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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049194
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】超音波霧化装置
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/06 20060101AFI20240402BHJP
   B05B 17/06 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B06B1/06 A
B05B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155508
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】503268143
【氏名又は名称】ナノミストテクノロジーズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000128094
【氏名又は名称】株式会社エヌエフホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 一雄
(72)【発明者】
【氏名】山岸 遼平
【テーマコード(参考)】
4D074
5D107
【Fターム(参考)】
4D074AA02
4D074AA10
4D074BB02
4D074DD03
4D074DD05
4D074DD17
4D074DD18
4D074DD23
4D074DD65
4D074DD70
5D107AA02
5D107BB02
5D107CC02
5D107CC05
5D107CC12
(57)【要約】
【課題】複数の超音波振動子を設けてトータル出力を大きくしながら、超音波振動子間の漏れ電流を防止する。
【解決手段】超音波霧化装置100は、霧化室Hの液体Wを超音波振動する複数の超音波振動子1が配置され、複数の超音波振動子1を励起する複数の超音波電源2を備え、超音波振動子1は霧化室Hの液体Wに電気的に接続されてなる液体接触電極と液体接触電極の対向面に位置する非接触電極とを備え、超音波電源2は一方の出力側をシグナルグランドに接続してなるアース電位出力部を備え、アース電位出力部が各々の超音波振動子1の液体接触電極に接続されて、複数の超音波振動子1の液体接触電極をシグナルグランドと同電位として漏れ電流を防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を超音波振動して霧化する霧化室と、
前記霧化室の液体を超音波振動する1または複数の超音波振動子と、
前記超音波振動子に超音波電力を供給する超音波電源とを備え、
前記超音波振動子は、
前記霧化室中の液体に電気的に接続されてなる液体接触電極と、
前記液体接触電極の対向面に配置されてなる非接触電極とを備え、
前記超音波電源は、
一方の出力側をシグナルグランドに接続してアース電位出力部としてなり、
前記アース電位出力部が前記超音波振動子の前記液体接触電極に接続されて、
複数の前記超音波振動子の前記液体接触電極がシグナルグランドと同電位である超音波霧化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波霧化装置であって、
前記超音波電源がスイッチング電源であり、
前記スイッチング電源が、
矩形波の制御信号を出力する発振回路と、
前記発振回路から入力される制御信号でオンオフに切り換えられるスイッチング素子と、
を備える、超音波霧化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波霧化装置であって、
前記スイッチング電源が、さらに
前記スイッチング素子に一次側のコイルを接続してなる絶縁トランスを備え、
前記絶縁トランスは一次側のコイルに電磁結合してなる二次側のコイルを備え、
前記二次側のコイルの一方の出力側がシグナルグランドに接続されて前記アース電位出力部としてなる超音波霧化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波霧化装置であって、
前記超音波電源が、
超音波電力を出力する駆動回路と、
前記駆動回路の出力側に接続されて、
電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を通過させるカップリング回路とを備え、
前記カップリング回路の一方の出力がシグナルグランドに接続されて、
前記アース電位出力部としてなる超音波霧化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波霧化装置であって、
前記超音波電源が、
制御信号を出力する発振回路と、
前記発振回路から入力される制御信号を電力増幅する電力増幅回路とを備え、
前記電力増幅回路の出力側に、
電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を通過させる前記カップリング回路が接続されて、
前記カップリング回路の一方の出力がシグナルグランドに接続されてなる超音波霧化装置。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波霧化装置であって、
前記カップリング回路が、
一次側のコイルと二次側のコイルとを絶縁して配置してなる絶縁トランスで、
前記二次側のコイルの一方の出力がシグナルグランドに接続されて、
前記アース電位出力部としてなる超音波霧化装置。
【請求項7】
請求項4に記載の超音波霧化装置であって、
前記カップリング回路が、
電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を通過させるカップリングコンデンサーで、
前記カップリングコンデンサーの出力側が、
シグナルグランドに接続されて前記アース電位出力部としてなる超音波霧化装置。
