(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004920
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヒンジカバーの取付構造
(51)【国際特許分類】
E06B 7/36 20060101AFI20240110BHJP
E05D 5/04 20060101ALI20240110BHJP
E05D 3/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E06B7/36 C
E05D5/04 Z
E05D3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104824
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥川 義生
(72)【発明者】
【氏名】上村 純三
(72)【発明者】
【氏名】矢代 幸広
【テーマコード(参考)】
2E030
【Fターム(参考)】
2E030BB03
2E030CA01
2E030CC01
(57)【要約】
【課題】ヒンジとヒンジカバーとの干渉を招来することなく扉体の位置調整を行う。
【解決手段】枠体1及び扉体10にそれぞれ羽根板22,23を介して固定されたヒンジ20のピン部分21Aを覆うヒンジカバー50の取付構造であって、扉体10に固定される羽根板22には、ブラケット40が設けられ、ブラケット40には、扉体10の表面に対向するように配置される取付板部44が設けられ、ヒンジカバー50は、取付板部44との間にネジ56を螺合することにより、ブラケット40を介して羽根板22に支持されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体及び扉体にそれぞれ羽根板を介して固定されたヒンジのピン部分を覆うヒンジカバーの取付構造であって、
前記扉体に固定される羽根板に前記ヒンジカバーが支持されていることを特徴とするヒンジカバーの取付構造。
【請求項2】
前記扉体に固定される羽根板には、ブラケットが設けられ、
前記ブラケットには、前記扉体の表面に対向するように配置される取付板部が設けられ、
前記ヒンジカバーは、前記取付板部との間に連結具を設けることにより、前記ブラケットを介して前記羽根板に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジカバーの取付構造。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記取付板部が前記扉体の表面に対向するように配置された状態で前記羽根板の外部に臨む表面に配置される固定板部を有し、前記固定板部を介して前記羽根板に連結具を設けることにより前記羽根板に固定されていることを特徴とする請求項2に記載のヒンジカバーの取付構造。
【請求項4】
前記ヒンジカバーは、ベース体と、前記ベース体に対して着脱可能に係合するカバー体とを有し、前記ベース体を介して前記羽根板に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジカバーの取付構造。
【請求項5】
枠体及び扉体にそれぞれ羽根板を介して固定されたヒンジのピン部分を覆うヒンジカバーの取付構造であって、
前記羽根板は、スペーサ部材を介在させた状態で前記扉体の側面に取り付けられるものであり、
前記ヒンジカバーは、前記スペーサ部材を介して前記扉体に支持されていることを特徴とするヒンジカバーの取付構造。
【請求項6】
前記スペーサ部材は、前記羽根板から突出する突出部を有し、
前記ヒンジカバーは、前記突出部を介して前記扉体の側面に連結具を設けることにより前記扉体に支持されていることを特徴とする請求項5に記載のヒンジカバーの取付構造。
【請求項7】
前記ヒンジカバーは、ベース体と、前記ベース体に対して着脱可能に係合するカバー体とを有し、前記ベース体を介して前記扉体に支持されていることを特徴とする請求項5に記載のヒンジカバーの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジを介して枠体に扉体を配設した建具では、ヒンジのピン部分を覆うヒンジカバーを扉体に取り付けることにより、外観品質の向上を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、枠体に対して扉体を円滑に開閉するには、枠体に対する扉体の位置調整を行う必要がある。すなわち、ヒンジと扉体との間に適宜スペーサ部材を介在させることにより、扉体の四周において枠体との間の隙間が均一になるように調整すれば、扉体を円滑に開閉させることが可能となる。しかしながら、上述のようにヒンジカバーを取り付けた建具にあっては、ヒンジと扉体との間にスペーサ部材を介在させた場合、ピン部分とヒンジカバーとの相対位置がずれることにより、扉体を開いた際に相互に干渉する等の問題を招来する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、ヒンジとヒンジカバーとの干渉を招来することなく扉体の位置調整を行うことのできるヒンジカバーの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るヒンジカバーの取付構造は、枠体及び扉体にそれぞれ羽根板を介して固定されたヒンジのピン部分を覆うヒンジカバーの取付構造であって、前記扉体に固定される羽根板に前記ヒンジカバーが支持されていることを特徴とする。
