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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049163
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240402BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B17/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155461
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】松田 大造
(72)【発明者】
【氏名】董 宥辰
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085AB01
5C085CA11
5C085CA15
5C085DA07
5C085DA16
5C085EA52
5C085FA23
5G405AA01
5G405AB01
5G405AB02
5G405AD02
5G405AD07
5G405CA13
5G405DA07
5G405DA21
5G405EA52
5G405FA03
(57)【要約】
【課題】感知器の表示灯の点灯を利用して複数種類の情報が含まれた試験情報を外部機器に送信する。
【解決手段】移行部111は、センサ14が火災を示す対象を感知したときに、自器のモードを監視モードに移行させ、受信部15が開始信号を受信すると、自器のモードを試験モードに移行させる。指示部113は、火災が発生していると判断される場合には、発報部16に指示を出し火災が発生している旨を通知させる。また、指示部113は、表示灯13を制御して、火災発報を示す点灯をさせる。生成部114は、判定された自器のモードに応じた試験情報122を生成する。符号化部115は、生成部114が生成した試験情報122を伝送路符号化する。送信部116は、伝送路符号化された試験情報122を、表示灯13の点滅パターンに変換して試験器2へ送信する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を感知し火災発報したときに点灯する表示灯と、
センサが対象を感知したときに、前記表示灯を点灯させて前記対象を感知したことを表示するとともに、試験に関する試験情報を生成し、該試験情報を前記表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する制御部と、
を有し、
前記試験情報は、前記センサの感度を示す感度情報及び/または自器の識別情報を含むものである
感知器。
【請求項2】
前記移行部は、自器に対する試験が行われるときに、自器のモードを試験モードに移行させ、
前記制御部は、前記試験モードのときに、前記監視モードのときと異なる試験情報を生成し、該試験情報を前記表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する
請求項1に記載の感知器。
【請求項3】
前記移行部は、試験器が所定距離内に近接したことを前記センサが感知したときに、自器のモードを前記試験モードに移行させる
請求項2に記載の感知器。
【請求項4】
試験器から、試験を開始する旨の指示を示す開始信号を受信する受信部を有し、
前記移行部は、前記受信部が前記開始信号を受信したときに、自器のモードを前記試験モードに移行させる
請求項2に記載の感知器。
【請求項5】
前記制御部は、前記試験情報を決められた回数にわたって送信する
請求項1に記載の感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災を感知する感知器から情報を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火災を感知する感知器は、作動した際に、作動した感知器を特定できるようにするため、確認灯と呼ばれる表示灯を点灯させる。この表示灯は主に人が目視で確認するものであるが、定期点検のために感知器を作動させたときなどは、点検用の試験装置でこの表示灯の点灯状態を検知して感知器の状態を把握することもある。
【0003】
特許文献1は、受光回路の出力に基づいて発光回路及び受光回路の感度を判定し、1回の稼動信号の出力において、発光回路及び受光回路の感度に応じた時間間隔で、火災表示灯を少なくとも3回発光させるマイコンを備える火災感知器を開示する。
【0004】
