を有することができる。
【0034】
本発明の一態様の車輪駆動ユニットでは、前記結合部材は、外周面に円筒面部を有し、前記軸部の軸方向外側の端部に螺合されたナットを備えることができ、かつ、前記リップ部を、前記円筒面部に摺接させることができる。
この場合、前記頭部は、前記円周面部の軸方向内側に隣接する部分に、軸方向外側に向かうほど外径が大きくなる傾斜面部を有することができる。
【0035】
本発明の一態様の車輪駆動ユニットでは、前記シール部材は、前記軸部の外周面に摺接する2つの前記リップ部と、前記中心孔の内周面に摺接する2つの外径側リップ部とを有するXリングを備えることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一態様の車輪駆動ユニットによれば、水分や塵芥などの異物が、ジョイント側フェイススプラインとハブ側フェイススプラインとの係合部に、該係合部の径方向内側から侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例の車輪駆動ユニットを示す、断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の第2例の車輪駆動ユニットを示す、断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の第3例の車輪駆動ユニットを示す、断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の第4例の車輪駆動ユニットを示す、断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態の第5例の車輪駆動ユニットを示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第1例]
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の車輪駆動ユニット1は、ハブユニット軸受2と、等速ジョイント3と、結合部材4と、シール部材5とを備える。
【0039】
以下の説明において、車輪駆動ユニット1に関して、軸方向、径方向、および円周方向とは、特に断らない限り、ハブユニット軸受2の外輪6の軸方向、径方向、円周方向をいう。外輪6の軸方向、径方向、および円周方向は、ハブユニット軸受2のハブ7の軸方向、径方向、および円周方向と一致し、かつ、等速ジョイント3の軸方向、径方向、および円周方向と一致する。また、軸方向外側は、車輪駆動ユニット1を自動車に組み付けた状態での車体の幅方向外側をいい、軸方向内側は、車輪駆動ユニット1を自動車に組み付けた状態での車体の幅方向内側をいう。
【0040】
ハブユニット軸受2は、外輪6と、ハブ7と、複数個の転動体8とを備え、駆動輪を懸架装置に対して回転自在に支持する。
【0041】
外輪6は、中炭素鋼などの硬質金属により構成されている。外輪6は、内周面に複列の外輪軌道9を有する。
【0042】
さらに本例では、外輪6は、軸方向中間部に、径方向外側に向けて突出した静止フランジ10を有する。静止フランジ10は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通するねじ孔11を有する。外輪6は、懸架装置のナックルに備えられた通孔を挿通した支持ボルトを、静止フランジ10のねじ孔11に軸方向内側から螺合することで、懸架装置に対し支持固定され、車輪が回転する際にも回転しない。
【0043】
ハブ7は、外輪6の径方向内側に外輪6と同軸に配置される。ハブ7は、外周面のうちで複列の外輪軌道9に対向する部分に、複列の内輪軌道12を有し、中心部に、軸方向に貫通する中心孔13を有し、かつ、軸方向内側の端面に、円周方向に関する凹凸部であるハブ側フェイススプライン14を有する。本例では、中心孔13は、軸方向に関して内径が変化しない円筒孔により構成されている。
【0044】
さらに本例では、ハブ7は、回転フランジ15と、パイロット部16と、外側凹部17と、内側凹部18とを有する。
【0045】
回転フランジ15は、ハブ7のうち、外輪6の軸方向外側の端部より軸方向外側に位置する部分に備えられ、かつ、径方向外側に向けて突出する。回転フランジ15は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔19を有する。
【0046】
パイロット部16は、ハブ7の軸方向外側の端部に備えられ、円筒形状を有する。
【0047】
外側凹部17は、ハブ7の軸方向外側の端面の中央部に開口する。外側凹部17は、円形の開口形状を有する。
【0048】