【請求項8】
請求項4に記載の超音波霧化装置であって、
前記カップリング回路が、
トランジスタのエミッターフォロワ回路と、
FETのソースフォロワ回路のいずれかである超音波霧化装置。
【請求項9】
請求項1に記載の超音波霧化装置であって、
前記超音波電源が、
矩形波の超音波電力をサイン波に変換する波形整形回路を備える超音波霧化装置。
【請求項10】
請求項1に記載の超音波霧化装置であって、
前記超音波振動子が前記霧化室の底部に配置されて、
前記液体接触電極を液体に接触してなる上面電極としてなる超音波霧化装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の超音波霧化装置であって、
前記超音波振動子が、
底面の外周部に配置されて前記液体接触電極に接続されてなる第1の接続端子と、
底面の中央部に配置されて前記非接触電極に接続されてなる第2の接続端子とを備え、
前記接続端子がリード線を介して前記超音波電源に接続されてなる超音波霧化装置。
【請求項12】
請求項11に記載の超音波霧化装置であって、
前記リード線が、
半田付けして前記超音波振動子の前記接続端子に電気接続されてなる超音波霧化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を超音波振動させてミストを発生する超音波霧化装置に関し、とくに、複数の超音波振動子で多量のミストを発生させる超音波霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を超音波振動で霧化する装置は、種々の用途に使用される。たとえば、霧化されたミストを凝集し回収して溶液を濃縮する装置として使用でき、またミストの気化熱で冷却する装置などに使用される。単位時間に多量のミストを発生させる超音波霧化装置は、多数の超音波振動子を装備する。この構造の超音波霧化装置は、たとえば、10Wの超音波振動子を、100個以上として、トータル出力を1kW以上としてとして霧化量を大きくできる。本発明者は、多数の超音波振動子を霧化室の底面に配置して、トータル出力を大きくする超音波霧化装置を開発した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-40772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が先に開発した超音波霧化装置は、複数の超音波振動子を霧化室に配置して単位時間の霧化量を大きくしている。この超音波霧化装置は、霧化室に配置する超音波振動子の個数を変更してトータル出力を調整できるので、種々の用途に最適な霧化量に設定できる。超音波霧化装置は、種々の用途に使用されるが、用途において最適な霧化量が要求される。超音波振動子の個数を増減して用途に最適なトータル出力とする超音波霧化装置は、各々の超音波振動子に専用の超音波電源を接続して、超音波電源を各超音波振動子に最適設計できる。さらにこの霧化装置は、超音波振動と超音波電源からなる超音波ユニットの個数を変更して、装置のトータル出力を種々の用途に最適設計できる。この回路構成の霧化装置は、トータル出力を自由に変更できるが、霧化する液体を介して隣接する超音波振動子の間に漏れ電流が流れて電源の電力効率が低下する。
【0005】
図14は、隣接する超音波電源2に接続された超音波振動子1に漏れ電流I1、I2が流れる状態を示している。従来の超音波霧化装置は、主としてコルピッツ発振回路等の自励発振の発振回路で励起されるが、この発振回路から超音波電力が供給される超音波振動子1は、表面の液体接触電極が、入力される超音波出力で電圧変動しないシグナルグランドには接続されておらず、隣接する超音波振動子1の間で液体を介して漏れ電流が流れる。それは、隣接して配置している超音波振動子1が、液体に接触している液体接触電極の電位を常に同一電位にできないからである。すなわち、複数の超音波電源2で複数の超音波振動子1を励起する霧化装置は、隣接する超音波振動子1の液体接触電極が、異なる周波数、異なる位相、異なる電位で変動して超音波振動されるので、隣接して配置される超音波振動子1の液体接触電極を同一電位にできない。
【0006】
図14の矢印Aと矢印Bは、隣接する超音波振動子1の間に流れる漏れ電流(I1、I2)を示している。矢印Aは、隣接する超音波振動子1間において液体を介して流れる漏れ電流(I1)を示し、矢印Bは液体と霧化室の底板を介して流れる漏れ電流(I2)を示している。漏れ電流は、隣接して配置される超音波振動子1の間の電気抵抗が小さくなると増加するので、底板を導電性の金属板とする装置は、とくに矢印Bで示す漏れ電流(I2)が大きくなる。底板に絶縁材を使用して、底板を介して流れる漏れ電流は少なくできるが、液体を介して流れる漏れ電流(I1)を阻止できない。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の一目的は、多数の超音波振動子を設けてトータル出力を大きくしながら、漏れ電流による電力効率の低下を抑制して、複数の超音波振動子で効率よく液体を霧化できる超音波霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波霧化装置は、液体を超音波振動して霧化する霧化室と、霧化室の液体を超音波振動する複数の超音波振動子と、各々の超音波振動子に超音波電力を供給する複数の超音波電源とを備える。超音波振動子は、霧化室の液体に接触して電気的に接続されてなる液体接触電極と、液体接触電極の対向面に配置されて液体には電気的に接続されていない非接触電極とを備える。超音波電源は、一方の出力側をシグナルグランドとして、出力する超音波電力で電圧が変動しないアース電位出力部として、アース電位出力部を各々の超音波振動子の液体接触電極に接続して、複数の超音波振動子の液体接触電極を電圧変動しないシグナルグランドと同電位として、超音波振動子を各々の超音波電源で励起している。
【発明の効果】
【0009】
