(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049186
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】通信システム、制御装置及び、通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/155 20060101AFI20240402BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240402BHJP
H04B 17/40 20150101ALI20240402BHJP
【FI】
H04B7/155
H04W16/26
H04B17/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155498
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K072AA29
5K072BB25
5K072CC02
5K072GG25
(57)【要約】
【課題】時間遅れを抑制して非再生中継を行う中継局内で発生した通信要求を適切に処理する。
【解決手段】通信システムは、第1の通信局と、第2の通信局と、第1の通信局と第2の通信局との時分割多重による通信のタイムスロットを変更しないで通信を中継する中継局と、制御装置とを備える。制御装置は、中継局において、通信を中継中に中継局内から前記第2の通信局への通信要求が発生した場合に、中継される通信が第1の条件を充足し、かつ、通信要求による通信が第2の条件を充足するときに、中継局に対して前記通信要求による通信を許可する制御装置と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信局と、
第2の通信局と、
前記第1の通信局と前記第2の通信局との時分割多重による通信のタイムスロットを変更しないで前記通信を中継する中継局と、
前記中継局において、前記通信を中継中に前記中継局内から前記第2の通信局への通信要求が発生した場合に、前記中継される通信が第1の条件を充足し、かつ、前記通信要求による通信が第2の条件を充足するときに、前記中継局に対して前記通信要求による通信を許可する制御装置と、を備える通信システム。
【請求項2】
前記第1の条件は、前記中継される通信において、前記第2の通信局での受信信号の信号対干渉雑音電力比が、前記受信信号の変調方式及び符号化率に対して要求される信号対干渉雑音電力比以上となることである請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第2の条件は、前記中継局に対して許容される最大送信電力から前記中継される通信の送信電力を除外して得られる前記通信要求による通信で利用可能な前記中継局における送信電力が正の値であって、かつ、前記通信要求による通信に対して、前記第2の通信局での受信信号について計算される信号対干渉雑音電力比によって通信可能な変調方式及び符号化率が存在することである請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2の条件を充足する前記通信要求による通信で利用可能な送信電力を前記中継局に通知する請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2の条件を充足する前記変調方式及び符号化率を前記中継局と前記第2の通信局に通知する請求項3に記載の通信システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1の通信局または前記第2の通信局に含まれる請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
第1の通信局と、
第2の通信局と、
前記第1の通信局と前記第2の通信局との時分割多重による通信のタイムスロットを変更しないで前記通信を中継する中継局と、を制御する制御装置であって、
前記中継局において、前記通信を中継中に前記中継局内から前記第2の通信局への通信要求が発生した場合に、前記中継される通信が第1の条件を充足し、かつ、前記通信要求による通信が第2の条件を充足するときに、前記中継局に対して前記通信要求による通信を許可する制御装置。
【請求項8】
前記第1の条件は、前記中継される通信において、前記第2の通信局での受信信号の信号対干渉雑音電力比が、前記受信信号の変調方式及び符号化率に対して要求される信号対干渉雑音電力比以上となることである請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第2の条件は、前記中継局に対して許容される最大送信電力から前記中継される通信の送信電力を除外して得られる前記通信要求による通信で利用可能な前記中継局における送信電力が正の値であって、かつ、前記通信要求による通信に対して、前記第2の通信局での受信信号について計算される信号対干渉雑音電力比によって通信可能な変調方式及び符号化率が存在することである請求項7に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第2の条件を充足する前記通信要求による通信で利用可能な送信電力を前記中継局
に通知する請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記第2の条件を充足する前記変調方式及び符号化率を前記中継局と前記第2の通信局に通知する請求項9に記載の制御装置。
【請求項12】
前記第1の通信局または前記第2の通信局に含まれる請求項7に記載の制御装置。
【請求項13】
第1の通信局と、
第2の通信局と、
前記第1の通信局と前記第2の通信局との時分割多重による通信のタイムスロットを変更しないで前記通信を中継する中継局と、を制御する制御装置が、
前記中継局において、前記通信を中継中に前記中継局内から前記第2の通信局への通信要求が発生した場合に、前記中継される通信が第1の条件を充足し、かつ、前記通信要求による通信が第2の条件を充足するときに、前記中継局に対して前記通信要求による通信を許可する通信方法。