本例では、外側凹部17の内面は、ハブ7の中心軸に直交し、かつ、軸方向外側を向いた平坦面状の底面20と、内周面21と、底面20と内周面21とを接続する断面円弧形の接続面部22とを有する。内周面21は、軸方向外側に配置され、軸方向内側に向かうほど内径が小さくなる方向に傾斜した円すい面部23と、軸方向内側に配置され、軸方向に関して内径が変化しない円筒面部24とを、軸方向外側を向いた段差面25により接続することで構成されている。
【0049】
内側凹部18は、ハブ7の軸方向内側の端面の中央部に開口する。内側凹部18は、円形の開口形状を有する。
【0050】
したがって、中心孔13は、外側凹部17の底面20と、内側凹部18の底面とを貫通する。
【0051】
車輪を構成するホイール、および、ディスクやドラムなどの制動用回転体は、それぞれの中心部を軸方向に貫通する中心孔にパイロット部16を挿通し、かつ、それぞれの径方向中間部の円周方向複数箇所を軸方向に貫通する通孔に、圧入孔である取付孔19に圧入されたスタッド(図示省略)を挿通し、さらにスタッドの先端部にハブナットを螺合することにより、回転フランジ15に結合固定される。あるいは、ホイールおよび制動用回転体は、それぞれの中心部に備えられた中心孔にパイロット部16を挿通し、かつ、それぞれの径方向中間部の円周方向複数箇所に備えられた通孔を挿通したハブボルトを、ねじ孔である取付孔19に軸方向外側から螺合することにより、回転フランジ15に結合固定される。
【0052】
本例のハブ7は、内輪26と、ハブ輪27とを組み合わせてなる。
【0053】
内輪26は、軸受鋼などの硬質金属により構成されている。内輪26は、外周面に、軸方向内側の内輪軌道12を有する。
【0054】
ハブ輪27は、中炭素鋼などの硬質金属により構成されている。ハブ輪27は、軸方向外側の内輪軌道12と、中心孔13と、ハブ側フェイススプライン14と、回転フランジ15と、パイロット部16と、外側凹部17と、内側凹部18とを有する。
【0055】
さらに本例では、ハブ輪27は、軸方向外側の内輪軌道12よりも軸方向内側に位置する部分に、軸方向外側に隣接する部分よりも外径が小さく、内輪26が外嵌される嵌合筒部28を有する。また、ハブ輪27は、嵌合筒部28の軸方向外側の端部外周面から径方向外側に向けて折れ曲がり、軸方向内側を向いた段差面29を有し、かつ、嵌合筒部28の軸方向内側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がったかしめ部30を有する。かしめ部30の軸方向内側の端面には、ハブ側フェイススプライン14が備えられている。
【0056】
内輪26は、ハブ輪27の嵌合筒部28に外嵌され、かつ、ハブ輪27の段差面29とかしめ部30との間で軸方向両側から挟持されている。これにより、内輪26とハブ輪27とが結合されることによりハブ7が構成され、かつ、転動体8に適正な予圧が付与されている。
【0057】
それぞれの転動体8は、複列の外輪軌道9と複列の内輪軌道12との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、転動自在に配置されている。本例では、それぞれの転動体8は、玉により構成されている。
【0058】
等速ジョイント3は、ジョイント外輪31を有する。
【0059】
ジョイント外輪31は、軸方向外側面に、ハブ7のハブ側フェイススプライン14と係合するジョイント側フェイススプライン32を有する。
【0060】
本例では、ジョイント外輪31は、略椀形(略ボウル形)のマウス部33と、円筒部34とを有する。
【0061】
マウス部33は、略円筒状の周壁部35と、該周壁部35の軸方向外側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった略中空円形状の側壁部36とを有する。
【0062】
周壁部35の内周面は、部分球面状の凹面により構成されている。周壁部35は、内周面の円周方向複数箇所に、軸方向に伸長する外径側係合溝37を有する。
【0063】
側壁部36は、軸方向外側面の径方向中間部に、円周方向に関する凹凸部であるジョイント側フェイススプライン32を有する。
【0064】
円筒部34は、側壁部36の径方向内側の端部から軸方向外側に向けて折れ曲がっている。円筒部34は、内周面に雌ねじ部38を有する。
【0065】
さらに本例では、等速ジョイント3は、ジョイント内輪39と、複数個のボール40とを有する。
【0066】
ジョイント内輪39の外周面は、部分球面状の凸面により構成されている。ジョイント内輪39は、外周面の円周方向複数箇所に、軸方向に伸長する内径側係合溝41を有する。
【0067】
また、ジョイント内輪39は、中心部に、軸方向に貫通するスプライン孔42を有する。スプライン孔42には、図示しない駆動軸の先端部に備えられたスプライン軸部がスプライン係合される。
【0068】
それぞれのボール40は、外径側係合溝37と内径側係合溝41との間に1個ずつ、該外径側係合溝37および内径側係合溝41に沿って転動可能に配置されている。
