(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049196
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】バリア性基材、バリア性積層体および包装容器
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240402BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20240402BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240402BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240402BHJP
B32B 1/00 20240101ALI20240402BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B9/04
B32B27/32 Z
B32B7/027
B32B1/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155515
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000156042
【氏名又は名称】株式会社麗光
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100183678
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】立花 直樹
(72)【発明者】
【氏名】玉田 周平
(72)【発明者】
【氏名】森本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】松本 千紗代
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】福本 勝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 晴菜
(72)【発明者】
【氏名】吉野 祐平
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】ポリオレフィン基材と、アンカーコート層と、酸化ケイ素蒸着膜と、をこの順に備えるバリア性基材の、ガスバリア性および層間密着性を向上させる。
【解決手段】ポリオレフィン基材と、アンカーコート層と、酸化ケイ素蒸着膜と、を厚さ方向にこの順に備えるバリア性基材であって、アンカーコート層の厚さが、200nm以上1700nm以下であり、アンカーコート層の、サーマルプローブを用いた局所熱分析で測定される転移点が、90℃以上128℃以下である、バリア性基材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン基材と、
アンカーコート層と、
酸化ケイ素蒸着膜と、
を厚さ方向にこの順に備えるバリア性基材であって、
前記アンカーコート層の厚さが、200nm以上1700nm以下であり、
前記アンカーコート層の、サーマルプローブを用いた局所熱分析で測定される転移点が、90℃以上128℃以下である、
バリア性基材。
【請求項2】
前記アンカーコート層が、第1の面と第2の面とを有し、
前記ポリオレフィン基材が前記アンカーコート層の前記第1の面と接しており、
前記酸化ケイ素蒸着膜が前記アンカーコート層の前記第2の面と接している、
請求項1に記載のバリア性基材。
【請求項3】
前記酸化ケイ素蒸着膜が、前記アンカーコート層の前記第2の面に、直接、蒸着形成されてなる、請求項2に記載のバリア性基材。
【請求項4】
前記酸化ケイ素蒸着膜上に保護層をさらに備える、請求項1に記載のバリア性基材。
【請求項5】
前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリプロピレン基材または延伸ポリエチレン基材である、請求項1に記載のバリア性基材。
【請求項6】
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、前記バリア性基材をエッチングしながら測定される、前記アンカーコート層におけるNO2
-イオンの規格化強度が、3.0以上4.2以下である、請求項1に記載のバリア性基材。
[前記規格化強度は、TOF-SIMSによるNO2
-イオンの検出強度をCN-イオンの検出強度により除して100000倍することにより規格化を行い、NO2
-イオンの規格化後の検出強度の平均値の常用対数値を意味する。]
【請求項7】
前記アンカーコート層の断面について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定される弾性率が、95MPa以上である、請求項1に記載のバリア性基材。
【請求項8】
包装材料用基材である、請求項1に記載のバリア性基材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のバリア性基材と、
シーラント層と、
を備えるバリア性積層体。
【請求項10】
前記バリア性基材が備える前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリプロピレン基材であり、前記シーラント層が、ポリプロピレン層であるか、または、
前記バリア性基材が備える前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリエチレン基材であり、前記シーラント層が、ポリエチレン層である、
請求項9に記載のバリア性積層体。
【請求項11】
前記バリア性基材における前記シーラント層に向かう面とは反対側の面上、または
前記バリア性基材と前記シーラント層との間に、
第2のポリオレフィン基材をさらに備える、請求項9に記載のバリア性積層体。
【請求項12】
前記バリア性基材が備える前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリプロピレン基材であり、前記第2のポリオレフィン基材が、延伸ポリプロピレン基材であり、前記シーラント層が、ポリプロピレン層であるか、または、
前記バリア性基材が備える前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリエチレン基材であり、前記第2のポリオレフィン基材が、延伸ポリエチレン基材であり、前記シーラント層が、ポリエチレン層である、
請求項11に記載のバリア性積層体。
【請求項13】
請求項9に記載のバリア性積層体を備える包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バリア性基材、バリア性積層体および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなる基材(以下「ポリエステル基材」ともいう)は、機械的特性、化学的安定性、耐熱性および透明性に優れると共に、安価である。そのため、従来、ポリエステル基材は、包装容器を構成する基材として広く用いられている。包装容器内に充填される内容物によっては、包装容器には酸素バリア性および水蒸気バリア性などのガスバリア性が要求される。この要求を満たすべく、ポリエステル基材の表面に、蒸着膜が形成されている(例えば、特許文献1参照)。近年、ポリエステル基材に代わる基材が模索されている。ポリオレフィン基材を用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示者らは、ポリエステル基材に代えて、ポリオレフィン基材を用いることを検討した。検討の結果、本開示者らは、ポリオレフィン基材の表面に酸化ケイ素蒸着膜を設けた場合、ポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との密着性が充分ではないことを見出した。包装容器を構成する基材として、例えば、ポリオレフィン基材の表面に酸化ケイ素蒸着膜を備えるバリア性基材を用いた場合、熱処理後においてポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との間で剥離が生じることがある。
【0005】
本開示者らは、上記密着性を向上させるため、ポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との間にアンカーコート層を設けることを検討した。しかしながら、本開示者らは、この場合においても、ガスバリア性の向上が充分ではない場合があることを見出した。
【0006】
本開示の目的の一つは、ポリオレフィン基材と、アンカーコート層と、酸化ケイ素蒸着膜と、をこの順に備えるバリア性基材の、ガスバリア性および層間密着性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のバリア性基材は、ポリオレフィン基材と、アンカーコート層と、酸化ケイ素蒸着膜と、を厚さ方向にこの順に備え、アンカーコート層の厚さが、200nm以上1700nm以下であり、アンカーコート層の、サーマルプローブを用いた局所熱分析で測定される転移点が、90℃以上128℃以下である、バリア性基材である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ポリオレフィン基材と、アンカーコート層と、酸化ケイ素蒸着膜と、をこの順に備えるバリア性基材であって、ガスバリア性および層間密着性に優れるバリア性基材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、バリア性基材の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、バリア性基材の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】
図6は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図8】
図8は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図9】
図9は、包装袋の一実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。一例として、「パラメータBは、A1以上でもよく、A2以上でもよく、A3以上でもよく、また、A4以下でもよく、A5以下でもよく、A6以下でもよい。」との記載について説明する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0011】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施することが可能であり、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
本明細書において、ある層または基材における「主成分」とは、当該層または基材中の含有割合が50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である成分をいう。
【0013】
本明細書において、以下の説明で登場する各成分は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。上記各成分は、例えば、α-オレフィンなどのモノマー、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリオレフィン、ガスバリア性樹脂などの樹脂材料ならびに添加剤である。
【0014】
[バリア性基材]
本開示のバリア性基材は、ポリオレフィン基材と、アンカーコート層と、酸化ケイ素蒸着膜と、を厚さ方向にこの順に(以下、単に「この順に」ともいう)備える。バリア性基材は、酸化ケイ素蒸着膜上に、保護層をさらに備えてもよい。すなわち、バリア性基材は、ポリオレフィン基材と、アンカーコート層と、酸化ケイ素蒸着膜と、保護層と、をこの順に備えてもよい。
本開示のバリア性基材は、包装材料用基材として好適である。
【0015】
図1および
図2は、バリア性基材の一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すバリア性基材1は、ポリオレフィン基材10と、アンカーコート層20と、酸化ケイ素蒸着膜30と、をこの順に備える。
図2に示すバリア性基材1は、ポリオレフィン基材10と、アンカーコート層20と、酸化ケイ素蒸着膜30と、保護層40と、をこの順に備える。
【0016】
<ポリオレフィン基材>
ポリオレフィン基材は、ポリオレフィンを主成分として含有する。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテンが挙げられる。ポリオレフィンとしては、バイオマス由来のポリオレフィンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリオレフィンを用いてもよい。ポリオレフィンの中でも、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好ましい。ポリオレフィン基材としては、ポリプロピレン基材およびポリエチレン基材が好ましい。
【0017】
ポリオレフィン基材は、一実施形態において、ポリプロピレン基材である。ポリプロピレン基材は、ポリプロピレンを主成分として含有する。ポリプロピレン基材を備えるバリア性基材は、例えば、耐油性に優れる。
【0018】