以上の超音波霧化装置は、複数の超音波振動子を設けてトータル出力を大きくしながら、漏れ電流による電力効率の低下を抑制しながら、複数の超音波振動子で効率よく液体を霧化できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波霧化装置の概略構成図である。
図2図1に示す超音波霧化装置の超音波振動子の取付部の拡大断面図である。
図3図1に示す超音波霧化装置の超音波電源を示す回路図である。
図4】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図5】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図6】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図7】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図8】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図9】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図10】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図11】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図12】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図13】他の実施形態に係る超音波電源の回路図である。
図14】隣接する超音波振動子間に流れる漏れ電流を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0012】
本発明の第1の実施態様に係る超音波霧化装置は、液体を超音波振動して霧化する霧化室と、この霧化室の底部に配置されて、液体を超音波振動して霧化する複数の超音波振動子と、各々の超音波振動子に接続されて超音波電力を供給する複数の超音波電源とを備える。複数の超音波振動子と複数の超音波電源は、好ましくはひとつの超音波電源でひとつの超音波振動子を励起する。ただ、ひとつの超音波電源で複数の超音波振動子を励起することもできる。
【0013】
超音波振動子は、霧化室の液体に接触して、液体に電気的に接続される液体接触電極と、液体接触電極の対向面に配置されて、液体には電気的に接続されない非接触電極とを備える。超音波電源は、一方の出力側をシグナルグランドに接続してアース電位出力部として、アース電位出力部と他方の出力側との間に超音波電力を出力する。アース電位出力部は各々の超音波振動子の液体接触電極に接続されて、各々の超音波振動子の液体接触電極はシグナルグランドと同電位として、超音波振動子を各超音波電源で励起する。
【0014】
以上の超音波霧化装置は、複数の超音波振動子を設けてトータル出力を大きくして霧化量を大きくしながら、漏れ電流による電力ロスの低下を防止して、高い電力効率で能率よく多量の液体を霧化できる特徴がある。それは、以上の超音波霧化装置が、各々の超音波振動子を別々の超音波電源で励起しながら、隣接する超音波振動子の液体に接触する液体接触電極を同一電位として、漏れ電流が流れるのを阻止しながら超音波振動子を励起できるからである。
【0015】
図14は、従来の超音波霧化装置において、超音波振動子1を介して矢印Aで示す漏れ電流(I1)、矢印Bで示す(I2)が流れる状態を示している。この図の超音波霧化装置は、複数の超音波振動子1を隣接して配置して、各々の超音波振動子1を別々の超音波電源2に接続している。超音波電源2は、超音波振動子1の下面電極1Bを、電源のマイナス側に接続している超音波出力で電圧変動しないシグナルグランドに接続して、液体に電気的に接続している液体接触電極との間に超音波電力を出力している。液体接触電極は、液体Wを介して矢印Aと矢印Bで示す漏れ電流が流れる。矢印Aで示す漏れ電流は、液体の漏電抵抗を介して流れる。矢印Bで示す漏れ電流は、液体と底板を介して流れるので、底板が電気抵抗の小さい金属板であると、漏れ電流(I2)が大きくなる。底板を絶縁して矢印Bの漏れ電流(I2)は小さくできるが、矢印Aで示す漏れ電流(I1)は、液体を介して流れるので阻止できない。
【0016】
矢印Aの漏れ電流は、不純物を全く含有しない超純水を使用して抑制できるが、液体の導電率は、超純水を純水としても1μS/cmと超純水に比べて20倍にも増加する。さらに水道水の導電率においては約100μS/cm~200μS/cmと超純水の2000~4000倍と極めて大きいので、液体の導電率で特定される矢印Aの漏れ電流を抑制できず、さらに不純物が含まれる導電性の液体の霧化に使用されては、さらに矢印Aの漏れ電流が増加して、電力ロスが大きくなる。
【0017】
さらに、霧化室に複数の超音波振動子を配置している超音波霧化装置は、特定の容積の霧化室に複数の超音波振動子を配置するために、超音波振動子を互いに接近して配置する必要がある。互いに接近して超音波振動子を配置している装置は、液体を介して流れる漏電抵抗が小さくなって、漏れ電流(I1)が大きくなり、電力ロスはさらに大きくなる。さらに、金属性の底板に接近して超音波振動子1を配置する装置においては、底板の金属板が電極間抵抗を相当に小さくして、漏れ電流をさらに大きくする。さらに困ったことに、超音波振動子1の液体接触電極は広い面積で液体に接触して、液体との接触抵抗が小さくなって、漏れ電流が増加する。
【0018】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、超音波電源をスイッチング電源とすることができる。この超音波霧化装置は、スイッチング素子をオンオフに切り換えて超音波電力を出力するスイッチング電源で超音波振動子を励起するので、サイン波を出力する従来の自励発振回路で超音波振動子を励起する霧化装置に比較して、極めて高い電力効率で超音波振動子を励起できる。さらに、この超音波霧化装置は、スイッチング電源の出力側に設けている出力トランスを、電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を通過させるカップリング回路の絶縁トランスに併用して、出力側の一方の端子を、超音波出力で電圧変動しないシグナルグランドに接続して、アース電位出力部として、超音波振動子に超音波電力を供給できる特長がある。