特許文献2は、感知器の表示灯が点灯して出力した光を受光し、受光したその光に基づいて、感知器による異常の検出に関する状態を検出する試験装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-116333号公報
【特許文献2】特開2020-177704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、感知器の状態を示す情報は、異常か正常かの区別、及び感度のスカラー値の他にも様々な内容を有する。
【0007】
特許文献1に記載の技術において、火災表示灯は、連続する2回の発光の時間間隔を固定し、他の連続する2回の発光の時間間隔を感知器の検出部の感度に応じた時間に設定しなければならず、少なくとも3回発光しなければならない。また、この技術において、火災感知器の感度を検査する感度検査装置は、3回の発光の合間で、固定の時間間隔、及び感度に応じた時間間隔の経過をそれぞれ待たなければならない。さらに、この技術において、火災表示灯は、3回の発光によって、感度を示すたった一つのスカラー値しか伝えることができない。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、判定時間内に感知器の表示灯が点灯したか否かを判定するだけに過ぎない。つまり、この技術は、表示灯の発光動作等に情報を化体させるものではない。
【0009】
本発明は、感知器の表示灯の点灯を利用して複数種類の情報が含まれた試験情報を外部機器に送信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、一の態様において、火災を感知し火災発報したときに点灯する表示灯と、センサが対象を感知したときに、前記表示灯を点灯させて前記対象を感知したことを表示するとともに、試験に関する試験情報を生成し、該試験情報を前記表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する制御部と、を有し、前記試験情報は、前記センサの感度を示す感度情報及び/または自器の識別情報を含むものである感知器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、感知器の表示灯の点灯を利用して複数種類の情報を含む試験情報が外部機器に送信される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】感知器試験システム9の全体構成の一の例を示す図。
図2】感知器試験システム9の全体構成の他の例を示す図。
図3】感知器1の構成の例を示す図。
図4】モード表121の構成の例を示す図。
図5】試験情報122の構成の例を示す図。
図6】感知器1の機能的構成の例を示す図。
図7】試験情報122を示すシリアル信号の例を示す図。
図8】感知器1の動作の流れの例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
[感知器試験システムの全体構成]
図1は、感知器試験システム9の全体構成の一の例を示す図である。感知器試験システム9は、1以上の感知器1、1以上の試験器2a、及び受信機3を有する。感知器試験システム9は、感知器1を試験器2aによって試験するとともに、感知器1が蓄積した試験情報を試験器2aに取得させるシステムである。
【0014】
感知器1は、火災を感知して火災発報する機器であり、図示の例では天井Cに設置されている。試験器2aは、感知器1を試験するとともに、感知器1から試験情報を取得する機器である。
【0015】
受信機3は、管理室等に設置され、監視領域に設置されている1以上の感知器1のそれぞれと電気的に接続されている。受信機3は、接続される感知器や発信機からの火災信号を受けて発報の信号を音響機器や防排煙設備等に送信し火災を知らせる装置であり、感知器1からの発報の通知を受信して、その感知器1へ供給する電力を管理するように動作する。受信機3は、いずれかの感知器1が火災を感知したときに、その感知器1から発報信号を受けて、その感知器1へ火災発報に必要な電力を供給する。
【0016】
図1に示す感知器1は、表示灯13、及びセンサ14を有する。図1に示す試験器2aは、収容部20、受光部23、連結部24、支持棒25、加煙ユニット26、感度試験ユニット27、を有する。
【0017】
センサ14は、煙等の火災を示す対象を感知する。図1に示すセンサ14は、対象として煙を感知するが、熱や赤外線等、火災を示す他の対象を感知してもよい。本実施形態のセンサ14は、感知器1内部に煙を取り込み、監視エリア内に向かって照射される光が煙によって散乱し、受光素子に入射することで火災を検知する散乱光式のセンサを採用している。感知器1は、監視モードとして、感知器1が常に火災監視状態として動作している。センサ14が対象である熱や煙を感知すると、確認灯とも呼ばれる表示灯13が点灯し、感知器1が作動し、火災発報したことを報知する。