【請求項14】
前記第1の条件は、前記中継される通信において、前記第2の通信局での受信信号の信号対干渉雑音電力比が、前記受信信号の変調方式及び符号化率に対して要求される信号対干渉雑音電力比以上となることである請求項13に記載の通信方法。
【請求項15】
前記第2の条件は、前記中継局に対して許容される最大送信電力から前記中継される通信の送信電力を除外して得られる前記通信要求による通信で利用可能な前記中継局における送信電力が正の値であって、かつ、前記通信要求による通信に対して、前記第2の通信局での受信信号について計算される信号対干渉雑音電力比によって通信可能な変調方式及び符号化率が存在することである請求項13に記載の通信方法。
【請求項16】
前記制御装置は、前記第2の条件を充足する前記通信要求による通信で利用可能な送信電力を前記中継局に通知する請求項15に記載の通信方法。
【請求項17】
前記制御装置は、前記第2の条件を充足する前記変調方式及び符号化率を前記中継局と前記第2の通信局に通知する請求項15に記載の通信方法。
【請求項18】
前記制御装置は、前記第1の通信局または前記第2の通信局に含まれる請求項13に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、制御装置及び、通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
5th Generation Mobile Communication System(5G)等の無線通信においては、サブミリ秒以下の超低遅延通信が期待されている。一方で、通信サービス向上の観点では、セルのカバレッジエリアの拡大が望まれ、そのためには、中継局を介する中継通信が有効である。ところで、遅延の少ない中継技術として、中継局では復調・復号は行わない非再生中継が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TS 38.174 V17.0.0(2022-03)
【非特許文献2】3GPP TS 38.106 V17.0.0(2022-03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非再生中継が行われる中継局においても、中継局内で通信要求が発生する場合がある。例えば、中継局内で中継先へ送信したいデータが生じた場合、非再生中継を停止して送信すると、遅延の少ない中継技術としての非再生中継の利点が低下する。一方、中継局が再生中継を停止しない場合には、非再生中継を行う無線通信リソースに加えて、追加で中継局から中継先へのデータ伝送のための無線通信リソースを確保できるか否かを適切に判断できることが望ましい。開示の実施形態の側面は、時間遅れを抑制して非再生中継を行う中継局内で発生した通信要求を適切に処理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の実施形態の1つの側面は、通信システムによって例示される。本通信システムは、第1の通信局と、第2の通信局と、前記第1の通信局と第2の通信局との時分割多重による通信のタイムスロットを変更しないで前記通信を中継する中継局と、前記中継局において、前記通信を中継中に前記中継局内から前記第2の通信局への通信要求が発生した場合に、前記中継される通信が第1の条件を充足し、かつ、前記通信要求による通信が第2の条件を充足するときに、前記中継局に対して前記通信要求による通信を許可する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本通信システムによれば、時間遅れを抑制して非再生中継を行う中継局内で発生した通信要求を適切に処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態の通信システムを例示する図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に含まれる他の例である通信システムを例示する図である。
【
図3】
図3は、中継局3の構成を例示する図である。
【
図4】
図4は、制御装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図5】
図5は、基地局からの送信信号を端末局で受信するときの受信波の受信タイミングと受信電力を例示する図である。
【
図6】
図6は、中継波と重畳波の伝搬にともなう信号電力の変化を例示する図である。
【
図7】
図7は、本通信システムにおける処理フローである。
【
図8】
図8は、本通信システムにおける処理フローである。
【
図9】
図9は、本通信システムにおける処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、一実施形態の通信システム、制御装置、および通信方法が説明される。本通信システムは、第1の通信局と、第2の通信局と、第1の通信局と第2の通信局との時分割多重による通信のタイムスロットを変更しないで通信を中継する中継局と、制御装置とを備える。制御装置は、中継局において、通信を中継中に中継局内から第2の通信局への通信要求が発生した場合に、中継される通信が第1の条件を充足し、かつ、通信要求による通信が第2の条件を充足するときに、中継局に対して通信要求による通信を許可する。本通信システムでは、中継局は非再生中継を停止することなく、または、中継される通信のタイムスロットをずらさないで中継を維持した上で、中継局内で発生した通信要求による中継先へのデータ伝送が行える。また、本通信システムは、無線通信リソースを効率良く利用できる。
【0009】