【0069】
結合部材4は、ハブ7の中心孔13に挿通される軸部43を有し、ハブ7とジョイント外輪31を結合する。本例の結合部材4は、フランジ付ボルト44により構成されている。
【0070】
フランジ付ボルト44は、頭部45と、該頭部45の軸方向内側面の中心部から軸方向内側に向けて突出する軸部43とを有する。
【0071】
頭部45は、非円形部46と、フランジ部47とを有する。
【0072】
非円形部46は、軸方向から見て非円形の外周面を有する。本例では、非円形部46は、六角柱形状を有する。なお、非円形部46は、軸部43のねじ軸部49を、ジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合する際に、レンチなどの工具を係合するための部分である。
【0073】
フランジ部47は、非円形部46の軸方向内側に隣接して配置されている。フランジ部47は、外周面のうちの軸方向外側部分に、非円形部46の外接円直径よりも大きい外径を有する円筒面部62を有し、かつ、外周面のうちの軸方向内側部分に、軸方向外側に向かうほど外径が大きくなる円すい台面状の傾斜面部63を有する。
【0074】
軸部43は、軸方向外側に配置され、かつ、軸方向に関して外径が変化しない円柱部48と、軸方向内側に配置され、かつ、外周面に螺旋状の雄ねじ溝を有するねじ軸部49とを有する。円柱部48は、ハブ7の中心孔13に挿通され、かつ、ねじ軸部49は、ジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合される。
【0075】
ハブユニット軸受2のハブ7と、等速ジョイント3のジョイント外輪31とは、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32とを係合させ、かつ、中心孔13に軸方向外側から挿入したフランジ付ボルト44のねじ軸部49を雌ねじ部38に螺合し、フランジ付ボルト44の頭部45とジョイント外輪31との間で、ハブ7を軸方向両側から挟持することにより結合固定されている。
【0076】
シール部材5は、ハブ7と結合部材4との間部分のうち、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部よりも軸方向外側に位置する部分に配置され、かつ、径方向の締め代を有する。すなわち、シール部材5は、ハブ7と結合部材4との間で径方向に弾性的に挟持されている。
【0077】
なお、本例では、シール部材5は、軸方向の締め代を有していない。すなわち、シール部材5は、ハブ7と結合部材4との間で軸方向には弾性的に挟持されていない。
【0078】
本例のシール部材5は、結合部材4の外周面に摺接するリップ部50を有する。
【0079】
具体的には、本例のシール部材5は、芯金51と、該芯金51により補強されたシール材52とを備える。すなわち、本例では、シール部材5は、シールリングにより構成されている。
【0080】
芯金51は、鋼板などの十分な強度および剛性を有する金属板を曲げ成形することにより、断面略L字形で全体を円環状に造られたもので、円筒部53と、該円筒部53の軸方向内側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった折れ曲がり部54とを有する。
【0081】
円筒部53は、外側凹部17の内周面21に備えられた円筒面部24に締り嵌めで内嵌固定されている。
【0082】
シール材52は、ゴムのごときエラストマーなどの弾性材製で、芯金51の表面に全周にわたり加硫接着により支持固定されている。シール材52は、基部55と、リップ部50とを有する。
【0083】
基部55は、芯金51の円筒部53の内周面と、折れ曲がり部54の軸方向外側面および径方向内側の端部とを覆うように、当該部分に加硫接着より固定されている。
【0084】
リップ部50は、基部55のうち、芯金51の折れ曲がり部54の径方向内側の端部を覆う部分から径方向内側に向かうほど軸方向外側に向かう方向に向けて延出している。リップ部50の先端部は、フランジ部47の円筒面部62に全周にわたり弾性的に接触している。
【0085】
さらに本例の車輪駆動ユニット1は、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部の径方向外側を覆う筒状の外径側シール部材56を備える。外径側シール部材56は、外径側芯金57と、外径側シール材58とを有する。
【0086】
外径側芯金57は、鋼板などの十分な強度、剛性、および耐食性を有する金属板を曲げ成形することにより、断面略L字形で全体を円環状に造られたもので、内輪26の軸方向内側の端部に外嵌固定されている。
【0087】