【0018】
支持棒25は、試験を行うユーザが試験器2aを持つための棒である。支持棒25の一端は図1に示す通り、試験器2aの各構成と接続され、これらを支持している。支持棒25の他端(図1において図示せず)は、ユーザが把持するハンドル、操作を行うレバー等の操作子を備える。
【0019】
収容部20は、感知器1を覆って天井Cに密着するように略半球状に構成されている。収容部20によって覆われたとき、感知器1の周囲の空間は収容部20の内外にそれぞれ隔離される。
【0020】
収容部20は、光(特に表示灯13が発する可視光)を少なくとも減じる色、素材で構成されている。この収容部20を構成する素材は、天井Cとの間に隙間が生じないようにゴム、合成樹脂等の可撓性の高いものであることが望ましい。また、この収容部20は、例えば黒色等、表示灯13が発する赤色光等を遮蔽する色で構成されていることが望ましい。この場合、感知器1の表示灯13から発する光は、収容部20の外に漏れ難い。
【0021】
加煙ユニット26は、試験用の煙を放出するユニットであり、例えば圧縮されたガスとともに火災時の煙を模した煙成分を放出する缶等を有する。
【0022】
連結部24は、加煙ユニット26が煙を放出する開口部を覆う蓋と接続され、かつ、支持棒25の他端に設けられたレバー等の操作子とも連結している。ユーザが操作子を操作すると連結部24は回動し、加煙ユニット26の蓋を外す。これにより、加煙ユニット26は、感知器1に向けて煙を放出する。
【0023】
感知器1は、上述した通り、センサ14が加煙ユニット26から放出された煙成分を感知したときに火災発報し、表示灯13を点灯させる。このとき、感知器1は、表示灯13の光の点滅パターンにより伝送路符号化された試験情報を送信する。この試験情報は、感知器1に対して行われた試験に関する情報である。
【0024】
受光部23は、表示灯13から光を受け、その点滅パターンに応じた信号(受光信号という)を感度試験ユニット27に送る。
【0025】
なお、上述した収容部20は、感知器1の表示灯13から発される光を人が目視確認するための窓が設けられていてもよい。この窓は透明、又は半透明の樹脂等で構成され、物質の流入、流出がないように内外の空間を隔離しつつ、表示灯13の光を外部に透過させる。この窓は、例えば、受光部23の背後に配置されているとよい。この配置により、受光部23は、表示灯13の光を受けつつ、窓から入り込む光を受け難い。
【0026】
感度試験ユニット27は、プロセッサ、メモリ等を有し、受光部23から送られた受光信号を取得して、この受光信号から感知器1によって伝送路符号化された試験情報を抽出する。
【0027】
図2は、感知器試験システム9の全体構成の他の例を示す図である。感知器試験システム9は、1以上の感知器1、1以上の試験器2b、及び受信機3を有する。図1に示す試験器2a、及び図2に示す試験器2bは、互いに区別しない場合、それぞれ単に試験器2と記述される。
【0028】
試験器2bは、感知器1を試験する機器であるという点で、上述した試験器2aと共通する。一方、試験器2bは、加煙ユニット26を有しないという点で、試験器2aと異なる。試験器2bは、送信部28を有する。送信部28は、感知器1に対して試験を開始する旨の指示を示す開始信号を送信する。なお、試験器2bは、感度試験ユニット27を有してもよい。この場合、送信部28は、例えば、感度試験ユニット27が有するプロセッサの制御の下、上述した開始信号を送信すればよい。
【0029】
図2に示す感知器1は、受信部15を有する。受信部15は、試験器2bの送信部28が送信する開始信号を受信する。すなわち、この受信部15は、試験器から、試験を開始する旨の指示を示す開始信号を受信する受信部の例である。受信部15が開始信号を受信すると、感知器1は、自器のモードを試験モードに移行させる。試験モードは、加煙試験および感度試験を行うときに開始信号を受信することで移行するモードである。
【0030】
[感知器の構成]
図3は、感知器1の構成の例を示す図である。図3に示す感知器1は、制御部11、記憶部12、表示灯13、センサ14、受信部15、及び発報部16を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。
【0031】