ここで、第1の通信局は送信局ということができる。また、第2の通信局は受信局ということができる。また、第1の条件は、中継される第1の通信局から第2の通信局への通信が、受信局である第2の通信局で十分な信号対干渉雑音電力比以上で受信される条件である。また、第2の条件は、中継局での通信要求による通信が受信局である第2の通信局において、上記第1の通信局から第2の通信局への通信の受信電力と比較して、十分な電力差で受信される条件ということができる。本通信システムでは、第1の条件として中継局で中継される通信が受信局で所定の通信品質で受信できることが要求される。かつ、第2の条件として、中継局に対して許容される最大送信電力から通信を中継するための送信電力を除外して得られる前記通信要求による通信で利用可能な前記中継局における送信電力が正の値であることが要求される。さらに、この第2の条件として、前記通信要求による通信が上記正の値の送信電力で実施されたときに、前記第2の通信局での受信信号について計算される信号対干渉雑音電力比に対して通信可能な変調方式及び符号化率が存在することが要求される。この第1の条件と第2の条件とが充足される場合、中継局での通信要求による通信が許可される。
【0010】
<実施形態>(システム構成)
図1は一実施形態の通信システム100Aを例示する図である。通信システム100Aは、制御装置1と、基地局2と、中継局3と、端末局4とを有する。制御装置1は、基地局2が接続されるコアネットワーク上の装置である。ただし、制御装置1がコアネットワーク自体であるか、またはコアネットワークに含まれるシステムであると考えることもできる。コアネットワークは、例えば、光ファイバ網を含む。制御装置1は、基地局2、中継局3、端末局4を制御し、端末局4に通信サービスを提供する。
【0011】
基地局2は、端末局4に無線アクセスネットワークを提供する。無線アクセスネットワークでの無線通信が可能なエリアは、セルとも呼ばれる。基地局2は、1以上のアンテナ(例えば、#0)と、これら1以上のアンテナに接続される無線機21と、制御回路22を有する。制御回路22は、例えば、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、および中継局3、端末局4との無線通信を制御する。
【0012】
端末局4は、移動局とも呼ばれる。移動局は、基地局2が提供するセルの範囲で無線アクセスネットワークに接続する。一方、中継局3は、基地局2と端末局4との無線通信を中継する。中継局3は、設置位置が固定された固定局と呼ばれるものと、移動局とを含み
得る。
【0013】
中継局3は、基地局2と同様、1以上のアンテナ(例えば、#0)と、これら1以上のアンテナのそれぞれに接続される無線機31と、制御回路32を有する。なお、制御回路32が無線機31に接続されるアンテナとは独立に、制御回路32専用のアンテナに接続される場合もある。
【0014】
端末局4は、1以上のアンテナ(例えば、#0)と、これら1以上のアンテナのそれぞれに接続される無線機41と、制御回路42を有する。ただし、1つの無線機41に複数
アンテナが搭載されてもよい。例えば、無線機41は受信信号レベルが最も高いアンテナを選択して、受信信号を受信すればよい。同様に、中継局3の1つの無線機31に複数アンテナが搭載されてもよい。セル内の移動局が基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求し、接続されることで、移動局が端末局4として動作する。セル内の移動局は、基地局2に直接無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。また、移動局は、セル内で中継局3として動作する移動局またはセル内外の固定局を介して基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。端末局4は、1以上の中継局3のいずれかを介してまたは1以上の中継局3のいずれをも介さずに基地局2と通信可能な局ということができる。下りチャネルにおいては、第1の通信局は、基地局2であり、第2の通信局は、端末局4ということができる。また、上りチャネルにおいては、第1の通信局は、端末局4であり、第2の通信局は、基地局2ということができる。
【0015】
図2は、本実施形態に含まれる他の例である通信システム100Bを例示する図である。通信システム100Bは、
図1の通信システム100Aと比較して、基地局2の代わりに、中央基地局2Aと、1以上の分散基地局2Bと有する。1以上の分散基地局2Bが個々に区別される場合に、分散基地局2B-1、・・・、2B-Kのように枝番が付される。ここで、枝番Kは分散基地局数を示す整数である。
図2においては、分散基地局2B-1と2B-Kが例示されている。ただし、分散基地局2B-1、・・・、2B-Kが総称される場合には、単に、分散基地局2Bと記述される。
【0016】
中央基地局2Aは、制御回路22Aを有する。また、分散基地局2Bは、無線機21Bを有する。中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとは、例えば、光ファイバC1または無線ネットワークで接続される。中央基地局2Aと複数の分散基地局2Bとを接続する光ファイバC1のトポロジに限定はない。例えば、光ファイバC1のトポロジは、ノード間の一対一の接続、中央基地局2Aから離れるにしたがって分岐するネットワーク、スター型のネットワーク、または、リングネットワーク等であってもよい。また、中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとの間を無線ネットワークで接続する場合に、無線ネットワークの規格、プロトコルに限定はない。
【0017】
制御回路22Aは、
図1の制御回路22と同様、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、および中継局3、端末局4との無線通信を制御する。すなわち、制御回路22Aは、1以上の分散基地局2Bの無線機21Bを介して、中継局3、端末局4との無線通信を制御する。下りチャネルにおいては、第1の通信局は、中央基地局2Aと分散基地局2Bであり、第2の通信局は、端末局4ということができる。また、上りチャネルにおいては、第1の通信局は、端末局4であり、第2の通信局は、中央基地局2Aと分散基地局2Bということができる。
【0018】