外径側シール材58は、外径側芯金57の先端部(径方向内側の端部)を覆うように、当該部分に加硫接着により固定されており、先端部(径方向内側の端部)を、ジョイント外輪31の側壁部36に備えられた、径方向外側を向いた段部61に、全周にわたり弾性的に接触させている。
【0088】
本例の車輪駆動ユニット1は、ハブ7と結合部材4との間部分のうち、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部よりも軸方向外側に位置する部分に配置され、かつ、径方向の締め代を有するシール部材5を有する。具体的には、シール部材5を構成する芯金51が、ハブ7の外側凹部17の内周面21に備えられた円筒面部24に締り嵌めで内嵌固定され、かつ、シール材52のリップ部50の先端部が、結合部材4(フランジ付ボルト44)のフランジ部47の外周面に備えられた円筒面部62に全周にわたって弾性的に接触している。したがって、水分や塵芥などの異物が、ハブ7の中心孔13内に、該中心孔13の軸方向外側の開口から侵入することを防止できる。このため、異物が、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部に、該係合部の径方向内側から侵入することを防止できる。
【0089】
さらに本例の車輪駆動ユニット1は、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部の径方向外側を覆う外径側シール部材56を備える。したがって、異物が、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部に、該係合部の径方向外側から侵入することを防止できるとともに、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部に塗布したグリースが径方向外側に漏洩することを防止できる。
【0090】
要するに、本例の車輪駆動ユニット1によれば、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部に異物が侵入することを十分に防止することができる。このため、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部での錆の発生を良好に防止することができ、該係合部での肉痩せの発生を確実に防止することができる。
【0091】
シール部材5は、円筒面部24に円筒部53を締り嵌めで内嵌し、その後、結合部材4、すなわちフランジ付ボルト44の軸部43をハブ7の中心孔13に軸方向外側から挿入して、ねじ軸部49を雌ねじ部38に螺合してハブ7とジョイント外輪31とを結合固定するとともに、リップ部50をフランジ部47の円筒面部62に弾性的に接触させることで、ハブ7とフランジ付ボルト44との間に組み付けられる。
【0092】
また、本例の車輪駆動ユニット1では、ハブ7と結合部材4との間に備えられたシール部材5は、径方向の締め代を有するのに対し、軸方向の締め代は有さない。このため、フランジ付ボルト44のねじ軸部49をジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合する際の締め付けトルクを精度良く管理することができ、かつ、雌ねじ部38に対するねじ軸部49の締め付け作業を円滑に行うことができる。この理由について、次に説明する。
【0093】
たとえば、ハブ側フェイススプラインとジョイント側フェイススプラインとの係合部に径方向内側から異物が侵入するのを防止すべく、ハブとボルトとの間部分のうちで前記係合部よりも軸方向外側部分をシールすることだけを考えるのであれば、ハブの外側凹部の底面と、ボルトの頭部との間で、Oリングやシールワッシャなどのシール部材を軸方向に挟持することもできる。すなわち、外側凹部の底面と頭部との間に、軸方向の締め代を有するシール部材を備えることもできる。
【0094】
しかしながら、この場合、シール部材を、外側凹部の底面と頭部との間で弾性的に押し潰す必要があり、ジョイント外輪の雌ねじ部にボルトを螺合する際に、シール部材の存在に基づく抵抗が生じる。このため、ジョイント外輪の雌ねじ部にボルトを螺合する際の締め付けトルクの管理を精度良く行うことが難しくなる。
【0095】
本例では、ハブ7と結合部材4との間に備えられたシール部材5は、径方向の締め代は有するが、軸方向の締め代は有していない。このため、ねじ軸部49を雌ねじ部38に螺合する際の、シール部材5の存在に基づく回転抵抗、すなわちリップ部50の先端部とフランジ部47の外周面との摺接部に作用する回転抵抗(シールトルク)を小さく抑えることができる。したがって、ねじ軸部49を雌ねじ部38に螺合する際の締め付けトルクを精度良く管理することができ、かつ、雌ねじ部38に対するねじ軸部49の締め付け作業を円滑に行うことができる。
【0096】