制御部11は、記憶部12に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読出して実行することにより感知器1の各部を制御する。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0032】
記憶部12は、制御部11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、又はROM(Read Only Memory)を有する。なお、記憶部12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。また、この記憶部12は、モード表121、及び試験情報122を記憶する。
【0033】
表示灯13は、感知器1が火災を感知し火災発報したときに点灯する表示灯の例である。この表示灯13は、法令等の制約により設けることが義務付けられた部品であり、例えば、LED(light emitting diode)等の発光素子を有する。この発光素子は、可視光を放出する素子であり、例えば、610ナノメートル以上、780ナノメートル未満に相当する波長の赤色光を発する。表示灯13は、制御部11の制御の下、点灯、及び消灯する。
【0034】
センサ14は、上述した通り、火災を示す対象を感知する。
【0035】
受信部15は、上述した通り、開始信号を受信する。制御部11は、受信部15が開始信号を受信すると、自器のモードを試験モードに移行させる。
【0036】
発報部16は、制御部11の制御の下、火災が発生している旨を発報する。発報部16は、例えば、センサ14が火災を示す対象を感知したとき、又は、受信部15が試験器2から開始信号を受信して自器のモードが試験モードに移行し、試験による発報をしたとき等に、受信機3に火災が発生している旨を通知する。
【0037】
受信機3は、この通知を受けると、この通知を送った感知器1に供給する電力量を、予め設定された、火災発報に必要な水準まで増加させる。受信機3から新たに増加された電力を供給されると、発報部16は、警報等を発することで火災発報を行う。発報部16は、例えば、スピーカ等、音を放出する構成を有し、制御部11が予め記憶部12に記憶された警告を示す音声データ等を再生することで、その音声データに応じた音を放出してもよい。
【0038】
また、受信機3から新たに増加された電力を供給されると、制御部11は、移行したモードに応じた試験情報を生成し、これを伝送路符号化する。そして、制御部11は、表示灯13を点滅させて、この点滅パターンにより伝送路符号化された試験情報を送信する。
【0039】
[モード表の構成]
図4は、モード表121の構成の例を示す図である。図4に示すモード表121は、現状、モード、及び、規定送信回数の項目をそれぞれ対応付けて記憶する表である。
【0040】
「現状」は、現時点での感知器1のモードを示す情報を示す項目である。この項目は、1つのレコードにのみ「YES」が記憶され、他の全てのレコードには「NO」が記憶される。
【0041】
「モード」は、感知器1が移行し得るモードを列挙した項目である。図4に示すモード表121で、モードの欄は「監視モード」、及び「試験モード」のいずれかである。このモードの欄に記載されたモードのうち、対応する現状の欄が「YES」のモードは現時点での感知器1のモードである。
【0042】
「規定送信回数」は、対応するモードにおいて伝送路符号化された試験情報を送信する回数を示す項目である。図4におけるモード表121において、通常時の火災監視状態である監視モードの規定送信回数の欄は、「-」を記憶する。これは、監視モードの規定送信回数が定められていないことを意味する。一方、このモード表121において、試験モードの規定送信回数の欄は、「5」を記憶する。これは、試験モードの規定送信回数が5回に定められていることを意味する。したがって、感知器1は、試験モードに移行したとき、5回だけ試験情報を送信する。
【0043】
[試験情報の構成]
図5は、試験情報122の構成の例を示す図である。図5に示す試験情報122は、複数の項目のそれぞれに、その値を対応付けた情報である。この試験情報122は、「機種コード」、「製造年月日」、「製造番号」、「火災閾値」、「汚れ量」、及び「火災履歴」の項目の値をそれぞれ記憶する。
【0044】
「機種コード」の欄は、感知器1の機種を識別する識別情報である機種コードを記憶する欄である。
【0045】
「製造年月日」の欄は、感知器1が製造された年月日を記憶する欄である。
【0046】
「製造番号」の欄は、感知器1の製造番号を記憶する欄である。この製造番号は、例えば、感知器1を一意に識別する識別情報の例である。
【0047】