【0007】
また本発明に係るヒンジカバーの取付構造は、枠体及び扉体にそれぞれ羽根板を介して固定されたヒンジのピン部分を覆うヒンジカバーの取付構造であって、前記羽根板は、スペーサ部材を介在させた状態で前記扉体の側面に取り付けられるものであり、前記ヒンジカバーは、前記スペーサ部材を介して前記扉体に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、扉体に固定される羽根板にヒンジカバーが支持されるため、羽根板と扉体との間にスペーサ部材を介在させた場合にも、ヒンジカバーとヒンジのピン部分との相対位置が変化することがない。これにより、扉体の位置調整を行った場合にもヒンジカバーとヒンジとが干渉するおそれがない。
【0009】
また、本発明によれば、スペーサ部材を介して扉体にヒンジカバーが支持されるため、羽根板と扉体との間に介在されるスペーサ部材の板厚が変更された場合にも、ヒンジカバーとヒンジのピン部分との相対位置が変化することがない。これにより、扉体の位置調整を行った場合にもヒンジカバーとヒンジとが干渉するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1であるヒンジカバーの取付構造を適用した建具を室外側から見た姿図である。
【
図3】
図1に示した建具において扉体が開いた状態の要部横断面図である。
【
図4】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)はヒンジの羽根板にブラケットを取り付けた状態の要部分解横断面図、(b)はブラケットにヒンジカバーのベース体を取り付けた状態の要部分解横断面図である。
【
図5】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)はヒンジの羽根板にブラケットを取り付ける以前の分解斜視図、(b)は羽根板にブラケットを取り付けた状態の分解斜視図、(c)はブラケットにヒンジカバーのベース体を取り付けた状態の分解斜視図である。
【
図6】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は板厚d1のスペーサ部材を羽根板と扉体との間に介在させた状態の横断面図、(b)は板厚d2(>d1)のスペーサ部材を羽根板と扉体との間に介在させた状態の横断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態2であるヒンジカバーの取付構造を適用した建具の要部を示すもので、(a)は扉体を閉じた状態の横断面図、(b)は扉体を開いた状態の横断面図である。
【
図8】
図7に示した建具の要部を示す分解斜視図である。
【
図9】
図7に示した建具の要部を示すもので、(a)は板厚d3のスペーサ部材を羽根板と扉体との間に介在させた状態の横断面図、(b)は板厚d4(>d3)のスペーサ部材を羽根板と扉体との間に介在させた状態の横断面図である。
【
図10】変形例である建具の要部を示すもので、(a)はブラケットにベース体を取り付けた状態の分解横断面図(b)はベース体にカバー体を装着した状態の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るヒンジカバーの取付構造の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
図1~
図3は、本発明の実施の形態1であるヒンジカバーの取付構造を適用した建具を示すものである。ここで例示する建具は、枠体1及び扉体10を備え、枠体1の一方の縦枠1Aにヒンジ20を介して扉体10を回転可能に支持させたものである。枠体1は、上枠1B、下枠1C及び左右の縦枠1A,1Dを四周組することによって構成したものである。左右の縦枠1A,1Dには、それぞれ室外側となる部分に縦枠カバー2A,2Dが装着してある。
【0013】