図3は、中継局3の構成を例示する図である。中継局3は、無線機31と、制御回路32を有する。中継局3の無線機31は、送信機311と受信機312とベースバンド回路
313とサーキュレータ314を有する。送信機311と受信機312とはサーキュレータ314を介してアンテナ(#0)に接続される。すなわち、サーキュレータ314の3つのポートに送信機311と受信機312とアンテナ(#0)とが接続される。そして、送信機311からの送信信号は、サーキュレータ314の例えば1つ目のポートに入力され、2つ目のポートからアンテナ(#0)に伝達される。また、アンテナ(#0)で受信された受信信号は、サーキュレータ314の2つ目のポートに入力され、3つ目のポートから受信機312に伝達される。
【0019】
ここで、送信信号と受信信号の電力差は例えば約100dBほどである。一方、サーキュレータ314のアイソレーションは30dB程度であり、送信信号の一部は受信信号と自己干渉を生じる。この自己干渉は受信機312内のRadio Frequency(RF)アナログ
フィルタとベースバンド回路313内のFIRフィルタ319を併用することで抑圧される。
【0020】
受信機312は、サーキュレータ314を介してアンテナ(#0)から受信信号を受ける。受信機312は、直交検波回路とアナログデジタル(AD)コンバータを有する。受信機312は、直交検波により受信信号をダウンコンバートし、さらにADコンバータによりデジタルデータに変換してベースバンド信号を得る。受信機312は、得られたベースバンド信号をベースバンド回路313に出力する。
【0021】
ベースバンド回路313は、FIRフィルタ319と、信号生成回路315と、振幅調整回路316、317と、加算回路318を有する。FIRフィルタ319は、受信信号に混入し、自己干渉している送信信号を抑圧する。振幅調整回路316は、FIRフィルタ319によりフィルタリングしたベースバンド波形の受信信号の振幅を調整する。このベースバンド波形の受信信号は被中継信号ということができる。被中継信号は、加算回路318によって信号生成回路315からの重畳信号と加算された後、送信機311のアナログデジタル(DA)コンバータでアナログ信号に変換され、高周波信号に変換され、パワーアンプで増幅される。ここで、送信機311におけるDAコンバータに入力されるベースバンド波形(例えば、符号付整数値によって表現される複素数の列)の振幅値と高周波信号の電力値の関係は既知である。例えば、パワーアンプの利得が既知であり、
図3の構成のとおり、アイソレータのアイソレーションが固定である場合には、ベースバンド波形と高周波信号の電力値との関係は、受信機によって計測することが可能である。そこで、振幅調整回路316がベースバンド波形の被中継信号の振幅を調整することで、ベースバンド回路313は、被中継信号を搬送する高周波信号の送信電力(P
R、BS)を調整できる。そのため、振幅調整回路316は、振幅調整したベースバンド波形の被中継信号を加算回路318に出力する。
【0022】
信号生成回路315は、制御回路32の指令により、中継局3で発生した通信要求、すなわち、中継局内から中継先へ送信したいデータを送信するためのベースバンド波形の重畳信号を生成する。振幅調整回路317は、信号生成回路315で生成されたベースバンド波形の重畳信号の振幅を調整する。重畳信号は、加算回路318で被中継信号と合成された後、送信機311のDAコンバータでアナログ信号に変換され、高周波信号に変換され、パワーアンプで増幅される。上述のように、送信機311におけるDAコンバータの振幅値と高周波信号の電力値の関係は既知である。そこで、振幅調整回路317がベースバンド波形の重畳信号の振幅を調整することで、ベースバンド回路313は、重畳信号の高周波の送信電力(PR、R)を調整できる。そのため、振幅調整回路316は、振幅調整したベースバンド波形の重畳信号を加算回路318に出力する。
【0023】
加算回路318は、例えば、16ビットの符号付整数を加算する回路であり、複素数の実部と虚部で表現されるベースバンド波形の信号値を加算する。加算回路318は、入力
される2つの信号(被中継信号と重畳信号)をデジタル加算し、合成する。ベースバンド波形で振幅調整された被中継信号と、ベースバンド波形で振幅調整された重畳信号を合成し、合成信号を送信機311に出力する。送信機311は、ベースバンド波形の合成信号をDAコンバータでアナログデータに変換し、変調回路において合成信号の周波数変換(アップコンバート)を行う。送信機311は、これによって高周波の搬送波を変調し、変調された高周波信号をパワーアンプで増幅してアンテナから送信する。被中継信号と、重畳信号とは、ベースバンド波形において振幅調整されている。また、上述の通り、DAコンバータの振幅値と高周波信号の電力値の関係は既知である。したがって、中継局3は、中継信号と重畳信号に対して、ベースバンド波形の振幅を調整することにより、アンテナから送信される被中継信号の電力PR、BSと重畳信号の電力PR、Rを制御できる。
【0024】
送信機311は、デジタルアナログ(DA)コンバータと、変調回路とを有する。送信機311は、ベースバンド回路313からの受信信号をアナログ信号に変換し、変調回路により高周波信号を生成する。高周波信号は、高周波の搬送波が加算回路318からの合成信号で変調された信号である。そして、送信機311は、サーキュレータ314を介してアンテナ(#0)から高周波信号を中継信号として送信する。
【0025】
制御回路32は、中継局3を制御し、中継局3としての機能を提供する。制御回路32は、例えば、制御装置1、基地局2、端末局4との間の通信を制御する。例えば、制御回路32は、端末局4と中継局3との間の伝搬遅延τUE->R及び伝搬特性HUE->Rを計測する。また、制御回路32は、FIRフィルタ319の設定、振幅調整回路316、317等の制御パラメータを設定する。さらに、制御回路32は、中継局3内で発生した受信局(下りチャネルでは端末局4、上りチャネルでは基地局2)への通信要求が発生したときに、通信要求に対する可否を制御装置1に問い合わせる。
