(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049193
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B65G1/04 537A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155507
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岩田 昌重
(72)【発明者】
【氏名】木村 和誠
(72)【発明者】
【氏名】堀江 智史
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022EE04
3F022FF01
3F022JJ09
3F022KK05
3F022KK14
3F022KK15
3F022MM52
3F022NN25
3F022NN27
(57)【要約】
【課題】物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きを小さく抑え易い搬送車を実現する。
【解決手段】移載機H1,H2は、物品を保持する保持部を備え、上下方向視で車体前後方向に交差する移載方向に沿って物品を移動させて、保持部と棚部80との間での物品の移載を行うように構成され、制御部は、昇降体40Bの昇降範囲における予め定められた基準高さhよりも上側に昇降体40Bが位置する場合には、基準高さhよりも下側に昇降体40Bが位置する場合に比べて、移載機H1,H2による移載方向に沿う物品の移動の加速度の上限を低く制限する加速度制限制御を実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する棚部を上下方向に複数段備えた収納棚の正面に沿って走行して、前記物品を搬送する搬送車であって、
走行経路に沿って走行する走行体と、
前記物品の移載を行う移載装置と、
前記移載装置を制御する制御部と、を備え、
前記移載装置は、
前記走行体に固定され、上下方向に沿うように配置されたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に支持された移載機と、
を備え、
前記走行体が走行する方向を車体前後方向として、
前記移載機は、前記物品を保持する保持部を備え、上下方向視で前記車体前後方向に交差する移載方向に沿って前記物品を移動させて、前記保持部と前記棚部との間での前記物品の移載を行うように構成され、
前記制御部は、前記昇降体の昇降範囲における予め定められた基準高さよりも上側に前記昇降体が位置する場合には、前記基準高さよりも下側に前記昇降体が位置する場合に比べて、前記移載機による前記移載方向に沿う前記物品の移動の加速度の上限を低く制限する加速度制限制御を実行する、搬送車。
【請求項2】
前記制御部は、前記基準高さよりも上側と下側とで、前記移載機による前記移載方向に沿う前記物品の移動速度の上限を同じとする、請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記移載機は、前記物品に係止される係止部と、前記係止部を前記移載方向に移動させる移動機構と、前記保持部を前記移載方向に出退動作させる出退機構と、を更に備え、
前記制御部は、前記出退機構による前記保持部の出退動作に伴う前記物品の移動を対象として前記加速度制限制御を実行し、前記移動機構による前記係止部の移動に伴う前記物品の移動については前記加速度制限制御を実行しない、請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項4】
前記基準高さは、前記搬送車の重心の高さに応じた高さに設定されている、請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項5】
前記車体前後方向に対して上下方向視で直交する方向を車体幅方向として、
前記走行体の前記車体幅方向の寸法が、前記走行体の前記車体前後方向の寸法の1/2以下であり、
前記走行体の下端から前記マストの上端までの上下方向の寸法が、前記走行体の前記車体幅方向の寸法の2倍以上である、請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項6】
前記制御部は、前記昇降範囲の少なくとも一部の領域において、当該領域の下限から上側に向かうに従って次第に加速度の上限が低くなるように、前記移載方向に沿う前記物品の移動の加速度の上限を制限する、請求項1又は2に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納する棚部を上下方向に複数段備えた収納棚の正面に沿って走行して、前記物品を搬送する搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送車は、収納棚に対して物品の移載を行う移載装置を備えている。
【0003】
例えば、特許第6337706号公報(特許文献1)に開示された移載装置(2)は、荷物(10)を載置する荷載置部(26)と、荷物(10)の移載方向に往復移動するトップ部(42)を有したスライドアーム(28)と、を備えている。移載装置(2)は、スライドアーム(28)におけるトップ部(42)の往復移動を利用して、荷載置部(26)からラック(12a,12b)へ荷物(10)を移載する卸し動作と、ラック(12a,12b)から荷載置部(26)へ荷物(10)を移載する掬い動作と、を行うように構成されている。なお、上記において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような移載装置を備えた搬送車においては、物品の移載動作に伴って、移載方向に沿った方向に慣性力が発生し、搬送車の揺れや傾きが生じる可能性がある。そして、搬送車の揺れや傾きが大きくなると、物品と棚部と移載装置との位置関係が変動し、移載動作に支障を来す可能性がある。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであり、物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きを小さく抑え易い搬送車の実現を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