ポリプロピレンは、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体およびプロピレンブロックコ共重合体のいずれでもよく、これらから選択される2種以上の混合物でもよい。プロピレン単独重合体とは、プロピレンの単独重合体である。プロピレンランダム共重合体とは、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィン等とのランダム共重合体である。プロピレンブロック共重合体とは、プロピレンからなる重合体ブロックと、少なくともプロピレン以外のα-オレフィン等からなる重合体ブロックと、を有する共重合体である。少なくともプロピレン以外のα-オレフィン等からなる重合体ブロックは、プロピレンと、プロピレン以外のα-オレフィンと、からなる重合体ブロックでもよい。ポリプロピレンとしては、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。
【0019】
α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン以外の炭素数2以上20以下のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテンが挙げられる。α-オレフィンの炭素数は、12以下でもよく、8以下でもよい。
【0020】
ポリプロピレンの中でも、透明性の観点からは、プロピレンランダム共重合体が好ましい。包装容器の剛性および耐熱性を重視する場合は、プロピレン単独重合体が好ましい。包装容器の耐落下衝撃性を重視する場合は、プロピレンブロック共重合体が好ましい。
【0021】
ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工性という観点から、0.1g/10分以上でもよく、0.3g/10分以上でもよく、また、50g/10分以下でもよく、30g/10分以下でもよい。ポリプロピレンのMFRは、JIS K7210-1:2014のA法に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0022】
ポリオレフィン基材は、一実施形態において、ポリエチレン基材である。ポリエチレン基材は、ポリエチレンを主成分として含有する。
【0023】
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンが挙げられる。これらの中でも、基材の強度、剛性および耐熱性という観点からは、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましく、延伸性という観点からは、中密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、バイオマス由来のポリエチレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレンを用いてもよい。
【0024】
高密度ポリエチレンの密度は、0.945g/cm3超でもよい。高密度ポリエチレンの密度の上限は、0.965g/cm3でもよい。中密度ポリエチレンの密度は、0.925g/cm3を超えて0.945g/cm3以下でもよい。低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下でもよい。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下でもよい。超低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm3以下でもよい。超低密度ポリエチレンの密度の下限は、0.860g/cm3でもよい。ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0025】
低密度ポリエチレンは、例えば、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)である。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いた重合法によりエチレンおよび少量のα-オレフィンを重合して得られるポリエチレンである。
【0026】
ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工性という観点から、0.1g/10分以上でもよく、0.3g/10分以上でもよく、また、50g/10分以下でもよく、30g/10分以下でもよい。ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014のA法に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0027】
ポリオレフィン基材におけるポリオレフィンの含有割合は、50質量%超であり、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、95質量%以上でもよい。ポリプロピレン基材におけるポリプロピレンの含有割合は、50質量%超であり、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、95質量%以上でもよい。ポリエチレン基材におけるポリエチレンの含有割合は、50質量%超であり、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、95質量%以上でもよい。
【0028】
ポリオレフィン基材は、ポリオレフィン以外の樹脂材料を含有してもよい。樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0029】
ポリオレフィン基材は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、アンチブロッキング剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料および改質用樹脂が挙げられる。
【0030】
ポリオレフィン基材は、延伸処理が施されていてもよく、すなわち延伸ポリオレフィン基材でもよい。延伸ポリオレフィン基材を備えるバリア性基材は、例えば、強度、剛性および耐熱性に優れる。このようなバリア性基材を備えるバリア性積層体は、例えば、ボイル処理またはレトルト処理がなされる包装容器を構成する包装材料として好ましい。ポリプロピレン基材は、延伸処理が施されていてもよく、すなわち延伸ポリプロピレン基材でもよい。ポリエチレン基材は、延伸処理が施されていてもよく、すなわち延伸ポリエチレン基材でもよい。
【0031】
延伸処理は、1軸延伸でもよく、2軸延伸でもよい。
縦方向(基材の流れ方向、MD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、2倍以上でもよく、5倍以上でもよく、また、15倍以下でもよく、13倍以下でもよい。横方向(MD方向に対して垂直な方向、TD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、2倍以上でもよく、5倍以上でもよく、また、15倍以下でもよく、13倍以下でもよい。延伸倍率を2倍以上とすることにより、基材の強度、剛性および耐熱性をより向上でき、また、基材への印刷性を向上できる。基材の破断限界という観点からは、延伸倍率は15倍以下であることが好ましい。
【0032】
ポリオレフィン基材には、表面処理が施されていてもよい。このようなポリオレフィン基材は、例えば、該ポリオレフィン基材に接する層との密着性に優れる。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理;ならびに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0033】
ポリオレフィン基材は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
ポリオレフィン基材の厚さは、10μm以上でもよく、15μm以上でもよく、また、100μm以下でもよく、50μm以下でもよい。厚さが下限値以上のポリオレフィン基材は、例えば、強度、剛性および耐熱性に優れる。厚さが上限値以下のポリオレフィン基材は、例えば、加工性に優れる。
【0034】
本明細書において、基材および各層の厚さは、以下のようにして測定される。バリア性基材を包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、市販の回転式ミクロトームを用いて室温(25℃)環境下にて、該ブロックを切断することにより、バリア性基材の断面を作製する。断面は、バリア性基材の主面に対して垂直となる厚さ方向に切断して得られる。仕上げはダイヤモンドナイフにて実施する。基材および各層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM、日立製作所社製、SU8000)を用いて上記断面を観察して測定される5箇所の厚さの算術平均値とする。
【0035】
ポリオレフィン基材は、枚葉フィルムでもよく、長尺状フィルムでもよい。
ポリオレフィン基材は、ロール状に巻回された長尺状フィルムでもよい。
【0036】
<アンカーコート層>
本開示のバリア性基材は、ポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との間に、アンカーコート層をさらに備える。アンカーコート層を備えるバリア性基材は、ポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との密着性に優れ、これらの層間剥離の発生を抑制できる。
【0037】
アンカーコート層は、第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、を有する。ポリオレフィン基材は、一実施形態においてアンカーコート層の第1の面と接している。酸化ケイ素蒸着膜は、一実施形態においてアンカーコート層の第2の面と接している。
【0038】
アンカーコート層の転移点は、90℃以上でもよく、94℃以上でもよく、98℃以上でもよく、102℃以上でもよく、105℃以上でもよく、110℃以上でもよい。アンカーコート層の転移点は、128℃以下でもよく、125℃以下でもよく、120℃以下でもよい。転移点が下限値以上のアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性(特に水蒸気バリア性)に優れ、また、印刷処理、ラミネート処理およびレトルト処理等の熱処理後におけるガスバリア性にも優れる。転移点が上限値以下のアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性(特に酸素バリア性)に優れ、また、上記熱処理後におけるポリオレフィン基材に対するアンカーコート層の密着性に優れる。
【0039】
アンカーコート層の転移点は、サーマルプローブを用いた局所熱分析で測定される値である。サーマルプローブを用いた局所熱分析では、アンカーコート層の断面にサーマルプローブを接触させた状態で、温度を上昇させながらサーマルプローブの加熱前からのアンカーコート層断面の法線方向の変位を計測し、熱膨張曲線を得る。上記断面は、バリア性基材の主面に対して垂直となる厚さ方向に切断して得られる。サーマルプローブが接触する箇所は、アンカーコート層の断面が露出した部分のうち、アンカーコート層の厚さ方向における中央部付近とする。測定は同一断面において5箇所以上で実施し、転移点は再現良く測定された5箇所の値の算術平均値として記載する。
【0040】
局所熱分析では、加熱によりアンカーコート層に含まれる樹脂が膨張することで、サーマルプローブが押し上げられる。アンカーコート層の樹脂の構造転移等により、熱膨張曲線の傾き(変位/温度)が変化する。アンカーコート層の樹脂の構造転移のうち、特に膨張から軟化へと転じる場合は、サーマルプローブの先端が樹脂内に入り込むため、サーマルプローブが下降する。サーマルプローブの変位が上昇から下降に転じる点が、熱膨張曲線のピークに相当し、軟化点と呼ばれる。熱膨張曲線のピークの温度を読み取ることで、アンカーコート層の転移点が得られる。
【0041】
熱膨張曲線の傾き(変位/温度)変化に伴い、熱膨張曲線に「肩ピーク」が得られる場合がある。「肩ピーク」は、明瞭な凸形状でないが、熱膨張曲線の傾き(変位/温度)が変化し、熱膨張曲線の傾きが0近くまで小さくなった点と定義する。熱膨張曲線の傾きが変化する前後の温度帯で、熱膨張曲線の接線を引き、交点の温度を算出することで、変曲点が得られる。この変曲点の温度を「肩ピーク」の温度とする。
【0042】
熱膨張曲線のピークが得られた場合は、熱膨張曲線のピークの温度を転移点とする。ただし、熱膨張曲線のピークが得られず「肩ピーク」が得られた場合、またはピークが得られる温度より低温側で「肩ピーク」が見られた場合は、「肩ピーク」の温度を転移点とする。測定開始後、最も低温に表れた転移点を、アンカーコート層の転移点と定義する。
測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。
【0043】
アンカーコート層における、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて測定されるNO2
-イオンの規格化強度は、3.0以上でもよく、3.2以上でもよく、3.5以上でもよい。アンカーコート層におけるNO2
-イオンの規格化強度は、4.2以下でもよく、4.0以下でもよい。NO2
-イオンの規格化強度が下限値以上であると、例えば、ガスバリア性がより優れる。NO2
-イオンの規格化強度が上限値以下であると、例えば、ガスバリア性、アンカーコート層の外観、およびアンカーコート層と酸化ケイ素蒸着膜との密着性がより優れる。
【0044】
NO2
-イオンの規格化強度は、以下のようにして算出される。NO2