【0026】
図4は、制御装置1のハードウェア構成を例示する図である。制御装置1はCPU11と、主記憶装置12と、外部機器を有し、コンピュータプログラムにより通信処理および情報処理を実行する。CPU11は、プロセッサとも呼ばれる。CPU11は、単一のプロセッサに限定されず、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、CPU11は、Graphics Processing Unit(GPU)、Digital Signal Processor(DSP)等を含むものであってもよい。また、CPU11は、Field Programmable Gate Array(FPGA)等
のハードウェア回路と連携するものでもよい。外部機器としては、外部記憶装置13、出力装置14、操作装置15、および通信装置16が例示される。
【0027】
CPU11は、主記憶装置12に実行可能に展開されたコンピュータプログラムを実行し、制御装置1の処理を提供する。主記憶装置12は、CPU11が実行するコンピュータプログラム、CPU11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)、Static Random Access Memory(SRAM)、Read Only Memory(ROM)等である。さらに、外部記憶装置13は、例えば、主記憶装置1
2を補助する記憶領域として使用され、CPU11が実行するコンピュータプログラム、CPU11が処理するデータ等を記憶する。外部記憶装置13は、ハードディスクドライブ、Solid State Drive(SSD)等である。さらに、制御装置1には、着脱可能記憶媒
体の駆動装置が接続されてもよい。着脱可能記憶媒体は、例えば、ブルーレイディスク、Digital Versatile Disc(DVD)、Compact Disc(CD)、フラッシュメモリカード等である。
【0028】
出力装置14は、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等の表示装置である。ただし、出力装置14がスピーカその他の音を出力する装置を含んでもよい。操作装置15は、例えば、ディスプレイ上にタッチセンサを重ねたタッチパネル等である。通信装置16は、例えば、光ファイバを介して基地局2およびインターネット等の
外部ネットワークと通信する。通信装置16は、例えば、基地局2に接続されるゲートウェイおよびインターネット等の外部ネットワークと通信するゲートウェイである。通信装置16は、1台の装置であってもよいし、複数台の装置の組み合わせであってもよい。
【0029】
(信号電力)
図5は、送信局としての基地局2からの送信信号を受信局としての端末局4で受信するときの受信波の受信タイミングと受信電力を例示する図である。
図5で、横軸は、例えば、基地局2を発した信号が端末局4に到達までの時間である。また、縦軸は、端末局4で受信される信号の電力である。また、3つの黒丸は、信号中で単一のタイムスロットで送信されるシンボルを例示する。3つの黒丸うち、1つは、基地局2から端末局4に直接到達する直達波によって伝達される直達信号のシンボルの例である。また、2つ目は、中継局3で中継される中継波で伝達される被中継信号のシンボルの例である。また、3つ目は、中継局3内で発生した送信要求(データ)に対応する信号のシンボルである。本実施形態では、中継局3内で発生した送信要求に対応する信号は、重畳信号と呼ばれる。また、重畳信号で変調された高周波は、重畳波と呼ばれる。これらの各シンボルは、基地局2を発してからサイクリックプレフィックスの区間Tcpにおいて、端末局4において受信される。
【0030】
図5の例では、直達波は、τ
BS->UEの伝搬遅延量で基地局2から端末局4に到達する。中継波は、τ
BS->Rの伝搬遅延量で基地局2から中継局3に到達する。中継波は、τ
Rの処理遅延時間で中継局3において非再生中継され、中継局3から発せられる。中継波は、ΔRの伝搬遅延量で中継局3から端末局4に到達する。中継局3内で発生したデータの信号(重畳信号)を搬送する重畳波も、ΔRの伝搬遅延量で中継局3から端末局4に到達する。
【0031】
制御装置1は、例えば、下りチャネルの受信局である端末局4で直達波の信号、中継波の被中継信号、および重畳波の重畳信号を含む受信波のそれぞれの信号の分離を行えるようにそれぞれの受信時の電力を決定する。そして、制御装置1は、決定した直達波、中継波、および重畳波の受信電力が得られるように、基地局2における送信電力と中継局3における送信電力を決定する。また、制御装置1は、中継局3においては、中継波、および重畳波のそれぞれに対して送信電力を決定する。そして、制御装置1は、決定した送信電力を基地局2および中継局3に通知する。これらの送信電力は、受信局(端末局4)での目標とする受信電力と、送信局(基地局2)と受信局(端末局4)との間の経路の伝搬損失とから計算される。
【0032】
基地局2は、通知された送信電力で送信波を送信する。中継局3は、被中継信号を搬送する中継波、および重畳信号を搬送する搬送波のそれぞれに対して通知された送信電力で、中継波、および重畳波を送信する。なお、
図5では、基地局2から端末局4に送信される下りチャネルの信号を例示する。しかし、制御装置1は、端末局4から基地局2への上りチャネルの信号についても、同様に処理する。すなわち、制御装置1は、受信局(基地局2)において、決定した直達波、中継波、および重畳波の受信電力が得られるように制御する。すなわち、制御装置1は、送信局(端末局4)における送信電力、中継局3における送信電力を決定する。また、制御装置1は、中継局3においては、中継波、および重畳波のそれぞれに対して送信電力を決定する。そして、制御装置1は、決定した送信電力を端末局4および中継局3に通知する。これらの送信電力は、受信局(基地局2)での目標とする受信電力と、送信局(端末局4)と受信局(基地局2)との間の経路の伝搬損失とから計算される。
【0033】
図6は、中継波と重畳波の伝搬にともなう信号電力の変化を例示する図である。