物品を収納する棚部を上下方向に複数段備えた収納棚の正面に沿って走行して、前記物品を搬送する搬送車であって、
走行経路に沿って走行する走行体と、
前記物品の移載を行う移載装置と、
前記移載装置を制御する制御部と、を備え、
前記移載装置は、
前記走行体に固定され、上下方向に沿うように配置されたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に支持された移載機と、
を備え、
前記走行体が走行する方向を車体前後方向として、
前記移載機は、前記物品を保持する保持部を備え、上下方向視で前記車体前後方向に交差する移載方向に沿って前記物品を移動させて、前記保持部と前記棚部との間での前記物品の移載を行うように構成され、
前記制御部は、前記昇降体の昇降範囲における予め定められた基準高さよりも上側に前記昇降体が位置する場合には、前記基準高さよりも下側に前記昇降体が位置する場合に比べて、前記移載機による前記移載方向に沿う前記物品の移動の加速度の上限を低く制限する加速度制限制御を実行する。
【0008】
移載動作によって搬送車の揺れや傾きが大きくなると、物品と棚部と移載機との位置関係が変動することになり、移載動作の精度の低下が起きる。このような精度の低下を抑制するためには、搬送車の揺れや傾きが収まるまで移載動作を待機する必要があった。
しかし、本構成によれば、物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きを小さく抑え易い。従って、このような移載動作の精度の低下を抑制できると共に、移載動作を待機する必要性を低減でき、移載動作の効率を高めることができる。
このように、本構成によれば、物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きを小さく抑え易い搬送車を実現できる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】移載装置の第1姿勢と第2姿勢とを示す平面図
【
図11】別実施形態の加速度制限処理を説明するためのグラフ
【
図12】別実施形態の加速度制限処理を説明するためのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
搬送車は、物品を収納する棚部を上下方向に複数段備えた収納棚の正面に沿って走行して、物品を搬送する。以下、搬送車が、容器を搬送する搬送設備に備えられている場合を例示して、当該搬送車の実施形態について説明する。すなわち本実施形態では、容器が「物品」に相当し、容器を収納する容器棚が「収納棚」に相当する。
【0012】
図1に示すように、搬送設備Fは、容器70(
図3参照)を収納する容器棚8と、容器70の搬出及び搬入を行う搬出入部9と、を備えている。搬送車100は、搬出入部9によって搬入された容器70を容器棚8へ搬送し、又は、容器棚8に収納された容器70を搬出のために搬出入部9へ搬送する。
【0013】
本実施形態では、複数の容器棚8が、規定の間隔を空けつつ互いに平行に配置されている。複数の容器棚8のそれぞれは少なくとも正面が開口しており、当該正面において容器70の出し入れが行われる。そして、正面が向かい合って隣り合う一対の容器棚8の間に、走行体1(搬送車100)の走行経路Rの一部が設定されている。また、搬送設備Fに備えられた複数の容器棚8のうち最も端に配置された容器棚8は、正面を外側に向けて配置されており、当該端の容器棚8の正面に沿った領域にも走行経路Rの一部が設定されている。また、搬送設備Fには、複数の搬出入部9が設けられており、複数の搬出入部9のそれぞれを通る領域にも、走行経路Rの一部が設定されている。
【0014】
走行経路Rは、容器棚8の正面に沿って当該容器棚8の延在方向に延びる棚内経路Raと、容器棚8の配置領域の外部に設定された棚外経路Rbと、を含んでいる。棚内経路Raは、複数の容器棚8のそれぞれに対応して設定されている。本実施形態では、正面が向かい合って隣り合う一対の容器棚8の間の領域に設定された走行経路Rの一部、及び、正面を外側に向けて配置された容器棚8の当該正面に沿った領域に設定された走行経路Rの一部が、棚内経路Raに相当する。また、棚外経路Rbは、複数の棚内経路Raを繋ぐように設定されている。また、棚外経路Rbは、複数の搬出入部9のそれぞれを通るようにも設定されている。本実施形態では、走行経路Rにおける棚内経路Ra以外の部分が、棚外経路Rbに相当する。
【0015】
〔容器棚〕
図2に示すように、容器棚8は、容器70を収納する棚部80を上下方向に複数段備えている。本実施形態では、容器棚8は、当該容器棚8の正面に沿って水平方向に延在する梁部材82を複数備えると共に、上下方向に沿って延在し、複数の梁部材82のそれぞれに連結される複数の支柱部材81を備えている。
【0016】
複数の梁部材82のそれぞれに、容器70を載置するための載置部材83が連結されている。本例では、容器70は、一対の載置部材83に載置されることにより、棚部80に収納される。また、棚部80には、一対の載置部材83の組が複数組配置されており、1つの棚部80において複数の容器70を収納可能となっている。なお、本例では、
図3に示す正面視で幅方向(左右方向)に隣接する一対の支柱部材81の間であって、上下方向に隣接する一対の梁部材82の間の領域が、容器棚8の開口に相当する。
【0017】
本実施形態では、棚部80における容器70を収納するための基準位置80Pに、当該基準位置80Pにおいて容器70を収納するための目標となる目標部82Tが設けられている。本例では、目標部82Tは、梁部材82に設けられている。目標部82Tは、一対の載置部材83の組につき1つ設けられている。図示の例では、目標部82Tは、梁部材82に形成された孔によって構成されている。