扉体10は、四周組みした骨材11の両面にそれぞれ表面材12を配設することによって構成した、いわゆるフラッシュパネルと称されるものである。図示の例では、表面材12の複数箇所に採光用の複層ガラス13が配設してあるとともに、表面材12の相互間に断熱材14が充填してある。また、戸先となる部分には、ドアハンドル15が設けてある。縦枠1A,1Dと扉体10との間に設けたヒンジ20は、図には明示していないが、ヒンジピン21の上端部に設けた扉体用の羽根板22と、ヒンジピン21の下端部に設けた縦枠用の羽根板23とを備え、これら上下の羽根板22,23がヒンジピン21の軸心回りに相対回転可能となるように構成した、いわゆる旗ヒンジと称されるものである。それぞれの羽根板22,23には、複数のネジ挿通孔が設けてある。実施の形態1の建具では、縦枠1Aと扉体10との間の3カ所にヒンジ20が配設してある。さらに、扉体10において一番下のヒンジ20と下から2番目のヒンジ10との間に位置する部分には、扉体用の羽根板22のみが設けてある。縦枠用の羽根板23は、ネジ挿通孔23aを介して縦枠1Aにネジ24を螺合することにより、ピン部分21Aが縦枠1Aの室外に臨む見付け面よりも室外に突出した状態で縦枠1Aの内周側となる見込み面に固定してある。扉体用の羽根板22は、扉体10の側面との間にスペーサ部材30を介在させた状態で、ネジ挿通孔22aを介して扉体10の骨材11及び裏板16にネジ24を螺合することにより扉体10に固定してある。扉体10に設けた4つの羽根板22は、ヒンジピン21が互いに同一の軸心上となるように配置したもので、枠体1に対して扉体10を閉じた際に、扉体10の室外に臨む表面が縦枠1Aの室外に臨む見付け面とほぼ同じとなるように扉体10に取り付けてある。すなわち、扉体10を閉じた状態においては、扉体10の室外に臨む表面よりもヒンジ20のピン部分21Aが突出した状態となっている。扉体10に設けた4つの羽根板22には、ブラケット40を介してヒンジカバー50が支持させてある。
【0014】
ブラケット40は、
図4、
図5に示すように、金属製の板材によって構成したもので、固定板部41、連絡板部42、支持板部43、取付板部44が一体に成形してある。固定板部41は、ブラケット40を扉体用の羽根板22に固定するためのものである。本実施の形態1では、扉体用の羽根板22においてネジ挿通孔22aとピン部分21Aとの間に配置することのできる幅の平板状を成すように固定板部41が構成してある。この固定板部41には、上下2つのネジ挿通孔41aが並設してある。2つのネジ挿通孔41aは、ネジ41bを螺合して固定板部41を羽根板22の表面に固定するためのものである。羽根板22の表面に固定した固定板部41は、羽根板22の上端から一部が上方に突出した状態となる。以下、連絡板部42、支持板部43、取付板部44については便宜上、固定板部41を羽根板22に固定した状態の姿勢でそれぞれの形状や方向について説明することとする。連絡板部42は、固定板部41の上端部から扉体10に向けてほぼ直角に屈曲して延在した板状を成すものである。この連絡板部42は、延在端部がピン部分21Aを超えて扉体10側に突出できる寸法に形成してある。支持板部43は、連絡板部42から室外に向けてほぼ直角に屈曲して延在した板状を成すものである。支持板部43の上下に沿った寸法は、固定板部41とほぼ同じであり、固定板部41とほぼ平行となる状態で連絡板部42から下方にも延在している。取付板部44は、支持板部43の上下方向においてほぼ中央となる部分から扉体10に向けてほぼ直角に屈曲して延在した板状を成すもので、扉体10の室外に臨む表面との間に隙間を確保した位置において扉体10の表面にほぼ平行となるように対向している。取付板部44には、上下に沿って2つのネジ孔44aが設けてある。
【0015】
ヒンジカバー50は、上下に沿った寸法が扉体10とほぼ同じとなるように形成したもので、扉体10の4つの羽根板22に固定したブラケット40に対して架け渡すように一連に配置してある。本実施の形態1では、互いに別体に成形したベース体50A及びカバー体50Bを備えてヒンジカバー50が構成してある。ベース体50A及びカバー体50Bは、それぞれがアルミニウム合金等の金属や樹脂材によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。
【0016】
ベース体50Aは、基板部51と、2つの側板部52とを一体に成形したものである。基板部51は、取付板部44とほぼ同じ幅を有した平板状を成すもので、ブラケット40の取付板部44を覆うことが可能である。2つの側板部52は、基板部51に対してほぼ直角となる方向に延在したもので、基板部51の両側縁部から一方の表面側及び他方の表面側に向けてそれぞれ突出している。2つの側板部52において基板部51の一方の表面側から突出した部分は、突出寸法が互いにほぼ同一であり、個々の突出縁部に係合爪部53を有している。係合爪部53は、それぞれの側板部52から互いに近接する方向に向けて突出したものである。2つの側板部52において基板部51の他方の表面側から突出した部分は、突出寸法が互いに異なっている。突出寸法の大きな側板部52には、突出縁部に掛け爪部54が設けてあるとともに、それぞれの扉体用の羽根板22に対応する部分に挿通用切欠55が設けてある。掛け爪部54は、もう一方の側板部52から離隔する方向に向けて突出したものである。挿通用切欠55は、側板部52において他方の表面側への突出縁部から基板部51までの間に設けた四角形状を成すもので、ブラケット40の取付板部44を挿通することのできる幅に構成してある。このベース体50Aは、挿通用切欠55を介して基板部51の他方の表面を取付板部44に当接させるとともに、掛け爪部54を支持板部43の縁部に係合させ、この状態から基板部51に設けたネジ挿通孔51aを介して取付板部44のネジ孔44aにネジ(連結具)56を螺合することにより、ブラケット40に取り付けてある。