【0019】
スイッチング電源の高い電力効率は、スイッチング素子をオン状態とオフ状態に切り換えて超音波電力を出力することで、スイッチング素子の電力損失を小さくして実現できる。とくに、スイッチング素子にMOSFETなどのオン抵抗の小さいスイッチング素子が使用できるので、スイッチング素子の電力損失を小さくして超音波電力を出力できる。これに対して、従来の超音波電源に使用しているコルピッツ発振回路などのアナログ発振回路は、半導体素子をオンオフに切り換えることなく、内部抵抗を調整して、出力波をサイン波とするので、半導体素子の電力損失が大きくなるのを原理的に解消できない。
【0020】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、超音波電源をスイッチング電源として、スイッチング電源を、矩形波の制御信号を出力する発振回路と、発振回路が出力する矩形波の制御信号でオンオフに切り換えられるスイッチング素子と、スイッチング素子に一次側のコイルを接続している出力トランスとを備える回路構成として、一次側のコイルと二次側のコイルとを電磁結合して設けている出力トランスを絶縁トランスに併用し、一次側のコイルをスイッチング素子に接続している出力トランスの二次側のコイルの一方の出力側をシグナルグランドに接続してアース電位出力部とすることができる。
【0021】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、超音波電源を、矩形波又はサイン波の超音波電力を出力する駆動回路と、駆動回路の出力側に接続して、電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を通過させるカップリング回路とを備える回路構成として、カップリング回路を介して一方の出力をシグナルグランドに接続してアース電位出力部とすることができる。
【0022】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、超音波電源を、矩形波又はサイン波の制御信号を出力する発振回路と、発振回路から入力される制御信号を電力増幅する電力増幅回路とを備える回路構成として、電圧増幅回路の出力側には、電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を通過させるカップリング回路を接続して、カップリング回路を介して一方の出力をシグナルグランドに接続してアース電位出力部とすることができる。
【0023】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、超音波電源に電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を通過させるカップリング回路を備える回路構成として、カップリング回路を介して一方の出力をシグナルグランドに接続してアース電位出力部とすることができる。
【0024】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、カップリング回路を、一次側のコイルと二次側のコイルとを絶縁して配置してなる絶縁トランスとして、絶縁トランスの二次側のコイルの一方の出力をシグナルグランドに接続する回路構成とすることができる。
【0025】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、カップリング回路を、電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を通過させるカップリングコンデンサーとして、カップリングコンデンサーを介して一方の出力側をシグナルグランドに接続してアース電位出力部とすることができる。
【0026】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、カップリング回路を、トランジスタのエミッターフォロワ回路又はFETのソースフォロワ回路のいずれかとすることができる。
【0027】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、超音波電源に、矩形波の超音波電力をサイン波に変換する波形整形回路を設けることができる。この超音波霧化装置は、波形整形回路で超音波振動子にサイン波の超音波電力を供給して、霧化効率を高くしながら、温度上昇を抑制して液体を効率よく霧化できる特長がある。
【0028】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、超音波振動子を霧化室の底部に配置して、上面電極を液体に接触している液体接触電極とすることができる。
【0029】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、超音波振動子に、底面の外周部に配置されて液体接触電極に接続している第1の接続端子と、底面の中央部に配置されて非接触電極に接続している第2の接続端子とを設けて、第1と第2の接続端子をリード線を介して超音波電源に接続することができる。
【0030】
本発明の他の実施形態にかかる超音波霧化装置は、リード線を半田付けして超音波振動子の接続端子に電気接続することができる。この超音波霧化装置は、リード線を半田付けして超音波振動子に接続しているので、振動する超音波振動子の電極とリード線の接触不良を防止して、常に安定に超音波振動子を励起して、液体を霧化できる。
【0031】
(実施の形態1)