【0018】
〔容器〕
容器70は、搬送車100による搬送対象である。詳細な図示は省略するが、容器70は、上方に開口する開口部を備えた箱状に形成されている。本例では、上下方向視における容器70の外形は、矩形状を成している。容器70の内部には、規定の被収容物が収容可能となっている。被収容物には、例えば、食料品や生活用品などの各種商品、又は、工場の生産ライン等において用いられる部品や仕掛品などが含まれる。
【0019】
本実施形態では、容器70は、その内部に被収容物を収容した状態で、別の容器70と積み重ねることが可能に構成されている。すなわち、容器70は、上下方向に段積み可能に構成されている(
図3参照)。本例では、容器70の底部が、別の容器70の開口部に対して上方から嵌合することにより、2つの容器70が上下方向に段積みされる。
【0020】
〔搬送車〕
図3に示すように、搬送車100は、規定の走行経路Rに沿って走行する走行体1と、容器70の移載を行う移載装置4と、移載装置4を制御する制御部Cと、を備えている。本実施形態では、搬送車100は、複数の容器70を段積み状態の容器群7として規定の段積み領域2A内に支持する容器群支持部2と、容器群支持部2に支持された容器群7の容器70を持ち上げる持ち上げ装置3と、を備えている。そして、制御部Cは、移載装置4の他、走行体1と容器群支持部2と持ち上げ装置3とを制御する。
【0021】
容器群支持部2、持ち上げ装置3、及び移載装置4は、走行体1に搭載されている。走行体1が走行する方向を「車体前後方向L」とすると、容器群支持部2と移載装置4とは、走行体1上において車体前後方向Lに並んで配置されている。なお、以下では、車体前後方向Lに対して上下方向視で直交する方向を「車体幅方向W」とする。ここでは、車体前後方向L及び車体幅方向Wは、互いに直交する水平方向である。
【0022】
また、
図3及び
図4に示すように、搬送車100は、走行体1の車体前後方向Lの寸法を長さ寸法Slとし、走行体1の車体幅方向Wの寸法を幅寸法Swとし、走行体1の下端から後述する一対の移載用マスト40の上端までの高さを高さ寸法Shとした場合に、幅寸法Swが長さ寸法の1/2以下であり、高さ寸法Shが幅寸法Swの2倍以上である。なお、本実施形態では、高さ寸法Shが「走行体の下端からマストの上端までの上下方向の寸法」に相当する。
【0023】
制御部Cは、搬送車100の各機能部を制御する。本例では、制御部Cは、走行体1、容器群支持部2、持ち上げ装置3、移載装置4、及び、後述する旋回装置5を制御する。容器70を搬送及び移載するための動作は、制御部Cによる各機能部の制御によって実現される。制御部Cは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0024】
〔走行体〕
走行体1は、走行経路R(
図1参照)を走行するように構成されている。本実施形態では、走行体1は、棚内経路Raと棚外経路Rbとを走行するように構成されている。走行体1は、棚内経路Raを走行する場合に、容器棚8に沿って走行するように構成され、より詳細には、容器棚8の正面に沿って走行するように構成されている。本実施形態では、走行体1は、床面を走行するように構成されている。
【0025】
走行体1は、走行本体部10と、走行本体部10に連結された複数の走行車輪11と、複数の走行車輪11のうち少なくとも1つを駆動する走行駆動部11Mと、を備えている。走行駆動部11Mは、不図示のモータを含んで構成されている。走行駆動部11Mが走行車輪11を駆動することにより、走行体1に推進力が付与される。
【0026】
図5に示すように、本実施形態では、一対の駆動輪11aが、走行本体部10における車体前後方向Lの中央領域において、車体幅方向Wに離間して設けられている。一対の駆動輪11aは、それぞれ別の走行駆動部11Mによって駆動される。また、一対の駆動輪11aのそれぞれに対して車体前後方向Lの両側に、従動輪11bが設けられている。
【0027】
本実施形態において、長さ寸法Slは走行本体部10の車体前後方向Lの長さ寸法であり(
図3参照)、幅寸法Swは走行本体部10の車体幅方向Wの寸法である(
図4参照)。走行体1(走行本体部10)の幅は、後述するように移載装置4で容器70を旋回させても当該容器70が走行体1(走行本体部10)の幅内に収まるように、容器70の長手方向の寸法に応じて設定される。
【0028】
走行体1は、上記のような構成により、その場において上下方向に沿う軸心まわりに回転することが可能となっている。詳細には、一対の駆動輪11aが、互いに反対方向(
図4において矢印で示す方向)に回転駆動されることにより、走行体1は、その場において、上下方向に沿う軸心まわりに回転する。これにより、走行体1は、比較的狭い領域内で進行方向を変更することができる。
【0029】
〔容器群支持部〕
図3に示すように、容器群支持部2は、走行体1に搭載されている。容器群支持部2は、複数の容器70を段積み状態の容器群7として支持可能に構成されている。容器群支持部2の上方には、容器群7が配置される段積み領域2Aが規定されている。段積み領域2Aは、容器群支持部2から上方に延在する立体的な仮想領域である。本例では、容器群支持部2は、容器群7を載置した状態で当該容器群7を移動させることが可能なコンベヤとして構成されている。本例では、容器群支持部2は、容器群7を車体幅方向Wに沿って移動させることが可能となっている。容器群支持部2を構成するコンベヤとしては、ローラコンベヤ、チェーンコンベヤ、ベルトコンベヤなどの周知のコンベヤ等であって良い。
【0030】
搬出入部9(