また、本例では、フランジ付ボルト44のフランジ部47の外周面のうち、円筒面部62の軸方向内側に隣接する部分に、軸方向外側に向かうほど外径が大きくなる円すい台面状の傾斜面部63が備えられている。このため、車輪駆動ユニット1の組立作業の作業性を良好に確保することができる。
【0097】
車輪駆動ユニット1を組み立てる際には、たとえば、まず、シール部材5を構成する芯金51の円筒部53を、ハブ7の外側凹部17の内周面21に備えられた円筒面部24に締り嵌めで内嵌固定する。また、ハブ7のハブ側フェイススプライン14と、ジョイント外輪31のジョイント側フェイススプライン32とを係合させる。すなわち、ハブ側フェイススプライン14の凸部と、ジョイント側フェイススプライン32の凸部とを、円周方向に交互に配置する。
【0098】
次いで、フランジ付ボルト44の軸部43を、ハブ7の中心孔13に軸方向外側から挿入し、軸部43の軸方向内側部分に備えられたねじ軸部49を、ジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合することで、ハブ7とジョイント外輪31とを結合固定する。このとき、傾斜面部63がリップ部50の径方向内側に挿入されることに伴って、該リップ部50の内径が、リップ部50の先端部が軸方向内側に向けて折り曲げられるように変形させられることなく、連続的かつ弾性的に拡径する。このため、ハブ7とジョイント外輪31とを、結合部材4(フランジ付ボルト44)により結合固定するよりも前に、ハブ7の外側凹部17の内側にシール部材5を装着した場合であっても、フランジ付ボルト44の締め付けトルクが、シール部材5の存在に基づいて急激に変化することを防止できる。それゆえに、フランジ付ボルト44の締め付けトルクを精度良く管理することができ、かつ、雌ねじ部38に対するねじ軸部49の締め付け作業を円滑に行うことができる。したがって、シール部材5を、ハブ7の外側凹部17の内側に装着した後で、ハブ7とジョイント外輪31とを、結合部材4により結合固定する手順を採用することができて、車輪駆動ユニット1の組立作業の作業性を良好に確保することができる。
【0099】
なお、車輪駆動ユニット1を組み立てるには、ハブ7とジョイント外輪31とを、結合部材4(フランジ付ボルト44)により結合固定した後、シール部材5を、円筒面部24とフランジ部47の外周面との間に挿入して、円筒部53を円筒面部24に締り嵌めで内嵌するとともに、リップ部50の先端部をフランジ部47の外周面に弾性的に接触させる手順を採用することも考えられる。しかしながら、この場合、円筒面部24に対する円筒部53の軸合わせと、フランジ部47の外周面に対するリップ部50の先端部の軸合わせとを同時に行う必要があり、車輪駆動ユニット1の組立作業の作業性が低下する可能性がある。
【0100】
ただし、円筒面部24に対する円筒部53の軸合わせと、フランジ部47の外周面に対するリップ部50の先端部の軸合わせとを同時に行うことができれば、ハブ7とジョイント外輪31とを、結合部材4(フランジ付ボルト44)により結合固定した後、シール部材5を、円筒面部24とフランジ部47の外周面との間に挿入する手順を採用することもできる。なお、この場合、フランジ部の外周面のうち、リップ部の先端部が摺接する円筒面部の軸方向外側に隣接する部分に、軸方向外側に向かうほど外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面部を設けることが好ましい。
【0101】
なお、本例では、結合部材4であるフランジ付ボルト44を、ジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合し、フランジ付ボルト44の頭部45とジョイント外輪31との間で、ハブ7を軸方向両側から挟持することで、ハブ7とジョイント外輪31とを結合固定している。
【0102】
ただし、本発明の一態様の車輪駆動ユニットを実施する場合、後述する第3例に示すように、ジョイント外輪と一体に備えられた軸部をハブの中心孔に軸方向内側から挿通し、該軸部の軸方向外側の端部に備えられたねじ軸部にナットを螺合し、該ナットとジョイント外輪との間で、ハブを軸方向両側から挟持することで、ハブとジョイント外輪とを結合固定することもできる。この場合、結合部材は、ジョイント外輪と一体に備えられた軸部と、ナットとから構成される。
【0103】
あるいは、特開2009-79675号公報に記載の構造のように、ボルトの軸部を、ジョイント外輪の側壁部に備えられた貫通孔とハブの中心孔とに軸方向内側から挿通し、前記軸部の先端部に備えられたねじ軸部にナットを螺合し、ボルトの頭部と該ナットとの間で、ハブおよびジョイント外輪の側壁部を軸方向両側から挟持することで、ハブとジョイント外輪とを結合固定することもできる。この場合、結合部材は、ボルトとナットとから構成される。また、ナットの外形形状を、本例のフランジ付ボルト44の頭部45の外形形状と同じとし、かつ、該ナットの外周面とハブ7の内周面との間に、シール部材5を配置することができる。