本発明は超音波霧化装置の用途を特定するものでないが、たとえば霧化したミストを回収して液体を濃縮する装置、あるいは液体をミストとして表面積を大きくして臭気ガスを脱臭する装置、あるいはまた、液体のミストを含むガスと他のガスとをスタティックミキサー等で混合して反応させる装置などに使用される。超音波霧化装置は、液体を超音波振動で微細なミストとするので、種々の用途において能率よく液体を濃縮し、あるいは臭気ガスを脱臭し、あるいは又接触面積を大きくして速やかに反応させる装置等に使用される。液体の濃縮に使用される超音波霧化装置は、ミストをサイクロンや凝縮機で回収して濃縮し、脱臭装置はミスト混合空気と臭気ガスとを混合して、臭気成分をミストに吸収して脱臭し、さらに反応装置は、ミスト混合空気と反応ガスとを混合して、ミストの溶解成分と反応ガスとを反応させる。ただし、本発明は超音波霧化装置の用途を特定するものでなく、液体を霧化する他の全ての用途に使用できる。とくに、本発明の超音波霧化装置は、単位時間に多量のミストを発生する用途に適しているので、大型の試験機や、産業用の霧化装置に最適である。
【0032】
以下、本発明の超音波霧化装置の好ましい実施形態を詳述する。
図1の概略断面図に示す超音波霧化装置100は、供給された液体Wを霧化する閉鎖構造の霧化室Hと、霧化室Hの液体Wを超音波振動させてミストを発生させる複数の超音波振動子1と、各超音波振動子1に超音波電力を供給する複数の超音波電源2とを備える。
本発明の霧化装置は、霧化室に配置している複数の超音波振動子に、複数の超音波電源から超音波電力を供給する。好ましくは、図1に示すように、ひとつの超音波電源2からひとつの超音波振動子1に超音波電力を供給するが、ひとつの超音波電源2から2個以上の超音波振動子1に超音波電力を供給することもできる。
【0033】
複数の超音波振動子1と複数の超音波電源2を備える霧化装置は、超音波振動子1とこれに接続している超音波電源2とで超音波ユニットとし、超音波ユニットの個数を変更して、装置全体の霧化量を用途に最適な量に調整できる。
【0034】
霧化室Hは、図1に示すように、供給される液体Wを超音波振動子1で超音波振動させて霧化し、霧化されたミストを空気などの搬送気体に混合してミスト混合空気として外部に供給する。霧化室Hは、液体Wをミストの状態で外部に排出すると液面レベルが低下する。したがって、霧化室Hは、一定の時間経過すると液体Wを新しいものに入れ換え、あるいはポンプ(図示せず)を介して連続して液体Wを供給する構造とすることができる。
【0035】
図1に示す超音波霧化装置100は、霧化室Hの底板20に、複数の超音波振動子1を上向きに固定している。超音波振動子1は、底から液面に向かって上向きに超音波を放射して、液面を超音波振動させる。超音波振動される液体Wは、液面から突出して液柱Pとなり、液柱Pの表面からミストが分離して搬送気体中に飛散して、ミスト混合気体となる。搬送気体は液柱Pに強制送風されて、液柱Pから速やかにミストを分散する。ミストが搬送気体中に分散されてミスト混合気体となる。ミスト混合気体は霧化室Hから外部に排出される。
【0036】
図2の断面図に示す霧化室Hは、底板20に複数の超音波振動子1を水平姿勢で固定している。底板20は、複数の超音波振動子1を互いに接近して配置している。超音波振動子1は、外周縁に沿って設けているゴム状弾性体のパッキン19を介して、底板20に水密構造で固定している。この図の超音波振動子1は、底板20との間に挟着しているパッキン19を介して、底板20に設けた貫通穴を水密構造に閉塞している。この図の超音波振動子1は、液体Wに接触する上面電極1Aを液体接触電極として、下面の下面電極1Bを露出して、液体Wに接触しない非接触電極としている。超音波振動子1の底面には、外周部に液体接触電極に接続している第1の接続端子15を設けて、中央部には非接触電極に接続している第2の接続端子16を設けている。第1の接続端子15と第2の接続端子16は、リード線17を半田付けして、超音波電源2に接続している。第1の接続端子15はシグナルグランドに接続し、さらにリード線17を底板20に接続して、底板20と液体接触電極の両方をシグナルグランドに接続してグラントラインと同一電位としている。この構造は、隣接する超音波振動子1の液体接触電極を、液体Wと底板20に接続してシグナルグランドの電位として、隣接する超音波振動子1間に流れる漏れ電流を防止する。
【0037】
図1に示す超音波電源2は、駆動回路4の出力側にカップリング回路3の絶縁トランス3Aを接続しているスイッチング電源で、絶縁トランス3Aが出力する矩形波を波形整形回路11でサイン波として出力している。波形整形回路11は、図1図2に示すように、インダクタンスとコンデンサーを使用するローパスフィルターが使用できる。ローパスフィルターは、インダクタンスとコンデンサーの静電容量を調整して、超音波振動子を励起する矩形波の基本周波数を通過させて高調波、特に基本周波数の3倍以上の高調波を充分に減衰させる周波数特性とする。ローパスフィルターの波形整形回路11は、簡単な回路構成で矩形波の高調波を減衰してサイン波に整形できる。ただ、波形整形回路11は他の回路構成のローパスフィルター、あるいは矩形波の基本波を通過させるバンドパスフィルター等も使用できる。いずれのフィルターも、入力される矩形波の基本周波数の減衰量を少なく、基本周波数の高調波の減衰量を大きくして矩形波をより好ましいサイン波に整形できる。
【0038】
スイッチング電源は、例えば100kHz~15MHz、好ましくは1MHzないし10MHzの超音波電力を出力する。スイッチング電源の駆動回路4は、図3に示すように、矩形波の制御信号を出力する発振回路4Aと、発振回路4Aから入力される制御信号の矩形波でオンオフに切り換えられるスイッチング回路4Bとで構成することができる。図3のスイッチング回路4Bは、一対のスイッチング素子9を備えるハーフブリッジ回路5で、ハーフブリッジ回路5は、直列接続している一対のスイッチング素子9と、コンデンサーの直列回路を、電源のプラス側とシグナルグランドとの間に並列に接続している。スイッチング素子9の中間接続部とコンデンサーの中間接続部との間には、絶縁トランス3Aの一次側を接続している。一対のスイッチング素子9は、発振回路4Aから入力される矩形波で、一方をオン、他方をオフとするように所定の周期で交互に切り換えられて、絶縁トランス3Aの一次側のコイル7に矩形波を出力する。スイッチング素子は、図に示すFETやトランジスタ(図示せず)等の半導体スイッチング素子が使用できるが、好ましくオン抵抗の小さいはMOSFETが適している。