図1参照)には、複数の容器70が段積みされた状態の容器群7が搬入される。走行体1が搬出入部9に隣接した状態で、容器群支持部2は、搬出入部9から容器群7を受け取り、または、搬出入部9へ容器群7を引き渡す。すなわち、容器群支持部2は、搬出入部9との間で容器群7の受け渡しを行うように構成されている。詳細な図示は省略するが、本例では、搬出入部9は、容器70から商品等の被収容物を取り出す作業が行われるピッキングエリアに隣接している。容器群支持部2から搬出入部9へ容器群7が引き渡されると、搬出入部9に隣接するピッキングエリアにおいて容器70から被収容物が取り出される。容器70に収容された被収容物の一部又は全部が取り出された後は、当該容器70は、搬出入部9から容器群支持部2(搬送車100)に引き渡されて、再び容器棚8へ搬送される。但し、搬出入部9は、ピッキングエリアに隣接していなくても良く、他の設備や作業エリアに隣接していても良い。また、例えば、搬出入部9は、容器群支持部2から引き渡された容器群7を搬送設備Fの外部へ搬送するように構成されていても良い。
【0031】
〔持ち上げ装置〕
持ち上げ装置3は、走行体1に搭載されている。持ち上げ装置3は、容器群支持部2に支持された容器群7の容器70、換言すれば、段積み領域2Aに配置された容器群7の容器70を持ち上げるように構成されている。
【0032】
持ち上げ装置3は、走行体1から上方に立設された持ち上げ用マスト30と、持ち上げ用マスト30に連結された持ち上げ用昇降体30Bと、持ち上げ用昇降体30Bを持ち上げ用マスト30に沿って昇降させる持ち上げ用昇降体駆動部30Mと、を備えている。詳細な図示は省略するが、持ち上げ用昇降体駆動部30Mは、例えば、持ち上げ用昇降体30Bに連結されたベルト等の無端体と、当該無端体が巻回された回転体と、当該回転体を回転駆動するモータと、を備えている。
【0033】
持ち上げ装置3は、段積み領域2Aに段積みされた容器群7の内の任意の高さの容器70を当該容器70の下に隣接する容器70に対して持ち上げる第1持ち上げ機構31と、第1持ち上げ機構31により持ち上げられた容器70よりも下方の容器70を当該容器70の下に隣接する容器70に対して持ち上げる第2持ち上げ機構32と、を備えている。また、本実施形態では、第1持ち上げ機構31と第2持ち上げ機構32とが、上下方向に離間して配置されている。これにより、図示については省略するが、第1持ち上げ機構31によって持ち上げられた容器70と、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70との、上下方向の間にスペースを形成することが可能となっている。また、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70の下方にも、上下方向のスペースを形成することが可能となっている。
【0034】
詳細については省略するが、本実施形態において、第1持ち上げ機構31によって持ち上げられた容器70と第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70との上下方向の間にスペースを形成した場合には、当該スペースに、他の容器70を卸すことが可能となっている。また、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70の下方に上下方向のスペースを形成した場合には、当該スペースを利用して、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70の下方に配置された容器70を掬うことが可能となっている。
【0035】
〔移載装置〕
図3に示すように、移載装置4は、走行体1に搭載されている。移載装置4は、移載対象箇所Tに対して容器70の移載を行うように構成されている。移載装置4は、移載対象箇所Tへ容器70を移載する卸し動作と、移載対象箇所Tから容器70を移載する掬い動作と、を行うように構成されている。なお、本明細書では、移載対象箇所Tから移載装置4へ容器70を移載することを「掬い」と称しており、「掬い」は、特定の移載動作に限定されるものではない。本実施形態では、移載対象箇所Tには、段積み領域2Aと容器棚8の棚部80とが含まれる。
【0036】
本実施形態では、搬送車100は、移載装置4を上下方向に沿う軸心まわりに旋回させる旋回装置5を備えている。
図5に示すように、旋回装置5は、移載装置4(詳細には移載装置4の一部)を上下方向に沿う軸心回りに旋回させて、移載対象箇所Tが段積み領域2Aである場合の第1姿勢P1と、移載対象箇所Tが容器棚8(棚部80)である場合の第2姿勢P2とに、移載装置4の向きを変更するように構成されている。本例では、旋回装置5は、移載装置4(詳細には移載装置4の一部)を支持する旋回台50と、移載用昇降体40Bに対して旋回台50を旋回自在に支持する旋回軸51と、旋回軸51を駆動する旋回駆動部5Mと、を備えている。このように本実施形態では、移載装置4により移載される容器70の移動方向は、旋回装置5によって水平面内において変更され得る。
【0037】
移載装置4の向きが第1姿勢P1である場合の移載装置4により移載される容器70の移動方向を「第1移載方向Xa」とし、移載装置4の向きが第2姿勢P2である場合の移載装置4により移載される容器70の移動方向を「第2移載方向Xb」とする。また、第1移載方向Xa及び第2移載方向Xbにおける、一方側をそれぞれ「第1移載方向卸し側Xa1」、「第2移載方向卸し側Xb1」とし、他方側をそれぞれ「第1移載方向掬い側Xa2」、「第2移載方向掬い側Xb2」とする。第1移載方向卸し側Xa1及び第2移載方向卸し側Xb1は、容器70を卸す場合に、対応する移載方向Xa,Xbに沿って容器70が移動する側である。第1移載方向掬い側Xa2及び第2移載方向掬い側Xb2は、容器70を掬う場合に、対応する移載方向Xに沿って容器70が移動する側である。
【0038】
第1移載方向Xaは、上下方向視で車体前後方向Lに沿う方向である。本例では、第1移載方向Xaは、水平方向に沿い、且つ、車体前後方向Lに沿う方向である。なお、第1移載方向Xaは、上下方向視で車体前後方向Lに交差する方向であってもよいし、水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0039】
第2移載方向Xbは、上下方向視で車体前後方向Lに交差する方向である。本例では、第2移載方向Xbは、水平方向に沿い、且つ、車体前後方向Lと直交する方向である。なお、第2移載方向Xbは、上下方向視で車体前後方向Lに対して90°以外の角度で交差する方向であってもよいし、水平方向に対して傾斜していてもよい。本実施形態では、第2移載方向Xbが「移載方向」に相当する。