図6では、送信側(基地局2)から送信電力P
BSで送信された信号が伝搬損失である減衰量L
R->BSの伝搬経路を通り中継局3に到達する。なお、基地局2は中継局3から送信される制御チャネルのリファレンス信号から減衰量L
R->BSを計測する。
図6では、基地局2から中継局3に至る伝搬経路の損失として、減衰量L
R->BSを用いる。中継局3に到達した信号は、非再生中継により非再生中継後の中継波の送信電力P
R,BSで送信される。送信された信号が伝搬損失である減衰量L
UE->Rの伝搬経路を通り受信局(端末局4)に到達する。このとき、受信局(端末局4)での受信SINRがΓ
BS->R->UEである。一方、中継局3で中継波に重畳される重畳波の送信電力はP
R,Rである。以上の中継波(被中継信号)および重畳波(重畳信号)の送信電力には以下の(式1)乃至(式5)による条件が課せられる。
【0034】
まず、中継波の受信SINRは、受信信号の変調方式及び符号化率(MCS)で必要されるSINR値以上であることが要求される。ここで、受信信号のMCSが必要とするSINR値をSBS->UEとすると、下記(式1)が要求される。
【0035】
【数1】
なお、(式1)の条件にさらに、マージンM
BS->UEが上乗せされた条件であってもよい。この場合、(式1)に代えて(式2)が充足されるようにしてもよい。
【0036】
【数2】
ここで、(式1)の条件は、第1の条件の一例である。また、(式2)の条件も、第1の条件の一例である。すなわち、第1の条件は、中継される通信において、第2の通信局としての受信局(例えば、端末局4)での受信信号の信号対干渉雑音電力比が、受信信号の変調方式及び符号化率(MCS)に対して要求される信号対干渉雑音電力比以上となることである。次に、重畳波の送信電力P
R,Rと、中継波の送信電力P
R,BSの合計は、中継局3の最大送信電力P
R,max以内である必要がある。そこで、(式3)が要求される。
【0037】
【数3】
ここで、10^xは、10の累乗であり、xを指数とする指数関数である。また、重畳波の送信電力P
R,R、中継波の送信電力P
R,BS、最大送信電力P
R,maxは、デシベルで表した信号電力である。
【0038】
したがって、(式3)を充足する重畳波の送信電力はP
R,Rは正の値であることが必要である。ここで、送信電力P
R,Rで中継局3から送信された重畳波が減衰量L
UE->Rの伝搬経路を通り受信側(端末局4)に到達し、受信される信号のSINRがΓ
R->UEである。なお、
図6のように、重畳波(重畳信号)の受信信号のSINRは、中継波(被中継信号)の受信局(例えば、端末局4)でのSINRであるΓ
BS->R->UEを基準とした値である。そして、第2の条件は、重畳信号のSINR、すなわちΓ
R->UEに対して、通信可能なMCSが存在することである。すなわち、通信可能なMCSが要求する受信SINRをS
R->UEとすると、(式4)が要求される。
【0039】
【数4】
ただし、(式4)の条件にさらに、マージンM
R->UEが上乗せされた条件であってもよい。この場合、(式4)は、(式5)であってもよい。
【0040】
【数5】
すなわち、第2の条件は、(式3)の重畳波の送信電力P
R,Rが正であって、かつ、重畳波に対して、(式4)または(式5)の受信SINR(S
R->UE)で通信可能な変調方式及び符号化率(MCS)が存在することである。
【0041】
図6では、受信局である端末局4の受信SINRの条件として、(式2)と(式5)の条件が例示されている。制御装置1は、
図6に例示される(式2)と(式5)の条件が充足されるか否かにより、中継局3における重畳信号発生の可否を決定する。また、制御装置1は、(式2)と(式5)の条件が充足され場合に、重畳波のMCSおよび重畳波の送信電力を決定する。なお、
図6では、送信局を基地局2とし、受信局を端末局4としたが、送信局を端末局4とし、受信局を基地局2としても同様である。
【0042】
ここで、下りチャネルにおいて送信局である基地局2は、第1の通信局の一例である。また、下りチャネルにおいて受信局である端末局4は、第2の通信局の一例である。また、上りチャネルにおいて送信局である端末局4は、第1の通信局の一例である。また、上りチャネルにおいて受信局である基地局2は、第2の通信局の一例である。
【0043】
(処理フロー)
図7から
図9は、本通信システム100における処理フローである。
図7から
図9の処理フローは、無線フレームごとに繰り返される。ここでは、基地局2を送信局(第1の通信局)、端末局4を受信局(第2の通信局)として処理フローが説明される。まず、端末局4、中継局3は、上り制御チャネルにおいてリファレンス信号を基地局2へ送信する(S71、S72)。
【0044】
中継局3は、端末局4から基地局2への制御チャネル等のリファレンス信号を受信して、伝搬遅延τ
UE->R及び伝搬特性H
UE->Rを計測する(S75)。さらに、中継局3は、制御装置1に対して制御チャネルを介して、信号重畳の希望と計測したH
UE->Rを基地局2経由で通知する(S76、S77)。ここで、信号重畳の希望は、中継局3において、受信局(被中継局)である端末局4へデータを送信する要求が発生したときに、中継局3から制御装置1に送信される。基地局2は中継局3から送信される制御チャネルのリファレンス信号から伝搬特性H
R->BSを計測し、制御装置1に通知する(S78)。
図7は、A1、B1、C1により、
図8に継続する。以下、
図8により説明が継続される。なお、
図7のD1は、
図9に継続する。
【0045】
制御装置1は、HUE->R及びHR->BSから、中継局3における信号の重畳の可否について判断する。すなわち、制御装置1は、HUE->RとHR->BSから各区間における減衰量LUE->RとLR->BSを計算する。ここで、減衰量LUE->Rは、端末局4と中継局3の間の伝搬経路に対応する。また、LR->BSは、中継局3と基地局2の間の伝搬経路に対応する。そして、制御装置1は、各区間における減衰量LUE->RとLR->BSとから被中継信号の端末局4における受信SINR(信号対干渉雑