-イオン(質量数45.992)の検出強度をCN-イオン(質量数26.002)の検出強度により除して、100000倍することにより、規格化を行う。アンカーコート層の厚さ方向における中央部の領域におけるNO2
-イオンの規格化後の検出強度の平均値の常用対数値を、アンカーコート層におけるNO2
-イオンの規格化強度とする。ここで、アンカーコート層の中央部の領域とは、アンカーコート層の中央付近であって、アンカーコート層の厚さに対して50%の厚さの領域を意味する。
【0045】
NO2
-イオンの規格化強度 =
log10{(NO2
-イオンの検出強度/CN-イオンの検出強度)×100000}
【0046】
各イオンの強度は、以下の様にして測定される。飛行時間型二次イオン質量分析計(ION TOF社製、TOF.SIMS5)を用いて、バリア性基材の酸化ケイ素蒸着膜または保護層表面からポリオレフィン基材側へ、Cs(セシウム)イオン銃により一定の速度でソフトエッチングを繰り返して、各層でのイオンを検出する。具体的な測定条件は、実施例欄に記載する。
【0047】
アンカーコート層の厚さ方向における中央部の領域におけるNO2
-イオンの規格化後の検出強度の測定においては、アンカーコート層の厚さは、以下の様にして測定する。
TOF-SIMS測定で得られた上記規格化前のグラフにおいて、酸化ケイ素蒸着膜由来のイオンの強度が酸化ケイ素蒸着膜由来のイオンの最大強度の50%になる位置を、酸化ケイ素蒸着膜とアンカーコート層との界面とする。酸化ケイ素蒸着膜由来のイオンは、SiO2(質量数59.96)である。
TOF-SIMS測定で得られた上記規格化前のグラフにおいて、CN-イオンの強度がCN-イオンの最大強度の50%になる位置を、アンカーコート層とポリオレフィン基材との界面とする。
上記2つの界面間の厚さ方向の距離を、アンカーコート層の厚さとする。
【0048】
アンカーコート層の断面について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定される弾性率は、95MPa以上でもよく、100MPa以上でもよく、105MPa以上でもよく、110MPa以上でもよく、115MPa以上でもよく、120MPa以上でもよく、130MPa以上でもよく、140MPa以上でもよく、150MPa以上でもよい。弾性率が下限値以上のアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、印刷処理、ラミネート処理およびレトルト処理等の熱処理後においてもガスバリア性に優れる。
アンカーコート層の断面についてAFMを用いて測定される弾性率は、1000MPa以下でもよく、900MPa以下でもよく、800MPa以下でもよく、700MPa以下でもよく、600MPa以下でもよく、500MPa以下でもよく、400MPa以下でもよく、350MPa以下でもよく、300MPa以下でもよく、250MPa以下でもよく、200MPa以下でもよい。弾性率が上限値以下のアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、熱処理後においてもガスバリア性に優れる。
AFMによる上記弾性率の測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。
上記弾性率は、例えば、後述する硬化剤や、グルコース環を有する化合物の種類および添加量により調整することができる。
【0049】
アンカーコート層は、一実施形態において、樹脂成分を含有する。樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂の硬化物が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタンならびにポリアミドが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂および熱硬化性ポリウレタンが挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合は、硬化剤を併用することが好ましい。硬化剤としては、例えば、アミン化合物、フェノール化合物、イソシアネート化合物およびカルボン酸化合物が挙げられる。
樹脂成分としては、例えば、密着性という観点から、ポリエステルが好ましい。
【0050】
ポリエステルとしては、例えば、酸成分と多価アルコールとの重縮合によって合成される重合物、ラクトン開環重合物、ポリヒドロキシカルボン酸重合物、ウレア変性ポリエステルおよびウレタン変性ポリエステルが挙げられる。酸成分としては、例えば、多価カルボン酸、そのエステルおよびその酸無水物が挙げられる。ウレタン変性ポリエステルとは、ウレタン結合を有するポリエステルである。
【0051】
ウレタン変性ポリエステルは、例えば、2以上のポリエステルが多価イソシアネートに由来する構成単位により結合されている樹脂である。このような樹脂は、例えば、ポリエステルの末端水酸基と多価イソシアネートのイソシアネート基とを反応させることにより得ることができる。
【0052】
ウレタン変性ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、50℃以上でもよく、60℃以上でもよく、70℃以上でもよく、また、120℃以下でもよく、110℃以下でもよい。Tgは、JIS K7121:1987に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により得られる中間点ガラス転移温度である。
【0053】
ウレタン変性ポリエステルの水酸基価は、1mgKOH/g以上でもよく、3mgKOH/g以上でもよく、5mgKOH/g以上でもよく、また、90mgKOH/g以下でもよく、70mgKOH/g以下でもよい。水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数で表される。水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠して測定される。
【0054】
ウレタン変性ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、500以上でもよく、1,000以上でもよく、また、50,000以下でもよく、30,000以下でもよく、10,000以下でもよい。Mnは、JIS K7252-1:2016に準拠して、ポリスチレンを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0055】
ウレタン変性ポリエステルは、例えば、ポリエステルポリオールと多価イソシアネートとを反応させることにより得られる。ウレタン変性ポリエステルは、例えば、ポリエステルポリオールと多価イソシアネートとをイソシアネート基に対して水酸基過剰の比率で反応させることにより得られ、1分子中に2個以上の水酸基を有することが好ましい。ポリエステルポリオールと多価イソシアネートとの反応には、通常のウレタン化反応の反応条件を広く適用できる。
【0056】
ポリエステルポリオールは、酸成分と多価アルコールとをエステル化反応させることにより得られる、1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂である。酸成分としては、例えば、多価カルボン酸、そのエステルおよびその酸無水物が挙げられる。ポリエステルポリオールは、カプロラクトンの開環反応によって得られるポリエステルでもよい。
【0057】
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸およびドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸およびピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;ならびにブタントリカルボン酸、トリカルバリル酸およびクエン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0058】
多価アルコールとしては、例えば、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物が挙げられ、脂肪族グリコール等の2価のアルコールおよび3価以上の多価アルコールが挙げられる。2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールおよび2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールが挙げられる。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、脂肪族グリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンおよびペンタエリスリトールが挙げられる。
【0059】
多価イソシアネートとしては、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびトリメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;ならびにキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートおよびビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0060】
ウレタン変性ポリエステルは、多価カルボン酸、そのエステルおよびその酸無水物等の酸成分と、多価アルコールと、多価イソシアネートと、を同時に反応させることにより得ることもできる。
【0061】
アンカーコート層は、一実施形態において、樹脂成分として、反応性官能基を有する樹脂と硬化剤とから形成される硬化樹脂を含有してもよい。反応性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基およびアミノ基が挙げられる。反応性官能基を有する樹脂としては、例えば、ウレタン変性ポリエステルが挙げられる。
【0062】
硬化剤としては、例えば、芳香族イソシアネート化合物および脂肪族イソシアネート化合物などのイソシアネート化合物が挙げられる。硬化剤としては、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI系イソシアネート)およびキシリレンジイソシアネート(XDI系イソシアネート)などの芳香族イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI系イソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI系イソシアネート)などの脂肪族イソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物の変性物、および多官能化したダイマー体、アダクト体、アロファネート体、トリマー体、カルボジイミドアダクト体、ビウレット体、また、それらの重合物、および多価アルコールを付加した重合物が挙げられる。硬化剤としては、ポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との密着性という観点から、芳香族イソシアネート化合物が好ましく、キシリレンジイソシアネート(XDI)がより好ましい。
【0063】
硬化剤の使用量は、上記反応性官能基を有する樹脂100質量部に対して、10質量部以上でもよく、20質量部以上でもよく、50質量部以上でもよく、また、200質量部以下でもよく、150質量部以下でもよい。このようなアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との密着性に優れる。
【0064】
アンカーコート層における樹脂成分の含有割合は、30質量%以上でもよく、40質量%以上でもよく、50質量%以上でもよく、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよい。樹脂成分には、上述した硬化樹脂も包含される。
【0065】
アンカーコート層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、染料およびシランカップリング剤が挙げられる。
【0066】
アンカーコート層は、グルコース環を有する化合物をさらに含有してもよい。グルコース環を有する化合物としては、例えば、セルロースおよびプルランなどの多糖類ならびにその誘導体が挙げられる。誘導体としては、例えば、メチル化物、ニトロ化物、アセチル化物、カルボキシメチル化物およびシアノエチル化物が挙げられる。誘導体としては、具体的には、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートおよびメチルセルロース;ならびにニトロセルロース等のニトロ基およびグルコース環を有する化合物が挙げられる。
【0067】
グルコース環を有する化合物をさらに含有するアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との密着性により優れる。グルコース環を有する化合物をさらに含有するアンカーコート層は、例えば、耐熱性により優れ、アンカーコート層上に酸化ケイ素蒸着膜を形成するときの熱や、ボイル処理およびレトルト処理時の熱によるアンカーコート層の劣化を抑制でき、したがって形成された酸化ケイ素蒸着膜が所望のガスバリア性を容易に発揮できる。
【0068】