なお、「機種コード」、「製造年月日」は、それぞれ感知器1の機種、製造年月日を示す情報であり、これらは個々の感知器1を識別しない場合もあるが、感知器1が所属する集団の識別に用いられる情報である。したがって、「機種コード」、「製造年月日」も感知器の識別情報に含まれる。また、「製造番号」は、感知器1を一意に識別する識別情報でなくてもよく、例えば、「機種コード」及び/または「製造年月日」と組合せた場合に、感知器を一意に識別する識別情報となる情報であってもよい。つまり、「機種コード」、「製造年月日」、「製造番号」、及びこれらの組合せは、感知器1の識別情報の例である。
【0048】
「火災閾値」は、感知器1の感度の異常を決める閾値を示す情報である。例えば、火災閾値に対して、10%/m、60℃等、予め決められた煙濃度の割合、所定の温度を上回る感度が計測された場合、その感度が計測された感知器1は、異常であると判定される。この火災閾値は、個々の感知器1に個性があるため、工場出荷時に、それぞれの感知器1をテストして、その結果に応じたデータが設定される。
【0049】
「汚れ量」は、センサ14の感度を示す感度情報の例である。この汚れ量は、感知器1のセンサ14がどの程度、汚れているかを示すスカラー値であり、例えば256段階で表現される。汚れ量は、例えば、感知器1の内部の電気回路において、煙がない空間に置かれたときのセンサ14に接続されたアンプ(図示せず)の出力電圧が初期値からどれだけ外れているかによって推算される。
【0050】
ただし、アンプの出力電圧は瞬間的な変動があるため、汚れ量は、決められた期間に計測された出力電圧の相加平均等によって推算されるとよい。例えば、汚れ量は、直近の24時間に計測されたアンプの出力電圧の平均により推算される。電圧と汚れ量との関係は、例えば、予め行われたテストの結果に基づく検量線等により表される。
【0051】
アンプの出力電圧の計測値を示すアナログ信号は、例えば、制御部11のA/D変換ポート(図示せず)に送られ、デジタル信号に変換されて記憶部12に記憶される。制御部11は、決められた期間に計測された計測値の相加平均を演算し、この相加平均に応じた汚れ量を上述した検量線等に基づいて推算する。
【0052】
なお、センサ14の初期の感度に対応する出力電圧の初期値は、感知器1ごとに記憶部12に記憶される。
【0053】
「火災履歴」は、1週間等、予め決められた期間に「火災」を感知した回数を示す情報である。ここで感知される「火災」とは、実際の火災に限らず、例えば、センサ14が試験用の煙を感知したときも含まれる。また、この「火災」は、感知器1のいずれかの構成の故障により感知されたものを含んでもよい。
【0054】
ただし、この「火災」は、受信部15が開始信号を受信したときを含まなくてもよい。この場合、火災履歴は、煙を感知して火災発報した回数であり、開始信号を受信して火災発報した回数を含まない。
【0055】
なお、火災履歴が火災として回数を計上する対象は、上述した場合に限らない。例えば、火災履歴は、試験用の煙を感知して火災発報した回数を含まず、実際の火災から生じた煙を感知して火災発報した回数を含んでもよい。
【0056】
この場合、煙放出型の試験器2aは、加煙ユニット26と送信部28とを有してもよい。試験器2aが有する送信部28は、試験器2bの送信部28と異なる開始信号を送信してもよい。感知器1は、受信部15により開始信号を受信し、かつ、センサ14により煙を感知したときに、この煙が試験用の煙であると判断し、実際の火災による煙と区別すればよい。
【0057】
[感知器の機能的構成]
図6は、感知器1の機能的構成の例を示す図である。感知器1の制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、移行部111、判定部112、指示部113、生成部114、符号化部115、及び、送信部116として機能する。
【0058】
また、図6に示す移行部111は、自器に対する試験が行われるときに、自器のモードを試験モードに移行させる移行部の例である。例えば、この移行部111は、受信部15が、試験器2の送信部28から開始信号を受信すると、自器のモードを試験モードに移行させる。この場合、この移行部111は、受信部が試験器から試験を開始する旨の指示を示す開始信号を受信したときに、自器のモードを前記試験モードに移行させる移行部の例である。
【0059】
判定部112は、モード表121を参照して現時点での自器のモードを判定する。