音電力比)ΓBS->R->UEを算出する(S81)。
【0046】
そして、制御装置1は、基地局2からの送信信号について、端末局4における受信SINR ΓBS->R->UEが、基地局2と端末局4との通信でのMCSが必要とするSINR値SBS->UE以上となるか否かを判定する(S82)。そして、S82の判定がYESとなる場合、制御装置1は、S82の判定がYESとなるために必要な中継局3において中継される中継波の所望の送信電力PR,BSを求める。このとき、制御装置1は、端末局4におけるマージンMBS->UEを設定しても良い((式2)参照)。すなわち、制御装置1は、端末局4における所望SINRをSBS->UE+ MBS->UEとしてもよい。
【0047】
次に、制御装置1は、中継局3での最大送信電力PR,maxと、中継波の送信電力PR,BSから、重畳信号の送信に利用可能な送信電力PR,R=10・log10(10^(PR,max/10)-10^(PR,BS/10))を計算する((式3)参照)。PR,Rが正であるとき、制御装置1は、送信電力PR,Rで重畳波が中継局3から送信されたときの端末局4における受信SINR ΓR->UEを求める(S83)。そして、制御装置1は、受信SINR ΓR->UEで通信可能なMCSがあるか否かを判定する(S84)。すなわち、制御装置1は、中継局3に対して許容される最大中継電力としての最大送信電力PR,maxから通信を中継するための送信電力であるPR,BSを除外して得られる通信要求による通信で利用可能な中継局3における送信電力PR,Rを計算する。そして、送信電力PR,Rが正であって、重畳信号の端末局4における受信SINR ΓR->UEで通信可能な変調方式及び符号化率(MCS)があるか否かを判定する。
【0048】
S84の判定がNOの場合、制御装置1は、中継局3に重畳を許可しない。このため、制御装置1は、基地局2を介して中継局3に対して重畳不許可を通知する(S85、S86)。次に、
図8は、A2、B2、C2により、
図9に継続する。なお、
図7のD1は、
図9に継続する。以下、
図9により説明が継続される。中継局3は、重畳不許可の場合(S91でNO)、重畳信号なしで被中継信号を非再生中継する(S92)。
【0049】
一方、S84の判定がYESの場合、制御装置1は、中継局3において、中継波に対する重畳波の重畳を許可する。ここで、MCSの所望SINRはSR->UEとするが((式4)参照)、制御装置1はマージンMR->UEを所望SINRに加えて判断しても良い((式5)参照)。重畳が許可されると判断され場合、制御装置1は、重畳許可とともに、中継局3において中継波に重畳される重畳波のMCSを中継局3及び端末局4へ制御チャネルを介して基地局2から通知する(S93、S94)。また、制御装置1は、中継波の送信電力PR,BS及び重畳波の送信電力PR,Rを、制御チャネルを介して基地局2から中継局3に通知する(S95、S96)。
【0050】
重畳の許可を受けた中継局3は、中継波の平均電力がPR,BSとなるように、FIRフィルタ通過後のベースバンド信号波形の振幅を設定する。また、中継局3は、重畳信号については、指定されたMCSに基づきベースバンド波形の信号を生成し、重畳波の平均電力がPR,Rとなるように、ベースバンド信号の振幅を調整する。中継局3は、中継波と重畳波とをベースバンド波形の信号において加算し、高周波信号へ変換して送信する(S97)。これにより、中継局3は、重畳波の送信とともに中継波を非再生中継する。
【0051】
端末局4は、逐次干渉除去等の各種の重畳信号を分離する処理を用いて各局からのデータを受信する(S98)。
【0052】
(実施形態の効果)
本実施形態では、中継局3が、時分割多重による通信のタイムスロットを変更しないで、送信局である基地局2(または端末局4)からの送信信号を非再生中継する。そして、中継局3で、受信局(被中継局)である端末局4(または基地局2)へデータを送信する要求が発生したときに中継局3は、信号重畳の希望と中継局3で計測した中継局3と受信局(例えば、端末局4)との間の伝搬特性HUE->Rを制御装置1に通知する。また、送信局(例えば、基地局2)は、基地局2と中継局3との間の伝搬特性HR->BSを計測し、制御装置1に通知する。すると、制御装置1は、第1の条件として、送信局(例えば、基地局2)からの送信信号について、受信局(端末局4)における受信SINR ΓBS->R->UEが、送信局(基地局2)と受信局(端末局4)との通信でのMCSが必要とするSINR値SBS->UE以上となるか否かを判定する。また、あるいは、制御装置1は、この判定結果がYES(肯定)でとなるように、すなわち、第1の条件が充足される中継波の送信電力PR,BSを決定する。次に、制御装置1は、中継局3での最大送信電力PR,maxと、中継波の送信電力PR,BSから、重畳信号の送信に利用可能な送信電力PR,R=10・log10(10^(PR,max/10)-10^(PR,BS/10))を計算する。そして、重畳信号の送信に利用可能な送信電力PR,Rが正であって、重畳信号の端末局4における受信SINR ΓR->UEを満足する通信可能なMCSが存在する場合に、制御装置1は、中継局3における重畳波の中継波への重畳を許可する。そして、制御装置1は、重畳許可とともに、中継局3において中継波に重畳される重畳波のMCSを中継局3及び端末局4へ通知する。また、制御装置1は、中継波及び重畳波の送信電力PR,BS及びPR,Rを中継局3に通知する。
【0053】