【0104】
本例では、ハブユニット軸受2は、軸方向内側列の転動体8のピッチ円直径と、軸方向外側列の転動体8のピッチ円直径とが等しい、等径PCD型の構造を備える。ただし、本発明の一態様の車輪駆動ユニットを実施する場合、ハブユニット軸受は、軸方向内側列の転動体のピッチ円直径が、軸方向外側列の転動体のピッチ円直径よりも大きいか、または、小さい、異径PCD型の構造を備えることもできる。あるいは、本発明の一態様の車輪駆動ユニットを実施する場合、ハブユニット軸受を構成する転動体として、円すいころを使用することもできる。
【0105】
[第2例]
図2は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例では、結合部材4aが、穴付ボルト64により構成されている。穴付ボルト64は、頭部65と、該頭部65の軸方向内側面の中心部から軸方向内側に向けて突出する軸部43とを有する。
【0106】
頭部65は、外周面のうちの軸方向外側部分に円筒面部66を備え、かつ、外周面のうちの軸方向内側部分に、軸方向外側に向かうほど外径が大きくなる円すい台面状の傾斜面部67を備える。
【0107】
また、頭部65は、軸方向外側面の中央部に開口し、かつ、軸方向から見て非円形の開口形状を有する有底の凹孔68を備える。本例では、凹孔68は、軸方向から見て六角形の開口形状を有する。
【0108】
軸部43は、軸方向外側に配置され、かつ、軸方向に関して外径が変化しない円柱部48と、軸方向内側に配置され、かつ、外周面に螺旋状の雄ねじ溝を有するねじ軸部49とを有する。円柱部48は、ハブ7の中心孔13に挿通され、かつ、ねじ軸部49は、ジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合される。
【0109】
本例では、シール部材5のリップ部50の先端部は、頭部65の円筒面部66に全周にわたり弾性的に接触している。
【0110】
本例でも、第1例の車輪駆動ユニット1と同様に、異物が、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部に、該係合部の径方向内側から侵入するのを防止することができる。
【0111】
また、ハブ7の外側凹部17の内側にシール部材5を装着した後、ハブ7とジョイント外輪31とを、穴付ボルト64により結合固定する際に、頭部65の傾斜面部67がリップ部50の径方向内側に挿入されることに伴って、該リップ部50の内径を、リップ部50の先端部が軸方向内側に向けて折り曲げられるように変形させられることなく、連続的かつ弾性的に拡径させることができる。このため、シール部材5を、ハブ7の外側凹部17の内側に装着した後で、ハブ7とジョイント外輪31とを、結合部材4a(穴付ボルト64)により結合固定する手順を採用することができて、車輪駆動ユニット1の組立作業の作業性を良好に確保することができる。
【0112】
なお、穴付ボルト64により、ハブ7とジョイント外輪31とを結合固定する際には、凹孔68に、レンチなどの工具を挿入し、該工具を回転させることで、ねじ軸部49を雌ねじ部38に螺合する。その他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0113】
[第3例]
図3は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例では、結合部材4bは、等速ジョイント3のジョイント外輪31aと一体に構成された軸部43aと、ナット69とを備える。
【0114】
ジョイント外輪31aは、略椀形(略ボウル形)のマウス部33aと、凸部70とを有する。
【0115】
マウス部33aは、略円筒状の周壁部35と、該周壁部35の軸方向外側の開口を塞ぐ、略円形板状の側壁部36aとを有する。
【0116】
凸部70は、円柱形状を有し、側壁部36aの軸方向外側面の中央部から軸方向外側に向けて突出している。
【0117】
軸部43aは、凸部70の軸方向外側の端面の中央部から軸方向外側に向けて突出している。軸部43aは、軸方向内側に配置され、かつ、軸方向に関して外径が変化しない円筒部71と、軸方向内側に配置され、かつ、外周面に螺旋状の雄ねじ溝を有するねじ軸部72とを有する。
【0118】
ナット69は、非円形部73と、フランジ部74とを有する。
【0119】
非円形部73は、軸方向から見て非円形の外周面を有する。本例では、非円形部73は、六角柱形状を有する。
【0120】