【0017】
カバー体50Bは、カバー板部57と2つの係合板部58とを一体に成形したものである。カバー板部57は、羽根板22にブラケット40を取り付けた場合に、取付板部44の突出縁部からのピン部分21Aを超える位置までの間を覆うことのできる幅を有した板状を成すものである。このカバー板部57は、ほぼ平板状を成し、ピン部分21Aの側に位置する縁部のみ漸次縦枠1Aに近接する方向に向けて傾斜している。係合板部58は、カバー板部57の平板状を成す部分から同一方向に向けて突出したもので、個々の突出縁部に弾性係合片59を有している。弾性係合片59は、互いに近接する方向に向けて延在した後、カバー板部57から離隔する方向に向けてほぼ直角に屈曲し、さらに互いに離隔する方向に向けて突出したものである。弾性係合片59の突出縁部は、相互間隔がベース体50Aに設けた側板部52の相互間隔とほぼ等しく設定してあり、個々の突出部分を係合爪部53に係合させることにより、ベース体50Aにカバー体50Bを着脱可能に装着することが可能である。係合板部58の寸法は、ブラケット40を介してヒンジ20にベース体50Aを支持させた状態でカバー体50Bを装着した場合に、カバー体50Bがヒンジ20のピン部分21Aに対して接触することなくこれを覆うことができるように設定してある。図示の例では、扉体10をほぼ90°開いた場合にも、縦枠1Aに干渉することがないように、カバー体50Bの幅寸法が設定してある。
【0018】
上記のように構成した建具では、ヒンジカバー50によってヒンジ20のピン部分21A(扉体10にのみ設けた羽根板22のピン部分21Aを含む)が覆われた状態となるため、室外側から見た場合の外観品質を向上させることが可能となる。しかも、ヒンジカバー50は、ブラケット40を介して扉体用の羽根板22に支持させてある。従って、枠体1に対して扉体10を開閉した場合には、
図3に示すように、扉体10の開閉に伴ってヒンジカバー50も移動するため、ヒンジカバー50と扉体10とが干渉することはない。さらに、
図6に示すように、スペーサ部材30の板厚d1,d2を変更することで枠体1に対する扉体10の位置を調整した場合にも、ヒンジ20に対してヒンジカバー50の相対位置が変化することがない。これにより、扉体10が閉じた状態においてヒンジ20とヒンジカバー50とが干渉する事態を招来することがなく、扉体10を開閉した場合にもヒンジカバー50が扉体10やヒンジ20に干渉するおそれもない。
【0019】
なお、上述した実施の形態1では、ブラケット40を介してヒンジカバー50を支持させるようにしているが、ブラケット40は必ずしも必要ではない。すなわち、直接ヒンジカバー50を扉板用の羽根板22に支持させても良い。この場合、羽根板22にブラケット40の取付板部44と同様の構成を追加する加工を施しても良いし、ヒンジカバー50にブラケット40の固定板部41と同様の構成を設けるようにすることも可能である。
【0020】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2であるヒンジカバー50の取付構造を適用した建具の要部を示すものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、枠体1の縦枠1Aに対してヒンジ20を介して扉体10を回転可能に支持させたものであり、実施の形態1とはスペーサ部材130及びブラケット140の詳細構成が異なっている。以下、実施の形態1と異なる構成について主に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付すこととする。
【0021】
スペーサ部材130は、
図8に示すように、羽根板22の上端よりも上方に突出する突出部131を有し、突出部131にネジ挿通孔131aを有したものである。ブラケット140は、金属製の板材によって構成したもので、固定板部141、連絡板部142、支持板部143、取付板部144が一体に成形してある。このうち、連絡板部142、支持板部143、取付板部144については、実施の形態1で適用したブラケット40の連絡板部42、支持板部43、取付板部44と同様の構成を有したものである。固定板部141は、スペーサ部材130を介してブラケット140を扉体10に固定するためのものである。本実施の形態2では、羽根板22よりも上方においてスペーサ部材130の突出部131を覆うことのできる寸法を有した平板状を成すように固定板部141が構成してある。この固定板部141は、スペーサ部材130の突出部131に設けたネジ挿通孔131aに対応する部分にネジ挿通孔141aを有しており、ネジ挿通孔141a及びスペーサ部材130のネジ挿通孔131aを介してネジ(連結具)141bを螺合することにより、扉体10の側面に固定してある。扉体10に固定した状態の固定板部141は、室外側に向けて延在し、延在縁部が扉体10の室外に臨む表面よりもわずかに室外の位置となるように構成してある。