したがって、制御装置1は、まず、中継波が非再生中継によって受信局(例えば、端末局4)で受信可能となるように、中継局3での中継波の送信電力PR,BSを決定する。これが第1の条件となる。次に、制御装置1は、中継局3での最大送信電力PR,maxと中継波の送信電力PR,BSから重畳信号の送信に利用可能な送信電力PR,R=10・log10(10^(PR,max/10)-10^(PR,BS/10))を計算する。そして、制御装置1は、重畳信号の送信に利用可能な送信電力PR,Rで中継局3から送信した重畳波の受信局(端末局4)における受信SINR ΓR->UEで通信可能な変調方式及び符号化率(MCS)があるか否かを判定する。これにより、中継局3は、例えば、中継波から重畳波を分離できるように重畳波に十分な電力を与えた上で、中継波に重畳して、中継局3で発生した送信要求による重畳波を送信できる。以上の制御装置1での判定および中継局3での重畳波の中継波への重畳は、無線フレームの繰り返しの中で実施される。すなわち、中継局3は、中継波のタイムスロットをずらさない範囲で、非再生中継と、重畳波の中継波への重畳を実施できる。
【0054】
このとき、上述の通り、制御装置1は、中継局3で中継される中継波について、端末局4における受信SINR ΓBS->R->UEが、基地局2と端末局4との通信でのMCSが必要とするSINR値SBS->UE以上となるか否かを判定する。したがって、非再生中継によって、送信局である基地局2(または端末局4)からの送信信号が、中継局3で中継され、受信局である端末局4(または基地局2)で受信できる限度で、制御装置1は、中継局3での重畳波の重畳を許可できる。
【0055】
また、制御装置1は、中継局3で重畳される重畳波について、重畳信号の送信に利用可能な送信電力PR,Rが正であって、重畳信号の端末局4における受信SINR ΓR->UEを満足する通信可能なMCSが存在する場合に、制御装置1は、中継局3における重畳波の中継波への重畳を許可する。したがって、重畳波が、受信局である端末局4(または基地局2)で受信できる限度で、制御装置1は、中継局3での重畳波の重畳を許可できる。
【0056】
また、このとき、制御装置1は、中継局3で重畳波に利用可能な送信電力を中継局3に
通知するので、中継局3は、制御装置1の制御にしたがって、適正な電力で重畳波を送信できる。また、このとき、制御装置1は、重畳信号の端末局4における受信SINRを満足する通信可能なMCSを中継局3および受信局である端末局4(または基地局2)に通知する。したがって、中継局3と受信局は、受信局で、中継波と重畳波を分離できる受信電力の差を有する中継波と重畳波を受信できる。
【0057】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、基地局2を送信局とし、端末局4を受信局として、通信システム100の処理が説明された。しかし、端末局4を送信局とし、基地局2を受信局として、通信システム100の処理は同様である。すなわち、制御装置1は、受信局である基地局2において、中継波の受信SINRが受信信号のMCSが必要とするSINR値以上であることを要求する。いま、MCSが必要とするSINR値をSUE->BSとする。そして、重畳信号の送信電力PR,Rと、中継波の送信電力PR,BSの合計は、中継局3の最大送信電力PR,max以内である必要がある。そこで、(式3)が要求される。この点は、上記実施形態と同様である。さらに、重畳信号が減衰量LR->BSの伝搬経路を通り受信側(基地局2)に到達し、受信される信号のSINRにおいて通信可能なMCSが存在することが要求される。したがって、端末局4を送信局とし、基地局2を受信局とする場合にも、実施形態の(式1)乃至(式5)と同様の条件が要求される。ただし、端末局4を送信局とし、基地局2を受信局とする場合には、(式1)乃至(式5)において、添え字中のBSとUEは入れ替えられる。
【0058】
したがって、制御装置1は、受信局を基地局2として、中継波の受信SINRおよび重畳信号の受信SINRに対して、
図8のS82およびS84と同様に判断すればよい。そして、S84と同様の判断において、制御装置1は、中継局3に重畳を許可する場合には、S93と同様の手順で、中継局3から中継信号に重畳される重畳信号のMCSを基地局2及び基地局2を介して中継局3に通知すればよい。また、制御装置1は、被中継信号及び重畳信号の送信電力P
R,BS及びP
R,Rを、制御チャネルを介して基地局2から中継局3に通知すればよい。
【0059】
中継局3が複数本のアンテナを持つ場合に、中継局3は、アンテナごとに送信タイミングを変えて、ダイバーシティ効果が得られるようにすることもできる。ただし、中継局3は、受信局(例えば、端末局4)への到着時刻は、許容される伝搬遅延であるサイクリックプレフィックス長を超えないようにする。すなわち、中継局3は、中継信号および中継信号に重畳する信号について、送信局(例えば、基地局2)から受信した受信信号のタイムスロットがずれないように、中継信号および中継信号に重畳する信号を複数のアンテナから送信する。
【0060】
上記実施形態で、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0061】
上記実施形態では、制御装置1は、基地局2が接続されるコアネットワーク上の装置である。または、制御装置1がコアネットワーク自体であるか、またはコアネットワークに含まれるシステムである。しかしながら、制御装置1が、このようなコアネットワーク上の装置に限定される訳ではない。例えば、制御装置1が基地局2に含まれる装置であってもよい。例えば、制御装置1は基地局2内で、無線機21を通じて、中継局3または端末局4と通信する装置であってもよい。その場合には、
図7から
図9の処理においては、制御装置1と基地局2とは、一体の装置として処理を実行すればよい。したがって、A1、B1、A2、B2、A3、B3の2系列のシーケンスで記載されている処理は、1つのシ
ーケンスとなればよい。
【0062】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0063】
1 制御装置
2 基地局
2A 中央基地局
2B 分散基地局
3 中継局
4 端末局
11 CPU
12 主記憶装置
13 外部記憶装置
16 通信装置
21、21B、31、41 無線機
22、22A、32、42 制御回路
311 送信機
312 受信機
313 ベースバンド回路
314 サーキュレータ
315 信号生成回路
316、317 振幅調整回路
318 加算回路
319 FIRフィルタ