フランジ部74は、非円形部73の軸方向内側に隣接して配置されている。フランジ部74は、外周面のうちの軸方向外側部分に、非円形部73の外接円直径よりも大きい外径を有する円筒面部75を有し、かつ、外周面のうちの軸方向内側部分に、軸方向外側に向かうほど外径が大きくなる円すい台面状の傾斜面部76を有する。
【0121】
本例では、ハブ7とジョイント外輪31aとは、ジョイント外輪31aと一体に備えられた軸部43aを、ハブ7の中心孔13に軸方向内側から挿通し、かつ、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32とを係合させた状態で、ねじ軸部72にナット69を螺合し、ナット69とジョイント外輪31aとの間で、ハブ7を軸方向両側から挟持することにより結合固定されている。
【0122】
本例でも、第1例の車輪駆動ユニット1と同様に、異物が、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部に、該係合部の径方向内側から侵入するのを防止することができる。
【0123】
また、ハブ7の外側凹部17の内側にシール部材5を装着した後、ハブ7とジョイント外輪31aとを結合固定すべく、ねじ軸部72にナット69を螺合する際に、ナット69の傾斜面部76がリップ部50の径方向内側に挿入されることに伴って、該リップ部50の内径を、リップ部50の先端部が軸方向内側に向けて折り曲げられるように変形させられることなく、連続的かつ弾性的に拡径させることができる。このため、シール部材5を、ハブ7の外側凹部17の内側に装着した後で、ハブ7とジョイント外輪31aとを、結合部材4bにより結合固定する手順を採用することができて、車輪駆動ユニット1の組立作業の作業性を良好に確保することができる。その他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0124】
[第4例]
図4は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例では、シール部材5aが、ハブ7aの中心孔13aと、結合部材4cの軸部43bとの間に配置されている。
【0125】
ハブ7aに備えられた中心孔13aは、軸方向外側の端部に、軸方向内側に隣接する部分よりも内径が大きい大径部77を有する。
【0126】
本例では、結合部材4cは、フランジ付ボルト44aにより構成されている。フランジ付ボルト44aは、頭部45aと、該頭部45aの軸方向内側面の中心部から軸方向内側に向けて突出する軸部43bとを有する。
【0127】
頭部45aは、非円形部46と、フランジ部47aとを有する。
【0128】
非円形部46は、軸方向から見て非円形の外周面を有する。本例では、非円形部46は、六角柱形状を有する。
【0129】
フランジ部47aは、非円形部46の軸方向内側に隣接して配置され、非円形部46の外接円直径よりも大きい外径を有する円筒面状の外周面を備える。
【0130】
軸部43bは、軸方向外側の円柱部48aと軸方向内側のねじ軸部49aとを、接続軸部79により接続することにより構成されている。
【0131】
ねじ軸部49aは、外周面に螺旋状の雄ねじ溝を有し、かつ、該円柱部48aの外径よりも小さい外径を有する。
【0132】
接続軸部79は、軸方向内側に向かうほど外径が小さくなる円すい台形状を有する。
【0133】
円柱部48および接続軸部79は、ハブ7aの中心孔13aに挿通され、かつ、ねじ軸部49aは、ジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合される。
【0134】
本例のシール部材5aは、芯金51aと、シール材52aとを備える。
【0135】
芯金51aは、中心孔13aの大径部77の内周面に締り嵌めで内嵌固定された円筒部53aと、該円筒部53aの軸方向内側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった折れ曲がり部54aとを有する。
【0136】
シール材52aは、芯金51aの折れ曲がり部54aの径方向内側の端部を覆うように、当該部分に加硫接着により固定されている。シール材52aは、リップ部50aを有する。
【0137】
リップ部50aは、径方向内側に向かうほど軸方向外側に向かう方向に向けて延出し、その先端部を、軸部43bの円柱部48aの軸方向外側部分に全周にわたって接触させた
【0138】
本例でも、第1例の車輪駆動ユニット1と同様に、異物が、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部に、該係合部の径方向内側から侵入するのを防止することができる。
【0139】