指示部113は、判定された自器のモードに基づき、火災が発生していると判断される場合には、発報部16に指示を出し、発報部16から受信機3に向けて、火災が発生している旨を通知させる。また、指示部113は、表示灯13を制御して、火災発報を示す点灯をさせる。すなわち、この指示部113として機能する制御部11は、センサが対象を感知したときに、表示灯を点灯させてその対象を感知したことを表示する制御部の例である。
【0060】
生成部114は、判定された自器のモードに応じた試験情報122を生成し、記憶部12に記憶する。例えば、上述した例において、自器のモードが監視モードである場合に、生成部114は、火災履歴に記述される火災の回数を増加させ、これを含む試験情報122を生成する。
【0061】
一方、自器のモードが試験モードである場合に、生成部114は、火災履歴の記述内容を維持したまま、これを含む試験情報122を生成する。
【0062】
符号化部115は、生成部114が生成し、記憶部12に記憶された試験情報122を伝送路符号化する。ここで伝送路符号は、情報を、表示灯13の点灯、及び消灯で表現されるパルス波形に変換するための符号をいう。この伝送路符号は、例えば、RZ(return to zero)符号、NRZ(Non return to zero)符号、マンチェスタ符号等がある。
【0063】
送信部116は、符号化部115により伝送路符号化された試験情報122を、決められた方式に沿って表示灯13の点灯、及び消灯動作に変換し、この光の点滅パターンによって試験器2へ送信する。
【0064】
すなわち、この生成部114、符号化部115、及び送信部116として機能する制御部11は、監視モードで火災発報したとき、表示灯を点灯させて自器のモードを表示するとともに、試験に関する試験情報を生成し、この試験情報を表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する制御部の例である。
【0065】
また、上述した制御部11は、自器のモードが監視モードである場合と、試験モードである場合とで、それぞれ異なる試験情報122を生成し、伝送路符号化して送信している。つまり、この生成部114、符号化部115、及び送信部116として機能する制御部11は、試験モードのときに、監視モードのときと異なる試験情報を生成し、この試験情報を表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する制御部の例である。試験器2は、感知器1がモードごとに異なる試験情報122を送信することで、火災発報時と点検時それぞれに応じた必要な情報を受信することができる。
【0066】
送信部116により試験情報122が送信される方式は、非同期式通信方式が好ましく、例えば、半二重調歩同期方式(UART)が採用される。送信部116は、例えば、試験情報122にヘッダとチェックサムとを加えて12バイトのシリアル信号を生成する。そして、送信部116は、このシリアル信号を、1200bpsの速度で送信するように表示灯13を点滅させる。
【0067】
図7は、試験情報122を示すシリアル信号の例を示す図である。図7に示すシリアル信号は、半二重調歩同期方式によりヘッダとチェックサムとが加えられている。STBは、このシリアル信号において最初に送信される1バイトのヘッダであり、例えば、16進数である「FFh」である。「FFh」は10進数における「255」である。
【0068】
図7に示すD1からD10までは、この順序で送信される10バイト分のデータであって試験情報122の内容に相当する部分である。このシリアル信号において、機種コードはD1で示す1バイトで、製造年月日はD2及びD3で示す2バイトで、製造番号はD4、D5、及びD6で示す3バイトでそれぞれ表される。
【0069】
また、このシリアル信号において、火災閾値、汚れ量、火災履歴は、それぞれD7、D8、D9で示す各1バイトでそれぞれ表される。なお、D10の1バイトは規格拡張の際に利用するための予備であり、現規格では、例えば、「00h」等の固定値に定められている。
【0070】
SUMは、このシリアル信号において最後に送信される1バイトのチェックサムである。このSUMは、例えば、STB、D1~D10の上位ビットの総数と、16進数である「7Fh」との論理和等が用いられる。このSUMは、誤り検出符号として利用される。
【0071】
上述した通り、「機種コード」、「製造年月日」、「製造番号」、及びこれらの組合せは、感知器1の識別情報の例である。また、上述した通り、「汚れ量」は、センサ14の感度を示す感度情報の例である。したがって、図7に示す試験情報122は、センサの感度を示す感度情報及び自器の識別情報を含む試験情報の例である。なお、試験情報122は、センサ14の感度情報及び感知器1の識別情報の両方を含まなくてもよく、これらのいずれか一方を含むものであってもよい。つまり、試験情報122は、センサの感度を示す感度情報及び/または自器の識別情報を含むものでもよい。