【0039】
超音波電源2のスイッチング電源のスイッチング回路4Bは、図4に示すように、フルブリッジ回路6とすることもできる。このスイッチング電源は、発振回路4Aの制御信号でフルブリッジ回路6のスイッチング素子9をオンオフに切り換える。フルブリッジ回路6は、一対のスイッチング素子9を直列に接続しているスイッチング素子9の直列回路を並列に接続して、電源のプラス側とシグナルグランドとの間に並列に接続している。スイッチング素子9の直列回路は、中間接続部を絶縁トランス3Aの一次側を接続している。並列に接続されたスイッチング素子9の直列回路は、図において対角に配置されるスイッチング素子9を同時にオンオフに切り換えて、絶縁トランス3Aの一次側のコイル7に矩形波を出力する。
【0040】
フルブリッジ回路6は、コンデンサーを使用することなく4個のスイッチング素子9を交互にオンオフにスイッチングして矩形波を出力できるので、コンデンサーによる弊害、たとえばコンデンサーの劣化による弊害を防止して、長期間に渡って高い信頼性を実現できる。ハーフブリッジ回路5は、2個のスイッチング素子9で矩形波を出力できるので、部品コストを低減できる特長がある。
【0041】
本発明の霧化装置は、液体Wに接触する超音波振動子1の液体接触電極をシグナルグランドに接続して、液体Wを介して流れる無効電流となる漏れ電流を防止するので、カップリング回路3を設けて出力を電源ラインから絶縁して出力する。図1ないし図4の超音波電源2は、カップリング回路3として絶縁トランス3Aを設けている。絶縁トランス3Aは一次側のコイル7と二次側のコイル8を絶縁して配置している。一次側のコイル7を電源ラインに接続しているスイッチング素子9に接続して、二次側のコイル8を一次側のコイル7から絶縁して、一方の端子をシグナルグランドに接続して矩形波を出力できる。一次側のコイル7のシグナルグランドに接続している端子を超音波振動子1の液体接触電極に接続して、液体接触電極をシグナルグランドの電位に維持できる。カップリング回路3に絶縁トランス3Aを使用する超音波電源2は、絶縁トランス3Aでもって、出力インピーダンスを超音波振動子1に効率よく電力供給できるインピーダンスに調整する整合回路に併用できる。
【0042】
以上の超音波電源2は、出力側をプラス側の電源ラインから絶縁するために、一次側のコイル7と二次側のコイル8をフェライト等のコアに巻き付けて電磁結合している絶縁トランス3Aを使用しているが、カップリング回路3には、絶縁トランス3Aに代わって、一次側のコイル7と二次側のコイル8とを電磁結合して配置するコアのない空芯のコイルも使用できる(図5)。したがって、本明細書において「絶縁トランス」は一次側のコイルと二次側のコイルとを電磁結合して配置している「複数巻き線のコイル」を含む意味に使用する。
【0043】
絶縁トランス3Aは、一次側のコイル7と二次側のコイル8とをフェライト等コアを介して電磁結合するので、小型化して超音波電力を電源ラインから絶縁して出力でき、コアを使用しない空芯のコイルは、簡単な構造で超音波電力を電源ラインから絶縁して出力できる特長がある。
【0044】
本発明は超音波電源を以上の回路構成に特定するものでなく、超音波振動子1の液体接触電極をシグナルグランドに接続して超音波電力を供給できる全ての回路構成とすることができる。超音波電源2は、例えば図5ないし13に示す回路構成として、超音波振動子1を超音波で励起できる。
【0045】
図5の超音波霧化装置100の超音波電源2は、駆動回路4の出力側に絶縁トランス3Aを設けている。駆動回路4は、矩形波の制御信号を出力する発振回路4Aから入力される制御信号でスイッチング素子9を所定の周期でオンオフに切り換える。駆動回路4は、スイッチング素子9の負荷として絶縁トランス3Aの一次側のコイル7を接続している。絶縁トランス3Aの一次側のコイル7にはコンデンサー10を並列に接続して共振回路としている。一次側のコイル7とコンデンサー10の共振周波数は、スイッチング素子9がオンオフに切り換えられる矩形波の周波数に等しく調整している。この並列共振回路は、コンデンサー10の静電容量を調整して、スイッチング素子9のスイッチング周波数、すなわち入力される矩形波の周波数に調整する。共振周波数は、並列に接続しているトリマーコンデンサーの静電容量を変更して調整できる。スイッチング素子9の負荷を共振回路とする超音波電源2は、発振回路4Aの制御信号をスイッチング素子9で電力増幅して、負荷の共振回路で出力波形をサイン波として二次側のコイル8から出力できる。
【0046】
絶縁トランス3Aの二次側のコイル8は、超音波振動子1の液体接触電極と非接触電極とに接続されて、液体接触電極をシグナルグランドに接続している。図5の超音波電源2は、負荷の共振回路で出力波形をサイン波とするので、出力波形をサイン波に整形する専用の波形整形回路を設けることなく、サイン波の超音波電力を出力できる。二次側のコイル8は、電源ラインに接続している一次側のコイル7から絶縁して超音波電力を出力する。したがって、二次側のコイル8は一方の端子をシグナルグランドに接続して、超音波電力を出力できる。さらにこの超音波電源2は、一次側のコイル7と二次側のコイル8の巻き数を変更して、出力インピーダンスを最適値に設定できるので、超音波電源2の出力インピーダンスを、超音波振動子1に整合させて、超音波電力を効率よく超音波振動子1に供給できる特長がある。
【0047】
図5の超音波電源2の駆動回路4は、発振回路4Aからスイッチング素子9に入力される矩形波のパルス幅を変更して、すなわち制御信号の矩形波をパルス幅変調(PWM)して、スイッチング素子9をオンオフに切り換えるデューティーを調整できるので、発振回路4Aの制御信号の矩形波をPWMして、出力する超音波電力をコントロールできる。制御信号のパルス幅を広くして、すなわち、スイッチング素子9のオン時間を長くして、超音波電力の出力を大きく、パルス幅を小さくして出力を小さくできる。