アンカーコート層におけるグルコース環を有する化合物の含有量は、上記樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上でもよく、20質量部以上でもよく、30質量部以上でもよく、40質量部以上でもよい。このようなアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性(特に水蒸気バリア性)に優れる。
【0069】
アンカーコート層におけるグルコース環を有する化合物の含有量は、上記樹脂成分100質量部に対して、180質量部以下でもよく、150質量部以下でもよく、130質量部以下でもよく、100質量部以下でもよい。グルコース環を有する化合物をこのような量で含むアンカーコート剤は、例えば、塗工性に優れるとともに、このようなアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性(特に酸素バリア性)に優れ、また、熱処理後におけるポリオレフィン基材に対するアンカーコート層の密着性に優れる。
【0070】
アンカーコート層の厚さは、200nm以上でもよく、230nm以上でもよく、270nm以上でもよく、300nm以上でもよく、330nm以上でもよく、また、1700nm以下でもよく、1600nm以下でもよく、1500nm以下でもよく、1400nm以下でもよく、1300nm以下でもよく、1200nm以下でもよく、1100nm以下でもよく、1000nm以下でもよく、900nm以下でもよく、800nm以下でもよく、700nm以下でもよく、600nm以下でもよい。厚さが下限値以上のアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ポリオレフィン基材と酸化ケイ素蒸着膜との間の密着性に優れ、またこのようなバリア性基材を備えるバリア性積層体は、例えば、熱処理後においてもガスバリア性(特に酸素バリア性)に優れる。厚さが上限値以下のアンカーコート層を備えるバリア性基材は、例えば、加工性に優れ、また、ガスバリア性(特に酸素バリア性)に優れる。
【0071】
本明細書において、アンカーコート層の厚さは、NO2
-イオンの規格化後の検出強度の測定の場合を除き、以下のようにして測定される。バリア性基材を包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、市販の回転式ミクロトームを用いて室温(25℃)環境下にて、該ブロックを切断することにより、バリア性基材の断面を作製する。断面は、バリア性基材の主面に対して垂直となる厚さ方向に切断して得られる。仕上げはダイヤモンドナイフにて実施する。アンカーコート層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて上記断面を観察して測定される5箇所の厚さの算術平均値とする。
【0072】
アンカーコート層は、例えば、ポリオレフィン基材の表面にアンカーコート剤を塗布し、乾燥することにより形成できる。アンカーコート剤は、例えば、上述した樹脂成分またはその前駆体樹脂(例えば熱硬化性樹脂および硬化剤)と、必要に応じて添加剤と、溶剤とを混合することにより調製できる。これらの成分の詳細は、上述したとおりである。
【0073】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノールおよび1-ブタノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール溶剤;酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル溶剤;n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶剤;塩化メチレンおよびクロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶剤;ジオキソランおよびテトラヒドロフラン等のエーテル溶剤;アセトニトリルおよびN,N-ジメチルホルムアミド等の含窒素溶剤;ならびにジメチルスルホキシド等の含硫黄溶剤が挙げられる。
【0074】
アンカーコート剤の塗布方法としては、公知の塗布方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、エアーナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、リップコート法およびディッピング法が挙げられる。塗布されたアンカーコート剤の乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥および赤外線照射などの熱を印加する方法が挙げられる。乾燥温度は、50℃以上でもよく、また、150℃以下でもよい。
【0075】
<酸化ケイ素蒸着膜>
本開示のバリア性基材は、酸化ケイ素蒸着膜を備える。酸化ケイ素蒸着膜は、アンカーコート層の第2の面に、直接、蒸着形成された層であることが好ましい。酸化ケイ素蒸着膜は、酸素ガスおよび水蒸気などのガスの透過を抑制する層である。したがって、例えば、本開示のバリア性基材は、ガスバリア性に優れる。
【0076】
酸化ケイ素蒸着膜は、酸化ケイ素であるSiOxを含み、例えば酸化ケイ素により構成される。xは、例えば、0を超えて2以下であり、1以上2以下でもよい。酸化ケイ素蒸着膜は、1層でもよく、2層以上でもよい。
【0077】
酸化ケイ素蒸着膜の厚さは、3nm以上でもよく、4nm以上でもよく、5nm以上でもよく、10nm以上でもよく、20nm以上でもよく、また、300nm以下でもよく、250nm以下でもよく、200nm以下でもよく、100nm以下でもよく、80nm以下でもよく、60nm以下でもよく、50nm以下でもよく、40nm以下でもよい。厚さが下限値以上の酸化ケイ素蒸着膜は、例えば、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れる。厚さが上限値以下の酸化ケイ素蒸着膜は、例えば、クラックの発生を抑制できる。
【0078】
酸化ケイ素蒸着膜には、表面処理が施されていてもよい。このような酸化ケイ素蒸着膜は、例えば、該蒸着膜に接する層との密着性に優れる。表面処理の方法としては、上述した方法が挙げられる。
【0079】
酸化ケイ素蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびクラスターイオンビーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法);ならびにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)が挙げられる。加熱手段としては、例えば、抵抗加熱手段、誘導加熱手段および電子線加熱手段が挙げられる。
【0080】
<保護層>
本開示のバリア性基材は、酸化ケイ素蒸着膜におけるアンカーコート層に向かう面とは反対側の面上に、保護層をさらに備えてもよい。保護層は、例えば、酸化ケイ素蒸着膜の耐傷性を高める。
【0081】
保護層は、一実施形態において、樹脂成分を含有する。樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂、メラミン樹脂ならびにエポキシ樹脂が挙げられる。樹脂成分としては、ウレタン樹脂が好ましい。保護層における樹脂成分の含有割合は、50質量%以上でもよく、75質量%以上でもよく、また、95質量%以下でもよく、90質量%以下でもよい。
【0082】
保護層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、硬化剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、熱安定剤およびシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニル系、エポキシ系、スチリル系、メタクリル系、アクリル系、アミノ系、イソシアヌレート系、ウレイド系、メルカプト系、スルフィド系またはイソシアネート系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0083】
保護層の厚さは、0.01μm以上でもよく、0.05μm以上でもよく、0.1μm以上でもよく、また、5μm以下でもよく、3μm以下でもよく、1μm以下でもよい。このような保護層は、例えば、耐傷性に優れる。
保護層の厚さは、上述したように走査型電子顕微鏡を用いた断面観察により測定される。有機系の保護層の場合は、バリア性基材を包埋樹脂によって包埋したブロックを作製する際、バリア性基材を包埋する前にスパッタリング法により保護層の表面に金属膜を形成する前処理を行う。
【0084】
保護層は、例えば、酸化ケイ素蒸着膜の表面に保護層用塗工液を塗布し、乾燥することにより形成できる。保護層用塗工液は、例えば、上述した樹脂成分と、必要に応じて添加剤と、溶剤とを混合することにより調製できる。これらの成分の詳細は、上述したとおりである。保護層用塗工液の塗布方法としては、上述した公知の塗布方法が挙げられる。塗布された保護層用塗工液の乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥および赤外線照射などの熱を印加する方法が挙げられる。乾燥温度は、50℃以上でもよく、また、150℃以下でもよい。
【0085】
保護層は、一実施形態において、ガスバリア性樹脂を含有するバリアコート層でもよい。酸化ケイ素蒸着膜上にバリアコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性に優れる。ガスバリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリロニトリル;ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ならびに(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。バリアコート層におけるガスバリア性樹脂の含有割合は、50質量%超でもよく、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、また、95質量%以下でもよく、90質量%以下でもよい。このようなバリアコート層は、例えば、ガスバリア性に優れる。
【0086】
バリアコート層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0087】
バリアコート層は、例えば、ガスバリア性樹脂等の材料を水または適当な有機溶剤に溶解または分散させ、得られた塗布液を酸化ケイ素蒸着膜の表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。バリアコート層は、例えば、市販のバリアコート剤を塗布し、乾燥することによっても形成できる。
【0088】
バリアコート層の厚さは、0.01μm以上でもよく、0.1μm以上でもよく、また、10μm以下でもよく、5μm以下でもよい。厚さが下限値以上のバリアコート層を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性に優れる。厚さが上限値以下のバリアコート層を備えるバリア性基材は、例えば、加工性に優れる。
【0089】
保護層は、他の実施形態において、金属アルコキシドと水溶性高分子とを含有する組成物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤等の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合処理して形成されたガスバリア性塗布膜でもよい。酸化ケイ素蒸着膜上にガスバリア性塗布膜を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性に優れる。
【0090】
金属アルコキシドは、例えば、下記式で表される。
R1
nM(OR2)m
上記式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価を表す。R1およびR2で表される有機基としては、例えば、炭素数1以上8以下のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基およびイソブチル基が挙げられる。金属原子Mとしては、例えば、ケイ素、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムが挙げられる。上記式で表される金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびテトラブトキシシランが挙げられる。
【0091】
金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤を用いてもよい。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができ、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好ましい。エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよびβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤の使用量は、金属アルコキシド100質量部に対して、1質量部以上でもよく、また、20質量部以下でもよい。
【0092】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐候性等の所望の物性に応じて、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体のいずれか一方を用いてもよく、両者を併用してもよく、また、ポリビニルアルコールを用いて得られるガスバリア性塗布膜およびエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いて得られるガスバリア性塗布膜を積層してもよい。上記組成物における水溶性高分子の含有量は、金属アルコキシド100質量部に対して、5質量部以上でもよく、また、500質量部以下でもよい。