【0022】
実施の形態2においても、挿通用切欠55を介して基板部51の他方の表面を取付板部144に当接させ、この状態から基板部51に設けたネジ挿通孔51aを介して取付板部144のネジ孔144aにネジ(連結具)56を螺合することにより、ベース体50Aがブラケット140に取り付けられる。また、カバー体50Bは、弾性係合片59の突出部分を係合爪部53に係合させることにより、ベース体50Aに着脱可能に装着することが可能である。
【0023】
上記のように構成した建具では、ヒンジカバー50によってヒンジ20のピン部分21A(扉体10にのみ設けた羽根板22のピン部分21Aを含む)が覆われた状態となるため、室外側から見た場合の外観品質を向上させることが可能となる。しかも、ヒンジカバー50は、ブラケット140を介して扉体10に支持させてある。従って、枠体1に対して扉体10を開閉した場合には、扉体10の開閉に伴ってヒンジカバー50も移動するため、ヒンジカバー50と扉体10とが干渉することはない。さらに、スペーサ部材130を介して扉体10にヒンジカバー50が支持されている。このため、
図9に示すように、羽根板22と扉体10との間に介在されるスペーサ部材130の板厚d3,d4を変更することで枠体1に対する扉体10の位置を調整した場合にも、ヒンジカバー50とヒンジ20のピン部分21Aとの相対位置が変化することがない。これにより、扉体10が閉じた状態においてヒンジ20とヒンジカバー50とが干渉する事態を招来することがなく、扉体10を開閉した場合にもヒンジカバー50が扉体10やヒンジ20に干渉するおそれもない。
【0024】
なお、上述した実施の形態2では、ブラケット140を介してヒンジカバー50を支持させるようにしているが、ブラケット140は必ずしも必要ではない。すなわち、ヒンジカバー50にブラケット140の固定板部141と同様の構成を設け、この部分及びスペーサ部材130を介して扉体10にネジ56を螺合するようにしても構わない。
【0025】
また、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、互いに着脱されるベース体50Aとカバー体50Bとによってヒンジカバー50を構成してあるため、個々の取り扱いが容易となり、例えばヒンジカバー50の交換が必要となった場合にカバー体50Bのみの交換で対応することが可能となる等の利点がある。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ベース体とカバー体との機能を有した一体のヒンジカバーを適用しても構わない。なお、ベース体50Aとカバー体50Bとからヒンジカバー50を構成する場合、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、いずれもベース体50Aに扉体10との隙間を覆う側板部52を設けるようにしているが、
図10に示す変形例のように、カバー体150Bに扉体10との隙間を覆う側板部160を設けるようにしても良い。すなわち、変形例のベース体150Aは、基板部151と、2つの側板部152とを一体に成形したものであるが、内周側の側板部152については基板部151から室外側に向けてのみ突出し、扉体10側へは突出していない。一方、変形例のカバー体150Bは、カバー板部157と2つの係合板部158と、側板部160とを一体に成形してある。より詳細に説明すると、変形例のカバー体150Bでは、カバー板部157が取付板部44を超えた位置まで内周側に延在しており、カバー板部157の延在縁部から扉体10に向けてほぼ直角となるように側板部160が一体に設けてある。この変形例においても、ヒンジカバー150の支持対象が扉体用の羽根板22、もしくはスペーサ部材130を介した扉体10であれば、実施の形態1もしくは実施の形態2と同様の作用効果を奏することが可能である。変形例において実施の形態1と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0026】