【0048】
図3ないし図5の超音波電源2の駆動回路4に使用するスイッチング素子9は、FETやトランジスタ等の半導体スイッチング素子で、好ましくはオン抵抗の小さいMOSFETが適している。FETは、負荷の共振回路を介してドレインを電源のプラス側に接続し、トランジスタは負荷の共振回路を介してコレクターをプラス側電源に接続する。発振回路4Aは、スイッチング素子9の入力側、すなわちFETのゲートやトランジスタのベースに、矩形波の制御信号を入力して、FETやトランジスタをオン状態とオフ状態に切り換える。
【0049】
図5のスイッチング素子9は発振回路4Aから入力される矩形波でオン状態とオフ状態に切り換えて効率よく超音波電力を出力できる。FETやトランジスタのオン状態で、一次側のコイル7に電源回路から通電され、オフ状態で一次側のコイル7の電流が遮断される。この回路構成の超音波電源2は、スイッチング素子9を発振回路4Aから入力される矩形波の周波数でスイッチングして、二次側のコイル8からサイン波の超音波電力を出力するので、簡単な回路構成でサイン波の超音波電力を高い電力効率で超音波振動子1に供給できる。
【0050】
以上の超音波電源2は、カップリング回路3に絶縁トランス3Aを使用して、電源ラインの直流成分をカットして超音波電力を出力しているが、超音波電源2は、カップリング回路3に、絶縁トランスに代わってカップリングコンデンサーを使用することもできる。カップリングコンデンサーは、電源ラインから絶縁して、すなわち直流成分をカットして超音波電力を出力できる。図6の超音波電源2は、駆動回路4のスイッチング素子9に接続している負荷、図6においては負荷のコイルとFETのドレインとの接続点にカップリングコンデンサー3Bを接続して、電源ラインから絶縁して超音波電力を出力している。図6の超音波電源2は、スイッチング素子9の負荷をコイルのインダクタンスとするが負荷には抵抗器も使用することができる。負荷のコイルは鎖線で示すように、コンデンサーを並列に接続して共振回路とすることができる。この共振回路の負荷は、前述したように共振周波数を、スイッチング素子に入力される制御信号の周波数に等しく調整して、出力をサイン波に波形整形して出力できる。負荷のコイルは、スイッチング素子9の最適負荷となるインダクタンスに調整し、負荷抵抗はスイッチング素子9の負荷に最適な負荷となる電気抵抗に調整する。コイルや負荷抵抗の超音波電源は、入力される矩形波を波形整形することなく出力するので、図示しないが、出力側に波形整形回路を接続して矩形波をサイン波として出力することもできる。カップリングコンデンサー3Bは、電源ラインの直流成分をカットして、超音波電力を超音波振動子1に出力できるので、この回路構成の超音波電源2は、絶縁トランスを装備しない簡単な回路構成として、シグナルグランドに接続している液体接触電極の超音波振動子1に超音波電力を供給できる。
【0051】
図7の超音波電源2は、駆動回路4の出力側に、絶縁トランスに代わってカップリングコンデンサー3Bを接続している。駆動回路4は、発振回路4Aの出力側にスイッチング回路4Bを接続している。発振回路4Aは、スイッチング回路4Bに矩形波を出力して、スイッチング素子9を所定の周期でオンとオフに切り換える。スイッチング回路4Bは、互いに直列に接続してなる一対のスイッチング素子9を備える。この駆動回路4は、発振回路4Aから各々のスイッチング素子9に入力される逆位相の矩形波で、一対のスイッチング素子9を交互にオンとオフに切り換える。一対のスイッチング素子9は、一方をオン、他方をオフとして、一定の周期でオンオフに切り換えられて、カップリングコンデンサー3Bに矩形波を出力する。カップリングコンデンサー3Bは、スイッチング回路4Bの出力側と波形整形回路11との間に接続されて、電源ラインから絶縁して超音波電力を波形整形回路11に出力している。
【0052】
図8の超音波電源2は、駆動回路4の出力側に、絶縁トランスに代わって一対のカップリングコンデンサー3Bを接続している。カップリングコンデンサー3Bは駆動回路4と波形整形回路11との間に接続されて、電源ラインから絶縁して一方の出力側をシグナルグランドに接続してアース電位出力部として、アース電位出力部を超音波振動子1の液体接触電極に接続している。
【0053】
図6ないし図8の超音波電源2は、カップリングコンデンサー3Bの超音波電力に対するインピーダンスを小さくして、効率よく超音波電力を超音波振動子1に出力できる。カップリングコンデンサー3Bは、例えば、静電容量を0.1μF以上として、100kHz~10MHzの超音波電力に対するインピーダンスを低くして効率よく超音波振動子に出力できる。カップリングコンデンサー3Bは、波形整形することなく、電源ラインの直流成分をカットして高波数の超音波電力を出力するので、静電容量を正確に調整する必要はなく、静電容量を大きくし、インピーダンスを超音波振動子のインピーダンスに比較して充分に低くして、超音波電力を高効率に出力できる。カップリングコンデンサー3Bは、例えば、基本周波数に対するインピーダンスを、超音波振動子のインピーダンスの1/10以下、好ましくは1/100以下として、効率よく超音波電力を出力できる。さらに、直流成分をカットして、超音波電力を通過させるカップリングコンデンサー3Bは、好ましくは耐久性と高波数特性に優れたセラミックコンデンサー等を使用して、長期間安定して超音波電力を効率よく超音波振動子に供給できる。
【0054】
以上の超音波電源2は、波形整形回路11や共振回路で出力波形をサイン波とするが、超音波電源2は、図9図10に示すように、サイン波を出力する自励発振回路とすることもできる。以上の超音波電源2は、自励発振回路がサイン波を出力するので、出力波形を波形整形することなく、自励発振回路からサイン波の超音波電力を超音波振動子1に出力できる。
【0055】