本例の車輪駆動ユニット1を組み立てる際には、まず、シール部材5aを、中心孔13aの大径部77の内側に押し込む。すなわち、円筒部53aの軸方向全長を、大径部77の内周面に内嵌固定する。その後、結合部材4c(フランジ付ボルト44a)の軸部43bを、中心孔13aに軸方向外側から挿入し、ねじ軸部49aを、ジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合することで、ハブ7とジョイント外輪31とを結合固定することができる。
【0140】
あるいは、円筒部53aの軸方向内側の端部を、大径部77の内周面に内嵌した状態で、結合部材4cの軸部43bを、中心孔13aに軸方向外側から挿入し、ねじ軸部49aを、ジョイント外輪31の雌ねじ部38に螺合することに伴って、円筒部53aを大径部77の内周面に圧入することもできる。
【0141】
なお、本例では、結合部材4c(フランジ付ボルト44a)の軸部43bは、軸方向外側の円柱部48aと軸方向内側のねじ軸部49aとを、接続軸部79により接続することにより構成されている。このため、軸部43bを、中心孔13aに軸方向外側から挿入する際、該軸部43aがリップ部50aの径方向内側に挿入されることによって、該リップ部50aの先端部が軸方向内側に向けて折り曲げられるように変形させられることを防止できる。また、ねじ軸部49aの外径が必要以上に大きくなることを防止できて、該ねじ軸49aにより、リップ部50aの先端部が損傷するのを防止することができる。その他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0142】
[第5例]
図5は、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例では、シール部材5bは、結合部材4c(フランジ付ボルト44a)の軸部外周面に摺接する2つのリップ部50bと、ハブ7aの中心孔13aの内周面に摺接する2つの外径側リップ部78とを有する。すなわち、シール部材5bは、略X字形の断面形状を有するXリングにより構成されている。
【0143】
シール部材5bは、ハブ7aの中心孔13aの軸方向外側の端部に備えられた大径部77の内周面と、結合部材4c(フランジ付ボルト44a)の円柱部48aの軸方向外側部分との間で径方向に弾性的に挟持されている。
【0144】
なお、本例では、シール部材5bは、軸方向の締め代は有していない。すなわち、シール部材5bは、大径部77内周面と中心孔13aの軸方向内側部分の内周面とを接続する軸方向外側を見た段差面80と、結合部材4c(フランジ付ボルト44a)の頭部45aの軸方向内側面との間で軸方向に挟持されていない。
【0145】
本例でも、第1例の車輪駆動ユニット1と同様に、異物が、ハブ側フェイススプライン14とジョイント側フェイススプライン32との係合部に、該係合部の径方向内側から侵入するのを防止することができる。
【0146】
本例では、シール部材5bとして、略X字形の断面形状を有するXリングを使用している。ただし、本発明の一態様の車輪駆動ユニットを実施する場合、シール部材として、略円形や略矩形の断面形状を有するOリングなどを使用することもできる。その他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【符号の説明】
【0147】
1 車輪駆動ユニット
2 ハブユニット軸受
3 等速ジョイント
4、4a、4b、4c 結合部材
5、5a、5b シール部材
6 外輪
7、7a ハブ
8 転動体
9 外輪軌道
10 静止フランジ
11 ねじ孔
12 内輪軌道
13、13a 中心孔
14 ハブ側フェイススプライン
15 回転フランジ
16 パイロット部
17 外側凹部
18 内側凹部
19 取付孔
20 底面
21 内周面
22 接続面部
23 円すい面部
24 円筒面部
25 段差面
26 内輪
27 ハブ輪
28 嵌合筒部
29 段差面
30 かしめ部
31、31a ジョイント外輪
32 ジョイント側フェイススプライン
33、33a マウス部
34 円筒部
35 周壁部
36、36a 側壁部
37 外径側係合溝
38 雌ねじ部
39 ジョイント内輪
40 ボール
41 内径側係合溝
42 スプライン孔
43、43a、43b 軸部
44、44a フランジ付ボルト
45、45a 頭部
46 非円形部
47、47a フランジ部
48、48a 円柱部
49、49a ねじ軸部
50、50a リップ部
51、51a 芯金
52、52a シール材
53、53a 円筒部
54、54a 折れ曲がり部
55 基部
56 外径側シール部材
57 外径側芯金
58 外径側シール材
61 段部
62 円筒面部
63 傾斜面部
64 穴付ボルト
65 頭部
66 円筒面部
67 傾斜面部
68 凹孔
69 ナット
70 凸部
71 円筒部
72 ねじ軸部
73 非円形部
74 フランジ部
75 円筒面部
76 傾斜面部
77 大径部
78 外径側リップ部
79 接続軸部
80 段差面
図1
図2
図3
図4
図5