なお、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、室外側から見て右側にヒンジ20を3つ取り付けた建具を例示しているが、左右の取付位置や個数については必ずしも実施の形態のものに限らない。ヒンジの形状についても旗ヒンジに限らない。また、ヒンジ20を構成する3つの羽根板22のほかに扉体10に羽根板22のみを設け、これら4つの羽根板22にそれぞれブラケット40,140を設けるようにしているため、ヒンジカバー50をより確実に支持することが可能となるが、扉体10に羽根板22のみを設ける必要はない。さらに、適用する扉体については必ずしもフラッシュパネルである必要はなく、支持する枠体は縦枠である必要はない。
【0027】
以上のように、本発明に係るヒンジカバーの取付構造は、枠体及び扉体にそれぞれ羽根板を介して固定されたヒンジのピン部分を覆うヒンジカバーの取付構造であって、前記扉体に固定される羽根板に前記ヒンジカバーが支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、扉体に固定される羽根板にヒンジカバーが支持されるため、羽根板と扉体との間にスペーサ部材を介在させた場合にも、ヒンジカバーとヒンジのピン部分との相対位置が変化することがない。これにより、扉体の位置調整を行った場合にもヒンジカバーとヒンジとが干渉するおそれがない。
【0028】
また本発明は、上述したヒンジカバーの取付構造において、前記扉体に固定される羽根板には、ブラケットが設けられ、前記ブラケットには、前記扉体の表面に対向するように配置される取付板部が設けられ、前記ヒンジカバーは、前記取付板部との間に連結具を設けることにより、前記ブラケットを介して前記羽根板に支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、ヒンジと羽根板との間にブラケットを介在させるようにしているため、ヒンジカバーを羽根板に支持させるにあたってヒンジに特別な加工が不要となる。
【0029】
また本発明は、上述したヒンジカバーの取付構造において、前記ブラケットは、前記取付板部が前記扉体の表面に対向するように配置された状態で前記羽根板の外部に臨む表面に配置される固定板部を有し、前記固定板部を介して前記羽根板に連結具を設けることにより前記羽根板に固定されていることを特徴としている。
この発明によれば、ブラケットを羽根板に固定する際にネジ等の連結具を設ける作業が容易となる。
【0030】
また本発明は、上述したヒンジカバーの取付構造において、前記ヒンジカバーは、ベース体と、前記ベース体に対して着脱可能に係合するカバー体とを有し、前記ベース体を介して前記羽根板に支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、ヒンジカバーがベース体とカバー体とに分割されるため、取り扱いが容易となり、例えばヒンジカバーの交換が必要となった場合にカバー体のみの交換で対応することが可能となる。
【0031】
また本発明に係るヒンジカバーの取付構造は、枠体及び扉体にそれぞれ羽根板を介して固定されたヒンジのピン部分を覆うヒンジカバーの取付構造であって、前記羽根板は、スペーサ部材を介在させた状態で前記扉体の側面に取り付けられるものであり、前記ヒンジカバーは、前記スペーサ部材を介して前記扉体に支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、スペーサ部材を介して扉体にヒンジカバーが支持されるため、羽根板と扉体との間に介在されるスペーサ部材の板厚が変更された場合にも、ヒンジカバーとヒンジのピン部分との相対位置が変化することがない。これにより、扉体の位置調整を行った場合にもヒンジカバーとヒンジとが干渉するおそれがない。
【0032】
また本発明は、上述したヒンジカバーの取付構造において、前記スペーサ部材は、前記羽根板から突出する突出部を有し、前記ヒンジカバーは、前記突出部を介して前記扉体の側面に連結具を設けることにより前記扉体に支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、羽根板を介することなくヒンジカバーを扉体に支持させることが可能となる。
【0033】
また本発明は、上述したヒンジカバーの取付構造において、前記ヒンジカバーは、ベース体と、前記ベース体に対して着脱可能に係合するカバー体とを有し、前記ベース体を介して前記扉体に支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、ヒンジカバーがベース体とカバー体とに分割されるため、取り扱いが容易となり、例えばヒンジカバーの交換が必要となった場合にカバー体のみの交換で対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 枠体、1A 縦枠、10 扉体、20 ヒンジ、21 ヒンジピン、21A ピン部分、22,23 羽根板、40,140 ブラケット、41 固定板部、44,144 取付板部、50,150 ヒンジカバー、50A,150A ベース体、50B,150B カバー体、56,141b ネジ、130 スペーサ部材、131 突出部、141 固定板部