【0093】
ゾルゲル法触媒としては、酸またはアミン系化合物が好ましい。
アミン系化合物としては、水に実質的に不溶であり、且つ有機溶剤に可溶な第3級アミンが好ましく、例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンおよびトリペンチルアミンが挙げられる。これらの中でも、N,N-ジメチルベンジルアミンが好ましい。アミン系化合物の使用量は、金属アルコキシド100質量部に対して、0.01質量部以上でもよく、0.03質量部以上でもよく、また、1質量部以下でもよく、0.3質量部以下でもよい。
【0094】
酸は、ゾルゲル法触媒、主として金属アルコキシドおよびシランカップリング剤等の加水分解のための触媒として好適に用いられる。酸としては、例えば、硫酸、塩酸および硝酸等の鉱酸、ならびに酢酸および酒石酸等の有機酸が挙げられる。酸の使用量は、金属アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総量1モルに対して、0.001モル以上でもよく、また、0.05モル以下でもよい。
【0095】
上記組成物における水の量は、アルコキシドの総量1モルに対して、0.1モル以上でもよく、0.5モル以上でもよく、0.8モル以上でもよく、また、100モル以下でもよく、50モル以下でもよく、10モル以下でもよく、2モル以下でもよい。
【0096】
上記組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびn-ブタノール等のアルコール溶剤が挙げられる。
【0097】
ガスバリア性塗布膜の表面において、X線光電子分光法(XPS)により測定されるケイ素原子と炭素原子との比(Si/C)は、0.50以上でもよく、0.90以上でもよく、また、1.60以下でもよく、1.35以下でもよい。上記比が上限値以下であると、例えば、バリア性基材を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。上記比が下限値以上であると、例えば、バリア性基材を用いて包装容器を作製する際に、ヒートシール等の加熱を行ってもガスバリア性の低下を抑制できる。
【0098】
ケイ素原子と炭素原子との比の上記範囲は、水溶性高分子に対する金属アルコキシドの使用量を適宜調整することにより達成できる。本明細書において、ケイ素原子と炭素原子との比は、モル基準である。X線光電子分光法(XPS)によるケイ素原子と炭素原子との比は、以下の測定条件のナロースキャン分析によって測定される。
【0099】
(測定条件)
使用機器:「ESCA-3400」(Kratos製)
[1]スペクトル採取条件
入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:150W(10kV・15mA)
X線走査面積(測定領域):約6mmφ
光電子取込角度:90度
[2]イオンスパッタ条件
イオン種:Ar+
加速電圧:0.2(kV)
エミッション電流:20(mA)
etch範囲:10mmφ
イオンスパッタ時間:30秒+30秒+60秒(トータル120秒)で実施し、
スペクトルを採取
【0100】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、0.01μm以上でもよく、0.1μm以上でもよく、また、2μm以下でもよく、0.5μm以下でもよい。厚さが下限値以上のガスバリア性塗布膜を備えるバリア性基材は、ガスバリア性に優れ、また、酸化ケイ素蒸着膜の穴または空隙を埋める効果が期待できる。厚さが上限値以下のガスバリア性塗布膜を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性塗布膜自体におけるクラックの発生を抑制でき、包装材料用基材として好ましい。
【0101】
ガスバリア性塗布膜は、例えば、金属アルコキシドと水溶性高分子とを含有する上記組成物を、酸化ケイ素蒸着膜の表面に従来公知の塗布方法により塗布し、該組成物をゾルゲル法により重縮合処理することにより形成できる。
【0102】
以下、ガスバリア性塗布膜の形成方法の一実施形態について説明する。
まず、金属アルコキシド、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、水、有機溶剤および必要に応じてシランカップリング剤等を混合し、組成物を調製する。該組成物中では次第に重縮合反応が進行する。次いで、酸化ケイ素蒸着膜の表面に、従来公知の塗布方法により、上記組成物を塗布および乾燥する。この乾燥により、金属アルコキシドおよび水溶性高分子(上記組成物がシランカップリング剤を含有する場合は、シランカップリング剤も)の重縮合反応がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。最後に、上記組成物を加熱する。加熱温度は、50℃以上でもよく、60℃以上でもよく、また、140℃以下でもよく、120℃以下でもよい。加熱時間は、1秒以上でもよく、また、10分以下でもよい。このようにして、ガスバリア性塗布膜を形成できる。
【0103】
<印刷層>
本開示のバリア性基材は、ポリオレフィン基材上に印刷層を備えてもよい。印刷層に含まれる画像としては、例えば、文字、柄、記号およびこれらの組合せが挙げられる。印刷層は、環境負荷の低減という観点から、バイオマス由来のインキを用いて形成してもよい。印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法およびフレキソ印刷法などの従来公知の印刷法が挙げられる。これらの中でも、環境負荷の低減という観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
印刷層の厚さは、0.5μm以上でもよく、また、3μm以下でもよい。
【0104】
<ガスバリア性>
本開示のバリア性基材の酸素透過度(OTR、単位:cc/(m2・day・atm))は、3.0以下でもよく、2.5以下でもよく、2.0以下でもよく、1.5以下でもよく、1.0以下でもよく、0.8以下でもよく、0.6以下でもよい。OTRの下限値は、低いほど好ましいが、例えば0.01、0.05または0.1でもよい。本明細書において、OTRは、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、湿度90%RH環境下において測定される。
【0105】
本開示のバリア性基材の水蒸気透過度(WVTR、単位:g/(m2・day))は、2.0以下でもよく、1.8以下でもよく、1.5以下でもよく、1.2以下でもよく、1.0以下でもよい。WVTRの下限値は、低いほど好ましいが、例えば0.01、0.05または0.1でもよい。本明細書において、WVTRは、JIS K7129-2:2019に準拠して、温度40℃、湿度90%RH環境下において測定される。
【0106】
[バリア性積層体]
本開示のバリア性積層体は、上述したバリア性基材と、シーラント層と、をこの順に備える。本開示のバリア性積層体は、上述したバリア性基材と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備えてもよい。
【0107】
本開示のバリア性積層体は、基材としてバリア性基材を1つのみ備えてもよい。この場合において、酸化ケイ素蒸着膜がシーラント層側を向き、ポリオレフィン基材が外側を向くように、バリア性基材が配置されていてもよい。
【0108】
本開示のバリア性積層体は、基材を2つ以上備えてもよい。すなわち本開示のバリア性積層体は、基材として、バリア性基材に加えて、ポリオレフィン基材(以下、バリア性基材が備えるポリオレフィン基材と区別するため、「第2のポリオレフィン基材」ともいい、バリア性基材が備えるポリオレフィン基材を「第1のポリオレフィン基材」ともいう)をさらに備えてもよく、バリア性基材を2つ以上備えてもよい。このようなバリア性積層体は、バリア性基材およびシーラント層という2要素を備えるバリア性積層体に比べて、ガスバリア性により優れる。
【0109】
本開示のバリア性積層体は、バリア性基材と、第2のポリオレフィン基材と、シーラント層と、をこの順に備えてもよく、バリア性基材と、第1の接着層と、第2のポリオレフィン基材と、第2の接着層と、シーラント層と、をこの順に備えてもよい。これらの場合において、酸化ケイ素蒸着膜が第2のポリオレフィン基材側を向き、第1のポリオレフィン基材が外側を向くように、バリア性基材が配置されていてもよい。
【0110】
本開示のバリア性積層体は、第2のポリオレフィン基材と、バリア性基材と、シーラント層と、をこの順に備えてもよく、第2のポリオレフィン基材と、第1の接着層と、バリア性基材と、第2の接着層と、シーラント層と、をこの順に備えてもよい。これらの場合において、酸化ケイ素蒸着膜が第2のポリオレフィン基材側を向き、第1のポリオレフィン基材がシーラント層側を向くように、バリア性基材が配置されていてもよく、酸化ケイ素蒸着膜がシーラント層側を向き、第1のポリオレフィン基材が第2のポリオレフィン基材側を向くように、バリア性基材が配置されていてもよい。これらの中でも、酸化ケイ素蒸着膜の劣化等をより抑制できるという観点から、酸化ケイ素蒸着膜が第2のポリオレフィン基材側を向き、第1のポリオレフィン基材がシーラント層側を向くように、バリア性基材が配置されていることが好ましい。
【0111】
第2のポリオレフィン基材、バリア性基材およびシーラント層をこの順に備えるバリア性積層体は、バリア性基材およびシーラント層という2要素を備えるバリア性積層体に比べて、例えば、熱処理等を受けた際に酸化ケイ素蒸着膜がより適切に保護され、さらに高いガスバリア性を示す。
第2のポリオレフィン基材、バリア性基材およびシーラント層をこの順に備えるバリア性積層体は、バリア性基材、第2のポリオレフィン基材およびシーラント層をこの順に備えるバリア性積層体に比べて、例えば、熱処理等を受けた際に酸化ケイ素蒸着膜がより適切に保護され、高いガスバリア性を示すとともに、熱処理を受けた場合における熱収縮率がより小さく、よって製袋適性にさらに優れる。
【0112】
本開示のバリア性積層体は、第1のバリア性基材と、第2のバリア性基材と、シーラント層と、をこの順に備えてもよく、第1のバリア性基材と、第1の接着層と、第2のバリア性基材と、第2の接着層と、シーラント層と、をこの順に備えてもよい。第1のバリア性基材および第2のバリア性基材は、それぞれ、上述したバリア性基材である。
【0113】
図3~
図8は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図3に示すバリア性積層体2は、バリア性基材1と、接着層50と、シーラント層60と、をこの順に備える。バリア性基材1は、ポリオレフィン基材10と、アンカーコート層20、酸化ケイ素蒸着膜30と、をこの順に備える。この例では、ポリオレフィン基材10はバリア性積層体2の表層を構成し、酸化ケイ素蒸着膜30は接着層50と接している。
【0114】
図4は、バリア性基材1が、ポリオレフィン基材10と、アンカーコート層20と、酸化ケイ素蒸着膜30と、保護層40と、をこの順に備えること以外は、
図3と同様である。この例では、保護層40は接着層50と接している。
【0115】
図5に示すバリア性積層体2は、第2のポリオレフィン基材70と、第1の接着層50Aと、バリア性基材1と、第2の接着層50Bと、シーラント層60と、をこの順に備える。バリア性基材1は、第1のポリオレフィン基材10と、アンカーコート層20と、酸化ケイ素蒸着膜30と、をこの順に備える。この例では、第1のポリオレフィン基材10は第2の接着層50Bと接しており、酸化ケイ素蒸着膜30は第1の接着層50Aと接している。
【0116】
図6は、バリア性基材1が、第1のポリオレフィン基材10と、アンカーコート層20と、酸化ケイ素蒸着膜30と、保護層40と、をこの順に備えること以外は、
図5と同様である。この例では、保護層40は第1の接着層50Aと接している。
【0117】
図7に示すバリア性積層体2は、バリア性基材1と、第1の接着層50Aと、第2のポリオレフィン基材70と、第2の接着層50Bと、シーラント層60と、をこの順に備える。バリア性基材1は、第1のポリオレフィン基材10と、アンカーコート層20と、酸化ケイ素蒸着膜30と、をこの順に備える。この例では、第1のポリオレフィン基材10はバリア性積層体2の表層を構成し、酸化ケイ素蒸着膜30は第1の接着層50Aと接している。
【0118】
図8は、バリア性基材1が、第1のポリオレフィン基材10と、アンカーコート層20と、酸化ケイ素蒸着膜30と、保護層40と、をこの順に備えること以外は、
図7と同様である。この例では、保護層40は第1の接着層50Aと接している。
【0119】
バリア性基材のポリオレフィン基材は延伸ポリプロピレン基材でもよく、シーラント層はポリプロピレン層でもよい。バリア性基材の第1のポリオレフィン基材は延伸ポリプロピレン基材でもよく、第2のポリオレフィン基材は延伸ポリプロピレン基材でもよく、シーラント層はポリプロピレン層でもよい。これにより、包装容器のモノマテリアル化を図ることができる。使用済みの包装容器を回収した後、基材とシーラント層とを分離する必要がなく、包装容器のリサイクル性を向上できる。
【0120】