【0040】
図3に示すように、移載装置4は、走行体1に固定されると共に上下方向に沿うように配置された移載用マスト40と、移載用マスト40に沿って昇降する移載用昇降体40Bと、移載用昇降体40Bに連結される移載機Hと、を備えている。また、移載機Hは、容器70を保持する保持部Aと、容器70を移載する移載部Bとを備えている。移載装置4は、移載用昇降体40Bを移載用マスト40に沿って昇降させる移載用昇降体駆動部40Mを備えている。詳細な図示は省略するが、移載用昇降体駆動部40Mは、例えば、移載用昇降体40Bに連結されたベルト等の無端体と、当該無端体が巻回された回転体と、当該回転体を回転駆動するモータと、を備えている。なお、本実施形態では、移載用マスト40が「マスト」に相当し、移載用昇降体40Bが「昇降体」に相当する。
【0041】
本実施形態において、移載装置4は、移載機H(保持部A及び移載部B)を上下方向に移動させることができ、複数段の棚部80(
図2参照)のそれぞれに対して容器70を移載することが可能となっている。本例では、移載装置4を制御する制御部Cが、容器棚8に対する容器70の移載のために移載用昇降体40Bを昇降させる昇降制御を実行するように構成されている。つまり、移載用昇降体40Bは、所定の昇降範囲で昇降する。
【0042】
本実施形態では、一対の移載用マスト40が、車体幅方向Wに離間して走行体1に固定されている(
図8も参照)。移載用昇降体40Bは、一対の移載用マスト40に対して昇降自在に支持されている。すなわち、本実施形態において、高さ寸法Shは走行体1が走行する走行面から移載用マスト40の上端までの高さである(
図3参照)。なお、移載用マスト40の上端までの高さは、棚部80の高さに応じて設定されている。
【0043】
図3、
図6及び
図7に示すように、本実施形態において、移載装置4は、第1移載機H1と第2移載機H2とを備えている。
【0044】
第1移載機H1は、容器70を保持する第1保持部41Aと、容器70に係止される第1係止部41Bbと、当該第1係止部41Bbを各移載方向Xa,Xbに移動させる第1移載駆動部41Mcと、第1保持部41Aを各移載方向Xa,Xbに沿って移動させる第1保持駆動部41MAと、を備えている。本実施形態において、第1係止部41Bbは、容器70を各移載方向卸し側Xa1,Xb1に向けて押圧する第1押圧部41Baと共に第1支持部材41Bcに支持されている。第1支持部材41Bcは、第1保持部41Aに支持されており、第1移載駆動部41Mcによって、第1保持部41Aに対して各移載方向Xa,Xbに沿って相対移動される。つまり、本実施形態において、第1係止部41Bbは、第1支持部材41Bcの移動に伴って第1押圧部41Baと一体的に各移載方向Xa,Xbに移動する。なお、本実施形態では、第1係止部41Bbと第1押圧部41Baとによって、第1保持部41Aと移載対象箇所Tとの間での容器70の移載を行う第1移載部41Bが構成されている。
【0045】
第2移載機H2は、第1保持部41Aよりも下方に配置されて容器70を保持する第2保持部42Aと、容器70に係止される第2係止部42Bbと、当該第2係止部42Bbを各移載方向Xa,Xbに移動させる第2移載駆動部42Mcと、第2保持部42Aを各移載方向Xa,Xbに沿って移動させる第2保持駆動部42MAと、を備えている。本実施形態において、第2係止部42Bbは、容器70を各移載方向卸し側Xa1,Xb1に向けて押圧する第2押圧部42Baと共に第2支持部材42Bcに支持されている。第2支持部材42Bcは、第2保持部42Aに支持されており、第2移載駆動部42Mcによって、第2保持部42Aに対して各移載方向Xa,Xbに沿って相対移動される。つまり、本実施形態において、第2係止部42Bbは、第2支持部材42Bcの移動に伴って第2押圧部42Baと一体的に各移載方向Xa,Xbに移動する。なお、本実施形態では、第2係止部42Bbと第2押圧部42Baとによって、第2保持部42Aと移載対象箇所Tとの間での容器70の移載を行う第2移載部42Bが構成されている。
【0046】
本実施形態では、第1保持部41Aと第2保持部42Aとが保持連結部43により上下方向に連結されている。そのため、第1保持部41Aと第2保持部42Aとが一体的に移動する。また、本例では、第1保持部41Aを駆動する第1保持駆動部41MAと、第2保持部42Aを駆動する第2保持駆動部42MAとが、共通の駆動源により駆動されるように構成されている。
【0047】
本例では、移載装置4を制御する制御部Cが、各移載駆動部41Mc,42Mcを制御し、各移載部41B,42Bを各移載方向Xa,Xbに移動させる移動制御を実行するように構成されている。また、制御部Cが、各保持駆動部41MA,42MAを制御し、各保持部41A,42Aを各移載方向Xa,Xbに出退動作させる出退制御を実行するように構成されている。本実施形態では、第1移載駆動部41Mc及び第2移載駆動部42Mcがそれぞれ「移動機構」に相当し、第1保持駆動部41MA及び第2保持駆動部42MAがそれぞれ「出退機構」に相当する。
【0048】
第1移載機H1及び第2移載機H2は、棚部80及び段積み領域2Aのそれぞれに対して容器70を移載可能に構成されている。棚部80が移載対象箇所Tとされる場合、各移載機H1,H2は、第2姿勢P2において各保持部41A,42Aと棚部80との間で容器70を移動させて、棚部80に対して容器70を移載する(
図5の下図参照)。また、段積み領域2Aが移載対象箇所Tとされる場合、各移載機H1,H2は、第1姿勢P1において各保持部41A,42Aと段積み領域2Aとの間で容器70を移動させて、段積み領域2Aに対して容器70を移載する(
図5の上図参照)。
【0049】
図6及び
図7は、移載装置4が、移載対象箇所Tとしての棚部80に対して容器70の移載動作(卸し動作又は掬い動作)を行う場合の説明図である。
【0050】