【0072】
送信部116は、伝送速度を1200bps(すなわち、150B/s(バイトパーセカンド))で12バイトの伝送路符号化されたシリアル信号である試験情報122を送信する。したがって、送信部116による試験情報122の送信にかかる時間は1回あたり80ミリ秒である。送信部116は、発報開始から1秒毎に1回ずつこのシリアル信号を送信する。
【0073】
なお、上述したように規定送信回数が5回と定められている場合、送信部116は、5回の送信が終了すると、それ以降は表示灯13を点灯させたままにし、試験情報122を示すシリアル信号の送信を停止する。すなわち、この送信部116として機能する制御部11は、試験情報を決められた回数にわたって送信する制御部の例である。これにより、表示灯13を見たときに人がチラつきを感じる機会が低減される。
【0074】
[感知器の動作]
図8は、感知器1の動作の流れの例を示すフロー図である。感知器1の制御部11は、受信部15が開始信号を受信したか否かを判定する(ステップS101)。
【0075】
受信部15が開始信号を受信した、と判定すると(ステップS101;YES)、制御部11は、自器のモードを試験モードに移行させる(ステップS102)。そして、制御部11は、試験モードに関する試験情報122の更新を行う(ステップS103)。
【0076】
例えば、試験情報122が試験モードにおける感知器1の試験の回数を含む場合、制御部11は、この回数を増加させる更新を行う。なお、試験情報122が試験モードにおいて更新する内容を有しない場合、ステップS103において制御部11は、処理を行わなくてもよい。
【0077】
一方、受信部15が開始信号を受信していない、と判定すると(ステップS101;NO)、制御部11は、センサ14が煙を感知したか否かを判定する(ステップS104)。
【0078】
センサ14が煙を感知していない、と判定すると(ステップS104;NO)、制御部11は、処理をステップS101に戻し、この判定を続ける。
【0079】
一方、センサ14が煙を感知した、と判定すると(ステップS104;YES)、制御部11は、監視モードに関する試験情報122の更新を行う(ステップS105)。
【0080】
例えば、上述した火災履歴のように、試験情報122が監視モードにおける感知器1の火災発報の回数を含む場合、制御部11は、この回数を増加させる更新を行う。なお、試験情報122が監視モードにおいて更新する内容を有しない場合、ステップS105において制御部11は、処理を行わなくてもよい。
【0081】
ステップS103、又はステップS105が終わると、制御部11は、更新された内容を含む試験情報122を生成し(ステップS106)、これを伝送路符号化する(ステップS107)。そして、制御部11は、表示灯13を点滅させて、伝送路符号化された試験情報122を試験器2へ送信する(ステップS108)。
【0082】
以上、説明した通り、本発明における感知器1は、複数種類の情報が含まれた試験情報122を伝送路符号化し、シリアル信号として順次、表示灯13の点滅によって表現、出力するので、受光部23を有する試験器2は、この試験情報122を取得することができる。
【0083】
また、本発明における感知器1は、表示灯13の点灯の間隔に比例したスカラー値を伝達するのではなく、例えば、点灯を「1」、消灯を「0」とした伝送路符号によって、複数の値が含まれた試験情報を伝達する。したがって、この感知器1は、点灯の間隔に比例したスカラー値を伝達する場合に比べて、単位時間当たりにより多くの多様な情報を送信することができる。
【0084】
さらに、本発明における感知器1は、火災が発生した旨の通知を受信機3に送信し、受信機3から定められた電力の供給を受けたときに、試験情報122を伝送路符号化して送信する。そのため、この感知器1は、火災発生時ではない期間であって受信機3から供給される電力量が制限されるときに表示灯13の点滅により情報を送信する場合に比べて、送信する情報量が制限されることが少ない。本発明は、感知器の点検時に、感知器1が発報し、通常よりも多くの電力の供給を受けたタイミングで、火災発報の情報に加えて、試験情報も併せて受信機3に送ることができる点で、点検の時間を短縮し、電力を有効活用できるという効果を奏する。
【0085】
また、本発明における感知器1は、受信機3と通信を行わなくても、非接触の試験器2に向けて光を用いて試験情報を送信することができるので、天井Cの取付面から外すことなく定期的な動作確認を行うことができる。