バリア性基材のポリオレフィン基材は延伸ポリエチレン基材でもよく、シーラント層はポリエチレン層でもよい。バリア性基材の第1のポリオレフィン基材は延伸ポリエチレン基材でもよく、第2のポリオレフィン基材は延伸ポリエチレン基材でもよく、シーラント層はポリエチレン層でもよい。これにより、包装容器のモノマテリアル化を図ることができる。
【0121】
バリア性積層体におけるポリオレフィンの含有割合は、80質量%以上でもよく、85質量%以上でもよく、90質量%以上でもよい。バリア性積層体におけるポリプロピレンの含有割合は、80質量%以上でもよく、85質量%以上でもよく、90質量%以上でもよい。バリア性積層体におけるポリエチレンの含有割合は、80質量%以上でもよく、85質量%以上でもよく、90質量%以上でもよい。このようなバリア性積層体を用いることにより、モノマテリアル化した包装容器を作製でき、包装容器のリサイクル性を向上できる。
【0122】
以下、本開示のバリア性積層体の積層構成の具体例を示す。「/」は層と層との境界を表す。「OPPフィルム」は、延伸ポリプロピレン基材を表し、「OPEフィルム」は、延伸ポリエチレン基材を表す。
(1)バリア性基材/印刷層/接着層/シーラント層
(2)バリア性基材/印刷層/接着層/バリア性基材/接着層/シーラント層
(3)OPPフィルム/印刷層/接着層/バリア性基材/接着層/シーラント層
(4)バリア性基材/印刷層/接着層/OPPフィルム/接着層/シーラント層
(5)OPEフィルム/印刷層/接着層/バリア性基材/接着層/シーラント層
(6)バリア性基材/印刷層/接着層/OPEフィルム/接着層/シーラント層
【0123】
<バリア性基材および第2のポリオレフィン基材>
バリア性基材については上述したとおりであり、本欄での説明は省略する。
第2のポリオレフィン基材としては、バリア性基材の欄にて説明したポリオレフィン基材を用いることができ、本欄での説明は省略する。
【0124】
<シーラント層>
本開示のバリア性積層体は、シーラント層を備える。
シーラント層は、一実施形態において、熱によって相互に融着し得る樹脂材料を含有する。熱によって相互に融着し得る樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィンが挙げられ、具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ならびに環状オレフィンコポリマーが挙げられる。熱によって相互に融着し得る樹脂材料としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルおよび(メタ)アクリル樹脂も挙げられる。酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
【0125】
シーラント層は、一実施形態において、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層である。ポリオレフィン層としては、例えば、ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層、およびポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン層である。
【0126】
ポリオレフィン層におけるポリオレフィンの含有割合は、50質量%超であり、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、95質量%以上でもよい。ポリプロピレン層におけるポリプロピレンの含有割合は、50質量%超であり、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、95質量%以上でもよい。ポリエチレン層におけるポリエチレンの含有割合は、50質量%超であり、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、95質量%以上でもよい。
【0127】
シーラント層におけるポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体等のプロピレンランダム共重合体、およびプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のプロピレンブロック共重合体が挙げられる。α-オレフィンの詳細は、上述したとおりである。ヒートシール性という観点から、ポリプロピレンの密度は、例えば0.88g/cm3以上0.92g/cm3以下である。密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。ポリプロピレンとしては、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。
【0128】
シーラント層におけるポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンが挙げられ、ヒートシール性という観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、バイオマス由来のポリエチレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレンを用いてもよい。
【0129】
シーラント層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0130】
シーラント層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
シーラント層の厚さは、10μm以上でもよく、20μm以上でもよく、30μm以上でもよく、また、200μm以下でもよく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよい。厚さが下限値以上であると、例えば、バリア性積層体を備える包装容器のラミネート強度をより向上できる。厚さが上限値以下であると、例えば、バリア性積層体の加工性をより向上できる。
【0131】
シーラント層は、ヒートシール性という観点から、未延伸の樹脂フィルムでもよく、未延伸のポリプロピレンフィルムまたは未延伸のポリエチレンフィルムでもよい。上記樹脂フィルムは、例えば、キャスト法、Tダイ法またはインフレーション法などを利用することにより作製できる。
【0132】
例えば、シーラント層に対応する未延伸の樹脂フィルムを必要に応じて接着層を介して基材上に積層してもよく、熱によって相互に融着し得る樹脂材料を基材上に溶融押出しすることによりシーラント層を形成してもよい。接着層としては、例えば、後述する接着層が挙げられる。
【0133】
<印刷層>
本開示のバリア性積層体は、バリア性基材および第2のポリオレフィン基材などの基材の表面に印刷層を備えてもよい。印刷層に含まれる画像としては、例えば、文字、柄、記号およびこれらの組合せが挙げられる。印刷層は、環境負荷の低減という観点から、バイオマス由来のインキを用いて形成してもよい。印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法およびフレキソ印刷法などの従来公知の印刷法が挙げられる。これらの中でも、環境負荷の低減という観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
印刷層の厚さは、0.5μm以上でもよく、また、3μm以下でもよい。
【0134】
<接着層>
本開示のバリア性積層体は、バリア性基材とシーラント層との間に、接着層を備えてもよい。バリア性基材と第2のポリオレフィン基材とを備えるバリア性積層体は、バリア性基材と第2のポリオレフィン基材との間に、第1の接着層を備えてもよく、基材(バリア性基材または第2のポリオレフィン基材)とシーラント層との間に、第2の接着層を備えてもよい。これにより、基材とシーラント層との間の密着性、および/または各基材間の密着性を向上できる。
【0135】
接着層は、例えば、接着剤により構成される接着剤層である。接着剤は、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、および非硬化型の接着剤のいずれでもよい。接着剤は、無溶剤型の接着剤でもよく、溶剤型の接着剤でもよい。本開示のバリア性積層体は、一実施形態において、少なくとも、第2のポリオレフィン基材、バリア性基材およびシーラント層という3要素を備える。これにより、接着剤を用いてバリア性積層体を製造する場合に、酸化ケイ素蒸着膜上に接着剤を直接塗布しなくともバリア性積層体を製造することが可能となり、蒸着膜の劣化を抑制できる。
【0136】
無溶剤型の接着剤、すなわちノンソルベントラミネート接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびポリウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のポリウレタン系接着剤がより好ましい。
【0137】
溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤およびポリウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のポリウレタン系接着剤がより好ましい。
【0138】
接着層の厚さは、0.1μm以上でもよく、0.2μm以上でもよく、0.5μm以上でもよく、また、10μm以下でもよく、8μm以下でもよく、6μm以下でもよい。接着層の厚さは、2μm以下でもよい。接着層の厚さは、2μm超でもよい。
【0139】
バリア性積層体が接着層を2つ以上備える場合は、各接着層を形成する接着剤は、同一でもよく、異なってもよい。
【0140】
本開示のバリア性積層体は、例えば、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法およびサンドラミネート法等の従来公知の方法を用いて製造できる。本開示のバリア性積層体は、バリア性基材と、シーラント層に対応する樹脂フィルム(シーラントフィルム)とを、無溶剤型の接着剤を用いたノンソルベントラミネート法により貼り合わせて製造してもよく、溶剤型の接着剤を用いたドライラミネート法により貼り合わせて製造してもよい。本開示のバリア性積層体は、第2のポリオレフィン基材と、バリア性基材と、シーラント層に対応する樹脂フィルム(シーラントフィルム)とを、無溶剤型の接着剤を用いたノンソルベントラミネート法により貼り合わせて製造してもよく、溶剤型の接着剤を用いたドライラミネート法により貼り合わせて製造してもよい。
【0141】
<ガスバリア性>
本開示のバリア性積層体の酸素透過度(OTR、単位:cc/(m2・day・atm))は、3.0以下でもよく、2.5以下でもよく、2.0以下でもよく、1.5以下でもよく、1.0以下でもよく、0.8以下でもよく、0.6以下でもよく、0.5以下でもよい。OTRの下限値は、低いほど好ましいが、例えば0.01、0.05または0.1でもよい。
【0142】
本開示のバリア性積層体の水蒸気透過度(WVTR、単位:g/(m2・day))は、1.8以下でもよく、1.5以下でもよく、1.2以下でもよく、1.0以下でもよく、0.5以下でもよい。WVTRの下限値は、低いほど好ましいが、例えば0.01、0.05または0.1でもよい。
【0143】
[包装容器]
本開示のバリア性積層体は、包装材料として好適に使用できる。
包装材料は、包装容器を作製するために使用される。
【0144】
本開示の包装容器は、本開示のバリア性積層体を備える。包装容器としては、例えば、包装袋、チューブ容器、および蓋付き容器が挙げられる。蓋付き容器は、収容部を有する容器本体と、収容部を封止するように容器本体に接合(ヒートシール)された蓋材とを備える。
【0145】
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールが挙げられる。
【0146】
包装容器としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型およびガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。
【0147】
包装容器は、易開封部を備えてもよい。易開封部としては、例えば、包装容器の引き裂きの起点となるノッチ部や、包装容器を引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成されたハーフカット線が挙げられる。
【0148】
包装容器は、蒸気抜き機構を備えてもよい。蒸気抜き機構は、包装容器内の蒸気圧力が所定値以上となった際に、包装容器内部と外部とを連通させ、蒸気を逃がすと共に、蒸気抜き機構以外の箇所において蒸気が抜けることを抑制するように構成されている。
【0149】
蒸気抜き機構は、例えば、側部シール部から包装容器の内側に向かって突出した蒸気抜きシール部と、蒸気抜きシール部によって、内容物収容部から隔離された非シール部とを備える。非シール部は、包装容器の外部に連通している。内容物が充填され、開口部がヒートシールされた包装容器を、電子レンジなどを用いて加熱する。これにより、内部の圧力が高まり、蒸気抜きシール部が剥離する。蒸気は、蒸気抜きシール部剥離箇所および非シール部を通り、包装容器外部へ抜ける。
【0150】
一実施形態において、本開示のバリア性積層体を、バリア性基材が外側、シーラント層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。他の実施形態において、複数の本開示のバリア性積層体をシーラント層同士が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。包装袋の全部が上記バリア性積層体で構成されてもよく、包装袋の一部が上記バリア性積層体で構成されてもよい。
【0151】