図6は、第1移載機H1による棚部80に対する容器70の掬い動作(移載動作)を示しており、第1移載部41Bによって、棚部80に収納された容器70を第1保持部41Aへ掬う場合を例示している。この場合、制御部C(
図3参照)は、第1移載機H1の位置を、棚部80の基準位置80P(
図2参照)に合せた後、第1係止部41Bbによって容器70を移載方向掬い側X2へ向けて引き込む。本実施形態において、棚部80の基準位置80Pは、移載装置4に設けられた基準位置検出センサSe1により検出する。
【0051】
図7は、第2移載機H2による棚部80に対する容器70の卸し動作(移載動作)を示しており、第2移載部42Bによって、第2保持部42Aに保持された容器70を棚部80へ卸す場合を例示している。この場合、制御部C(
図3参照)は、容器70を卸す対象となる棚部80に別の容器70が収納されていないと判定した場合に、第2押圧部42Baによって容器70を移載方向卸し側X1へ向けて押圧する。本実施形態においては、移載装置4に設けられた収納容器検出センサSe2によって、棚部80に収納された容器70を検出する。
【0052】
また、上述したように、本実施形態では、持ち上げ装置3によって、段積み領域2Aに段積みされた複数の容器70の上下方向の間にスペースを形成することが可能となっている。そして、移載装置4は、これらのスペースを利用して、段積み領域2Aに対する容器70の移載を行う。本実施形態では、移載装置4は、段積み領域2Aに対して、容器70の掬い動作および卸し動作を行うように構成されている。図示しないが、本例において、移載装置4は、段積み領域2Aに対して、容器70の掬い及び卸しを並行して行う並行動作を行うように構成されている。
【0053】
ここで、本開示に係る搬送車100は、物品の移載動作による揺れや傾きを小さく抑え易いように、移載装置4によって容器70の移載動作を行う際に、必要に応じて加速度制限制御を実行する。以下、詳細に説明する。
【0054】
制御部C(
図3参照)は、移載用昇降体40Bの昇降範囲における予め定められた基準高さhよりも上側に移載用昇降体40Bが位置する場合には、基準高さhよりも下側に移載用昇降体40Bが位置する場合に比べて、第1移載機H1及び第2移載機H2による第2移載方向Xbに沿う容器70の移動の加速度の上限を低く制限する加速度制限制御を実行するように構成されている。本実施形態では、昇降範囲の全域が基準高さhを境に上側と下側との2つの領域に分割されている。なお、本例では、下側の領域内に基準高さhが含まれる、すなわち、下側の領域は、基準高さh以下の領域であるものとするが、これに限られるものではない。
【0055】
基準高さhは、搬送車100の重心の高さに応じた高さに設定できる。本実施形態において、基準高さhは、搬送車100の重心Gの高さに設定されている。なお、搬送車100の重心とは、搬送車100を構成する各部の質量を考慮して定めた重心である。
【0056】
本実施形態では、
図8に示すように、移載装置4と棚部80との間で容器70を移載する際に(換言すれば、移載装置4の向きが第2姿勢P2であり、移載装置4によって容器70を第2移載方向Xbに沿って移動させる際に)、移載用昇降体40Bが基準高さhよりも上側の領域内に位置する場合には、制御部Cが加速度制限制御を実行することで加速度の上限が制限される。
図9は、昇降体の高さ(移載用昇降体40Bの高さ)と加速度の上限との対応関係を示すグラフである。
図9に示すように、本例では、加速度制限制御を実行することで、加速度の上限が、加速度制限制御を行わない場合の値(
図9中の「α1」~「α4」)のいずれよりも低い値(
図9中の「α5」)に制限される。つまり、本例では、第1移載機H1及び第2移載機H2による第2移載方向Xbに沿った容器70の移動の加速度の上限が「α5」に制限される。
【0057】
本実施形態では、第1移載機H1及び第2移載機H2による第2移載方向Xbに沿う容器70の移動速度の上限については、加速度制限制御を実行するか否かにかかわらず同じとなるようにしている。換言すれば、移載用昇降体40Bが基準高さhの上側の領域内にあるか下側の領域内にあるかにかかわらず、第1移載機H1及び第2移載機H2による第2移載方向Xbに沿う容器70の移動速度の上限は同じとなるようにしている。すなわち、制御部Cは、基準高さhよりも上側と下側とで、第1移載機H1及び第2移載機H2による第2移載方向Xbに沿う容器70の移動速度の上限とする。
【0058】
ここで、各保持部41A,42Aを第2移載方向Xbに出退動作させることによって搬送車100が揺れると、棚部80との位置関係が変動して容器70の移載が適切に行い難い状態となり易い。一方、各移載部41B,42Bの第2移載方向Xbへの移動、換言すれば、各係止部41Bb,42Bbの第2移載方向Xbへの移動は、移動の時点で各移載部41B,42Bと棚部80との位置関係が既に定まっているので、移載動作に与える影響は小さい。
【0059】
そこで、本例では、移載用昇降体40Bが基準高さhよりも上側の領域内に位置する場合において、第1保持部41A及び第2保持部42Aを第2移載方向Xbに出退動作させる出退制御を実行する場合には、制御部Cが加速度制限制御を実行する。一方、移載用昇降体40Bが基準高さhよりも上側の領域内に位置する場合であっても、第1移載部41B及び第2移載部42Bを各移載方向Xa,Xbに移動させる移動制御を実行する場合には、制御部Cが加速度制限制御を実行しない。換言すれば、出退制御を実行する際には、移載用昇降体40Bが基準高さhよりも上側の領域内に位置すれば、加速度制限制御によって加速度の上限が制限されるが、移動制御を実行する際には、移載用昇降体40Bが基準高さhよりも上側の領域内に位置するか下側の領域内に位置するかにかかわらず、加速度の上限は制限されない。すなわち、制御部Cは、第1保持駆動部41MA及び第2保持駆動部42MAによる第1保持部41A及び第2保持部42Aの出退動作に伴う容器70の移動を対象として加速度制限制御を実行し、第1移載駆動部41Mc及び第2移載駆動部42Mcによる第1係止部41Bb及び第2係止部42Bbの移動に伴う容器70の移動については加速度制限制御を実行しない。