【0086】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。それらの変形の例は、以下の通りである。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0087】
(1)上述した実施形態において、センサ14は、火災を示す対象を感知するものであったが、感知器1は、他の対象を感知するセンサを有してもよい。例えば、センサ14は、試験器2が所定距離内に近接したことを感知する近接センサを含んでもよい。
【0088】
近接センサは、例えば、磁石、RFID(radio frequency identifier)、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)等を用いて、試験器2が所定距離内に近接したことを感知すればよい。また、この近接センサは、試験器2から伸びる部材と直接接触し、その接触面においてその部材から受けた力を検出することで、試験器2が所定距離内に近接したことを感知してもよい。
【0089】
ここで、制御部11により実現される移行部111は、センサ14に備えられた近接センサが試験器2の上述した近接を感知すると、自器のモードを監視モードから試験モードに移行させてもよい。この場合、この移行部111は、試験器が所定距離内に近接したことをセンサが感知したときに、自器のモードを試験モードに移行させる移行部の例である。
【0090】
(2)上述した実施形態において、感知器1は、受信部15が開始信号を受信したときに、自器のモードを試験モードに移行させていたが、他のタイミングで自器のモードを試験モードに移行させてもよい。例えば、感知器1は、自器が有する物理的な端子と、試験器2が有する物理的な端子とが、直接に接触したとき、又は、さらに、試験器2から電圧が印加されたときに、自器のモードを試験モードに移行させてもよい。
【0091】
(3)上述した変形例において、感知器1は、センサ14、及び受信部15を有していたが、他に外界の状況に応じて変化する構成を有してもよい。例えば、感知器1は、温度計を有してもよい。この温度計は、例えば、制御部に内蔵された温度計である。この温度計で計測された温度は記憶部12に蓄積され、例えば、センサ14の感度の補正に用いられてもよい。この温度計で計測された温度は、試験情報122に記述され、表示灯13の点滅パターンにより送信されてもよい。
【0092】
(4)上述した実施形態において、感知器試験システム9において、感知器1には表示灯13が、試験器2には受信部15が、それぞれ設けられていたが、さらに、感知器1に受光部が、試験器2に発光部が設けられてもよい。この場合、感知器1の受光部は、試験器2の発光部が発する光を受光すればよい。さらに、試験器2の発光部は、光の点滅パターンにより感知器1に情報を送信してもよい。感知器1は、例えば、受光部により試験器2の発光部が発する光を受光したことをトリガとして、通信を開始してもよい。この変形例によれば、感知器1と試験器2とは、互いに光をやり取りすることで双方向通信をすることができる。
【0093】
(5)上述した実施形態において、制御部11は、CPUであったが、他の構成であってもよい。制御部11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、制御部11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0094】
(6)上述した実施形態において、制御部11に読み込まれるプログラムは、火災を感知し火災発報したときに点灯する表示灯と、センサとを制御するコンピュータを、センサが対象を感知したときに、表示灯を点灯させ、対象を感知して感知器1が作動したことを表示するとともに、試験に関する試験情報を生成し、この試験情報を表示灯の光の点滅パターンにより伝送路符号化して送信する制御部、として機能させるためのプログラムの例である。
【符号の説明】
【0095】
1…感知器、11…制御部、111…移行部、112…判定部、113…指示部、114…生成部、115…符号化部、116…送信部、12…記憶部、121…モード表、122…試験情報、13…表示灯、14…センサ、15…受信部、16…発報部、2(2a、2b)…試験器、20…収容部、23…受光部、24…連結部、25…支持棒、26…加煙ユニット、27…感度試験ユニット、28…送信部、3…受信機、9…感知器試験システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8