一実施形態において、蓋付き容器における蓋材として、本開示のバリア性積層体が用いられる。蓋付き容器は、収容部を有する容器本体と、収容部を封止するように容器本体に接合(ヒートシール)された蓋材とを備える。ここで、蓋材、すなわち上記バリア性積層体のシーラント層と、容器本体とが、ヒートシールされている。容器本体の形状としては、例えば、カップ型および有底円筒形状が挙げられる。容器本体は、例えば、ポリスチレン製、ポリプロピレン製、ポリエチレン製または紙製である。
【0152】
包装容器中に収容される内容物としては、例えば、液体、固体、粉体およびゲル体が挙げられる。内容物は、飲食品でもよく、化学品、化粧品、医薬品、金属部品および電子部品等の非飲食品でもよい。包装容器中に内容物を収容した後、包装容器の開口部をヒートシールすることにより、包装容器を密封できる。
【0153】
上記包装容器は、一実施形態において、包装袋である。
包装袋の具体例として、以下、小袋およびスタンディングパウチについて説明する。
小袋は、小型の包装袋であって、例えば1g以上200g以下の内容物を収容するために使用される。小袋中に収容される内容物としては、例えば、ソース、醤油、ドレッシング、ケチャップ、シロップ、料理用酒類、他の液体または粘稠体の調味料;液体スープ、粉末スープ、果汁類;香辛料;液体飲料、ゼリー状飲料、インスタント食品、他の飲食品;化学品、化粧品、医薬品、金属部品および電子部品等の非食品が挙げられる。
【0154】
スタンディングパウチは、例えば50g以上2000g以下の内容物を収容するために使用される。スタンディングパウチ中に収容される内容物としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、ハンドソープ、ボディソープ、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、防虫剤、洗剤;ドレッシング、食用油、マヨネーズ、他の液体または粘稠体の調味料;液体飲料、ゼリー状飲料、インスタント食品、他の飲食品;クリーム;金属部品および電子部品が挙げられる。
【0155】
図9に、2枚のバリア性積層体を貼り合わせて得られる包装袋3を示す。斜線部分は、ヒートシールされた箇所を示す。包装袋3は、易開封部80を備えてもよい。易開封部80としては、例えば、包装袋3の引き裂きの起点となるノッチ部82や、包装袋3を引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成されたハーフカット線84が挙げられる。
【0156】
図10に、スタンディングパウチの構成の一例を簡略に示す。斜線部分は、ヒートシールされた箇所を示す。スタンディングパウチ4は、一実施形態において、胴部(側面シート)90と、底部(底面シート)92とを備える。側面シート90と底面シート92とは、同一部材により構成されてもよく、別部材により構成されてもよい。底面シート92が側面シート90の形状を保持することにより、パウチに自立性が付与され、スタンディング形式のパウチとすることができる。側面シート90と底面シート92とによって囲まれる領域内に、内容物を収容するための収容空間が形成される。
【0157】
スタンディングパウチ4は、蒸気抜き機構94を備えてもよい。蒸気抜き機構94は、側部シール部からパウチ4の内側に向かって突出した蒸気抜きシール部94aと、蒸気抜きシール部94aによって、内容物収容部から隔離された非シール部94bとを備える。非シール部94bは、パウチ4の外部に連通している。
【0158】
スタンディングパウチにおいて、胴部のみが本開示のバリア性積層体により構成されてもよく、底部のみが本開示のバリア性積層体により構成されてもよく、胴部および底部の両方が本開示のバリア性積層体により構成されてもよい。
【0159】
一実施形態において、側面シートは、本開示のバリア性積層体が備えるシーラント層が最内層となるように製袋することにより形成できる。一実施形態において、側面シートは、本開示のバリア性積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、両側の側縁部をヒートシールして製袋することにより形成できる。
【0160】
他の実施形態において、側面シートは、本開示のバリア性積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、重ね合わせたバリア性積層体の両側の側縁部におけるバリア性積層体間に、シーラント層が外側となるようにV字状に折ったバリア性積層体2枚をそれぞれ挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。このような作製方法によれば、側部ガセット付きの胴部を有するスタンディングパウチが得られる。
【0161】
一実施形態において、底面シートは、製袋された側面シート下部の間に本開示のバリア性積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。より具体的には、底面シートは、製袋された側面シート下部の間に、シーラント層が外側となるようにV字状に折ったバリア性積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。
【0162】
一実施形態において、上記バリア性積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、次いで、もう1枚の上記バリア性積層体をシーラント層が外側となるようにV字状に折り、これを向かい合わせとなったバリア性積層体の下部に挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成する。次いで、底部に隣接する2辺をヒートシールすることにより、胴部を形成する。このようにして、一実施形態のスタンディングパウチを形成できる。
【0163】
本開示の包装袋は、一実施形態において、熱処理を受けても高いガスバリア性を示すことから、電子レンジ対応包装袋、あるいはボイルまたはレトルト処理用パウチとして好適である。すなわち本開示の包装袋は、ボイルまたはレトルト処理用パウチとして好適であり、電子レンジ対応のボイルまたはレトルト処理用パウチとして特に好適である。ここで電子レンジ対応包装袋とは、電子レンジを用いて加熱可能な包装袋を意味する。
【0164】
レトルト処理されたパウチ(以下「レトルトパウチ」ともいう)は、包装袋中に飲食品などの内容物を充填して密封した後に、加圧下で100℃を超える温度で水または水蒸気によって加熱殺菌処理(レトルト処理)が行われた包装袋である。ボイル処理されたパウチ(以下「ボイルパウチ」ともいう)は、包装袋中に飲食品などの内容物を充填して密封した後に、100℃以下の温度で煮沸処理が行われた包装袋である。
【0165】
本開示の包装袋は、一実施形態において、レトルトパウチである。レトルト処理の条件は、種々ありえるが、一般的なレトルト処理が行われたパウチであれば、上記レトルトパウチに包含される。レトルト処理のうち、例えば、処理温度が105℃以上115℃以下の場合をセミレトルト処理と呼ぶ場合があり、処理温度が115℃超121℃以下の場合をレトルト処理と呼ぶ場合があり、処理温度が121℃超135℃以下の場合をハイレトルト処理と呼ぶ場合がある。
【0166】
本開示のレトルトパウチの酸素透過度(OTR、単位:cc/(m2・day・atm))は、3.0以下でもよく、2.5以下でもよく、2.0以下でもよく、1.5以下でもよく、1.0以下でもよい。OTRの下限値は、低いほど好ましいが、例えば0.01、0.05または0.1でもよい。
【0167】
本開示のレトルトパウチの水蒸気透過度(WVTR、単位:g/(m2・day))は、1.8以下でもよく、1.5以下でもよく、1.2以下でもよく、1.0以下でもよい。WVTRの下限値は、低いほど好ましいが、例えば0.01、0.05または0.1でもよい。
【0168】
本開示の包装袋は、一実施形態において、ボイルパウチである。
本開示のボイルパウチの酸素透過度(OTR、単位:cc/(m2・day・atm))は、3.0以下でもよく、2.5以下でもよく、2.0以下でもよく、1.5以下でもよく、1.0以下でもよい。OTRの下限値は、低いほど好ましいが、例えば0.01、0.05または0.1でもよい。
【0169】
本開示のボイルパウチの水蒸気透過度(WVTR、単位:g/(m2・day))は、1.8以下でもよく、1.5以下でもよく、1.2以下でもよく、1.0以下でもよい。WVTRの下限値は、低いほど好ましいが、例えば0.01、0.05または0.1でもよい。
【0170】
[実施形態]
本開示は、例えば以下の[1]~[13]に関する。
[1]ポリオレフィン基材と、アンカーコート層と、酸化ケイ素蒸着膜と、を厚さ方向にこの順に備えるバリア性基材であって、前記アンカーコート層の厚さが、200nm以上1700nm以下であり、前記アンカーコート層の、サーマルプローブを用いた局所熱分析で測定される転移点が、90℃以上128℃以下である、バリア性基材。
[2]前記アンカーコート層が、第1の面と第2の面とを有し、前記ポリオレフィン基材が前記アンカーコート層の前記第1の面と接しており、前記酸化ケイ素蒸着膜が前記アンカーコート層の前記第2の面と接している、前記[1]に記載のバリア性基材。
[3]前記酸化ケイ素蒸着膜が、前記アンカーコート層の前記第2の面に、直接、蒸着形成されてなる、前記[2]に記載のバリア性基材。
[4]前記酸化ケイ素蒸着膜上に保護層をさらに備える、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載のバリア性基材。
[5]前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリプロピレン基材または延伸ポリエチレン基材である、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載のバリア性基材。
[6]飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、前記バリア性基材をエッチングしながら測定される、前記アンカーコート層におけるNO2
-イオンの規格化強度が、3.0以上4.2以下である、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載のバリア性基材。
[前記規格化強度は、TOF-SIMSによるNO2
-イオンの検出強度をCN-イオンの検出強度により除して100000倍することにより規格化を行い、NO2
-イオンの規格化後の検出強度の平均値の常用対数値を意味する。]
[7]前記アンカーコート層の断面について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定される弾性率が、95MPa以上である、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載のバリア性基材。
[8]包装材料用基材である、前記[1]~[7]のいずれか一項に記載のバリア性基材。
[9]前記[1]~[8]のいずれか一項に記載のバリア性基材と、シーラント層と、を備えるバリア性積層体。
[10]前記バリア性基材が備える前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリプロピレン基材であり、前記シーラント層が、ポリプロピレン層であるか、または、前記バリア性基材が備える前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリエチレン基材であり、前記シーラント層が、ポリエチレン層である、前記[9]に記載のバリア性積層体。
[11]前記バリア性基材における前記シーラント層に向かう面とは反対側の面上、または前記バリア性基材と前記シーラント層との間に、第2のポリオレフィン基材をさらに備える、前記[9]に記載のバリア性積層体。
[12]前記バリア性基材が備える前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリプロピレン基材であり、前記第2のポリオレフィン基材が、延伸ポリプロピレン基材であり、前記シーラント層が、ポリプロピレン層であるか、または、前記バリア性基材が備える前記ポリオレフィン基材が、延伸ポリエチレン基材であり、前記第2のポリオレフィン基材が、延伸ポリエチレン基材であり、前記シーラント層が、ポリエチレン層である、前記[11]に記載のバリア性積層体。
[13]前記[9]~[12]のいずれか一項に記載のバリア性積層体を備える包装容器。
【実施例0171】
以下、実施例に基づき本開示のバリア性基材およびバリア性積層体等を説明するが、本開示のバリア性基材およびバリア性積層体等は以下の実施例により何ら限定されない。
【0172】
[実施例1A]
一方の面がコロナ処理された、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ(株)製、ME-1)を準備した。主剤としてポリエステル(東洋紡(株)製、商品名:バイロン(登録商標)UR1700)と、硬化剤としてXDI系イソシアネート(三井化学(株)製、商品名:タケネートD110N)と、添加剤としてニトロセルロースとを、主剤:硬化剤:ニトロセルロース(固形分質量比)=1:1:0.5で混合して、さらに溶剤を用いて、アンカーコート剤を調製した。ウレタン樹脂およびシランカップリング剤を混合して、さらに溶剤を用いて、保護層用塗工液を調製した。
【0173】
2軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、アンカーコート剤をグラビアコート法により塗布し乾燥して、厚さ350nmのアンカーコート層を形成した。アンカーコート層上に、物理気相成長法によって、厚さ30nmの酸化ケイ素蒸着膜を形成した。酸化ケイ素蒸着膜の表面に保護層用塗工液をグラビアコート法により塗布し乾燥して、厚さ200nmの保護層を形成した。