図9のコルピッツ発振回路は、絶縁トランス3Aを介してサイン波の超音波電力を出力している。この図に示すコルピッツ発振回路の超音波電源2は、絶縁トランス3Aを介して、電源ラインから絶縁して超音波電力を出力しているが、図10に示すように、絶縁トランス3Aの一次側のコイル7に代わってコイル18を接続して、コイル18にカップリングコンデンサー3Bを接続して、電源ラインから絶縁して、一方の出力側をシグナルグランドに接続してアース電位出力部として、アース電位出力部を超音波振動子1の液体接触電極に接続して、超音波振動子1の液体接触電極をシグナルグランドと同電位とすることができる。以上の超音波電源2は、自励発振回路がサイン波の超音波振動子1を出力するので、波形整形回路を設けることなく、超音波振動子1にサイン波の超音波電力を供給できる。
【0056】
以上の超音波電源は、発振回路をコルピッツ発振回路とするが、サイン波を出力する他の全ての発振回路から出力される超音波電力を、絶縁トランスやカップリングコンデンサー等のカップリング回路を介して超音波振動子に供給することができる。
【0057】
さらに、超音波電源2は、図11に示すように、サイン波や矩形波の発振回路4Aの出力側に、発振回路4Aから入力されるサイン波や矩形波の制御信号を電力増幅する電力増幅回路12を接続して、電力増幅回路12の出力側に絶縁トランス3Aやカップリングコンデンサー(図示せず)等のカップリング回路3を接続して、出力を電源ラインから絶縁して一方の出力側をシグナルグランドに接続してアース電位出力部として、アース電位出力部を液体接触電極に接続して、超音波電力を出力することもできる。この超音波電源2は、発振回路4Aが出力する制御信号の振幅を制御して、超音波振動子1に供給する超音波電力の電圧、すなわち電力を制御できる特長がある。
【0058】
以上の超音波電源2は、カップリング回路3に絶縁トランス3Aやカップリングコンデンサー3Bを使用するが、超音波電源2は、出力の一方をシグナルグランドに接続して超音波電力を出力できる他の全ての回路も使用できる。図12の超音波電源2は、カップリング回路3にFET13のソースフォロワ回路を使用し、図13は、カップリング回路3にトランジスタ14のエミッターフォロワ回路を使用する。FET13のソースフォロワ回路は、FETのソースにチョークコイルを接続し、トランジスタ14のエミッターフォロワ回路はトランジスタのエミッタにチョークコイルを接続して、一方の出力側をアース電位出力部として、アース電位出力部を液体接触電極に接続して、液体接触電極をシグナルグランドと同電位として超音波電力を出力できる。エミッターフォロワ回路やソースフォロワ回路のカップリング回路3は、出力インピーダンスを低くして、低インピーダンスの超音波振動子を効率よく励起できる。
【0059】
ソースフォロワ回路とエミッターフォロワ回路は、インピーダンス変換して、入力信号を電圧増幅することなく出力するので、矩形波を入力して矩形波の超音波電力を出力し、サイン波を入力してサイン波の超音波電力を出力する。さらに、ソースフォロワ回路とエミッターフォロワ回路は、100%負帰還回路であって、入力電圧を増幅することなく出力するので、入力信号は、超音波振動子に供給する超音波電力の電圧に等しい矩形波やサイン波とする。さらに、以上のソースフォロワ回路とエミッターフォロワ回路は、負荷にチョークコイルを使用しているが、負荷はチョークコイルに代わって抵抗器も使用できる。
【0060】
超音波電源は、サイン波の超音波電力を超音波振動子に出力して液体を効率良く霧化できるが、超音波電源は矩形波の超音波電力を超音波振動子に供給して液体を霧化することもできる。サイン波の超音波電力は、矩形波に比較して超音波振動子の温度上昇を抑制しながら、効率よく液体を霧化できる。矩形波の超音波電力は、サイン波に比較して、超音波振動子の温度上昇が数%高く、霧化効率は数%程度低下するが、超音波振動子を超音波振動させて、液体を霧化することができる。
【0061】
矩形波の超音波電力を出力する超音波電源は、オンオフに切り換えるスイッチング素子で矩形波の超音波電力を出力して、波形整形することなくカップリング回路で電源ラインから絶縁して超音波電力を出力する。この超音波電源は、波形整形回路を設けない簡単な回路構成として製造コストを低減できる。さらに半導体スイッチング素子をオンオフに切り換えて矩形波の超音波電力を出力できるので、回路構成を簡素化しながら、高い電力効率で超音波振動子を駆動できる特長もある。
【0062】
以上に記載する超音波霧化装置は、超音波振動子が液体に接触して発生する漏れ電流を防止するために、超音波電源の出力側に電源ラインの直流成分をカットして、超音波電力を出力するカップリング回路を設けて、カップリング回路の一方の出力をシグナルグランドに接続してアース電位出力部とし、このアース電位出力部を超音波振動子の液体接触電極に接続して、全ての超音波振動子の液体接触電極を同一電位として液体を介して流れる漏れ電流を防止する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、液体を超音波振動させてミストを発生する超音波霧化装置であって、とくに、複数の超音波振動子で多量のミストを発生させる超音波霧化装置に好適に使用される。
【符号の説明】
【0064】
100…超音波霧化装置
1…超音波振動子
1A…上面電極
1B…下面電極
2…超音波電源
3…カップリング回路
3A…絶縁トランス
3B…カップリングコンデンサー
4…駆動回路
4A…発振回路
4B…スイッチング回路
5…ハーフブリッジ回路
6…フルブリッジ回路
7…一次側のコイル
8…二次側のコイル
9…スイッチング素子
10…コンデンサー
11…波形整形回路
12…電力増幅回路
13…FET
14…トランジスタ
15…第1の接続端子
16…第2の接続端子
17…リード線
18…チョークコイル
19…パッキン
20…底板
W…液体
H…霧化室
P…液柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14