【0060】
一方、
図8に示すように、移載用昇降体40Bが基準高さhを境とした下側の領域内に位置する場合、制御部Cは加速度制限制御を行わない。この場合、実質的に設計上の最大値が加速度の上限となり得るが、加速度の上限が加速度制限制御での上限値よりも高い値に制限されてもよい。
【0061】
本例では、移載用昇降体40Bが基準高さhを境とした下側の領域内に位置する場合、加速度の上限は、移載用昇降体40Bの高さが高くなるに従って低くなるように制限される。具体的には、
図9に示すように、加速度の上限は、移載用昇降体40Bの高さが高くなるに従って、「α1」から「α4」まで段階的に低くなるように制限される。つまり、制御部Cは、昇降範囲における基準高さhを境に下側の領域において、当該領域の下限から上側に向かうに従って次第に加速度の上限が低くなるように、第1移載機H1及び第2移載機H2による第2移載方向Xbに沿った容器70の移動の加速度の上限を制限する。
【0062】
本実施形態では、移載装置4と段積み領域2Aとの間で容器70を移載する際は(換言すれば、移載装置4の向きが第1姿勢P1であり、移載装置4によって容器70を第1移載方向Xaに沿って移動させる際は)、移載用昇降体40Bが基準高さhよりも上側の領域内に位置するか否かにかかわらず、加速度制限制御を行わない。この場合、実質的に設計上の最大値が加速度の上限となり得る。
【0063】
以上のような構成により、容器70の移載動作による搬送車100の揺れや傾きを小さく抑えることができる。また、移載動作の精度の低下を抑制できると共に、移載動作を待機する必要性を低減でき、移載動作の効率を高めることができる。
【0064】
〔その他の実施形態〕
次に、搬送車のその他の実施形態について説明する。
【0065】
(1)上記の実施形態では、1つの基準高さhを設定し、昇降範囲の全域が当該基準高さhを境に上側と下側との2つの領域に分割する態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。基準高さhを複数設定し、昇降範囲の全域又は一部を設定した複数の基準高さhによって3つ以上に分割する態様であってもよい。この場合において、加速度の上限は、下側の領域から上側の領域に向かうに従って順に低くなるように設定されると好適である。
例えば、
図10に示すように、搬送車100の重心Gの高さに第1基準高さh1を設定すると共に、当該第1基準高さh1よりも上側に第2基準高さh2及び第3基準高さh3を設定し、昇降範囲の全域を4つの領域に分割する態様であってもよい。この場合、
図11に示すように、加速度制限制御における加速度の上限は、第1基準高さh1と第2基準高さh2との間の領域での上限(第1上限)である「β2」、第2基準高さh2と第3基準高さh3との間の領域での上限(第2上限)である「β3」、第3基準高さh3よりも上側の領域での上限(第3上限)である「β4」の順で段階的に低くなるように設定されると好適である。なお、第1基準高さh1よりも下側の領域内での加速度の上限である「β1」は、設計上での最大値が設定され得る。
【0066】
(2)上記の実施形態では、移載用昇降体40Bが基準高さhよりも上側の領域内に位置する場合において、出退制御を実行する場合には加速度制限制御を実行し、移動制御を実行する場合には加速度制限制御を実行しない態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。移載用昇降体40Bが基準高さhよりも上側の領域内に位置する場合に、移動制御を実行する場合についても加速度制限制御を実行する態様であってもよい。
【0067】
(3)上記の実施形態では、移載装置4と棚部80との間で容器70を移載する場合における容器70の第2移載方向Xbに沿った移動のみを対象として加速度制限制御を実行する態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、移載装置4と段積み領域2Aとの間で容器70を移載する場合における容器70の第1移載方向Xaに沿った移動を対象として加速度制限制御を実行するようにしてもよい。また、旋回装置5の旋回軸51の延長上に重心が位置しない状態で容器70が保持部Aに保持されている場合には、旋回動作を対象として加速度制限制御を実行するようにしてもよい。
【0068】
(4)上記の実施形態では、昇降範囲における基準高さhを境に下側の領域において、当該領域の下限から上側に向かうに従って段階的に加速度の上限が低くなるように、各移載機H1,H2による第2移載方向Xbに沿った容器70の移動の加速度の上限を制限する態様について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、
図12に示すように、昇降範囲における基準高さhを境に下側の領域において、加速度の上限が「γ1」で一定となるように加速度の上限を制限し、基準高さhよりも上側の領域において、加速度制限制御によって加速度の上限を「γ2」に制限する態様であってもよい。また、昇降範囲の全部又は一部の領域において、当該領域の下限から上側に向かうに従って段階的又は直線的(言い換えれば、連続的)に加速度の上限が低くなるように、容器70の移動の加速度の上限を制限する態様であってもよい。
【0069】
(5)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0070】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した搬送車について説明する。
【0071】
物品を収納する棚部を上下方向に複数段備えた収納棚の正面に沿って走行して、前記物品を搬送する搬送車であって、
走行経路に沿って走行する走行体と、
前記物品の移載を行う移載装置と、
前記移載装置を制御する制御部と、を備え、
前記移載装置は、
前記走行体に固定され、上下方向に沿うように配置されたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に支持された移載機と、
を備え、