【0174】
このようにして、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルムと、厚さ350nmのアンカーコート層と、厚さ30nmの酸化ケイ素蒸着膜と、厚さ200nmの保護層と、をこの順に備えるバリア性基材を得た。
【0175】
[実施例2A~7Aおよび比較例1A~5A]
アンカーコート剤の組成および/またはアンカーコート層の厚さを表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、バリア性基材を得た。
【0176】
[実施例1B]
実施例1Aで得られたバリア性基材の保護層面に、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネートして、バリア性積層体を得た。
【0177】
[実施例2B~7Bおよび比較例1B~5B]
実施例1Aで得られたバリア性基材に代えて表2に記載のバリア性基材を用いたこと以外は実施例1Bと同様にして、バリア性積層体を得た。
【0178】
[実施例1C]
一方の面がコロナ処理された、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ(株)製、ME-1)のコロナ処理面と、実施例2Aで得られたバリア性基材の保護層とを、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネートして、中間積層体を得た。さらに、中間積層体のバリア性基材面と、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムとを、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネートして、バリア性積層体を得た。
【0179】
[比較例1C]
実施例2Aで得られたバリア性基材に代えて比較例4Aで得られたバリア性基材を用いたこと以外は実施例1Cと同様にして、バリア性積層体を得た。
【0180】
[転移点の測定]
実施例または比較例で得られたバリア性基材を包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、市販の回転式ミクロトームを用いて室温(25℃)環境下にて、該ブロックを切断することにより、バリア性基材の断面を作製した。断面は、バリア性基材の主面に対して垂直となる厚さ方向に切断して得られる。仕上げはダイヤモンドナイフにて実施した。基材および各層の厚さも、走査型電子顕微鏡(SEM、日立製作所社製、SU8000)を用いて上記断面を観察することにより測定できる。
【0181】
測定装置としてANASYS INSTRUMENT社製nanoTA、サーマルプローブとしてANASYS INSTRUMENTS社製PR-EX-AN2-300-5を用いた。
【0182】
測定前に、以下のキャリブレーションを行った。
標準試料として、BRUKER社製nanoTA Calibration Samplesを準備した。標準試料の台には、軟化点が公知であるポリカプロラクトン(軟化点:55℃)、ポリエチレン(軟化点:116℃)、ポリエチレンテレフタレート(軟化点:235℃)が載っている。各標準試料の表面にサーマルプローブを接触させながら加熱した。加熱中に、サーマルプローブ直下の熱膨張を計測し、Voltage(電位)に対するDeflection(変位)を表すグラフを取得した。装置で設定する測定条件は以下の通りとした。
測定開始温度:0.1V
測定終了温度:10V
昇温速度:0.2V/sec
【0183】
各標準試料の軟化点を用い、電位に対するサーマルプローブの変位を表すグラフを温度に対する変位のグラフに変換した。以上のようにして、キャリブレーションを行った。
【0184】
キャリブレーション後、アンカーコート層の転移点を測定した。転移点の測定箇所は、アンカーコート層の断面が露出した部分のうち、アンカーコート層の厚さ方向における中央部付近とした。測定は同一断面において5箇所以上で実施し、転移点は再現良く測定された5箇所の値の算術平均値として記載した。
【0185】
測定は、アンカーコート層の断面にサーマルプローブを接触させ、サーマルプローブを接触させた状態で、下記条件で加熱し、温度に対するサーマルプローブの変位を表すグラフ(熱膨張曲線)を取得した。
測定開始温度:40℃
測定終了温度:350℃
昇温速度:5℃/sec
【0186】
得られた熱膨張曲線において、最も低温側に現れた転移点を取得した。
熱膨張曲線のピークが得られた場合は、熱膨張曲線のピークの温度を転移点とした。熱膨張曲線の最高変位から、連続的な変位の下降が0.2V以上計測された熱膨張曲線は、ピークが得られたとみなした。
【0187】
ただし、熱膨張曲線のピークが得られず「肩ピーク」が得られた場合、またはピークが得られる温度より低温側で「肩ピーク」が見られた場合は、「肩ピーク」の温度を転移点とした。「肩ピーク」は、明瞭な凸形状でないが、熱膨張曲線の傾き(変位/温度)が変化し、熱膨張曲線の傾きが0近くまで小さくなった点と定義する。具体的に、熱膨張曲線の傾きが変化するより低温側の接線における傾きの絶対値(=傾きA)と、熱膨張曲線の傾きが変化するより高温側の接線における傾きの絶対値(=傾きB)が、(傾きA)>{(傾きB)×5}の関係を満たし、かつ(傾きB)≦0.02V/℃のとき、熱膨張曲線に「肩ピーク」を有するとみなした。接線は、熱膨張曲線が比較的安定した直線に近い部分で引いた。「肩ピーク」を有するとみなした熱膨張曲線は、熱膨張曲線の傾きが変化する前後で引かれた接線の交点の温度を転移点とした。
【0188】
[弾性率の測定]
実施例または比較例で得られたバリア性基材について、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてフォースカーブ測定を行い、得られたフォースカーブより、アンカーコート層の断面の弾性率を求めた。
具体的な測定手順は以下のとおりである。
実施例または比較例で得られたバリア性基材を包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、市販の回転式ミクロトームを用いて室温(25℃)環境下にて、該ブロックを切断することにより、バリア性基材の断面を作製した。断面は、バリア性基材の主面に対して垂直となる厚さ方向に切断して得られる。仕上げはダイヤモンドナイフにて実施した。
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、上記断面に対してアンカーコート層の断面を含む2.5μm角でマッピング測定を行った。アンカーコート層の断面について、適切なフォースカーブ形状が得られたフォースカーブを20個選択した。JKR(Johnson-Kendall-Roberts)理論によりそれぞれのフォースカーブをフィッティングして弾性率をそれぞれ算出し、得られた20個の弾性率の算術平均値(以下「第一の算術平均値」ともいう)を算出した。ここで、フォースカーブの選択箇所は、アンカーコート層の断面が露出した部分のうち、アンカーコート層の厚さ方向における中央部付近とした。上記20個の弾性率から第一の算術平均値に近い弾性率を3個選択して、3個の弾性率の算術平均値(以下「第二の算術平均値」ともいう)を算出した。得られた第二の算術平均値を、アンカーコート層の断面の弾性率とした。
AFMの測定条件の詳細を、以下に示す。
(AFM弾性率測定)
・装置名:SPM-9700HT(島津製作所製)
・測定雰囲気:大気下、室温(25℃)
・測定モード:コンタクトモード
・キャリブレーション方法:ガラスを用いてカンチレバー感度を測定する
・測定点数:64×64点(計4096点)
・視野範囲:2.5μm角
・カンチレバー型式:CONTR(ナノワールド製)
・カンチレバーの先端半径:<8nm
・カンチレバーのばね定数:0.2N/m
・触圧:0.5V
・スキャン速度:3Hz
・弾性率の計算モデル:JKR(Johnson-Kendall-Roberts)理論
・サンプルのポアソン比:0.4
・解析ソフト:Nano 3D Mapping(島津製作所製)
【0189】
[TOF-SIMS測定]
アンカーコート層におけるNO2
-イオンの規格化強度を、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて測定した。具体的には、飛行時間型二次イオン質量分析計(ION TOF社製、TOF.SIMS5)を用いて、バリア性基材の保護層表面から2軸延伸ポリプロピレンフィルム側へ、Cs(セシウム)イオン銃により一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、各層における各種イオンの質量分析を行った。アンカーコート層では、樹脂成分由来のCN-イオン(質量数26.002)、およびニトロセルロース由来のNO2
-イオン(質量数45.992)の質量分析を行った。
【0190】
具体的なTOF-SIMSの測定条件は以下のとおりである。
・一次イオン種類:Bi3
++(0.2pA、100μs)
・測定面積 :150×150μm2
・エッチング銃の種類:Cs(1keV、60nA)
・エッチング面積:600×600μm2
・エッチングレート:10sec/Cycle
・真空引き時間:1×10-6mbar以下で15時間以上
・TOF-SIMS測定は、真空引き開始後、30時間以内に行った。
【0191】
[ガスバリア性評価]
実施例または比較例で得られたバリア性基材を切り出して、試験片1を得た。実施例または比較例で得られたバリア性積層体を切り出して、試験片2を得た。試験片1および試験片2を用いて、酸素透過度(cc/(m2・day・atm))および水蒸気透過度(g/(m2・day))を、以下の方法により測定した。
【0192】
酸素透過度測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を用いて、試験片1のポリオレフィン基材が酸素供給側を向き、保護層が検知器側を向くように試験片1を配置して、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、湿度90%RH環境下における酸素透過度(OTR)を測定した。
【0193】
酸素透過度測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を用いて、試験片2の2軸延伸ポリプロピレンフィルムが酸素供給側を向き、未延伸ポリプロピレンフィルムが検知器側を向くように試験片2を配置して、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、湿度90%RH環境下におけるOTRを測定した。
【0194】
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-w 3/33)を用いて、試験片1のポリオレフィン基材が水蒸気供給側を向き、保護層が検知器側を向くように試験片1を配置して、JIS K7129-2:2019に準拠して、温度40℃、湿度90%RH環境下における水蒸気透過度(WVTR)を測定した。
【0195】
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-w 3/33)を用いて、試験片2の2軸延伸ポリプロピレンフィルムが水蒸気供給側を向き、未延伸ポリプロピレンフィルムが検知器側を向くように試験片2を配置して、JIS K7129-2:2019に準拠して、温度40℃、湿度90%RH環境下におけるWVTRを測定した。
【0196】
[ガスバリア性評価(レトルト処理後)]
実施例または比較例で得られたバリア性積層体を2枚準備し、これらをシーラント層(未延伸ポリプロピレンフィルム)の面を対向させて重ね合わせ、3辺をヒートシールして、平状の包装袋を得た。平状の包装袋の大きさは、B5サイズ(182mm×257mm)である。得られた包装袋内に、開口部から水を100mL充填し、開口部を上記条件でヒートシールして、包装袋を密封した。平状の包装袋を、121℃で30分間、熱水でレトルト処理した。平状の包装袋からバリア性積層体を切り出して、試験片3を得た。この試験片3を用いて、上記試験片2と同様にして、OTRおよびWVTRを測定した。
【0197】
[密着性]
作成した包装袋を半分に折り曲げた後に元に戻し、上記と同様にして水を100mL充填し、包装袋を密封した後、折れ線部をクリップで止めた状態でレトルト処理を実施し、折れ線部のデラミネーション(バリア性積層体を構成する層の剥れの有無)を確認した。
・〇:折れ線部にデラミネーションは観察されない。
・×:折れ線部にデラミネーションが観察される。
【0198】
[塗工性]
2軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、アンカーコート剤をグラビアコート法により塗布し乾燥してアンカーコート層を形成した際の塗工性を、以下の基準に基づき評価した。
・〇:アンカーコート剤の凝集が無く、塗工スジも観察されない。
・×:アンカーコート剤の凝集が有り、塗工スジも観察される。
【0199】
[加工性]
バリア性基材の加工性を、以下の基準に基づき評価した。
・〇:バリア性基材を巻き取った後のロールから、バリア性基材を再度繰り出した際、
バリア性基材同士の貼り付きは発生しなかった。
・△:バリア性基材を巻き取った後のロールから、バリア性基材を再度繰り出した際、
バリア性基材同士の軽度の貼り付きが発生した。
・×:バリア性基材を巻き取った後のロールから、バリア性基材を再度繰り出した際、
バリア性基材同士の貼り付きが発生した。
【0200】
【0201】