前記走行体が走行する方向を車体前後方向として、
前記移載機は、前記物品を保持する保持部を備え、上下方向視で前記車体前後方向に交差する移載方向に沿って前記物品を移動させて、前記保持部と前記棚部との間での前記物品の移載を行うように構成され、
前記制御部は、前記昇降体の昇降範囲における予め定められた基準高さよりも上側に前記昇降体が位置する場合には、前記基準高さよりも下側に前記昇降体が位置する場合に比べて、前記移載機による前記移載方向に沿う前記物品の移動の加速度の上限を低く制限する加速度制限制御を実行する。
【0072】
移載動作によって搬送車の揺れや傾きが大きくなると、物品と棚部と移載機との位置関係が変動することになり、移載動作の精度の低下が起きる。このような精度の低下を抑制するためには、搬送車の揺れや傾きが収まるまで移載動作を待機する必要があった。
しかし、本構成によれば、物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きを小さく抑え易い。従って、このような移載動作の精度の低下を抑制できると共に、移載動作を待機する必要性を低減でき、移載動作の効率を高めることができる。
このように、本構成によれば、物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きを小さく抑え易い搬送車を実現できる。
【0073】
ここで、前記制御部は、前記基準高さよりも上側と下側とで、前記移載機による前記移載方向に沿う前記物品の移動速度の上限を同じとする、と好適である。
【0074】
物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きに影響するのは物品の加速度である。本構成によれば、加速度を制限することで搬送車の揺れや傾きを小さく抑えることができる。その上で、基準高さよりも上側の領域と下側の領域とで物品の移動速度の上限を同じとしているため、上側の領域での物品の移動速度の上限を下側の領域よりも低く制限した場合に比べて、移載動作の効率を高めることができる。
【0075】
また、前記移載機は、前記物品に係止される係止部と、前記係止部を前記移載方向に移動させる移動機構と、前記保持部を前記移載方向に出退動作させる出退機構と、を更に備え、
前記制御部は、前記出退機構による前記保持部の出退動作に伴う前記物品の移動を対象として前記加速度制限制御を実行し、前記移動機構による前記係止部の移動に伴う前記物品の移動については前記加速度制限制御を実行しない、と好適である。
【0076】
本構成によれば、搬送車の揺れや傾きへの影響が大きい出退動作のみを対象として加速度制限制御を実行し、搬送車の揺れや傾きへの影響が比較的少ない移動機構による係止部の移動については加速度制限制御を実行しないため、これらの双方で加速度制限制御を実行する場合に比べて、移載動作の効率を高めることができる。従って、搬送車の揺れや傾きを効果的に抑制しつつ、移載動作の効率を高めることができる。
【0077】
また、前記基準高さは、前記搬送車の重心の高さに応じた高さに設定されている、と好適である。
【0078】
発明者らによる検証の結果、搬送車の重心よりも上側での物品の移載方向の移動は、搬送車の重心よりも下側での物品の移載方向の移動に比べて、搬送車の揺れや傾きへの影響が大きいことがわかった。本構成によれば、搬送車の重心よりも上側での物品の移載方向の移動の加速度の上限が、搬送車の重心よりも下側での物品の移載方向の移動の加速度の上限よりも低く制限されるため、移載動作の効率の低下を少なく抑えつつ、物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きを小さく抑えることができる。
【0079】
また、前記車体前後方向に対して上下方向視で直交する方向を車体幅方向として、
前記走行体の前記車体幅方向の寸法が、前記走行体の前記車体前後方向の寸法の1/2以下であり、
前記走行体の下端から前記マストの上端までの上下方向の寸法が、前記走行体の前記車体幅方向の寸法の2倍以上である、と好適である。
【0080】
本構成によれば、走行体が車体前後方向に長く、高さが高い形状であるため、車体前後方向に交差する移載方向に沿う物品の移動によって搬送車の揺れが大きくなり易い。よって、加速度制限制御を実行することで、効果的に搬送車の揺れや傾きを小さく抑えることができる。
【0081】
また、前記制御部は、前記昇降範囲の少なくとも一部の領域において、当該領域の下限から上側に向かうに従って次第に加速度の上限が低くなるように、前記移載方向に沿う前記物品の移動の加速度の上限を制限する、と好適である。
【0082】
本構成によれば、昇降範囲の少なくとも一部の領域において、上側に向かうに従って次第に加速度の上限が低くなるように制限されるため、移載動作の効率の低下を少なく抑えつつ、物品の移載動作による搬送車の揺れや傾きを小さく抑え易い。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示に係る技術は、物品を収納する棚部を上下方向に複数段備えた収納棚の正面に沿って走行して、物品を搬送する搬送車に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
100 :搬送車
1 :走行体
4 :移載装置
8 :容器棚(収納棚)
40 :移載用マスト(マスト)
40B :移載用昇降体(昇降体)
41A :第1保持部(保持部)
41Bb :第1係止部(係止部)
41MA :第1保持駆動部(出退機構)
41Mc :第1移載駆動部(移動機構)
42A :第2保持部(保持部)
42Bb :第2係止部(係止部)
42Mc :第2移載駆動部(移動機構)
42MA :第2保持駆動部(出退機構)
70 :容器(物品)
80 :棚部
A :保持部
C :制御部
G :重心
H :移載機
H1 :第1移載機(移載機)
H2 :第2移載機(移載機)
R :走行経路
L :車体前後方向
W :車体幅方向
Xb :第2移載方向(移載方向)
Sl :長さ寸法
Sw :幅寸法
Sh :高さ寸法
h :基準高さ